説明

ディスク再生装置

【課題】
作動ギヤの回転力を受けて往動する主動部材と、この主動部材に追随する従動部材とを有し、従動部材の動作と関連してディスクの装填及び取出しに関与するディスク再生補助手段を動作させるディスク再生装置において、従動部材の主動部材への追随動作に関する機構を簡素化する。
【解決手段】
主動部材27の往動時には、往動時当接壁38と回動片64の係合突部66とが当接するまでは主動部材が単独で往動し、その後、従動部材26を追随させる。また、主動部材の復動時には復動時当接壁37と係合突部との当接により直ちに従動部材を追随させ、従動部材が初期位置に達してその後の復動が禁止された後は、前記係合突部が前記復動時当接壁に沿って上方へ回動し、主動部材を単独でその初期位置まで戻る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動ギヤの回転力を受けて往動する主動部材と、この主動部材に追随する従動部材とを有し、従動部材の動作に関連してディスクの装填及び取出しに関与するディスク再生補助手段を動作させるディスク再生装置に係り、特に、従動部材の主動部材への追随動作に関する機構を簡素化したディスク再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスク再生装置において、ラックを備えた主動部材と、これに追随する従動部材とを設け、ディスクの挿入に関連して主動部材のラックを作動ギヤに噛合させて該主動部材を往復動作させ、この主動部材に従動部材を追随させて、従動部材の動きにより、ディスク搬送機構、クランパ機構等のディスク再生補助手段を動作させる機構が多用されている。この種の機構において、主動部材と従動部材とのストロークに差異があるときは、主動部材の往動途中から従動部材を追随させ、復動時には主動部材の復動途中で従動部材を切り離す必要がある。
【0003】
特許文献1には、このような機構が開示されている。すなわち、ディスク挿入時には、検知部材(94)が回動し、検知部材(94)に設けられたトリガーピン(97)によって、噛合せ部材(51)が圧縮スプリング(54)の付勢力に対抗してY2方向へ押し出され、噛合せ部材(51)に形成されたラック歯(52)がピニオン歯車(57)と噛み合う。このピニオン歯車57の回転力で噛合せ部材(51)がY2方向へ引かれ、これに追従して切換えスライダー(15)もY2方向へ引かれて、切換えスライダー(15)に設けられたラック歯(53)もピニオン歯車(57)に噛み合う。
【0004】
また、ディスク排出時には、ピニオン歯車(57)がディスク挿入時とは逆回転し、この回転力によって、切換えスライダー(15)がY1方向へ移動させられる。そして、切換えスライダー(15)を圧縮スプリング(54)を介して押戻し、ラック歯(52)とピニオン歯車(57)との噛合を解除するようにしている。
【0005】
また、ラックを有する主動部材と、これに追随する従動部材との関係については、特許文献2には次のような構成が開示されている。すなわち、ラック部材(32)とスライダ(27)との間に引張コイルばね(60)を掛渡し、ディスク挿入時には引張コイルばね(60)を引伸ばしながらラック部材(32)を往動させてそのラック(33)を駆動ギヤ(63)に噛合させ、駆動ギヤ(63)の回転力でラック部材(32)を更に往動させ、このラック部材(32)の動きをレバー(70)の係合ピン(71)を介してスライダ(27)をラック部材(32)に追随させる。スライダ(27)の復動時には、当初はラック部材(32)をスライダ(27)に追随させ、スライダ(27)が初期位置に復帰した後は、ラック部材(32)が単独で復動して初期位置に復帰する。
【特許文献1】特開2005−78681号
【特許文献2】特開2004−318960号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示された構成では、噛合せ部材と切換えスライダーとの間に圧縮スプリングを介挿し、ディスク挿入時には圧縮スプリングを更に圧縮させながら噛合せ部材を往動させて圧縮スプリングを極限まで圧縮した後に切換えスライダーを追随させることになる。また、噛合せ部材部材の復動時にはピニオンにより噛合せ部材と切換えスライダーが同時に移動して、まずスライダーのラックがピニオンから外れ、続いて噛合せ部材のラックがピニオンから外れて該噛合せ部材が圧縮スプリングにより弾かれるように初期位置に復帰することになる。
【0007】
そこで、特許文献1の構成によれば、両部材間に圧縮スプリングを介挿することによって、噛合せ部材のみ移動させたり、両部材を一緒に移動させるようにしているので、この圧縮スプリングの弾性力がピニオンに対する、ひいてはモータに対する負荷となる問題がある。
また、噛合せ部材は復動時の最終段階で圧縮スプリングにより弾かれるようにして初期位置に戻されることになるので、振動や騒音発生の原因となったり、部品の耐久性を損ねるおそれもあった。
【0008】
また、特許文献2の構成によれば、両部材間に引張りコイルばねを掛渡し、かつ両部材間にレバーを介在させることによって、ラック部材のみ移動させたり、両部材を一緒に移動させるようにしているので、引張りコイルばねの弾性力が駆動ギヤに対する、ひいてはモータに対する負荷となる問題がある。
更に、前記引張りコイルばねに加えてレバーも両部材間に介在させているので、多くの部品を要し、構成が複雑となる問題もあった。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、モータへの負担を軽減できると共に、従動部材を主動部材に追随させるための機構を少ない部品点数によって簡素化したディスク再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、モータに駆動される作動ギヤと、一部にラックを有して往復動自在に設けられ、ディスク挿入に関連してそのラックを前記作動ギヤに噛合させ、該作動ギヤの一方向回転力を受けて往動すると共に、ディスク排出時には該作動ギヤの他方向回転力を受けて復動する主動部材と、この主動部材と平行に往復動自在に設けられ主動部材の往動時にはその往動途中から該主動部材に追随し、該主動部材の復動時には初期位置まで該主動部材に追随する従動部材と、この従動部材の往復動作に関連動作してディスクの装填及び取出しに関与するディスク再生補助手段とを具備したディスク再生装置に関するもので、係合突部を有して前記主動部材又は従動部材の一方に、該係合突部を上下させる如く回動自在に設けられた回動片を設けている。
【0011】
前記係合突部が下方位置にあるときこの係合突部と対向する当接面を有して前記主動部材又は従動部材の他方に設けられている。主動部材の一定量の往動に伴い上方位置から下方位置へ移動した前記係合突部にその当接面を当接させて従動部材を主動部材に追随させる往動時当接壁を設けている。
前記係合突部が下方位置にあるときこの係合突部と対向する当接面を有して前記主動部材又は従動部材の他方に設けられ、主動部材の復動に伴いその当接面を下方位置にある前記係合突部に当接させて従動部材をその初期位置まで主動部材に追随させ、その後の主動部材の復動に伴いその当接面に沿って前記係合突部を上方位置へ移動させる復動時当接壁を具備している。
【0012】
前記係合突部を、前記回動片の回動軸と平行な軸を有する断面円形とするとよい。
【0013】
前記往動時当接壁は、前記係合突部と当接する当接面と前記復動時当接壁より高位置において前記係合突部側に傾斜する傾斜面とを有するとよい。
【0014】
係合突部を、前記回動片の回動軸と平行な軸を有する断面円形とし、前記往動時当接壁及び復動時当接壁を、前記主動部材及び従動部材の往復動方向に直交させ、前記係合突部の中心は、該係合突部が前記復動時当接壁上にあっても前記回動軸の中心より低位置にあるようにするとよい。
【0015】
前記復動時当接壁の、前記主動部材及び従動部材の往復動方向に対する往動時当接壁側の角度を鈍角に設定するとよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、特許文献1又は2のように、前記主動部材と従動部材との間にばねを介在させないので、作動ギヤに対する、ひいてはモータに対する負荷を軽減できると共に、部品数が減少して簡単かつ安価な構成となる。
【0017】
また、前記係合突部を、前記回動片の回動軸と平行な軸を有する断面円形とすることにより、係合突部を復動時当接壁に沿って円滑に移動させることができる。
【0018】
前記往動時当接壁は、前記係合突部と当接する当接面と前記復動時当接壁より高位置において、この傾斜面で、係合突部を、往動時当接壁の押圧壁と復動時当接壁との間に円滑に誘導することができる。
【0019】
前記係合突部の中心を常に、前記回動軸の中心より低位置に設定すると、ディスク挿入時に係合突部は自重で復動時当接壁上から往動時当接壁の当接面と復動時当接壁の当接面との間に落下する。そこで、当接面で係合突部を押して従動部材を主動部材に円滑に追随させることができる。
【0020】
また、係合突部を、前記回動片の回動軸と平行な軸を有する断面円形とし、前記復動時当接壁を、前記主動部材及び従動部材の往復動作方向に対して鈍角とすると、両部材の復動時に係合突部を復動時当接壁に沿って円滑に上昇させることができる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は車載用のディスク再生装置を示す斜視図である。ディスク再生装置1の正面には、ディスクを挿出するディスク挿入口2が設けられている。矢印Aはディスク挿入方向を示し、その逆方向はディスク排出方向となる。そして、これらディスク挿入方向とディスク排出方向とを合わせて、ディスク挿出方向と称することにする。
【0022】
図2は、ディスク再生装置を、上ユニット3と、フローティング機構4と、下ユニット5とに分けて示す分解斜視図である。
【0023】
前記上ユニット3は、図1及び図2に示すように、上フレーム6に、ディスク検知機構7等を取付けて構成されている。またフローティング機構4は、図2に示すように、フローティングシャーシ8にピックアップ9等を有するピックアップユニット、ターンテーブル10、クランパ機構及びシャーシロック機構等を取付けて構成されている。前記クランパ機構は、クランパ11を支持したクランパ支持板13を上下回動させて、クランパ11をターンテーブル10に対して離接させるものである。下ユニット5は、下フレーム12上に搬送ローラ機構等を取り付けて構成されている。
【0024】
図3は前記フローティング機構4の平面図で、フローティングシャーシ8の一部は仮想線で示してある。前記フローティングシャーシ8は金属板製で、前記ピックアップユニットは、ピックアップ9、ピックアップガイド14、モータ15、前記ガイド14と平行に設けられた送りねじ16及びこの送りねじ16に動力的に結合されたピックアップ側伝達ギヤ17等から構成されている。
前記フローティングシャーシ8下面右端部には、作動ギヤ18が取付けられている。前記モータ15に直結されたウォームギヤ19には第一ギヤ20を噛合させ、この第一ギヤ20の軸を中心に回動自在な切換板21上には第二ギヤ22が取付けられ、これら第一ギヤ20、第二ギヤ22及び切換板21により、切換手段23が構成されている。前記第二ギヤ22は第一ギヤ20に常時噛合し、切換板21の回動により第二ギヤ22を前記ピックアップ側伝達ギヤ17又は作動ギヤ18のいずれかに選択的に噛合させ、前記モータ15の動力を、切換手段23を介して前記ピックアップ側伝達ギヤ17又は作動ギヤ18に選択的に伝達するようにしている。
【0025】
前記フローティングシャーシ8の右側面には従動部材としてのスライド板26が、ディスク挿出方向に進退自在に取付けられている。このスライド板26は、ディスク挿出方向に移動することにより、ディスクの装填及び取出しに関与する搬送ローラ機構、クランパ機構及びシャーシロック機構等の、ディスク再生補助手段を動作させるものである。また、フローティングシャーシ8の下面には、スライド板26と前記作動ギヤ18との間には、合成樹脂製の、主動部材としてのトリガ部材27が取付けられている。このトリガ部材27は中間部において僅かに屈曲した形状をなし、その一端に当接部28を有すると共に、他端側の左縁部にラック29を有し、前記中間部、すなわち当接部28とラック29との間の上面に、断面円形の軸部30を有し、図4に示すように、軸部30の上端には軸部30より幅広の抜け止め部31を有している。前記当接部28は、フローティングシャーシ8に設けられた開口を通してシャーシ8の上面側に突出している。
【0026】
さらにトリガ部材27の上面には、前記ラック29の近傍位置において、摺接部としての、小円柱状の突部33が設けられている。前記フローティングシャーシ8には、立上がり片34が、前記当接部28の右方に位置させて設けられている。前記トリガ部材27には、前記ラック29のディスク挿入方向側端部に弾性をもたせるためのスリット35が設けられている。このスリット35を設けたことにより、ラック29の、前記作動ギヤ18に対する噛合が円滑に行なわれることになる。
【0027】
また、図4、5に示すように、前記トリガ部材27の上面には、前記ラック29と反対側の右縁部から右方へ突出する係合部36が設けられている。この係合部36は、トリガ部材27及びスライド板26の往復動方向に間隔をあけて、ディスク挿入方向側の復動時当接壁37とディスク排出方向側の往動時当接壁38とを有する当接面37a,38a(図8参照)を有し、往動時当接壁38は、復動時当接壁37より右方に位置している。また、図8及び図9に示す如く、往動時当接壁38は、その当接面38aの上方に、復動時当接壁37側に傾斜した傾斜面38bを有している。前記復動時当接壁37の当接面37aの上端には面取りが施され、スライド板26には、往動時当接壁38を左方より挿入させる係合孔40が設けられている。
【0028】
前記フローティングシャーシ8には、図4及び図5に示すように、ディスク挿出方向に長いガイド溝41が設けられ、このガイド溝41に前記トリガ部材27の軸部30を下方より挿入させて、この軸部30をディスク挿入方向に進退自在にガイドするようにしている。また、トリガ部材27は、軸部30の中心を回動支点として回動自在ともなっている。ガイド溝41のディスク挿入方向側の端部には、前記抜け止め部31が挿通可能な着脱口42が設けられており、トリガ部材27のフローティングシャーシ8への取り付けは、抜け止め部31をフローティングシャーシ8の下面側から着脱口42に挿通させた後、前記軸部30をディスク排出方向へスライドさせて前記軸部30をガイド溝41に挿入させることにより、容易に完了するようにしている。
また、前記フローティングシャーシ8には、ディスク挿出方向に長い長孔45が設けられている。この長孔45の右縁部は、ディスク排出方向側の端部を凹部46、その他の部位を被摺接部47とし、前記凹部46の被摺接部47と接する部位を例えば傾斜状の誘導部48としている。該被摺接部47と前記突部33とで、噛合保持手段49が簡単に構成することができる。前記被摺接部47と、これに対向する長孔45の左縁部との間隔は、前記突部33を円滑に摺動させる寸法に設定されている。
【0029】
トリガ部材27とスライド板26との間にはトーションばね50が掛け渡されている。トーションばね50の一端はスライド26の一部に、他端はトリガ部材27の前記当接部28と回動支点52との間に、それぞれ取付けられており、トーションばね50の一端は、常に他端よりディスク挿入方向側に位置し、他端は、一端と回動支点とを結ぶ直線より左方に位置している。
【0030】
図6に模式的に示すように、前記作動ギヤ18は、大ギヤを挟んでその上面側に小ギヤ、下面側に中径のハスバギヤを有する三段ギヤであり、前記第一ギヤ20は上方を小ギヤ、下方を大ギヤとする二段ギヤ、前記第二ギヤ22は上方を大ギヤ、下方を小ギヤとする二段ギヤとなっている。
【0031】
前記第一ギヤ20は、その大ギヤをモータに直結されたウォームギヤ19に噛合させ、小ギヤを第二ギヤ22の大ギヤに噛合させている。前記第二ギヤ22は、その大ギヤを前記伝達ギヤ17に適宜噛合させ、小ギヤを作動ギヤ18の大ギヤに適宜噛合させるようにしている。前記作動ギヤ18は、その小ギヤに前記トリガ部材27のラック29を適宜噛合させるようにし、ハスバギヤをフローティングシャーシ8の下面に平行に配置された第二ウォームギヤ54に常時噛合させている。
【0032】
前記第二ウォームギヤ54には、第一搬送ギヤ55のハスバギヤを噛合させ、該第一搬送ギヤ55のギヤ部には第二搬送ギヤ56を噛合させている。この第二搬送ギヤ56はフローティングシャーシ8の上面側に位置し、このギヤ56には、適宜、第三搬送ギヤ57が噛合される。
【0033】
該第三搬送ギヤ57は、図7に示すように搬送ローラ58の一端に設けられ、搬送ローラ58を支持するブラケット59は、下フレーム12に取付けられる。前記第二ウォームギヤ54、第一搬送ギヤ55、第二搬送ギヤ56、第三搬送ギヤ57、搬送ローラ58及びブラケット59は、前記搬送ローラ機構を構成している。
【0034】
前記スライド板26には図10に示すように、前記係合孔40を挟んでそのディスク挿入方向側とディスク排出方向側に、それぞれシャーシロック機構の一部を構成するロック溝61,62が設けられている。また、ロック溝62の上方に取付孔63を有し、この取付孔63に、回動片64の軸65を回動自在に嵌合させている。回動片64は、その回動端部から左右に突出する円筒状の係合突部66を有し、図8に示す如く、ディスク挿入前は、この係合突部66を前記係合孔40内において前記復動時当接壁37上に位置させている。なお、前記復動時当接壁37の当接面37aと前記往動時当接壁38の当接面38aとの間の側面より見た間隔は、係合突部66が円滑に出入りでき、しかも係合突部66を介在させた状態で各壁間に余分な隙間を生じさせないように設定されている。また、後述の如く、ディスク挿入前は係合突部66が復動時当接壁37上に位置することになるが、この状態でも係合突部66の中心は軸65の中心より低位置になるように設定されている。係合突部66は、下方位置、すなわち、往動時当接壁38の当接面38aと復動時当接壁37の当接面37aとの間にあるときは、前記トリガ部材27の往復動に伴いいずれかの当接面37a,38aと当接してスライド板26をトリガ部座27に追随させ、上方位置、すなわち、復動時当接壁37上にあるときは、追随させない位置となる。
【0035】
前記係合孔40は、図8ないし図10に示すように、ディスク排出方向側の縁部を前記往動時当接壁38の形状に合致させ、ディスク挿入方向側の縁部は、前記復動時当接壁37の高さ部分を凹ませて、その凹みの上縁を段差部68としている。
【0036】
以上の如く構成されたディスク再生装置において、ディスク挿入前においては、スライド板26は図3における下方位置に位置している。このとき、切換板23は時計方向に回動した位置にあり、第二ギヤ22は作動ギヤ18に噛合している。また、前記トーションばね50は図4の如く、前記トリガ部材27をディスク排出方向へ付勢すると共に反時計方向へ回動付勢し、前記ラック29を作動ギヤ18から離反させている。また、前記回動片64の係合突部66は、図8に示すように、前記係合部36の復動時当接壁37上端にあるが、軸65の中心は係合突部66の中心より更に上方にあり、係合突部66は、前記傾斜面38bのディスク挿入側に位置している。
【0037】
ディスク挿入口2からディスクDを挿入すると、ディスク検知機構7でディスクDの挿入を検知し、図示しないスイッチがオンされて、モータ15(図3参照)が起動し、前記作動ギヤ18はモータ15に駆動されて反時計方向へ回動する。
【0038】
挿入されたディスクDは、図5の如く前記トリガ部材27の当接部28を押し、トリガ部材27をトーションばね50に抗して時計方向へ回動させる。これによって、トリガ部材27のラック29が前記作動ギヤ18に噛合する。
【0039】
これによって、トリガ部材27は作動ギヤ18の回転力を受けてディスク挿入方向へ移動し、突部33が被摺接部47に摺接することにより、ラック29と作動ギヤ18との噛合状態が保持される。また、トリガ部材27のディスク挿入方向への移動により係合部36の復動時当接壁37上端が係合突部66上から外れて往動時当接壁38の当接面38aと復動時当接壁37の当接面37aとの間に自重により落下する。仮に、軸65と取付孔63との間の摩擦により自重で落下しない場合でも、係合部往動時当接壁38の傾斜面38bが係合突部66に当接し、この係合突部66を両当接面37a,38a間に誘導する。このとき係合孔40の段差部68が係合突部67の上方に位置するので、両当接面37a,38a間から誤って上方へ抜け出すおそれはない。このようにして図9の如くトリガ部材27が約4mmほど移動した後は、トリガ部材27の往動時当接壁38の当接面38aが回動片64の係合突部66を押すので、スライド板26がトリガ部材27に追随して同方向へ移動する。なお、係合突部66が係合孔40のディスク挿入方向側縁部を押して、スライド板26を追随させるようにしてもよい。このスライド板26の移動に伴い、ディスク搬送機構、クランパ機構、シャーシロック機構等のディスク再生補助手段を動作させ、かつ、前記切換板23が反時計方向へ回動し、第二ギヤ22が伝達ギヤ17に噛合してモータ15の動力をピックアップ9側に伝達するようになり、再生動作が開始する。
【0040】
次に、再生動作を終了してディスク取出し操作を行なうと、前記切換板23が時計方向へ回動して第二ギヤ22が作動ギヤ18に噛合し、モータ15が反転してその動力が作動ギヤ18を介してトリガ部材27に伝達され、トリガ部材27がディスク排出方向へ移動する。このとき、復動時当接壁37の当接面37aが回動片64の係合突部66をディスク排出方向へ押すので、スライド板26もトリガ部材27に追随して復動する(図9)。このスライド板26の復動により、シャーシロック機構がフローティングシャーシ8をロックすると共にクランパ11が上昇し、ディスクが搬送機構により搬出されるなど、ディスク再生補助手段が所定の動作を行なうことになる。
【0041】
その後もトリガ部材27はディスク排出方向へ移動するが、スライド板26は、初期位置まで復帰した後は移動が規制される。このとき、係合突部66の中心は軸65中心より低位置にあるので(図8及び図9)係合突部66が復動時当接壁37に押されると、その圧力の上方向への分力を受けて、復動時当接壁37の当接面37aに沿って上昇し、図8の如く、復動時当接壁37の上端に乗り上げる。
このとき突部33は被摺接部47に摺接してディスク排出方向へ移動した後、被摺接部47から外れて凹部46内へ落込む。そして、前記トリガ部材27はトーションばね50によって図4の如く再び反時計方向へ回動し、ラック29を作動ギヤ18から離反させることになる。
【0042】
ところで、図4から図5に至る過程において、トリガ部材27がディスクDに押されて時計方向へ回動するとき、突部33も時計方向に回動するが、未だラック29が作動ギヤ18に噛合するに至らないままトリガ部材27がディスクに押されてディスク挿入方向に移動した場合には、突部33は誘導部48に当接した後、この誘導部48に沿って被摺接部47へ円滑に移動することになる。
また、ディスクDがトリガ部材27の当接部28を押した際、トリガ部材27が、回動に先立って、まずディスク挿入方向へ移動した場合にも、突部33は誘導部48に当接した後、この誘導部48に沿って被摺接部47へ円滑に移動し、ラック29を作動ギヤ18に噛合させることになる。
なお、誘導部48は直線的な傾斜に限らず曲線状としてもよい。
【0043】
なお、以上の実施の形態では、回動片64を従動部材であるスライド板26に設け、往動時当接壁38及び復動時当接壁37を主動部材であるトリガ部材27に設けるものとしたが、これらを逆にすることも可能である。すなわち、回動片64をトリガ部材27に設け、往動時当接壁38及び復動時当接壁37をスライド板26に設けるのである。
【0044】
この場合、ディスク挿入前は、トリガ部材27はスライド板26と共にディスク排出方向の初期位置にあって、回動片64の係合突部66は往動時当接壁38の上端にある。
ここで、ディスクDの挿入によりモータ15が起動して作動ギヤ18が回転し、ラック29を作動ギヤ18に噛合させてディスク挿入方向へ往動すると回動片64の係合突部66が復動時当接壁37の上端から外れ、復動時当接壁37と往動時当接壁38との間に自重により落下する。
【0045】
この状態でトリガ部材27が更にディスク挿入方向へ移動すると、係合突部66が往動時当接壁38を押し、スライド板26がトリガ部材27に追随して往動方向へ移動するようになる。
次に、トリガ部材27の復動時には係合突部66が復動時当接壁37を復動方向へ押すので、スライド板26もトリガ部材27に直ちに追随して、復動方向へ移動する。
そして、スライド板26が初期位置に達し、トリガ部材27に追随できなくなると、係合突部66を復動時当接壁37に沿ってその上端へ移動させながら、トリガ部材27のみ単独で初期位置まで移動する。
【0046】
図11は本発明の別の実施の形態を示すもので、復動時当接壁70を往動方向に傾けるものとする。すなわち、往動時当接壁71の、トリガ部材27及びスライド板26の往復動方向に対する往動時当接壁側71の角度を鈍角に設定するものとする。例えば、復動時当接壁70を往動時当接壁71の傾斜面72を有する傾斜壁とほぼ平行とし、他の構成は前記実施の形態と同様とする。
【0047】
このように構成すると、ディスクの挿入によりトリガ部材27の往動により、回動片64の係合突部66は復動時当接壁70の上端から該復動時当接壁70に沿って復動時当接壁70と往動時当接壁71との間に自重により下降し、トリガ部材27及びスライド板26の復動時には、スライド板26が初期位置に達した後、復動時当接壁70の傾斜に沿ってその上端まで容易かつ円滑に上昇することになる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態におけるディスク再生装置の斜視図。
【図2】同ディスク再生装置の分解斜視図。
【図3】フローティング機構の平面図。
【図4】ディスク挿入前におけるトリガ部材、作動ギヤ及びトーションばねの関係を示す平面図。
【図5】ディスク挿入時におけるトリガ部材、作動ギヤ及びトーションばねの関係を示す平面図。
【図6】動力伝達経路を模式的に示す図。
【図7】搬送ローラ周辺を示す斜視図。
【図8】ディスク挿入前におけるトリガ部材とスライド板との関係を示す側面図。
【図9】ディスク挿入後におけるトリガ部材とスライド板との関係を示す側面図。
【図10】スライド板と回動片との関係を示す斜視図。
【図11】本発明の別の実施形態における往動当接壁、復動当接壁及び係合突部との関係を示す側面図。
【符号の説明】
【0049】
15 モータ
18 作動ギヤ
26 スライド板(従動部材)
27 トリガ部材(主動部材)
29 ラック
37,70 復動時当接壁
38,71 往動時当接壁
37a,38a 当接面
38b,72 傾斜面
64 回動片
65 軸(回動軸)
66 係合突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ(15)に駆動される作動ギヤ(18)と、一部にラック(29)を有してほぼ水平方向往復動自在に設けられ、ディスク挿入に関連してそのラックを前記作動ギヤに噛合させ、該作動ギヤの一方向回転力を受けて往動すると共に、ディスク排出時には該作動ギヤの他方向回転力を受けて復動する主動部材(27)と、この主動部材と平行に往復動自在に設けられ主動部材の往動時にはその往動途中から該主動部材に追随し、該主動部材の復動時には初期位置まで該主動部材に追随する従動部材(26)と、この従動部材の往復動作に関連動作してディスクの装填及び取出しに関与するディスク再生補助手段とを具備したディスク再生装置において、
係合突部(66)を有して前記主動部材又は従動部材の一方に、該係合突部を上下させる如く回動自在に設けられた回動片(64)と、
前記係合突部が下方位置にあるときこの係合突部と対向する当接面(37a,38a)を有して前記主動部材又は従動部材の他方に設けられ、主動部材の一定量の往動に伴い上方位置から下方位置へ移動した前記係合突部にその当接面を当接させて従動部材を主動部材に追随させる往動時当接壁(38,71)と、
前記係合突部が下方位置にあるときこの係合突部と対向する当接面を有して前記主動部材又は従動部材の他方に設けられ、主動部材の復動に伴いその当接面を下方位置にある前記係合突部に当接させて従動部材をその初期位置まで主動部材に追随させ、その後の主動部材の復動に伴いその当接面に沿って前記係合突部を上方位置へ移動させる復動時当接壁(37,70)とを具備したことを特徴とするディスク再生装置。
【請求項2】
前記係合突部を、前記回動片の回動軸(65)と平行な軸を有する断面円形としたことを特徴とする請求項1に記載のディスク再生装置。
【請求項3】
前記往動時当接壁は、前記係合突部と当接する当接面と前記復動時当接壁より高位置において前記係合突部側に傾斜する傾斜面(38b,72)とを有することを特徴とする請求項1に記載のディスク再生装置。
【請求項4】
前記往動時当接壁及び復動時当接壁を、前記主動部材及び従動部材の往復動方向に直交させ、前記係合突部の中心は、該係合突部が前記復動時当接壁上にあっても前記回動軸の中心より低位置に設定されていることを特徴とする請求項2に記載のディスク再生装置。
【請求項5】
前記復動時当接壁の、前記主動部材及び従動部材の往復動方向に対する往動時当接壁側の角度を鈍角に設定したことを特徴とする請求項2に記載のディスク再生装置。

【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図1】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−238346(P2009−238346A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85965(P2008−85965)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000108786)タナシン電機株式会社 (33)
【Fターム(参考)】