ディスク芯出し装置、これを用いたディスク貼り合わせ方法、及びこれらにより得られる貼り合わせ型記録媒体
【課題】ディスクの内穴にダメージを与えることなく、重ねあわされた基板間のズレの発生を回避し、高精度の芯出しを行う。
【解決手段】二枚以上の内穴を有するディスクL0、L1を重ね合わせた状態として、ディスクの芯出しを行うものであり、前記ディスクの内穴の直径に比して5〜20μm小さい外径のセンターボス20を具備しているディスク芯出し装置を提供する。
【解決手段】二枚以上の内穴を有するディスクL0、L1を重ね合わせた状態として、ディスクの芯出しを行うものであり、前記ディスクの内穴の直径に比して5〜20μm小さい外径のセンターボス20を具備しているディスク芯出し装置を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク状の光記録媒体や磁気記録媒体の製造に用いられるディスク芯出し装置、及びこれを用いた貼り合わせ方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を照射することにより、記録情報の読み取りや、記録・消去を行う光記録媒体として、二枚の光透過性基板を貼り合わせた構成の光ディスクが広く汎用されている。具体的にはDVDやレーザーディスク等が挙げられる。
これらは、二枚の光透過性基板、反射層、接着層、及び印字層等により構成されている。
光透過性基板の素材としては、PC(ポリカーボネート)、PMMA(アクリル樹脂)が用いられており、反射層としてはAu、Ag、Al合金等が用いられ、接着層としては紫外線硬化型接着剤が用いられている。
【0003】
従来の光ディスク貼り合わせ方法として多用されている手法に、ラジカルUV方式がある。
これは、光ディスク情報基板(情報記録される方の単板で、記録層や反射層を有している基板。)の所定の同心円上に、ラジカルUV接着剤をディスペンサーにより滴下し、カバー基板をこの上に載せ、所定の回転速度と回転時間で接着剤を振り切り、その後紫外線を照射してUV接着剤を硬化させて貼り合わせ型のディスク(基板)を得るという方法である。
【0004】
DVDのような、いわゆる再生ディスクや、二層構成の記録ディスクにおいては、層間のグルーブ芯ズレが、所定の規定範囲を越えると信号再生や記録ができなくなったり、あるいは著しく劣化したりするため、層間グルーブの芯を同一とすること(芯出しを行うこと)、すなわち上下2枚のディスクについて芯ズレ修正を行う工程が極めて重要とされている。
なお、ディスクの芯出しとは、それぞれの基板の内穴(内周穴)の中心同士を合致させる工程を意味する。
【0005】
従来の二枚ディスクの貼り合わせる工程の一例について説明する。
下記においては、片側光入射の二層ディスクを例として用いるものとし、信号の記録時あるいは再生時にレーザ光を照射する側の面、及び貼り合わせ工程においてUV光を照射する側の面(光入射面)を下にしたとき、下側にある基板(ディスク)をLa、上側にある基板(ディスク)をLbと称する。
【0006】
ディスクの貼り合わせ工程は、通常、上方からのUV照射(紫外線照射)で、ディスク基板La、Lb間の紫外線硬化型接着剤を硬化させることにより行うが、この際、接着剤まで光を透過させることが可能な材料構成を有しているLaを上向きにしてディスク搬送を行うこととする。
【0007】
先ず、バリア膜が形成されている基板であるLbを、これらがスパッタリングされた面(光入射面側)を上にして、回転塗布装置のステージ(スピンテーブル)上に減圧吸着する。
ディスクを載置したステージを数十〜250rpm程度の回転速度で回転させながら、ディスペンサーによって紫外線硬化型接着剤(粘度は約500cp)を基板の中心から約30mmの円周上に同心円状に滴下する。
なお、バリア膜とは、Lb基板上に形成されている記録層や反射膜等を保護する機能を有している膜である。
【0008】
次に、Laを重ね合わせる。
その後、ステージを数百〜数千rpmの回転速度で回転させて、接着剤をディスク終端まで延展する。
【0009】
その後、この重ね合わせた二枚のディスク基板を、光照射ステージ(このステージは、重ね合わせた基板の芯ズレを修正するための矯正ステージを兼ねている)へ移動させる。
上記矯正ステージは、ディスクの内周クランプ面に当たる部位に、減圧吸着孔を備えており、上記重ね合わせた状態の二枚のディスクの内周クランプ部を矯正ステージ上に50〜90kPaで減圧吸着するとともに、二枚の基板の芯ズレを修正するようになされている。
その後、紫外線照射を行い、接着剤を硬化させ、目的とする貼り合わせ型の光ディスクが得られる(例えば、下記特許文献1参照。)。
【0010】
ここで、各々のディスク基板のグルーブ偏芯量に関しては、ディスク成形時に、スタンパを金型に取り付ける際、内穴芯とグルーブ芯を合致させる形で中心取り付けを行うようにし、この金型で成形すれば、殆どその偏芯量から変化せずに安定してディスクを生産することができることが知られている。
しかし、二枚のディスクをどのように重ね合わせるかの方法に依存して、二枚のディスク間での内穴同士の芯ズレ(特に通常La側の内穴でドライブ、プレーヤーにセットするため、La内穴に対するLbグルーブ偏芯量)が大きくなってしまうという問題があった。
具体的な例として、片側光入射の二層DVDを例に挙げる。これが欠陥商品とならないようにするためには、Lb芯偏芯を35μm以下に収めることが望ましい。
Lb偏芯は、La内周穴に対するLbグルーブの芯ズレであり、Lb成形単板でのスタンパ取り付けによる偏芯量と、(LaとLbの中心穴半径ズレ量)との和となる。
両ディスクの貼り合わせ工程においては、LaとLbの中心穴半径ズレ量を矯正しながら行う。
Lb成形単板のスタンパ取り付けによる偏芯量は、15μm以下程度とすることが望ましいが、これ以上ズレ量を小さくしようとすると、スタンパ取り付け調整時間が増加し、稼働率が著しく低下してしまうため、実用上望ましくない。
上述したことから、La−Lb間中心穴半径ズレ量は、35μm−15μm=20μm以内に収める必要がある。
La−Lb間の中心穴直径が全く同径の場合で考えると、半径芯ズレ20μm×2=40μm直径差が、中心穴−センターボス間で許容されることになるが、実際は、内周穴にカットパンチバリ、又はその後の各工程のセンターボスを経るディスク移載により、内穴がダメージを受けて変形することになる。大きい場合は、内穴内径が局所的に60〜100μm程度も小径化してしまい、偏芯矯正が困難になったり、あるいはセンターボスへの挿入時にディスク内穴がひっかかったりして頻繁に搬送エラーが発生し、稼働率低下の要因となっていた。
【0011】
更には、La−Lb間の内径差が15μm以内程度で発生し、上記搬送エラーが多発すると、中心穴−センターボス間を20μm以下のきつめの設定にすることができなくなるため、これを20〜30μmとすることが余儀なくされていた。
このようにバリが大きく、両基板の内穴径差があり、センターピン径小径の悪影響を含んだ条件で貼り合わせを行うと、従来構成の貼り合わせ型ディスクにおいては、Lb偏芯にて50〜130μm程度の大きな偏芯が生じることもあった。
【0012】
【特許文献1】特開2005−310342号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明においては、実用的な稼動効率を確保しながら、芯合わせ精度を高めることができるディスク芯出し装置、これを用いたディスク貼り合わせ方法、及びこれらにより得られる貼り合わせ型の記録媒体を提供することとした。
すなわち本発明は、従来問題になっていた実情に鑑みて、二枚以上のディスク基板を接着剤を介して重ね合わせて貼り合わせる工程に際し、簡便かつ精度良く芯出しを行うことができるディスク芯出し装置、及びこのディスク芯出し装置を備えた、構造簡単で安価なディスク貼り合わせ装置、並びに上記ディスク芯出し装置を使用するディスク芯出し方法及び上記ディスク貼り合わせ装置を使用するディスク貼り合わせ方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明においては、二枚以上の内穴を有するディスクを重ね合わせた状態として、前記ディスクの芯出しを行うディスク芯出し装置であって、前記ディスクの内穴の直径に比して5〜20μm小さい外径を有するセンターボスを具備しているディスク芯出し装置を提供する。
【0015】
請求項2の発明においては、前記センターボスは、前記ディスクの内穴の内壁全面に当たらず、3点以上の多点当たりになる形状を有していることとした請求項1に記載のディスク芯出し装置を提供する。
【0016】
請求項3の発明においては、紫外線照射装置を具備しており、前記センターボスに挿入したディスクに対し、前記紫外線照射装置により紫外線照射を行う際には、前記センターボスに対する紫外線を遮光するようになされていること請求項1に記載のディスク芯出し装置を提供する。
【0017】
請求項4の発明においては、前記ディスクの芯出しを行う前工程として前記二枚以上のディスクを重ね合わせた状態で、ディスク内穴の抜き差しを行うテーブルセンターボス、搬送系ボスを具備しており、前記テーブルセンターボス、前記搬送系ボスが、前記ディスク内穴の直径に比して、30〜60μm小径であるか、あるいは抜き差し時に縮径可能な構成となっている請求項1に記載のディスク芯出し装置を提供する。
【0018】
請求項5の発明においては、前記テーブルセンターボス、及び前記搬送系ボスは、前記ディスク内穴に対する内壁当たりが、全周当たりとなっている請求項4に記載のディスク芯出し装置を提供する。
【0019】
請求項6の発明においては、二枚以上ディスクを重ね合わせた状態として芯出しと貼り合わせを行うものであり、前記ディスクの内穴の直径よりも5〜20μm小さい外径を有しているセンターボスを備えているディスク芯出し装置を用いて行うディスク貼り合わせ方法であって、前記センターボスへの前記ディスクの内穴の挿入操作は、前記センターボス上部から、前記ディスクを吸着し、あるいは機械的保持する工程と、ディスクを自由落下挿入させる工程とにより行い、その後、ディスクを前記センターボス挿入下限位置まで下げる追加押し下げ動作を加えるようにすることを特徴とするディスク貼り合わせ方法を提供する。
【0020】
請求項7の発明においては、前記センターボスの形状が、前記ディスクの内穴の内壁全面に当たらず、3点以上の多点当たりになるようにされていることとした請求項6に記載のディスク貼り合わせ方法を提供する。
【0021】
請求項8の発明においては、紫外線照射装置により、前記センターボスに挿入したディスクに対するUV光照射を行う工程を有し、前記紫外線照射工程においては、前記芯出しセンターボスに対する紫外線を遮蔽することとした請求項6に記載のディスク貼り合わせ方法を提供する。
【0022】
請求項9の発明においては、前記ディスクの芯出しを行う前工程として、前記二枚以上のディスクを重ね合わせた状態で、テーブルセンターボス、搬送系ボスにより、ディスク内穴の抜き差しを行う工程を有し、前記テーブルセンターボス、前記搬送系ボスが、前記ディスクの内穴の直径に比して、30〜60μm小径であるか、あるいは抜き差し時に縮径可能なものであることとした請求項6に記載のディスク貼り合わせ方法を提供する。
【0023】
請求項10の発明においては、前記テーブルセンターボス、及び前記搬送系ボスは、前記ディスク内穴に対する内壁当たりが、全周当たりであるものとする請求項6に記載のディスク貼り合わせ方法を提供する。
【0024】
請求項11の発明においては、請求項6乃至10のいずれか一項に記載のディスク貼り合わせ方法により作製されたものである貼り合わせ型記録媒体を提供する。
【0025】
請求項12の発明においては、光記録媒体であることを特徴とする請求項11に記載の貼り合わせ型記録媒体を提供する。
【0026】
請求項13の発明においては、磁気記録媒体であることを特徴とする請求項11に記載の貼り合わせ型記録媒体を提供する。
【発明の効果】
【0027】
本発明のディスク芯出し装置によれば、ディスクの内穴にダメージを与えることなく、重ねあわされた基板間のズレの発生を回避できる。
請求項2の発明によれば、センターボス形状に関し、ディスクの内穴の内壁全面に当たらず、3点以上の多点当たりとなるようにしたことにより、ディスクの内穴にバリや部分ダメージがあった場合にも、高精度のズレ防止効果が発揮できた。
請求項3の発明によれば、芯出し用のセンターボスの表面に対する接着剤の硬化付着を防止でき、センターボス径の大径化が回避され、ディスク内穴内面へのセンターボス部材の圧接状態が均一化され、高精度な芯出し効果が再現性良く得ることができるようになった。
また、接着剤付着硬化が原因での搬送エラーや、更にそれによるセンターボス小径化等の悪影響を効果的に防止できた。
請求項6のディスク芯出し方法によれば、フリー落下によるノンダメージ挿入による芯出し精度の向上が図られ、かつフリー落下後の追加押し下げ動作によりディスク挿入を更に安定化できた。
また、本発明のディスク芯出し装置、およびディスク芯出し方法によれば、ディスク内穴径に対し、5〜20μm小さいセンターボスを適用して、これの径設定の裕度を大きくとることが可能となり、芯出し精度の高い貼り合わせが可能となった。
本発明のディスク貼り合わせ方法によれば、安定的な芯合わせ矯正が可能となり、芯出し精度の高い貼り合わせディスクを、歩留まり良く、かつ安価に作製することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明のディスク芯出し装置は、二枚以上のディスク基板を重ね合わせた状態で、両ディスク基板の芯出しを行うものとし、ディスク基板の内穴の直径よりも5〜20μm小さい外径のセンターボスを具備している。これは、ディスクの芯出しを行う際、センターボスをきつ目に設定したものである。
センターボスの外径を、上記のような数値に限定した根拠について説明する。
センターボスの外径が、「ディスク基板の内穴直径d+5μm」未満とすると、ディスク基板の傾きや、ディスク内穴のバリによりピンへのディスク挿入の際に、引っ掛かりが生じたりし、内周クランプ部に割れが発生したり、あるいは抜き取りの際に、ディスク基板がうまく抜き取れず、搬送エラー発生のおそれがある。
また、RD/TDが悪化し、直径が「上記内穴直径d+20μm」を超えると、所望の芯出し効果が得られないこととなるからである。
ここで、RDとは外周半径方向チルトであり、ディスク基板の半径方向の反りを角度で表したもので、これが悪化して大きな値を示す基板ではプッシュプル信号のオフセットや振幅に影響を及ぼすので、この数値が小さいほどよい。
TDとは外周周方向チルトであり、ディスク基板の周方向の反りを角度で表したもので、同様に、この数値が小さいほどよい。
これらの機械特性は、MT−200(Dr.Schenk製測定機)を用いて測定することができる。
センターボスの外径と、ディスク基板の内径との差が20μmであれば、他の阻害因子が無ければ、偏芯増加分が10μm程度に抑制でき、実用上、良好なレベルとなることが確かめられた。
【0029】
二枚のディスク基板を重ね合わせた状態で、センターボスへ内穴を挿入する操作について説明する。
これは、強制挿入による、両ディスク基板の内穴のダメージを防止するため、第一段階として、先ず、センターボス上部にて、ディスクの吸着や機械的保持をリリースし、センターボスに向けてディスクをフリーで落下挿入させる。
次に、上記のように、内径とのあたりをきつ目に設定したセンターボスに、ディスクが引っ掛かる場合が発生するので、それに起因する搬送エラーを防止するべく、第二段階として、搬送アームの吸着パットやディスク保持具、又は別のプッシャの表面レベルを徐々にセンターボス挿入下限位置まで下げる。これにより、フリー落下後の引っ掛かりディスクへと追加押し下げ動作を加えることができ、ディスク挿入を安定化させることができ、最終的な稼働率が安定化できる。
なお、このディスクの追加押し動作は、可能な限りスローな動作で押すことが好ましい。また、既に下段まで落ちている基板はさらに押さないようにする。破損を防止するためである。
【0030】
芯出しを行うセンターボスの形状に関しては、ディスク内穴の内壁当たりを全面当たりとはせず、3点以上の多点当たりとすることが好ましい。
これにより、ディスクの内穴に成形バリがある場合や、前工程における搬送径ボスを経て出来た内穴の形状ダメージがある場合や、部分的な変形がある場合においても、貼り合わせ時の偏芯の増大化が抑制できる。
【0031】
ディスクの芯出し工程を経た後、両ディスク基板の貼り合わせを行う際、紫外線照射による接着剤硬化工程が行われる。このとき、所定の遮光手段をもって芯出し用のセンターボスを遮蔽し、このセンターボスに対する紫外線照射を防止することが好ましい。
これにより、芯出しセンターボスの径が、接着剤が付着しこれが硬化してしまうことにより増大化することを防止できる。
【0032】
芯出し用のセンターボスへの紫外線照射を防止する他の方法としては、紫外線照射による接着剤硬化工程において、基板用の支持テーブル、芯出しセンターボスの少なくとも一方を適宜に移動させて、芯出しセンターボスの基板をはめ込む箇所(ボスの側面部)に紫外線が照射されるのを防止するという方法が挙げられる。
具体的には、ディスク基板を下方から支持する支持テーブルを設けるとともに、この支持テーブル、芯出しセンターボスの少なくとも一方を適宜に移動自在とし、紫外線照射工程においては、基板を載置した支持テーブルを動かして芯出しセンターボスから外した状態とし、支持テーブルで芯出しセンターボスの直上を覆うようにする。
【0033】
なお、本発明のディスク芯出し装置においては、二枚以上のディスクを重ね合わせた状態で、かつ芯出しセンターボスに挿入する前工程で、ディスク内穴の抜き差しを行うように、テーブルセンターボス、搬送系ボスを備えた構成とすることもできる。
この場合のテーブルセンターボスや、搬送系ボスとしては、ディスク内穴直径よりも30〜60μm小径であるボス、又は抜き差し時に縮径可能であるボスを適用することが好ましい。
これにより、重ね合わせたディスクをボスから抜き取る際、ボスとディスク内穴とが擦れて、まだ接着剤硬化していない状態のディスク間のズレが増大してしまうことが抑制でき、さらにはこの後工程における芯出しセンターボスへ、挿入しやすいように形状が整えられる。
【0034】
また、ディスク基板を成形する工程以降から、芯出しセンターボス挿入工程以前までに使用する各種ボス(上記テーブルセンターボス、搬送系ボス等)については、ディスク内穴の内壁当たりが全周当たりとなるラウンドタイプセンターボス形状とすることが好ましい。これにより、点当たりによる圧力集中に起因するディスク内穴への搬送ダメージを効果的に回避できる。
【0035】
相互に重ね合わせた二枚以上のディスク基板の芯出し工程を経た後、このディスク同士を紫外線硬化型接着剤により貼り合わせ、重層構造の記録媒体を作製する。
これにおいては、以下の工程を含む。
【0036】
(A)2枚以上のディスクのそれぞれについて紫外線硬化型接着剤の塗布・振り切りを行う接着剤塗布・振り切り工程。
(B)前記接着剤塗布・振り切り工程の後に、真空中でディスク同士の重ね合わせを行うディスク重ね合わせ工程。
(C)前記重ね合わせ工程によって得られた、重ね合わせた状態のディスクの内穴を、芯出しセンターボスへ挿入するボス挿入工程。
(D)本発明の芯出し方法によるディスク芯出し工程。
(E)前記芯出し工程を経て重ね合わせた状態のディスクに紫外線を照射して接着剤を硬化させる接着剤硬化工程。
【0037】
又は、
(A)一方のディスクの内周部にリング状に紫外線硬化型接着剤を塗布する接着剤塗布工程。
(B)接着剤塗布後のディスク上に他方のディスクを、大気又は真空中で重ね合わせるディスク重ね合わせ工程。
(C)前記重ね合わせた状態のディスクについて、接着剤の塗布・振り切りを行う接着剤塗布・振り切り工程。
(D)前記重ね合わせ工程によって得られた、重ね合わせた状態のディスクの内穴を、芯出しセンターボスへ挿入するボス挿入工程。
(E)本発明の芯出し方法により行うディスク芯出し工程。
(F)芯出し工程を経て重ね合わせた状態のディスクに紫外線を照射して接着剤を硬化させる接着剤硬化工程。
【0038】
又は、
(A)一方のディスクの内周部にリング状に紫外線硬化型接着剤を塗布する接着剤塗布工程。
(B)接着剤塗布後のディスク上に他方のディスクを、大気又は真空中で重ね合わせるディスク重ね合わせ工程。
(C)前記重ね合わせた状態のディスクに対して接着剤の塗布・振り切りを行う接着剤塗布・振り切り工程において使用するテーブルで、重ね合わせた状態のディスクの内穴を芯出しセンターボスへ挿入するボス挿入工程。
(D)紫外線を照射し、接着剤硬化させながら、接着剤の振り切りを行う工程において、本発明の芯出し方法を適用し、芯出しを行う工程。
【0039】
なお、三枚のディスクを貼り合わせる場合には、二枚のディスクからなる貼り合わせ後の基板を、上記一方のディスクとして、3枚目のディスクを上記他方のディスクとして、それぞれ取り扱い、上記と同様の手順で貼り合わせを行えばよい、
4枚以上のディスクの貼り合わせは、これと同様の手順で行えばよい。
【0040】
上述したようなディスク貼り合わせ工程を適用することにより、多層型の光記録媒体や、磁気記録媒体が得られる。
【実施例】
【0041】
〔実施例1〕
以下、本発明について、具体的な実施例を挙げて説明するが、本発明は以下に示す例に限定されるものではない。
以下においては、便宜上片側光入射型の二層構造のディスク、つまり二枚貼り合わせ型のディスク状記録媒体を作製する例を挙げて説明する。
便宜上、片側光入射二層構造のディスク、つまり貼り合わせ型のディスクにおいて、UV光照射面側、すなわち信号再生時あるいは記録時にレーザ光を入射する面を上にしたときに上側になるディスク(基板)をL0とし、下側となるディスク(基板)をL1と称するものとする。
【0042】
なお、本例で使用するディスク貼り合わせ装置は、(1)ディスク表面に紫外線硬化型接着剤を延展塗布する回転塗布装置、(2)接着剤が延展塗布された基板L0とL1を真空中で重ね合わせて重合ディスクLとするディスク重合装置、(3)芯出しセンターボスに対して例えば高さ位置レベル調整の自由なサーボ駆動アームにて芯出しセンターボス上部にて吸着をリリースして自由落下挿入する。続けて、ディスクがテーブル面に付くレベルまで追加押し下げする(それ以上は押さない)搬送アーム・ヘッド、(4)芯出しセンターボスを備えているディスク芯出し装置と、(5)重合ディスクL内の接着剤層に紫外線を照射して硬化させる紫外線ランプとを備えているものとする。
【0043】
ディスク基板の芯出しを行う工程においては、ディスクの内穴に挿入するセンターボス(芯出しヘッド、内周センターボス)は、通常ディスク支持用のテーブル上に設けられる。
センターボスは、例えばステンレススティールからなるものとする。
なお、センターボスの断面形状・材質等は、特に限定されるものではない。
また、材質としては、耐紫外線性および耐溶剤性を有するとともに、表面が自己潤滑性を有し、かつ紫外線硬化型接着剤が付着しにくい材料が好適である。
【0044】
〔貼り合わせディスクの作製工程〕
(1)工程1(接着剤塗布・振り切り工程)
先ず、所定の回転塗布装置(図示せず)により、二枚の基板L0、L1に、紫外線硬化型接着剤を個別に塗布し、所望の厚さまで薄く振り切っておく(延展塗布)。
この工程における条件等に関しては、従来のディスク貼り合わせ方法に従うものとする。
このように接着剤の振り切りを行うことは、接着剤層膜厚の安定化や、接着剤が塗布された部分の内周側端部の位置変動減少、特に上記芯出しセンターボスへの接着剤付着防止に大きな効果がある。
【0045】
(2)工程2(ディスク重合工程)
次に、上記のようにして接着剤を振り切った後の基板L0、L1を真空中で重ね合わせる(図1に示す重合ディスクLの調製)。
この場合、基板L1の接着剤塗布面上に、基板L0の接着剤塗布面が重なるようにする。これにより基板L0とL1との間の接着剤層に気泡が混入することなく貼り合せることができる。
なお、これら二枚のディスク基板の内穴直径に比べて直径が30〜60μm小さいテーブルセンターボス10を用いて、ディスク基板L0、L1の内穴を挿入することにより仮芯出しを行っておく。これにより、この後工程の、芯出し工程(本芯出し工程)での芯出しが安定し、接着剤層の膜厚安定化がより容易となる。
また、上記のように、二枚のディスク基板の内穴直径に比べて直径が30〜60μm小さいテーブルセンターボスを用いて仮芯出しを行うことにより、ディスク抜き時にディスク内穴を擦ることなく抜くことが可能である。
【0046】
つぎに、以下の工程3〜5において、ディスク芯出し装置により芯出しを行い、その後の工程6において紫外線照射装置により、上記接着剤層の硬化処理を行う。
【0047】
(3)工程3(ディスク搬送・芯出し工程)
芯出し工程においては、ディスク基板の内穴のダメージ、又は内穴に存在するバリの影響を受けないようにするため、ディスク基板の内穴の周壁を多点当たりするボス形状とすることが好ましい。内穴に対し5〜20μm小さい直径であるきつ目センターボスを使用する。このとき、例えば、3点以上の多点当たりとなるような形状のセンターボスを適用することが好ましい。例えば図2に示すような断面が六角形上のボスが挙げられる。
芯出し工程の際、ディスクの芯出しセンターボスへの挿入操作は、先ず、ディスクを極力ダメージなく挿入する為、図3に示すように、フリー落下させる。
ディスクの穴径に対して芯出しセンターボス20の径がきつ目に設定されていると、ディスクがセンターボス20に引っ掛かる場合が発生し、それに起因する搬送エラーが発生したり、製品歩留まりの劣化が増加したりするので、このような不具合を防止するため、図4に示すように、ディスク基板のフリー落下後に、吸着搬送ヘッド30により追加スロー押し下げ動作を加えるようにする。これにより、稼働率、良品率を安定させることができる。
図5に示すように、ディスク基板L0、L1が既に支持台21に接触するところまで落下しているときは、吸着搬送ヘッド30を用いて押せないレベルまで押し下げる動作を行なう(図6)。
【0048】
(4)工程4(接着剤硬化工程)
図7に示すように、芯出し工程を経た後の、重ね合わせディスクLを、紫外線照射装置40の光照射テーブルへ移動させる。
光照射テーブルを低速で回転させるか、または停止させた状態で紫外線ランプから紫外線を上方から照射して接着剤を硬化させる。これにより、貼り合わせ型の光ディスクが得られる。
このとき、紫外線照射装置40のランプの直下に、紫外線が透過しない材料からなるキャップ26を移動・セットし、これにより、重ね合わせたディスクLの直上を覆うようにすることが好ましい。これにより、紫外線が芯出し用のセンターボス20に当たらなくなり、樹脂硬化による径拡大を回避できる。すなわちディスク挿入ができなくなることによる搬送エラーの防止が図られ、センターボス20の清掃の軽減化が図られる。
なお、芯出し工程を経た後の、重ね合わせたディスクを、芯出し装置にセットしたまま、可動式の紫外線ランプをディスクの直上に移動し、セットして、紫外線照射を行うようにしてもよい。
なお、図8中の符号27は、紫外線照射装置40からの熱線を遮蔽する熱線カットフィルタである。
【0049】
具体例として、ディスク内穴直径とセンターボス直径との差が13μmである、図2に示したような6点当たりのセンターボス(6角形センターボス 内穴当たり点幅1.5mm/1点につき)を適用した場合であって、ディスク内穴−グルーブの偏芯を15μm以下に抑えたL1ディスクを用いて芯出し、重ね合わせ、紫外線照射による光硬化を行ったとき、ディスク基板L0内穴−基板L1グルーブ偏芯を、9〜31μm程度に抑制できたことが確認された。
【0050】
また、上述した本発明方法に従えば、安定して94%以上の良品率が確保できたことが確かめられたが、例えばディスクの内径よりも25μm程度小径化した、断面がラウンド形状のセンターボスを使用し、搬送アームにて自由落下ではなくボス最下部まで押し下げて芯出し工程を行ったところ、ディスクの内穴に存在している成形バリの影響により、基板L0内穴−基板L1のグルーブ偏芯は、23〜50μmとなり、しかも良品生産率が48.4〜95%程度にばらつき、平均値が88%に低減化してしまうことが確かめられた。
このことにより、本発明方法による優れた安定性が確認できた。
【0051】
〔実施例2〕
本発明方法においては、図9に示すように、紫外線照射装置による紫外線照射工程において、芯出し用のセンターボス20から、重ね合わせ基板Lを外した状態として行うことができる。
また、図10に示すように、予め重ね合わせ基板Lを支持テーブル50上に載置しておき、紫外線照射工程において、支持テーブル50か、センターボス20のいずれか一方を移動させ、重ね合わせ基板Lを芯出し用のセンターボス20から外し、かつセンターボス20の直上を支持テーブル50が覆うような状態にしてもよい。
【0052】
〔実施例3〕
上記〔実施例1〕においては、予め二枚のディスク基板のそれぞれに、紫外線硬化性の接着剤を延展塗布したが、これに代えて、図11に示すように、一方のディスクL1を回転塗布装置の回転テーブル上にセットし、ディスクを低速回転させるとともに、接着剤15を滴下し、ディスクL1の内周部にリング状に塗布しておく。
次に、ディスクL1上に他方のディスクL0を大気又は真空中で重ね合わせる。
このようにして重ね合わせた二枚のディスクを高速回転させ、図12に示すように接着剤15の塗布・振り切り(延展)を行う。
その後、上述した工程と同様にして、搬送ボス挿入工程、ディスク芯出し工程、接着剤硬化工程を経て、目的とするディスク型の記録媒体を作製する。
【0053】
上記実施例1〜3においては、光記録媒体を作製する工程を例として挙げたが、本発明は、上記各例に限定されるものではない。すなわち、基板上に成膜する記録層の材料に応じて記録媒体の機能を適宜設定することができ、例えば磁気記録材料を成膜することにより、磁気記録媒体を作製することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】ディスク芯出し方法に従った一工程図を示す。
【図2】芯出しに用いるセンターボスの一例の概略斜視図を示す。
【図3】本発明のディスク芯出し方法に従った一工程図を示す。
【図4】本発明のディスク芯出し方法に従った一工程図を示す。
【図5】本発明のディスク芯出し方法に従った一工程図を示す。
【図6】本発明のディスク芯出し方法に従った一工程図を示す。
【図7】ディスク芯出し工程後の、紫外線照射工程図を示す。
【図8】ディスク芯出し工程後の、紫外線照射工程図を示す。
【図9】ディスク芯出し工程後の、紫外線照射工程の他の一例の概略図を示す。
【図10】ディスク芯出し工程後の、紫外線照射工程の他の一例の概略図を示す。
【図11】ディスクに対する紫外線塗布工程の他の一例の概略図を示す。
【図12】ディスクに対する紫外線延展工程の他の一例の概略図を示す。
【符号の説明】
【0055】
10 テーブルセンターボス
15 接着剤
20 センターボス
21 支持台
26 キャップ
27 熱線カットフィルタ
30 吸着搬送ヘッド
40 紫外線照射装置
50 支持テーブル
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク状の光記録媒体や磁気記録媒体の製造に用いられるディスク芯出し装置、及びこれを用いた貼り合わせ方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を照射することにより、記録情報の読み取りや、記録・消去を行う光記録媒体として、二枚の光透過性基板を貼り合わせた構成の光ディスクが広く汎用されている。具体的にはDVDやレーザーディスク等が挙げられる。
これらは、二枚の光透過性基板、反射層、接着層、及び印字層等により構成されている。
光透過性基板の素材としては、PC(ポリカーボネート)、PMMA(アクリル樹脂)が用いられており、反射層としてはAu、Ag、Al合金等が用いられ、接着層としては紫外線硬化型接着剤が用いられている。
【0003】
従来の光ディスク貼り合わせ方法として多用されている手法に、ラジカルUV方式がある。
これは、光ディスク情報基板(情報記録される方の単板で、記録層や反射層を有している基板。)の所定の同心円上に、ラジカルUV接着剤をディスペンサーにより滴下し、カバー基板をこの上に載せ、所定の回転速度と回転時間で接着剤を振り切り、その後紫外線を照射してUV接着剤を硬化させて貼り合わせ型のディスク(基板)を得るという方法である。
【0004】
DVDのような、いわゆる再生ディスクや、二層構成の記録ディスクにおいては、層間のグルーブ芯ズレが、所定の規定範囲を越えると信号再生や記録ができなくなったり、あるいは著しく劣化したりするため、層間グルーブの芯を同一とすること(芯出しを行うこと)、すなわち上下2枚のディスクについて芯ズレ修正を行う工程が極めて重要とされている。
なお、ディスクの芯出しとは、それぞれの基板の内穴(内周穴)の中心同士を合致させる工程を意味する。
【0005】
従来の二枚ディスクの貼り合わせる工程の一例について説明する。
下記においては、片側光入射の二層ディスクを例として用いるものとし、信号の記録時あるいは再生時にレーザ光を照射する側の面、及び貼り合わせ工程においてUV光を照射する側の面(光入射面)を下にしたとき、下側にある基板(ディスク)をLa、上側にある基板(ディスク)をLbと称する。
【0006】
ディスクの貼り合わせ工程は、通常、上方からのUV照射(紫外線照射)で、ディスク基板La、Lb間の紫外線硬化型接着剤を硬化させることにより行うが、この際、接着剤まで光を透過させることが可能な材料構成を有しているLaを上向きにしてディスク搬送を行うこととする。
【0007】
先ず、バリア膜が形成されている基板であるLbを、これらがスパッタリングされた面(光入射面側)を上にして、回転塗布装置のステージ(スピンテーブル)上に減圧吸着する。
ディスクを載置したステージを数十〜250rpm程度の回転速度で回転させながら、ディスペンサーによって紫外線硬化型接着剤(粘度は約500cp)を基板の中心から約30mmの円周上に同心円状に滴下する。
なお、バリア膜とは、Lb基板上に形成されている記録層や反射膜等を保護する機能を有している膜である。
【0008】
次に、Laを重ね合わせる。
その後、ステージを数百〜数千rpmの回転速度で回転させて、接着剤をディスク終端まで延展する。
【0009】
その後、この重ね合わせた二枚のディスク基板を、光照射ステージ(このステージは、重ね合わせた基板の芯ズレを修正するための矯正ステージを兼ねている)へ移動させる。
上記矯正ステージは、ディスクの内周クランプ面に当たる部位に、減圧吸着孔を備えており、上記重ね合わせた状態の二枚のディスクの内周クランプ部を矯正ステージ上に50〜90kPaで減圧吸着するとともに、二枚の基板の芯ズレを修正するようになされている。
その後、紫外線照射を行い、接着剤を硬化させ、目的とする貼り合わせ型の光ディスクが得られる(例えば、下記特許文献1参照。)。
【0010】
ここで、各々のディスク基板のグルーブ偏芯量に関しては、ディスク成形時に、スタンパを金型に取り付ける際、内穴芯とグルーブ芯を合致させる形で中心取り付けを行うようにし、この金型で成形すれば、殆どその偏芯量から変化せずに安定してディスクを生産することができることが知られている。
しかし、二枚のディスクをどのように重ね合わせるかの方法に依存して、二枚のディスク間での内穴同士の芯ズレ(特に通常La側の内穴でドライブ、プレーヤーにセットするため、La内穴に対するLbグルーブ偏芯量)が大きくなってしまうという問題があった。
具体的な例として、片側光入射の二層DVDを例に挙げる。これが欠陥商品とならないようにするためには、Lb芯偏芯を35μm以下に収めることが望ましい。
Lb偏芯は、La内周穴に対するLbグルーブの芯ズレであり、Lb成形単板でのスタンパ取り付けによる偏芯量と、(LaとLbの中心穴半径ズレ量)との和となる。
両ディスクの貼り合わせ工程においては、LaとLbの中心穴半径ズレ量を矯正しながら行う。
Lb成形単板のスタンパ取り付けによる偏芯量は、15μm以下程度とすることが望ましいが、これ以上ズレ量を小さくしようとすると、スタンパ取り付け調整時間が増加し、稼働率が著しく低下してしまうため、実用上望ましくない。
上述したことから、La−Lb間中心穴半径ズレ量は、35μm−15μm=20μm以内に収める必要がある。
La−Lb間の中心穴直径が全く同径の場合で考えると、半径芯ズレ20μm×2=40μm直径差が、中心穴−センターボス間で許容されることになるが、実際は、内周穴にカットパンチバリ、又はその後の各工程のセンターボスを経るディスク移載により、内穴がダメージを受けて変形することになる。大きい場合は、内穴内径が局所的に60〜100μm程度も小径化してしまい、偏芯矯正が困難になったり、あるいはセンターボスへの挿入時にディスク内穴がひっかかったりして頻繁に搬送エラーが発生し、稼働率低下の要因となっていた。
【0011】
更には、La−Lb間の内径差が15μm以内程度で発生し、上記搬送エラーが多発すると、中心穴−センターボス間を20μm以下のきつめの設定にすることができなくなるため、これを20〜30μmとすることが余儀なくされていた。
このようにバリが大きく、両基板の内穴径差があり、センターピン径小径の悪影響を含んだ条件で貼り合わせを行うと、従来構成の貼り合わせ型ディスクにおいては、Lb偏芯にて50〜130μm程度の大きな偏芯が生じることもあった。
【0012】
【特許文献1】特開2005−310342号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明においては、実用的な稼動効率を確保しながら、芯合わせ精度を高めることができるディスク芯出し装置、これを用いたディスク貼り合わせ方法、及びこれらにより得られる貼り合わせ型の記録媒体を提供することとした。
すなわち本発明は、従来問題になっていた実情に鑑みて、二枚以上のディスク基板を接着剤を介して重ね合わせて貼り合わせる工程に際し、簡便かつ精度良く芯出しを行うことができるディスク芯出し装置、及びこのディスク芯出し装置を備えた、構造簡単で安価なディスク貼り合わせ装置、並びに上記ディスク芯出し装置を使用するディスク芯出し方法及び上記ディスク貼り合わせ装置を使用するディスク貼り合わせ方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明においては、二枚以上の内穴を有するディスクを重ね合わせた状態として、前記ディスクの芯出しを行うディスク芯出し装置であって、前記ディスクの内穴の直径に比して5〜20μm小さい外径を有するセンターボスを具備しているディスク芯出し装置を提供する。
【0015】
請求項2の発明においては、前記センターボスは、前記ディスクの内穴の内壁全面に当たらず、3点以上の多点当たりになる形状を有していることとした請求項1に記載のディスク芯出し装置を提供する。
【0016】
請求項3の発明においては、紫外線照射装置を具備しており、前記センターボスに挿入したディスクに対し、前記紫外線照射装置により紫外線照射を行う際には、前記センターボスに対する紫外線を遮光するようになされていること請求項1に記載のディスク芯出し装置を提供する。
【0017】
請求項4の発明においては、前記ディスクの芯出しを行う前工程として前記二枚以上のディスクを重ね合わせた状態で、ディスク内穴の抜き差しを行うテーブルセンターボス、搬送系ボスを具備しており、前記テーブルセンターボス、前記搬送系ボスが、前記ディスク内穴の直径に比して、30〜60μm小径であるか、あるいは抜き差し時に縮径可能な構成となっている請求項1に記載のディスク芯出し装置を提供する。
【0018】
請求項5の発明においては、前記テーブルセンターボス、及び前記搬送系ボスは、前記ディスク内穴に対する内壁当たりが、全周当たりとなっている請求項4に記載のディスク芯出し装置を提供する。
【0019】
請求項6の発明においては、二枚以上ディスクを重ね合わせた状態として芯出しと貼り合わせを行うものであり、前記ディスクの内穴の直径よりも5〜20μm小さい外径を有しているセンターボスを備えているディスク芯出し装置を用いて行うディスク貼り合わせ方法であって、前記センターボスへの前記ディスクの内穴の挿入操作は、前記センターボス上部から、前記ディスクを吸着し、あるいは機械的保持する工程と、ディスクを自由落下挿入させる工程とにより行い、その後、ディスクを前記センターボス挿入下限位置まで下げる追加押し下げ動作を加えるようにすることを特徴とするディスク貼り合わせ方法を提供する。
【0020】
請求項7の発明においては、前記センターボスの形状が、前記ディスクの内穴の内壁全面に当たらず、3点以上の多点当たりになるようにされていることとした請求項6に記載のディスク貼り合わせ方法を提供する。
【0021】
請求項8の発明においては、紫外線照射装置により、前記センターボスに挿入したディスクに対するUV光照射を行う工程を有し、前記紫外線照射工程においては、前記芯出しセンターボスに対する紫外線を遮蔽することとした請求項6に記載のディスク貼り合わせ方法を提供する。
【0022】
請求項9の発明においては、前記ディスクの芯出しを行う前工程として、前記二枚以上のディスクを重ね合わせた状態で、テーブルセンターボス、搬送系ボスにより、ディスク内穴の抜き差しを行う工程を有し、前記テーブルセンターボス、前記搬送系ボスが、前記ディスクの内穴の直径に比して、30〜60μm小径であるか、あるいは抜き差し時に縮径可能なものであることとした請求項6に記載のディスク貼り合わせ方法を提供する。
【0023】
請求項10の発明においては、前記テーブルセンターボス、及び前記搬送系ボスは、前記ディスク内穴に対する内壁当たりが、全周当たりであるものとする請求項6に記載のディスク貼り合わせ方法を提供する。
【0024】
請求項11の発明においては、請求項6乃至10のいずれか一項に記載のディスク貼り合わせ方法により作製されたものである貼り合わせ型記録媒体を提供する。
【0025】
請求項12の発明においては、光記録媒体であることを特徴とする請求項11に記載の貼り合わせ型記録媒体を提供する。
【0026】
請求項13の発明においては、磁気記録媒体であることを特徴とする請求項11に記載の貼り合わせ型記録媒体を提供する。
【発明の効果】
【0027】
本発明のディスク芯出し装置によれば、ディスクの内穴にダメージを与えることなく、重ねあわされた基板間のズレの発生を回避できる。
請求項2の発明によれば、センターボス形状に関し、ディスクの内穴の内壁全面に当たらず、3点以上の多点当たりとなるようにしたことにより、ディスクの内穴にバリや部分ダメージがあった場合にも、高精度のズレ防止効果が発揮できた。
請求項3の発明によれば、芯出し用のセンターボスの表面に対する接着剤の硬化付着を防止でき、センターボス径の大径化が回避され、ディスク内穴内面へのセンターボス部材の圧接状態が均一化され、高精度な芯出し効果が再現性良く得ることができるようになった。
また、接着剤付着硬化が原因での搬送エラーや、更にそれによるセンターボス小径化等の悪影響を効果的に防止できた。
請求項6のディスク芯出し方法によれば、フリー落下によるノンダメージ挿入による芯出し精度の向上が図られ、かつフリー落下後の追加押し下げ動作によりディスク挿入を更に安定化できた。
また、本発明のディスク芯出し装置、およびディスク芯出し方法によれば、ディスク内穴径に対し、5〜20μm小さいセンターボスを適用して、これの径設定の裕度を大きくとることが可能となり、芯出し精度の高い貼り合わせが可能となった。
本発明のディスク貼り合わせ方法によれば、安定的な芯合わせ矯正が可能となり、芯出し精度の高い貼り合わせディスクを、歩留まり良く、かつ安価に作製することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明のディスク芯出し装置は、二枚以上のディスク基板を重ね合わせた状態で、両ディスク基板の芯出しを行うものとし、ディスク基板の内穴の直径よりも5〜20μm小さい外径のセンターボスを具備している。これは、ディスクの芯出しを行う際、センターボスをきつ目に設定したものである。
センターボスの外径を、上記のような数値に限定した根拠について説明する。
センターボスの外径が、「ディスク基板の内穴直径d+5μm」未満とすると、ディスク基板の傾きや、ディスク内穴のバリによりピンへのディスク挿入の際に、引っ掛かりが生じたりし、内周クランプ部に割れが発生したり、あるいは抜き取りの際に、ディスク基板がうまく抜き取れず、搬送エラー発生のおそれがある。
また、RD/TDが悪化し、直径が「上記内穴直径d+20μm」を超えると、所望の芯出し効果が得られないこととなるからである。
ここで、RDとは外周半径方向チルトであり、ディスク基板の半径方向の反りを角度で表したもので、これが悪化して大きな値を示す基板ではプッシュプル信号のオフセットや振幅に影響を及ぼすので、この数値が小さいほどよい。
TDとは外周周方向チルトであり、ディスク基板の周方向の反りを角度で表したもので、同様に、この数値が小さいほどよい。
これらの機械特性は、MT−200(Dr.Schenk製測定機)を用いて測定することができる。
センターボスの外径と、ディスク基板の内径との差が20μmであれば、他の阻害因子が無ければ、偏芯増加分が10μm程度に抑制でき、実用上、良好なレベルとなることが確かめられた。
【0029】
二枚のディスク基板を重ね合わせた状態で、センターボスへ内穴を挿入する操作について説明する。
これは、強制挿入による、両ディスク基板の内穴のダメージを防止するため、第一段階として、先ず、センターボス上部にて、ディスクの吸着や機械的保持をリリースし、センターボスに向けてディスクをフリーで落下挿入させる。
次に、上記のように、内径とのあたりをきつ目に設定したセンターボスに、ディスクが引っ掛かる場合が発生するので、それに起因する搬送エラーを防止するべく、第二段階として、搬送アームの吸着パットやディスク保持具、又は別のプッシャの表面レベルを徐々にセンターボス挿入下限位置まで下げる。これにより、フリー落下後の引っ掛かりディスクへと追加押し下げ動作を加えることができ、ディスク挿入を安定化させることができ、最終的な稼働率が安定化できる。
なお、このディスクの追加押し動作は、可能な限りスローな動作で押すことが好ましい。また、既に下段まで落ちている基板はさらに押さないようにする。破損を防止するためである。
【0030】
芯出しを行うセンターボスの形状に関しては、ディスク内穴の内壁当たりを全面当たりとはせず、3点以上の多点当たりとすることが好ましい。
これにより、ディスクの内穴に成形バリがある場合や、前工程における搬送径ボスを経て出来た内穴の形状ダメージがある場合や、部分的な変形がある場合においても、貼り合わせ時の偏芯の増大化が抑制できる。
【0031】
ディスクの芯出し工程を経た後、両ディスク基板の貼り合わせを行う際、紫外線照射による接着剤硬化工程が行われる。このとき、所定の遮光手段をもって芯出し用のセンターボスを遮蔽し、このセンターボスに対する紫外線照射を防止することが好ましい。
これにより、芯出しセンターボスの径が、接着剤が付着しこれが硬化してしまうことにより増大化することを防止できる。
【0032】
芯出し用のセンターボスへの紫外線照射を防止する他の方法としては、紫外線照射による接着剤硬化工程において、基板用の支持テーブル、芯出しセンターボスの少なくとも一方を適宜に移動させて、芯出しセンターボスの基板をはめ込む箇所(ボスの側面部)に紫外線が照射されるのを防止するという方法が挙げられる。
具体的には、ディスク基板を下方から支持する支持テーブルを設けるとともに、この支持テーブル、芯出しセンターボスの少なくとも一方を適宜に移動自在とし、紫外線照射工程においては、基板を載置した支持テーブルを動かして芯出しセンターボスから外した状態とし、支持テーブルで芯出しセンターボスの直上を覆うようにする。
【0033】
なお、本発明のディスク芯出し装置においては、二枚以上のディスクを重ね合わせた状態で、かつ芯出しセンターボスに挿入する前工程で、ディスク内穴の抜き差しを行うように、テーブルセンターボス、搬送系ボスを備えた構成とすることもできる。
この場合のテーブルセンターボスや、搬送系ボスとしては、ディスク内穴直径よりも30〜60μm小径であるボス、又は抜き差し時に縮径可能であるボスを適用することが好ましい。
これにより、重ね合わせたディスクをボスから抜き取る際、ボスとディスク内穴とが擦れて、まだ接着剤硬化していない状態のディスク間のズレが増大してしまうことが抑制でき、さらにはこの後工程における芯出しセンターボスへ、挿入しやすいように形状が整えられる。
【0034】
また、ディスク基板を成形する工程以降から、芯出しセンターボス挿入工程以前までに使用する各種ボス(上記テーブルセンターボス、搬送系ボス等)については、ディスク内穴の内壁当たりが全周当たりとなるラウンドタイプセンターボス形状とすることが好ましい。これにより、点当たりによる圧力集中に起因するディスク内穴への搬送ダメージを効果的に回避できる。
【0035】
相互に重ね合わせた二枚以上のディスク基板の芯出し工程を経た後、このディスク同士を紫外線硬化型接着剤により貼り合わせ、重層構造の記録媒体を作製する。
これにおいては、以下の工程を含む。
【0036】
(A)2枚以上のディスクのそれぞれについて紫外線硬化型接着剤の塗布・振り切りを行う接着剤塗布・振り切り工程。
(B)前記接着剤塗布・振り切り工程の後に、真空中でディスク同士の重ね合わせを行うディスク重ね合わせ工程。
(C)前記重ね合わせ工程によって得られた、重ね合わせた状態のディスクの内穴を、芯出しセンターボスへ挿入するボス挿入工程。
(D)本発明の芯出し方法によるディスク芯出し工程。
(E)前記芯出し工程を経て重ね合わせた状態のディスクに紫外線を照射して接着剤を硬化させる接着剤硬化工程。
【0037】
又は、
(A)一方のディスクの内周部にリング状に紫外線硬化型接着剤を塗布する接着剤塗布工程。
(B)接着剤塗布後のディスク上に他方のディスクを、大気又は真空中で重ね合わせるディスク重ね合わせ工程。
(C)前記重ね合わせた状態のディスクについて、接着剤の塗布・振り切りを行う接着剤塗布・振り切り工程。
(D)前記重ね合わせ工程によって得られた、重ね合わせた状態のディスクの内穴を、芯出しセンターボスへ挿入するボス挿入工程。
(E)本発明の芯出し方法により行うディスク芯出し工程。
(F)芯出し工程を経て重ね合わせた状態のディスクに紫外線を照射して接着剤を硬化させる接着剤硬化工程。
【0038】
又は、
(A)一方のディスクの内周部にリング状に紫外線硬化型接着剤を塗布する接着剤塗布工程。
(B)接着剤塗布後のディスク上に他方のディスクを、大気又は真空中で重ね合わせるディスク重ね合わせ工程。
(C)前記重ね合わせた状態のディスクに対して接着剤の塗布・振り切りを行う接着剤塗布・振り切り工程において使用するテーブルで、重ね合わせた状態のディスクの内穴を芯出しセンターボスへ挿入するボス挿入工程。
(D)紫外線を照射し、接着剤硬化させながら、接着剤の振り切りを行う工程において、本発明の芯出し方法を適用し、芯出しを行う工程。
【0039】
なお、三枚のディスクを貼り合わせる場合には、二枚のディスクからなる貼り合わせ後の基板を、上記一方のディスクとして、3枚目のディスクを上記他方のディスクとして、それぞれ取り扱い、上記と同様の手順で貼り合わせを行えばよい、
4枚以上のディスクの貼り合わせは、これと同様の手順で行えばよい。
【0040】
上述したようなディスク貼り合わせ工程を適用することにより、多層型の光記録媒体や、磁気記録媒体が得られる。
【実施例】
【0041】
〔実施例1〕
以下、本発明について、具体的な実施例を挙げて説明するが、本発明は以下に示す例に限定されるものではない。
以下においては、便宜上片側光入射型の二層構造のディスク、つまり二枚貼り合わせ型のディスク状記録媒体を作製する例を挙げて説明する。
便宜上、片側光入射二層構造のディスク、つまり貼り合わせ型のディスクにおいて、UV光照射面側、すなわち信号再生時あるいは記録時にレーザ光を入射する面を上にしたときに上側になるディスク(基板)をL0とし、下側となるディスク(基板)をL1と称するものとする。
【0042】
なお、本例で使用するディスク貼り合わせ装置は、(1)ディスク表面に紫外線硬化型接着剤を延展塗布する回転塗布装置、(2)接着剤が延展塗布された基板L0とL1を真空中で重ね合わせて重合ディスクLとするディスク重合装置、(3)芯出しセンターボスに対して例えば高さ位置レベル調整の自由なサーボ駆動アームにて芯出しセンターボス上部にて吸着をリリースして自由落下挿入する。続けて、ディスクがテーブル面に付くレベルまで追加押し下げする(それ以上は押さない)搬送アーム・ヘッド、(4)芯出しセンターボスを備えているディスク芯出し装置と、(5)重合ディスクL内の接着剤層に紫外線を照射して硬化させる紫外線ランプとを備えているものとする。
【0043】
ディスク基板の芯出しを行う工程においては、ディスクの内穴に挿入するセンターボス(芯出しヘッド、内周センターボス)は、通常ディスク支持用のテーブル上に設けられる。
センターボスは、例えばステンレススティールからなるものとする。
なお、センターボスの断面形状・材質等は、特に限定されるものではない。
また、材質としては、耐紫外線性および耐溶剤性を有するとともに、表面が自己潤滑性を有し、かつ紫外線硬化型接着剤が付着しにくい材料が好適である。
【0044】
〔貼り合わせディスクの作製工程〕
(1)工程1(接着剤塗布・振り切り工程)
先ず、所定の回転塗布装置(図示せず)により、二枚の基板L0、L1に、紫外線硬化型接着剤を個別に塗布し、所望の厚さまで薄く振り切っておく(延展塗布)。
この工程における条件等に関しては、従来のディスク貼り合わせ方法に従うものとする。
このように接着剤の振り切りを行うことは、接着剤層膜厚の安定化や、接着剤が塗布された部分の内周側端部の位置変動減少、特に上記芯出しセンターボスへの接着剤付着防止に大きな効果がある。
【0045】
(2)工程2(ディスク重合工程)
次に、上記のようにして接着剤を振り切った後の基板L0、L1を真空中で重ね合わせる(図1に示す重合ディスクLの調製)。
この場合、基板L1の接着剤塗布面上に、基板L0の接着剤塗布面が重なるようにする。これにより基板L0とL1との間の接着剤層に気泡が混入することなく貼り合せることができる。
なお、これら二枚のディスク基板の内穴直径に比べて直径が30〜60μm小さいテーブルセンターボス10を用いて、ディスク基板L0、L1の内穴を挿入することにより仮芯出しを行っておく。これにより、この後工程の、芯出し工程(本芯出し工程)での芯出しが安定し、接着剤層の膜厚安定化がより容易となる。
また、上記のように、二枚のディスク基板の内穴直径に比べて直径が30〜60μm小さいテーブルセンターボスを用いて仮芯出しを行うことにより、ディスク抜き時にディスク内穴を擦ることなく抜くことが可能である。
【0046】
つぎに、以下の工程3〜5において、ディスク芯出し装置により芯出しを行い、その後の工程6において紫外線照射装置により、上記接着剤層の硬化処理を行う。
【0047】
(3)工程3(ディスク搬送・芯出し工程)
芯出し工程においては、ディスク基板の内穴のダメージ、又は内穴に存在するバリの影響を受けないようにするため、ディスク基板の内穴の周壁を多点当たりするボス形状とすることが好ましい。内穴に対し5〜20μm小さい直径であるきつ目センターボスを使用する。このとき、例えば、3点以上の多点当たりとなるような形状のセンターボスを適用することが好ましい。例えば図2に示すような断面が六角形上のボスが挙げられる。
芯出し工程の際、ディスクの芯出しセンターボスへの挿入操作は、先ず、ディスクを極力ダメージなく挿入する為、図3に示すように、フリー落下させる。
ディスクの穴径に対して芯出しセンターボス20の径がきつ目に設定されていると、ディスクがセンターボス20に引っ掛かる場合が発生し、それに起因する搬送エラーが発生したり、製品歩留まりの劣化が増加したりするので、このような不具合を防止するため、図4に示すように、ディスク基板のフリー落下後に、吸着搬送ヘッド30により追加スロー押し下げ動作を加えるようにする。これにより、稼働率、良品率を安定させることができる。
図5に示すように、ディスク基板L0、L1が既に支持台21に接触するところまで落下しているときは、吸着搬送ヘッド30を用いて押せないレベルまで押し下げる動作を行なう(図6)。
【0048】
(4)工程4(接着剤硬化工程)
図7に示すように、芯出し工程を経た後の、重ね合わせディスクLを、紫外線照射装置40の光照射テーブルへ移動させる。
光照射テーブルを低速で回転させるか、または停止させた状態で紫外線ランプから紫外線を上方から照射して接着剤を硬化させる。これにより、貼り合わせ型の光ディスクが得られる。
このとき、紫外線照射装置40のランプの直下に、紫外線が透過しない材料からなるキャップ26を移動・セットし、これにより、重ね合わせたディスクLの直上を覆うようにすることが好ましい。これにより、紫外線が芯出し用のセンターボス20に当たらなくなり、樹脂硬化による径拡大を回避できる。すなわちディスク挿入ができなくなることによる搬送エラーの防止が図られ、センターボス20の清掃の軽減化が図られる。
なお、芯出し工程を経た後の、重ね合わせたディスクを、芯出し装置にセットしたまま、可動式の紫外線ランプをディスクの直上に移動し、セットして、紫外線照射を行うようにしてもよい。
なお、図8中の符号27は、紫外線照射装置40からの熱線を遮蔽する熱線カットフィルタである。
【0049】
具体例として、ディスク内穴直径とセンターボス直径との差が13μmである、図2に示したような6点当たりのセンターボス(6角形センターボス 内穴当たり点幅1.5mm/1点につき)を適用した場合であって、ディスク内穴−グルーブの偏芯を15μm以下に抑えたL1ディスクを用いて芯出し、重ね合わせ、紫外線照射による光硬化を行ったとき、ディスク基板L0内穴−基板L1グルーブ偏芯を、9〜31μm程度に抑制できたことが確認された。
【0050】
また、上述した本発明方法に従えば、安定して94%以上の良品率が確保できたことが確かめられたが、例えばディスクの内径よりも25μm程度小径化した、断面がラウンド形状のセンターボスを使用し、搬送アームにて自由落下ではなくボス最下部まで押し下げて芯出し工程を行ったところ、ディスクの内穴に存在している成形バリの影響により、基板L0内穴−基板L1のグルーブ偏芯は、23〜50μmとなり、しかも良品生産率が48.4〜95%程度にばらつき、平均値が88%に低減化してしまうことが確かめられた。
このことにより、本発明方法による優れた安定性が確認できた。
【0051】
〔実施例2〕
本発明方法においては、図9に示すように、紫外線照射装置による紫外線照射工程において、芯出し用のセンターボス20から、重ね合わせ基板Lを外した状態として行うことができる。
また、図10に示すように、予め重ね合わせ基板Lを支持テーブル50上に載置しておき、紫外線照射工程において、支持テーブル50か、センターボス20のいずれか一方を移動させ、重ね合わせ基板Lを芯出し用のセンターボス20から外し、かつセンターボス20の直上を支持テーブル50が覆うような状態にしてもよい。
【0052】
〔実施例3〕
上記〔実施例1〕においては、予め二枚のディスク基板のそれぞれに、紫外線硬化性の接着剤を延展塗布したが、これに代えて、図11に示すように、一方のディスクL1を回転塗布装置の回転テーブル上にセットし、ディスクを低速回転させるとともに、接着剤15を滴下し、ディスクL1の内周部にリング状に塗布しておく。
次に、ディスクL1上に他方のディスクL0を大気又は真空中で重ね合わせる。
このようにして重ね合わせた二枚のディスクを高速回転させ、図12に示すように接着剤15の塗布・振り切り(延展)を行う。
その後、上述した工程と同様にして、搬送ボス挿入工程、ディスク芯出し工程、接着剤硬化工程を経て、目的とするディスク型の記録媒体を作製する。
【0053】
上記実施例1〜3においては、光記録媒体を作製する工程を例として挙げたが、本発明は、上記各例に限定されるものではない。すなわち、基板上に成膜する記録層の材料に応じて記録媒体の機能を適宜設定することができ、例えば磁気記録材料を成膜することにより、磁気記録媒体を作製することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】ディスク芯出し方法に従った一工程図を示す。
【図2】芯出しに用いるセンターボスの一例の概略斜視図を示す。
【図3】本発明のディスク芯出し方法に従った一工程図を示す。
【図4】本発明のディスク芯出し方法に従った一工程図を示す。
【図5】本発明のディスク芯出し方法に従った一工程図を示す。
【図6】本発明のディスク芯出し方法に従った一工程図を示す。
【図7】ディスク芯出し工程後の、紫外線照射工程図を示す。
【図8】ディスク芯出し工程後の、紫外線照射工程図を示す。
【図9】ディスク芯出し工程後の、紫外線照射工程の他の一例の概略図を示す。
【図10】ディスク芯出し工程後の、紫外線照射工程の他の一例の概略図を示す。
【図11】ディスクに対する紫外線塗布工程の他の一例の概略図を示す。
【図12】ディスクに対する紫外線延展工程の他の一例の概略図を示す。
【符号の説明】
【0055】
10 テーブルセンターボス
15 接着剤
20 センターボス
21 支持台
26 キャップ
27 熱線カットフィルタ
30 吸着搬送ヘッド
40 紫外線照射装置
50 支持テーブル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二枚以上の内穴を有するディスクを重ね合わせた状態として、前記ディスクの芯出しを行うディスク芯出し装置であって、
前記ディスクの内穴の直径に比して5〜20μm小さい外径を有するセンターボスを具備していることを特徴とするディスク芯出し装置。
【請求項2】
前記センターボスは、前記ディスクの内穴の内壁全面に当たらず、3点以上の多点当たりになる形状を有していることを特徴とする請求項1に記載のディスク芯出し装置。
【請求項3】
紫外線照射装置を具備しており、
前記センターボスに挿入したディスクに対し、前記紫外線照射装置により紫外線照射を行う際には、前記センターボスに対する紫外線を遮光するようになされていることを特徴とする請求項1に記載のディスク芯出し装置。
【請求項4】
前記ディスクの芯出しを行う前工程として前記二枚以上のディスクを重ね合わせた状態で、ディスク内穴の抜き差しを行うテーブルセンターボス、搬送系ボスを具備しており、
前記テーブルセンターボス、前記搬送系ボスが、前記ディスク内穴の直径に比して、30〜60μm小径であるか、あるいは抜き差し時に縮径可能な構成となっていることを特徴とする請求項1に記載のディスク芯出し装置。
【請求項5】
前記テーブルセンターボス、及び前記搬送系ボスは、前記ディスク内穴に対する内壁当たりが、全周当たりとなっていることを特徴とする請求項4に記載のディスク芯出し装置。
【請求項6】
二枚以上ディスクを重ね合わせた状態として芯出しと貼り合わせを行うものであり、前記ディスクの内穴の直径よりも5〜20μm小さい外径を有しているセンターボスを備えているディスク芯出し装置を用いて行うディスク貼り合わせ方法であって、
前記センターボスへの前記ディスクの内穴の挿入操作は、前記センターボス上部から、前記ディスクを吸着し、あるいは機械的保持する工程と、ディスクを自由落下挿入させる工程とにより行い、
その後、ディスクを前記センターボス挿入下限位置まで下げる追加押し下げ動作を加えるようにすることを特徴とするディスク貼り合わせ方法。
【請求項7】
前記センターボスの形状が、前記ディスクの内穴の内壁全面に当たらず、3点以上の多点当たりになるようにされていることを特徴とする請求項6に記載のディスク貼り合わせ方法。
【請求項8】
紫外線照射装置により、前記センターボスに挿入したディスクに対するUV光照射を行う工程を有し、
前記紫外線照射工程においては、前記芯出しセンターボスに対する紫外線を遮蔽するようにすることを特徴とする請求項6に記載のディスク貼り合わせ方法。
【請求項9】
前記ディスクの芯出しを行う前工程として、前記二枚以上のディスクを重ね合わせた状態で、テーブルセンターボス、搬送系ボスにより、ディスク内穴の抜き差しを行う工程を有し、
前記テーブルセンターボス、前記搬送系ボスが、前記ディスクの内穴の直径に比して、30〜60μm小径であるか、あるいは抜き差し時に縮径可能なものとすることを特徴とする特徴とする請求項6に記載のディスク貼り合わせ方法。
【請求項10】
前記テーブルセンターボス、及び前記搬送系ボスは、前記ディスク内穴に対する内壁当たりが、全周当たりであることを特徴とする請求項6に記載のディスク貼り合わせ方法。
【請求項11】
請求項6乃至10のいずれか一項に記載のディスク貼り合わせ方法により作製されたことを特徴とする貼り合わせ型記録媒体。
【請求項12】
光記録媒体であることを特徴とする請求項11に記載の貼り合わせ型記録媒体。
【請求項13】
磁気記録媒体であることを特徴とする請求項11に記載の貼り合わせ型記録媒体。
【請求項1】
二枚以上の内穴を有するディスクを重ね合わせた状態として、前記ディスクの芯出しを行うディスク芯出し装置であって、
前記ディスクの内穴の直径に比して5〜20μm小さい外径を有するセンターボスを具備していることを特徴とするディスク芯出し装置。
【請求項2】
前記センターボスは、前記ディスクの内穴の内壁全面に当たらず、3点以上の多点当たりになる形状を有していることを特徴とする請求項1に記載のディスク芯出し装置。
【請求項3】
紫外線照射装置を具備しており、
前記センターボスに挿入したディスクに対し、前記紫外線照射装置により紫外線照射を行う際には、前記センターボスに対する紫外線を遮光するようになされていることを特徴とする請求項1に記載のディスク芯出し装置。
【請求項4】
前記ディスクの芯出しを行う前工程として前記二枚以上のディスクを重ね合わせた状態で、ディスク内穴の抜き差しを行うテーブルセンターボス、搬送系ボスを具備しており、
前記テーブルセンターボス、前記搬送系ボスが、前記ディスク内穴の直径に比して、30〜60μm小径であるか、あるいは抜き差し時に縮径可能な構成となっていることを特徴とする請求項1に記載のディスク芯出し装置。
【請求項5】
前記テーブルセンターボス、及び前記搬送系ボスは、前記ディスク内穴に対する内壁当たりが、全周当たりとなっていることを特徴とする請求項4に記載のディスク芯出し装置。
【請求項6】
二枚以上ディスクを重ね合わせた状態として芯出しと貼り合わせを行うものであり、前記ディスクの内穴の直径よりも5〜20μm小さい外径を有しているセンターボスを備えているディスク芯出し装置を用いて行うディスク貼り合わせ方法であって、
前記センターボスへの前記ディスクの内穴の挿入操作は、前記センターボス上部から、前記ディスクを吸着し、あるいは機械的保持する工程と、ディスクを自由落下挿入させる工程とにより行い、
その後、ディスクを前記センターボス挿入下限位置まで下げる追加押し下げ動作を加えるようにすることを特徴とするディスク貼り合わせ方法。
【請求項7】
前記センターボスの形状が、前記ディスクの内穴の内壁全面に当たらず、3点以上の多点当たりになるようにされていることを特徴とする請求項6に記載のディスク貼り合わせ方法。
【請求項8】
紫外線照射装置により、前記センターボスに挿入したディスクに対するUV光照射を行う工程を有し、
前記紫外線照射工程においては、前記芯出しセンターボスに対する紫外線を遮蔽するようにすることを特徴とする請求項6に記載のディスク貼り合わせ方法。
【請求項9】
前記ディスクの芯出しを行う前工程として、前記二枚以上のディスクを重ね合わせた状態で、テーブルセンターボス、搬送系ボスにより、ディスク内穴の抜き差しを行う工程を有し、
前記テーブルセンターボス、前記搬送系ボスが、前記ディスクの内穴の直径に比して、30〜60μm小径であるか、あるいは抜き差し時に縮径可能なものとすることを特徴とする特徴とする請求項6に記載のディスク貼り合わせ方法。
【請求項10】
前記テーブルセンターボス、及び前記搬送系ボスは、前記ディスク内穴に対する内壁当たりが、全周当たりであることを特徴とする請求項6に記載のディスク貼り合わせ方法。
【請求項11】
請求項6乃至10のいずれか一項に記載のディスク貼り合わせ方法により作製されたことを特徴とする貼り合わせ型記録媒体。
【請求項12】
光記録媒体であることを特徴とする請求項11に記載の貼り合わせ型記録媒体。
【請求項13】
磁気記録媒体であることを特徴とする請求項11に記載の貼り合わせ型記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−226854(P2007−226854A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−43722(P2006−43722)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.レーザーディスク
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.レーザーディスク
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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