説明

テープ貼付経路設定方法及びプログラム並びにテープ貼付装置

【課題】長尺状のテープを対象物に貼り付ける場合に、しわの発生を防ぐとともに、テープの隙間や重複を許容値内に抑えること。
【解決手段】対象物に長尺状のテープを貼付する場合において、テープの中心線が対象物の測地線に一致するように、テープ貼付経路を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、複合材等で形成された長尺状のテープを対象物に貼付するときのテープ貼付経路を設定する技術に係り、特に、航空機や自動車等の産業分野において、長尺状の複合材テープを目標形状の型に貼り付ける際に、好適なテープ貼付経路を設定するテープ貼付経路設定方法及びプログラム並びにテープ貼付装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、航空機や自動車等の種々の産業分野において、繊維強化樹脂複合材料は幅広く利用されている。この複合材を積層して製品を形成する方法として、種々の方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
特許文献1には、上型板上に帯状の上型板付勢材を重ね、上型板付勢材及び一方向繊維プリプレグの端部を緊張付与装置によって保持する複合材曲面パネルの形成方法が開示されている。このように、緊張付与装置によって上型板付勢材及び一方向繊維プリプレグの端部を保持し、プリプレグと上型板との間の隙間を未然に防止することにより、未硬化状態の余剰樹脂の流動を阻止し、均一な板厚で、且つ、しわ、うねり、ボイド等の発生のない複合材曲面パネルを形成している。
【特許文献1】特開2001−38752号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
また、従来、上述したような航空機や自動車等の種々の産業分野において、長尺状に形成した複合材テープを目標形状の型に貼り付けて複合材曲面を形成する手法が提案されている。しかし、この手法では、目標形状が複曲面の特徴を持つ自由曲面の場合、貼り付けたテープにしわが発生する、貼り付けたテープ間に隙間や重複が生ずる等の種々の問題があった。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、長尺状のテープを対象物に貼り付ける場合に、しわの発生を防ぐことができるテープ貼付経路設定方法及びプログラム並びにテープ貼付装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、対象物に長尺状のテープを貼付する場合において、前記テープの中心線が前記対象物の測地線に一致するように、テープ貼付経路を設定するテープ貼付経路設定方法を提供する。
【0006】
測地線とは、二点間を最短距離で結ぶ曲線をいう。ここで、曲面上の測地線は、平面上の直線と同様の性質を有するため、たとえ、自由曲面を有する形状であっても、その測地線を中心とした所定の幅を有する領域は可展面に近似することが可能となる。従って、対象物に対して、測地線とテープの中心線とが一致するようにテープ貼付経路を設定することにより、しわの発生を防止することができる。
上記テープの材質は特に限定されない。例えば、紙、布、複合材などがテープの一例として挙げられる。
【0007】
上述のテープ貼付経路設定方法は、前記ラインと前記テープの幅との関係に基づいて、テープ貼付経路の始点を設定する過程と、測地線に沿って前記始点から所定区間毎にテープ貼付経路を設定する過程と、所定区間毎に、前記テープ貼付経路の終端と前記ラインとの距離が許容範囲内か否かを判定する過程と、前記距離が許容範囲外であった場合に、前記終端を基準として、今まで用いていた前記測地線とは異なる調整線を求める過程と、前記距離が許容範囲内となるまで、前記終端から前記調整線に沿って所定区間毎にテープ貼付経路を設定する過程とを具備することが好ましい。
【0008】
所定区間のテープ貼付経路を設定する毎に、その終端とラインとの間の距離が許容範囲内か否かを判定し、前記距離が許容範囲内でなかった場合には、前記距離が許容範囲内となるまで異なる調整線に沿ってテープ貼付経路を設定するので、前記距離を略一定に保つようなテープ貼付経路を容易に設定することができる。
例えば、既に設定されたテープ貼付経路に沿ってテープを貼付した場合の該テープの一方の縁部を前記ラインとして設定することにより、隙間や重複が生じないようにテープを対象物に貼り付けることが可能となる。
【0009】
上記調整線は、対象物の曲面の形状特性に基づいて設定されることが好ましい。
このように、対象物の曲面の形状特性に基づいて調整線を設定するので、測地線に沿ってテープ貼付経路を設定しない場合であっても、対象物の形状に応じた適切な経路を設定することが可能となる。
【0010】
本発明は、対象物にテープを貼付する場合において、前記テープの中心線が前記対象物の測地線に一致するように、テープ貼付経路を設定する処理をコンピュータに実行させるためのテープ貼付経路設定プログラムを提供する。
【0011】
対象物が自由曲面を有する形状であっても、測地線とテープの中心線とが一致するようにテープ貼付経路を設定することにより、テープ貼付時におけるしわの発生を防止することができる。
【0012】
上記テープ貼付経路設定プログラムにおいて、前記テープの一方の縁部が前記対象物の面上に設定されたラインに略沿うように、前記テープを貼る場合には、前記ラインと前記テープの幅との関係に基づいて、テープ貼付経路の始点を設定する処理と、測地線に沿って前記始点から所定区間毎にテープ貼付経路を設定する処理と、所定区間毎に、前記テープ貼付経路の終端と前記ラインとの距離が許容範囲内か否かを判定する処理と、前記距離が許容範囲外であった場合に、前記終端を基準として、今まで用いていた前記測地線とは異なる調整線を求める処理と、前記距離が許容範囲内となるまで、前記終端から前記調整線に沿って所定区間毎にテープ貼付経路を設定する処理とをコンピュータに実行させると良い。
【0013】
所定区間のテープ貼付経路を設定する毎に、その終端とラインとの間の距離、例えば、終端と該終端に最も近い位置に存在するライン上の点とを結ぶ弧長が、許容範囲内か否かを判定し、前記距離が許容範囲内でなかった場合には、前記距離が許容範囲内となるまで異なる調整線に沿ってテープ貼付経路を設定するので、前記距離を略一定に保つようなテープ貼付経路を簡便な処理により設定することができる。
【0014】
本発明は、テープの中心線が対象物の測地線に一致するように、該対象物にテープを貼付するテープ貼付装置を提供する。
【0015】
対象物が自由曲面を有する形状であっても、測地線とテープの中心線とが一致するようにテープ貼付経路を設定し、更に、そのテープ貼付経路に沿ってテープを貼付することにより、しわの発生を防止することができる。
特に、本発明のテープ貼付装置は、航空機や自動車等の産業分野において、長尺状の複合材テープを目標形状の型に貼り付ける際に、好適なテープ貼付経路を設定するのに適している。特に、収縮性のない複合材テープを自由曲面を有する目標型に貼付する場合でも、可展面に複合材テープを貼付しているのと略同じ状況とすることができるので、しわの発生を防止することが可能となる。
【0016】
本発明は、上述のテープ貼付経路設定方法により設定されたテープ貼付経路に沿って複合材テープが貼付された形成品を加熱して成型した複合材パネルを提供する。
自由曲面を有する形成型であってもその測地線にそって複合材テープを貼付することにより、しわの発生を防止することができる。更に、この複合材テープが貼り付けられた形成型を加熱することにより、しわのない複合材パネルを得ることができる。
【0017】
本発明は、上述のテープ貼付経路設定方法により設定されたテープ貼付経路に沿って切削を行う切削装置を提供する。
測地線は、二点間を最短距離で結ぶ曲線をいい、その特徴の一つに、測地線に沿って移動する際には真横の方向に加速を感じない、換言すると、真横からの力を受けないという特徴がある。即ち、この測地線経路で切削を行うことで、工具に対する切削抵抗は、ワークに垂直な方向と進行方向にのみとなるので、工具の負担を軽減することが可能となる。また、測地線に沿って切削経路を設定することにより、切削面に対する切削刃の進入角度を一定に保つことができるので、滑らかな切削加工面を得ることが可能となる。
更に、隙間・重複が生じないように設定された新たなテープ貼付経路に沿って切削を実施することにより、同じ箇所を重複して切削する等の切削ロスを回避し、効率良く切削を行うことが可能となるので、切削加工の作業時間を短縮することができる。
また、この切削装置により切削された切削加工物は、滑らかな切削加工面を有する形成物となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、しわの発生を防ぐことができるという効果を奏する。更に、テープの隙間や重複を許容値内に抑えることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、以下に述べる本発明の第1及び第2の実施形態に係るテープ貼付経路設定方法を実現するテープ貼付装置の概略構成を示すブロック図である。図1に示すように、テープ貼付装置は、CAD(Computer Aided Design)やCAM(Computer Aided Manufacturing)などのコンピュータシステムを備えており、CPU(中央演算処理装置)1、RAM(Random Access Memory)などの主記憶装置2、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)などの補助記憶装置3、キーボードやマウスなどの入力装置4、及びディスプレイ、プリンタなどの出力装置5などを備えて構成されている。
【0020】
次に、上述のような構成を備えるテープ貼付装置により実現されるテープ貼付経路設定方法について説明する。
なお、以下に示すテープ貼付設定方法は、テープ貼付装置が備えるCPU1が補助記憶装置3に格納されているテープ貼付経路設定プログラムをRAMなどに読み出し、実行することにより、実現されるものである。
【0021】
図2は、本発明の第1の実施形態に係るテープ貼付経路設定方法の処理手順を示すフローチャートである。
まず、図2のステップSA1では、テープ貼付経路の追跡条件の設定を行う。これは、例えば、入力装置4を介してオペレータにより入力された設定条件をCPU1が受け付け、所定のメモリエリアに保存することにより行われる。追跡条件としては、追跡開始位置、方向刻み量、追跡回数制限等が一例として挙げられる。
【0022】
追跡開始位置は、テープ貼付経路の開始点である。方向刻み量は、テープ貼付経路を所定区間毎に設定していくときの該区間の距離である。追跡回数制限は、方向刻み量の設定回数に相当する。ここで、追跡回数を制限するのは、テープ貼付経路が閉曲線になったときに無限ループに入るのを防止するためである。
【0023】
続くステップSA2では、CPU1は、上記補助記憶装置3又は図示しない通信ネットワークを介して受信された形状データファイルを読み出す処理を行う。ここで、読み出されるデータファイルは、国際規格又は製造業者が仕様を公開するなどして記録されている内容が明らかになっているデータファイルであり、例えば、IGES、STEP、STL、DXFなどのデータファイルである。
【0024】
ステップSA3では、読み出した形状データファイルにより表現される3次元形状モデルの形状解析を行う。例えば、3次元形状モデルの主曲率K及びK、ガウス曲率Kg、平均曲率Km等を求める。以下、これら曲率について、簡単に説明する。
例えば、図3に示すような曲面W上の点Pにおいて、接平面に垂直に立てられた単位ベクトルを単位法線ベクトルn、この単位法線ベクトルnを含む平面を法平面、この法平面と曲面Wとの交線を法断面という。この法断面の微分を曲率として、法平面を単位法線ベクトルnの周りに回転させると、その回転角θと曲率との関係が、例えば、図4に示すようなグラフとして得られる。
【0025】
ここで、最大曲率K及び最小曲率Kが点Pにおける曲面Wの主曲率となり、これら主曲率K及びKを乗算した値がガウス曲率Kg、平均した値が平均曲率Kmとなる。そして、これら主曲率K及びK、ガウス曲率Kg、及び平均曲率Kmにより、曲面Wの形状を把握することができる。図5に、ガウス曲率と平均曲率とにより決定される形状の一例を示す。この図に示すように、ガウス曲率Kg=0であれば、つまり、一方又は両方の主曲率がゼロであれば、曲面Wは可展面となる。また、ガウス曲率Kgがマイナスの値を取れば、曲面Wは鞍型であり、逆に、ガウス曲率Kgがプラスの値を取れば、曲面Wは皿型となる。なお、上記主曲率の求め方は一例であり、他の公知の手法を用いて、形状解析を行なっても良い。
【0026】
上述のような形状解析が完了すると、この形状解析結果に基づいてテープ貼付経路の設定が行われることとなる。なお、以下の処理は、uv空間上において行われる。
まず、図2のステップSA4では、初期値の設定を行う。具体的には、追跡回数に「1」、追跡終了フラグに「0」を設定するとともに、基準点として追跡開始位置を設定する。
【0027】
続いて、ステップSA5では、基準点における主方向を設定する。主方向には、上記最大曲率K及び最小曲率Kの方向のうち、テープ貼付経路の進入角に近い主方向を選定することが好ましい。なお、追跡回数が「1」の場合には、未だテープ貼付経路が設定されていないため、上記主方向(最大曲率K及び最小曲率Kの方向)のいずれか一方を任意に選定することが可能である。本実施形態では、一例として最大曲率Kの方向(以下、主方向K)を選定する。
【0028】
続いて、ステップSA6では、実空間における測地線の方向を求め、この実空間の測地線の方向に基づいて、uv空間に設定した上記基準点における測地線の方向を定める。具体的には、図6に示すように、実空間における形状モデルにおいて測地線を求め、この測地線の方向Knと主方向Kとがなす角度θnを求める。次に、図7に示すように、図2のステップSA5においてuv空間上に設定した基準点Pの主方向Kに、該角度θnを加えることにより、uv空間に測地線の方向Knを設定する。そして、測地線の方向Knを定めると、基準点Pを測地線の方向に方向刻み量、移動させることにより、所定区間におけるテープ貼付経路を設定する。
【0029】
続いて、ステップSA7において、経路がきちんと設定されたか否かを判定する。なお、形状モデルが球面などのように主曲率を持たない形状等であった場合には、ステップSA5において主方向が特定できないため、テープ貼付経路が設定できないこととなる。従って、このような場合を排除するために、経路が設定されたか否かを判定するステップSA7を設けている。
ステップSA7において、テープ貼付経路が設定されていることが確認されると、続くステップSA8において、テープ貼付経路の終端が形状モデルの表面上に存在するか否かを判定する。この結果、形状モデルの表面上にあった場合には、続くステップSA9において追跡回数が追跡回数制限を越えたか否かを判定する。この結果、追跡回数が追跡回数制限を越えていなかった場合には、ステップSA10においてテープ貼付経路の終端を基準点に設定し、続くステップSA11において追跡回数に「1」を加えた後、上述のステップSA5に戻り、上述したステップSA5からステップSA9の処理を繰り返し実行する。
【0030】
このようにして、テープ貼付経路が除々に設定され、その追跡回数が追跡回数制限を越えると、ステップSA9において「YES」と判断され、当該処理を終了する。また、追跡回数が追跡回数制限に満たない場合でも、経路の終端が形状モデル内にない場合(ステップSA8において「NO」)、経路が設定されなかった場合には(ステップSA7において「NO」)、当該処理を終了する。なお、ステップSA8において、経路の終端が形状モデル内にないと判断された場合には、形状モデルの境界線とテープ貼付経路との交点を求めた後に当該処理を終了する。
【0031】
以上説明してきたように、本実施形態に係るテープ貼付装置により実現されるテープ貼付経路設定方法によれば、測地線の方向に沿ってテープ貼付経路を設定するので、このテープ貼付経路上にテープの中心線が一致するようにテープを貼付することにより、自由曲面を可展面として取り扱うことが可能となる。これにより、しわの発生を防止しながらテープを貼付することができる。
【0032】
次に、本発明の第2の実施形態に係るテープ貼付経路設定方法について説明する。
本実施形態に係るテープ貼付経路設定方法は、形状モデルの表面に既に1または複数本のテープ貼付経路が設定されており、更に、このテープ貼付経路に沿ってテープが貼付されている場合に、これらテープと隙間や重複が生じないように新たなテープを貼付する場合のテープ貼付経路を設定する場合に好適なものである。
ここでは、隣接するテープの縁部を「ライン」として取り扱い、このラインとの位置関係も考慮して、新たなテープ貼付経路を設定する。
【0033】
以下、本実施形態のテープ貼付経路設定方法について図8から図10を参照して説明する。
図8は、本実施形態に係るテープ貼付経路設定方法の処理手順を示すフローチャートである。
まず、図8のステップSB1において追跡条件の設定を行う。ここでは、図2に示すステップSA1と略同じ処理が行われるが、テープ貼付開始位置に相当する追跡開始位置については、ラインとの位置関係を考慮して適切な位置に設定することが必要となる。ここで、追跡開始位置は、ライン上の一点と追跡開始位置とを結ぶ弧長がテープの幅の1/2の長さに一致する位置に設定されるのが好ましい。このように設定することにより、テープ貼付開始位置におけるテープ間の隙間・重複を解消することができる。
【0034】
ステップSB2では、形状モデルの形状データファイルを読み出し、ステップSB3において形状モデルの形状解析を行う。ステップSB4では、追跡回数に「1」を設定し、基準点に追跡開始位置を設定する。
【0035】
続くステップSB5では、基準点と該基準点に最も近いライン上の点とを結ぶ弧長Lが許容範囲内か否かを判定する。ここでの許容範囲とは、例えば、テープの幅の1/2の長さに適切なマージンを加味した範囲に設定されている。この結果、弧長Lが許容範囲内であると判断された場合には、ステップSB6及びSB7において、図2のステップSA5及びSA6に示す処理と同様の処理が行われることにより、測地線に沿って所定区間のテープ貼付経路が設定される。
【0036】
続く、ステップSB9からステップSB11では、図2のステップSA7乃至ステップSA9に示す処理と同様の判定処理が行われ、ステップSB11において追跡回数が追跡回数制限を越えていなければ、ステップSB12において経路の終端を基準点に設定し、ステップSB13において追跡回数に1を加えた後、ステップSB5に戻り、上述処理を繰り返して行う。
【0037】
このように、ステップSB5からSB13の処理が繰り返し行われることにより、テープ貼付経路が測地線に沿って設定された結果、図9に示すように、基準点とラインとの距離が除々に拡大し、ある時点において、ステップSB5にて、弧長Lが許容範囲内でないと判断された場合には、ステップSB8に移行し、経路調整処理を行う。経路調整処理では、今まで用いていた測地線とは異なる調整線を設定し、この調整線の方向にテープ貼付経路を設定することにより、今後のテープ貼付経路がラインへ除々に近づくように調整を行う。
【0038】
この調整線は、形状モデルの曲面の形状特性に基づいて設定される線である。このように、対象物の曲面の形状特性に基づいて調整線を設定するので、測地線に沿ってテープ貼付経路を設定しない場合であっても、対象物の形状に応じた適切な経路が設定されることとなる。
この調整線としては、例えば、以下のように設定される線のうちのいずれか一つを選定することが可能である。
【0039】
まず、1つめの調整線の設定手法としては、前回の基準点において設定された測地線の方向における法曲率Kxを求める。そして、今回の基準点において、該法曲率Kxと同一の法曲率を有する方向に線を設定し、これを調整線とする。
【0040】
2つめの調整線の設定手法としては、最初の基準点において設定された測地線の方向における法曲率Kxを求める。そして、今回の基準点において、該法曲率Kxと同一の法曲率を有する方向に線を設定し、これを調整線とする。
【0041】
3つ目の調整線の設定手法としては、今回の基準点において主方向を設定し、この主方向から前回の基準点で用いた角度θn(図6、図7参照)ずれた方向に線を設定し、これを調整線とする。
【0042】
4つ目の調整線の設定手法としては、今回の基準点において主方向を設定し、この主方向から最初の基準点で用いた角度θnずれた方向に線を設定し、これを調整線とする。
【0043】
5つ目の調整線の設定手法としては、uv空間において、前回の基準点と今回の基準点とを接続する直線を設定し、これを調整線とする。
【0044】
6つ目の調整線の設定手法としては、uv空間において、最初の基準点から2番目の基準点とを接続する直線を設定し、設定した線に平行な今回の基準点を通る線を調整線とする。
【0045】
7つめの調整線の設定手法としては、実空間において、前回の基準点と今回の基準点とを接続する直線を設定し、これを調整線とする。
【0046】
8つめの調整線の設定手法としては、実空間において、最初の基準点から2番目の基準点とを接続する直線を設定し、設定した線に平行な今回の基準点を通る線を調整線とする。
【0047】
そして、ステップSB8では、上記手法のいずれか一つの手法により調整線を求め、この調整線の方向に基準点を方向刻み量分、移動させることにより、所定区間のテープ貼付経路を設定する。
このようにして、テープ貼付経路を設定すると、図8のステップSB9に戻り、ステップSB9以降の処理が上述と同様に行われることとなる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態に係るテープ貼付方法によれば、ラインとの間の距離を考慮しながらテープ貼付経路が設定されるので、設定されたテープ貼付経路にテープの中心線が一致するようにテープを貼付することにより、図10に示すように、ラインに沿ってテープを貼ることができる。そして、ラインとして既に貼られたテープの縁を採用し、許容範囲としてテープの幅に多少のマージンを含んだ値を設定することにより、しわの発生を防止しながら、互いに隣り合うテープ間に隙間や重複が生じないように、対象モデルに対してテープを貼り付けることが可能となる。
【0049】
更に、ラインとテープ貼付経路との間の距離が許容範囲外となった場合には、形状モデルの曲面の形状特性に基づいて設定された調整線を用いてテープ貼付経路の調整設定を行うため、測地線に沿ってテープ貼付経路を設定しない場合であっても、対象物の形状に応じた適切な経路を設定することが可能となる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、上記実施形態においては、対象物にテープを貼り付ける場合について述べたが、自由曲面を有する対象物を切削加工するような場合において、測地線に沿って切削経路を設定するようにしても良い。これにより、切削面に対する切削刃の進入角度を一定に保つことが可能となるので、滑らかな切削加工面を得ることができる。
また、図8のステップSB8における調整線の設定手法については、上述の手法に限られることなく、その他の手法を用いて設定した調整線を用いてテープ貼付経路を設定するようにしても良い。
また、上記第2の実施形態では、「ライン」として隣接するテープの縁部を採用したが、隣接するテープが本発明に係るテープ貼付経路設定方法により設定されたテープ貼付経路に沿って貼付されたものであった場合には、上記縁部に代わって、そのテープの中心、つまり、隣接するテープのテープ貼付経路をラインとして採用しても良い。この場合には、許容範囲は、テープの幅に適切なマージンを加えた範囲に設定される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態に係る3次元形状処理装置の概略構成を示したブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る3次元形状処理装置により実行されるテープ貼付設定方法の処理手順を示したフローチャートである。
【図3】法曲率等を説明するための説明図である。
【図4】図3に示した曲面における法断面の微分を曲率として、法平面を単位法線ベクトルnの周りに回転させることにより得られた回転角θと曲率との関係を示す図である。
【図5】ガウス曲率と平均曲率とにより決定される形状の一例を示す図である。
【図6】実空間における測地線の方向を示す図である。
【図7】uv空間において測地線の方向を選定する手法を説明する説明図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係るテープ貼付経路設定方法の処理手順を示したフローチャートである。
【図9】基準点とラインとの弧長を示す図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係るテープ貼付経路設定方法により設定されたテープ貼付経路に沿ってテープが貼付された状態を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1 CPU
2 主記憶装置
3 補助記憶装置
4 入力装置
5 出力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に長尺状のテープを貼付する場合において、前記テープの中心線が前記対象物の測地線に一致するように、テープ貼付経路を設定するテープ貼付経路設定方法。
【請求項2】
前記ラインと前記テープの幅との関係に基づいて、テープ貼付経路の始点を設定する過程と、
測地線に沿って前記始点から所定区間毎にテープ貼付経路を設定する過程と、
所定区間毎に、前記テープ貼付経路の終端と前記ラインとの距離が許容範囲内か否かを判定する過程と、
前記距離が許容範囲外であった場合に、前記終端を基準として、今まで用いていた前記測地線とは異なる調整線を求める過程と、
前記距離が許容範囲内となるまで、前記終端から前記調整線に沿って所定区間毎にテープ貼付経路を設定する過程と
を具備する請求項1に記載のテープ貼付経路設定方法。
【請求項3】
前記調整線は、前記対象物の曲面の形状特性に基づいて設定される請求項2に記載のテープ貼付経路設定方法。
【請求項4】
対象物にテープを貼付する場合において、前記テープの中心線が前記対象物の測地線に一致するように、テープ貼付経路を設定する処理をコンピュータに実行させるためのテープ貼付経路設定プログラム。
【請求項5】
前記テープの一方の縁部が前記対象物の面上に設定されたラインに略沿うように、前記テープを貼る場合において、
前記ラインと前記テープの幅との関係に基づいて、テープ貼付経路の始点を設定する処理と、
測地線に沿って前記始点から所定区間毎にテープ貼付経路を設定する処理と、
所定区間毎に、前記テープ貼付経路の終端と前記ラインとの距離が許容範囲内か否かを判定する処理と、
前記距離が許容範囲外であった場合に、前記終端を基準として、今まで用いていた前記測地線とは異なる調整線を求める処理と、
前記距離が許容範囲内となるまで、前記終端から前記調整線に沿って所定区間毎にテープ貼付経路を設定する処理と
をコンピュータに実行させる請求項4に記載のテープ貼付経路設定プログラム。
【請求項6】
テープの中心線が対象物の測地線に一致するように、該対象物にテープを貼付するテープ貼付装置。
【請求項7】
請求項1から請求項3のいずれかの項に記載のテープ貼付経路設定方法により設定されたテープ貼付経路に基づいてテープが貼付された形成品。
【請求項8】
請求項1から請求項3のいずれかの項に記載のテープ貼付経路設定方法により設定されたテープ貼付経路に基づいて複合材テープが貼付された形成型を加熱して成形した複合材パネル。
【請求項9】
請求項1から請求項3のいずれかの項に記載のテープ貼付経路設定方法により設定されたテープ貼付経路に沿って切削を行う切削装置。
【請求項10】
請求項1から請求項3のいずれかの項に記載のテープ貼付経路設定方法により設定されたテープ貼付経路に沿って切削されることにより形成された切削加工物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−152614(P2007−152614A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−347703(P2005−347703)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(591099186)株式会社パル構造 (10)
【Fターム(参考)】