ディスク装置、ヘッド位置制御装置およびヘッド位置制御方法
【課題】外乱抑圧機能を持つオブザーバ制御による位置決め制御装置において、オブザーバの制御特性を損なうことなく、外乱抑圧機能を付加する。
【解決手段】アクチュエータのモデル(34〜44)と外乱のモデル(50)を分離し、外乱モデル(50)は、感度関数を整形する分母と分子の次数が同一のフィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータ(1)の外乱抑圧値を演算する。外乱モデルは、推定位置誤差に従い、抑圧すべき複数の外乱周波数に応じた複数の整形フィルタの分子を分母とした伝達関数で定義された複数のモデルの外乱の推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、状態情報からアクチュエータの複数の外乱抑圧値を演算し、複数の外乱抑圧値を加算する。
【解決手段】アクチュエータのモデル(34〜44)と外乱のモデル(50)を分離し、外乱モデル(50)は、感度関数を整形する分母と分子の次数が同一のフィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータ(1)の外乱抑圧値を演算する。外乱モデルは、推定位置誤差に従い、抑圧すべき複数の外乱周波数に応じた複数の整形フィルタの分子を分母とした伝達関数で定義された複数のモデルの外乱の推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、状態情報からアクチュエータの複数の外乱抑圧値を演算し、複数の外乱抑圧値を加算する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク装置、ヘッド位置制御装置およびヘッド位置制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスク装置、例えば、磁気ディスク装置や光ディスク装置において、ヘッドを目標トラックに正確に位置決めすることが記録密度向上のために極めて重要である。
【0003】
この位置決め制御において、外乱が、位置決め精度へ影響することが、知られている。このような外乱を制御系で抑圧するため、従来、図24乃至図26の制御系が提案されている。図24の第1の従来技術は、目標位置rと、プラント108の現在位置yとの位置誤差eを演算ブロック100で演算し、コントローラ102に入力し、コントローラ102が、位置誤差eを低減するような制御量を演算し、プラント108を駆動するフィードバック制御系に、並列に、ノッチフィルタの逆特性形態のフィルタ104を付与して、位置誤差の特定の周波数近傍の成分を抑圧する(特許文献1参照)。
【0004】
第2の従来技術は、図25に示すように、図24のフィードバックループのコントローラ102に直列に、フィルタ104を設け、コントローラ102の制御量の特定の周波数近傍の成分を抑圧する(非特許文献1参照)。
【0005】
更に、第3の従来技術は、図26に示すように、図24のフィードバックループに、外乱オブザーバと称して、現在位置yをブロック110で、プラント108の伝達関数Pで割った値、即ち、位置誤差の2階微分値と,演算ブロック106からの指令電流値との差分を、演算ブロック112でとり、バンドパスフィルタ(Qフィルタとも呼ぶ)114を通して、演算ブロック106にフィードバックする(非特許文献1参照)。
【0006】
又、この周期性外乱であるディスクの偏心に対応するために、偏心推定オブザーバを用いて、偏心を補正する方法が提案されている(例えば、特許文献2または特許文献3)。
【0007】
このような偏心推定オブザーバは、状態推定ゲインA,B,C,F,Lを使用して、実際の位置誤差と、推定した位置誤差との誤差から、アクチュエータの制御値を計算し、次サンプルの状態量(位置、速度、バイアス値、偏心量を計算する。
【0008】
ここで、推定ゲインLは、位置推定ゲインL1,速度推定ゲインL2,バイアス推定ゲインL3,偏心推定ゲインL4,L5からなる。そして、L1,L2,L3は、コントローラ自体の特性であり、L4,L5は、周期性外乱である偏心に対する応答特性を示す。
【特許文献1】USP 6,487,028B1公報
【非特許文献1】R. J. Bickel and M. Tomizuka, 論文“Disturbance observer based hybrid impedance control”(Proceedings of the American Control Conference 1995, pp.729-733)
【特許文献2】特開平7−50075号公報
【特許文献3】特開2000−21104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このようなオブザーバを利用して、偏心成分以外の外部振動に追従するような位置決め制御が望まれている。即ち、ディスク装置の記録密度の高密度化に伴い、外部振動によるヘッドの位置決め精度への影響が無視できなくなっている。例えば、媒体の振動や、媒体の回転でヘッドが受ける風が、ヘッドの位置決め精度に影響する。又、ディスク装置の利用拡大に伴い、モバイル機器、例えば、携帯端末、携帯電話、携帯型AV機器に搭載されおり、広い範囲の外乱周波数に適応することも要求されている。
【0010】
前述の従来技術の外乱抑圧では、偏心補正など、特定の周波数域を選択的に抑圧する補償器を付加する場合には、抑圧域の幅を極めて狭くすれば、元の制御系の特性に影響を与えず、実装できる。しかしながら、近年の広い範囲の外乱周波数に適応するという要求に対し、抑圧幅を広くとる場合や高い周波数域の外乱を抑圧する場合には、元のコントローラの特性に影響を与え、所望の外乱抑圧機能を付加するのが、困難である。
【0011】
又、従来技術では、1つのオブザーバを設計した後、後から外乱抑圧機能を付与する場合には、制御系全体の特性、例えば、極配置が大きくずれてしまい、オブザーバ全体の再設計が必要となる。即ち、従来は、外乱モデルを決めてから、コントローラと外乱抑圧機能を含めたオブザーバを設計するため、後で、特定の外乱抑圧機能を付与する場合には、全体に影響し、再設計が必要である。
【0012】
従って、本発明の目的は、種々の外乱周波数に、オブザーバの制御特性を損なうことなく、適応するためのディスク装置、ヘッド位置制御装置およびヘッド位置制御方法を提供することにある。
【0013】
又、本発明の他の目的は、オブザーバの制御特性を損なうことなく、広い範囲の外乱周波数に適応して、ヘッドの振動を防止するためのディスク装置、ヘッド位置制御装置およびヘッド位置制御方法を提供することにある。
【0014】
更に、本発明の他の目的は、オブザーバの制御特性を損なうことなく、広い範囲の外乱周波数に適応して、ヘッドの追従性能を向上するためのディスク装置、ヘッド位置制御装置およびヘッド位置制御方法を提供することにある。
【0015】
更に、本発明の他の目的は、オブザーバの制御特性を損なうことなく、広い範囲の外乱周波数に適応して、ヘッドのリード/ライト特性を改善するためのディスク装置、ヘッド位置制御装置およびヘッド位置制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のディスク装置は、ディスク記憶媒体のデータを少なくとも読み取るヘッドと、前記ディスク記憶媒体の所定位置に、前記ヘッドを位置決めするアクチュエータと、前記ヘッドの目標位置と前記ヘッドから得た現在位置とから位置誤差を演算し、オブザーバ制御により推定位置を演算し、前記位置誤差と前記推定位置とから推定位置誤差を演算し、演算された前記推定位置誤差に従い、前記アクチュエータの推定ゲインを用いて生成した状態情報から前記アクチュエータの制御値を演算するコントローラモデルと、前記コントローラモデルに付加され、感度関数を整形する分母と分子の次数が同一である整形フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義されたモデルであって、前記コントローラモデルで演算された前記推定位置誤差に従い、外乱の推定ゲインを用いて生成した状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算する外乱モデルとを有し、前記コントローラモデルで演算された前記制御値と前記外乱モデルで演算された前記外乱抑圧値とを加算して前記アクチュエータを駆動する制御ユニットと、を備え、前記外乱モデルは、前記推定位置誤差に従い、前記抑圧すべき複数の外乱周波数に応じた複数の前記整形フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された複数のモデルの外乱の推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの複数の外乱抑圧値を演算し、前記複数の外乱抑圧値を加算する、ことを特徴とする。
【0017】
本発明のヘッド位置制御装置は、ディスク記憶媒体のデータを少なくとも読み取るヘッドを、オブザーバ制御により、アクチュエータを制御して、前記ディスク記憶媒体の所定位置に位置決めするヘッド位置制御装置において、前記ヘッドの目標位置と前記ヘッドから得た現在位置とから位置誤差を演算し、オブザーバ制御により推定位置を演算し、前記位置誤差と前記推定位置とから推定位置誤差を演算し、演算された前記推定位置誤差に従い、前記アクチュエータの推定ゲインを用いて生成した状態情報から前記アクチュエータの制御値を演算するコントローラモデルと、前記コントローラモデルに付加されていて、感度関数を整形する分母と分子の次数が同一である整形フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義されたモデルであって、前記コントローラモデルで演算された前記推定位置誤差に従い、外乱の推定ゲインを用いて生成した状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算する外乱モデルと、前記コントローラモデルで演算された前記制御値と前記外乱モデルで演算された前記外乱抑圧値を加算して、前記アクチュエータを駆動する加算ブロックと、を有し、前記外乱モデルは、前記推定位置誤差に従い、前記抑圧すべき複数の外乱周波数に応じた複数の前記整形フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された複数のモデルの外乱の推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの複数の外乱抑圧値を演算し、前記複数の外乱抑圧値を加算する、ことを特徴とする。
【0018】
本発明のヘッド位置制御方法は、ディスク記憶媒体のデータを少なくとも読み取るヘッドを、オブザーバ制御により、アクチュエータを制御して、前記ディスク記憶媒体の所定位置に位置決めするヘッド位置制御装置で実行されるヘッド位置制御方法であって、前記ヘッド位置制御装置は、制御部と記憶部を備え、前記制御部において実行される、コントローラモデルが、前記ヘッドの目標位置と前記ヘッドから得た現在位置とから位置誤差を演算し、オブザーバ制御により推定位置を演算し、前記位置誤差と前記推定位置とから推定位置誤差を演算し、演算された前記推定位置誤差に従い、前記アクチュエータの推定ゲインを用いて生成した状態情報から前記アクチュエータの制御値を演算するステップと、前記コントローラモデルに付加された外乱モデルが、感度関数を整形する分母と分子の次数が同一である整形フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義されたモデルであって、前記コントローラモデルで演算された前記推定位置誤差に従い、外乱の推定ゲインを用いて生成した状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算するステップと、加算ブロックが、前記コントローラモデルで演算された前記制御値と前記外乱モデルで演算された前記外乱抑圧値を加算して、前記アクチュエータを駆動するステップと、を含み、前記外乱モデルは、前記推定位置誤差に従い、前記抑圧すべき複数の外乱周波数に応じた複数の前記整形フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された複数のモデルの外乱の推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの複数の外乱抑圧値を演算し、前記複数の外乱抑圧値を加算する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
外乱抑圧のため、導入したい周波数特性を、整形フィルタで定義し、整形フィルタの分子の式を分母に持つ外乱モデルを構成し、元のオブザーバのモデル(コントローラモデル)に付加し、この外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、状態情報から、アクチュエータの外乱抑圧値を演算するので、外乱抑圧機能を、抑圧幅を広くとる場合や高い周波数域の外乱を抑圧する場合でも、元のオブザーバ(コントローラ)の制御特性に影響を与えず、実装できる。また、最初に整形したいフィルタ形状を考えた上で、外乱モデルを元のオブザーバ(コントローラ)に付加し、設計することが可能になるので、元々の外乱モデルの物理的応答特性に拘束されることなく、自由な形状の整形が可能になる。
【0020】
また、従来困難であった複数の異なる外乱周波数の抑圧や、低域の特定帯域の広い幅の外乱抑圧機能を容易に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の一実施形態を示すディスク装置の構成図である。
【図2】図2は、図1のディスクの位置信号の説明図である。
【図3】図3は、図2の位置信号の詳細説明図である。
【図4】図4は、本発明の一実施の形態の外乱オブザーバ制御系のブロック図である。
【図5】図5は、図4の外乱オブザーバのアナログ設計手順の説明図である。
【図6】図6は、図4の外乱オブザーバのデジタル設計手順の説明図である。
【図7】図7は、図4の実施の形態の第1の実施例の整形フィルタの特性図である。
【図8】図8は、図4の実施の形態の第1の実施例の開ループ特性図である。
【図9】図9は、図4の実施の形態の第1の実施例の感度関数の特性図である。
【図10】図10は、図4の実施の形態の第1の実施例の加速度外乱特性図である。
【図11】図11は、図4の実施の形態の第2の実施例の整形フィルタの特性図である。
【図12】図12は、図4の実施の形態の第2の実施例の開ループ特性図である。
【図13】図13は、図4の実施の形態の第2の実施例の感度関数の特性図である。
【図14】図14は、図4の実施の形態の第2の実施例の加速度外乱特性図である。
【図15】図15は、本発明の他の実施の形態の外乱オブザーバ制御系のブロック図である。
【図16】図16は、図15の実施の形態の第1の実施例の整形フィルタの特性図である。
【図17】図17は、図15の実施の形態の第1の実施例の開ループ特性図である。
【図18】図18は、図15の実施の形態の第1の実施例の感度関数の特性図である。
【図19】図19は、図15の実施の形態の第1の実施例の加速度外乱特性図である。
【図20】図20は、図15の実施の形態の第2の実施例の整形フィルタの特性図である。
【図21】図21は、図15の実施の形態の第2の実施例の開ループ特性図である。
【図22】図22は、図15の実施の形態の第2の実施例の感度関数の特性図である。
【図23】図23は、図15の実施の形態の第2の実施例の加速度外乱特性図である。
【図24】図24は、第1の従来技術の説明図である。
【図25】図25は、第2の従来技術の説明図である。
【図26】図26は、第3の従来技術の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を、ディスク装置、オブザーバの第1の実施の形態、設計方法、第1の実施の形態の実施例、第2の実施の形態、第2の実施の形態の実施例、他の実施の形態の順で説明するが、本発明は、この実施の形態に限られない。
【0023】
(ディスク装置)
図1は、本発明の一実施の形態のディスク装置の構成図、図2は、図1の磁気ディスクの位置信号の配置図、図3は、図1及び図2の磁気ディスクの位置信号の構成図である。
【0024】
図1は、ディスク装置として、磁気ディスク装置を示す。図1に示すように、磁気記憶媒体である磁気ディスク4が、スピンドルモータ5の回転軸2に設けられている。スピンドルモータ5は、磁気ディスク4を回転する。アクチュエータ(VCM)1は、先端に磁気ヘッド3を備え、磁気ヘッド3を磁気ディスク4の半径方向に移動する。
【0025】
アクチュエータ1は、回転軸を中心に回転するボイスコイルモータ(VCM)で構成される。図では、磁気ディスク装置に、2枚の磁気ディスク4が搭載され、4つの磁気ヘッド3が、同一のアクチュエータ1で同時に駆動される。
【0026】
磁気ヘッド3は、リード素子と、ライト素子とからなる。磁気ヘッド3は、スライダに、磁気抵抗(MR)素子を含むリード素子を積層し、その上にライトコイルを含むライト素子を積層して、構成される。
【0027】
位置検出回路7は、磁気ヘッド3が読み取った位置信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換する。リード/ライト(R/W)回路10は、磁気ヘッド3の読み取り及び書込みを制御する。スピンドルモータ(SPM)駆動回路8は、スピンドルモータ5を駆動する。ボイスコイルモータ(VCM)駆動回路6は、ボイスコイルモータ(VCM)1に駆動電流を供給し、VCM1を駆動する。
【0028】
マイクロコントローラ(MCU)14は、位置検出回路7からのデジタル位置信号から現在位置を検出(復調)し、検出した現在位置と目標位置との誤差に従い、VCM駆動指令値を演算する。即ち、位置復調と図4以下で説明する外乱抑圧を含むサーボ制御を行う。リードオンリーメモリ(ROM)13は、MCU14の制御プログラム等を格納する。ランダムアクセスメモリ(RAM)12は、MCU14の処理のためのデータ等を格納する。
【0029】
ハードディスクコントローラ(HDC)11は、サーボ信号のセクタ番号を基準にして,1周内の位置を判断し,データを記録・再生する。バッファ用ランダムアクセスメモリ(RAM)15は、リードデータやライトデータを一時格納する。HDC11は、USB,ATAやSCSI等のインターフェイスIFで、ホストと通信する。バス9は、これらを接続する。
【0030】
図2に示すように、磁気ディスク4には、外周から内周に渡り、各トラックにサーボ信号(位置信号)16が、円周方向に等間隔に配置される。尚、各トラックは、複数のセクタで構成され、図2の実線は、サーボ信号16の記録位置を示す。図3に示すように、位置信号は,サーボマークServo Markと、トラック番号Gray Codeと、インデックスIndexと、オフセット情報(サーボバースト)PosA,PosB,PosC,PosDとからなる。尚、図3の点線は、トラックセンターを示す。
【0031】
図3の位置信号をヘッド3で読み取り、トラック番号Gray Codeとオフセット情報PosA,PosB,PosC,PosDを使い,磁気ヘッドの半径方向の位置を検出する。さらに、インデックス信号Indexを元にして,磁気ヘッドの円周方向の位置を把握する。
【0032】
例えば,インデックス信号を検出したときのセクタ番号を0番に設定し、サーボ信号を検出する毎に、カウントアップして、トラックの各セクタのセクタ番号を得る。このサーボ信号のセクタ番号は,データの記録再生を行うときの基準となる。尚、インデックス信号は、1周に1つである、又、インデックス信号の代わりに、セクタ番号を設けることもできる。
【0033】
図1のMCU14は、位置検出回路7を通じて、アクチュエータ1の位置を確認して,サーボ演算し、適切な電流をVCM1に供給する。即ち、シーク制御は、コアース制御、整定制御及びフォローイング制御と遷移することで,目標位置まで移動させることができる。いずれも、ヘッドの現在位置を検出する必要がある。
【0034】
このような,位置を確認するためには,前述の図2のように、磁気ディスク上にサーボ信号を事前に記録しておく。即ち、図3に示したように、サーボ信号の開始位置を示すサーボマーク,トラック番号を表すグレイコード,インデックス信号,オフセットを示すPosA〜PosDといった信号が記録されている。この信号を磁気ヘッドで読み出し、このサーボ信号を、位置検出回路7が、デジタル値に変換する。
【0035】
(外乱オブザーバの第1の実施の形態)
図4は、図1のMCU14が実行する外乱を抑圧する位置決め制御系の第1の実施の形態のブロック図である。この位置決め制御系は、外乱周波数を検出し、外乱を適応制御により、抑圧するためのオブザーバ制御系である。
【0036】
図4に示すオブザーバは、下記式(1)、(2)、(3)、(4)、(5)で示されるバイアス補償を含む現在オブザーバである。
【0037】
【数1】
【0038】
【数2】
【0039】
【数3】
【0040】
【数4】
【0041】
【数5】
【0042】
即ち、この実施の形態は、コントローラのモデルから外乱モデル50を分離した適応制御系の例である。図4において、第1の演算ブロック30は、ヘッド3が読み取った前述のサーボ情報を復調して得た観測位置y[k]から目標位置rを差し引き、実位置誤差er[k]を演算する。第2の演算ブロック32は、実位置誤差er[k]からオブザーバの推定位置x[k]を差し引き、推定位置誤差e[k]を演算する。
【0043】
コントローラモデルでは、この推定位置誤差e[k]は、状態推定ブロック34に入力され、コントローラの推定ゲインLa(L1,L2)を用いて、推定修正値(式(1)の右辺)が、演算される。そして、遅延ブロック46から状態量(式(1)の左辺)x[k],v[k]と加算ブロック36で加算され、式(1)のように、推定位置x[k],推定速度v[k]を得る。尚、式(1)では、推定位置誤差e[k]を、(y[k]−x[k])で表示する。
【0044】
この推定値のx[k],v[k]は、第4の演算ブロック38で、状態フィードバックゲイン(一Fa=F1,F2)を乗算され、式(2)のように、アクチュエータ1の第1の駆動値u[k]を得る。一方、加算ブロック36からの式(1)の推定値x[k],v[k]は、第5の演算ブロック42で、推定ゲインAa(式(4)の2×2の(1,0)の行列)を乗じられ、第4の演算ブロック38の駆動値u[k]は、第6の演算ブロック40で、推定ゲインBa(式(4)のu[k]に乗じる値)を乗じられる。両乗算結果は、加算ブロック44で、加算され、式(4)の次のサンプルの推定状態量x[k+1],v[k+1]を得る。
【0045】
この次のサンプルの推定状態量は、前述のように、遅延ブロック46に入力し、状態推定ブロック34で、推定修正値で、修正される。そして、加算ブロック36からの式(1)の推定値は、第7の演算ブロック48で、推定位置x[k]が取り出され、前述の第2の演算ブロック32に入力する。
【0046】
一方、外乱モデル50では、推定位置誤差e[k]が、外乱の状態推定ブロック51に入力され、推定ゲインLd1(L3,L4,L5)を用いて、推定修正値(式(1)の右辺)が、演算される。そして、遅延ブロック52から状態量(式(1)の左辺)と、加算ブロック56で加算され、式(1)のように、推定バイアス値b[k],推定外乱抑圧値z1[k],z2[k]を得る。
【0047】
この推定値b[k],z1[k],z2[k]は、第8の演算ブロック58で、状態フィードバックゲイン(Fd1=F3,F4,F5)を乗算され、式(3)のように、アクチュエータ1の外乱抑圧駆動値を得る。一方、加算ブロック56からの式(1)の推定値のb[k],z1[k],z2[k]は、第9の演算ブロック54で、推定ゲインAd1(式(5)のb[k]のゲイン及び2×2のA行列のゲイン)を乗じられ、遅延ブロック52に入力し、次のサンプルの推定値b[k+1],z1[k+1],z2[k+1]を得る。
【0048】
そして、加算ブロック60で、駆動値u[k]に、外乱抑圧駆動値を差し引き、式(3)の出力駆動値uout[k]を得る。
【0049】
即ち、推定ゲインLを、コントローラモデルと外乱モデルで分離し、且つフィードバックゲインFを、コントローラモデルと外乱モデルで分離し、コントローラモデルと外乱モデルを分離して、設計する。
【0050】
(オブザーバの設計方法)
次に、この外乱モデルを分離したオブザーバの設計方法を、図5及び図6を用いて、説明する。
【0051】
先ず、図5により、第1の設計方法を説明する。
【0052】
(S10)元となるコントローラを、オブザーバ制御にて,設計する。即ち、制御対象のモデルを設定する。
【0053】
(S12)その上で,整形したいフィルタ形状を決める。即ち、整形フィルタの個数と、個々のフィルタの極、零点を設定する。ただし、整形したいフィルタ形状は、1次または2次フィルタで、分子と分母の次数が同一であることが必要である。
【0054】
(S14)次に,整形フィルタの零点を用い、フィルタの分子の式を,分母に持つ外乱モデルを構成する。
【0055】
(S16)この外乱モデルを、S10のオブザーバのモデルに付加する。この外乱モデルを付加することは,感度関数の零点を指定することになる。
【0056】
(S18)次に,オブザーバ制御系全体の極を指定する。この極は,元々の設計で用いていた極と,整形するためのフィルタの極とを含めたものである。即ち、整形フィルタの極を含めて、拡大モデル(全体モデル)の極配置を行い、オブザーバの推定ゲインL1〜L5,A行列を設計する。
【0057】
(S20)制御対象モデルのみの極配置を行い、状態フィードバックゲインFを設計する。
【0058】
(S22)状態フィードバックゲインに外乱モデルの出力ゲインを付加し、統合モデルのフィードバックゲインを設計する。このようにして外乱モデルを含むオブザーバを設計する。
【0059】
即ち、本発明では、位置外乱や外部の振動、打撃を抑圧する性能を、感度関数や加速度外乱特性により、判断する。このため、感度関数や加速度外乱特性の形状を設計することにより、所望の外乱抑圧機能を付与する。
【0060】
以下、例を挙げて設計手順を説明する。先ず、アクチュエータ1を2重積分モデルとしたときの、オブザーバ制御系は、次式(6)のアナログ式で示される。
【0061】
【数6】
【0062】
式(6)において、sは、ラプラス演算子、xは、推定位置、vは、推定速度、yは、現在位置、rは、目標位置、L1,L2は、各々位置、速度の推定ゲイン、uは、駆動電流、Bl/mは、アクチュエータ1の力定数である。
【0063】
次に、この制御系は、1/(1+CP)の感度関数を持つが、この感度関数に対して、外乱抑圧を、次式(7)の1次フィルタで定義し、この1次フィルタで感度関数を、整形する。
【0064】
【数7】
【0065】
即ち、このフィルタを与えた時の感度関数は、1/(1+CP)に、式(7)を乗じた形状となる。
【0066】
このとき、外乱モデルとして、上記(7)式のフィルタの分子を、分母として持つとなる下記式(8)の伝達関数のモデルをオブザーバに実装する。
【0067】
【数8】
【0068】
一方、式(7)のフィルタの分母(ω2)は、極配置に用いる。
【0069】
この外乱モデルを式(6)のオブザーバに実装することにより、式(6)から、次式(9)が得られる。
【0070】
【数9】
【0071】
上記の式(9)のbは、外乱推定値であり、ここでは、定常バイアス推定値のパラメータで示している。式(9)において、オブザーバの推定ゲインL1,L2,L3を設計するには、式(6)の元のオブザーバの設計に用いた極とともに,式(7)の整形フィルタの極(分母):−ω2を指定する。
【0072】
また,式(9)において、フィードバックゲインは、(Fx,Fv)のみ設計する。外乱モデルは、可観測ではあるが、可制御ではないため,外乱モデルのフィードバックゲインは変更できない。外乱モデルとしてオブザーバの推定ゲイン設計に用いたものと同じものを指定することになる。式(9)では、外乱モデルのフィードバックゲイン(出力ゲイン)は、K=m/Blである。
【0073】
このように、元となるコントローラをオブザーバ制御で設計し、抑圧する外乱周波数に応じた整形したいフィルタ形状を決める。ここで、整形フィルタは、1次又は2次のフィルタであり、分子と分母の次数が同一であることが必要である。フィルタの分子と分母の次数が異なる場合には、例えば、分母の次数が、分子の次数より大きい場合(ω1/(s+ω2))には、このフィルタの周波数特性は、高域程、ゲインが低下し、元の感度関数に乗じた場合には、元の感度関数(即ち、コントローラの特性)が、大幅に変わってしまうからである。
【0074】
そして、フィルタの分子の式を、分母に持つ外乱モデルを構成し、オブザーバのモデルに付加する(式(9))。この外乱モデルを付加することは、感度関数の零点を指定することになる。
【0075】
次に、前述のように、オブザーバ制御系全体の極を指定する。この極は、元のコントローラのモデルで用いた極と、整形するためのフィルタの極(−ω2)を含めたものとなる。
【0076】
換言すれば、外乱抑圧のため、導入したい周波数特性を、整形フィルタで定義し、整形フィルタの分子の式を分母に持つ外乱モデルを構成し、元のオブザーバのモデルに付加する。これにより、外乱抑圧機能を、抑圧幅を広くとる場合や高い周波数域の外乱を抑圧する場合でも、元のコントローラの特性に影響を与えず、実装できる。
【0077】
又、1つのオブザーバを設計した後、後から外乱抑圧機能を付与する場合でも、制御系全体の特性のずれが小さく、オブザーバ全体の再設計も必要ない。
【0078】
次に,整形フィルタを、2次フィルタとした場合を、説明する。2次フィルタとして,下記(10)式で定義する。
【0079】
【数10】
【0080】
前述のように、外乱モデルは、整形フィルタの分子の式を分母に持つため、次式(11)で表される。
【0081】
【数11】
【0082】
次に、この外乱モデルを、元のコントローラのオブザーバ(式(6))に実装する方法として3通りの方法が考えられる。
【0083】
第1の方法は、式(9)と同様に、式(11)の外乱モデルをそのまま実装する。即ち、2次フィルタのため、外乱の状態推定量をz1,z2とし、外乱の推定ゲインをL3,L4とすると、式(12)で表される。
【0084】
【数12】
【0085】
次に、第2の方法は、ω1の二乗の項を、分散させ、式(12)を変形して、式(13)を得る。
【0086】
【数13】
【0087】
第3の方法は、式(13)のω1の符号を反転したものであり、式(14)で表される。
【0088】
【数14】
【0089】
いずれの方法を採用しても、設計が可能になる。第2の方法及び第3の方法は、特にデジタル制御系へ上記モデルを変換したときに有効である。即ち、2つの状態変数z1,z2のバランスがとれ,2つの状態変数用のオブザーバの推定ゲインL3、L4の大きさが離れすぎずに、実装できる。
【0090】
このときに,極は、式(10)の整形フィルタの極(式(10)の分母=0から導かれる)と,もとのオブザーバ制御系の設計に用いた極とをあわせて,指定して、推定ゲインL1、L2、L3、L4の値を設計する。
【0091】
更に、この2次フィルタ整形と、従来の定常バイアス推定とをあわせたオブザーバ制御系は、次式(15)で表される。
【0092】
【数15】
【0093】
このように,最初に整形したいフィルタ形状を考えた上で,外乱モデルをオブザーバに付加し,設計することが可能になる。したがって,元々の外乱モデルの物理的応答特性に拘束されることなく,自由な形状の整形が可能になった。
【0094】
図5は、アナログ設計における説明であった。一方,デジタル制御系を設計するには、図6の設計フローに従う。
【0095】
図6において、図5で示したステップと同一のステップは、同一の記号で示してある。図6に示すように、ステップS16で、外乱モデルをアナログ空間にてモデル化して拡大モデルを構成する。一方,ステップS30で、拡大モデルをデジタル空間に変換した(離散化した)後、ステップS18の極配置を、デジタル空間で指定する。
【0096】
更に、2次フィルタの特性を外乱モデルとして持つ場合に、拡大モデルを離散系に変換すると,オブザーバの推定ゲインを設計するためのA行列の中に、外乱モデルの2変数z1,z2ともに、アクチュエータ1に影響を与える形となってしまう。
【0097】
そこで,外乱モデルの一方の変数のみが、アクチュエータ1に影響を及ぼすように、具体的には、アナログ設計と同じ変数のみが、アクチュエータ1に影響を及ぼすように修正する。即ち、離散化した後、ステップS32で、拡大モデルを修正する。
【0098】
具体的に説明すると、2次フィルタを使用した式(13)の形のアナログモデルを離散化(所謂、z変換して、SI単位に変換)すると、次式(16)の形になる。
【0099】
【数16】
【0100】
式(16)において、zは、Z変換子、Tは、サンプリング周期である。ここで,着目すべきは、A行列であるA13,A14,A23,A24である。離散化しただけでは、A14,A24は,いずれも「0」にはならない。即ち、オブザーバの推定ゲインを設計するためのA行列の中に、外乱モデルの2変数z1,z2ともに、アクチュエータ1に影響を与える形となってしまう。
【0101】
そこで、アナログモデルを離散化した上で、さらに、A行列中の外乱モデルの状態変数z1,z2が、アクチュエータ1に影響を与える係数を置換する。
【0102】
式(16)の例では、A行列を、下記式(17)のように、修正する。
【0103】
【数17】
【0104】
また,デジタル制御系においては,距離の単位がトラック,電流値は最大電流を1と正規化,さらに、速度や加速度も秒ではなく、サンプル周波数で正規化することも必要になる。
同様にして、式(15)のアナログ形式のオブザーバを、現在オブザーバの形式に変換すると、式(18)となる。
【0105】
【数18】
【0106】
このように、外乱モデルを分離可能な構成に設計した場合には、式(18)を前述の図4で示したように、外乱モデルを分離して、実装できる。
【0107】
即ち、式(18)と式(1)乃至(5)を比較すると、式(18)において、コントローラのモデルを独立させたものが、式(2)、(4)であり、外乱モデル50を分離した式が、式(3)、(5)となる。
【0108】
(第1の実施の形態の実施例)
図7及び図10は、本発明の第1の実施の形態の第1の実施例の説明図であり、図7は、整形フィルタの特性図、図8は、開ループ特性図、図9は、感度関数の特性図、図10は、加速度外乱特性図である。
【0109】
図7乃至図10は、1600Hzをノッチ状に抑圧する例である。このような高域を抑圧する必要性は、ディスク媒体の振動や、ヘッドサスペンションの風による加振により、高域の周波数が外乱として、印加される場合である。特に、ディスク媒体の回転数が高速化すると、トラック密度が高い装置では、このような高域の周波数外乱による影響が顕著である。
【0110】
このような高域では、コントローラにノッチフィルタの逆特性を直列に挿入しても、実現が難しい。又、位相特性で明らかなように、下げた後上げるという特性を実現するには、フィルタ係数の調整に試行錯誤が必要となる。
【0111】
本実施の形態では、図7に示すように、特定周波数のみを抑圧する整形フィルタを設計する。この整形フィルタは、式(10)で示した2次フィルタで設計する。式(10)において、ω1=2π*1600,ω2=ω1、ζ1=0.025、ζ2=0.05とした
ものである。
【0112】
この整形フィルタの周波数特性については、図7の上段に、周波数対ゲイン特性、下段に周波数対位相特性に示すように、ゲインは、1600Hz付近で抑圧され、位相は、1600Hz付近で、一旦下がり、その後上がる特性である。
【0113】
このように設計された整形フィルタを用いて、前述のオブザーバを構成する。この時のオブザーバで構成される制御系の開ループ特性については、図8の上段に、周波数対ゲイン特性、下段に周波数対位相特性に示すように、ゲインを、1600Hzで下げ、位相を1600Hz付近で上げる操作を行う。
【0114】
このため、制御系の感度関数については、図9の周波数対ゲイン特性に示すように、ゲインは、1600Hz付近で抑圧される。又、制御系の加速度外乱特性についても、図10の周波数対ゲイン特性に示すように、ゲインは、1600Hz付近で抑圧される。
【0115】
図11及び図14は、本発明の第1の実施の形態の第2の実施例の説明図であり、図11は、整形フィルタの特性図、図12は、開ループ特性図、図13は、感度関数の特性図、図14は、加速度外乱特性図である。
【0116】
図11乃至図14は、低域を一律に抑圧する例である。このような低域を一律に抑圧する必要性は、ディスク媒体の偏心に加え、外部振動の抑圧幅を広くしたい場合である。特に、低域の外部振動成分は多く存在し、その影響が顕著である。このような低域の抑圧幅を広くすることは、従来のオブザーバでは、実現が難しい。
【0117】
本実施の形態では、図11に示すように、低域を広範囲で抑圧する整形フィルタを設計する。この整形フィルタは、式(10)で示した2次フィルタで設計する。式(10)において、ω1=2π*200,ω2=2π*400、ζ1=0.5、ζ2=0.5とした
ものである。
【0118】
この整形フィルタの周波数特性については、図11の上段に、周波数対ゲイン特性、下段に周波数対位相特性に示すように、ゲインは、低域の下限(100Hz)を越えると徐々に増加し、低域の上限(ここでは、500Hz近傍)でほぼ一定となり、位相は、低域の下限(100Hz)から低域の上限(ここでは、500Hz近傍)の間で山を形成する特性である。
【0119】
このように設計された整形フィルタを用いて、前述のオブザーバを構成する。この時のオブザーバで構成される制御系の開ループ特性については、図12の上段に、周波数対ゲイン特性、下段に周波数対位相特性の太線に示すように、ゲインを、低域で上げ、位相を低域付近で上げる操作を行う。
【0120】
このため、制御系の感度関数については、図13の周波数対ゲイン特性の太線に示すように、ゲインは、低域付近で抑圧される。又、制御系の加速度外乱特性についても、図14の周波数対ゲイン特性の太線に示すように、ゲインは、低域で抑圧される。
【0121】
この実施例のように、従来困難であった高域の抑圧や、低域の広い幅の外乱抑圧オブザーバを容易に実現できる。
【0122】
(オブザーバの第2の実施の形態)
図15は、図1のMCU14が実行する外乱を抑圧する位置決め制御系の第2の実施の形態のブロック図である。
【0123】
この位置決め制御系は、外乱周波数を検出し、外乱を適応制御により、抑圧するためのオブザーバ制御系であり、図4の外乱モデルを分離して、複数実装した適応制御系である。
【0124】
図15において、図4で示したものと同一のものは、同一の記号で示してあり、外乱モデル50−1・・・、50−Nの各々は、図4で示した外乱適応制御モデルのブロック51,52,54,56,58で構成される。
【0125】
各外乱モデル50−1、・・・、50−Nは、追従が必要な外乱周波数毎に、設けられる。各外乱モデル50−1、・・・、50−Nの出力は、加算ブロック62で加算された後、演算ブロック60に出力される。このモデルの動作は、図4と同一であり、説明を省略する。
【0126】
外乱モデル50−1,50−2を2つとした場合のオブザーバは、式(1)〜(5)を、2モデル分拡張して、下記式(19)〜(23)で得られる。
【0127】
【数19】
【0128】
【数20】
【0129】
【数21】
【0130】
【数22】
【0131】
【数23】
【0132】
ここでは、外乱モデル50−1の位置、速度の推定量(変数)を、z1,z2,推定ゲインをL3,L4,L5,出力ゲインをF3,F4,F5とし、外乱モデル50−2の位置、速度の推定量(変数)を、z3,z4,推定ゲインをL6,L7,出力ゲインをF6,F7としている。
【0133】
この例でも、図6で示したように、各外乱モデルを整形フィルタで設計して、同様に、拡大モデルを設計する。このような構成では、以下の実施例で説明するように、複数の特定の周波数を抑圧できる。
【0134】
(第2の実施の形態の実施例)
図16及び図19は、本発明の第2の実施の形態の第1の実施例の説明図であり、図16は、整形フィルタの特性図、図17は、開ループ特性図、図18は、感度関数の特性図、図19は、加速度外乱特性図である。
【0135】
図16乃至図19は、3つの周波数をノッチ状に抑圧するNRRO(Non Repeatable Rotation)フィルタの例である。このような複数の周波数を抑圧する必要性は、種々の外乱に対応して、抑圧幅を広げる意味で、有効である。
【0136】
このような複数の周波数を抑圧するには、コントローラにノッチフィルタの逆特性を多段に挿入する必要があり、その調整が難しい。
【0137】
本実施の形態では、図16に示すように、3つの特定周波数(1000Hz,1100Hz,1600Hz)を抑圧する整形フィルタを設計する。この整形フィルタは、式(10)で示した2次フィルタを3つ設計する。式(10)において、第1のフィルタは、ω1=2π*1020,ω2=2π*1000、ζ1=0.025、ζ2=0.05とし、第2のフィルタは、ω1=2π*1090,ω2=2π*1210、ζ1=0.025、ζ2=0.05とし、第3のフィルタは、ω1=2π*1600,ω2=2π*1600、ζ1=0.025、ζ2=0.05とし、直列接続したものである。即ち、図15の外乱モデルを3つ設計する。
【0138】
この整形フィルタの周波数特性については、図16の上段に、周波数対ゲイン特性、下段に周波数対位相特性に示すように、ゲインは、1000Hz付近、1100Hz付近、1600Hz付近の3箇所で抑圧され、位相は、1000Hz付近で、一旦下がり、その後上がり、1100Hz付近で下がり、1600Hz付近で上がり、その後下がる複雑な特性である。
【0139】
このように設計された整形フィルタを用いて、前述のオブザーバを構成する。この時のオブザーバで構成される制御系の開ループ特性については、図17の上段に、周波数対ゲイン特性、下段に周波数対位相特性の太線に示すように、ゲインを、1000Hz,1100Hz,1600Hzで下げ、位相を1000Hzで下げ、1100Hz,1600Hz付近でピークとなる操作を行う。
【0140】
このため、制御系の感度関数については、図18の周波数対ゲイン特性の太線に示すように、ゲインは、1000Hz,1100Hz付近で、1600Hz付近で抑圧される。又、制御系の加速度外乱特性についても、図19の周波数対ゲイン特性の太線に示すように、ゲインは、1000Hz,1100Hz付近で、1600Hz付近で抑圧される。
【0141】
図20及び図23は、本発明の第2の実施の形態の第2の実施例の説明図であり、図20は、整形フィルタの特性図、図21は、開ループ特性図、図22は、感度関数の特性図、図23は、加速度外乱特性図である。
【0142】
図20乃至図23は、低域の特定の帯域幅を一律に抑圧するバンドストップの例であり、且つ加速度外乱特性のピークを抑える。このような低域の特定の帯域幅を一律に抑圧する必要性は、外部振動に対する抑圧幅を広くし、加速度外乱の追従性能を大きくしたい場合である。特に、低域の外部振動成分は多く存在し、その影響が顕著である。このような低域の抑圧幅を広くすることは、従来のオブザーバでは、実現が難しい。
【0143】
本実施の形態では、図20に示すように、低域の特定周波数帯域を広範囲で抑圧する整形フィルタを設計する。この整形フィルタは、式(10)で示した2次フィルタを2つ設計する。式(10)において、第1のフィルタは、ω1=2π*200,ω2=2π*150、ζ1=0.15、ζ2=0.3とし、第2のフィルタは、ω1=2π*300,ω2=2π*350、ζ1=0.15、ζ2=0.3とし、直列に接続したものである。
【0144】
この整形フィルタの周波数特性については、図20の上段に、周波数対ゲイン特性、下段に周波数対位相特性に示すように、ゲインは、低域の下限(150Hz)を越えると減少し、200〜300Hzで、一定となり、低域の上限(ここでは、500Hz近傍)に向かい上昇し、その後、ほぼ一定となり、位相は、低域の下限(150Hz)で下限のピークを、低域の上限(ここでは、350Hz近傍)で上限のピークを形成する特性である。
【0145】
このように設計された整形フィルタを用いて、図15の2つの外乱モデルを含む前述のオブザーバを構成する。この時のオブザーバで構成される制御系の開ループ特性については、図21の上段に、周波数対ゲイン特性、下段に周波数対位相特性の太線に示すように、ゲインを、150Hz〜500Hz付近で上げ、位相を、低域の下限(150Hz)付近で上げ、低域の上限(ここでは、350Hz近傍)下げる操作を行う。
【0146】
このため、制御系の感度関数については、図22の周波数対ゲイン特性の太線に示すように、ゲインは、低域(150Hz〜500Hz)付近で幅を持って抑圧される。又、制御系の加速度外乱特性についても、図23の周波数対ゲイン特性の太線に示すように、ゲインは、低域(150Hz〜500Hz)付近で幅を持って、向上する。即ち、加速度外乱特性のゲインが特定の周波数幅で、上がり、加速度外乱特性のピークを抑圧できる。
【0147】
この実施例のように、従来困難であった複数の異なる外乱周波数の抑圧や、低域の特定帯域の広い幅の外乱抑圧オブザーバを容易に実現できる。
【0148】
(他の実施の形態)
前述の実施の形態では、外乱オブザーバ制御を、磁気ディスク装置のヘッド位置決め装置の適用の例で説明したが、光ディスク装置等の他のディスク装置にも適用できる。又、外乱周波数の数は、必要に応じて、適宜採用でき、それに応じて、外乱モデルの数も適宜採用できる。更に、2次フィルタで実施例を説明したが、1次フィルタや、1次フィルタと2次フィルタの組み合わせを、必要な抑圧周波数に応じて、使用することもできる。
【0149】
以上、本発明を、実施の形態で説明したが、本発明は、その趣旨の範囲内で種々の変形が可能であり、これを本発明の範囲から排除するものではない。
【0150】
(付記1)ディスク記憶媒体の所定位置に、アクチュエータによりヘッドを位置決め制御するヘッド位置決め制御方法において、前記ヘッドの目標位置と前記ヘッドから得た現在位置とから位置誤差を演算するステップと、前記位置誤差と前記オブザーバの推定位置との推定位置誤差に従い、前記アクチュエータの推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの制御値を演算するステップと、前記推定位置誤差に従い、感度関数を整形する分母と分子の次数が同一のフィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算するステップと、前記制御値と前記外乱抑圧値を加算して、前記アクチュエータを駆動するステップとを有することを特徴とするヘッド位置決め制御方法。
【0151】
(付記2)前記外乱抑圧値演算ステップは、前記感度関数を、所望の外乱周波数に応じて整形するフィルタの前記分子の零点を極に持つ外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算するステップからなることを特徴とする付記1のヘッド位置決め制御方法。
【0152】
(付記3)前記外乱抑圧値演算ステップは、感度関数を、所望の外乱周波数に応じて整形する1次又は2次のフィルタの前記分子を分母とした外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算するステップからなることを特徴とする付記1のヘッド位置決め制御方法。
【0153】
(付記4)前記外乱抑圧値演算ステップは、前記推定位置誤差に従い、前記抑圧すべき複数の外乱周波数に応じた複数の前記フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された複数の外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの複数の外乱抑圧値を演算するステップと、前記複数の外乱抑圧値を加算するステップとからなることを特徴とする付記1のヘッド位置決め制御方法。
【0154】
(付記5)ディスク記憶媒体のデータを少なくとも読み取るヘッドと、前記ディスク記憶媒体の所定位置に、前記ヘッドを位置決めするアクチュエータと、前記ヘッドの目標位置と前記ヘッドから得た現在位置とから位置誤差を演算し、前記位置誤差と前記オブザーバの推定位置との推定位置誤差に従い、前記アクチュエータの推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの制御値を演算する制御ユニットとを有し、前記制御ユニットは、前記推定位置誤差に従い、感度関数を整形する分母と分子の次数が同一のフィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算し、前記制御値と前記外乱抑圧値を加算して、前記アクチュエータを駆動することを特徴とするディスク装置。
【0155】
(付記6)前記制御ユニットは、前記感度関数を、所望の外乱周波数に応じて整形するフィルタの前記分子の零点を極に持つ外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算することを特徴とする付記5のディスク装置。
【0156】
(付記7)前記制御ユニットは、感度関数を、所望の外乱周波数に応じて整形する1次又は2次のフィルタの前記分子を分母とした外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算することを特徴とする付記5のディスク装置。
【0157】
(付記8)前記制御ユニットは、前記推定位置誤差に従い、前記抑圧すべき複数の外乱周波数に応じた複数の前記フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された複数の外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの複数の外乱抑圧値を演算し、前記複数の外乱抑圧値を加算することを特徴とする付記5のディスク装置。
【0158】
(付記9)前記制御ユニットは、定常バイアス補償を行う1次フィルタと特定の周波数近傍をノッチフィルタ状に抑圧する2次フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算することを特徴とする付記5のディスク装置。
【0159】
(付記10)前記制御ユニットは、定常バイアス補償を行う1次フィルタと特定の周波数以下を一様に抑圧する2次フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算することを特徴とする付記5のディスク装置。
【0160】
(付記11)前記制御ユニットは、比較的高域の前記特定の周波数近傍をノッチフィルタ状に抑圧する2次フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算することを特徴とする付記9のディスク装置。
【0161】
(付記12)前記制御ユニットは、複数の前記特定の周波数近傍をノッチフィルタ状に抑圧する複数の2次フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された複数の外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算することを特徴とする付記9のディスク装置。
【0162】
(付記13)前記制御ユニットは、比較的低域の前記特定の周波数以下を一様に抑圧する2次フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算することを特徴とする付記10のディスク装置。
【0163】
(付記14)ディスク記憶媒体のデータを少なくとも読み取るヘッドを、アクチュエータを制御して、前記ディスク記憶媒体の所定位置に位置決めするヘッド位置制御装置において、前記ヘッドの目標位置と前記ヘッドから得た現在位置とから推定位置誤差を演算し、前記位置誤差と前記オブザーバの推定位置との推定位置誤差に従い、前記アクチュエータの推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの制御値を演算するオブザーバと、前記推定位置誤差に従い、感度関数を整形する分母と分子の次数が同一のフィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算する外乱オブザーバと、前記制御値と前記外乱抑圧値を加算して、前記アクチュエータを駆動する加算ブロックとを有することを特徴とするヘッド位置制御装置。
【0164】
(付記15)前記外乱オブザーバは、前記感度関数を、所望の外乱周波数に応じて整形するフィルタの前記分子の零点を極に持つ外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算することを特徴とする付記14のヘッド位置制御装置。
【0165】
(付記16)前記外乱オブザーバは、感度関数を、所望の外乱周波数に応じて整形する1次又は2次のフィルタの前記分子を分母とした外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算することを特徴とする付記14のヘッド位置制御装置。
【0166】
(付記17)前記外乱オブザーバは、前記推定位置誤差に従い、前記抑圧すべき複数の外乱周波数に応じた複数の前記フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された複数の外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの複数の外乱抑圧値を演算し、前記複数の外乱抑圧値を加算することを特徴とする付記14のヘッド位置制御装置。
【0167】
(付記18)前記外乱オブザーバは、定常バイアス補償を行う1次フィルタと特定の周波数近傍をノッチフィルタ状に抑圧する2次フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算することを特徴とする付記14のヘッド位置制御装置。
【0168】
(付記19)前記外乱オブザーバは、定常バイアス補償を行う1次フィルタと特定の周波数以下を一様に抑圧する2次フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算することを特徴とする付記14のヘッド位置制御装置。
【0169】
(付記20)前記外乱オブザーバは、比較的高域の前記特定の周波数近傍をノッチフィルタ状に抑圧する2次フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算することを特徴とする付記18のヘッド位置制御装置。
【産業上の利用可能性】
【0170】
外乱抑圧のため、導入したい周波数特性を、整形フィルタで定義し、整形フィルタの分子の式を分母に持つ外乱モデルを構成し、元のオブザーバのモデルに付加し、この外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、状態情報から、アクチュエータの外乱抑圧値を演算するので、外乱抑圧機能を、抑圧幅を広くとる場合や高い周波数域の外乱を抑圧する場合でも、元のオブザーバ(コントローラ)の制御特性に影響を与えず、実装できる。
【符号の説明】
【0171】
1 アクチュエータ
2 スピンドルモータの回転軸
3 ヘッド
4 ディスク
5 スピンドルモータ
6 アクチュエータのVCM駆動回路
7 位置復調回路
8 スピンドルモータの駆動回路
9 バス
10 データの記録再生回路
11 ハードディスクコントローラ
12 MCUのRAM
13 MCUのROM
14 マイクロコントローラユニット
15 ハードディスクコントローラのRAM
16 位置信号
50 外乱モデル
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク装置、ヘッド位置制御装置およびヘッド位置制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスク装置、例えば、磁気ディスク装置や光ディスク装置において、ヘッドを目標トラックに正確に位置決めすることが記録密度向上のために極めて重要である。
【0003】
この位置決め制御において、外乱が、位置決め精度へ影響することが、知られている。このような外乱を制御系で抑圧するため、従来、図24乃至図26の制御系が提案されている。図24の第1の従来技術は、目標位置rと、プラント108の現在位置yとの位置誤差eを演算ブロック100で演算し、コントローラ102に入力し、コントローラ102が、位置誤差eを低減するような制御量を演算し、プラント108を駆動するフィードバック制御系に、並列に、ノッチフィルタの逆特性形態のフィルタ104を付与して、位置誤差の特定の周波数近傍の成分を抑圧する(特許文献1参照)。
【0004】
第2の従来技術は、図25に示すように、図24のフィードバックループのコントローラ102に直列に、フィルタ104を設け、コントローラ102の制御量の特定の周波数近傍の成分を抑圧する(非特許文献1参照)。
【0005】
更に、第3の従来技術は、図26に示すように、図24のフィードバックループに、外乱オブザーバと称して、現在位置yをブロック110で、プラント108の伝達関数Pで割った値、即ち、位置誤差の2階微分値と,演算ブロック106からの指令電流値との差分を、演算ブロック112でとり、バンドパスフィルタ(Qフィルタとも呼ぶ)114を通して、演算ブロック106にフィードバックする(非特許文献1参照)。
【0006】
又、この周期性外乱であるディスクの偏心に対応するために、偏心推定オブザーバを用いて、偏心を補正する方法が提案されている(例えば、特許文献2または特許文献3)。
【0007】
このような偏心推定オブザーバは、状態推定ゲインA,B,C,F,Lを使用して、実際の位置誤差と、推定した位置誤差との誤差から、アクチュエータの制御値を計算し、次サンプルの状態量(位置、速度、バイアス値、偏心量を計算する。
【0008】
ここで、推定ゲインLは、位置推定ゲインL1,速度推定ゲインL2,バイアス推定ゲインL3,偏心推定ゲインL4,L5からなる。そして、L1,L2,L3は、コントローラ自体の特性であり、L4,L5は、周期性外乱である偏心に対する応答特性を示す。
【特許文献1】USP 6,487,028B1公報
【非特許文献1】R. J. Bickel and M. Tomizuka, 論文“Disturbance observer based hybrid impedance control”(Proceedings of the American Control Conference 1995, pp.729-733)
【特許文献2】特開平7−50075号公報
【特許文献3】特開2000−21104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このようなオブザーバを利用して、偏心成分以外の外部振動に追従するような位置決め制御が望まれている。即ち、ディスク装置の記録密度の高密度化に伴い、外部振動によるヘッドの位置決め精度への影響が無視できなくなっている。例えば、媒体の振動や、媒体の回転でヘッドが受ける風が、ヘッドの位置決め精度に影響する。又、ディスク装置の利用拡大に伴い、モバイル機器、例えば、携帯端末、携帯電話、携帯型AV機器に搭載されおり、広い範囲の外乱周波数に適応することも要求されている。
【0010】
前述の従来技術の外乱抑圧では、偏心補正など、特定の周波数域を選択的に抑圧する補償器を付加する場合には、抑圧域の幅を極めて狭くすれば、元の制御系の特性に影響を与えず、実装できる。しかしながら、近年の広い範囲の外乱周波数に適応するという要求に対し、抑圧幅を広くとる場合や高い周波数域の外乱を抑圧する場合には、元のコントローラの特性に影響を与え、所望の外乱抑圧機能を付加するのが、困難である。
【0011】
又、従来技術では、1つのオブザーバを設計した後、後から外乱抑圧機能を付与する場合には、制御系全体の特性、例えば、極配置が大きくずれてしまい、オブザーバ全体の再設計が必要となる。即ち、従来は、外乱モデルを決めてから、コントローラと外乱抑圧機能を含めたオブザーバを設計するため、後で、特定の外乱抑圧機能を付与する場合には、全体に影響し、再設計が必要である。
【0012】
従って、本発明の目的は、種々の外乱周波数に、オブザーバの制御特性を損なうことなく、適応するためのディスク装置、ヘッド位置制御装置およびヘッド位置制御方法を提供することにある。
【0013】
又、本発明の他の目的は、オブザーバの制御特性を損なうことなく、広い範囲の外乱周波数に適応して、ヘッドの振動を防止するためのディスク装置、ヘッド位置制御装置およびヘッド位置制御方法を提供することにある。
【0014】
更に、本発明の他の目的は、オブザーバの制御特性を損なうことなく、広い範囲の外乱周波数に適応して、ヘッドの追従性能を向上するためのディスク装置、ヘッド位置制御装置およびヘッド位置制御方法を提供することにある。
【0015】
更に、本発明の他の目的は、オブザーバの制御特性を損なうことなく、広い範囲の外乱周波数に適応して、ヘッドのリード/ライト特性を改善するためのディスク装置、ヘッド位置制御装置およびヘッド位置制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のディスク装置は、ディスク記憶媒体のデータを少なくとも読み取るヘッドと、前記ディスク記憶媒体の所定位置に、前記ヘッドを位置決めするアクチュエータと、前記ヘッドの目標位置と前記ヘッドから得た現在位置とから位置誤差を演算し、オブザーバ制御により推定位置を演算し、前記位置誤差と前記推定位置とから推定位置誤差を演算し、演算された前記推定位置誤差に従い、前記アクチュエータの推定ゲインを用いて生成した状態情報から前記アクチュエータの制御値を演算するコントローラモデルと、前記コントローラモデルに付加され、感度関数を整形する分母と分子の次数が同一である整形フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義されたモデルであって、前記コントローラモデルで演算された前記推定位置誤差に従い、外乱の推定ゲインを用いて生成した状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算する外乱モデルとを有し、前記コントローラモデルで演算された前記制御値と前記外乱モデルで演算された前記外乱抑圧値とを加算して前記アクチュエータを駆動する制御ユニットと、を備え、前記外乱モデルは、前記推定位置誤差に従い、前記抑圧すべき複数の外乱周波数に応じた複数の前記整形フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された複数のモデルの外乱の推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの複数の外乱抑圧値を演算し、前記複数の外乱抑圧値を加算する、ことを特徴とする。
【0017】
本発明のヘッド位置制御装置は、ディスク記憶媒体のデータを少なくとも読み取るヘッドを、オブザーバ制御により、アクチュエータを制御して、前記ディスク記憶媒体の所定位置に位置決めするヘッド位置制御装置において、前記ヘッドの目標位置と前記ヘッドから得た現在位置とから位置誤差を演算し、オブザーバ制御により推定位置を演算し、前記位置誤差と前記推定位置とから推定位置誤差を演算し、演算された前記推定位置誤差に従い、前記アクチュエータの推定ゲインを用いて生成した状態情報から前記アクチュエータの制御値を演算するコントローラモデルと、前記コントローラモデルに付加されていて、感度関数を整形する分母と分子の次数が同一である整形フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義されたモデルであって、前記コントローラモデルで演算された前記推定位置誤差に従い、外乱の推定ゲインを用いて生成した状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算する外乱モデルと、前記コントローラモデルで演算された前記制御値と前記外乱モデルで演算された前記外乱抑圧値を加算して、前記アクチュエータを駆動する加算ブロックと、を有し、前記外乱モデルは、前記推定位置誤差に従い、前記抑圧すべき複数の外乱周波数に応じた複数の前記整形フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された複数のモデルの外乱の推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの複数の外乱抑圧値を演算し、前記複数の外乱抑圧値を加算する、ことを特徴とする。
【0018】
本発明のヘッド位置制御方法は、ディスク記憶媒体のデータを少なくとも読み取るヘッドを、オブザーバ制御により、アクチュエータを制御して、前記ディスク記憶媒体の所定位置に位置決めするヘッド位置制御装置で実行されるヘッド位置制御方法であって、前記ヘッド位置制御装置は、制御部と記憶部を備え、前記制御部において実行される、コントローラモデルが、前記ヘッドの目標位置と前記ヘッドから得た現在位置とから位置誤差を演算し、オブザーバ制御により推定位置を演算し、前記位置誤差と前記推定位置とから推定位置誤差を演算し、演算された前記推定位置誤差に従い、前記アクチュエータの推定ゲインを用いて生成した状態情報から前記アクチュエータの制御値を演算するステップと、前記コントローラモデルに付加された外乱モデルが、感度関数を整形する分母と分子の次数が同一である整形フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義されたモデルであって、前記コントローラモデルで演算された前記推定位置誤差に従い、外乱の推定ゲインを用いて生成した状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算するステップと、加算ブロックが、前記コントローラモデルで演算された前記制御値と前記外乱モデルで演算された前記外乱抑圧値を加算して、前記アクチュエータを駆動するステップと、を含み、前記外乱モデルは、前記推定位置誤差に従い、前記抑圧すべき複数の外乱周波数に応じた複数の前記整形フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された複数のモデルの外乱の推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの複数の外乱抑圧値を演算し、前記複数の外乱抑圧値を加算する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
外乱抑圧のため、導入したい周波数特性を、整形フィルタで定義し、整形フィルタの分子の式を分母に持つ外乱モデルを構成し、元のオブザーバのモデル(コントローラモデル)に付加し、この外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、状態情報から、アクチュエータの外乱抑圧値を演算するので、外乱抑圧機能を、抑圧幅を広くとる場合や高い周波数域の外乱を抑圧する場合でも、元のオブザーバ(コントローラ)の制御特性に影響を与えず、実装できる。また、最初に整形したいフィルタ形状を考えた上で、外乱モデルを元のオブザーバ(コントローラ)に付加し、設計することが可能になるので、元々の外乱モデルの物理的応答特性に拘束されることなく、自由な形状の整形が可能になる。
【0020】
また、従来困難であった複数の異なる外乱周波数の抑圧や、低域の特定帯域の広い幅の外乱抑圧機能を容易に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明の一実施形態を示すディスク装置の構成図である。
【図2】図2は、図1のディスクの位置信号の説明図である。
【図3】図3は、図2の位置信号の詳細説明図である。
【図4】図4は、本発明の一実施の形態の外乱オブザーバ制御系のブロック図である。
【図5】図5は、図4の外乱オブザーバのアナログ設計手順の説明図である。
【図6】図6は、図4の外乱オブザーバのデジタル設計手順の説明図である。
【図7】図7は、図4の実施の形態の第1の実施例の整形フィルタの特性図である。
【図8】図8は、図4の実施の形態の第1の実施例の開ループ特性図である。
【図9】図9は、図4の実施の形態の第1の実施例の感度関数の特性図である。
【図10】図10は、図4の実施の形態の第1の実施例の加速度外乱特性図である。
【図11】図11は、図4の実施の形態の第2の実施例の整形フィルタの特性図である。
【図12】図12は、図4の実施の形態の第2の実施例の開ループ特性図である。
【図13】図13は、図4の実施の形態の第2の実施例の感度関数の特性図である。
【図14】図14は、図4の実施の形態の第2の実施例の加速度外乱特性図である。
【図15】図15は、本発明の他の実施の形態の外乱オブザーバ制御系のブロック図である。
【図16】図16は、図15の実施の形態の第1の実施例の整形フィルタの特性図である。
【図17】図17は、図15の実施の形態の第1の実施例の開ループ特性図である。
【図18】図18は、図15の実施の形態の第1の実施例の感度関数の特性図である。
【図19】図19は、図15の実施の形態の第1の実施例の加速度外乱特性図である。
【図20】図20は、図15の実施の形態の第2の実施例の整形フィルタの特性図である。
【図21】図21は、図15の実施の形態の第2の実施例の開ループ特性図である。
【図22】図22は、図15の実施の形態の第2の実施例の感度関数の特性図である。
【図23】図23は、図15の実施の形態の第2の実施例の加速度外乱特性図である。
【図24】図24は、第1の従来技術の説明図である。
【図25】図25は、第2の従来技術の説明図である。
【図26】図26は、第3の従来技術の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を、ディスク装置、オブザーバの第1の実施の形態、設計方法、第1の実施の形態の実施例、第2の実施の形態、第2の実施の形態の実施例、他の実施の形態の順で説明するが、本発明は、この実施の形態に限られない。
【0023】
(ディスク装置)
図1は、本発明の一実施の形態のディスク装置の構成図、図2は、図1の磁気ディスクの位置信号の配置図、図3は、図1及び図2の磁気ディスクの位置信号の構成図である。
【0024】
図1は、ディスク装置として、磁気ディスク装置を示す。図1に示すように、磁気記憶媒体である磁気ディスク4が、スピンドルモータ5の回転軸2に設けられている。スピンドルモータ5は、磁気ディスク4を回転する。アクチュエータ(VCM)1は、先端に磁気ヘッド3を備え、磁気ヘッド3を磁気ディスク4の半径方向に移動する。
【0025】
アクチュエータ1は、回転軸を中心に回転するボイスコイルモータ(VCM)で構成される。図では、磁気ディスク装置に、2枚の磁気ディスク4が搭載され、4つの磁気ヘッド3が、同一のアクチュエータ1で同時に駆動される。
【0026】
磁気ヘッド3は、リード素子と、ライト素子とからなる。磁気ヘッド3は、スライダに、磁気抵抗(MR)素子を含むリード素子を積層し、その上にライトコイルを含むライト素子を積層して、構成される。
【0027】
位置検出回路7は、磁気ヘッド3が読み取った位置信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換する。リード/ライト(R/W)回路10は、磁気ヘッド3の読み取り及び書込みを制御する。スピンドルモータ(SPM)駆動回路8は、スピンドルモータ5を駆動する。ボイスコイルモータ(VCM)駆動回路6は、ボイスコイルモータ(VCM)1に駆動電流を供給し、VCM1を駆動する。
【0028】
マイクロコントローラ(MCU)14は、位置検出回路7からのデジタル位置信号から現在位置を検出(復調)し、検出した現在位置と目標位置との誤差に従い、VCM駆動指令値を演算する。即ち、位置復調と図4以下で説明する外乱抑圧を含むサーボ制御を行う。リードオンリーメモリ(ROM)13は、MCU14の制御プログラム等を格納する。ランダムアクセスメモリ(RAM)12は、MCU14の処理のためのデータ等を格納する。
【0029】
ハードディスクコントローラ(HDC)11は、サーボ信号のセクタ番号を基準にして,1周内の位置を判断し,データを記録・再生する。バッファ用ランダムアクセスメモリ(RAM)15は、リードデータやライトデータを一時格納する。HDC11は、USB,ATAやSCSI等のインターフェイスIFで、ホストと通信する。バス9は、これらを接続する。
【0030】
図2に示すように、磁気ディスク4には、外周から内周に渡り、各トラックにサーボ信号(位置信号)16が、円周方向に等間隔に配置される。尚、各トラックは、複数のセクタで構成され、図2の実線は、サーボ信号16の記録位置を示す。図3に示すように、位置信号は,サーボマークServo Markと、トラック番号Gray Codeと、インデックスIndexと、オフセット情報(サーボバースト)PosA,PosB,PosC,PosDとからなる。尚、図3の点線は、トラックセンターを示す。
【0031】
図3の位置信号をヘッド3で読み取り、トラック番号Gray Codeとオフセット情報PosA,PosB,PosC,PosDを使い,磁気ヘッドの半径方向の位置を検出する。さらに、インデックス信号Indexを元にして,磁気ヘッドの円周方向の位置を把握する。
【0032】
例えば,インデックス信号を検出したときのセクタ番号を0番に設定し、サーボ信号を検出する毎に、カウントアップして、トラックの各セクタのセクタ番号を得る。このサーボ信号のセクタ番号は,データの記録再生を行うときの基準となる。尚、インデックス信号は、1周に1つである、又、インデックス信号の代わりに、セクタ番号を設けることもできる。
【0033】
図1のMCU14は、位置検出回路7を通じて、アクチュエータ1の位置を確認して,サーボ演算し、適切な電流をVCM1に供給する。即ち、シーク制御は、コアース制御、整定制御及びフォローイング制御と遷移することで,目標位置まで移動させることができる。いずれも、ヘッドの現在位置を検出する必要がある。
【0034】
このような,位置を確認するためには,前述の図2のように、磁気ディスク上にサーボ信号を事前に記録しておく。即ち、図3に示したように、サーボ信号の開始位置を示すサーボマーク,トラック番号を表すグレイコード,インデックス信号,オフセットを示すPosA〜PosDといった信号が記録されている。この信号を磁気ヘッドで読み出し、このサーボ信号を、位置検出回路7が、デジタル値に変換する。
【0035】
(外乱オブザーバの第1の実施の形態)
図4は、図1のMCU14が実行する外乱を抑圧する位置決め制御系の第1の実施の形態のブロック図である。この位置決め制御系は、外乱周波数を検出し、外乱を適応制御により、抑圧するためのオブザーバ制御系である。
【0036】
図4に示すオブザーバは、下記式(1)、(2)、(3)、(4)、(5)で示されるバイアス補償を含む現在オブザーバである。
【0037】
【数1】
【0038】
【数2】
【0039】
【数3】
【0040】
【数4】
【0041】
【数5】
【0042】
即ち、この実施の形態は、コントローラのモデルから外乱モデル50を分離した適応制御系の例である。図4において、第1の演算ブロック30は、ヘッド3が読み取った前述のサーボ情報を復調して得た観測位置y[k]から目標位置rを差し引き、実位置誤差er[k]を演算する。第2の演算ブロック32は、実位置誤差er[k]からオブザーバの推定位置x[k]を差し引き、推定位置誤差e[k]を演算する。
【0043】
コントローラモデルでは、この推定位置誤差e[k]は、状態推定ブロック34に入力され、コントローラの推定ゲインLa(L1,L2)を用いて、推定修正値(式(1)の右辺)が、演算される。そして、遅延ブロック46から状態量(式(1)の左辺)x[k],v[k]と加算ブロック36で加算され、式(1)のように、推定位置x[k],推定速度v[k]を得る。尚、式(1)では、推定位置誤差e[k]を、(y[k]−x[k])で表示する。
【0044】
この推定値のx[k],v[k]は、第4の演算ブロック38で、状態フィードバックゲイン(一Fa=F1,F2)を乗算され、式(2)のように、アクチュエータ1の第1の駆動値u[k]を得る。一方、加算ブロック36からの式(1)の推定値x[k],v[k]は、第5の演算ブロック42で、推定ゲインAa(式(4)の2×2の(1,0)の行列)を乗じられ、第4の演算ブロック38の駆動値u[k]は、第6の演算ブロック40で、推定ゲインBa(式(4)のu[k]に乗じる値)を乗じられる。両乗算結果は、加算ブロック44で、加算され、式(4)の次のサンプルの推定状態量x[k+1],v[k+1]を得る。
【0045】
この次のサンプルの推定状態量は、前述のように、遅延ブロック46に入力し、状態推定ブロック34で、推定修正値で、修正される。そして、加算ブロック36からの式(1)の推定値は、第7の演算ブロック48で、推定位置x[k]が取り出され、前述の第2の演算ブロック32に入力する。
【0046】
一方、外乱モデル50では、推定位置誤差e[k]が、外乱の状態推定ブロック51に入力され、推定ゲインLd1(L3,L4,L5)を用いて、推定修正値(式(1)の右辺)が、演算される。そして、遅延ブロック52から状態量(式(1)の左辺)と、加算ブロック56で加算され、式(1)のように、推定バイアス値b[k],推定外乱抑圧値z1[k],z2[k]を得る。
【0047】
この推定値b[k],z1[k],z2[k]は、第8の演算ブロック58で、状態フィードバックゲイン(Fd1=F3,F4,F5)を乗算され、式(3)のように、アクチュエータ1の外乱抑圧駆動値を得る。一方、加算ブロック56からの式(1)の推定値のb[k],z1[k],z2[k]は、第9の演算ブロック54で、推定ゲインAd1(式(5)のb[k]のゲイン及び2×2のA行列のゲイン)を乗じられ、遅延ブロック52に入力し、次のサンプルの推定値b[k+1],z1[k+1],z2[k+1]を得る。
【0048】
そして、加算ブロック60で、駆動値u[k]に、外乱抑圧駆動値を差し引き、式(3)の出力駆動値uout[k]を得る。
【0049】
即ち、推定ゲインLを、コントローラモデルと外乱モデルで分離し、且つフィードバックゲインFを、コントローラモデルと外乱モデルで分離し、コントローラモデルと外乱モデルを分離して、設計する。
【0050】
(オブザーバの設計方法)
次に、この外乱モデルを分離したオブザーバの設計方法を、図5及び図6を用いて、説明する。
【0051】
先ず、図5により、第1の設計方法を説明する。
【0052】
(S10)元となるコントローラを、オブザーバ制御にて,設計する。即ち、制御対象のモデルを設定する。
【0053】
(S12)その上で,整形したいフィルタ形状を決める。即ち、整形フィルタの個数と、個々のフィルタの極、零点を設定する。ただし、整形したいフィルタ形状は、1次または2次フィルタで、分子と分母の次数が同一であることが必要である。
【0054】
(S14)次に,整形フィルタの零点を用い、フィルタの分子の式を,分母に持つ外乱モデルを構成する。
【0055】
(S16)この外乱モデルを、S10のオブザーバのモデルに付加する。この外乱モデルを付加することは,感度関数の零点を指定することになる。
【0056】
(S18)次に,オブザーバ制御系全体の極を指定する。この極は,元々の設計で用いていた極と,整形するためのフィルタの極とを含めたものである。即ち、整形フィルタの極を含めて、拡大モデル(全体モデル)の極配置を行い、オブザーバの推定ゲインL1〜L5,A行列を設計する。
【0057】
(S20)制御対象モデルのみの極配置を行い、状態フィードバックゲインFを設計する。
【0058】
(S22)状態フィードバックゲインに外乱モデルの出力ゲインを付加し、統合モデルのフィードバックゲインを設計する。このようにして外乱モデルを含むオブザーバを設計する。
【0059】
即ち、本発明では、位置外乱や外部の振動、打撃を抑圧する性能を、感度関数や加速度外乱特性により、判断する。このため、感度関数や加速度外乱特性の形状を設計することにより、所望の外乱抑圧機能を付与する。
【0060】
以下、例を挙げて設計手順を説明する。先ず、アクチュエータ1を2重積分モデルとしたときの、オブザーバ制御系は、次式(6)のアナログ式で示される。
【0061】
【数6】
【0062】
式(6)において、sは、ラプラス演算子、xは、推定位置、vは、推定速度、yは、現在位置、rは、目標位置、L1,L2は、各々位置、速度の推定ゲイン、uは、駆動電流、Bl/mは、アクチュエータ1の力定数である。
【0063】
次に、この制御系は、1/(1+CP)の感度関数を持つが、この感度関数に対して、外乱抑圧を、次式(7)の1次フィルタで定義し、この1次フィルタで感度関数を、整形する。
【0064】
【数7】
【0065】
即ち、このフィルタを与えた時の感度関数は、1/(1+CP)に、式(7)を乗じた形状となる。
【0066】
このとき、外乱モデルとして、上記(7)式のフィルタの分子を、分母として持つとなる下記式(8)の伝達関数のモデルをオブザーバに実装する。
【0067】
【数8】
【0068】
一方、式(7)のフィルタの分母(ω2)は、極配置に用いる。
【0069】
この外乱モデルを式(6)のオブザーバに実装することにより、式(6)から、次式(9)が得られる。
【0070】
【数9】
【0071】
上記の式(9)のbは、外乱推定値であり、ここでは、定常バイアス推定値のパラメータで示している。式(9)において、オブザーバの推定ゲインL1,L2,L3を設計するには、式(6)の元のオブザーバの設計に用いた極とともに,式(7)の整形フィルタの極(分母):−ω2を指定する。
【0072】
また,式(9)において、フィードバックゲインは、(Fx,Fv)のみ設計する。外乱モデルは、可観測ではあるが、可制御ではないため,外乱モデルのフィードバックゲインは変更できない。外乱モデルとしてオブザーバの推定ゲイン設計に用いたものと同じものを指定することになる。式(9)では、外乱モデルのフィードバックゲイン(出力ゲイン)は、K=m/Blである。
【0073】
このように、元となるコントローラをオブザーバ制御で設計し、抑圧する外乱周波数に応じた整形したいフィルタ形状を決める。ここで、整形フィルタは、1次又は2次のフィルタであり、分子と分母の次数が同一であることが必要である。フィルタの分子と分母の次数が異なる場合には、例えば、分母の次数が、分子の次数より大きい場合(ω1/(s+ω2))には、このフィルタの周波数特性は、高域程、ゲインが低下し、元の感度関数に乗じた場合には、元の感度関数(即ち、コントローラの特性)が、大幅に変わってしまうからである。
【0074】
そして、フィルタの分子の式を、分母に持つ外乱モデルを構成し、オブザーバのモデルに付加する(式(9))。この外乱モデルを付加することは、感度関数の零点を指定することになる。
【0075】
次に、前述のように、オブザーバ制御系全体の極を指定する。この極は、元のコントローラのモデルで用いた極と、整形するためのフィルタの極(−ω2)を含めたものとなる。
【0076】
換言すれば、外乱抑圧のため、導入したい周波数特性を、整形フィルタで定義し、整形フィルタの分子の式を分母に持つ外乱モデルを構成し、元のオブザーバのモデルに付加する。これにより、外乱抑圧機能を、抑圧幅を広くとる場合や高い周波数域の外乱を抑圧する場合でも、元のコントローラの特性に影響を与えず、実装できる。
【0077】
又、1つのオブザーバを設計した後、後から外乱抑圧機能を付与する場合でも、制御系全体の特性のずれが小さく、オブザーバ全体の再設計も必要ない。
【0078】
次に,整形フィルタを、2次フィルタとした場合を、説明する。2次フィルタとして,下記(10)式で定義する。
【0079】
【数10】
【0080】
前述のように、外乱モデルは、整形フィルタの分子の式を分母に持つため、次式(11)で表される。
【0081】
【数11】
【0082】
次に、この外乱モデルを、元のコントローラのオブザーバ(式(6))に実装する方法として3通りの方法が考えられる。
【0083】
第1の方法は、式(9)と同様に、式(11)の外乱モデルをそのまま実装する。即ち、2次フィルタのため、外乱の状態推定量をz1,z2とし、外乱の推定ゲインをL3,L4とすると、式(12)で表される。
【0084】
【数12】
【0085】
次に、第2の方法は、ω1の二乗の項を、分散させ、式(12)を変形して、式(13)を得る。
【0086】
【数13】
【0087】
第3の方法は、式(13)のω1の符号を反転したものであり、式(14)で表される。
【0088】
【数14】
【0089】
いずれの方法を採用しても、設計が可能になる。第2の方法及び第3の方法は、特にデジタル制御系へ上記モデルを変換したときに有効である。即ち、2つの状態変数z1,z2のバランスがとれ,2つの状態変数用のオブザーバの推定ゲインL3、L4の大きさが離れすぎずに、実装できる。
【0090】
このときに,極は、式(10)の整形フィルタの極(式(10)の分母=0から導かれる)と,もとのオブザーバ制御系の設計に用いた極とをあわせて,指定して、推定ゲインL1、L2、L3、L4の値を設計する。
【0091】
更に、この2次フィルタ整形と、従来の定常バイアス推定とをあわせたオブザーバ制御系は、次式(15)で表される。
【0092】
【数15】
【0093】
このように,最初に整形したいフィルタ形状を考えた上で,外乱モデルをオブザーバに付加し,設計することが可能になる。したがって,元々の外乱モデルの物理的応答特性に拘束されることなく,自由な形状の整形が可能になった。
【0094】
図5は、アナログ設計における説明であった。一方,デジタル制御系を設計するには、図6の設計フローに従う。
【0095】
図6において、図5で示したステップと同一のステップは、同一の記号で示してある。図6に示すように、ステップS16で、外乱モデルをアナログ空間にてモデル化して拡大モデルを構成する。一方,ステップS30で、拡大モデルをデジタル空間に変換した(離散化した)後、ステップS18の極配置を、デジタル空間で指定する。
【0096】
更に、2次フィルタの特性を外乱モデルとして持つ場合に、拡大モデルを離散系に変換すると,オブザーバの推定ゲインを設計するためのA行列の中に、外乱モデルの2変数z1,z2ともに、アクチュエータ1に影響を与える形となってしまう。
【0097】
そこで,外乱モデルの一方の変数のみが、アクチュエータ1に影響を及ぼすように、具体的には、アナログ設計と同じ変数のみが、アクチュエータ1に影響を及ぼすように修正する。即ち、離散化した後、ステップS32で、拡大モデルを修正する。
【0098】
具体的に説明すると、2次フィルタを使用した式(13)の形のアナログモデルを離散化(所謂、z変換して、SI単位に変換)すると、次式(16)の形になる。
【0099】
【数16】
【0100】
式(16)において、zは、Z変換子、Tは、サンプリング周期である。ここで,着目すべきは、A行列であるA13,A14,A23,A24である。離散化しただけでは、A14,A24は,いずれも「0」にはならない。即ち、オブザーバの推定ゲインを設計するためのA行列の中に、外乱モデルの2変数z1,z2ともに、アクチュエータ1に影響を与える形となってしまう。
【0101】
そこで、アナログモデルを離散化した上で、さらに、A行列中の外乱モデルの状態変数z1,z2が、アクチュエータ1に影響を与える係数を置換する。
【0102】
式(16)の例では、A行列を、下記式(17)のように、修正する。
【0103】
【数17】
【0104】
また,デジタル制御系においては,距離の単位がトラック,電流値は最大電流を1と正規化,さらに、速度や加速度も秒ではなく、サンプル周波数で正規化することも必要になる。
同様にして、式(15)のアナログ形式のオブザーバを、現在オブザーバの形式に変換すると、式(18)となる。
【0105】
【数18】
【0106】
このように、外乱モデルを分離可能な構成に設計した場合には、式(18)を前述の図4で示したように、外乱モデルを分離して、実装できる。
【0107】
即ち、式(18)と式(1)乃至(5)を比較すると、式(18)において、コントローラのモデルを独立させたものが、式(2)、(4)であり、外乱モデル50を分離した式が、式(3)、(5)となる。
【0108】
(第1の実施の形態の実施例)
図7及び図10は、本発明の第1の実施の形態の第1の実施例の説明図であり、図7は、整形フィルタの特性図、図8は、開ループ特性図、図9は、感度関数の特性図、図10は、加速度外乱特性図である。
【0109】
図7乃至図10は、1600Hzをノッチ状に抑圧する例である。このような高域を抑圧する必要性は、ディスク媒体の振動や、ヘッドサスペンションの風による加振により、高域の周波数が外乱として、印加される場合である。特に、ディスク媒体の回転数が高速化すると、トラック密度が高い装置では、このような高域の周波数外乱による影響が顕著である。
【0110】
このような高域では、コントローラにノッチフィルタの逆特性を直列に挿入しても、実現が難しい。又、位相特性で明らかなように、下げた後上げるという特性を実現するには、フィルタ係数の調整に試行錯誤が必要となる。
【0111】
本実施の形態では、図7に示すように、特定周波数のみを抑圧する整形フィルタを設計する。この整形フィルタは、式(10)で示した2次フィルタで設計する。式(10)において、ω1=2π*1600,ω2=ω1、ζ1=0.025、ζ2=0.05とした
ものである。
【0112】
この整形フィルタの周波数特性については、図7の上段に、周波数対ゲイン特性、下段に周波数対位相特性に示すように、ゲインは、1600Hz付近で抑圧され、位相は、1600Hz付近で、一旦下がり、その後上がる特性である。
【0113】
このように設計された整形フィルタを用いて、前述のオブザーバを構成する。この時のオブザーバで構成される制御系の開ループ特性については、図8の上段に、周波数対ゲイン特性、下段に周波数対位相特性に示すように、ゲインを、1600Hzで下げ、位相を1600Hz付近で上げる操作を行う。
【0114】
このため、制御系の感度関数については、図9の周波数対ゲイン特性に示すように、ゲインは、1600Hz付近で抑圧される。又、制御系の加速度外乱特性についても、図10の周波数対ゲイン特性に示すように、ゲインは、1600Hz付近で抑圧される。
【0115】
図11及び図14は、本発明の第1の実施の形態の第2の実施例の説明図であり、図11は、整形フィルタの特性図、図12は、開ループ特性図、図13は、感度関数の特性図、図14は、加速度外乱特性図である。
【0116】
図11乃至図14は、低域を一律に抑圧する例である。このような低域を一律に抑圧する必要性は、ディスク媒体の偏心に加え、外部振動の抑圧幅を広くしたい場合である。特に、低域の外部振動成分は多く存在し、その影響が顕著である。このような低域の抑圧幅を広くすることは、従来のオブザーバでは、実現が難しい。
【0117】
本実施の形態では、図11に示すように、低域を広範囲で抑圧する整形フィルタを設計する。この整形フィルタは、式(10)で示した2次フィルタで設計する。式(10)において、ω1=2π*200,ω2=2π*400、ζ1=0.5、ζ2=0.5とした
ものである。
【0118】
この整形フィルタの周波数特性については、図11の上段に、周波数対ゲイン特性、下段に周波数対位相特性に示すように、ゲインは、低域の下限(100Hz)を越えると徐々に増加し、低域の上限(ここでは、500Hz近傍)でほぼ一定となり、位相は、低域の下限(100Hz)から低域の上限(ここでは、500Hz近傍)の間で山を形成する特性である。
【0119】
このように設計された整形フィルタを用いて、前述のオブザーバを構成する。この時のオブザーバで構成される制御系の開ループ特性については、図12の上段に、周波数対ゲイン特性、下段に周波数対位相特性の太線に示すように、ゲインを、低域で上げ、位相を低域付近で上げる操作を行う。
【0120】
このため、制御系の感度関数については、図13の周波数対ゲイン特性の太線に示すように、ゲインは、低域付近で抑圧される。又、制御系の加速度外乱特性についても、図14の周波数対ゲイン特性の太線に示すように、ゲインは、低域で抑圧される。
【0121】
この実施例のように、従来困難であった高域の抑圧や、低域の広い幅の外乱抑圧オブザーバを容易に実現できる。
【0122】
(オブザーバの第2の実施の形態)
図15は、図1のMCU14が実行する外乱を抑圧する位置決め制御系の第2の実施の形態のブロック図である。
【0123】
この位置決め制御系は、外乱周波数を検出し、外乱を適応制御により、抑圧するためのオブザーバ制御系であり、図4の外乱モデルを分離して、複数実装した適応制御系である。
【0124】
図15において、図4で示したものと同一のものは、同一の記号で示してあり、外乱モデル50−1・・・、50−Nの各々は、図4で示した外乱適応制御モデルのブロック51,52,54,56,58で構成される。
【0125】
各外乱モデル50−1、・・・、50−Nは、追従が必要な外乱周波数毎に、設けられる。各外乱モデル50−1、・・・、50−Nの出力は、加算ブロック62で加算された後、演算ブロック60に出力される。このモデルの動作は、図4と同一であり、説明を省略する。
【0126】
外乱モデル50−1,50−2を2つとした場合のオブザーバは、式(1)〜(5)を、2モデル分拡張して、下記式(19)〜(23)で得られる。
【0127】
【数19】
【0128】
【数20】
【0129】
【数21】
【0130】
【数22】
【0131】
【数23】
【0132】
ここでは、外乱モデル50−1の位置、速度の推定量(変数)を、z1,z2,推定ゲインをL3,L4,L5,出力ゲインをF3,F4,F5とし、外乱モデル50−2の位置、速度の推定量(変数)を、z3,z4,推定ゲインをL6,L7,出力ゲインをF6,F7としている。
【0133】
この例でも、図6で示したように、各外乱モデルを整形フィルタで設計して、同様に、拡大モデルを設計する。このような構成では、以下の実施例で説明するように、複数の特定の周波数を抑圧できる。
【0134】
(第2の実施の形態の実施例)
図16及び図19は、本発明の第2の実施の形態の第1の実施例の説明図であり、図16は、整形フィルタの特性図、図17は、開ループ特性図、図18は、感度関数の特性図、図19は、加速度外乱特性図である。
【0135】
図16乃至図19は、3つの周波数をノッチ状に抑圧するNRRO(Non Repeatable Rotation)フィルタの例である。このような複数の周波数を抑圧する必要性は、種々の外乱に対応して、抑圧幅を広げる意味で、有効である。
【0136】
このような複数の周波数を抑圧するには、コントローラにノッチフィルタの逆特性を多段に挿入する必要があり、その調整が難しい。
【0137】
本実施の形態では、図16に示すように、3つの特定周波数(1000Hz,1100Hz,1600Hz)を抑圧する整形フィルタを設計する。この整形フィルタは、式(10)で示した2次フィルタを3つ設計する。式(10)において、第1のフィルタは、ω1=2π*1020,ω2=2π*1000、ζ1=0.025、ζ2=0.05とし、第2のフィルタは、ω1=2π*1090,ω2=2π*1210、ζ1=0.025、ζ2=0.05とし、第3のフィルタは、ω1=2π*1600,ω2=2π*1600、ζ1=0.025、ζ2=0.05とし、直列接続したものである。即ち、図15の外乱モデルを3つ設計する。
【0138】
この整形フィルタの周波数特性については、図16の上段に、周波数対ゲイン特性、下段に周波数対位相特性に示すように、ゲインは、1000Hz付近、1100Hz付近、1600Hz付近の3箇所で抑圧され、位相は、1000Hz付近で、一旦下がり、その後上がり、1100Hz付近で下がり、1600Hz付近で上がり、その後下がる複雑な特性である。
【0139】
このように設計された整形フィルタを用いて、前述のオブザーバを構成する。この時のオブザーバで構成される制御系の開ループ特性については、図17の上段に、周波数対ゲイン特性、下段に周波数対位相特性の太線に示すように、ゲインを、1000Hz,1100Hz,1600Hzで下げ、位相を1000Hzで下げ、1100Hz,1600Hz付近でピークとなる操作を行う。
【0140】
このため、制御系の感度関数については、図18の周波数対ゲイン特性の太線に示すように、ゲインは、1000Hz,1100Hz付近で、1600Hz付近で抑圧される。又、制御系の加速度外乱特性についても、図19の周波数対ゲイン特性の太線に示すように、ゲインは、1000Hz,1100Hz付近で、1600Hz付近で抑圧される。
【0141】
図20及び図23は、本発明の第2の実施の形態の第2の実施例の説明図であり、図20は、整形フィルタの特性図、図21は、開ループ特性図、図22は、感度関数の特性図、図23は、加速度外乱特性図である。
【0142】
図20乃至図23は、低域の特定の帯域幅を一律に抑圧するバンドストップの例であり、且つ加速度外乱特性のピークを抑える。このような低域の特定の帯域幅を一律に抑圧する必要性は、外部振動に対する抑圧幅を広くし、加速度外乱の追従性能を大きくしたい場合である。特に、低域の外部振動成分は多く存在し、その影響が顕著である。このような低域の抑圧幅を広くすることは、従来のオブザーバでは、実現が難しい。
【0143】
本実施の形態では、図20に示すように、低域の特定周波数帯域を広範囲で抑圧する整形フィルタを設計する。この整形フィルタは、式(10)で示した2次フィルタを2つ設計する。式(10)において、第1のフィルタは、ω1=2π*200,ω2=2π*150、ζ1=0.15、ζ2=0.3とし、第2のフィルタは、ω1=2π*300,ω2=2π*350、ζ1=0.15、ζ2=0.3とし、直列に接続したものである。
【0144】
この整形フィルタの周波数特性については、図20の上段に、周波数対ゲイン特性、下段に周波数対位相特性に示すように、ゲインは、低域の下限(150Hz)を越えると減少し、200〜300Hzで、一定となり、低域の上限(ここでは、500Hz近傍)に向かい上昇し、その後、ほぼ一定となり、位相は、低域の下限(150Hz)で下限のピークを、低域の上限(ここでは、350Hz近傍)で上限のピークを形成する特性である。
【0145】
このように設計された整形フィルタを用いて、図15の2つの外乱モデルを含む前述のオブザーバを構成する。この時のオブザーバで構成される制御系の開ループ特性については、図21の上段に、周波数対ゲイン特性、下段に周波数対位相特性の太線に示すように、ゲインを、150Hz〜500Hz付近で上げ、位相を、低域の下限(150Hz)付近で上げ、低域の上限(ここでは、350Hz近傍)下げる操作を行う。
【0146】
このため、制御系の感度関数については、図22の周波数対ゲイン特性の太線に示すように、ゲインは、低域(150Hz〜500Hz)付近で幅を持って抑圧される。又、制御系の加速度外乱特性についても、図23の周波数対ゲイン特性の太線に示すように、ゲインは、低域(150Hz〜500Hz)付近で幅を持って、向上する。即ち、加速度外乱特性のゲインが特定の周波数幅で、上がり、加速度外乱特性のピークを抑圧できる。
【0147】
この実施例のように、従来困難であった複数の異なる外乱周波数の抑圧や、低域の特定帯域の広い幅の外乱抑圧オブザーバを容易に実現できる。
【0148】
(他の実施の形態)
前述の実施の形態では、外乱オブザーバ制御を、磁気ディスク装置のヘッド位置決め装置の適用の例で説明したが、光ディスク装置等の他のディスク装置にも適用できる。又、外乱周波数の数は、必要に応じて、適宜採用でき、それに応じて、外乱モデルの数も適宜採用できる。更に、2次フィルタで実施例を説明したが、1次フィルタや、1次フィルタと2次フィルタの組み合わせを、必要な抑圧周波数に応じて、使用することもできる。
【0149】
以上、本発明を、実施の形態で説明したが、本発明は、その趣旨の範囲内で種々の変形が可能であり、これを本発明の範囲から排除するものではない。
【0150】
(付記1)ディスク記憶媒体の所定位置に、アクチュエータによりヘッドを位置決め制御するヘッド位置決め制御方法において、前記ヘッドの目標位置と前記ヘッドから得た現在位置とから位置誤差を演算するステップと、前記位置誤差と前記オブザーバの推定位置との推定位置誤差に従い、前記アクチュエータの推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの制御値を演算するステップと、前記推定位置誤差に従い、感度関数を整形する分母と分子の次数が同一のフィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算するステップと、前記制御値と前記外乱抑圧値を加算して、前記アクチュエータを駆動するステップとを有することを特徴とするヘッド位置決め制御方法。
【0151】
(付記2)前記外乱抑圧値演算ステップは、前記感度関数を、所望の外乱周波数に応じて整形するフィルタの前記分子の零点を極に持つ外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算するステップからなることを特徴とする付記1のヘッド位置決め制御方法。
【0152】
(付記3)前記外乱抑圧値演算ステップは、感度関数を、所望の外乱周波数に応じて整形する1次又は2次のフィルタの前記分子を分母とした外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算するステップからなることを特徴とする付記1のヘッド位置決め制御方法。
【0153】
(付記4)前記外乱抑圧値演算ステップは、前記推定位置誤差に従い、前記抑圧すべき複数の外乱周波数に応じた複数の前記フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された複数の外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの複数の外乱抑圧値を演算するステップと、前記複数の外乱抑圧値を加算するステップとからなることを特徴とする付記1のヘッド位置決め制御方法。
【0154】
(付記5)ディスク記憶媒体のデータを少なくとも読み取るヘッドと、前記ディスク記憶媒体の所定位置に、前記ヘッドを位置決めするアクチュエータと、前記ヘッドの目標位置と前記ヘッドから得た現在位置とから位置誤差を演算し、前記位置誤差と前記オブザーバの推定位置との推定位置誤差に従い、前記アクチュエータの推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの制御値を演算する制御ユニットとを有し、前記制御ユニットは、前記推定位置誤差に従い、感度関数を整形する分母と分子の次数が同一のフィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算し、前記制御値と前記外乱抑圧値を加算して、前記アクチュエータを駆動することを特徴とするディスク装置。
【0155】
(付記6)前記制御ユニットは、前記感度関数を、所望の外乱周波数に応じて整形するフィルタの前記分子の零点を極に持つ外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算することを特徴とする付記5のディスク装置。
【0156】
(付記7)前記制御ユニットは、感度関数を、所望の外乱周波数に応じて整形する1次又は2次のフィルタの前記分子を分母とした外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算することを特徴とする付記5のディスク装置。
【0157】
(付記8)前記制御ユニットは、前記推定位置誤差に従い、前記抑圧すべき複数の外乱周波数に応じた複数の前記フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された複数の外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの複数の外乱抑圧値を演算し、前記複数の外乱抑圧値を加算することを特徴とする付記5のディスク装置。
【0158】
(付記9)前記制御ユニットは、定常バイアス補償を行う1次フィルタと特定の周波数近傍をノッチフィルタ状に抑圧する2次フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算することを特徴とする付記5のディスク装置。
【0159】
(付記10)前記制御ユニットは、定常バイアス補償を行う1次フィルタと特定の周波数以下を一様に抑圧する2次フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算することを特徴とする付記5のディスク装置。
【0160】
(付記11)前記制御ユニットは、比較的高域の前記特定の周波数近傍をノッチフィルタ状に抑圧する2次フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算することを特徴とする付記9のディスク装置。
【0161】
(付記12)前記制御ユニットは、複数の前記特定の周波数近傍をノッチフィルタ状に抑圧する複数の2次フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された複数の外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算することを特徴とする付記9のディスク装置。
【0162】
(付記13)前記制御ユニットは、比較的低域の前記特定の周波数以下を一様に抑圧する2次フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算することを特徴とする付記10のディスク装置。
【0163】
(付記14)ディスク記憶媒体のデータを少なくとも読み取るヘッドを、アクチュエータを制御して、前記ディスク記憶媒体の所定位置に位置決めするヘッド位置制御装置において、前記ヘッドの目標位置と前記ヘッドから得た現在位置とから推定位置誤差を演算し、前記位置誤差と前記オブザーバの推定位置との推定位置誤差に従い、前記アクチュエータの推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの制御値を演算するオブザーバと、前記推定位置誤差に従い、感度関数を整形する分母と分子の次数が同一のフィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算する外乱オブザーバと、前記制御値と前記外乱抑圧値を加算して、前記アクチュエータを駆動する加算ブロックとを有することを特徴とするヘッド位置制御装置。
【0164】
(付記15)前記外乱オブザーバは、前記感度関数を、所望の外乱周波数に応じて整形するフィルタの前記分子の零点を極に持つ外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算することを特徴とする付記14のヘッド位置制御装置。
【0165】
(付記16)前記外乱オブザーバは、感度関数を、所望の外乱周波数に応じて整形する1次又は2次のフィルタの前記分子を分母とした外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算することを特徴とする付記14のヘッド位置制御装置。
【0166】
(付記17)前記外乱オブザーバは、前記推定位置誤差に従い、前記抑圧すべき複数の外乱周波数に応じた複数の前記フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された複数の外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの複数の外乱抑圧値を演算し、前記複数の外乱抑圧値を加算することを特徴とする付記14のヘッド位置制御装置。
【0167】
(付記18)前記外乱オブザーバは、定常バイアス補償を行う1次フィルタと特定の周波数近傍をノッチフィルタ状に抑圧する2次フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算することを特徴とする付記14のヘッド位置制御装置。
【0168】
(付記19)前記外乱オブザーバは、定常バイアス補償を行う1次フィルタと特定の周波数以下を一様に抑圧する2次フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算することを特徴とする付記14のヘッド位置制御装置。
【0169】
(付記20)前記外乱オブザーバは、比較的高域の前記特定の周波数近傍をノッチフィルタ状に抑圧する2次フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算することを特徴とする付記18のヘッド位置制御装置。
【産業上の利用可能性】
【0170】
外乱抑圧のため、導入したい周波数特性を、整形フィルタで定義し、整形フィルタの分子の式を分母に持つ外乱モデルを構成し、元のオブザーバのモデルに付加し、この外乱モデルから求めた推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、状態情報から、アクチュエータの外乱抑圧値を演算するので、外乱抑圧機能を、抑圧幅を広くとる場合や高い周波数域の外乱を抑圧する場合でも、元のオブザーバ(コントローラ)の制御特性に影響を与えず、実装できる。
【符号の説明】
【0171】
1 アクチュエータ
2 スピンドルモータの回転軸
3 ヘッド
4 ディスク
5 スピンドルモータ
6 アクチュエータのVCM駆動回路
7 位置復調回路
8 スピンドルモータの駆動回路
9 バス
10 データの記録再生回路
11 ハードディスクコントローラ
12 MCUのRAM
13 MCUのROM
14 マイクロコントローラユニット
15 ハードディスクコントローラのRAM
16 位置信号
50 外乱モデル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク記憶媒体のデータを少なくとも読み取るヘッドと、
前記ディスク記憶媒体の所定位置に、前記ヘッドを位置決めするアクチュエータと、
前記ヘッドの目標位置と前記ヘッドから得た現在位置とから位置誤差を演算し、オブザーバ制御により推定位置を演算し、前記位置誤差と前記推定位置とから推定位置誤差を演算し、演算された前記推定位置誤差に従い、前記アクチュエータの推定ゲインを用いて生成した状態情報から前記アクチュエータの制御値を演算するコントローラモデルと、前記コントローラモデルに付加され、感度関数を整形する分母と分子の次数が同一である整形フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義されたモデルであって、前記コントローラモデルで演算された前記推定位置誤差に従い、外乱の推定ゲインを用いて生成した状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算する外乱モデルとを有し、前記コントローラモデルで演算された前記制御値と前記外乱モデルで演算された前記外乱抑圧値とを加算して前記アクチュエータを駆動する制御ユニットと、
を備え、
前記外乱モデルは、前記推定位置誤差に従い、前記抑圧すべき複数の外乱周波数に応じた複数の前記整形フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された複数のモデルの外乱の推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの複数の外乱抑圧値を演算し、前記複数の外乱抑圧値を加算する、
ことを特徴とするディスク装置。
【請求項2】
前記制御ユニットは、感度関数を、所望の外乱周波数に応じて整形する1次又は2次のフィルタの前記分子を分母とした前記外乱モデルの推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算する
ことを特徴とする請求項1のディスク装置。
【請求項3】
前記制御ユニットは、前記感度関数を、所望の外乱周波数に応じて整形するフィルタの前記分子の零点を極に持つ前記外乱モデルの推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算する
ことを特徴とする請求項1のディスク装置。
【請求項4】
ディスク記憶媒体のデータを少なくとも読み取るヘッドを、オブザーバ制御により、アクチュエータを制御して、前記ディスク記憶媒体の所定位置に位置決めするヘッド位置制御装置において、
前記ヘッドの目標位置と前記ヘッドから得た現在位置とから位置誤差を演算し、オブザーバ制御により推定位置を演算し、前記位置誤差と前記推定位置とから推定位置誤差を演算し、演算された前記推定位置誤差に従い、前記アクチュエータの推定ゲインを用いて生成した状態情報から前記アクチュエータの制御値を演算するコントローラモデルと、
前記コントローラモデルに付加されていて、感度関数を整形する分母と分子の次数が同一である整形フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義されたモデルであって、前記コントローラモデルで演算された前記推定位置誤差に従い、外乱の推定ゲインを用いて生成した状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算する外乱モデルと、
前記コントローラモデルで演算された前記制御値と前記外乱モデルで演算された前記外乱抑圧値を加算して、前記アクチュエータを駆動する加算ブロックと、
を有し、
前記外乱モデルは、前記推定位置誤差に従い、前記抑圧すべき複数の外乱周波数に応じた複数の前記整形フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された複数のモデルの外乱の推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの複数の外乱抑圧値を演算し、前記複数の外乱抑圧値を加算する、
ことを特徴とするヘッド位置制御装置。
【請求項5】
ディスク記憶媒体のデータを少なくとも読み取るヘッドを、オブザーバ制御により、アクチュエータを制御して、前記ディスク記憶媒体の所定位置に位置決めするヘッド位置制御装置で実行されるヘッド位置制御方法であって、
前記ヘッド位置制御装置は、制御部と記憶部を備え、前記制御部において実行される、
コントローラモデルが、前記ヘッドの目標位置と前記ヘッドから得た現在位置とから位置誤差を演算し、オブザーバ制御により推定位置を演算し、前記位置誤差と前記推定位置とから推定位置誤差を演算し、演算された前記推定位置誤差に従い、前記アクチュエータの推定ゲインを用いて生成した状態情報から前記アクチュエータの制御値を演算するステップと、
前記コントローラモデルに付加された外乱モデルが、感度関数を整形する分母と分子の次数が同一である整形フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義されたモデルであって、前記コントローラモデルで演算された前記推定位置誤差に従い、外乱の推定ゲインを用いて生成した状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算するステップと、
加算ブロックが、前記コントローラモデルで演算された前記制御値と前記外乱モデルで演算された前記外乱抑圧値を加算して、前記アクチュエータを駆動するステップと、
を含み、
前記外乱モデルは、前記推定位置誤差に従い、前記抑圧すべき複数の外乱周波数に応じた複数の前記整形フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された複数のモデルの外乱の推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの複数の外乱抑圧値を演算し、前記複数の外乱抑圧値を加算する、
ことを特徴とするヘッド位置制御方法。
【請求項1】
ディスク記憶媒体のデータを少なくとも読み取るヘッドと、
前記ディスク記憶媒体の所定位置に、前記ヘッドを位置決めするアクチュエータと、
前記ヘッドの目標位置と前記ヘッドから得た現在位置とから位置誤差を演算し、オブザーバ制御により推定位置を演算し、前記位置誤差と前記推定位置とから推定位置誤差を演算し、演算された前記推定位置誤差に従い、前記アクチュエータの推定ゲインを用いて生成した状態情報から前記アクチュエータの制御値を演算するコントローラモデルと、前記コントローラモデルに付加され、感度関数を整形する分母と分子の次数が同一である整形フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義されたモデルであって、前記コントローラモデルで演算された前記推定位置誤差に従い、外乱の推定ゲインを用いて生成した状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算する外乱モデルとを有し、前記コントローラモデルで演算された前記制御値と前記外乱モデルで演算された前記外乱抑圧値とを加算して前記アクチュエータを駆動する制御ユニットと、
を備え、
前記外乱モデルは、前記推定位置誤差に従い、前記抑圧すべき複数の外乱周波数に応じた複数の前記整形フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された複数のモデルの外乱の推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの複数の外乱抑圧値を演算し、前記複数の外乱抑圧値を加算する、
ことを特徴とするディスク装置。
【請求項2】
前記制御ユニットは、感度関数を、所望の外乱周波数に応じて整形する1次又は2次のフィルタの前記分子を分母とした前記外乱モデルの推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算する
ことを特徴とする請求項1のディスク装置。
【請求項3】
前記制御ユニットは、前記感度関数を、所望の外乱周波数に応じて整形するフィルタの前記分子の零点を極に持つ前記外乱モデルの推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算する
ことを特徴とする請求項1のディスク装置。
【請求項4】
ディスク記憶媒体のデータを少なくとも読み取るヘッドを、オブザーバ制御により、アクチュエータを制御して、前記ディスク記憶媒体の所定位置に位置決めするヘッド位置制御装置において、
前記ヘッドの目標位置と前記ヘッドから得た現在位置とから位置誤差を演算し、オブザーバ制御により推定位置を演算し、前記位置誤差と前記推定位置とから推定位置誤差を演算し、演算された前記推定位置誤差に従い、前記アクチュエータの推定ゲインを用いて生成した状態情報から前記アクチュエータの制御値を演算するコントローラモデルと、
前記コントローラモデルに付加されていて、感度関数を整形する分母と分子の次数が同一である整形フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義されたモデルであって、前記コントローラモデルで演算された前記推定位置誤差に従い、外乱の推定ゲインを用いて生成した状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算する外乱モデルと、
前記コントローラモデルで演算された前記制御値と前記外乱モデルで演算された前記外乱抑圧値を加算して、前記アクチュエータを駆動する加算ブロックと、
を有し、
前記外乱モデルは、前記推定位置誤差に従い、前記抑圧すべき複数の外乱周波数に応じた複数の前記整形フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された複数のモデルの外乱の推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの複数の外乱抑圧値を演算し、前記複数の外乱抑圧値を加算する、
ことを特徴とするヘッド位置制御装置。
【請求項5】
ディスク記憶媒体のデータを少なくとも読み取るヘッドを、オブザーバ制御により、アクチュエータを制御して、前記ディスク記憶媒体の所定位置に位置決めするヘッド位置制御装置で実行されるヘッド位置制御方法であって、
前記ヘッド位置制御装置は、制御部と記憶部を備え、前記制御部において実行される、
コントローラモデルが、前記ヘッドの目標位置と前記ヘッドから得た現在位置とから位置誤差を演算し、オブザーバ制御により推定位置を演算し、前記位置誤差と前記推定位置とから推定位置誤差を演算し、演算された前記推定位置誤差に従い、前記アクチュエータの推定ゲインを用いて生成した状態情報から前記アクチュエータの制御値を演算するステップと、
前記コントローラモデルに付加された外乱モデルが、感度関数を整形する分母と分子の次数が同一である整形フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義されたモデルであって、前記コントローラモデルで演算された前記推定位置誤差に従い、外乱の推定ゲインを用いて生成した状態情報から前記アクチュエータの外乱抑圧値を演算するステップと、
加算ブロックが、前記コントローラモデルで演算された前記制御値と前記外乱モデルで演算された前記外乱抑圧値を加算して、前記アクチュエータを駆動するステップと、
を含み、
前記外乱モデルは、前記推定位置誤差に従い、前記抑圧すべき複数の外乱周波数に応じた複数の前記整形フィルタの前記分子を分母とした伝達関数で定義された複数のモデルの外乱の推定ゲインを用いて、状態情報を生成し、前記状態情報から前記アクチュエータの複数の外乱抑圧値を演算し、前記複数の外乱抑圧値を加算する、
ことを特徴とするヘッド位置制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2010−192112(P2010−192112A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132471(P2010−132471)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【分割の表示】特願2006−125113(P2006−125113)の分割
【原出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(309033264)東芝ストレージデバイス株式会社 (255)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【分割の表示】特願2006−125113(P2006−125113)の分割
【原出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(309033264)東芝ストレージデバイス株式会社 (255)
【Fターム(参考)】
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