説明

テープ印字装置

【課題】 テープカセットを装着せず押圧位置にして長期間保管した後でも、貼り付いてしまった印字ヘッドとプラテンを確実に引き離すことができるテープ印字装置を提供する。
【解決手段】 カセットカバー15にはその閉状態でローラホルダ19と当接して押圧位置Aに押圧する押圧カム部17、及び、閉状態から開状態に移行する過程でローラホルダ19に設けられた退避カム受け部32を押圧して退避位置Bに戻す退避カム部16を備えたことにより、カセットカバー15を開くとローラホルダ19に設けられた退避カム受け部32を退避カム部16が強制的に押圧するので、テープカセット8を装着せず押圧位置Aにして長期間保管した後でも、貼り付いてしまったサーマルヘッド13とプラテンローラ18を確実に引き離すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープ印字装置に関し、特にテープカセットを装着せずに保管したときに貼り付いてしまった印字ヘッドとプラテンローラの引き離しをカセットカバーでおこなって使いやすさを向上させたテープ印字装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、キーボード等の入力手段から文字等を入力して作成されたテキストをディスプレイ上に表示しつつ、長尺状の印字媒体である印字テープに印字可能なテープ印字装置が各種提案されている。かかるテープ印字装置では、一般に、印字テープをインクリボンや裏打ちテープとともにそれぞれスプールに巻回して所定形状のカセットに納めたテープカセットから、テープの供給を受けるようになっている。
【0003】
そして、テープ印字装置のテープカセット収納部分には、テープに印字する印字ヘッドとテープを送り駆動するプラテンとが設けられ、印字の際はプラテンにより印字テープを印字ヘッドに押圧しつつテキストを印字し、印字済みテープとして排出する。ここで、テープカセットを交換のために脱着する場合には、印字ヘッドとプラテンとによる印字テープの押圧を解除しなければならないので、印字ヘッド及びプラテンを印字テープ押圧位置から退避させなければならない。このため、印字ヘッドとプラテンとの少なくとも一方が可動とされるとともに、これらの押圧位置と退避位置とを移動をさせる解除部材が備えられていた。また、テープカセット収納部分には、収納したテープカセットを覆うカセットカバーを備え、印字の際にはこれを閉じて外部からの異物の侵入等を防ぐようにしていた。
【0004】
上述の解除部材として特開平10−100494号公報には、カセットカバーに設けられカセットカバーを閉じたときにプラテンホルダ(プラテン)を押圧位置にする係合部とカセットカバーを開いたときにプラテンホルダ(プラテン)を退避位置にする弾性部材が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平10−100494号公報(段落0003乃至段落0006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した公報のテープ印字装置においては、テープカセットを装着せず押圧位置にして長期間保管したとき、印字ヘッドとプラテンが貼り付いてしまい弾性部材の反発力では退避位置に戻らないという問題がある。これを解決するために弾性部材の反発力を大きくするとプラテンの変形や、それぞれの部材の強度アップをしなければならないためにコストアップに繋がるという問題もある。
【0007】
以上のような状況に鑑み、本発明の目的は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、閉状態と開状態とが切換可能なカセットカバーに、閉状態ではホルダ部材を押圧位置に押圧する押圧カム部と、開状態に移行する過程ではホルダ部材を退避位置に戻す退避カム部とを備えることによって、テープカセットを装着せず押圧位置にして長期間保管した後でも、貼り付いてしまった印字ヘッドとプラテンを確実に引き離すことができるテープ印字装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために請求項1に係るテープ印字装置は、印字用テープを内蔵したテープカセットを着脱可能に保持するカセット保持部と、印字用テープに印字を施す印字ヘッドと、印字ヘッドに印字用テープを圧接するプラテンローラと、前記プラテンローラと前記印字ヘッドとのいずれか一方を保持すると共に、プラテンローラと印字ヘッドとが相互に押圧される押圧位置と相互に離間される退避位置との間で移動可能なホルダ部材と、前記カセット保持部に保持したテープカセットを覆う開閉可能なカセットカバーと、を備えたものを対象として、特に、前記カセットカバーには、その閉状態で前記ホルダ部材と当接してそのホルダ部材を前記押圧位置に押圧する押圧カム部、及び、閉状態から開状態に移行する過程で前記ホルダ部材に当接してそのホルダ部材を退避位置に戻す退避カム部を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に係るテープ印字装置は、請求項1に記載のテープ印字装置において、前記押圧カム部と前記退避カム部は、前記カセットカバーと一体に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係るテープ印字装置では、特に、カセットカバーには、その閉状態でホルダ部材と当接してそのホルダ部材を押圧位置に押圧する押圧カム部、及び、閉状態から開状態に移行する過程でホルダ部材に当接してそのホルダ部材を退避位置に戻す退避カム部を備えたことにより、カセットカバーを開くとその退避カム部が強制的にホルダ部材を退避位置に戻すので、テープカセットを装着せず押圧位置にして長期間保管した後でも、貼り付いてしまった印字ヘッドとプラテンローラを確実に引き離すことができるという効果がある。
【0011】
また、請求項2に係るテープ印字装置では、押圧カム部と退避カム部は、カセットカバーと一体に形成されているので部品精度をだしやすいという効果がある。また、組立時の調整も必要なく、最少部品点数で実現できるので製造コストの削減に極めて大きな効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係るテープ印字装置について、本発明を具体化した第1実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。先ず、本実施形態に係るテープ印字装置の概略構成について図1乃至図4に基づいて説明する。図1は、テープ印字装置の外観を示す斜視図、図2は、テープ印字装置のカセットカバーを開けて背面から見た斜視図、図3は、カセットカバーを下から見た斜視図、図4は、テープカセットの内部構造と印刷部とを説明する図である。
【0013】
本第1実施形態のテープ印字装置1は、図1に示すように本体2の上面には、種々の文字入力等を行うキーボード3が設けられている。このキーボード3の上方に、電源スイッチ、印字キーやテープ印字装置1の各種制御を行う機能キー群4と、入力した文字や記号等を表示するための液晶ディスプレイ5が設けられている。そして、右上角には印刷された印字用テープ6をカットするためのカッターレバー7が設けられている。
【0014】
本体2の裏面には、図2に示すように、裏面後方(図2では手前)に印字用テープ6を所定形状のカセットケースに収納したテープカセット8を装着するカセット保持部9が形成され、そのカセット保持部9には、テープカセット8内の使用済みのインクリボン10を巻取るためのリボン巻取カム11と、印字済みの印字用テープ6を送り駆動するためのテープ送りローラカム12とが配置されている。カセット保持部9にはこの他、印字テープに印字するサーマルヘッド(印字ヘッドに相当)13が、テープカセット8が装着された際にその開口部14に位置するように配置されている。
【0015】
カセット保持部9は、開閉可能なカセットカバー15で覆われるものである。そして、カセットカバー15には、カセットカバー15から下方に延出された延出部15aに一体に形成された退避カム部16と延出部15aに取り付けられた押圧カム部17(図3参照)が備えられる。プラテンローラ18を保持すると共に、サーマルヘッド13にプラテンローラ18が押圧される押圧位置A(図4参照)とサーマルヘッド13からプラテンローラ18が離間される退避位置B(図4参照)との間で移動可能なローラホルダ(ホルダ部材に相当)19が備えられている。
【0016】
テープカセット8の内部の構造を、ラミネートテープのカセットを例にとって図4に示す。図4には、説明上、テープカセット8の内部構造と共にテープ印字装置1の印字機構の一部でありカセット保持部9内に設けられるサーマルヘッド13やローラホルダ19等も示されている。
【0017】
テープカセット8には、透明なフィルムからなる所定幅の印字用テープ6と、印字用テープ6に転写されるインクを表面に塗布されたインクリボン10と、印字がなされた印字用テープ6の裏面に貼り合わされる印字用テープ6と同一幅の両面テープ20とが、それぞれ回転自在に設置された供給スプールにロール状に巻回されて配置されている。そして、これらに挟まれる位置には、印字に供した後のインクリボン10を巻き取る使用済みリボン巻取スプール21が設けられている。更に、テープカセット8の内部には、その開口部14付近において、印字済みの印字用テープ6をテープカセット8の外部に排出すると共に、印字済みの印字用テープ6の裏面に両面テープ20を貼り合わせるためのテープ送りローラ22が内蔵されている。
【0018】
テープカセット8をテープ印字装置1のカセット保持部9に装着すると、カセット保持部9のリボン巻取カム11はテープカセット8の使用済みリボン巻取スプール21に、カセット保持部9のテープ送りローラカム12はテープカセット8のテープ送りローラ22に、それぞれ連結される。印字時には使用済みリボン巻取スプール21とテープカセット8のテープ送りローラ22とが回転駆動される。これにより、印字用テープ6とインクリボン10とがそれぞれの供給スプールから引き出され、重ね合わされてサーマルヘッド13に送られ、所定の印字がなされる。そして、使用済みのインクリボン10は印字がなされた印字用テープ6と離れて、使用済みリボン巻取スプール21に巻き取られる。一方、印字がなされた印字用テープ6には、供給された両面テープ20が貼り合わせられて、テープ送りローラ22により外部に排出される。
【0019】
次に、印字中に印字用テープ6をサーマルヘッド13に押圧する機構を説明する。前記のように、図2中カセット保持部9に配置されるサーマルヘッド13は、テープカセット8が装着された際にその開口部14に位置する。そして、印字用テープ6を挟んでサーマルヘッド13と対向する位置に、プラテンローラ18が配置されている。そして、テープカセット8のテープ送りローラ22と対向する位置に押圧ローラ23が配置されている。プラテンローラ18と押圧ローラ23とは、ローラホルダ19に回転可能に取り付けられており、そのローラホルダ19はホルダ軸24上に回動可能に取り付けられている。ローラホルダ19の回動により、プラテンローラ18と押圧ローラ23とは、サーマルヘッド13及びテープ送りローラ22に圧着する押圧位置A(実線)、或は、サーマルヘッド13及びテープ送りローラ22に圧着しない退避位置B(2点鎖線)のいずれかの位置に保持される。
【0020】
続いて、プラテンローラ18と押圧ローラ23との押圧及びその解除がカセット保持部9を覆うカセットカバー15の開閉で行われる仕組みについて、図2、図3、図5乃至図7を参照して説明する。図5は、印字機構を示す斜視図である。(A)は、全体図を示す斜視図、(B)は、(A)のローラホルダを反対側から見た斜視図、図6は、カセットカバー閉時の押圧・退避カム部とローラホルダの関係を示す図である。(A)は、押圧カム部が押圧カム受け部に当接し始めた図、(B)は、押圧カム部が押圧カム受け部に更に当接してプラテンローラとサーマルヘッドが当接する直前の図、(C)は、押圧カム部が押圧カム受け部に完全に当接してプラテンローラとサーマルヘッドが当接している図、図7は、サーマルヘッドとプラテンローラが付着した状態における、カセットカバー開時の押圧・退避カム部とローラホルダの関係を示す図である。(A)は、押圧カム部が押圧カム受け部に完全に当接してプラテンローラとサーマルヘッドが当接している図、(B)は、押圧カム部が引き上げられ、退避カム部と退避カム受け部が当接し始めプラテンローラとサーマルヘッドの当接が解除される直前の図、(C)は、退避カム部と退避カム受け部の当接が進みプラテンローラとサーマルヘッドの当接が解除された図である。
【0021】
図2、図3に示すカセットカバー15は、カセット保持部9を開閉可能に覆うものであって、蝶番部25、25によりテープ印字装置1の本体に取り付けられ、図3に示す蝶番部25、25を中心に回動してカセット保持部9を開閉する。カセットカバー15の先端には係合片26が設けられている。係合片26は、テープ印字装置1の本体側に設けられた係合部27と係合してカセットカバー15を閉状態に保持するものである。係合片26は弾力を有しているので、操作者が所定の操作をすれば係合が解除されカセットカバー15は開状態となる。
【0022】
カセットカバー15に覆われるカセット保持部9には、図5に示す印字機構28が配置されている。テープ印字装置1の印字機構28には、プラテンローラ18と押圧ローラ23とを保持するローラホルダ19が、テープ印字装置1に対して固定されたフレーム29に回動可能に取り付けられている。フレーム29には、ホルダ軸24が固定して設けられており、前記のようにローラホルダ19は、ホルダ軸24を中心に回動可能である。図5(A)の矢印Cのように動くと退避位置B(図4参照)となり、プラテンローラ18及び押圧ローラ23がサーマルヘッド13及びテープ送りローラ22(図4参照)から離間する。矢印Cの逆向きに動くと押圧位置A(図4参照)となり、プラテンローラ18及び押圧ローラ23が、テープカセット8(図4参照)の印字用テープ6を挟持しつつサーマルヘッド13及びテープ送りローラ22に圧着される。
【0023】
また、ローラホルダ19には、カセットカバー15が閉じられるときに、後述するカセットカバー15から延出された延出部15aに設けられた押圧カム部17が摺動可能に当接される押圧カム受け部30が形成されている。そして、フレーム29には、押圧カム部17が押圧カム受け部30を押圧しているときに、押圧カム部17の逃げを防止するための押圧補助フレーム31が立設されている。
【0024】
更に、ローラホルダ19には、退避カム受け部32が形成されており、カセットカバー15が開かれるときに、後述するカセットカバー15から延出された延出部15aと一体に形成された退避カム部16が摺動可能に当接される。また、フレーム29内には、ホルダ軸24にトグルバネ33が取り付けられており、ローラホルダ19を退避位置Bの方向へ付勢している。
【0025】
ここで、図6、図7に基づいて、カセットカバー15の開閉動作に対応するカセットカバー15の延出部15aに設けられた押圧カム部17とローラホルダ19の押圧カム受け部30、カセットカバー15から延出された延出部15aと一体に形成された退避カム部16とローラホルダ19の退避カム受け部32の動作を説明する。
【0026】
先ず、図6に基づいて、カセットカバー15が閉じられるときの動作を説明する。図6(A)に示すように、カセットカバー15が閉じられると、カセットカバー15から延出された延出部15aに設けられた押圧カム部17がローラホルダ19の押圧カム受け部30に当接する。そして、押圧カム部17は、トグルバネ33の付勢力によって退避位置B(図4参照)にあるローラホルダ19をその付勢力に抗してサーマルヘッド13側(図6において左側)に移動させる。このとき、図6(a)で示される退避カム部16と退避カム受け部32の関係は当接しない位置にある。
【0027】
次に、図6(B)では、カセットカバー15が更に閉じられており、カセットカバー15から延出された延出部15aに設けられた押圧カム部17がローラホルダ19の押圧カム受け部30に深く当接し、ローラホルダ19がサーマルヘッド13側に更に移動してサーマルヘッド13とプラテンローラ18が当接する寸前になっている。そして、このとき、図6(b)で示される退避カム部16と退避カム受け部32の関係は当接しないが左右の位置関係にある。
【0028】
そして、図6(C)に示すように、カセットカバー15が完全に閉じられたときは、カセットカバー15から延出された延出部15aに設けられた押圧カム部17の垂直部分とローラホルダ19の押圧カム受け部30の垂直部分とが当接し、サーマルヘッド13とプラテンローラ18が完全に当接され押圧位置A(図4参照)になっている。これは、テープカセット8が装着されていない状態であるが、装着されていれば、サーマルヘッド13とプラテンローラ18の間には印字用テープ6とインクリボン10が狭持されている。また、押圧カム部17の反対側の端部(図中右側)は、押圧カム部17がトグルバネ33の付勢力に抗してサーマルヘッド13にプラテンローラ18を押圧するので押圧補助フレーム31(図5(A)参照)によって変形を防止している。このとき、図6(c)で示される退避カム部16と退避カム受け部32の関係は当接しない上下の位置関係にある。この状態でテープカセット8が装着されていればテープ印字の操作が行われる。
【0029】
次に、図7に基づいて、カセットカバー15が開かれるときの動作を説明する。図7(A)は、図6(C)と同じ状態の図であり、この状態からカセットカバー15が開かれる。
【0030】
更に、図7(B)に示すように、カセットカバー15が開けられてカセットカバー15から延出された延出部15aに設けられた押圧カム部17の垂直部分とローラホルダ19の押圧カム受け部30の垂直部分との当接が終るとサーマルヘッド13とプラテンローラ18の離間が通常はトグルバネ33の付勢力によって始まる。しかしながら、テープカセット8が装着されずに長期間保管されているとサーマルヘッド13とプラテンローラ18がトグルバネ33の付勢力に抗して付着したままの状態になることがある。この状態の時には、図7(b)で示される退避カム部16が退避カム受け部32と当接してローラホルダ19をサーマルヘッド13と反対の方向(図中右側)に移動するように動作し始める。
【0031】
そして、図7(C)に示すように、カセットカバー15が更に開けられたときは、図7(c)で示されるように、退避カム部16と退避カム受け部32の当接が更に進んでローラホルダ19がサーマルヘッド13から遠ざかることによって、サーマルヘッド13からプラテンローラ18が完全に離隔される。この後は、トグルバネ33の付勢力によって退避位置Bに戻る。
【0032】
かかる印字機構28を備えるテープ印字装置1を使用する場合には、カセット保持部9にテープカセット8を装着する。そして、カセットカバー15を押圧して係合片26をテープ印字装置1の本体2に係合部27に係合させて閉状態とする。このとき、印字機構28は以下のように作用する。即ち、カセットカバー15が閉じられるのに伴い、カセットカバー15から延出された延出部15aに設けられた押圧カム部17によってローラホルダ19の押圧カム受け部30が押圧されて、矢印Cと逆向きに回動して、押圧位置Aとなる。従って、カセットカバー15を閉じると必ずローラホルダ19が押圧位置Aとなり、特段のセット操作をしないで印字可能な状態となるのである。
【0033】
そして、印字が行われテープカセット8を取り出す場合には、特段のリリース操作をすることなく、直接カセットカバー15の係合片26部分を押してカセットカバー15を開けばよい。カセットカバー15を開くことによってカセットカバー15から延出された延出部15aに設けられた押圧カム部17がローラホルダ19の押圧カム受け部30から外れてローラホルダ19の押圧が解除され、トグルバネ33の付勢力により、矢印Cの向きに移動して退避位置Bとなる。また、テープカセット8を装着せずに長期間保管されたとき、サーマルヘッド13とプラテンローラ18がトグルバネ33の付勢力に抗して付着したままの状態になることがあるが、カセットカバー15から延出された延出部15aと一体に形成された退避カム部16がローラホルダ19の退避カム受け部32と当接することによってローラホルダ19に支持されるプラテンローラ18をサーマルヘッド13から離隔する。従って、カセットカバー15を開けば直ちに、テープカセット8を取り出せたり装着できる状態となる。即ち、テープカセット8の装着時、取出時ともに、一動作で目的を達成できるものである。
【0034】
以上、詳細に説明した通り、第1実施形態に係るテープ印字装置1では、印字用テープ6を内蔵したテープカセット8を着脱可能に保持するカセット保持部9と、印字用テープ6に印字を施すサーマルヘッド13と、サーマルヘッド13に印字用テープ6を圧接するプラテンローラ18と、プラテンローラ18を保持すると共に、プラテンローラ18とサーマルヘッド13とが相互に押圧される押圧位置Aと相互に離間される退避位置Bとの間で移動可能なローラホルダ19と、カセット保持部9に保持したテープカセット8を覆う開閉可能なカセットカバー15を備え、カセットカバー15にはその閉状態でローラホルダ19と当接して押圧位置Aに押圧する押圧カム部17、及び、閉状態から開状態に移行する過程でローラホルダ19に設けられた退避カム受け部32を押圧して退避位置Bに戻す退避カム部16を備えたことにより、カセットカバー15を開くとローラホルダ19に設けられた退避カム受け部32を退避カム部16が強制的に押圧するので、テープカセット8を装着せず押圧位置Aにして長期間保管した後でも、貼り付いてしまったサーマルヘッド13とプラテンローラ18を確実に引き離すことができるという効果がある。
【0035】
また、第1実施形態に係るテープ印字装置1では、押圧カム部17を取り付けた延出部15aと退避カム部16は、カセットカバー15と一体に形成されているので部品精度をだしやすいという効果がある。また、組立時の調整も必要なく、最少部品点数で実現できるので製造コストの削減に大きな効果もある。
【0036】
次に、本発明に係る第2実施形態を説明する。第2実施形態に係るテープ印字装置は、第1実施形態に係るテープ印字装置1とほぼ同様であり、押圧カム部17の一部構成が異なっている。図3によれば、押圧カム部17は、第1実施形態ではカセットカバー15から延出された延出部15aに取り付けられていたが、第2実施形態ではカセットカバー15から延出された延出部15aに一体に形成されている。
係る第2実施形態によれば、押圧カム部17がカセットカバー15から延出された延出部15aに一体に形成されているので更に部品精度をだしやすいという効果がある。また、組立時の調整も必要なく、最少部品点数で実現できるので製造コストの削減に極めて大きな効果もある。
【0037】
尚、本発明は前記第1実施形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
【0038】
例えば、前記第1実施形態では、ローラホルダ19を退避位置Bに戻すとき、トグルバネ33を使用していたが、退避位置Bに戻る直前にフレーム29に凸部を設けてローラホルダ19が退避位置Bに戻ったときにラッチするようにし、更に、カセットカバー15から延出された延出部15aと一体に形成された退避カム部16のみで退避位置Bまで戻すようにすることによって、トグルバネ33を無くすことができるので製造コストの低減を図ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1実施形態のテープ印字装置の外観を示す斜視図である。
【図2】テープ印字装置のカセットカバーを開けて背面から見た斜視図である。
【図3】カセットカバーを下から見た斜視図である。
【図4】テープカセットの内部構造と印刷部とを説明する図である。
【図5】印字機構を示す斜視図である。(A)は、全体図を示す斜視図、(B)は、(A)のローラホルダを反対側から見た斜視図である。
【図6】カセットカバー閉時の押圧・退避カム部とローラホルダの関係を示す図である。(A)は、押圧カム部が押圧カム受け部に当接し始めた図、(B)は、押圧カム部が押圧カム受け部に更に当接してプラテンローラとサーマルヘッドが当接する直前の図、(C)は、押圧カム部が押圧カム受け部に完全に当接してプラテンローラとサーマルヘッドが当接している図である。
【図7】サーマルヘッドとプラテンローラが付着した状態における、カセットカバー開時の押圧・退避カム部とローラホルダの関係を示す図である。(A)は、押圧カム部が押圧カム受け部に完全に当接してプラテンローラとサーマルヘッドが当接している図、(B)は、押圧カム部が引き上げられ、退避カム部と退避カム受け部が当接し始めプラテンローラとサーマルヘッドの当接が解除される直前の図、(C)は、退避カム部と退避カム受け部の当接が進みプラテンローラとサーマルヘッドの当接が解除された図である。
【符号の説明】
【0040】
1.テープ印字装置
6.印字用テープ
8.テープカセット
9.カセット保持部
13.サーマルヘッド
15.カセットカバー
15a.延出部
16.退避カム部
17.押圧カム部
18.プラテンローラ
32.退避カム受け部
A.押圧位置
B.退避位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字用テープを内蔵したテープカセットを着脱可能に保持するカセット保持部と、印字用テープに印字を施す印字ヘッドと、印字ヘッドに印字用テープを圧接するプラテンローラと、前記プラテンローラと前記印字ヘッドとのいずれか一方を保持すると共に、プラテンローラと印字ヘッドとが相互に押圧される押圧位置と相互に離間される退避位置との間で移動可能なホルダ部材と、前記カセット保持部に保持したテープカセットを覆う開閉可能なカセットカバーと、を備えたテープ印字装置において、
前記カセットカバーには、その閉状態で前記ホルダ部材と当接してそのホルダ部材を前記押圧位置に押圧する押圧カム部、及び、閉状態から開状態に移行する過程で前記ホルダ部材に当接してそのホルダ部材を退避位置に戻す退避カム部を備えたことを特徴とするテープ印字装置。
【請求項2】
前記押圧カム部と前記退避カム部は、前記カセットカバーと一体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のテープ印字装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−181755(P2006−181755A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−375410(P2004−375410)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】