説明

テーピング包装体

【課題】トップテープをキャリアテープから剥離する際の紙繊維のケバ立ちを抑制することができ、かつこのケバ立ちによる電子部品の実装吸着ミスも低減させることができるテーピング包装体を提供する。
【解決手段】複数の収納部13を有するキャリアテープ11と、このキャリアテープ11に接着部16を介して固定され、かつ前記複数の収納部13を覆うトップテープ15とを備え、前記キャリアテープ11の少なくとも接着部16を含む領域にローレット加工を施した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に微小サイズの電子部品を確実に包装し、かつ確実に取り出せるようにしたテーピング包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下、従来のテーピング包装体について、図面を参照しながら説明する。
【0003】
図7(a)は従来のテーピング包装体の平面図、図7(b)は図7(a)のA−A線断面図である。
【0004】
図7(a)(b)において、1はキャリアテープで、このキャリアテープ1には、ほぼ等間隔で送り孔2が設けられている。3はキャリアテープ1にほぼ等間隔で設けられた貫通孔で、この貫通孔3を塞ぐように粘着性を有するボトムテープ4が設けられており、かつこのボトムテープ4はキャリアテープ1に貼り付けられている。また、前記貫通孔3には電子部品(図示せず)が収納されるが、ボトムテープ4の粘着層は加熱後冷却することによって粘着性が失われるため、電子部品(図示せず)を貫通孔3に収納しても電子部品(図示せず)がボトムテープ4に貼り付くことはないものである。5はキャリアテープ1のボトムテープ4が設けられた側とは反対側の面に設けられたトップテープで、このトップテープ5は接着部6を介してキャリアテープ1に貼り付けられている。
【0005】
上記のように、従来のテーピング包装体は、貫通孔3を有するキャリアテープ1の両面にボトムテープ4およびトップテープ5をそれぞれ貼り付けることによって構成していた。
【0006】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2005−324814号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した従来のテーピング包装体においては、図8に示すように、トップテープ5をキャリアテープ1から剥離する際に、キャリアテープ1の表面、特にトップテープ5の接着部6が位置していた近傍においてキャリアテープ1の紙繊維7がケバ立つように剥がれていき、そしてこのケバ立つように剥がれた紙繊維7は図9に示すように、電子部品(図示せず)が収納されている貫通孔3の一部に覆い被さるようになり、その結果、電子部品(図示せず)を実装機で吸着する際に、この紙繊維7に電子部品(図示せず)が引っかかって吸着ミスを発生させていた。
【0008】
また、上記した特許文献1には、キャリアテープ(テープ状本体)とトップテープ(カバーテープ)とを線状の接着部を介して接着するとともに、キャリアテープ表面において線状の接着部の長手方向両側にスリットを形成することにより、トップテープ剥離時のケバや粉塵の発生を抑制する技術が開示されている。
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている技術では、キャリアテープに形成されるスリットを横切るように伸びている紙繊維はスリットで切断されるものの、スリットを横切らずにキャリアテープの長さ方向とほぼ平行に伸びている紙繊維、特に接着部に存在する紙繊維は切断されないため、このように切断されずに残存する紙繊維が影響して、トップテープをキャリアテープから剥離する際の紙繊維のケバ立ちを十分に抑制することはできないものであった。また、0603や0402等の微小サイズの電子部品に適用するキャリアテープでは厚みが薄いため、キャリアテープの表面にスリットを形成すると、キャリアテープの強度が弱くなって、キャリアテープに亀裂が生じる等の不具合が発生し、物づくりが困難となるものであった。
【0010】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、トップテープをキャリアテープから剥離する際の紙繊維のケバ立ちを抑制することができ、かつこのケバ立ちによる電子部品の実装吸着ミスも低減させることができるテーピング包装体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有するものである。
【0012】
本発明の請求項1に記載の発明は、複数の収納部を有するキャリアテープと、このキャリアテープに接着部を介して固定され、かつ前記複数の収納部を覆うトップテープとを備え、前記キャリアテープの少なくとも接着部を含む領域にローレット加工を施したもので、この構成によれば、キャリアテープの少なくとも接着部を含む領域にローレット加工を施しているため、キャリアテープ表面の接着部およびその周辺の紙繊維は細かく切断加工されることになり、これにより、紙繊維がケバ立って電子部品の収納部に覆い被さるようなことが抑えられるため、紙繊維のケバ立ちによる電子部品の実装吸着ミスも低減して電子部品の実装性の安定化が図れるテーピング包装体を得ることができるという作用効果を有するものである。
【0013】
本発明の請求項2に記載の発明は、特に、キャリアテープのトップテープが接する側の面すべてにローレット加工を施したもので、この構成によれば、キャリアテープのトップテープが接する側の面すべての領域にローレット加工を施しているため、ローレット加工を施す領域の幅を厳しく制御する必要はなくなり、これにより、生産性の向上が図れ、また、キャリアテープ表面の接着部およびその周辺の紙繊維が細かく切断加工されることによって、紙繊維がケバ立って電子部品の収納部に覆い被さるようなことが抑えられるため、紙繊維のケバ立ちによる電子部品の実装吸着ミスも低減して電子部品の実装性の安定化が図れるテーピング包装体を得ることができるという作用効果を有するものである。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明のテーピング包装体は、複数の収納部を有するキャリアテープと、このキャリアテープに接着部を介して固定され、かつ前記複数の収納部を覆うトップテープとを備え、前記キャリアテープの少なくとも接着部を含む領域にローレット加工を施しているため、キャリアテープ表面の接着部およびその周辺の紙繊維は細かく切断加工されることになり、これにより、紙繊維がケバ立って電子部品の収納部に覆い被さるようなことが抑えられるため、紙繊維のケバ立ちによる電子部品の実装吸着ミスも低減して電子部品の実装性の安定化が図れるという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態におけるテーピング包装体について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1(a)は本発明の一実施の形態におけるテーピング包装体の平面図、図1(b)は図1(a)のB−B線断面図、図1(c)は他の例を示す図1(a)のB−B線断面図である。
【0017】
図1(a)〜(c)において、11はテープ状の紙等からなるキャリアテープで、このキャリアテープ11には長さ方向にほぼ一定間隔で複数の送り孔12を設けている。なお、この送り孔12は必ずしも貫通している必要はなく、キャリアテープ11の搬送が可能であれば、キャリアテープ11のいずれか一方の面に凹部を形成することによって設けてもよいものである。13はキャリアテープ11の長さ方向にほぼ一定間隔で設けられた複数の収納部で、この収納部13は、図1(b)に示すような貫通孔または図1(c)に示すような凹部からなるものである。
【0018】
14は貫通孔からなる収納部13を塞ぐようにキャリアテープ11の裏面に設けられた樹脂製のボトムテープで、このボトムテープ14は前記送り孔12を塞がないように形成されているものである。なお、このボトムテープ14はキャリアテープ11と対向する全面に粘着層を設けているもので、この粘着層は熱を加えると粘着性を有し、かつ冷却するとその粘着性は失われるものである。すなわち、キャリアテープ11の裏面にボトムテープ14を配置してボトムテープ14を介して圧力をかけながら熱を加えると、ボトムテープ14に設けられた粘着層は粘着性を有することになり、そしてその後強制冷却または自然冷却すると、ボトムテープ14はキャリアテープ11に貼り付いたままで粘着層の粘着性が失われるものである。また、このボトムテープ14は、収納部13が図1(c)に示すような凹部からなる場合には形成する必要はないものである。
【0019】
15は収納部13を塞ぐように接着部16を介してキャリアテープ11に貼り付けられたトップテープで、このトップテープ15は前記送り孔12を塞がないように形成されるものである。また、前記接着部16はトップテープ15の剥離方向と平行な方向に帯状に形成されているものである。
【0020】
図2(a)は本発明の一実施の形態におけるテーピング包装体のキャリアテープの表面加工状態を示す平面図、図2(b)(c)は図2(a)の要部拡大図、図3は同テーピング包装体におけるキャリアテープからトップテープを剥離する状態を示す斜視図である。
【0021】
図2(a)に示すように、本発明の一実施の形態におけるテーピング包装体は、収納部13を有するキャリアテープ11のうち、キャリアテープ11とトップテープ15の接着部16を含む領域にローレット加工17を施しているもので、このような構成にすれば、図2(b)に示すローレット加工17を施した領域の拡大図と図2(c)に示すローレット加工の未加工領域18の拡大図の比較からも明らかなように、ローレット加工17を施した領域において、紙繊維19が加工溝20の部分で細かく切断されているのがわかる。この場合、従来のテーピング包装体では、図8に示すようにトップテープ5を剥離する際にキャリアテープ1から紙繊維7がケバ立つように剥がれているため、収納部3内の電子部品(図示せず)を実装機で吸着する際に吸着ミスが発生していたが、本発明の一実施の形態におけるテーピング包装体では、図2(b)に示すように紙繊維19がローレット加工17により細かく切断されているため、図3に示すようにトップテープ15を剥離する際に、キャリアテープ11からケバ立ちが発生するということはほとんど見られず、これにより、収納部3内の電子部品(図示せず)を実装機で吸着する際の吸着ミスが発生する頻度も低減させることができるものである。
【0022】
図4(a)(b)は、トップテープ15をキャリアテープ11から剥離した後のキャリアテープ11の表面の紙繊維19のケバ立ちが、ローレット加工17における加工溝20の方向によって異なる様子を示したものである。例えば、図4(a)に示すように、トップテープ15を剥離する方向にローレット加工17の加工溝20をたどった時、加工溝20が収納部13から遠ざかる方向である場合は、キャリアテープ11の表面の紙繊維19がケバ立っても紙繊維19は収納部13から遠ざかる方向の力を受けるため、収納部13に覆い被さることはない。しかしながら、図4(b)に示すように、トップテープ15を剥離する方向にローレット加工17の加工溝20をたどった時、加工溝20が収納部13に近づく方向である場合は、キャリアテープ11の表面の紙繊維19がケバ立って収納部
13に近づく方向の力を受けるため、紙繊維19が収納部13に覆い被さるようになり、これにより、実装機で電子部品(図示せず)を吸着する際の吸着ミスが発生するものである。したがって、ローレット加工17を施す方向は、トップテープ15をキャリアテープ11から剥離する際に剥がれるキャリアテープ11の表面の紙繊維19が、電子部品(図示せず)の収納部13に覆い被さらないような方向とする必要があるが、より具体的には、図4(a)に示すように、トップテープ15を剥離する方向にローレット加工17の加工溝20をたどった時、加工溝20が収納部13から遠ざかる方向とするのが好ましい。
【0023】
なお、上記した図2(a)では、収納部13を有するキャリアテープ11のうち、キャリアテープ11とトップテープ15の接着部16を含む領域にローレット加工17を施した例について説明したが、この構成に限定されるものではなく、例えば図5に示すように、送り孔12の近傍も含めた領域にローレット加工17を施してもよく、また図6に示すように、キャリアテープ11のトップテープ15が接する側の面すべてにローレット加工17を施してもよく、このように図5、図6に示すような構成にした場合でも、キャリアテープ11の表面の紙繊維が細かく切断加工されるため、紙繊維のケバ立ちが抑えられることになり、これにより、紙繊維のケバ立ちによる電子部品(図示せず)の実装吸着ミスも低減させることができるため、電子部品(図示せず)の実装性が安定するテーピング包装体を得ることができるものである。特に、図6の構成においては、キャリアテープ11のトップテープ15が接する側の面すべてにローレット加工17を施しているため、ローレット加工17を施す領域の幅を厳しく制御する必要はなくなり、これにより、生産性の向上が図れるものである。
【0024】
なお、図6に示すように、キャリアテープ11のトップテープ15が接する側の面すべてにローレット加工17を施した場合、ローレット加工17を施した領域の加工溝20が平目で斜めに形成されている場合は、前述したように加工溝20の方向を電子部品(図示せず)の収納部13の中心線(図6の点線C−C)を境にしてそれぞれの表面において異なる方向とする、すなわち、加工溝20の方向はトップテープ15を剥離する方向にローレット加工17の加工溝20をたどった時、加工溝20が収納部13の中心線(図6の点線C−C)から遠ざかる方向とするのが好ましい。一方、加工溝20が平目ではなく綾目である場合には、加工溝20の方向を考慮する必要はないが、綾目ローレットは平目ローレットに比べて複雑な形状であるため、過度の加工によるキャリアテープ11の強度低下に留意する必要がある。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明に係るテーピング包装体は、トップテープをキャリアテープから剥離する際の紙繊維のケバ立ちを抑制することができ、かつこのケバ立ちによる電子部品の実装吸着ミスも低減させることができるという効果を有するものであり、特に微小なチップ形電子部品のテーピング包装体に適用することにより有用となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(a)本発明の一実施の形態におけるテーピング包装体の平面図、(b)図1(a)のB−B線断面図、(c)他の例を示す図1(a)のB−B線断面図
【図2】(a)同テーピング包装体のキャリアテープの表面加工状態を示す平面図、(b)図2(a)の要部拡大図、(c)図2(a)の要部拡大図
【図3】同テーピング包装体におけるキャリアテープからトップテープを剥離する状態を示す斜視図
【図4】(a)(b)同テーピング包装体におけるキャリアテープの表面のケバ立ちが、ローレット加工における加工溝の方向によって異なる様子を示す斜視図
【図5】同テーピング包装体のキャリアテープの表面加工状態を示す平面図
【図6】同テーピング包装体のキャリアテープの表面加工状態を示す平面図
【図7】(a)従来のテーピング包装体の平面図、(b)図7(a)のA−A線断面図
【図8】同テーピング包装体におけるキャリアテープからトップテープを剥離する状態を示す斜視図
【図9】図8の要部拡大斜視図
【符号の説明】
【0027】
11 キャリアテープ
13 収納部
15 トップテープ
16 接着部
17 ローレット加工

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の収納部を有するキャリアテープと、このキャリアテープに接着部を介して固定され、かつ前記複数の収納部を覆うトップテープとを備え、前記キャリアテープの少なくとも接着部を含む領域にローレット加工を施したテーピング包装体。
【請求項2】
キャリアテープのトップテープが接する側の面すべてにローレット加工を施した請求項1記載のテーピング包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−230609(P2007−230609A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−54542(P2006−54542)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】