説明

ディスクブレーキ装置

【課題】ディスクロータの摺動面に押し当てられる摩擦材の面圧が不均一であると、ブレーキ鳴き、ブレーキ振動および摩擦材の偏摩耗が発生する場合がある。
【解決手段】ディスクブレーキ装置は、車輪とともに回転するディスクロータ26の摩擦摺動面に対向して配置される摩擦材32と、摩擦材32のディスクロータに対向しない面を支持する支持面64と、斜面60が形成された面とを有する裏金部材30と、斜面60に接する接触部材34と、ディスクロータ26の回転軸と平行な方向に接触部材34を押圧して、摩擦材32をディスクロータ26の摩擦摺動面に押し当てるピストン46とを備える。ここで、裏金部材30に形成された斜面60は略平行に対向して設けられ、接触部材34は、斜面60に接する斜面70を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクブレーキ装置に関し、より詳細には、ディスクロータとブレーキパッドとの接触面圧の不均一化を軽減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にディスクブレーキ装置においては、キャリパの内側にディスクロータを挟んだ状態で、摩擦材と裏金部材から構成される一対のブレーキパッドが配設されている。車両制動時には、一対のブレーキパッドによりディスクロータが挟圧される。このようなディスクブレーキ装置において、ピストンの押圧力が摩擦材の押圧位置に集中するために、ブレーキパッドがディスクロータに対して均一に押し付けられないことがある。この場合、制動時に面圧不均一に起因するブレーキ振動やブレーキ鳴きが発生したり、ブレーキパッドの偏摩耗が生じたりすることがある。
【0003】
ブレーキパッドの面圧不均一に起因する種々の不具合を解消する様々な技術が知られている。例えば、特許文献1には、制動時に押圧力が集中する部分の厚さを他の部分の厚さと比較して大きくなるようにブレーキパッドの摩擦材を形成する技術が開示されている。ここでは、摩擦材における厚さが大きい部分の圧縮剛性は厚さが小さい部分の圧縮剛性と比較して低いので、ピストンによる押圧力が均一でない場合でも、摩擦材全体における不均一な面圧が軽減されるとしている。
【特許文献1】特開平9−280284号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1に開示された技術において、薄い部分についてもある程度の厚みを確保する必要があるため、摩擦材の一部を厚くすると、ブレーキパッド自体も厚くなってしまう。また、ブレーキパッドの厚さを変化させないように摩擦材の厚さが大きい部分と接する裏金部材の厚さを小さくすると、制動時に発生する摩擦熱に起因して裏金部材の薄い部分が変形してしまう場合がある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、ディスクロータとブレーキパッドとの接触面圧の不均一化を軽減する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のディスクブレーキ装置は、車輪とともに回転するディスクロータの摩擦摺動面に対向して配置される摩擦材と、摩擦材のディスクロータに対向しない面を支持する第1面と、斜面が形成された第2面とを有する裏金部材と、第2面に形成された斜面に接する接触部材と、ディスクロータの回転軸と平行な方向に接触部材を押圧して、摩擦材をディスクロータの摩擦摺動面に押し当てる押圧手段と、を備える。
【0007】
この態様によれば、押圧された接触部材が裏金部材の第2面に形成された斜面に押し当てられると、その斜面に垂直な方向に押圧力の分力が発生する。この力は、裏金部材において押圧位置から端部へ向かう方向に伝播する。これによって、押圧力が摩擦材の押圧位置に集中することを回避でき、ブレーキパッドがディスクロータに押しつけられるときの面圧(以下、「パッド面圧」ともいう)が不均一になる事態を抑制できる。
【0008】
裏金部材および接触部材は、接触部材が第2面に形成された斜面に接した状態において、接触部材の先端面が裏金部材に接しないように形成されていてもよい。この態様によれば、ディスクロータの回転軸に平行な方向の押圧力が接触部材の先端面から摩擦材に直接伝播することを回避できる。これによって、押圧力が摩擦材の一部に集中することを回避でき、パッド面圧が不均一になる事態をより良好に抑制できる。
【0009】
第2面に形成された斜面は略平行に対向して設けられ、接触部材は、第2面に対向して設けられた斜面に接する面を有してもよい。この態様によれば、第2面に押圧力を付与することで斜面に垂直な方向に分力が発生する。この力は、斜面から互いに離れる方向に伝播する。これによって、裏金部材から摩擦材に伝わる力をより広範囲に発生させることができる。従って、押圧力を摩擦材の端部付近にも伝播させることができ、パッド面圧が不均一になる事態をより良好に抑制できる。
【0010】
第2面に形成された斜面はテーパ面であり、接触部材は、第2面に形成されたテーパ面に接する面を有するテーパ状部材であってもよい。この態様によれば、第2面に押圧力を付与することで斜面に垂直な方向に分力が発生する。この力は、テーパ面から放射状に伝播する。これによって、裏金部材から摩擦材に伝わる力をより広範囲に発生させることができる。従って、押圧力を摩擦材の端部付近にも伝播させることができ、パッド面圧が不均一になる事態をより良好に抑制できる。
【0011】
本発明の別の態様もまた、ディスクブレーキ装置である。この装置は、車輪とともに回転するディスクロータの摩擦摺動面に対向して配置される摩擦材と、摩擦材のディスクロータに対向しない面を支持する裏金部材と、ディスクロータの回転軸に平行な方向に裏金部材を押圧して、摩擦材をディスクロータの摩擦摺動面に押し当てる押圧手段と、を備える。裏金部材における押圧手段に押圧される位置の近傍に、裏金部材の短手方向に実質的に平行な方向にスリットが形成されている。
【0012】
この態様によれば、ディスクロータの摩擦摺動面との摩擦による発熱に起因して摩擦材が長手方向に膨張したとき、摩擦材を支持する裏金部材は、摩擦材の膨張により裏金部材の長手方向に引っ張られる。このとき、裏金部材の短手方向に形成されたスリットが開き、裏金部材は摩擦材の膨張に追従して変形する。これによって、裏金部材が摩擦材の膨張による変形に追従できずに、その端部が反るように変形することを回避できる。この結果、パッド面圧が不均一になる事態を抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のディスクブレーキ装置によれば、パッド面圧の不均一化を軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本実施の形態に係るディスクブレーキ装置をディスクロータと垂直に切断したときの断面図である。ディスクブレーキ装置10は、図示しない車体側に固定するためのマウンティングと、図1の左右方向に変位可能にマウンティングに支持されるキャリパ16とを備えている。キャリパ16は、内部にピストン46を有するシリンダ部58と、ディスクロータ26をまたいでシリンダ部58と対向する爪部56とを有している。
【0015】
シリンダ部58と爪部56との間には、車輪とともに同軸に回転するディスクロータ26を挟んで、摩擦材32と摩擦材42が対向して配設されている。摩擦材32および摩擦材42のディスクロータ26に対向していない側には、それぞれ裏金部材30、40が貼着されており、裏金部材30は摩擦材32を、裏金部材40は摩擦材42を支持している。ここで、摩擦材32、裏金部材30、後述する接触部材34、皿ばね36およびピン38によりインナブレーキパッド33が構成され、摩擦材42および裏金部材40によりアウタブレーキパッド43が構成される。以下、ディスクロータ26において摩擦材32と対向する側を「インナ側」、摩擦材42と対向する側を「アウタ側」ともいう。
【0016】
裏金部材30の摩擦材32と貼着されていない面には、略平行に対向した斜面60が設けられている。この斜面60と接する斜面を有する接触部材34は、皿ばね36を介してピン38によって裏金部材30に取り付けられている。接触部材34が裏金部材30に取り付けられた状態において、裏金部材30の斜面60と接触部材34の斜面とは接し、それぞれの斜面が同一角度で角度付けされていることが好ましい。裏金部材30および接触部材34の構造については図2および図3を用いて詳述する。
【0017】
ピストン46は中空であり、接触部材34の裏金部材30と接していない側の面を押圧し得る位置に配置されている。シリンダ部58において、ピストン46を収納する収納部59の内周面をその内周に沿って切り欠いて形成した円環状の溝にピストンシール45が嵌合している。ピストンシール45は、摩擦材32とディスクロータ26との間隔が一定となるよう調整するための円環状の部材であり、その内周面はピストン46の外周面と接している。また、爪部56の先端には、裏金部材40の摩擦材42を支持していない側の面に平面で接触する押圧面50が形成されている。外部から供給される油圧によって、ピストン46がディスクロータ26の方向に突き出されると、摩擦材32がディスクロータ26のインナ側に押し付けられるとともに、その反力でキャリパ16がピストン46の突き出し方向とは反対の方向へ移動され、爪部56の押圧面50により摩擦材42がディスクロータ26のアウタ側に押し付けられる。これにより、ディスクロータ26が摩擦材32および摩擦材42により挟圧されて、車輪が制動される。
【0018】
図2は、図1のA−A断面におけるインナブレーキパッド33を示す図である。上述したように、裏金部材30は、摩擦材32と貼着する面64(以下、「支持面64」ともいう)において摩擦材32を支持している。裏金部材30には、支持面64と平行なピストン46側の面66(以下、「上面66」ともいう)を切り欠いた凹部が形成されている。この凹部は、裏金部材30において、図2の奥行き方向に延びる底面62および2つの斜面60によって形成されている。ここで、斜面60は、平行して対向し、底面62から上面66に向かうにつれて凹部の幅が広がるように形成されている。
【0019】
接触部材34は、斜面60と接する面70(以下、「斜面70」ともいう)を有している。斜面60および斜面70は、ピストン46の押圧位置の少なくとも一部に形成されている。斜面60と斜面70とが接した状態において、接触部材34の底面72は裏金部材30の底面62と接しない。裏金部材30および接触部材34のそれぞれの中心には、ピン38を挿通するための穴が形成されている。ピン38が皿ばね36を介して接触部材34を挿通するとともに裏金部材30をも挿通して摩擦材32に固定され、接触部材34は裏金部材30に接した状態で固定される。このように、接触部材34を裏金部材30に固定することにより、車両走行中に接触部材34が振動して裏金部材30やピストン46に当たって騒音が発生することを抑制できる。
【0020】
図3は、裏金部材30の上面66側からディスクロータ26の回転軸に平行な方向にインナブレーキパッド33を見た図である。上述したように、裏金部材30の斜面60および接触部材34の図示しない斜面70は互いに接した状態で裏金部材30の短手方向全体にわたって平行に対向している。
【0021】
図2に戻って、ピストン46およびディスクロータ26が二点鎖線で示されている。車両制動時において、ピストン46は、ディスクロータ26の回転軸に平行な矢印80の方向に接触部材34の上面74を押圧する。これによって、接触部材34の斜面70は、裏金部材30の斜面60にピストン46の押圧力によって押し当てられる。ここで、斜面60および斜面70は、押圧力が働く矢印80の方向に対して角度をもって形成されているので、斜面60において矢印80の方向の押圧力の分力、すなわち斜面60に垂直な力および斜面60に平行な力が生じる。
【0022】
斜面60に垂直な力は裏金部材30において互いに離れる方向、すなわち長手方向両端部に向かって広がりながら伝播する。このようにして、裏金部材30の内部を伝播する力の向きを分散させることができるため、パッド面圧の部位による差が小さくなる。これによって、裏金部材30および摩擦材32の押圧位置、すなわち中央近傍に押圧力が集中してパッド面圧が不均一になることに起因する、制動時のブレーキ鳴き、ブレーキ振動および摩擦材32の偏摩耗を抑制できる。
【0023】
さらに、図3に示したように、斜面60と斜面70とが接する面が裏金部材30の短手方向全体にわたって形成されるので、押圧力の斜面60に垂直な方向の分力は摩擦材32上に広がるように生じる。これによって、ピストン46からの押圧力が矢印80の方向に摩擦材32に伝えられる場合と比較して、パッド面圧が不均一になる事態がより良好に抑制され、上記のブレーキ鳴き等の抑制の効果は増大する。
【0024】
また、インナブレーキパッド33において接触部材34の底面72は裏金部材30の底面62と接しない。従って、ピストン46により加えられた押圧力が接触部材34の底面72から摩擦材32の底面62に直接伝播しない。これによって、押圧力が摩擦材32の押圧位置、すなわち摩擦材32の中心近傍に集中して加わることを回避して分散させられるため、パッド面圧の部位による差を小さくできる。この結果、上記のブレーキ鳴き等の抑制の効果がより良好に得られる。
【0025】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。例えば、以下のような変形例が考えられる。
【0026】
図4は、本実施の形態の変形例に係るインナブレーキパッドをディスクロータ26と垂直に切断したときの断面図である。同図において、図2に示した部材と同一の部材には同一番号を付する。インナブレーキパッド133は、摩擦材132、裏金部材130、接触部材134およびスプリング136により構成される。基本的には図2において上述したインナブレーキパッド33と同様の構成であるが、裏金部材130および接触部材134の形状ならびに接触部材134の裏金部材130への取付手段が異なる。ここでは、その相違点について説明する。図4に示すように、裏金部材130には上面166を切り欠いて形成された凹部が形成されており、接触部材134はその凹部にスプリング136によって固定される。図4に示したインナブレーキパッド133において、裏金部材130の凹部および接触部材134は円形状に形成される。裏金部材130の凹部は底面162から上面166に向かうにつれて凹部の径が広がるように形成されている。
【0027】
図5は、裏金部材130の上面166側からディスクロータ26の回転軸に平行な方向に変形例に係るインナブレーキパッドを見た図である。同図に示すように、接触部材134の上面174および裏金部材130の凹部の輪郭は円形状である。つまり、裏金部材130の凹部は底面162から上面166に向かうにつれて凹部の径が広がるすり鉢状、すなわちテーパ状をしており、また、接触部材134はテーパ状の部材である。
【0028】
図4に戻って、裏金部材130の凹部はテーパ面160および底面162によって形成される。接触部材134は、テーパ面160と接するテーパ面170を有している。テーパ面160およびテーパ面170は、ピストン46の押圧位置に形成されている。テーパ面160とテーパ面170とが接した状態において、接触部材134の底面172は裏金部材130の凹部の底面162と接しない。接触部材134は、テーパ面160とテーパ面170とが接した状態で、スプリング136によって裏金部材130に固定されている。このように、接触部材134を固定することにより車両走行中に接触部材134が振動して裏金部材130やピストン146に当たって騒音が発生することを抑制できる。
【0029】
図4において、ピストン46およびディスクロータ26は二点鎖線で示されている。車両制動時において、ピストン46は、ディスクロータ26の図示しない回転軸に平行な矢印80の方向に接触部材134の上面174を押圧する。これによって、接触部材134のテーパ面170は、裏金部材130のテーパ面160にピストン46の押圧力によって押し当てられる。ここで、テーパ面160およびテーパ面170は、押圧力が働く矢印80の方向に対して角度をもって形成されている。従って、図2を用いて説明した場合と同様に、テーパ面160において矢印80の方向の押圧力の分力、すなわちテーパ面160に垂直な力およびテーパ面160に平行な力が生じる。
【0030】
テーパ面160およびテーパ面170はすり鉢状であるので、裏金部材130においてテーパ面160に垂直な力はテーパ面160から放射状に伝播する。このようにして、裏金部材130の内部を角度をもって摩擦材132を押す力が広がるので、パッド面圧の部位による差が小さくなる。これによって、裏金部材130および摩擦材132の押圧位置、すなわち摩擦材132の中央近傍に押圧力が集中してパッド面圧が不均一になることに起因する制動時のブレーキ鳴き、ブレーキ振動および摩擦材132の偏摩耗を抑制できる。
【0031】
また、上述したように、インナブレーキパッド133において接触部材134の底面172は摩擦材132の底面162と接しない。従って、図2に示したインナブレーキパッド33の場合と同様に、ピストン46により加えられた押圧力が接触部材134の底面172から摩擦材132の底面162に直接伝播しない。これによって、押圧力が摩擦材132の押圧位置、すなわち摩擦材132の中心近傍に集中して加わることを回避して分散させられるため、パッド面圧の部位による差を小さくできる。この結果、上記のブレーキ鳴きの抑制の効果がより良好に得られる。
【0032】
さらに、本実施の形態の変形例に係る裏金部材について説明する。車両制動時に、摩擦材がディスクロータに押し当てられると摩擦熱が発生して摩擦材が膨張する。摩擦材が膨張すると、摩擦材を支持する裏金部材にも摩擦材が大きく膨張する方向、例えば、裏金部材の長手方向に力が加わる。摩擦材の膨張率が裏金部材の膨張率よりも高いとき、摩擦材が膨張すると摩擦材の長手方向端部が裏金部材側に反るように変形する場合がある。この結果、車両制動時において、ディスクロータには摩擦材の中央近傍の部分が強く押し当てられ、長手方向端部における押圧力が弱くなり、パッド面圧不均一に起因するブレーキ鳴き、ブレーキ振動および摩擦材の偏摩耗の原因となり得る。
【0033】
図6は、本実施の形態の変形例に係る裏金部材230を押圧力が加えられる方向から見た図である。この変形例に係る裏金部材230には、図示しないピストンによって押圧力が加えられる位置に複数のスリット232が形成されている。同図において、ピストンにより押圧される位置を二点鎖線で示す。スリット232が開いたときに先端部に応力が集中して裏金部材230が割れることを回避するために、各スリット232の先端部には図6に示すように小さい穴234が形成されている。裏金部材230は、図6に示されていない側の面において図示しない摩擦材を、例えば貼着することにより支持している。
【0034】
図6に示すように、裏金部材230に形成されているスリット232は、裏金部材230の短手方向に平行な複数の直線のそれぞれにおいて形成されている。ここで、スリット232は、同図に示すように、裏金部材230の短手方向端部から交互に切れ込みが入って形成されている。裏金部材230には、このようにスリット232が形成されているので、長手方向の力が加えられると各スリット232は長手方向に広がる。これによって、裏金部材230は、摩擦材の膨張に追従して変形するので、摩擦材の長手方向端部が裏金部材側に反るように変形することを回避できる。この結果、パッド面圧の部位による差は小さくなり、制動時のブレーキ鳴き、ブレーキ振動および摩擦材の偏摩耗を抑制できる。
【0035】
図7は、図6に示した裏金部材230とは別の変形例に係る裏金部材330を押圧力が加えられる方向から見た図である。この変形例に係る裏金部材330は、ピストンによって押圧力が加えられる位置に複数のスリット332が形成されている点および各スリット332の先端部に裏金部材330が割れることを回避するための穴334が形成されている点は、図6に示した裏金部材230と基本的に同様である。図7において、ピストンにより押圧される位置を二点鎖線で示す。
【0036】
裏金部材330は、スリット332の形状が図6に示した裏金部材230のスリット232と異なる。各スリット332はスリット232より短く、裏金部材330の短手方向に平行な複数の直線のそれぞれにおいて複数形成されている。このような形状によっても、裏金部材330はスリット332が長手方向に広がって、制動時における摩擦材の膨張に追従して変形する。これによって、摩擦材の長手方向の端部が裏金部材側に反るように変形することを回避できる。この結果、パッド面圧の部位による差は小さくなり、制動時のブレーキ鳴き、ブレーキ振動および摩擦材の偏摩耗を抑制できる。
【0037】
上述した裏金部材230および裏金部材330を本実施の形態およびその変形例に係るブレーキディスク装置に適用することも可能である。これによって、パッド面圧の不均一化をより良好に回避でき、制動時のブレーキ鳴き、ブレーキ振動および摩擦材の偏摩耗を抑制する効果が増大する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施の形態に係るディスクブレーキ装置をディスクロータと垂直に切断したときの断面図である。
【図2】図1のA−A断面におけるインナブレーキパッドを示す図である。
【図3】裏金部材の上面側からディスクロータの回転軸に平行な方向にインナブレーキパッドを見た図である。
【図4】実施の形態の変形例に係るインナブレーキパッドをディスクロータと垂直に切断したときの断面図である。
【図5】裏金部材の上面側からディスクロータの回転軸に平行な方向に変形例に係るインナブレーキパッドを見た図である。
【図6】実施の形態の変形例に係る裏金部材を押圧力が加えられる方向から見た図である。
【図7】図6に示した裏金部材とは別の変形例に係る裏金部材を押圧力が加えられる方向から見た図である。
【符号の説明】
【0039】
10 ディスクブレーキ装置、 16 キャリパ、 26 ディスクロータ、 30 裏金部材、 32 摩擦材、 33 インナブレーキパッド、 34 接触部材、 36 皿ばね、 38 ピン、 40 裏金部材、 42 摩擦材、 43 アウタブレーキパッド、 45 ピストンシール、 46 ピストン、 50 押圧面、 56 爪部、 58 シリンダ部、 59 収納部、 130 裏金部材、 132 摩擦材、 133 インナブレーキパッド、 134 接触部材、 136 スプリング、 230 裏金部材、 232 スリット、 330 裏金部材、 332 スリット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪とともに回転するディスクロータの摩擦摺動面に対向して配置される摩擦材と、
前記摩擦材の前記ディスクロータに対向しない面を支持する第1面と、斜面が形成された第2面とを有する裏金部材と、
前記第2面に形成された斜面に接する接触部材と、
前記ディスクロータの回転軸と平行な方向に前記接触部材を押圧して、前記摩擦材を前記ディスクロータの摩擦摺動面に押し当てる押圧手段と、
を備えることを特徴とするディスクブレーキ装置。
【請求項2】
前記裏金部材および前記接触部材は、前記接触部材が前記第2面に形成された斜面に接した状態において、前記接触部材の先端面が前記裏金部材に接しないように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のディスクブレーキ装置。
【請求項3】
前記第2面に形成された斜面は略平行に対向して設けられ、
前記接触部材は、前記第2面に対向して設けられた斜面に接する面を有することを特徴とする請求項1または2に記載のディスクブレーキ装置。
【請求項4】
前記第2面に形成された斜面はテーパ面であり、
前記接触部材は、前記第2面に形成されたテーパ面に接する面を有するテーパ状部材であることを特徴とする請求項1または2に記載のディスクブレーキ装置。
【請求項5】
車輪とともに回転するディスクロータの摩擦摺動面に対向して配置される摩擦材と、
前記摩擦材の前記ディスクロータに対向しない面を支持する裏金部材と、
前記ディスクロータの回転軸に平行な方向に前記裏金部材を押圧して、前記摩擦材を前記ディスクロータの摩擦摺動面に押し当てる押圧手段と、
を備え、
前記裏金部材における前記押圧手段に押圧される位置の近傍に、前記裏金部材の短手方向に実質的に平行な方向にスリットが形成されていることを特徴とするディスクブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−198407(P2007−198407A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−14133(P2006−14133)
【出願日】平成18年1月23日(2006.1.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】