説明

ディスクチャック装置

【課題】ディスクを確実に把持できるディスクチャック装置の提供を目的とする。
【解決手段】本発明では、ディスク1の中心孔1aに挿通されるガイド軸3と、その基端部側に設けられてディスクの開口部周辺を受ける受部5と、この受部に対して接近離間自在に配置された中空の把持部材7と、把持部材に沿って移動自在に設けられたプランジャ部材8と、プランジャ部材に設けられたボール受部と、そこに収容されたボール部材9と、プランジャ部材と把持部材とに係止されて把持部材とプランジャ部材とをガイド軸の軸方向に離間する方向に付勢する弾性部材10とを具備し、ガイド軸の外周部にガイド軸の軸方向に沿うプランジャ部材の移動をボール部材に当接して阻止する係止部3bが形成され、係止部に対するボール部材の当接時にガイド軸とともにボール部材を挟持する突起部7cが把持部材の内周部に形成されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は中心孔を有するドーナツ円盤型の磁気ディスクや光ディスク等のディスクを検査装置や把持装置のディスクドライブ装置に保持させるためのディスクチャック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
前述のディスクはディスク搭載装置、即ちロボットハンドを使用して検査装置のディスクドライブ装置への自動搭載と自動取り出しが行われており、ディスクドライブ装置にはディスクを回転位置に着脱可に保持するためのディスクチャック装置が設けられている。また、各種のディスクを製造する工程において、成膜装置や洗浄装置あるいはエッチング装置などの各装置において、ディスクを把持しながら成膜処理、洗浄処理、エッチング処理などを行う場合、ディスクチャック装置でディスクを把持しながらこれらの各処理を施すこともなされている。
【0003】
従来一般に用いられているディスクチャック装置は、特許文献1に示すように、ディスクの中心孔に嵌合してディスクを拘束する手段としてC形チャックリングが用いられている。
前記C形チャックリングには、C形ばねが巻装され、該C形チャックリングをC形ばねに抗して拡開することによりディスク中心孔の内周面に加圧接触せしめてディスク拘束状態にするとともに、また、前記C形チャックリングを前記C形ばねの弾力に従い縮閉することにより前記ディスク中心孔の内周面に対する加圧接触を解除し、前記ディスク拘束解除状態としている。
他方、前記C形チャックリングによるディスク拘束状態と同拘束解除状態を形成する手段として、特許文献1においては、ディスク中心孔内を軸線に沿い上下動し前記C形チャックリングを拡縮せしめる周面カムを備え、該周面カムをエアーにより上昇させて前記C形チャックリングによるディスク拘束解除状態とし、周面カムをばねにより下降してC形チャックリングによるディスク拘束状態とするエアーチャック方式を採用している。
【0004】
更に詳述すると、前記周面カムをシャフトの上端に取り付け、該周面カムを下方力付与ばねにより常時下方へ付勢する構成を採用しつつ、前記シャフトの下端部に設けたダイヤフラムの下面にエアー圧(正圧)を加えることにより、これを前記下方力付与ばねの下方力に抗し反転して前記シャフトと周面カムを軸線に沿い上昇せしめ、該上昇時に前記C形チャックリングを周面カムによりディスク中心孔の内周面から離間し前記縮閉状態と前記ディスク拘束解除状態を形成し、逆にダイヤフラムの下面に付与していたエアー圧(正圧)を解除することにより、同ダイヤフラムを前記下方力付与ばねの下方力に従い再反転してシャフトと周面カムを軸線に沿い下降し、該下降時に前記各C形チャックリングを自己の弾力により拡開しディスク中心孔の内周面に押圧してディスク拘束状態を形成するように配置されている。
また、ディスクの中心孔の内側に複数のチャック爪を挿入してチャック爪の間隙を拡開し、中心孔の内側からディスクを把持できるように構成したディスクチャック装置が特許文献2に開示されている。
【特許文献1】特開平6−314456号公報
【特許文献2】特開2007−102959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
然るに前記エアーチャック方式のディスクチャック装置においては、前記ディスクドライブ装置の内部に前記C形チャックリング及び周面カムを作動せしめるエアー作動機構を内蔵するために、ディスクドライブ装置の大型化、複雑化を招来し、また、ディスクドライブ装置の駆動源であり且つエアー流路の継手を形成するスピンドルモーターは大形で極めて高価になる問題がある。
【0006】
更に前記C形チャックリング及びC形ばねは、C形であるが故に全周において均一な曲率で弾性変位することが困難であり、又C形チャックリングとC形ばね相互間における弾性変位量にズレを生じ易く、C形チャックリングをディスクの中心孔内周面に均一に加圧接触せしめることができず、ディスクを安定に高速回転させることが困難な問題を有している。また、ディスクの中心孔内周面に対する不均一な加圧接触がディスクの歪みや変形を招来し、検査の信頼性を損なう問題を有している。
更に、C形チャックリングの拡縮に伴い、C形ばねの切欠端がC形チャックリングの表面を引っ掻いて、あるいは、C形チャックリングの表面を滑動してディスク検査に有害な塵埃を生ずる問題を有している。また、このような塵埃は、ディスクの製造段階におけるチャック操作であるならば、ディスク表面に形成する膜に取り込まれるおそれがあり、膜質そのものを低下させる問題がある。
また、ディスクの中心孔の内側からチャック爪を拡張して把持するタイプのディスクチャック装置では、特にディスクを高速回転するなどの場合にチャック爪による把持力を高めると、ディスクの中心孔の内周面にチャック爪が傷を付けるおそれがあった。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、従来のディスクチャック装置におけるC形チャックリングを用いることなく、上述のエアーチャック方式を用いることがなく、ディスクの中心孔の内周面に傷を付けることもないディスクチャック装置の提供を目的とする。従って本発明は、従来のこれらC形チャックリングとエアーチャック方式に起因するチャック装置における上述の問題点、並びに、中心孔の内面側から把持するタイプのチャック装置における上述の問題点を抜本的に解決できるディスクチャック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明のディスクチャック装置は、中心孔を有するディスクに対し、その中心孔の一側開口部周辺と他側開口部周辺を前記ディスクの厚さ方向両側から挟み込むことにより、前記ディスクを把持するチャック装置であって、前記ディスクの中心孔に挿通されるガイド軸と、前記ガイド軸の基端部側に設けられて前記ディスクの一側開口部周辺を受ける受部と、この受部に対して前記ガイド軸の軸方向に接近離間自在に配置された中空の把持部材と、該把持部材に沿って前記ガイド軸の軸方向に移動自在に設けられたプランジャ部材と、前記プランジャ部材において前記ガイド軸の基端部側に設けられたボール受部と、このボール受部に収容されて前記プランジャ部材とともにガイド軸の軸方向に移動自在に支持されたボール部材と、前記プランジャ部材と前記把持部材とに係止されて前記把持部材と前記プランジャ部材とを前記ガイド軸の軸方向に沿って離間する方向に付勢し、前記把持部材を前記ディスクの他側開口部周辺側に付勢する弾性部材とを具備して構成されるとともに、前記ガイド軸の外周部に該ガイド軸の軸方向に沿う前記プランジャ部材の移動を前記ボール部材に当接して阻止する係止部が形成され、前記係止部に対する前記ボール部材の当接時に前記ガイド軸とともに前記ボール部材を挟持する突起部が前記把持部材の内周部に形成されてなることを特徴とする。
【0009】
(2)本発明のディスクチャック装置は、前記ガイド軸に小径部と大径部が形成され、この大径部が係止部とされてなり、前記ボール部材が前記小径部に沿ってガイド軸の軸方向に移動自在にされて前記プランジャ部材が前記把持部材に沿って移動自在とされ、前記ボール部材を前記大径部に当接させることにより前記プランジャ部材の移動が阻止され、前記ボール部材が前記ガイド軸と前記突起部とに挟持された状態で前記弾性部材の弾性力により前記把持部材を前記ディスクに押し付け自在とされてなることを特徴とする。
(3)本発明のディスクチャック装置は、前記係止部に係止された状態のボール部材に対し、前記プランジャ部材を前記把持部材に沿って前記ガイド軸の基端部側に向けて押圧することで前記ボール部材を前記係止部と前記突起部の間から外して前記ボール部材をガイド軸の径方向に移動自在に開放することにより、前記把持部材と前記プランジャ部材を前記ガイド軸から引き抜き自在として、前記ディスクが解放自在とされてなることを特徴とする。
【0010】
(4)本発明のディスクチャック装置は、前記プランジャ部材を前記ガイド軸の基端部側に押圧して前記把持部材による前記ディスクの把持を解除する押圧ロッドと、この押圧ロッドが前記ディスクの把持を開放した状態において前記把持部材を把持する係止爪とを備え、前記ディスクの把持を開放したまま前記プランジャ部材と前記把持部材と前記押圧ロッドと前記把持爪とを前記ガイド軸とディスクから離間自在としてなることを特徴とする。
(5)本発明のディスクチャック装置は、前記プランジャ部材のボール受部が前記ガイド軸の軸周りに複数形成され、各ボール受部にボール部材を収容させて前記ガイド軸の軸周りに複数のボール部材が配置されてなり、前記複数のボール部材を前記ガイド軸の係止部に当接させた状態において前記把持部材の突起部が複数のボール部材を前記ガイド軸との間に挟持できるように構成されてなることを特徴とする。
(6)本発明のディスクチャック装置は、モータの出力軸の先端側に前記ガイド軸が設けられ、前記受部が前記モータの出力軸側に設けられ、前記把持部材と前記プランジャ部材とが前記ガイド軸の周囲側に設けられ、前記受部と前記把持部材により前記ディスクを把持した状態において前記ディスクがモータにより回転自在に支持されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のチャック装置は、ディスクの中心孔の一側開口部周辺と他側開口部周辺を前記ディスクの厚さ方向両側から受部と把持部材により挟み込み把持する構成であり、ディスクの中心孔の内周面などに傷を付けるおそれが無い状態でディスクの確実な把持が可能となる。従って、仮に、ディスクを把持したままディスクを高速回転させる操作を行っても、ディスクに傷を付けるおそれがない。
また、C形チャックリングを用いることなく、エアーチャック方式を用いていないので、ディスクの中心孔内周面に対する不均一な加圧接触が無く、ディスクの歪みや変形を招来するおそれがないので、本発明のディスクチャック装置を用いてディスクを検査する場合に検査の信頼性を損なうことが無い。
更に、本発明のディスクチャック装置は、C形チャックリングを用いないので、C形チャックリングの表面滑動によりディスク検査に有害な塵埃を生ずる問題を生じることが無い。
【0012】
次に本発明のディスクチャック装置は、ディスクの中心孔の開口部周辺を挟持する受部と把持部材の作動を弾性部材の弾性力を利用し、ボール部材をプランジャ部材に連動させて移動させ、ガイド軸と把持部材の突起部との間にボール部材を挟持させることにより把持操作を行うので、動作が確実であり、弾性部材の弾性力を所望の値に調整すれば、弾性力に応じた確実な把持力を得ることができる。
また、本発明のディスクチャック装置におけるディスクの開放は、プランジャ部材を把持部材に沿わせて押圧し、ガイド軸とともにボール部材を挟持している突起部からボール部材を外す操作を行えば良いので、ディスクの開放操作を容易、かつ、確実に行うことができる。
更に、プランジャ部材の押圧を行う押圧ロッドと、プランジャ部材を押圧ロッドが押圧したまま把持部材を支持する把持爪を備えてこれらの動作によりディスクの把持を開放できる構成とするならば、ディスク把持の解除を容易、かつ、自動的に行うことができ、ディスクの搬送をロボットの搬送装置などで行うことができる。従って、ディスクの把持操作と開放操作、並びに、搬送を自動化することができる。
また、本発明のディスクチャック装置をモータの出力軸周りに設けてあるならば、ディスクを把持した状態でディスクの高速回転が可能であり、高速回転してもディスクを傷めることなくディスクを確実に把持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明に係るディスクチャック装置の一実施形態について図面を参照して説明するが、本発明のディスクチャック装置は以下の図面に示す実施形態に制限されるものではない。
図1は本実施形態のディスクチャック装置Aにより磁気ディスク、光ディスクなどのドーナツ円盤状のディスク1を把持した状態を示す部分断面図、図2はディスクチャック装置Aにおいてディスク1の把持を解除した状態を示す部分断面図、図3〜図5はディスクチャック装置Aにおいてディスク1を取り外す際の動作を説明するための部分断面図、図6〜図8はディスクチャック装置Aの各構成部品を示す図である。
本実施形態のディスクチャック装置Aは、モータ2の出力軸の先端側に一体化される形態で設けられている。モータ2のロータやステータ、コイルなどの内部部品を覆って筒形のケーシング2が設けられ、このケーシング2の一側端面中央に出力軸2Bが突出形成され、この出力軸2Bの先端側に出力軸2Bを延長するようにガイド軸3が形成されている。
なお、各図においてはモータ2の内部構造を略しているが、モータ2の内部にはロータやステータ、コイルなどのモータ用構成部品が設けられていて、出力軸2Bを回転駆動できるように構成されている。
【0014】
前記モータ2において、ケーシング2の出力軸2B側の端面には出力軸2Bを囲む形の円筒状の装着部材4が設けられ、この装着部材4の外周側にリング状の受部5がその中心に出力軸2Bを位置するように装着され、この装着部材4の外側の端面中心を貫通するようにガイド軸3が突出されている。
前記装着部材4においてガイド軸3側の端面(装着部材4の外側の端面)にはその外径を若干小さく形成したテーパ部4aが形成されるとともに、装着部材4の外径は把持対称物であるディスク1の中央孔1aを挿通できる大きさとされ、受部5の外径はディスク1の中央孔の一側開口部周辺に当接できる大きさとされている。従ってディスク1の中心孔1aを装着部材4に挿通してディスク1をリング状の受部5の上に載置することができ、この際、ディスク1の中心孔1aにおいて一側の開口部周辺部分(受部5側の開口部周辺部分)が受部5の端面に当接しつつ支持されるようになっている。
【0015】
図1に示す装着部材4の上方であってガイド軸3の外側には、ガイド軸3と同軸位置に配置された筒形の把持部材7と、この把持部材7の上部側にスライド移動自在に挿入されたプランジャ部材8と、プランジャ部材8の底部側に支持された3個のボール部材9と、把持部材7およびプランジャ部材8の間に設けられたコイルバネ等の弾性部材10が設けられている。
【0016】
前記把持部材7は、ガイド軸3よりも若干長い筒形に形成され、その下端部(装着部材4側の端部)には、前記受部5と内外径が同一のスカート状の把持片7aが延出形成され、把持部材7の上端部内周側には周段部7bが形成され、把持部材7の高さ方向中央内周部側には内向きフランジ型の突起部7cが形成されている。
前記プランジャ部材8は、筒形の本体部8aと、該本体部8aの上端部側に形成された横断面鍵型の外向き型のフランジ部8bと、本体部8aの下端部側に形成されたボール受部8cとからなる。プランジャ部材8は、そのフランジ部8bを前記把持部材7の周段部7bに挿入するとともに本体部8aを把持部材7の内向きフランジ型の突起部7cの内部側にスライド自在に挿入することにより、把持部材7の内部に沿ってガイド軸3の長さ方向に移動自在に挿入されている。
プランジャ部材8の本体部8aの底部側にはその周回りに120゜間隔で3つの透孔8dが本体部8aの周壁を貫通するように形成され、本体部8aの底部側には先の3つの 透孔8dの底面を構成し、本体部8aの外側まで若干延出形成された支持突部8eと、先の3つの透孔8dの上面を構成する内向きのフランジ部8fが形成されている。そして、各透孔8dの中には、上下を先のフランジ部8fと支持突部8eとの間に挟まれた状態でボール部材9が挿入されている。このボール部材9は金属球などからなり、透孔8dの内部においてフランジ部8fと支持突部8eとの間に挟まれた状態でプランジャ部材8の径方向に自由に移動できるように収容されている。
【0017】
これらのボール部材9が上下をフランジ部8fと支持突部8eとの間に挟まれてプランジャ部材8の透孔8dに挿入され、プランジャ部材8が筒状の把持部材7の内部にスライド自在に挿入されているので、プランジャ部材8が把持部材7に沿ってスライド移動する際、ボール部材9もプランジャ部材8の移動とともに把持部材7の内部を移動される(図1の上下方向に移動される)ようになっている。なお、筒状の本体部8aの周面には、その周回りに透孔8dの形成位置と角度をずらすように3本のスリット8gが120゜間隔で形成されている。これらのスリット8gは、本体部8aの上部側から底部側にかけて直線状に形成されていて、本体部8aの底部において外向きに突出されている支持突部8eが本体部8aの径方向に若干変形移動できるように構成されている。これにより、3個のボール部材9を備えたプランジャ部材8を把持部材7に挿入する場合、外向に突出している支持突部8eの先端が、把持部材7内の内向きフランジ型の突起部7cを乗り越える際の弾性変形を許容するので、プランジャ部材8を把持部材7の内部に確実かつ容易に挿入することができる。
また、プランジャ部材8を把持部材7に挿入完了した状態において支持突部8eの先端は突起部7cより下方に位置し、各ボール部材9はガイド軸3の大径部3bよりも下側に位置する小径部3aの外側に配置される。
【0018】
次に、プランジャ部材8の本体部8aの上部外周側には、この本体部8aに巻装するようにコイルスプリングなどの弾性部材10が装着されている。この弾性部材10はプランジャ部材8の外周部とその外側に配置されている把持部材7の周段部7bとの間に位置するように設けられ、弾性部材10の上端部がフランジ部8bの内部側に取り付けられるとともに、弾性部材10の下端部が把持部材7の周段部7bの下部側に取り付けられている。この弾性部材10は、以下に説明する図1のクランプ状態において、プランジャ部材8と把持部材7にそれらを上下に離間する方向(ガイド軸3の軸方向)に弾性反発力を印加できるように構成されている。
【0019】
ここで図1は本実施形態のディスクチャック装置Aにおいて、ディスク1を把持した状態(クランプ状態)を示す。
図1に示す状態においては、弾性部材10の弾性反発力が把持部材7とプランジャ部材8をガイド軸3の軸方向に沿って引き離すように作用するので、把持部材7の上部側にプランジャ部材8が引き上げられる結果として、3つのボール部材9がガイド軸3の大径部3b直下の係止面3cに当接すると同時に、把持部材7の突起部7cが各ボール部材9の外周面に当接し、ガイド軸3と突起部7cでもって各ボール部材9を挟持する状態となるので、プランジャ部材8は図1に示す状態の位置よりも上方に移動することができない。この状態では、弾性部材10の弾性反発力が把持部材7の把持片7aをディスク1の中心孔1aの上面側(他側)の開口部周辺に押し付け、対向する側の受部5との間に挟み込む状態となるので、ディスク1を受部5と把持部材7とでその厚さ方向に挟持した状態とすることができる。
【0020】
次に、図2は本実施形態のディスクチャック装置Aにおいて、ディスク1の把持を解除した状態(アンクランプ状態)を示す。
プランジャ部材8を図2に示す如く把持部材7に対し引き下げて各ボール部材9を突起部7cよりも下側に移動させた状態において、各ボール部材9は突起部7cよりも下側の把持部材底部側に移動するので、各ボール部材9はガイド軸3の小径部3bの周囲において把持部材底部側の内面との間の隙間部分に移動し、ガイド軸3の小径部3cの径方向に若干移動できる状態となるので、この状態をディスク1の把持を解除した状態(アンクランプ状態)とすることができる。
【0021】
以上の如く構成されたディスクチャック装置Aは、図1に示す如くドーナツ円盤状のディスク1の中央孔1aを水平状態としている装着部材4に挿通し、中央孔1aの下側の開口部周辺をリング状の受部5の端面上に設置して、ディスク1を水平に支持することができる。そして、把持部材7に対してプランジャ部材8を弾性部材10の弾性反発力に応じて引き上げた状態としてボール部材9をガイド軸3の大径部3bの係止面3cに当接させると、把持部材7の突起部7cが各ボール部材9の外周面部に当接してガイド軸3と突起部7cとの間にボール部材9を挟持したロック状態とできるので、弾性部材10の弾性反発力がプランジャ部材8を介して把持部材7を下方に引き下げる方向に働き、把持部材7の把持片7aをディスク1の中央孔1aの上面側開口部周辺に押し付けてディスク1を受部5との間に水平に挟み込み、ディスク1を水平に把持した状態(クランプ状態)とすることができる。
【0022】
この状態でディスク1をモータ2の出力軸2Bとともに回転することによりディスク1を確実に把持した状態でディスク1を回転駆動することができる。
ここでモータ2とディスクチャック装置Aをディスク1の洗浄装置に設けているならば、ディスク1を高速回転させながら洗浄することができ、モータ2とディスクチャック装置Aをディスク1のリンス装置に設けているならば、ディスク1を高速回転させながらリンス処理することができ、モータ2とディスクチャック装置Aをディスク1のスピンコート装置に設けているならば、ディスク1を高速回転させながらスピンコート処理することができる。
なお、図1ではモータ2を水平に設置しガイド軸3を鉛直向きとした状態として示したので、ディスク1を水平に支持した状態とできるが、モータ2のガイド軸3を横向き、斜め向き等、いずれの向きに設置しても良いのは勿論であり、ガイド軸3の設置方向に合わせてディスク1の把持方向を揃えることができるのは勿論である。
【0023】
また、上述の構成のディスクチャック装置Aであるならば、ディスク1の中心孔1aをその内側から把持爪などで把持するのではなく、リング状の受部5と円筒状の把持片7aとでディスク1の厚さ方向両側から挟持する機構であるので、中心孔1aの内周面に疵や損傷を与えることなく、ディスク1の確実な把持操作ができる。従ってディスク1を高速回転させてもディスク1を損傷させることなく把持し、各種処理を行うことができる。
また、従来装置の把持爪などのように、ディスク1の中央孔1aの内部を損傷させることがなく、把持操作中にディスク1の構成材料の塵芥を発生させるおそれもないので、本発明のディスクチャック装置Aであるならば、磁気ディスクや光ディスクなどのようにディスク表面に薄膜を積層したり、エッチングやスピンコートなどの各種処理を行う場合であっても、ディスク1の構成材料の塵埃が発生することに起因する膜質の低下を引き起こすことが無く、処理品質不良を引き起こすおそれも少ない。
【0024】
図1に示すディスクチャック装置Aによるクランプ状態を解除するためには、プランジャ部材8を図2に示す如く把持部材7に対して押し込み操作する。プランジャ部材8が把持部材7に対して押し込まれると、プランジャ部材8とともにボール部材9がガイド軸3の大径部3b側から小径部3a側に移動するので、ボール部材9を把持していた突起部7cの拘束力が外れ、把持部材7の内周部においてボール部材9が小径部3aの径方向に若干移動自在となるので、図5に示す如く把持部材7とプランジャ部材8の全体をそのまま引き上げることで把持部材7とプランジャ部材8をガイド軸3から引き離すことができる。
その状態を詳述すると、図3に示す如くプランジャ部材8の上方からプランジャ部材8の外径と同等の直径の押圧ロッド12を押し込み、押圧ロッド12の周囲に配置したフック部13aを有する複数本の係止爪13で図4に示す如く把持部材7の上端のフランジ部7dを挟み込み、プランジャ部材8と把持部材7との位置関係を維持したままプランジャ部材8と把持部材7を引き上げることで、図5に示す如くプランジャ部材8と把持部材7をガイド軸3の上方に引き上げることができる。
【0025】
この操作によりディスク1は開放される。このように本発明のディスクチャック装置Aに押圧ロッド12と係止爪13を付設し設けておくことで、ディスク1を把持した状態からディスク1を開放した状態に変更することができ、この後、開放したディスク1をロボットハンド等の搬送機械を用いて次工程などに搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るディスクチャック装置の一実施形態においてディスクをクランプした状態を示す部分断面図。
【図2】同ディスクチャック装置においてディスクのクランプを解除した状態を示す部分断面図。
【図3】同ディスクチャック装置においてディスクのクランプを押圧ロッドにより解除した状態と把持爪の位置関係を示す部分断面図。
【図4】同ディスクチャック装置においてディスクのクランプを押圧ロッドにより解除し把持爪によりディスクチャック装置の一部を把持した状態を示す部分断面図。
【図5】同ディスクチャック装置においてディスクのクランプ状態を解除して把持部材とプランジャ部材とをガイド軸から分離した状態を示す部分断面図。
【図6】同ディスクチャック装置に適用されるプランジャ部材の一例を示す部分断面図。
【図7】同ディスクチャック装置の構成部品を示すもので、図7(A)はプランジャ部材の正面図、図7(B)はプランジャ部材の側面図、図7(C)はプランジャ部材のAA線に沿う断面図、図7(D)はプランジャ部材の底面図。
【図8】同ディスクチャック装置の分解斜視図。
【符号の説明】
【0027】
1…ディスク、1a…中央孔、2…モータ、3…ガイド軸、3a…小径部、3b…大径部(係止部)、3c…係止面、4…装着部材、5…受部、7…把持部材、7a…把持片、7c…突起部、8…プランジャ部材、8c…ボール受部、9…ボール部材、10…弾性部材、12…押圧ロッド、13…係止爪、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心孔を有するディスクに対し、その中心孔の一側開口部周辺と他側開口部周辺を前記ディスクの厚さ方向両側から挟み込むことにより、前記ディスクを把持するチャック装置であって、
前記ディスクの中心孔に挿通されるガイド軸と、前記ガイド軸の基端部側に設けられて前記ディスクの一側開口部周辺を受ける受部と、この受部に対して前記ガイド軸の軸方向に接近離間自在に配置された中空の把持部材と、該把持部材に沿って前記ガイド軸の軸方向に移動自在に設けられたプランジャ部材と、前記プランジャ部材において前記ガイド軸の基端部側に設けられたボール受部と、このボール受部に収容されて前記プランジャ部材とともにガイド軸の軸方向に移動自在に支持されたボール部材と、前記プランジャ部材と前記把持部材とに係止されて前記把持部材と前記プランジャ部材とを前記ガイド軸の軸方向に沿って離間する方向に付勢し、前記把持部材を前記ディスクの他側開口部周辺側に付勢する弾性部材とを具備して構成されるとともに、
前記ガイド軸の外周部に該ガイド軸の軸方向に沿う前記プランジャ部材の移動を前記ボール部材に当接して阻止する係止部が形成され、前記係止部に対する前記ボール部材の当接時に前記ガイド軸とともに前記ボール部材を挟持する突起部が前記把持部材の内周部に形成されてなることを特徴とするディスクチャック装置。
【請求項2】
前記ガイド軸に小径部と大径部が形成され、この大径部が係止部とされてなり、前記ボール部材が前記小径部に沿ってガイド軸の軸方向に移動自在にされて前記プランジャ部材が前記把持部材に沿って移動自在とされ、前記ボール部材を前記大径部に当接させることにより前記プランジャ部材の移動が阻止され、前記ボール部材が前記ガイド軸と前記突起部とに挟持された状態で前記弾性部材の弾性力により前記把持部材を前記ディスクに押し付け自在とされてなることを特徴とする請求項1に記載のディスクチャック装置。
【請求項3】
前記係止部に係止された状態のボール部材に対し、前記プランジャ部材を前記把持部材に沿って前記ガイド軸の基端部側に向けて押圧することで前記ボール部材を前記係止部と前記突起部の間から外して前記ボール部材をガイド軸の径方向に移動自在に開放することにより、前記把持部材と前記プランジャ部材を前記ガイド軸から引き抜き自在として、前記ディスクが解放自在とされてなることを特徴とする請求項1または2に記載のディスクチャック装置。
【請求項4】
前記プランジャ部材を前記ガイド軸の基端部側に押圧して前記把持部材による前記ディスクの把持を解除する押圧ロッドと、この押圧ロッドが前記ディスクの把持を開放した状態において前記把持部材を把持する係止爪とを備え、前記ディスクの把持を開放したまま前記プランジャ部材と前記把持部材と前記押圧ロッドと前記把持爪とを前記ガイド軸とディスクから離間自在としてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のディスクチャック装置。
【請求項5】
前記プランジャ部材のボール受部が前記ガイド軸の軸周りに複数形成され、各ボール受部にボール部材を収容させて前記ガイド軸の軸周りに複数のボール部材が配置されてなり、前記複数のボール部材を前記ガイド軸の係止部に当接させた状態において前記把持部材の突起部が複数のボール部材を前記ガイド軸との間に挟持できるように構成されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のディスクチャック装置。
【請求項6】
モータの出力軸の先端側に前記ガイド軸が設けられ、前記受部が前記モータの出力軸側に設けられ、前記把持部材と前記プランジャ部材とが前記ガイド軸の周囲側に設けられ、前記受部と前記把持部材により前記ディスクを把持した状態において前記ディスクがモータにより回転自在に支持されてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のディスクチャック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−27101(P2010−27101A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184210(P2008−184210)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】