説明

テーパエッチング方法および近接場光発生器の製造方法

【課題】SiOまたはSiONよりなる被エッチング層に対して、所定の角度で交わる2つの壁面を有する溝部を形成する。
【解決手段】SiOまたはSiONよりなり上面を有する被エッチング層をテーパエッチングする方法である。この方法は、被エッチング層の上面の上に、開口部52aを有するエッチングマスク52を形成する工程と、被エッチング層に、所定の角度で交わる2つの壁面を有する溝部が形成されるように、反応性イオンエッチングによって、被エッチング層のうち開口部52aから露出する部分をテーパエッチングする工程とを備えている。エッチングマスク52は、Al元素を含む材料によって構成されている。テーパエッチングする工程は、被エッチング層のエッチングに寄与する主成分ガスとNとを含むエッチングガスを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SiOまたはSiONよりなる被エッチング層に対して、断面がV字形状の溝部を形成するためのテーパエッチング方法、ならびにこのテーパエッチング方法を利用した近接場光発生器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁気ディスク装置等の磁気記録装置では、高記録密度化に伴い、薄膜磁気ヘッドおよび記録媒体の性能向上が要求されている。薄膜磁気ヘッドとしては、基板に対して、読み出し用の磁気抵抗効果素子(以下、MR(Magnetoresistive)素子とも記す。)を有する再生ヘッドと書き込み用の誘導型電磁変換素子を有する記録ヘッドとを積層した構造の複合型薄膜磁気ヘッドが広く用いられている。磁気ディスク装置において、薄膜磁気ヘッドは、磁気記録媒体の表面からわずかに浮上するスライダに設けられる。
【0003】
磁気記録装置において、記録密度を高めるためには、記録媒体の磁性微粒子を小さくすることが効果的である。しかし、磁性微粒子を小さくすると、磁性微粒子の磁化の熱安定性が低下するという問題が発生する。この問題を解消するには、磁性微粒子の異方性エネルギーを大きくすることが効果的である。しかし、磁性微粒子の異方性エネルギーを大きくすると、記録媒体の保磁力が大きくなって、既存の磁気ヘッドでは情報の記録が困難になるという問題が発生する。
【0004】
上述のような問題を解決する方法として、いわゆる熱アシスト磁気記録という方法が提案されている。この方法では、保磁力の大きな記録媒体を使用し、情報の記録時には、記録媒体のうち情報が記録される部分に対して記録磁界と同時に熱も加えて、その部分の温度を上昇させ保磁力を低下させて情報の記録を行う。情報が記録された部分は、その後、温度が低下して保磁力が大きくなり、磁化の熱安定性が高まる。以下、熱アシスト磁気記録に用いられる磁気ヘッドを、熱アシスト磁気記録ヘッドと呼ぶ。
【0005】
熱アシスト磁気記録では、記録媒体に対して熱を加える方法としては、近接場光を用いる方法が一般的である。近接場光を発生させる方法としては、レーザ光によって励起されたプラズモンから近接場光を発生する金属片であるプラズモンジェネレータを用いる方法が知られている。また、一般的に、近接場光の発生に利用されるレーザ光は、スライダに設けられた導波路によって、スライダの媒体対向面の近傍に設けられたプラズモンジェネレータに導かれる。
【0006】
特許文献1には、導波路を伝播する光を、プラズモンジェネレータに対して、緩衝部を介して表面プラズモンモードで結合させて、プラズモンジェネレータに表面プラズモンを励起させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−267364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、プラズモンジェネレータの形状と、プラズモンジェネレータおよび導波路の配置の一例について説明する。この例では、導波路のコアの上面の上方にプラズモンジェネレータが配置される。プラズモンジェネレータは、導波路のコアの上面に向いたエッジ部を有している。コアの周囲にはクラッドが配置されている。クラッドのうち、プラズモンジェネレータのエッジ部とコアの上面との間に位置する部分が緩衝部となる。
【0009】
上記のプラズモンジェネレータでは、媒体対向面に配置されたエッジ部の端部が近接場光発生部となる。このプラズモンジェネレータでは、コアを伝播する光がコアの上面で全反射することによって、コアの上面からエバネッセント光が発生する。そして、プラズモンジェネレータの少なくともエッジ部において、上記エバネッセント光と結合することによって表面プラズモンが励起される。この表面プラズモンは、エッジ部に沿って近接場光発生部まで伝播され、この表面プラズモンに基づいて近接場光発生部より近接場光が発生される。この構成によれば、プラズモンジェネレータに励起された表面プラズモンを、効率よく、近接場光発生部まで伝播させることができる。
【0010】
上記の構成は、以下のようにして形成することができる。まず、クラッドを構成する誘電体材料よりなり、コアの上面の上に位置する部分を有する被エッチング層を形成する。次に、この被エッチング層に、媒体対向面に平行な断面における形状がV字形状の溝部(以下、V字形状の溝部とも記す。)を形成する。この溝部は、コアの上面に達しないように形成される。溝部が形成されることにより、被エッチング層はクラッドの一部となる。次に、上記溝部内にプラズモンジェネレータを形成する。
【0011】
上記の構成では、V字形状の溝部は、所定の角度で交わる2つの壁面を有し、プラズモンジェネレータは、2つの壁面に対向する2つの斜面を有する。プラズモンジェネレータのエッジ部は、プラズモンジェネレータの2つの斜面が交わることによって形成される。2つの斜面がなす角度は、プラズモンジェネレータに励起される表面プラズモンの強度と、近接場光発生部より発生される近接場光のスポット径に影響を与える。2つの斜面がなす角度が小さくなると、エッジ部が鋭くなり、近接場光発生部より発生される近接場光のスポット径が小さくなる。しかし、プラズモンジェネレータに励起される表面プラズモンの強度を大きくするためには、2つの斜面がなす角度はある程度大きい方がよい。これらのことから、2つの斜面がなす角度には好ましい範囲が存在する。一例としては、2つの斜面がなす角度は、50°〜120°の範囲内であることが好ましい。2つの斜面がなす角度を50°〜120°の範囲内とするには、V字形状の溝部の2つの壁面の各々が被エッチング層の上面に対してなす角度(以下、傾斜角度と言う。)を30°〜65°の範囲内として、2つの壁面がなす角度を50°〜120°の範囲内とすればよい。
【0012】
ところで、後にクラッドの一部となる被エッチング層に、V字形状の溝部を形成する方法としては、反応性イオンエッチング(以下、RIEとも記す。)を用いて、被エッチング層をテーパエッチングする方法がある。この方法では、一般的には、被エッチング層の上に、フォトレジストによって形成されたエッチングマスクを配置し、このエッチングマスクを用いて、被エッチング層をテーパエッチングする。RIEを用いたテーパエッチングでは、溝部の壁面の傾斜角度は、エッチング中の反応生成物よりなる側壁保護膜の堆積速度とエッチング速度との比に依存する。
【0013】
一方、クラッドの材料としては、SiO(酸化ケイ素)またはSiON(酸窒化ケイ素)が用いられる場合がある。この場合、2つの壁面の各々の傾斜角度が30°〜65°の範囲内であるV字形状の溝部が形成されるように、SiOまたはSiONよりなる被エッチング層を、RIEを用いてテーパエッチングする必要が生じる。しかし、従来の、フォトレジストによって形成されたエッチングマスクを用いたRIEでは、上記のV字形状の溝部が形成されるように、SiOまたはSiONよりなる被エッチング層をテーパエッチングすることが難しかった。すなわち、この従来の方法では、傾斜角度が90°に近く、所定の角度で交わらない2つの壁面を有する溝部すなわち底を有する溝部が形成されるか、ほとんど溝部が形成されないかのどちらかであった。その理由は、従来の方法では、エッチング中に、適度の堆積速度を有する側壁保護膜が形成されないためと考えられる。
【0014】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、SiOまたはSiONよりなる被エッチング層に対して、所定の角度で交わる2つの壁面を有する溝部を形成することができるようにしたテーパエッチング方法を提供することにある。
【0015】
本発明の第2の目的は、コアとクラッドとを有する導波路と、プラズモンジェネレータとを備え、クラッドは、コアの上面の上方に配置された溝部を有するクラッド層を含み、溝部は、所定の角度で交わる2つの壁面を有し、プラズモンジェネレータは、2つの壁面に対向する2つの斜面を有する近接場光発生器の製造方法であって、SiOまたはSiONよりなる被エッチング層に対して前記溝部を形成してクラッド層を形成できるようにした近接場光発生器の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のテーパエッチング方法は、SiOまたはSiONよりなり上面を有する被エッチング層をテーパエッチングする方法である。この方法は、被エッチング層の上面の上に、開口部を有するエッチングマスクを形成する工程と、被エッチング層に、所定の角度で交わる2つの壁面を有する溝部が形成されるように、反応性イオンエッチングによって、被エッチング層のうち開口部から露出する部分をテーパエッチングする工程とを備えている。エッチングマスクは、Al元素を含む材料によって構成されている。テーパエッチングする工程は、被エッチング層のエッチングに寄与する主成分ガスとNとを含むエッチングガスを用いる。
【0017】
本発明の近接場光発生器の製造方法は、導波路と、プラズモンジェネレータとを備えた近接場光発生器を製造する方法である。導波路は、光を伝播させるコアと、コアの周囲に配置されたクラッドとを有している。コアは、上面を有し、クラッドは、コアの上面の上方に配置された溝部を有するクラッド層を含んでいる。溝部は、所定の角度で交わる2つの壁面を有している。プラズモンジェネレータは、2つの壁面に対向する2つの斜面と、2つの斜面が交わることによって形成されたエッジ部と、エッジ部の一端に位置し、近接場光を発生する近接場光発生部とを有している。コアを伝播する光がコアの上面において全反射することによって、コアの上面からエバネッセント光が発生する。また、エッジ部において、エバネッセント光と結合することによって表面プラズモンが励起され、この表面プラズモンがエッジ部に沿って近接場光発生部に伝播され、この表面プラズモンに基づいて近接場光発生部より近接場光が発生される。
【0018】
本発明の近接場光発生器の製造方法は、コアを形成する工程と、クラッドを形成する工程と、プラズモンジェネレータを形成する工程とを備えている。クラッドを形成する工程は、SiOまたはSiONよりなり上面を有する被エッチング層を形成する工程と、被エッチング層の上面の上に、開口部を有するエッチングマスクを形成する工程と、被エッチング層に溝部が形成されて被エッチング層がクラッド層になるように、反応性イオンエッチングによって、被エッチング層のうち開口部から露出する部分をテーパエッチングする工程とを含んでいる。エッチングマスクは、Al元素を含む材料によって構成されている。テーパエッチングする工程は、被エッチング層のエッチングに寄与する主成分ガスとNとを含むエッチングガスを用いる。
【0019】
本発明のテーパエッチング方法および近接場光発生器の製造方法において、エッチングマスクを構成する材料は、Alを含む合金、Al23、AlN、AlFのうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。また、主成分ガスは、ClおよびBClを含んでいてもよい。また、エッチングガスにおいて、全流量に対するNの流量の割合は10〜20%であってもよい。また、2つの壁面の各々が被エッチング層の上面に対してなす角度は、30°〜65°の範囲内であってもよい。また、開口部の最小幅は、0.15〜0.5μmの範囲内であってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明のテーパエッチング方法によれば、被エッチング層のエッチング中に、エッチングマスク中のAl元素と、エッチングガス中のNとによって、反応生成物AlNが生成され、これが側壁保護膜を形成する。これにより、本発明によれば、SiOまたはSiONよりなる被エッチング層に対して、所定の角度で交わる2つの壁面を有する溝部を形成することが可能になるという効果を奏する。
【0021】
本発明の近接場光発生器の製造方法によれば、上記の作用により、SiOまたはSiONよりなる被エッチング層に対して、所定の角度で交わる2つの壁面を有する溝部を形成してクラッド層を形成することが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施の形態における熱アシスト磁気記録ヘッドにおける媒体対向面の一部を示す正面図である。
【図2】本発明の一実施の形態における熱アシスト磁気記録ヘッドの構成を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態における熱アシスト磁気記録ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。
【図4】本発明の一実施の形態における熱アシスト磁気記録ヘッドにおけるコイルの第1層を示す平面図である。
【図5】本発明の一実施の形態における熱アシスト磁気記録ヘッドにおけるコイルの第2層を示す平面図である。
【図6】本発明の一実施の形態に係る近接場光発生器の製造方法における一工程を示す断面図である。
【図7】図6に示した工程に続く工程を示す断面図である。
【図8】図7に示した工程に続く工程を示す断面図である。
【図9】図8に示した工程に続く工程を示す断面図である。
【図10】図9に示した工程に続く工程を示す断面図である。
【図11】比較例のエッチング方法における一工程を示す断面図である。
【図12】図11に示した工程に続く工程の第1の例を示す断面図である。
【図13】図11に示した工程に続く工程の第2の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1ないし図3を参照して、本発明の一実施の形態における熱アシスト磁気記録ヘッドの構成について説明する。図1は、熱アシスト磁気記録ヘッドにおける媒体対向面の一部を示す正面図である。図2は、熱アシスト磁気記録ヘッドの構成を示す断面図である。図3は、熱アシスト磁気記録ヘッドの媒体対向面を示す正面図である。
【0024】
本実施の形態における熱アシスト磁気記録ヘッドは、垂直磁気記録用であり、回転する記録媒体の表面から浮上するスライダの形態を有している。記録媒体が回転すると、記録媒体とスライダとの間を通過する空気流によって、スライダに揚力が生じる。スライダは、この揚力によって記録媒体の表面から浮上するようになっている。
【0025】
図2に示したように、熱アシスト磁気記録ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面40を備えている。ここで、X方向、Y方向、Z方向を以下のように定義する。X方向は、記録媒体のトラック横断方向すなわちトラック幅方向である。Y方向は、媒体対向面40に垂直な方向である。Z方向は、スライダから見た記録媒体の進行方向である。X方向、Y方向、Z方向は互いに直交している。
【0026】
図2および図3に示したように、熱アシスト磁気記録ヘッドは、アルミニウムオキサイド・チタニウムカーバイド(Al23・TiC)等のセラミック材料よりなり、上面1aを有する基板1と、この基板1の上面1a上に配置された絶縁材料よりなる絶縁層2と、この絶縁層2の上に配置された磁性材料よりなる下部シールド層3とを備えている。絶縁層2は、例えばアルミナ(Al23)によって形成されている。Z方向は、基板1の上面1aに垂直な方向でもある。
【0027】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、下部シールド層3の上面の上に配置された絶縁膜である下部シールドギャップ膜4と、この下部シールドギャップ膜4の上に配置された再生素子としてのMR(磁気抵抗効果)素子5と、このMR素子5に接続された2つのリード(図示せず)と、MR素子5の上に配置された絶縁膜である上部シールドギャップ膜6とを備えている。
【0028】
MR素子5の一端部は、記録媒体に対向する媒体対向面40に配置されている。MR素子5には、AMR(異方性磁気抵抗効果)素子、GMR(巨大磁気抵抗効果)素子あるいはTMR(トンネル磁気抵抗効果)素子等の磁気抵抗効果を示す感磁膜を用いた素子を用いることができる。GMR素子としては、磁気的信号検出用の電流を、GMR素子を構成する各層の面に対してほぼ平行な方向に流すCIP(Current In Plane)タイプでもよいし、磁気的信号検出用の電流を、GMR素子を構成する各層の面に対してほぼ垂直な方向に流すCPP(Current Perpendicular to Plane)タイプでもよい。
【0029】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、上部シールドギャップ膜6の上に配置された磁性材料よりなるリターン磁極層10と、上部シールドギャップ膜6の上においてリターン磁極層10の周囲に配置された図示しない絶縁層と、リターン磁極層10の上面の一部の上に配置された絶縁層11とを備えている。図示しない絶縁層と絶縁層11は、例えばアルミナによって形成されている。
【0030】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、媒体対向面40の近傍においてリターン磁極層10の上に配置された磁性材料よりなるシールド層12と、シールド層12に対して、媒体対向面40からより遠い位置においてリターン磁極層10の上に配置された磁性材料よりなる連結層13と、シールド層12および連結層13の周囲に配置された絶縁層14とを備えている。シールド層12は、媒体対向面40に配置された端面を有している。絶縁層14は、例えばアルミナによって形成されている。
【0031】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、連結層13の上に配置された磁性材料よりなる連結層15と、シールド層12および絶縁層14の上において連結層15の周囲に配置された絶縁層16とを備えている。絶縁層16は、例えばアルミナによって形成されている。連結層15および絶縁層16の上面は平坦化されている。
【0032】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、コア19と、コア19の周囲に配置されたクラッドとを有する導波路を備えている。クラッドは、クラッド層18,20,21を含んでいる。クラッド層18は、連結層15および絶縁層16の上に配置されている。コア19は、クラッド層18の上に配置されている。クラッド層20は、クラッド層18の上においてコア19の周囲に配置されている。コア19およびクラッド層20の上面は平坦化されている。クラッド層21は、コア19およびクラッド層20の上に配置されている。
【0033】
コア19は、入射部19aと、媒体対向面40により近い端面19bと、上面19cとを有している。端面19bは、媒体対向面40に配置されていてもよいし、媒体対向面40から離れた位置に配置されていてもよい。図1ないし図3には、端面19bが媒体対向面40に配置された例を示している。
【0034】
コア19は、上記端面19b、上面19cおよび下面を含み、媒体対向面40に垂直な方向(Y方向)に延びる第1層191と、第1層191の下面に沿って配置されて、この下面に接合された第2層192とを有している。第1層191は、入射部19aの一部を構成する入射端面191aを有している。第2層192は、入射部19aの他の一部を構成する入射端面192aを有している。入射部19aには、図示しないレーザダイオードから出射されたレーザ光が入射され、このレーザ光はコア19内を伝播する。クラッド層18,20,21は、コア19の屈折率よりも小さい屈折率を有する誘電体材料によって形成されている。コア19の材料としては、例えば、Ta等の酸化タンタルまたはSiONが用いられる。コア19の材料として酸化タンタルが用いられる場合には、クラッド層18,20,21の材料としては、例えばSiOまたはSiONが用いられる。コア19の材料としてSiONが用いられる場合には、クラッド層18,20,21の材料としては、例えばSiOが用いられる。
【0035】
図1に示したように、クラッド層21は、上面21aと、コア19の上面19cの上方に配置された溝部21bとを有している。溝部21bの媒体対向面40に平行な断面の形状はV字形状である。溝部21bは、所定の角度で交わる2つの壁面21b1,21b2を有している。溝部21bの下端部は、コア19の上面19cに対して、所定の間隔をもって対向して、媒体対向面40に垂直な方向(Y方向)に延びている。ここで、図1に示したように、2つの壁面21b1,21b2がなす角度を記号θ1で表す。角度θ1は、例えば50°〜120°の範囲内であることが好ましい。また、2つの壁面21b1,21b2の各々がクラッド層21の上面21aに対してなす角度を傾斜角度と呼び、記号θ2で表す。傾斜角度θ2は、例えば30°〜65°の範囲内であることが好ましい。なお、後で、傾斜角度θ2を30°〜65°の範囲内にする理由について詳しく説明する。また、溝部21bの深さ(Z方向の寸法)を記号Hで表す。深さHは、例えば0.05〜0.3μmの範囲内である。
【0036】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、媒体対向面40の近傍において、コア19の上面19cの上方に配置されたプラズモンジェネレータ22と、コア19との間にプラズモンジェネレータ22を挟む位置に配置された磁性材料よりなる主磁極23とを備えている。プラズモンジェネレータ22の少なくとも一部は、クラッド層21の溝部21b内に収容されている。プラズモンジェネレータ22は、金属によって形成されている。具体的には、プラズモンジェネレータ22は、例えば、Au、Ag、Al、Cu、Pd、Pt、Rh、Irのいずれか、またはこれらのうちの複数の元素よりなる合金によって形成されている。なお、プラズモンジェネレータ22および主磁極23の形状については、後で詳しく説明する。
【0037】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、媒体対向面40から離れた位置においてクラッド層18,20,21に埋め込まれた2つの連結部17A,17Bを備えている。連結部17A,17Bは、磁性材料によって形成されている。連結部17A,17Bは、コア19のトラック幅方向(X方向)の両側において、コア19に対して間隔をあけて配置されている。図示しないが、連結部17A,17Bは、それぞれ、連結層15の上に配置された第1層と、この第1層の上に順に配置された第2層および第3層とを有している。
【0038】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、連結部17A,17Bの上に配置された磁性材料よりなる連結層24と、クラッド層21の上において主磁極23および連結層24の周囲に配置された絶縁層25とを備えている。絶縁層25は、例えばアルミナによって形成されている。主磁極23、連結層24および絶縁層25の上面は平坦化されている。
【0039】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、主磁極23の上に配置された磁性材料よりなる連結層26と、連結層24の上に配置された磁性材料よりなる連結層27とを備えている。
【0040】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、絶縁層25の上に配置された絶縁層28と、絶縁層28の上に配置された複数の第1のコイル要素30Aと、複数の第1のコイル要素30Aの周囲に配置された絶縁層31と、複数の第1のコイル要素30Aおよび絶縁層31を覆うように配置された絶縁層32と、連結層26,27および絶縁層31の周囲に配置された絶縁層33とを備えている。図4は、複数の第1のコイル要素30Aを示している。複数の第1のコイル要素30Aは、Y方向に並ぶように配置されている。各第1のコイル要素30Aは、トラック幅方向(X方向)に延びる主要部分を有している。各第1のコイル要素30Aは、銅等の導電材料によって形成されている。絶縁層28,31〜33は、例えばアルミナによって形成されている。
【0041】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、連結層26,27および絶縁層32の上に配置された磁性材料よりなるヨーク層34と、ヨーク層34の周囲に配置された絶縁層35とを備えている。ヨーク層34は、連結層26と連結層27を磁気的に連結している。絶縁層35は、例えばアルミナによって形成されている。ヨーク層34および絶縁層35の上面は平坦化されている。
【0042】
熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、ヨーク層34および絶縁層35の上に配置された絶縁層36と、絶縁層36の上に配置された複数の第2のコイル要素30Bおよびリード層30Cと、複数の第2のコイル要素30Bおよびリード層30Cを覆うように配置された保護層37とを備えている。絶縁層36と保護層37は、例えばアルミナによって形成されている。
【0043】
図5は、複数の第2のコイル要素30Bとリード層30Cを示している。複数の第2のコイル要素30Bは、Y方向に並ぶように配置されている。各第2のコイル要素30Bは、トラック幅方向(X方向)に延びる主要部分を有している。各第2のコイル要素30Bとリード層30Cは、銅等の導電材料によって形成されている。
【0044】
図4および図5に示したように、熱アシスト磁気記録ヘッドは、更に、複数の接続部38と1つの接続部39とを備えている。複数の接続部38は、ヨーク層34の周りにヘリカル状に巻かれたコイル30が形成されるように、複数の第1のコイル要素30Aと複数の第2のコイル要素30Bとを接続している。接続部39は、1つの第1のコイル要素30Aとリード層30Cを接続している。複数の接続部38と接続部39は、絶縁層32,35,36を貫通するように設けられている。複数の接続部38と接続部39は、銅等の導電材料によって形成されている。
【0045】
下部シールド層3からリターン磁極層10までの部分は、再生ヘッドを構成する。リターン磁極層10から複数の第2のコイル要素30Bまでの部分は、記録ヘッドを構成する。複数の第1のコイル要素30Aと複数の第2のコイル要素30Bと複数の接続部38とによって構成されたコイル30は、記録媒体に記録する情報に応じた磁界を発生する。シールド層12、リターン磁極層10、連結層13,15、連結部17A,17B、連結層24,27、ヨーク層34、連結層26および主磁極23は、コイル30が発生する磁界に対応した磁束を通過させる磁路を形成する。主磁極23は、コイル30によって発生された磁界に対応する磁束を通過させると共に、垂直磁気記録方式によって情報を記録媒体に記録するための記録磁界を発生する。
【0046】
以上説明したように、本実施の形態における熱アシスト磁気記録ヘッドは、記録媒体に対向する媒体対向面40と再生ヘッドと記録ヘッドとを備えている。再生ヘッドと記録ヘッドは、基板1の上に積層されている。記録ヘッドは、再生ヘッドに対して、記録媒体の進行方向(Z方向)の前側(トレーリング側)に配置されている。
【0047】
再生ヘッドは、再生素子としてのMR素子5と、媒体対向面40側の一部がMR素子5を挟んで対向するように配置された、MR素子5をシールドするための下部シールド層3および上部シールド層とを備えている。本実施の形態では、記録ヘッドのリターン磁極層10は、再生ヘッドの上部シールド層を兼ねている。再生ヘッドは、更に、MR素子5と下部シールド層3との間に配置された下部シールドギャップ膜4と、MR素子5とリターン磁極層10との間に配置された上部シールドギャップ膜6とを備えている。
【0048】
記録ヘッドは、コイル30と、主磁極23と、導波路と、プラズモンジェネレータ22とを備えている。導波路は、コア19とクラッドとを有している。クラッドは、クラッド層18,20,21を含んでいる。コイル30は、記録媒体に記録する情報に応じた磁界を発生する。主磁極23は、コイル30によって発生された磁界に対応する磁束を通過させると共に、垂直磁気記録方式によって情報を記録媒体に記録するための記録磁界を発生する。
【0049】
本実施の形態に係る近接場光発生器は、コア19とクラッドとを有する導波路と、プラズモンジェネレータ22とを備えている。コア19は、上面19cを有し、図示しないレーザダイオードから出射されたレーザ光を伝播させる。クラッドは、コア19の上面19cの上方に配置された溝部21bを有するクラッド層21を含んでいる。溝部21bは、所定の角度θ1で交わる2つの壁面21b1,21b2を有している。プラズモンジェネレータ22の少なくとも一部は、溝部21b内に配置されている。
【0050】
次に、図1を参照して、プラズモンジェネレータ22および主磁極23の形状の一例について詳しく説明する。図1に示した例では、プラズモンジェネレータ22は、クラッド層21の溝部21bの2つの壁面21b1,21b2に対向する2つの斜面22a,22bと、2つの斜面22a,22bが交わることによって形成されたエッジ部22eと、エッジ部22eの一端に位置し、近接場光を発生する近接場光発生部22gとを有している。エッジ部22eは、コア19の上面19cに対して、所定の間隔をもって対向して、媒体対向面40に垂直な方向(Y方向)に延びている。近接場光発生部22gは、媒体対向面40に配置されている。2つの斜面22a,22bがなす角度は、溝部21bの2つの壁面21b1,21b2がなす角度θ1と等しい。
【0051】
また、プラズモンジェネレータ22は、斜面22aを含む側壁部221Aと、斜面22bを含む側壁部221Bと、それぞれ側壁部221A,221Bの上端に連結された拡張部分222A,222Bとを有している。側壁部221A,221Aおよび拡張部分222A,222Bは、それぞれ板状の形状を有している。側壁部221Aは、溝部21bの壁面21b1に沿って配置されている。側壁部221Bは、溝部21bの壁面21b2に沿って配置されている。拡張部分222A,222Bは、クラッド層21の上面21aに沿って配置されている。拡張部分222Aは、側壁部221Aの上端から、側壁部221A,221Bの両方から離れる方向に拡張している。拡張部分222Bは、側壁部221Bの上端から、側壁部221A,221Bの両方から離れる方向に拡張している。
【0052】
主磁極23は、プラズモンジェネレータ22の2つの側壁部221A,221Bによって形成された空間内に収容された第1の部分231と、第1の部分231よりもコア19から遠い位置に配置された第2の部分232とを有している。図1では、第1の部分231と第2の部分232との境界を二点鎖線で示している。
【0053】
なお、プラズモンジェネレータ22および主磁極23の形状および配置は、図1を参照して説明した上記の例に限られない。
【0054】
次に、本実施の形態における近接場光発生の原理と、近接場光を用いた熱アシスト磁気記録の原理について詳しく説明する。図示しないレーザダイオードから出射されたレーザ光はコア19の入射部19aに入射される。図2に示したように、レーザ光50は、コア19内を媒体対向面40に向けて伝播して、プラズモンジェネレータ22の近傍に達する。ここで、コア19の上面19cにおいて、レーザ光50が全反射することによって、上面19cから、クラッド層21内にしみ出すエバネッセント光が発生する。そして、プラズモンジェネレータ22の少なくともエッジ部22eにおいて、上記エバネッセント光と結合することによって、表面プラズモンが励起される。
【0055】
プラズモンジェネレータ22に励起された表面プラズモンは、エッジ部22eに沿って近接場光発生部22gに伝播される。その結果、近接場光発生部22gにおいて表面プラズモンが集中し、この表面プラズモンに基づいて、近接場光発生部22gから近接場光が発生する。この近接場光は、記録媒体に向けて照射され、記録媒体の表面に達し、記録媒体の磁気記録層の一部を加熱する。これにより、その磁気記録層の一部の保磁力が低下する。熱アシスト磁気記録では、このようにして保磁力が低下した磁気記録層の一部に対して、主磁極23より発生される記録磁界を印加することによってデータの記録が行われる。
【0056】
次に、図2および図3を参照して、本実施の形態における熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法について説明する。本実施の形態における熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法は、複数の熱アシスト磁気記録ヘッドの基板1となる部分を含む基板上に、複数の熱アシスト磁気記録ヘッドの基板1以外の構成要素を形成して、それぞれ後に熱アシスト磁気記録ヘッドとなるヘッド予定部が複数列に配列された基礎構造物を作製する工程と、この基礎構造物を切断することによって複数のヘッド予定部を互いに分離して、複数の熱アシスト磁気記録ヘッドを形成する工程とを備えている。複数の熱アシスト磁気記録ヘッドを形成する工程では、切断によって形成された面を研磨して媒体対向面40を形成する。
【0057】
以下、1つの熱アシスト磁気記録ヘッドに注目して、本実施の形態における熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法を更に詳しく説明する。本実施の形態における熱アシスト磁気記録ヘッドの製造方法では、まず、基板1の上に絶縁層2を形成する。次に、絶縁層2の上に下部シールド層3を形成する。次に、下部シールド層3の上に下部シールドギャップ膜4を形成する。次に、下部シールドギャップ膜4の上にMR素子5と、MR素子5に接続される図示しない2つのリードとを形成する。次に、MR素子5およびリードを覆うように上部シールドギャップ膜6を形成する。
【0058】
次に、上部シールドギャップ膜6の上にリターン磁極層10を形成する。次に、リターン磁極層10を覆うように図示しない絶縁層を形成する。次に、例えば化学機械研磨(以下、CMPと記す。)によって、リターン磁極層10が露出するまで図示しない絶縁層を研磨する。次に、リターン磁極層10の上面の一部の上に絶縁層11を形成する。
【0059】
次に、リターン磁極層10の上にシールド層12と連結層13を形成する。次に、シールド層12および連結層13を覆うように絶縁層14を形成する。次に、例えばCMPによって、シールド層12および連結層13が露出するまで絶縁層14を研磨する。
【0060】
次に、連結層13の上に連結層15を形成する。次に、連結層15を覆うように絶縁層16を形成する。次に、例えばCMPによって、連結層15が露出するまで絶縁層16を研磨して、連結層15および絶縁層16の上面を平坦化する。
【0061】
次に、連結層15の上に、連結部17A,17Bのそれぞれの第1層を形成する。次に、連結部17A,17Bのそれぞれの第1層を覆うようにクラッド層18を形成する。次に、例えばCMPによって、連結部17A,17Bのそれぞれの第1層が露出するまでクラッド層18を研磨する。
【0062】
次に、クラッド層18の上にコア19を形成する。また、連結部17A,17Bのそれぞれの第1層の上に、連結部17A,17Bのそれぞれの第2層を形成する。次に、コア19および連結部17A,17Bのそれぞれの第2層を覆うようにクラッド層20を形成する。次に、例えばCMPによって、コア19および連結部17A,17Bのそれぞれの第2層が露出するまでクラッド層20を研磨する。
【0063】
次に、連結部17A,17Bのそれぞれの第2層の上に、連結部17A,17Bのそれぞれの第3層を形成する。次に、クラッド層21、プラズモンジェネレータ22および主磁極23を順に形成する。プラズモンジェネレータ22は、例えばスパッタ法によって金属膜を形成し、この金属膜をパターニングすることによって形成される。主磁極23は、例えばめっき法によって形成される。クラッド層21を形成する工程については、後で詳しく説明する。
【0064】
次に、連結部17A,17Bのそれぞれの第3層の上に連結層24を形成する。次に、主磁極23および連結層24を覆うように絶縁層25を形成する。次に、例えばCMPによって、主磁極23および連結層24が露出するまで絶縁層25を研磨する。
【0065】
次に、主磁極23、連結層24および絶縁層25の上に絶縁層28を形成する。次に、絶縁層28の上に複数の第1のコイル要素30Aを形成する。次に、第1のコイル要素30Aの周囲に絶縁層31を形成する。次に、複数の第1のコイル要素30Aおよび絶縁層31を覆うように絶縁層32を形成する。次に、絶縁層28,31,32を選択的にエッチングして、絶縁層28,31,32に、主磁極23の上面を露出させる開口部と、連結層24の上面を露出させる開口部を形成する。次に、主磁極23の上に連結層26を形成し、連結層24の上に連結層27を形成する。次に、連結層26,27を覆うように絶縁層33を形成する。次に、例えばCMPによって、連結層26,27が露出するまで絶縁層33を研磨する。
【0066】
次に、絶縁層32を選択的にエッチングして、絶縁層32に、接続部38,39の一部を通すための複数の開口部を形成する。次に、複数の開口部を通って複数の第1のコイル要素30Aに接続されるように接続部38,39を形成する。また、連結層26,27および絶縁層32の上にヨーク層34を形成する。次に、ヨーク層34および接続部38,39を覆うように絶縁層35を形成する。次に、例えばCMPによって、ヨーク層34および接続部38,39が露出するまで絶縁層35を研磨する。次に、ヨーク層34、絶縁層35および接続部38,39の上に絶縁層36を形成する。
【0067】
次に、絶縁層36を選択的にエッチングして、絶縁層36に、接続部38,39の上面を露出させる複数の開口部を形成する。次に、絶縁層36および接続部38,39の上に、複数の第2のコイル要素30Bとリード層30Cを形成する。次に、複数の第2のコイル要素30Bおよびリード層30Cを覆うように保護層37を形成する。次に、保護層37の上面に配線や端子等を形成する。
【0068】
このようにして、基礎構造物が完成したら、この基礎構造物を切断することによって複数のヘッド予定部を互いに分離し、媒体対向面40の研磨、浮上用レールの作製等を行って、熱アシスト磁気記録ヘッドが完成する。
【0069】
次に、本実施の形態に係る近接場光発生器の製造方法について説明する。本実施の形態に係る近接場光発生器の製造方法は、コア19を形成する工程と、クラッドを形成する工程と、プラズモンジェネレータ22を形成する工程とを備えている。クラッドを形成する工程は、クラッド層18を形成する工程と、クラッド層20を形成する工程と、クラッド層21を形成する工程とを含んでいる。
【0070】
以下、図6ないし図10を参照して、クラッド層21を形成する工程について詳しく説明する。本実施の形態では、クラッド層21は、SiOまたはSiONによって構成されている。以下の説明は、本実施の形態に係るテーパエッチング方法の説明を含んでいる。図6ないし図10は、近接場光発生器の製造方法における積層体の、媒体対向面40が形成される予定の位置における断面を示している。
【0071】
図6は、連結部17A,17Bのそれぞれの第3層を形成した後の工程を示している。この工程では、まず、SiOまたはSiONよりなる被エッチング層21Pを形成する。被エッチング層21Pは、コア19の上面19c、クラッド層20の上面、および連結部17A,17Bのそれぞれの第3層を覆うように、SiOまたはSiONよりなる誘電体層を形成し、例えばCMPによって、連結部17A,17Bのそれぞれの第3層が露出するまで誘電体層を研磨することによって形成される。被エッチング層21Pは、後に媒体対向面40に平行な断面における形状がV字形状の溝部21bが形成されることによりクラッド層21となるものであり、上面21Paを有している。次に、被エッチング層21Pの上面21Pa上に、Ruよりなるストッパ膜51を形成する。なお、Ruの代りに、磁性材料、Ni、NiCr、C、MgF、MgOのいずれかを用いてもよい。
【0072】
図7は、次の工程を示す。この工程では、まず、ストッパ膜51の上面上に、エッチングマスク材料層52Pを形成する。エッチングマスク材料層52Pは、Al元素を含む材料によって構成されている。エッチングマスク材料層52Pを構成する材料は、例えば、Alを含む合金、アルミナ(Al23)、窒化アルミニウム(AlN)、フッ化アルミニウム(AlF)のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。エッチングマスク材料層52Pがアルミナによって構成されている場合、エッチングマスク材料層52Pの厚みが例えば0.05〜0.3μmの範囲内になるように、エッチングマスク材料層52Pを形成する。
【0073】
次に、エッチングマスク材料層52Pの上面上に、後に形成される溝部21bの平面形状に対応した形状の開口部53aを有するフォトレジストマスク53を形成する。フォトレジストマスク53は、フォトリソグラフィによってフォトレジスト層をパターニングして形成する。
【0074】
図8は、次の工程を示す。この工程では、フォトレジストマスク53をエッチングマスクとして用いて、例えば反応性イオンエッチング(以下、RIEと記す。)によって、エッチングマスク材料層52Pのうち開口部53aから露出する部分をエッチングする。これにより、エッチングマスク材料層52Pに、後に形成される溝部21bの平面形状に対応した形状の開口部52aが形成されて、エッチングマスク材料層52Pはエッチングマスク52となる。
【0075】
エッチングマスク材料層52Pがアルミナによって構成されている場合には、エッチングマスク材料層52PをRIEによってエッチングする際のエッチングガスとしては、例えば、ClおよびBClを含むガスが用いられる。ストッパ膜51は、エッチングマスク材料層52PをRIEによってエッチングする際にエッチングを停止させるエッチングストッパとして機能する。
【0076】
開口部52aの最小幅(クリティカルディメンジョン)は、X方向の幅であり、これは例えば0.15〜0.5μmの範囲内である。エッチングマスク材料層52Pがアルミナによって構成されている場合、エッチングマスク材料層52Pが厚くなると、開口部52aの最小幅を制御しにくくなる。そのため、エッチングマスク材料層52Pの厚みは0.3μm以下であることが好ましい。ただし、エッチングマスク材料層52Pの厚みは、必ずしも0.3μm以下である必要はない。
【0077】
エッチングマスク材料層52Pがアルミナによって構成され、その厚みが0.1μm以下である場合には、イオンビームエッチング(以下、IBEと記す。)によって、エッチングマスク材料層52Pをエッチングして開口部52aを形成してもよい。
【0078】
図9は、次の工程を示す。この工程では、まず、エッチングマスク52およびフォトレジストマスク53をエッチングマスクとして用いて、例えばIBEまたはRIEによって、ストッパ膜51のうち開口部52a,53aから露出する部分をエッチングして除去する。次に、ウェットエッチングまたはアッシングによって、フォトレジストマスク53を除去する。ストッパ膜51がRuによって構成されている場合には、ストッパ膜51をRIEによってエッチングする際のエッチングガスとしては、例えば、OおよびClを含むガスが用いられる。エッチングマスク材料層52Pがアルミナによって構成され、その厚みが0.1μm以下である場合には、IBEによって、エッチングマスク材料層52Pをエッチングするのと同時に、ストッパ膜51をエッチングしてもよい。
【0079】
図10は、次の工程を示す。この工程では、まず、被エッチング層21Pがクラッド層21になるように、被エッチング層21Pに溝部21bを形成する。この溝部21bを形成する工程では、エッチングマスク52をエッチングマスクとして用いて、RIEによって、被エッチング層21Pのうち開口部52aから露出する部分をテーパエッチングする。次に、ストッパ膜51およびエッチングマスク52を除去する。
【0080】
RIEによって被エッチング層21Pをテーパエッチングする工程では、エッチングガスとして、被エッチング層21Pのエッチングに寄与する主成分ガスとNとを含むエッチングガスを用いる。主成分ガスは、ClおよびBClを含んでいてもよい。Nは、被エッチング層21Pのエッチング中に、エッチングによって形成される溝の側壁に側壁保護膜を形成するためのガスである。側壁保護膜は、以下のようにして形成される。エッチングマスク52の一部は、被エッチング層21Pと共にエッチングされる。前述のように、エッチングマスク52は、Al元素を含む材料によって構成されている。そのため、被エッチング層21Pのエッチング中に、エッチングマスク52中のAl元素と、エッチングガス中のNとによって、反応生成物AlNが生成される。この反応生成物AlNは、被エッチング層21Pに形成された溝の壁面に付着して側壁保護膜を形成する。この側壁保護膜が形成されることにより、被エッチング層21Pがテーパエッチングされる。
【0081】
RIEによって被エッチング層21Pをテーパエッチングする工程では、溝部21bの2つの壁面21b1,21b2の各々は、被エッチング層21Pの上面21Pa(クラッド層21の上面21a)に対して、傾斜角度θ2で傾くように形成される。これにより、所定の角度θ1で交わる2つの壁面21b1,21b2を有し、媒体対向面40に平行な断面における形状がV字形状の溝部21bが形成される。この溝部21bは、コア19の上面19cに達しないように形成される。溝部21bが形成されることにより、被エッチング層21Pはクラッド層21となる。
【0082】
傾斜角度θ2は、側壁保護膜の堆積速度とエッチング速度との比に依存する。この速度比は、例えば、エッチングガスにおける全流量に対するNの流量の割合を変化させることによって制御することができる。このようにして速度比を制御することによって、角度θ1および傾斜角度θ2を制御することができる。例えば、図10に示した例において、角度θ1を90°とし、傾斜角度θ2を45°とする場合には、エッチングガスにおいて、全流量に対するNの流量の割合を10〜20%とする。
【0083】
以上説明したように、本実施の形態に係る近接場光発生器の製造方法におけるクラッド層21を形成する工程、ならびに本実施の形態に係るテーパエッチング方法は、SiOまたはSiONよりなり上面21Paを有する被エッチング層21Pを形成する工程と、被エッチング層21Pの上面21Paの上に、開口部52aを有するエッチングマスク52を形成する工程と、被エッチング層21Pに溝部21bが形成されて被エッチング層21Pがクラッド層21になるように、RIEによって、被エッチング層21Pのうち開口部52aから露出する部分をテーパエッチングする工程とを含んでいる。エッチングマスク52は、Al元素を含む材料によって構成されている。被エッチング層21Pをテーパエッチングする工程は、被エッチング層21Pのエッチングに寄与する主成分ガスとNとを含むエッチングガスを用いる。
【0084】
本実施の形態によれば、被エッチング層21Pのエッチング中に、エッチングマスク52中のAl元素と、エッチングガス中のNとによって、反応生成物AlNが生成され、これが側壁保護膜を形成する。この側壁保護膜が形成されることにより、本実施の形態によれば、SiOまたはSiONよりなる被エッチング層21Pに対して、所定の角度θ1で交わる2つの壁面21b1,21b2を有する溝部21bを形成してクラッド層21を形成することが可能になる。特に、本実施の形態によれば、溝部21bの2つの壁面21b1,21b2の各々が被エッチング層21Pの上面21Paに対してなす傾斜角度θ2が30°〜65°の範囲内となり、その結果、θ1が50°〜120°の範囲内となるように、溝部21bを形成することが可能になる。
【0085】
ところで、プラズモンジェネレータ22の2つの斜面22a,22bがなす角度は、プラズモンジェネレータ22に励起される表面プラズモンの強度と、近接場光発生部22gより発生される近接場光のスポット径に影響を与える。プラズモンジェネレータ22に励起される表面プラズモンの強度をある程度大きくし、近接場光発生部22gより発生される近接場光のスポット径をある程度小さくするためには、2つの斜面22a,22bがなす角度は、50°〜120°の範囲内であることが好ましい。
【0086】
本実施の形態によれば、前述のように溝部21bを形成することが可能になることから、2つの斜面22a,22bがなす角度が50°〜120°の範囲内となるように、SiOまたはSiONよりなるクラッド層21の溝部21b内に、プラズモンジェネレータ22の側壁部221A,221Bを形成することが可能になる。これにより、SiOまたはSiONよりなるクラッド層21の溝部21b内にプラズモンジェネレータ22の側壁部221A,221Bが配置された構成の近接場光発生器であって、2つの斜面22a,22bがなす角度が所望の角度である50°〜120°の範囲内となる近接場光発生器を実現することが可能になる。
【0087】
また、本実施の形態では、例えばエッチングガスにおける全流量に対するNの流量の割合を変化させて、側壁保護膜の堆積速度とエッチング速度との比を制御することによって、角度θ1,θ2を制御することができる。これにより、本実施の形態によれば、プラズモンジェネレータ22の2つの斜面22a,22bがなす角度を制御することが可能になる。
【0088】
次に、比較例のエッチング方法と比較しながら、本実施の形態の効果について更に詳しく説明する。始めに、図11ないし図13を参照して、比較例のエッチング方法について説明する。図11ないし図13は、比較例のエッチング方法における積層体を示している。図11ないし図13は、それぞれ、積層体における媒体対向面40が形成される予定の位置における断面を表している。
【0089】
図11は、被エッチング層21Pを形成した後の工程を示している。比較例のエッチング方法では、被エッチング層21Pの上面21Pa上に、開口部54aを有するフォトレジストマスク54を形成する。フォトレジストマスク54は、フォトリソグラフィによってフォトレジスト層をパターニングして形成する。
【0090】
比較例のエッチング方法では、次に、フォトレジストマスク54をエッチングマスクとして用いて、RIEによって、被エッチング層21Pをエッチングする。この工程を比較例のエッチング工程と呼ぶ。図12は比較例のエッチング工程の第1の例を示し、図13は比較例のエッチング工程の第2の例を示している。
【0091】
比較例のエッチング工程では、エッチングガスとして、被エッチング層21Pのエッチングガスに寄与する主成分ガスとNとを含むエッチングガスを用いる。主成分ガスとしては、O、Cx1y1、Cx2HFy2およびCOx3(x1,y1,x2,y2,x3は自然数)を含むガスを用いる。Nは、側壁保護膜の形成を促進するガスである。
【0092】
従来の、フォトレジストによって形成されたエッチングマスクを用いたRIEでは、エッチングガス中のNは、サイドエッチングを抑制するために用いられている。比較例のエッチング方法においても同様である。この場合、比較例のエッチング工程では、図12に示したように、側壁が被エッチング層21Pの上面21Paに対してなす傾斜角度θ3が90°に近く(例えば80°)、底を有する溝が形成される。
【0093】
一方、比較例のエッチング工程において、側壁保護膜の堆積速度がより大きくなるエッチング条件を選択すると、図13に示したように、十分な深さの溝が形成される前に、被エッチング層21Pのエッチングが停止する。
【0094】
このように、比較例のエッチング工程では、媒体対向面40に平行な断面における形状がV字形状の溝部21bが形成されるように、SiOまたはSiONよりなる被エッチング層21Pをテーパエッチングすることはできない。
【0095】
これに対し、本実施の形態では、Al元素を含む材料によって構成されたエッチングマスク52と、主成分ガスとNとを含むエッチングガスを用いて、被エッチング層21Pをエッチングする。これにより、本実施の形態によれば、被エッチング層21Pのエッチング中に、適度の堆積速度を有する反応生成物AlNを生成させて、これにより側壁保護膜を形成することができる。その結果、本実施の形態によれば、媒体対向面40に平行な断面における形状がV字形状の溝部21bを容易に形成することが可能になる。
【0096】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、本発明のテーパエッチング方法は、本発明の近接場光発生器の製造方法のように、クラッド層21に、プラズモンジェネレータ22の少なくとも一部を収容するための溝部21bを形成する場合に限らず、SiOまたはSiONよりなる被エッチング層をテーパエッチングする場合の全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0097】
19…コア、21…クラッド層、21P…被エッチング層、22…プラズモンジェネレータ、52…エッチングマスク、52a…開口部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiOまたはSiONよりなり上面を有する被エッチング層をテーパエッチングする方法であって、
前記被エッチング層の前記上面の上に、開口部を有するエッチングマスクを形成する工程と、
前記被エッチング層に、所定の角度で交わる2つの壁面を有する溝部が形成されるように、反応性イオンエッチングによって、前記被エッチング層のうち前記開口部から露出する部分をテーパエッチングする工程とを備え、
前記エッチングマスクは、Al元素を含む材料によって構成され、
前記テーパエッチングする工程は、前記被エッチング層のエッチングに寄与する主成分ガスとNとを含むエッチングガスを用いることを特徴とするテーパエッチング方法。
【請求項2】
前記エッチングマスクを構成する材料は、Alを含む合金、Al23、AlN、AlFのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1記載のテーパエッチング方法。
【請求項3】
前記主成分ガスは、ClおよびBClを含むことを特徴とする請求項1記載のテーパエッチング方法。
【請求項4】
前記エッチングガスにおいて、全流量に対するNの流量の割合は10〜20%であることを特徴とする請求項1記載のテーパエッチング方法。
【請求項5】
前記2つの壁面の各々が前記被エッチング層の前記上面に対してなす角度は、30°〜65°の範囲内であることを特徴とする請求項1記載のテーパエッチング方法。
【請求項6】
前記開口部の最小幅は、0.15〜0.5μmの範囲内であることを特徴とする請求項1記載のテーパエッチング方法。
【請求項7】
導波路と、プラズモンジェネレータとを備え、
前記導波路は、光を伝播させるコアと、前記コアの周囲に配置されたクラッドとを有し、
前記コアは、上面を有し、
前記クラッドは、前記コアの上面の上方に配置された溝部を有するクラッド層を含み、
前記溝部は、所定の角度で交わる2つの壁面を有し、
前記プラズモンジェネレータは、前記2つの壁面に対向する2つの斜面と、前記2つの斜面が交わることによって形成されたエッジ部と、前記エッジ部の一端に位置し、近接場光を発生する近接場光発生部とを有し、
前記コアを伝播する前記光が前記コアの上面において全反射することによって、前記コアの上面からエバネッセント光が発生し、
前記エッジ部において、前記エバネッセント光と結合することによって表面プラズモンが励起され、この表面プラズモンが前記エッジ部に沿って前記近接場光発生部に伝播され、この表面プラズモンに基づいて前記近接場光発生部より前記近接場光が発生される近接場光発生器を製造する方法であって、
前記コアを形成する工程と、
前記クラッドを形成する工程と、
前記プラズモンジェネレータを形成する工程とを備え、
前記クラッドを形成する工程は、
SiOまたはSiONよりなり上面を有する被エッチング層を形成する工程と、
前記被エッチング層の前記上面の上に、開口部を有するエッチングマスクを形成する工程と、
前記被エッチング層に前記溝部が形成されて前記被エッチング層が前記クラッド層になるように、反応性イオンエッチングによって、前記被エッチング層のうち前記開口部から露出する部分をテーパエッチングする工程とを含み、
前記エッチングマスクは、Al元素を含む材料によって構成され、
前記テーパエッチングする工程は、前記被エッチング層のエッチングに寄与する主成分ガスとNとを含むエッチングガスを用いることを特徴とする近接場光発生器の製造方法。
【請求項8】
前記エッチングマスクを構成する材料は、Alを含む合金、Al23、AlN、AlFのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項7記載の近接場光発生器の製造方法。
【請求項9】
前記主成分ガスは、ClおよびBClを含むことを特徴とする請求項7記載の近接場光発生器の製造方法。
【請求項10】
前記エッチングガスにおいて、全流量に対するNの流量の割合は10〜20%であることを特徴とする請求項7記載の近接場光発生器の製造方法。
【請求項11】
前記2つの壁面の各々が前記被エッチング層の前記上面に対してなす角度は、30°〜65°の範囲内であることを特徴とする請求項7記載の近接場光発生器の製造方法。
【請求項12】
前記開口部の最小幅は、0.15〜0.5μmの範囲内であることを特徴とする請求項7記載の近接場光発生器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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