説明

ディスクトレイ装置及び該ディスクトレイ装置を備えた記録再生装置

【課題】シャッター機構を備えたカートリッジに収容されたディスクを駆動するに際し、カートリッジのシャッターを開閉する際の衝撃音を抑制するともに、シャッター開閉を確実に実行できるようにする。
【解決手段】オープナー51〜53は、トレイのローディング/イジェクトに応じて、カートリッジのシャッターを開閉する溝部及びギア部に係合して、シャッターの開閉を行う。各オープナー51〜53は、それらの背面側に付勢手段が配設されている。本発明では、その付勢手段として、樹脂製の弾性体54〜58を用いる。これら樹脂製の弾性体54〜58の硬度を最適に制御することにより、従来問題となっていた衝撃音の発生や、シャッター開閉動作の不安定性を解消し、静かで動作信頼性の高いシャッター開閉装置を備えたディスクトレイ装置を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクトレイ装置及び該ディスクトレイ装置を備える記録再生装置に関し、より詳細には、ディスク型記録媒体である光ディスクを搬送して、光ディスクへの情報の書き込みや情報の読み出しを行うようにしたディスクトレイ装置と、そのディスクトレイ装置を備えた記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、DVDに比べてより大容量のデータを記憶することができる次世代光ディスクとして、波長400nm帯の青色光源を用いたブルーレイディスク(Blu-ray Disc:登録商標 以下「BD」とも称す)、及びHD DVD(High Definition DVD)が発表されている。例えば、ブルーレイディスクの場合は片面単層の記録容量は23.3GB、25GB、27GBの3種類が規格化されており、HD DVDの場合は片面単層の記録容量15GBのものが発表されており、20GBの仕様も検討されている。両者はいずれも記録容量が15GB(Giga byte)以上の記録容量を有し、例えばBDは、2時間のハイビジョン放送の全編を1枚のディスクに録画が可能であるため、これからのハイビション放送に対応可能な優れた性能を有している。このうち例えばBDは、現在普及しているCDやDVDと同じ直径12cmの光ディスクがカートリッジに収納され、カートリッジのまま記録再生装置に挿入されて使用されている。ここでは、記録再生装置が備えるトレイにBDのカートリッジがセットされると、トレイが記録再生装置本体の内部にカートリッジを搬送し、本体内部に設けられている光ピックアップによってBDに対するデータの書き込みや、BDからのデータの読み出しが実行される。また、近い将来には、カートリッジを用いないベアタイプのBDが市場に登場することが予想されている。
【0003】
BDを用いて記録再生を行う記録再生装置には、BDへの情報の書き込みや読み出しを行うディスクトレイ装置が備えられる。ディスクトレイ装置は、BDをセットするトレイを有し、そのトレイがローディングされて所定位置にBDを搬送することで、ディスクトレイ装置が備える光ピックアップにより、BDへの情報書き込みや情報の読み出しを実行することができる。
【0004】
カートリッジタイプのBDは、背面(記録再生層側)に開閉可能なシャッター機構が設けられていて、通常はシャッターが閉じられて保護され、光ピックアップによる情報の記録/再生時にはシャッターを開けてディスク媒体を露出させる必要がある。
ディスクトレイ装置において、トレイにセットされたBDがローディングされて記録/再生位置に搬送されるときに、ディスクトレイ装置が備えるシャッター開閉装置がBD側のシャッター開閉用部材に作用し、ローディングに従ってBDのシャッターが開けられて、カートリッジ内のディスク媒体が露出する。また、BDを取り出すときのイジェクト動作時には、トレイのイジェクト動作に応じて、ディスクトレイ装置のシャッター開閉装置が再度BDのシャッター開閉用部材に作用し、BDのシャッターが閉じられて保護される。
【0005】
図7及び図8は、ディスクトレイ装置の一般的なシャッター開閉装置の機構及びその作用を説明するための図で、図7はBDをローディングするときの動作を説明するための図、図8はBDをイジェクトするときの動作を説明するための図である。図7及び図8は、BDカートリッジ20の上側パッケージを外してディスクを取り除いた状態の概略図を示している。
図7及び図8において、51はリア側オープナー、52は中央オープナー、53はフロント側オープナー、20はBDカートリッジ、21はBDのシャッター開閉を行うシャッター部材、21aはシャッター部材の開口、22はリア側溝部、23は中央ギア部、24はフロント側溝部、25aはBDのシャッター部材が備える第1のプレート、25bはBDのシャッター部材が備える第2のプレート、26はBDカートリッジが備える開口である。
【0006】
上記リア側オープナー51,中央オープナー52,及びフロント側オープナー53は、ディスクトレイ装置に備えられたシャッター開閉装置の要部を構成する部材である。またリア側溝部22,中央ギア部23,フロント側溝部24を備えたシャッター部材21と、該シャッター部材21の作用により開口の開閉を行うプレート25a,25bとにより、BDカートリッジ20のシャッター開閉機構が実現される。
【0007】
BDカートリッジ20には、回転可能なリング状のシャッター部材21が設けられていて、このシャッター部材21の外周側に、リア側溝部22,中央ギア部23,及びフロント側溝部24が設けられている。そして、これらリア側溝部22,中央ギア部23,及びフロント側溝部24が外部からの作用を受けてシャッター部材21が回動することにより、該シャッター部材21の下側に設けられているプレート25a,25bが連動して動作することでシャッターの開閉が行われるようになっている。このシャッター部材21には、開口21aが設けられている。またBDカートリッジ20の背面側には、開口26が予め設けられている。
【0008】
上記のシャッター開閉装置は、ディスクトレイ装置のベースシャーシの側面に固定されていて、トレイのローディング及びイジェクトにより、トレイにセットされたBDカートリッジ20のシャッター部材21に作用するようになっている。
上記のリア側溝部22,中央ギア部23,及びフロント側溝部24は、それぞれBDカートリッジ20に対して進退する方向に変位が可能に取り付けられ、スプリングバネによってBDカートリッジ20に向かって付勢されている。
【0009】
BDカートリッジ20をローディングする場合、トレイにセットしたBDカートリッジ20は矢印Lの方向に進んでいく。トレイのローディング及びイジェクトの動作は、ディスクトレイ装置に設けられたトレイ搬送機構によって機械的に実行される。このトレイのローディング動作に従って、まずシャッター開閉装置のフロント側オープナー53が、BDカートリッジ20のシャッター部材21に設けられたフロント側溝部24に係合する(図7(A))この時点では、シャッター部材21に設けられたプレート25a,25bは閉じられている。
【0010】
そしてフロント側オープナー53とフロント側溝部24との係合により、シャッター部材21がトレイの移動に伴って矢印R1方向に回動していき、シャッター開閉装置の中央オープナー52と、BDカートリッジ20の中央ギア部23とが係合し、フロント側オープナー53は、フロント側溝部24から離れていく(図7(B))。
この時点で、シャッター部材21に設けられたプレート25a,25bの間隔が開き、開口26と重なる部分(斜線部分)でディスク媒体の記録再生面側が一部露出する。
【0011】
そしてさらにトレイが移動すると、シャッター開閉装置のリア側オープナー51が、BDカートリッジ20のリア側溝部22に係合し、シャッター部材21をさらに回動させてBDカートリッジ20のシャッターを完全に解放させる(図7(C))。図7(C)の位置で、ディスクトレイのターンテーブルとクランパーによってBDカートリッジ20内のディスク媒体がチャッキングされる。
この時点では、シャッター部材21に設けられたプレート25a,25bが完全に開き、開口26のほぼ全面領域(斜線部分)が解放されてディスク媒体の記録再生面側が露出し、ディスクトレイ装置の光ピックアップによる情報の記録/再生が可能となる。
【0012】
図8におけるイジェクト動作の場合は、上記ローディング時と逆の動作が行われ、BDカートリッジのシャッターが閉められた状態でBDカートリッジを取り出すことができる。すなわち、図8(A)のディスク媒体のチャッキング位置から、矢印E方向にトレイがイジェクトされると、BDカートリッジ20のリア側溝部22に係合しているリア側オープナー51の作用によって、シャッター部材21が矢印R2方向に回動する。
【0013】
そしてさらにトレイが矢印E方向に移動していくと、シャッター開閉装置の中央オープナー52とBDカートリッジ20の中央ギア部23が係合し、シャッター部材21を継続して回動させる(図8(B))。シャッター部材21に設けられたプレート25a,25bはイジェクト動作に従って閉まっていく。
そしてさらにトレイが矢印E方向に移動し、シャッター開閉装置のフロント側オープナー53がBDカートリッジ20のフロント側溝部24に係合し、BDカートリッジ20の開口26が、プレート25a,25bを備えたシャッター部材21によって完全に塞がれる(図8(C))。
【0014】
図9は、上記のようなシャッター開閉装置の構成例を説明するための斜視図で、ディスクトレイ装置のベースシャーシに設置されるシャッター開閉装置の内側の斜視図を図9(A)に、シャッター開閉装置の外側の斜視図を図9(B)に示すものである。図9において、50は各オープナーを設置するパネル、61,62,63,64はコイルによるバネ、65はシャッター開閉装置の外側表面を押さえる押さえ板で、その他、図7及び図8と同一の要素にはこれらと同じ符号が付してある。
【0015】
図9において、リア側オープナー51,中央オープナー52,及びフロント側オープナー53は、上記図7及び図8に示すようにトレイのローディング/イジェクト動作に応じてBDカートリッジのシャッター開閉機構に作用して、BDカートリッジのシャッターの開閉を行う。
【0016】
上述したように、上記のリア側オープナー51,中央オープナー52,及びフロント側オープナー53は、それぞれBDカートリッジ20に対して進退する方向に変位が可能に取り付けられ、BDカートリッジ20に向かって付勢されている。
具体的には、図9に示すように、パネル50の所定の位置に、リア側オープナー51,中央オープナー52,及びフロント側オープナー53がそれぞれパネル50の外側から差し込まれている。これら各オープナー51,52,53は、パネル50の内側壁部に当接して所定の位置より内側には飛び出さないようになっている。そして各オープナー51,52,53の頂部が、その位置でBDカートリッジに作用するようになっている。
【0017】
そしてパネル50の裏側では、各オープナー51,52,53の背面側(パネル外側)にそれぞれバネ61,62,63,64が配設され、押さえ板65によって押さえられている。押さえ板65はパネル50に取り付けられ、各バネ61〜64を圧縮した状態で保持する。このバネの付勢力により、各オープナー51,52,53が、パネル50の内側(すなわちBDカートリッジ側)に付勢される。
【0018】
図7及び図8に示すトレイのローディング動作やイジェクト動作時に、BDカートリッジ20のシャッター部材21に各オープナー51,52,53が係合する際、これら係合とその解除とを円滑に行うことができるように、各オープナー51,52,53がBDカートリッジ方向に付勢され、かつその付勢力に抗してパネル外側方向に変位可能に構成されている。
【0019】
例えば特許文献1では、カートリッジディスクとベアディスクの両方を搬送可能な搬送機構において、カートリッジの搬送を円滑に行うようにした構成が開示されている。ここでは、カートリッジディスクを搬送するときにクランパーが当たらない位置までクランパーを上方に逃がし、その後にクランパーのホルダー部材を回動させてクランパーをディスク媒体に押しつけるようにして、搬送機構の薄型を図った構成が開示されている。
【特許文献1】特開平10−312628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上記のようなシャッター開閉装置では、コイルによるバネ61〜64を用いて、各オープナー51〜53への付勢力を付与している。
各オープナー51〜53がBDカートリッジ20のシャッター部材21に作用してパネル外側方向に一旦変位し、バネ61〜64の付勢力によって再度パネル内側方向に戻るとき、バネの付勢力が強いために、各オープナー51〜53とパネル50の壁部、あるいは各オープナー51〜53とBDカートリッジのシャッター部材21とが当接する衝撃音(“パチン”というような音)が発生し、使用上気になる問題となる。
【0021】
また、例えば、フロント側オープナー53では、ローディング動作の際は、BDカートリッジ20のシャッター部材21に対してまっすぐ後方に後退してもよいが、イジェクト動作の際には、若干フロント側に傾きながら後退する方が好ましい。すなわち、イジェクト時には、イジェクト動作の最後(図8(C))で、フロント側オープナー53がシャッター部材21のフロント側溝部24の回動に追従しながら、最後までシャッター部材21を回動させることにより、BDカートリッジ20のシャッターを完全に閉め切ることができる。しかしながら、従来のコイルのバネを使用した形態では、このような動きを円滑に行うことは難しい。
【0022】
また上記特許文献1には、カートリッジディスクの円滑搬送の思想はあるものの、上記のようなシャッター開閉装置における課題については、一切触れられていない。
【0023】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたもので、ブルーレイディスク(BD)等のシャッター機構を備えたカートリッジのシャッター開閉を行う際に、シャッターオープナーによる衝撃音の発生を抑えて静かな動作を実現し、かつシャッター開閉を確実に実行できるようにしたディスクトレイ装置、及び該ディスクトレイ装置を備えた記録再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題を解決するために、第1の技術手段は、シャッター機構を備えたカートリッジに収容された光ディスクを搬送するトレイと、カートリッジがトレイにセットされたときに、トレイのローディング/イジェクト動作に応じてシャッター機構を開閉するためのシャッター開閉装置とを有するディスクトレイ装置であって、シャッター開閉装置は、カートリッジのシャッター機構が備える溝部及びギア部に係合する部材であるオープナーを有し、オープナーは、溝部及びギア部が通過する通過路上で、該オープナーの一部がギア部または溝部に作用する位置に設置されるとともに、カートリッジに対して進退する方向に変位が可能に取り付けられ、シャッター開閉装置は、カートリッジに向かってオープナーを付勢する付勢手段を有し、付勢手段として、樹脂製の弾性体を用いることを特徴としたものである。
【0025】
第2の技術手段は、第1の技術手段において、オープナーは、ディスクトレイ装置のフロント側に設けられるフロント側オープナーと、ディスクトレイ装置のリア側に設けられるリア側オープナーと、フロント側オープナーとリア側オープナーとの間に設けられる中央オープナーの3つの部材から構成されていることを特徴としたものである。
【0026】
第3の技術手段は、第1または第2の技術手段において、搬送されるカートリッジにオープナーが押圧され、オープナーがカートリッジの反対方向に変位した後、再度前記付勢手段の付勢力により元の位置に戻るとき、樹脂製の弾性体の付勢力が最適化されていることにより、オープナーが設置されるシャッター開閉装置の壁部との衝撃が緩和され、オープナーと壁部との衝突による音が抑制されることを特徴としたものである。
【0027】
第4の技術手段は、第1ないし第3のいずれか1の技術手段において、付勢手段として、樹脂製の弾性体と、コイル状のバネとを併用することを特徴としたものである。
【0028】
第5の技術手段は、第2ないし第4のいずれか1の技術手段において、一つのオープナーの部材に対して、樹脂製の弾性体をカートリッジの搬送方向に複数配設し、複数の弾性体の硬度を、互いに異なるように設定することを特徴としたものである。
【0029】
第6の技術手段は、第5の技術手段において、フロント側オープナーに対して、二つの弾性体を配設し、二つの弾性体のうち、フロント側の弾性体の硬度より、リア側の弾性体の硬度を大きくしたことを特徴としたものである。
【0030】
第7の技術手段は、第1ないし第6のいずれか1の技術手段において、樹脂製の弾性体は、マイクロセル構造を有するウレタンフォームであることを特徴としたものである。
【0031】
第8の技術手段は、第1ないし第7のいずれか1の技術手段におけるディスクトレイ装置を備え、ディスクトレイ装置により搬送されるブルーレイディスクに対する情報の記録と、ブルーレイディスクに記録された情報の再生を行うことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、ブルーレイディスク(BD)カートリッジのシャッター開閉を行う際に、シャッターオープナーによる衝撃音の発生を抑えて静かな動作を実現し、かつシャッター開閉を確実に実行できるようにしたディスクトレイ装置、及び該ディスクトレイ装置を備えた記録再生装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に本発明のディスクトレイ装置の実施形態を添付された図面を参照しながら具体的に説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、従来例と同様の機能を有する部分には同じ符号を付けその繰り返しの説明は省略する。
図1は、本発明のディスクトレイ装置の構成例を示す斜視概略図である。図1において、1はベースシャーシ、2はブルーレイディスク(BD)等の光ディスクを保持して回転させるターンテーブル、3はターンテーブルの回転を制御するスピンドルモータ、4は光ディスクの記録再生層に光スポットを形成して、データの書き込み及び読み出しを行う光ピックアップ、5はブルーレイディスクのカートリッジを開閉させるためのシャッター開閉装置である。
【0034】
さらに図1において、10は光ディスクを搬送するためのトレイ、11は光ディスクは押さえるための第1の押さえレバー、12は同じく光ディスクを押さえるための第2の押さえレバー、13は縦置き時にベアディスクを保持するためのディスクホルダー、14はトレイの移動に応じてクランパー(図示せず)を変位させるためのトレイカム部である。
【0035】
図1は、トレイ10がベースシャーシ1の内部にローディングされた状態を示している。ベースシャーシ1上に設けられているトレイ搬送機構が動作することにより、矢印A方向にトレイ10が引き出されて、ユーザがBDカートリッジをセットすることができる。
そして再びトレイ搬送機構を動作させると、トレイ10とともにBDカートリッジがベースシャーシ1の内部にローディングされる。BDカートリッジを排出するときは、再度トレイ10を矢印A方向に引き出す。
【0036】
図2は、BDカートリッジ20をトレイ10に装着してローディングしたときの状態を示す図である。図2の状態では、BDカートリッジ20は、シャッター開閉装置5が備えるオープナーにより、背面(ディスク媒体の記録再生面)側のシャッターが解放されている。
【0037】
図1及び図2のディスクトレイ装置は、上記のようなカートリッジタイプのディスクのみならず、ベアディスクにも対応可能になっている。実際には、図1のベースシャーシ1に対して、図示しないクランパープレートが取り付けられ、クランパープレートに設けられたクランパーが動作することにより、ローディングされたベアディスク、もしくは上面(ディスク媒体のレーベル面)が解放されたカートリッジディスクを、ターンテーブル2との間でクランプ(チャッキング)する。この状態で、光ピックアップ4による光ディスクへのデータの書き込みや光ディスクからのデータの読み込みを行うことができる。
【0038】
また、光ディスクの前面が非開口のカートリッジタイプを用いる場合は、トレイカム部14がクランパー動作機構に当接しても、クランパー30の変位が止められて、光ディスクのチャッキングが阻害されないように構成されている。この場合は、カートリッジに内蔵されているクランパーとターンテーブル3とによって光ディスクがチャッキングされる。
【0039】
本実施形態の特徴は、シャッター開閉装置における従来の問題を解決したオープナーの付勢部材にある。
図3は、本発明のディスクトレイ装置に適用されるシャッター開閉装置の構成例を説明するための斜視図で、ディスクトレイ装置のベースシャーシに設置されるシャッター開閉装置の内側の斜視図を図3(A)に、シャッター開閉装置の外側の斜視図を図3(B)に示すものである。図3において、54はリア側オープナー51を背面側(外側)から支持する弾性体、55,56は中央オープナー52を背面側(外側)から支持する弾性体、57,58はフロント側オープナー53を背面側(外側)から支持する弾性体である。パネル50の外側には、図9に示したような押さえ板65が取り付けられる。
【0040】
本実施形態のシャッター開閉装置も、従来例の図9に示したように、3つのオープナー51〜53を備えている。図4は、個々のオープナーの構成例を示す斜視図で、リア側オープナー51を図4(A)に、中央オープナー52を図4(B)に、フロント側オープナー53を図4(C)に示すものである。
そして、これらオープナー51〜53によるBDカートリッジ20のシャッター開閉は、図7及び図8に示す動作にて実行される。
【0041】
ここで本実施形態では、各オープナー51〜53を背面側から支持する部材として、従来例のコイルによるバネの代わりに、樹脂製の弾性体54〜58を用いている。
これら樹脂製の弾性体54〜58の硬度を最適に制御することにより、従来問題となっていた衝撃音の発生や、シャッター開閉動作の不安定性を解消し、静かで動作信頼性の高いシャッター開閉装置を備えたディスクトレイ装置を得ることができるようになる。ここでは、弾性体54〜58の硬度を最適化することによって、変形した弾性体54〜58が復元するときの速度(反発力)を最適化することができる。
【0042】
樹脂製の弾性体54〜58は、その所望の特性に応じて適宜素材を選択することができる。例えば、樹脂材料としてポロン(商品名)を適用することができる。ポロンは、圧縮残留歪みが小さく、優れたエネルギー吸収性を持ち、高反発,高シール性,非汚染性等の特徴を備えたマイクロセルウレタンフォームである。勿論、本発明では、上記素材に限定されることなく、樹脂製の弾性体54〜58の材料を適宜選択することができる。
【0043】
樹脂製の弾性体54〜58を使用することにより、一旦外側方向に後退したオープナー51〜53が内側方向に戻る際に、従来のコイルを用いたバネによる急激な動きが生じることがなく、弾性体54〜58の反発力により緩やかにオープナー51〜53が元の位置に戻る。これにより、オープナー51〜53が、パネル50の壁部やBDカートリッジ20のシャッター部材21に急激に当接しなくなるため、従来問題となっていた音の発生が解消される。また、弾性体自体にも一般に吸音特性があるため、音の発生をさらに抑えることができる。例えば、上記のようなマイクロセル構造体や他の発泡体を用いれば、その吸音特性はさらに高いものとなる。
【0044】
そしてさらに、本実施形態では、樹脂製の弾性体54〜58の硬度をその設置場所によって適宜変更することができる。例えば、前述したように、フロント側オープナー53は、イジェクト動作の際には、若干フロント側に傾きながら後退する方が好ましい。すなわち、イジェクト時には、イジェクト動作の最後(図8(C))で、フロント側オープナー53がシャッター部材21のフロント側溝部24の回動に追従しながら、最後までシャッター部材21を回動させることにより、BDカートリッジ20のシャッターを完全に閉め切ることができる。
【0045】
このような動作を信頼性もって実現するために、フロント側オープナー53の背面側(外側)に配設する樹脂製の弾性体57、58のうち、フロント側の弾性体58を相対的に柔らかく(硬度を低く)し、リア側の弾性体57を相対的に堅く(硬度を高く)する。このような構成にすると、ローディング時には、リア側の弾性体57が相対的に強く押されてフロント側オープナー53はほぼ傾かずに後退していくが、逆にイジェクト時には、フロント側の弾性体58が相対的に柔らかいため、フロント側オープナー53がフロント側に傾きながら後退することになる。こうして、フロント側オープナー53がシャッター部材21のフロント側溝部24の回動に追従しながら、最後までシャッター部材21を回動させることにより、BDカートリッジ20のシャッターを完全に閉め切ることができる。
【0046】
図5は、本発明のディスクトレイ装置に適用されるシャッター開閉装置の他の構成例を説明するための斜視図で、ディスクトレイ装置のベースシャーシに設置されるシャッター開閉装置の内側の斜視図を図5(A)に、シャッター開閉装置の外側の斜視図を図5(B)に示すものである。
本構成例は、図3の構成例に用いた樹脂製の弾性体と従来例で示したコイルによるバネとを併用した例を示すものである。図5の例では、リア側オープナー51とフロント側オープナー53に背面側(外側)には、図3に示すような樹脂製の弾性体54,57,58を用い、中央オープナー52の背面側(外側)には、従来の圧縮コイルによるバネ62,63を用いる。中央オープナー52は、その長い形状から、他のオープナーほど衝撃音が発生しにくいため、コイルタイプのバネ62,63を用いて構成してもよい。このときに、バネ62,63の反発力を最適化しておくとよい。
【0047】
またフロント側オープナー53には、バネ64と弾性体57,58とをともに備えるようにしてもよい。バネ64で基礎となる反発力を付与し、樹脂弾性体57,58で前後の反発力のバランスを整えるようにすることができる。
なお、バネと樹脂弾性体を併用する構成は、上記の配置に限定されることなく、オープナーの形状、パネルの形状、樹脂やバネの物性等に応じて適宜設定することができる。
【0048】
以上の構成により、本実施形態のディスクトレイ装置は、ブルーレイディスク(BD)カートリッジのシャッター開閉を行う際に、シャッターオープナーによる衝撃音の発生を抑えて静かな動作を実現し、かつシャッター開閉を確実に実行することができる。
【0049】
上記のごとくのディスクトレイ装置を使用して、記録再生装置を提供することができる。図6は、記録再生装置の構成例を説明するための図である。記録再生装置100は、複数の記録媒体を適宜使い分けることができるように構成されている。例えば、図6の例では、記録再生装置100には、BD記録再生装置101、DVD記録再生装置102、HDD記録再生装置103が備えられ、これら複数の記録媒体が選択的に使用可能となっている。また、記録再生装置100にチューナ部を設けることで、例えば、テレビ放送されたコンテンツ等を記録媒体に記録することができる。また、複数の記録媒体間におけるデータのダビングやムーブなどの処理も実行できる。
【0050】
記録再生装置101には、ディスクタイプの記録媒体をセットするためのディスクトレイ装置が設けられ、例えば、図6の例では、DVD用のディスクトレイ装置と、BD用のディスクトレイ装置が個々に設けられ、ユーザはそれぞれのディスクトレイ装置を利用して、該当する各記録媒体を記録再生装置内に搬送させることができるようになっている。これらディスクトレイ装置に上記の実施形態のごとくのディスクトレイ装置を適用することにより、ブルーレイディスク(BD)カートリッジのシャッター開閉を行う際に、シャッターオープナーによる衝撃音の発生を抑えて静かな動作を実現し、かつシャッター開閉を確実に実行できるようした記録再生装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明のディスクトレイ装置の構成例を示す斜視概略図である。
【図2】BDカートリッジをトレイに装着してローディングしたときの状態を示す図である。
【図3】本発明のディスクトレイ装置に適用されるシャッター開閉装置の構成例を説明するための斜視図である。
【図4】個々のオープナー個々の構成例を示す斜視図である。
【図5】本発明のディスクトレイ装置に適用されるシャッター開閉装置の他の構成例を説明するための斜視図である。
【図6】記録再生装置の構成例を説明するための図である。
【図7】ディスクトレイ装置の一般的なシャッター開閉装置の機構及びその作用を説明するための図である。
【図8】ディスクトレイ装置の一般的なシャッター開閉装置の機構及びその作用を説明するための図である。
【図9】シャッター開閉装置の構成例を説明するための斜視図である。
【符号の説明】
【0052】
1…ベースシャーシ、2…ターンテーブル、3…スピンドルモータ、4…光ピックアップ、5…シャッター開閉装置、10…トレイ、14…トレイカム部、20…BDカートリッジ、21…シャッター部材、21a…開口、22…リア側溝部、23…中央ギア部、24…フロント側溝部、25a…第1のプレート、25b…第2のプレート、26…開口、30…クランパー、50…パネル、51…リア側オープナー、52…中央オープナー、53…フロント側オープナー、54〜58…樹脂製の弾性体、61〜64…バネ、65…押さえ板、100…記録再生装置、101…BD記録再生装置、102…DVD記録再生装置、103…HDD記録再生装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャッター機構を備えたカートリッジに収容された光ディスクを搬送するトレイと、前記カートリッジが前記トレイにセットされたときに、該トレイのローディング/イジェクト動作に応じて前記シャッター機構を開閉するためのシャッター開閉装置とを有するディスクトレイ装置であって、該シャッター開閉装置は、該カートリッジのシャッター機構が備える溝部及びギア部に係合する部材であるオープナーを有し、該オープナーは、前記溝部及びギア部が通過する通過路上で、該オープナーの一部が前記ギア部または溝部に作用する位置に設置されるとともに、前記カートリッジに対して進退する方向に変位が可能に取り付けられ、前記シャッター開閉装置は、前記カートリッジに向かって前記オープナーを付勢する付勢手段を有し、該付勢手段として、樹脂製の弾性体を用いることを特徴とするディスクトレイ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のディスクトレイ装置において、前記オープナーは、ディスクトレイ装置のフロント側に設けられるフロント側オープナーと、ディスクトレイ装置のリア側に設けられるリア側オープナーと、前記フロント側オープナーと前記リア側オープナーとの間に設けられる中央オープナーの3つの部材から構成されていることを特徴とするディスクトレイ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のディスクトレイ装置において、搬送される前記カートリッジに前記オープナーが押圧され、該オープナーが該カートリッジの反対方向に変位した後、再度前記付勢手段の付勢力により元の位置に戻るとき、前記樹脂製の弾性体の付勢力が最適化されていることにより、前記オープナーが設置される前記シャッター開閉装置の壁部との衝撃が緩和され、前記オープナーと前記壁部との衝突による音が抑制されることを特徴とするディスクトレイ装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1に記載のディスクトレイ装置において、前記付勢手段として、前記樹脂製の弾性体と、コイル状のバネとを併用することを特徴とするディスクトレイ装置。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれか1に記載のディスクトレイ装置において、一つの前記オープナーの部材に対して、前記樹脂製の弾性体を前記カートリッジの搬送方向に複数配設し、該複数の弾性体の硬度を、互いに異なるように設定することを特徴とするディスクトレイ装置。
【請求項6】
請求項5に記載のディスクトレイ装置において、前記フロント側オープナーに対して、二つの前記弾性体を配設し、該二つの弾性体のうち、フロント側の弾性体の硬度より、リア側の弾性体の硬度を大きくしたことを特徴とするディスクトレイ装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1に記載のディスクトレイ装置において、前記樹脂製の弾性体は、マイクロセル構造を有するウレタンフォームであることを特徴とするディスクトレイ装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1に記載のディスクトレイ装置を備え、該ディスクトレイ装置により搬送されるブルーレイディスクに対する情報の記録と、該ブルーレイディスクに記録された情報の再生を行うことを特徴とする記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−155715(P2006−155715A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−342428(P2004−342428)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】