説明

ディスク装置及びその製造方法

【課題】
トラック幅が正常値から外れるトラックを正確かつ高速に検出することができるディスク装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
HDDは、リードヘッド112aと、リードヘッド112aをトラック中心に位置決めする際に使用するバーストA、Bを含むサーボ・データが記録されたディスクと、リードヘッド112aが1回で再生したバーストA、Bの振幅の和をバーストC又はDの振幅で除した比較値が基準値から所定の割合異常外れる場合に、判定対象のトラック幅が異常である欠陥トラックとして検出する欠陥トラック検出部とを有する。バーストA〜Dは、トリミングなしで記録されることで、トラック幅に拘わらずトラック幅方向の大きさが一定の大きさとなっており、バーストA、Bの間の半径方向にトラック幅に応じたギャップGが形成される。このギャップGを含む位置でバーストA、Bを再生して上記比較値を求めて欠陥トラックを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーボ・データに含まれるバースト・パターンにより位置決め制御されるヘッドを有するディスク装置及びその製造方法に関し、特にトラック幅の異常によるオフトラック等のエラーの防止を図ったディスク装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
データ記憶装置として、光ディスクや磁気テープなどの様々な態様のメディアを使用する装置が知られているが、その中で、ハード・ディスク・ドライブ(Hard Disk Drive:HDD)は、コンピュータの記憶装置として広く普及し、現在のコンピュータ・システムにおいて欠かすことができない記憶装置の一つとなっている。さらに、コンピュータにとどまらず、動画像記録再生装置、カーナビゲーション・システム、あるいはデジタル・カメラなどで使用されるリムーバブルメモリなど、HDDの用途は、その優れた特性により益々拡大している。
【0003】
一般に、HDDはメディアとして磁気ディスクを備え、磁気ディスクのトラックは、磁気ディスク上にサーボライタ等により記録されるサーボ・データにより形成される。すなわち、同心円状トラックにフォロイングするために、図12(a)に示すようなサーボ・データが記録されている。サーボ・データは、トラック上に複数個所記録されており、このサーボ・データは、データの同期を取るためのSyncデータが記録されるSync部D1、サーボ・データの開始を示すサーボマークが記録されるSTM(Servo track mark)部D2、何番目のトラックであるかなどの位置情報を有するトラックID部D3、細かい位置制御をするためのバースト・パターンが記録されるBurst部D4などの周知の領域からなる。Sync部D1は、サーボ・データを読み出す前に信号アンプの増幅率を調整して振幅を一定にするサーボAGC(Automatic Gain Control)を含む。
【0004】
Burst部D4に記録されるバースト・パターンは、例えば図12(b)に示すように、バーストA、B、C、Dの4種類のバースト・パターンからなり、ヘッドによりこれを再生し、その再生信号(バースト信号)から得られる振幅等の変化を数値化し、ヘッド素子部112のトラッキング制御(トラック・フォローイング)等に使用される。
【0005】
バースト・パターンは、トラック中心をTc、トラック境界をTb、トラック幅をTwとしたとき、図12(b)においては、バーストA、Bは、それぞれトラック中心Tcから隣接する一方のトラック中心Tc、他方のトラック中心Tcにかけて交互に一定周期で記録された信号となっており、一のトラックの一方のトラック境界Tb上、他方のトラック境界Tb上にそれぞれ記録される。また、バーストC、バーストDは、1つのトラック内に一定周期で記録された信号であり、いずれか一方が奇数トラック、他方が偶数トラックに記録される。そして、これらバーストA〜Dは、トラックが延びる方向にそれぞれ10周期程度繰り返して記録される。リードヘッド300aは、例えばバーストAとバーストBの再生信号の振幅がバランスする位置をトラック中心Tcとしてこの位置に制御される。ヘッドの位置ずれは、例えばバーストA、Bの再生信号から得られる振幅又は波形の絶対値の積分値の和、差等に応じて生成された誤差信号により行うことができる。
【0006】
このバースト・パターンの記録方法としては、以下に示す2種類の記録方式がある。すなわち、例えばバーストA等、1つのバースト・パターンを2回の記録により重ね書きする方式又はトリミングする方式と、1つのバースト・パターンを1回の記録で行う重ね書きなしの方式又はトリミングなしの方式である。1つのバースト・パターンを2回の重ね書きにより記録すると、1つのバースト・パターンに書きつなぎ部分ができるため、この重ね書き方式によるバースト・パターンの記録方式を本明細書においてはシームド方式といい、シームド方式により記録されたサーボ・パターンをシームド・サーボ・パターンという。また、重ね書きなし(トリミングなし)でバースト・ターンを記録すると、一のバースト・パターン自体が1回のライト動作で記録されるため書きつなぎ部分がない。本明細書においては、このトリミングなしによるバースト・パターンの記録方式をシームレス方式といい、シームレス方式により記録されたサーボ・パターンをシームレス・サーボ・パターンということする。
【0007】
以下、シームド方式及びシームレス方式によるサーボ・パターンの記録方法について具体的に説明する。図13及び図5は、それぞれシームド方式及びシームレス方式のサーボ・パターンの記録方法を示す模式図である。サーボ・データは、半トラックずつヘッドを半径方向にずらしながら記録される。また、バースト・パターンは、トラックの延びる方向に沿って順に、異なる記録位置に記録されるバーストA、B、C、Dを有するものとする。
【0008】
図13に示すように、シームド方式では、サーボトラックライト(STW)工程における例えばn回目のライト動作において、先ず、ライトヘッド300bにより、何番目のトラックであるかなどの位置情報を示すIDを記録し、バーストA、Cのみを記録する。すなわち、バーストB、バーストDの位置ではバースト・パターンを記録しない。この、信号を記録しないバーストB、Dの位置においては前回のサーボライトにより信号が記録されている場合はこれを消去する(トリミングする)。そして、次に、半トラックだけライトヘッド300bをずらし、IDの記録の後、バーストB、Cを記録する。このとき、上述と同様、所定の位置、ここでは、バーストA、Dの位置においては、データ消去(トリミング)を行う。
【0009】
このようにして、n回目とn+1回目のサーボライトにより、1トラックが形成される。通常はリードヘッド300bの幅よりトラック幅Twの方が大きいため、このように書き繋ぎをしてトリミングしながらバースト・パターンが記録される。このシームド方式では、n回目のライト動作の際のサーボ・データにn+1回目にライト動作した際のサーボ・データを重ね書きすることで、隣接するトラック間においてギャップがないバースト・パターンを記録することができる。ここで、バーストA〜Dは、理想的には半径方向に半トラックずつずらして記録されるもので、トラック中心Tcは、バーストAとバーストBとを再生した際にその再生信号の振幅がバランスする位置であり、トラック中心Tc間の距離がトラックピッチである。また、隣接するトラック中心Tcの半径方向の中心線がトラック境界Tbとなり、隣接するトラック境界Tb間の距離がトラック幅Twとなる。図13に示す場合、理想的にはトラック幅Twは、バーストA〜Dと同一幅になる。
【0010】
一方、シームレス方式においては、図5に示すように、シームド方式と同様に、半トラックずつヘッドを移動させてサーボ信号を記録するが、1回のライト動作で1種類のバースト・パターンを記録する。重ね書き(トリミング)をしないため、例えばバーストAを記録しているn回目の記録に際しては、シームド方式と異なり、前回のライト動作により記録されたバースト・パターンを消去せず、バースト・パターンがトリミングされることがない。従って、n回目及びn+2回目のライト動作により記録されたバーストAとバーストBとの間には、ギャップGが形成されることとなる。すなわち、通常、トラック幅又はトラックピッチよりライトヘッドの幅の方が小さいため、シームド・バースト・パターンと異なり、各バーストA〜Dの幅はトラック幅又はトラックピッチより小さくなる。トラック中心Tcは、図5の下図に示すように、例えばバーストAとバーストBとの信号振幅がつり合う位置とすることができる。
【0011】
以上のようにして、サーボトラックライト工程において、トラック情報としてのサーボ・データが記録され、ヘッドの位置決め制御のために使用されるが、このトラック情報がディスクの場所によって狭くなったり、広くなったりする場合がある。特に、近時の高記録密度化により、TPI(tracks per inch)が増大したハードディスクにおいては、トラック幅の少しのずれにより、ヘッドがトラックにデータを記録又はトラックからデータを再生する際のヘッドがアクセスするデータ位置が不正確になり、エラーが発生してしまうという問題が生じる。
【0012】
従来、このようなトラック幅が正常でないトラックは、STW工程後の検査工程により予め検出して使用禁止とするようになされている。その方法としては、例えば、全てのトラックにシークし一旦データを記録し、記録したデータを読み出してエラーが発生するか否かを調べる方法がある。
【0013】
また、他の方法として特許文献1に、ハードディスクに記録されたトラック幅の不均一によって発生するオフトラック現象の防止を図ったオフトラック防止方法が開示されている。この特許文献1に記載の技術においては、トラック幅が正常であるか否かを各々のサーボセクタに含まれるA、B、C及びDバースト領域の信号を利用して判断し、トラック幅が正常でないと判断された場合、不均一な幅を有するトラックのサーボ信号を消去してサーボライタによりサーボ信号を再び記録して新しいトラックを形成する。
【0014】
上記トラック幅が正常であるか否かの判定は、オフトラック状態でバースト領域の信号を2回再生することで、例えばバーストBからバーストDの信号を減算した絶対値(第1の絶対値T1)と、バーストAからバーストDの信号を減算した絶対値(第2の絶対値T2)とを加算した第1の加算値を求め、この第1の加算値が所定値と一定の範囲内で一致するか否かで判定している。以下、この方法について更に詳細に説明する。
【0015】
図14は、特許文献1に記載の正常トラック幅の判定方法を説明するための模式図である。特許文献1に記載のトラック幅判定方法では、例えばトラック中心位置P101において、トラックが偶数番目のトラックであるすると、リードヘッド300aをトラック中心位置P101から半径方向(トラック幅方向)であってそれぞれ異なる方向に1/4トラック移動させた位置(1/4オフトラック位置)P102、P103に移動させる。そして、1/4オフトラック位置P102において、読み出したバースト・パターンから、バーストAとバーストCとの差の絶対値332を求める。また、他の1/4オフトラック位置P103において、読み出したバースト・パターンから、バーストBとバーストCとの差の絶対値333を求める。
【0016】
また、トラックが奇数番目のトラックの場合には、リードヘッド300aをトラック中心位置P104から半径方向であってそれぞれ異なる方向に1/4トラック移動させた位置P105、P106に移動させる。そして、1/4オフトラック位置P105において、読み出したバースト・パターンから、バーストBとバーストDとの差の絶対値335を求める。また、他の1/4オフトラック位置P106において、読み出したバースト・パターンから、バーストAとバーストDとの差の絶対値333を求める。
【0017】
そして、偶数トラックの場合は、絶対値332と絶対値333との和を求め、奇数トラックの場合は、絶対値335と絶対値336との和を求め、これらの和と所定値とを比較し、所定値から大きくなればサーボセクタの幅が増大し、所定値から小さくなればサーボセクタの幅が減少したものと判断する。
【特許文献1】特開2003−331545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、特許文献1に記載の発明には上述のシームド・サーボ・パターンには適用できるものの、ヘッド幅の大きさがトラック幅の大きさの50%以上でないとサーボセクタ幅を測定することはできず、また、シームレス・サーボ・パターンに適用した場合には、トラック幅を正確に測定することができない。以下、これらの問題点について具体的に説明する。
【0019】
図15は、従来の方法により、ヘッド幅がトラック幅の50%未満のヘッドを使用してシームド・サーボ・パターンにおけるサーボセクタ幅を測定する方法を示す図である。図15に示すように、シームド方式にてサーボ・データが記録された場合であっても、リードヘッド310aのヘッド幅がトラック幅Tpの50%に満たない場合には、例えば1/4オフトラック位置P103においては、バーストBとバーストCとの差の絶対値333は、バーストBの振幅が飽和してしまうため、正確に測定することができない。
【0020】
また、シームレス方式にてサーボ・データが記録された場合の問題点を図16に示す。図16(a)は、バーストA〜Dがシームレス・サーボ・パターンである場合の図14に対応する。図15(a)に示すように、バーストA〜Dの幅はトラック幅Twより狭く、バーストAとバーストBとの間にはギャップGを有している。この例では、トラック中心Tcは、バーストAとバーストBとの間の中心であり、バーストAとバーストBの中心にヘッドが位置決めされる。
【0021】
この場合、上述の図14と同様、リードヘッド300aをトラック中心位置P101から1/4オフトラック位置P102に移動させ、読み出したバースト・パターンから、バーストAとバーストCとの差の絶対値342を求め、1/4オフトラック位置P102とは異なる方向の1/4オフトラック位置P103に移動させ、読み出したバースト・パターンから、バーストBとバーストCとの差の絶対値343を求めるとする。図16(b)は、図16(a)の絶対値342、343、ギャップGを示す図である。図16(b)に示すように、このようなシームレス・サーボ・パターンであると、絶対値342と絶対値343との和はサーボセクタの幅ではないため、すなわち、ギャップGの幅を測定することができないため、正しくサーボセクタの幅を測定することができず、よって正しくトラック幅Twを測定することができない。
【0022】
一方、STW工程の後、全てのトラックにデータを書き込み、これを再生してエラーが生じるトラックを検出する方法であれば、シームド、シームレスのいずれのサーボ・パターンであっても適用することができるが、トラック幅の異常を直接検査する方法ではない間接的な検査であるため、エラーが生じた原因がトラック幅以外の要因にかかる誤検出又は検出漏れ等を避けられない場合があるという問題点がある。更に、一旦データを書き込み再生するため、検査工程に極めて時間がかかるという問題点もある。また、上述の特許文献1に記載の方法であっても、1/4オフトラック位置で2回測定してトラック幅の異常を判定するため、検査処理に時間がかかるという問題点がある。
【0023】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、トラック幅が正常値から外れるトラックを正確かつ高速に検出することができるディスク装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上述した目的を達成するために、本発明にかかるディスク装置は、少なくともデータを再生するヘッドと、前記ヘッドをトラック中心に位置決めする際に使用する第1及び第2のバースト・パターンを含むサーボ・データが記録されたディスクと、前記ヘッドが1回で再生した第1及び第2のバースト・パターンの再生結果に基づき得られる比較値が所定範囲から外れる場合に、当該第1及び第2のバースト・パターンが共に記録された判定対象のトラックをトラック幅が異常である欠陥トラックとして検出する欠陥トラック検出部とを有することを特徴とする。
【0025】
本発明においては、ヘッドをトラック中心に位置決めする際に使用する第1及び第2のバースト・パターンを1回で再生した再生結果に基づき得られる比較値によりトラック幅が異常な欠陥トラックを検出することができるので、欠陥トラック検出処理を極めて迅速化することができる。
【0026】
また、前記欠陥トラック検出部は、前記第1のバースト・パターンの再生結果と第2のバースト・パターンの再生結果とがバランスする位置を前記トラック中心とし、前記トラック中心に位置決めされた前記ヘッドの再生結果から前記欠陥トラックを検出することができ、トラック中心に位置決めしてオントラック状態で第1及び第2のバースト・パターンを再生し、この結果のみから欠陥トラックを検出することができる。
【0027】
更に、前記第1及び第2のバースト・パターンは、トラック幅に拘わらずトラック幅方向の大きさが一定とすることができ、トラック幅に拘わらずトラック幅方向の大きさが一定であると、第1及び第2のバースト・パターンの半径方向の境界部分にギャップ又は重複部分が形成され、これらギャップ又は重複部分の大きさはトラック幅に応じて変動するため、これが再生結果に反映され、よってトラック幅異常を検出することができる。
【0028】
更にまた、前記第1及び第2のバースト・データは、トリミングなしで記録されたものであることができ、トリミングなしのシームレス・バースト・パターンとすれば、トラック幅に拘わらずバースト・パターンの半径方向の幅を一定とすることができる。
【0029】
また、前記第1及び第2のバースト・パターンは、トラック幅方向にそのトラック幅に応じた間隙が形成されてもよく、例えばトリミングなしで記録された場合には、通常トラック幅より記録ヘッド(ライトヘッド)の幅のほうが狭いため、サーボ・パターン間にギャップが形成され、このギャップの大きさがトラック幅に応じて変動し、この変動が再生結果に反映されることで、トラック幅異常を検出することができる。
【0030】
更に、前記比較値として算出する比較値算出部を有し、前記欠陥トラック検出部は、トラック幅が異常であるか否かを判定するための基準値と判定対象のトラックにおける前記比較値との比較結果に基づき、前記判定対象のトラックが欠陥トラックか否かを判定することができ、基準値を利用して所望の幅のトラックを欠陥トラックとして検出することができる。
【0031】
更にまた、前記第1のバースト・パターンは、一のトラックにおける一方のトラック境界上に記録され、前記第2のバースト・パターンは、前記一のトラックにおける他方のトラック境界上に記録されるものとすることができる。
【0032】
また、前記ヘッドは、前記第1及び第2のバースト・パターンの再生信号の振幅が等しくなる位置に位置決めされることができ、この位置がトラック中心とされる。
【0033】
更に、前記比較値算出部は、前記第1及び第2のバースト・パターンの再生信号の振幅の和に基づき前記比較値を算出することができ、例えばシームレス・サーボ・パターンなど、トラック幅にかかわらず一定幅でバースト・パターンが記録されている場合、トラック幅が正常であれば第1のバースト・パターンと第2のバースト・パターンとの間に間隙(ギャップ)が形成される。又は第1及び第2のバースト・パターンが半径方向に重複部分を有する。この場合、トラック幅が正常より広くなればギャップが大きくなるか、または重複部分が小さくなり、狭くなればギャップが小さくなるか又は重複部分が大きくなるため、比較値がトラック幅に応じた値となる。よって、これを測定することで、トラック幅異常を検出することができる。
【0034】
更にまた、前記サーボ・データは、奇数トラック上に記録される第3のバースト・パターン及び偶数トラック上に記録される第4のバースト・パターンを含み、前記比較値算出部は、前記第1及び第2のバースト・パターンと第3又は第4のバースト・パターンの再生結果に基づき前記比較値を算出することができ、例えば、前記比較値算出部は、前記第1及び第2のバースト・パターンの再生信号の振幅の和を前記第3又は第4のバースト・パターンの再生信号の振幅で除した値を前記比較値とすることができ、第3又は第4のバースト・パターンの再生信号の振幅で除すことで更に正確な比較値を求めることができる。
【0035】
また、前記比較値に基づき、前記所定範囲を決定する基準値を算出する基準値算出部を更に有し、この場合、前記基準値算出部は、前記比較値算出部にて算出された前記比較値のうち、前記欠陥トラックを除く所定数のトラックの前記比較値の平均値を前記基準値とすることができ、基準値を平均値から得ることができる。
【0036】
更に、前記基準値算出部は、前記判定対象のトラックが奇数トラックである場合、前記比較値算出部にて算出された前記比較値のうち、前記欠陥トラックを除く所定数の奇数トラックの前記比較値の平均値を前記基準値とし、前記判定対象のトラックが偶数トラックである場合、前記比較値算出部にて算出された前記比較値のうち、前記欠陥トラックを除く所定数の偶数トラックの前記比較値の平均値を前記基準値とすることができ、奇数トラックと偶数トラックとに分けることで更に正確な基準値を算出することができる。
【0037】
更にまた、前記基準値算出部は、前記判定対象のトラック近傍のトラックの前記比較値に基づき前記基準値を算出することができる。トラック幅はディスクの内周側と外周側とで異なるため、判定対象のトラック近傍の比較値から基準値を算出することで正確な基準値を得ることができる。
【0038】
また、前記基準値算出部は、前記判定対象のトラックの判定後、前記判定結果に基づき前記基準値を更新することができ、例えば、前記基準値算出部は、前記判定対象のトラックが欠陥トラックではない場合、当該判定対象のトラックを含む所定数のトラックの前記比較値から前記平均値を求め、前記基準値を更新することができ、基準値を逐次更新していくことで、正確な基準値を高効率に得ることができる。
【0039】
更に、前記欠陥トラック検出部は、前記欠陥トラックを欠陥テーブルに登録することができる。この場合、例えば、前記欠陥テーブルを参照して前記ヘッドに対するデータの記録を制御する書き込み制御部を更に有し、書き込み制御部は、前記欠陥テーブルを参照し前記欠陥トラックに対する書き込みを禁止するものとすることができ、例えばディスク上の所定領域に欠陥テーブルを記録しておけば、書き込みの際にこれを参照し、欠陥トラックの検査により検出された欠陥トラックをスキップして書き込みを行うよう制御することができる。予め使用禁止とすることができる。
【0040】
更にまた、前記欠陥トラック検出部は、前記欠陥トラックを有するシリンダを欠陥シリンダとして欠陥テーブルに登録することができ、シリンダ単位で使用禁止(不可)とすることができる。
【0041】
本発明にかかるディスク装置は、トラック幅に拘わらずトラック幅方向の大きさが一定の大きさで記録された第1及び第2のバースト・パターンを含み、前記第1のバースト・パターンの再生結果と前記第2のバースト・パターンの再生結果とがバランスする位置がトラック中心とされるサーボ・データが記録されたディスクと、少なくともデータを再生するヘッドと、前記ヘッドの1回の再生により前記第1及び第2のバースト・パターンが共に再生される位置にて再生された再生結果から得られる比較値が所定範囲から外れる欠陥トラックを検出する欠陥トラック検出部とを有することを特徴とする。
【0042】
本発明においては、第1及び第2のバースト・パターンがトラック幅に拘わらずトラック幅方向の大きさが一定の大きさで記録されているため、トラック幅が異常である場合、正常の場合とは、第1のバースト・パターンから第2のバースト・パターンまでの距離が変動する。これは、第1のバースト・パターンと第2のバースト・パターンとの半径方向の間のギャップ又は重複部分の大きさが変動するためである。ここで、第1及び第2のバースト・パターンが共に再生される位置にて1度バースト・データを再生すると、前記ギャップ又は重複部分の大きさが再生結果に反映され、よってこの値の良否からトラック幅異常を検出することができるため、欠陥トラック検出処理を極めて迅速化することができる。
【0043】
本発明にかかるディスク装置の製造方法においては、少なくともデータを再生するヘッドと、前記ヘッドをトラック中心に位置決めする際に使用する第1及び第2のバースト・パターンを含むサーボ・データが記録されたディスクとを具備するディスク装置の製造方法において、前記ヘッドの1回のリードによる第1及び第2のバースト・パターンの再生結果に基づき比較値を算出し、前記比較値が所定範囲から外れる場合に、当該第1及び第2のバースト・パターンが共に記録された判定対象のトラックを欠陥トラックとして検出し、前記欠陥トラックを予め使用不可とすることを特徴とする。
【0044】
本発明においては、サーボ・パターンが記録された後のディスクのトラック幅の異常である欠陥トラックを、ディスク装置自身がサーボ・パターンを1回再生するのみでセルフテストにより検出し、検出された欠陥トラックを使用不可とすることができるため、トラック幅の検査処理が極めて高速化し、欠陥トラックを使用不可とするため、使用時にオフトラック等のエラーの発生が少ないディスク装置を提供することができる。
【0045】
また、前記欠陥テーブルを前記ディスクの所定領域に書き込み前記欠陥トラックを予め使用不可とすることができ、これにより、ディスクがユーザデータを記録する場合等に欠陥テーブルを参照して、欠陥トラックを使用しないようにすることができる。
【0046】
更に、前記ディスクにサーボ・データを記録し、前記記録したサーボ・データを再生して前記欠陥トラックを検出し、検出した前記欠陥トラックを予め使用不可とすることができ、セルフテストのみならず、セルフ・サーボ・ライトとすることで、更に生産性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、トラック幅が正常値から外れるトラックを正確かつ高速に検出することができることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。この実施の形態は、本発明を、シームレス・サーボ・パターンを有するハード・ディスク・ドライブであって、トラック幅が正常値から外れる欠陥トラック(トラックピッチバランスが悪いトラック)を検出し、ディスク上に記憶しておくことで、欠陥トラックを使用不可とすることができるハード・ディスク・ドライブ及びその製造方法に適用したものである。
【0049】
図1は、本実施の形態にかかるハード・ディスク・ドライブ(HDD)100の概略構成を示している。図1に示すように、HDD100は、筺体110内に、メディアの一例である磁気ディスク111、ヘッドの一例であるヘッド素子部112、アーム電子回路(アームエレクトロニクス:AE)113、スピンドル・モータ(SPM)114、ボイス・コイル・モータ(VCM)115を備えている。また、HDD100は、筺体110の外側に固定された回路基板120を備えている。回路基板120上には、モータ・ドライバ・ユニット122と、AE113との間及び外部ホストとの間で信号のやりとりをする信号を処理する信号処理回路121とが形成されている。信号処理回路121は、リード・ライト・チャネル(R/Wチャネル)123、ハード・ディスク・コントローラ(HDC)/MPU集積回路(以下HDC/MPU)124、及びメモリの一例としてのRAM125とを備え、R/Wチャネル123、HDC/MPU124は、RAM125と共に1つのパッケージで構成される。
【0050】
外部ホストからの書き込みデータは、HDC/MPU124によって受信され、R/Wチャネル123、AE113を介して、ヘッド素子部112によって磁気ディスク111に書き込まれる。また、磁気ディスク111に記憶されているデータは、ヘッド素子部112によって読み出され、読み出しデータは、AE113、R/Wチャネル123を介して、HDC/MPU124から外部ホストに出力される。
【0051】
次に、HDDの各構成要素について説明する。まず、図2を参照して、磁気ディスク111及びヘッド素子部112の駆動機構の概略を説明する。磁気ディスク111は、SPM114の回転軸に固定されている。SPM114は、モータ・ドライバ・ユニット122によって駆動され、SPM114は所定の速度で磁気ディスク111を回転する。磁気ディスク111は、データを記録する記録面を両面に備え、各記録面に対応するヘッド素子部112(図1参照)が設けられている。各ヘッド素子部112はスライダに固定されている。また、スライダは、キャリッジ202に固定されている。キャリッジ202はVCM115に固定され、VCM115は、揺動することによってスライダ201及びヘッド素子部112を移動する。
【0052】
磁気ディスク111からのデータの読み取り/書き込みのため、キャリッジ202は回転している磁気ディスク111表面のデータ領域上にヘッド素子部112を移動する。キャリッジ202が揺動することによって、ヘッド素子部112が磁気ディスク111の表面の半径方向に沿って移動する。これによって、ヘッド素子部112が所望の領域にアクセスすることができる。
【0053】
ヘッド素子部112において、典型的には、磁気ディスク111への記憶データに応じて電気信号を磁界に変換する記録ヘッド(ライトヘッド)、及び磁気ディスク111からの磁界を電気信号に変換する再生ヘッド(リードヘッド)が一体的に形成されている。具体的には、近時の高記録密度化に伴い、例えば、磁気抵抗効果(Magneto Resistive:MR)を利用したMRヘッド、巨大磁気抵抗効果(Giant Magneto Resistive:GMR)を利用したGMRヘッド、媒体との接触によるサーマル・アスベリティ(thermal Asperity:TA)の抑制に優れた効果を示すヘッド構成として、2枚のMR素子で構成するDSMR(Dual Stripe Magneto Resistive)ヘッド等を再生ヘッドとし、薄膜ヘッドで記録を行うMR再生/薄膜記録複合ヘッド(MRヘッド)が使用される。
【0054】
磁気ディスク111に対向するスライダ201のABS(Air Bearing Surface)面と回転している磁気ディスク111との間の空気の粘性による圧力が、キャリッジ202によって磁気ディスク111方向に加えられる力とバランスすることによって、ヘッド素子部112は磁気ディスク111上を一定のギャップを置いて浮上する。なお、磁気ディスク111は、1枚以上あればよく、記録面は、磁気ディスク111の片面及び両面に形成することができる。
【0055】
続いて、図1を参照して、各回路部の説明を行う。AE113は、複数のヘッド素子部112の中からデータ・アクセスが行われる1つのヘッド素子部112を選択し、選択されたヘッド素子部112により再生される再生信号を一定のゲインで増幅(プリアンプ)し、R/Wチャネル123に送る。また、R/Wチャネル123からの記録信号を選択されたヘッド素子部112に送る。
【0056】
R/Wチャネル123は、ホストから取得したデータについて、ライト処理を実行する。ライト処理において、R/Wチャネル123はHDC/MPU124から供給されたライト・データをコード変調し、さらにコード変調されたライト・データをライト信号(電流)に変換してAE113に供給する。また、ホストにデータを供給する際にはリード処理を行う。
【0057】
リード処理において、R/Wチャネル123はAE113から供給されたリード信号を一定の振幅となるように増幅し、取得したリード信号からデータを抽出し、デコード処理を行う。読み出されるデータは、ユーザ・データとサーボ・データを含む。デコード処理されたリード・データは、HDC/MPU124に供給される。特に、本形態において、R/Wチャネル123によるリード信号は後述するトラック幅が異常か否か(トラックピッチバランスの良否)の検査処理(以下、欠陥トラック検出処理という。)に利用される。
【0058】
HDC/MPU124は、MPUとHDCが一つのチップに集積された回路である。MPUは、RAM125にロードされたマイクロ・コードに従って動作し、ヘッド素子部112のポジショニング制御、インターフェース制御、ディフェクト管理などのハード・ディスク・ドライブ100の全体の制御のほか、後述するト欠陥トラック検出処理等、及びデータ処理に関する必要な処理を実行する。ハード・ディスク・ドライブ100の起動に伴い、RAM125には、MPU上で動作するマイクロ・コードの他、制御及びデータ処理に必要とされるデータが磁気ディスク111あるいはROM(不図示)からロードされる。
【0059】
欠陥トラック検出処理は、ディスク111に記録されたサーボ・データに含まれるバースト・パターン(Servo Burst)により決定されるトラック幅が局所的に広かくなっていないか否か及び狭くなっていないか否かを検証し、これら正常ではないトラック幅となっているトラック(欠陥トラック)をディスク111上の所定の領域に記録される欠陥テーブルに登録する処理であり、製造工程において、バースト・パターンを記録した後、装置自身によりバースト・パターンの検査工程(Self Test)として実行されるものである。HDD100は、データ記録時には、欠陥テーブルを参照し、登録されている欠陥トラックにはデータを記録しないよう制御される。
【0060】
この欠陥トラック検出処理を実行する場合には、検査処理を開始するフラグがディスク111上にセットされており、電源がオンされると検査処理用プログラム(Self Test Code)がディスク111から読み出され、AE113、R/Wチャネル123、HDC/MPU124を介して、RAM125上に読み込まれ、検査処理のプログラムが実行される。この検査処理の詳細は後述する。
【0061】
また、HDC/MPU124は、ホストとの間のインターフェース機能を備えており、ホストから伝送されたユーザ・データ及びリード・コマンドやライト・コマンドといったコマンドなどを受信する。受信したユーザ・データは、R/Wチャネル123に転送される。また、R/Wチャネル123から取得した磁気ディスク111からの読み出しデータをホストに伝送する。HDC/MPU124は、さらに、ホストから取得した、あるいは、磁気ディスク111から読み出したユーザ・データについて、誤り訂正(ECC)のための処理を実行する。
【0062】
R/Wチャネル121によって読み出されるデータは、ユーザ・データの他に、サーボ・データを含んでいる。HDC/MPU124は、サーボ・データを使用したヘッド素子部112の位置決め制御を行う。HDC/MPU124からの制御データはモータ・ドライバ・ユニット122に出力される。モータ・ドライバ・ユニット122は制御信号に応じて駆動電流をVCM115に供給する。また、HDC/MPU124は、サーボ・データを使用して、データのリード/ライト処理の制御を行う。特に、本形態において、HDC/MPU124は、R/Wチャネル123から取得するサーボ・データを使用して欠陥トラック検出処理を実行する。
【0063】
図3を参照して、磁気ディスク111上の記録データについて説明する。図3は、磁気ディスク111の記録面の記録データの状態を模式的に示している。図3に示すように、磁気ディスク111の記録面には、磁気ディスク111の中心から半径方向に放射状に延び、所定の角度毎に複数のサーボ領域301が形成され、隣り合う2つのサーボ領域301の間にデータ領域302が形成されている。サーボ領域301及びデータ領域302は、所定の角度で交互に設けられている。各サーボ領域301には、ヘッド素子部112の位置決め制御を行うためのサーボ・データが記録される。各データ領域302には、ユーザ・データが記録される。
【0064】
また、磁気ディスク111の記録面には、半径方向の所定幅を有し、同心円状に形成された複数本のトラック303が形成される。サーボ・データ及びユーザ・データは、トラック303に沿って記録される。サーボ領域301間の一のトラック303は、複数のデータ・セクタ(ユーザ・データの記録単位)を備えている。また、トラック303は、磁気ディスク111の半径方向の位置に従って、複数のゾーンにグループ化されている。一のトラック303に含まれるセクタ304の数は、ゾーンのそれぞれに設定される。図3においては、3つのゾーンが例示されている。ゾーン毎に記録周波数を変更することで、記録密度を向上することができる。
【0065】
次に、磁気ディスク111のサーボ領域に記録されるサーボ・データについて説明する。データ記録用磁気ヘッドの記録メディアである磁気ディスク111上には、同心円状トラックにフォロイングするためにサーボ・データが書かれている。サーボ・データは、トラック上に複数個所書かれており、図4(a)に示すように、データの同期を取るためのSyncデータが記録されるSync部D1、サーボ・データの開始を示すサーボマークが記録されるSTM(Servo track mark)部D2、トラックが何番目のトラックであるかなどを示す位置情報を有するトラックID部D3、細かい位置制御をするためのバースト・パターンが記録されるBurst部D4などの周知の領域からなる。Sync部D1は、サーボ・データを読み出す前に信号アンプの増幅率を調整して振幅を一定にするサーボAGC(Automatic Gain Control)を含む。
【0066】
Burst部D4に記録されるバースト・パターンは、例えば図4(b)に示すように、バーストA、B、C、Dの4種類のバースト・パターンからなり、ヘッドによりこれを再生し、その再生信号(バースト信号)の振幅の変化を数値化し、ヘッド素子部のトラッキング制御(トラック・フォローイング)等に使用される。
【0067】
バースト・パターンは、図4(b)に示すように、トラック中心をTc、トラック境界をTb、トラック幅をTwとしたとき、バーストAは、一のトラックの一方のトラック境界Tb上に記録され、バーストBは当該一のトラックの他方のトラック境界Tb上に記録された信号である。また、バーストC、バーストDは、1つのトラック内であって、奇数トラック又は偶数トラックにそれぞれ記録された信号である。これらバーストA〜Dは、トラックが延びる方向にそれぞれ10周期程度繰り返して記録される。
【0068】
例えばリードヘッド112aは、バーストAとバーストBを再生した際の信号振幅がバランスする位置をトラック中心Tcとして位置決め制御される。ヘッドの位置ずれは、例えばバーストA、Bのサーボ信号の振幅の差に応じて生成された誤差信号により行うことができる。また、バースト・パターンの再生信号の波形の積分値を使用してもよく、また、バーストC、Dを利用して位置決めすることもできる。
【0069】
また、本実施の形態における磁気ディスク111は、図4(b)に示すように、サーボトラックライトの際、書きつなぎせず、トリミングなしのシームレス方式のバースト・パターンとなっている。また、本実施の形態におけるHDD100は、サーボライタによってディスク111にサーボ・データを記録するのではなく、いわゆるセルフ・サーボ・ライト方式により、HDD100自身がサーボ・データを記録することとする。一のディスクの記録面当たりのトラックの数(トラック密度)が増大すると、サーボライタ精度及び書込時間は比例的に増大するため、サーボライタを使用したサーボトラックライトであると、多数の製造サイクルにわたって所望の書込精度を有する高価なサーボライタをクリーンルームに設置する等する必要があるが、セルフ・サーボ・ライトにより、HDDの生産性を向上し、製造の容易化等を図ることができる。なお、サーボライタによりサーボ・データを記録させるようにしてもよい。
【0070】
サーボトラックライト工程においては、上述した如く、シームレス方式にてバースト・パターンを記録するため、バースト・パターンの重ね書き・トリミングをしない。すなわち、シームレス方式においては、図5に示すように、半トラック分ずつヘッドを半径方向(トラック幅方向)に移動させてサーボ信号を記録する点はシームド方式と同様であるが、1回の記録で1種類のバースト・パターンのみ記録し、またバースト・パターンは書き繋ぎによるトリミングを行わない。
【0071】
図5(a)に示すように、例えばn回目のサーボライトにおいて、先ず、記録ヘッド112bにより、何番目のトラックであるかなどの位置情報を示すIDを記録し、バーストAのみを記録する。次に、図5(b)に示すように、半径方向に半トラック移動した位置にてn+1回目のサーボライトによりバーストCのみを記録する。同様に、図5(c)、図5(d)に示すように、更にそれぞれ半トラック分移動してn+2回目、n+3回目のサーボライトを行い、バーストB、バーストDを記録していく。
【0072】
この際、シームド方式と異なり、1回のサーボライトでは、1種類のバースト・パターンを記録し、一のバースト・パターンを記録する際に他のバースト・パターンを消去するトリミングを行わない。このように、一のバースト・パターンは、1回のサーボライトにより記録され、シームド方式のようにトリミングしないため、バースト・パターンに書き繋ぎができず(シームレス)、また、通常ライトヘッド112bの幅よりトラック幅Tw、トラックピッチTpの幅の方が大きいため、図13に示すシームド・サーボ・パターンと異なり、トラック幅Tw又はトラックピッチTp一杯にバースト・パターンが記録されないため、バーストAとバーストBとの間、バーストC、バーストDとの間にはギャップGが形成される。このようにして記録されたバースト・パターンをリードヘッドにより再生し、バーストAとバーストBとの信号振幅がつり合う位置をトラック中心Tcとしてヘッドが位置決めされる(図5(e))。
【0073】
なお、サーボトラックライト工程では、ライトヘッド112bが半トラックずつ半径方向にずらされサーボ・データが記録されていくが、バースト・パターンは重ね書きなしの1回の記録のみで記録されるため、各バースト・パターンのトラック幅方向の幅は、一定の幅、すなわち、ライトヘッド112bの幅となっている。ここで、サーボ・パターンが記録されたトラックにおいて、バーストAとバーストBの再生信号の振幅が同一となる位置(バランスする位置)をトラック中心Tcとし、隣接するトラック中心Tc間の距離をトラックピッチTpとする。また、隣接するトラック中心Tc間の中点をトラック境界Tbとし、隣接するトラック境界Tb間の距離をトラック幅Twとする。
【0074】
このバースト・パターンを含むバースト・データによりトラック幅Tw又はトラックピッチTpが決定されるが、トラック幅Twの少しのずれにより、HDDのライトヘッド112bがトラックにデータを記録又はリードヘッド112aがトラックからデータを再生する際のヘッドがアクセスするデータ位置が不正確になってしまう。この問題を回避するべく、HDD100の製造工程においては、このサーボ・データの記録工程の後、そのサーボ・データによって定まるトラック幅Twの良否又はトラックピッチTpのバランスの良否を検査するための欠陥トラック検出処理工程を有している。
【0075】
この検査工程であるが、本実施の形態においては各トラックのトラック幅Twを直接測定する。そして、検査工程でトラック幅が異常である欠陥トラックが検出された場合は、ディスク上に用意されている代替テーブル(Alternate Cylinder Table、以下、欠陥テーブルという。)に欠陥トラックを含むシリンダを欠陥シリンダとして登録する。HDD100は、磁気ディスク111の記録領域を使用する際、この欠陥テーブルを参照し、この欠陥テーブルに登録してあるシリンダをスキップしてアクセスする機能を有している。したがって、検出された欠陥トラックを欠陥テーブルに登録しておくことで、欠陥トラックに対してデータを記録することを回避することができる。
【0076】
なお、上記欠陥テーブルは、欠陥トラックのシリンダを欠陥シリンダとして登録するものであり、登録されている欠陥シリンダを使用不可とするものであるが、欠陥シリンダではなく、欠陥トラックを登録するテーブルとして持つようにしてもよいことは勿論である。
【0077】
ここで、本実施の形態におけるHDD100は、検査装置によらず、HDD100自身でサーボ・データを記録した後、この検査を装置自身が行うセルフテストを実行することができる。上述したように検査処理を実行する場合には、検査処理を開始するフラグがディスク111上にセットされており、電源がオンされると検査処理プログラム(Self Test Code)がディスク111から読み出され、AE113、R/Wチャネル123、HDC/MPU124を介して、RAM125上に読み込まれ、検査処理のプログラムが実行される。
【0078】
図6は、本実施の形態においては、図1に示すHDC/MPU124において実行される検査処理の機能ブロック図である。すなわち、HDD100のHDC/MPU124は、トラック幅異常検査処理部として機能する。図6に示すように、検査処理の機能としては、サーボ・データに含まれる、シームレス方式によりトリミングなしで記録されたバーストA〜Dにより位置決めされるヘッドによって再生されたバースト・パターンの再生信号(バースト信号)が図1に示すR/Wチャネル123を介して入力され、バーストA〜Dの信号振幅に基づき後述する比較値としての後述するAPB(A Plus B)を算出するAPB算出部211と、比較値に基づきトラック幅が異常であるか否かを判定するための基準値(Criteria)Crを算出する基準値算出部212と、基準値Crと、判定対象のトラックにおける比較値との比較結果に基づき、判定対象のトラックが欠陥トラックか否かを判定する欠陥トラック判定部213を有し、欠陥トラックと判定されたトラックは、欠陥テーブル214に登録される。
【0079】
上述したように、本実施の形態におけるバースト・パターンは、シームレス方式により記録されたバースト・パターンであるため、バーストAとバーストBとの間、バーストCとバーストDとの間にギャップGを有している。ヘッド素子部112(図1参照)は、記録用のライトヘッド112b(図5参照)及び再生用のリードヘッド112a(図4(b)参照)を有している。そして、ヘッド素子部112におけるリードヘッド112aによりバースト・パターンを再生し、この再生信号に基づきヘッドの位置決めを制御する。トラック中心Tcは、バーストAとバーストBの再生信号の振幅がバランスする(A=B)位置となる。
【0080】
バーストA及びバーストBを再生した振幅と、バーストC又はバーストDを再生した振幅とは等しくなり、バーストA〜Dの振幅をA〜Dとすると、(A+B)/C又は(A+B)/D(以下、これを(A+B)/(CorD)又はAPBという。)は、トラック幅が一定であれば、例えば1.0など、一定の値になる。なお、バーストCの振幅Cで除すか、バーストDの振幅Dで除すかは、偶数トラック(シリンダ)又は奇数トラック(シリンダ)で決まる。APB算出部211は、バースト信号が入力され、各トラックについて、このAPBを順次算出する。APBの算出は、記録面が複数あって、リードヘッド112aを複数有する場合には、例えば、一のシリンダについて全てのAPBを算出した後、次のシリンダのAPBを算出する。
【0081】
バーストA、バーストBの振幅の和A+Bは、トラック幅が一定であれば、一定の大きさになるものであるが、トラック幅が広くなると、バーストAとバーストBとの間のギャップ(間隙)が大きくなり、振幅の和A+Bが小さくなる。また、トラック幅が狭くなると、バーストAとバーストBとの間のギャップが小さくなり、振幅の和A+Bが大きくなる。また、トラック幅が更に狭くなり、バーストAとバーストBとが一部半径方向に重なった場合には、振幅の和A+Bは更に大きい値となる。すなわち、ギャップGの大きさは、トラック幅に応じて変動し、この変動が振幅の和A+Bに反映される。本実施の形態においては、これを利用してトラック幅を測定し、トラック幅の異常を検出するものである。
【0082】
図7及び図8は、異常なトラック幅となるバースト・パターンを示す図であって、図7は、正常なトラック幅より狭いトラック幅、図8は、正常なトラック幅より広いトラック幅となるバースト・パターンを示す図である。ここでは、正常なトラック幅の場合のバーストA、バーストBの振幅の和A+B=1.0とした場合について説明する。図4(b)に示すようにバーストAとバーストBとの間には本来ギャップGが存在するはずであるが、図7に示すように、バーストAとバーストBとが半径方向に一部重なって記録されてしまったような場合、すなわちトラック幅が狭くなってしまった場合、上記APBは、APB>1.0となり、正常な場合であるAPB=1.0より大きくなる。
【0083】
一方、図8に示すように、バーストAとバーストBとの半径方向の距離が離れ、本来のギャップGより大きくなってしまった場合、すなわちトラック幅が広くなってしまった場合、上記APBは、APB<1.0となり、正常な場合であるAPB=1.0より小さくなる。
【0084】
ここで、シームレス・バースト・パターンは、トリミングなしの1回のライト動作により重ね書きなしで記録されるため、バーストAとバーストBとが一部重複する場合があり、又はギャップが形成される場合があり、したがってAPBの値が変動する。これに対して、シームド・バースト・パターンである場合、サーボトラックライト工程において、ライトヘッドの半トラック送りが正確でなく、トラック幅が変動してしまった場合であっても、バーストAとバーストBとは図5に示すようにギャップGが形成されることはなく、また本図7に示すように、一部重複することもなく、APBによってはトラック幅の変化を測定することはできない。これに対し、シームレス・バースト・パターンであれば、バースト・パターンをオントラック状態で1回再生するのみで、APBからトラック幅の異常検出を可能とする。シームレス・バースト・パターンに本方法を適用すると、バーストAとバーストBとが同時に再生できる限り、すなわち、ギャップGの幅よりリードヘッド112aの幅が大きければトラック幅を測定することができる。
【0085】
こうして本検査処理においては、シームレス・バースト・パターンにおいて、オントラック上で測定した場合に、トラック幅又はピッチの変動に応じて変化する値であるAPBを、トラック幅又はトラックピッチが異常であるか否かを判定するための後述する基準値(Criteria)Crと比較することにより、トラック幅が正常か否かを判定する。例えば、判定対象のトラックの比較値APBが基準値Crから1割以上はずれた値である場合、当該判定対象のトラックは、トラック幅が異常と判断し、欠陥テーブルに登録することができる。
【0086】
基準値算出部212は、APB算出部211にて算出されたAPBに基づき基準値Crを算出するが、APBは、例えばディスクの内周側と外周側とではスキュー等により、その値が異なる。したがって、単純にある基準値、例えば全体のAPBを算出して求めた平均と、測定したAPBとを比較して当該平均値から外れるトラックをトラックピッチバランスが悪い欠陥トラックとして検出することは困難である。そこで、本実施の形態においては、判定対象のトラックにおけるAPBと比較する基準値を、判定対象のトラックの近傍のトラックであって、欠陥トラックを含まない所定数トラックのAPBを平均し、この平均値を基準値Crとして使用する。読み出されたバースト・パターンは、通常は、ヘッドの位置決め等に使用すると不要となるものであるが、本実施の形態においては、この基準値Crを求めるため、読み出されたバースト・パターンのデータを保持しておく機能を有している。
【0087】
具体的には、APB算出部211が算出した現在(判定対象)のトラックのAPBの基準値Crは、それ以前にAPB算出部211が算出した例えば10等のAPBの平均値とすることができる。したがって、この基準値Crは、判定対象のトラックの判定が終了する毎に逐次更新されていくこととなる。すなわち、トラックMを判定する場合に、例えばトラック(M−10)乃至トラック(M−1)のAPBの平均値を基準値Crとし、トラックMの判定が終了してトラック(M+1)の判定を実行する場合、トラックMが欠陥トラックでなければ、トラック(M−9)乃至トラックMのAPBの平均値を基準値とする。このように、判定が終了する毎に基準値(平均値)の再計算をして基準値Crを更新する。トラックMが欠陥トラックであれば、再計算せず、トラック(M−10)乃至トラック(M−1)のAPBの平均値(ものとの平均値)を基準値として使用したり、トラック(M−9)乃至トラック(M−1)の平均値を基準値として使用したりすればよい。
【0088】
また、判定対象のトラックが奇数である場合には、奇数トラックのAPBのみの平均をとり、判定対象のトラックが偶数である場合には、偶数トラックのAPBのみの平均をとったものを基準値Crとしてもよい。
【0089】
このように、比較値APBは、判定対象のトラックの場合は、基準値と比較してトラック幅が異常か否かを判定するための値(判定値)として使用され、判定後は、異常な値でない場合には、基準値を算出するための値として使用されることで、高効率に検査を行うことができる。
【0090】
欠陥トラック判定部213は、逐次更新される基準値Crと判定対象のトラックのバースト・パターン再生により得られるAPBとを比較し、判定対象のトラックのAPBが例えば基準値Crから1割以上外れる場合に、これを欠陥トラックと判定することができる。ここで欠陥トラックと判定されたトラックは、欠陥テーブルに登録される。欠陥テーブルは、ディスク111の所定の領域に書き込まれて保存される。
【0091】
HDD111の使用時には、この欠陥テーブルが参照され、欠陥テーブルに登録されているトラックを飛ばして欠陥トラック以外のトラックのみにアドレスが付され、欠陥トラックの使用を禁止することができる。ここで、本実施の形態においては、欠陥トラックが発見された場合には、そのシリンダを欠陥テーブルに登録し、シリンダごと使用禁止とする。一のシリンダにおいて欠陥トラックが発見された場合、他のトラックも欠陥トラックである場合が多いためである。なお、本実施の形態においては、全記録面に対して欠陥トラック検出処理を実行するため、欠陥トラックを含むシリンダを欠陥シリンダとして登録せず、欠陥トラックのみを登録するようにしてもよいことは勿論である。また、一の記録面のみ検査を実行し、欠陥トラックが発見されたトラックのシリンダを欠陥テーブルに登録するようにしてもよい。これにより、検査が高速化する。なお、検査処理により欠陥トラックとされるトラックは、数トラック程度であり、これらのトラック又はシリンダを使用禁止としても、記録容量にほとんど影響を及ぼすことはない。
【0092】
以下、本実施の形態における欠陥トラック検出処理方法について具体的に説明する。図9は、トラック幅に異常がある欠陥トラックを検出し、欠陥テーブルに登録する方法を示すブローチャートである。
【0093】
図9に示すように、先ずAPBの基準値Crの初期値をセットする(ステップS1)。上述した如く、判定対象のトラック近傍の数トラック分であって欠陥トラックを除くトラックのAPBの平均値を基準値Crとするが、測定開始時には、平均値を求めるAPBが存在しないため、先ずこの基準値を後述の方法にて初期化する。
【0094】
次に、M番目のトラックをシークし(ステップS2)、バーストA〜Dを再生し、それらバーストA〜Dの再生信号の振幅(バースト・データ)を収集する(ステップS3)。そして、収集したバースト・データに基づき、上述のAPB、すなわち(A+D)/(CorD)を算出する(ステップS4)。
【0095】
次に、求めたAPBと基準値Crを比較してトラックMが欠陥トラックか否かを判定する(ステップS7)。比較用の基準値Crは、例えば基準値×0.9などの最小値Cr_lowと、例えば基準値×1.1などの最大値Cr_highとの間の範囲に求めたAPBが含まれればそのトラックは欠陥トラックではないと判断することができる。そして、トラックM以前の所定数(=N)のトラックのAPBの平均を算出し、これを新たな基準値として元の基準値を更新する(ステップS8)。
一方、欠陥トラックであると判断された場合は、当該トラックMを欠陥テーブルに登録する(ステップS6)。なお、この場合は、基準値の更新は行わず、トラックMの判定に使用した基準値を次のトラックの判定に使用する。
【0096】
複数枚のディスクからなる場合は、次のヘッドがあるか否かを判定し(ステップS9)、全てのヘッドについて所定のトラック(シリンダ)の欠陥トラック判定が終了したら、次のトラック(シリンダ)の欠陥トラック判定を実行する(ステップS10)。すなわち、一のシリンダについて欠陥トラック判定が終了したら、次のシリンダについて欠陥トラック判定を実行し、全てのシリンダについて欠陥トラック判定が終了したら検査処理を終了する。
【0097】
次に、上述のステップS1における基準値の初期化の方法について説明する。検査開始時においては、最初のNトラック目までのAPBを有していないため、上述の方法にて基準値を算出することができない。また、最初のNトラック目までのAPBの算出が終了するまでは、上述の方法にて基準値を算出することはできない。そこで、本実施の形態においては、欠陥トラック判定を開始する前に予め基準値を求め、これを基準値として欠陥トラック判定処理を開始するものとする。なお、処理が開始された後は、得られたAPBにより、逐次基準値を更新してもよく、またNトラック目までは上記予め求めた基準値を使用してもよい。
【0098】
予め求める基準値としては、以下の方法がある。すなわち、先ず、欠陥トラック判定の開始位置近傍において、数トラック分のAPBを求める。この数トラック分のAPBは、例えばステップS8と同じNトラック分のAPBである。初期化用の基準値を求める際、それらのAPBが欠陥トラックではない正常なトラックから得られたものであるか否かは、例えば一端トラックにデータを記録して再生してみればよい。この際、バーストA、B、C、Dがある程度バランスしていて、隣のトラックと干渉しなければよく、記録して再生する処理(以下、ライト・リードという。)をすればこれを判定することができる。
【0099】
なお、上述のステップS8のように、基準値を逐次更新せず、全面においてライト・リードして基準値を得るようにすると、作業効率上問題がある上、ライト・リードすると外乱等により欠陥トラックであるか、外乱によるノイズであるのか判定することが困難となる。したがって、基準値Crは、APBを算出して逐次更新していく方法が最も効率がよい。
【0100】
図10、図11は、実際に欠陥トラック判定をした結果を示すグラフ図である。ここで、図10は、奇数シリンダであってシリンダ番号(CYL)2301乃至2397におけるAPBによる欠陥トラック判定結果を示し、図11は、奇数シリンダであって、シリンダ番号CLY1乃至110001における欠陥トラック判定結果を示す。また、図10及び図11においては、縦軸はAPB、すなわちバーストA〜Dの振幅をA〜Dで示した場合の(A+B)/(CorD)の値を示し、横軸はシリンダ番号を示す。また、いずれにおいても、ヘッドが4つ(記録面が4つ)のHDDについての検査結果を示す。ステップS8にて更新される基準値Crは、例えば、CLY2353の欠陥トラック判定に使用する場合、CYL2333〜CYL2351の奇数シリンダにおける5つのAPBの平均値Av_2353とすることができ、CLY2355の欠陥トラック判定に使用する場合、CYL2335〜CYL2353の奇数シリンダにおける5つのAPBの平均値Av_2355とすることができ、CLY2357の欠陥トラック判定に使用する場合、CYL2335〜CYL2353の奇数シリンダにおける5つのAPBの平均値Av_2357とすることができる。
【0101】
基準値は、判定対象のトラックより前に測定された連続するトラックのAPBの平均値とすることができるが、この図6に示すように、奇数トラックと偶数トラックとで、別個に用意することも可能である。奇数シリンダと偶数シリンダとでは、APBの算出の際に再生するバースト・パターンが、バーストC又はバーストDとなって異なるため、例えば奇数シリンダにおいて、APB=(A+B)/Cとする場合、基準値Crも判定対象の奇数シリンダより前の奇数シリンダから得られるAPBの平均値とする。これにより、連続するトラックのAPBの平均を基準値とするより更に正確な基準値を得ることができ、その基準値との比較を行うことで、より正確な判定を行うことができる。
【0102】
また、欠陥トラック判定に、例えば(A+B)の絶対値とすることも可能であるが、絶対値とすると振幅の値がばらつき、基準値を得ることが困難で、効率・精度が悪い場合があるため、本実施の形態のように、バーストC又はバーストDの振幅で除した値(APB)を使用することが好ましい。これにより、高精度な判定が可能である。
【0103】
また、ステップS7における欠陥トラックの判定において、基準値Crの最小値Cr_low乃至最大値Cr_highの範囲内のAPBを正常と判定するが、この最小値、最大値は、例えば上述のようにして得られた所定数分の平均値Av(=Cr)の0.9Cr、1.1Crとすることができる。すなわち、基準値Crから1割以上ずれた場合、欠陥トラックと判定するものである。このように、全トラックの平均値を基準値として比較するのではなく、局所的なトラックのAPBの平均値を基準値として、トラック間の相対的なずれの大きさΔが1割り以上である場合を欠陥トラックと判定する。これは、上述したように、外周(OD)側と内周(ID)側とではスキュー等によりAPBの値が異なること、また、欠陥トラック判定は、一のトラック近傍のトラック間におけるトラック幅の不一致を検出することを目的としているためである。すなわち、欠陥トラック検出処理は、全体のトラック幅の平均から外れるトラックを検出するのではなく、局所的な領域において、トラック幅が他のトラック幅と異なることによってリード・ライトの際に生じるエラー等を防止すべく、そのようなトラックを検出することを目的とする。よって、判定対象のトラック近傍の局所的なトラックのAPBの平均値を基準値とする必要があり、したがって、本実施の形態の如く、APBの判定とAPBの基準値の更新とを同時に行うことが、最も効率が高い方法となる。
【0104】
本実施の形態においては、サーボ・データによってヘッドが位置決め制御されるHDD100において、サーボ・データ記録後であって出荷前に行う欠陥トラックの検出、すなわち、トラック幅が正常であるか否かの検査処理をHDD100自身がサーボ・データを再生することで実行する。したがって、例えば実際にデータを記録し、再生する(ライト・リード)ことにより、欠陥トラックを検出する方法に比して格段に短時間で検査を終了することができると共に、リード・ライトによりトラック幅の異常か否かを判定すると、トラック幅が異常であるのか、外乱などによる影響によるライト時又はリード時のエラーなのかの判定ができず、検査結果の確実性に欠けるが、本実施の形態における検査処理は、データをライト・リードすることなく、バースト・パターンを再生してトラック幅が正常であるか否かを判定するので、正確な判定を行うことができる。
【0105】
また、シームレス・バースト・パターンであるため、オントラック状態でサーボ・パターンを再生してトラック幅の変動を測定することができ、例えば従来のように、ライト・リードしてオフトラックで2回サーボ・パターンを再生する方法に比して検査処理速度が格段に速い。欠陥トラック検出処理を短時間で行うことができるため、HDDの製造コストを低減し、生産性を飛躍的に向上させることができる。
【0106】
更に、検査処理を実行させるプログラムをディスク上に記録し、これを実行させるようにしたので、セルフテストが可能であり、検査処理のコストを更に低減させることができる。
【0107】
また、バースト・パターンから算出されるトラック幅に対応する値であるAPBが正常であるか否かを判定するための基準値Crは、判定対象のトラック近傍の平均値を逐次更新して求めることで、ある局所的なトラックにおいてトラック幅の異常がある場合、隣接するトラックにおいてトラック幅が1割以上変化する場合を的確に検出することができる。
【0108】
更に、HDD100は、検査処理の際は、外部の例えばPC等の検査装置に接続され、検査結果を出力することができる。検査装置においては、出力された検査結果を統計等することにより、HDDの更なる欠陥トラックの低減のために利用することができる。また、検査結果及び検査処理用のプログラムは、検査終了後もディスク111に記録された状態とすることができる。これにより、HDD100に不具合が生じた場合等において、ディスク111の検査処理の際のデータを読み出し、検証することができる。
【0109】
なお、本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。例えば、上述の実施の形態では、検査処理をソフトウェアの構成として説明したが、これに限定されるものではなく、検査処理における任意の処理をハードウェアの構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の実施の形態におけるHDDの概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態における磁気ディスク及びヘッド素子部の駆動機構の概略を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態における磁気ディスクの記録面の記録データの状態を模式的に示す図である。
【図4】(a)は、サーボ・データの一例を示す模式図、(b)は、シームレス方式のバーストA、B、C、Dを説明するための図である。
【図5】シームレス方式のサーボ・パターンの記録方法を示す模式図である。
【図6】本発明の実施の形態におけるHDDのHDC/MPUにおいて実行される検査処理の機能ブロック図である。
【図7】異常なトラック幅となるバースト・パターンを示す図であって、正常なトラック幅より狭いトラック幅を示す図である。
【図8】異常なトラック幅となるバースト・パターンを示す図であって、正常なトラック幅より広いトラック幅となるバースト・パターンを示す図である。
【図9】本発明の実施の形態におけるHDDにおいて、欠陥トラック検出し、欠陥テーブルに登録する方法を示すブローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態における検査方法により、実際に欠陥トラック判定をした結果を示すグラフ図である。
【図11】本発明の実施の形態における検査方法により、実際に欠陥トラック判定をした結果を示すグラフ図である。
【図12】(a)は、サーボ・データの一例を示す模式図、(b)は、シームド方式のバーストA、B、C、Dを説明するための図である。
【図13】シームド方式のサーボ・パターンの記録方法を示す模式図である。
【図14】特許文献1に記載の正常トラック幅の判定方法を説明するための図であって、バーストA〜Dがシームド・サーボ・パターンである場合を示す図である。
【図15】特許文献1に記載の方法により、ヘッド幅がトラック幅の50%未満のヘッドを使用してシームド・サーボ・パターンにおけるサーボセクタ幅を測定する方法を示す図である。
【図16】特許文献1に記載の正常トラック幅の判定方法を説明するための図であって、バーストA〜Dがシームレス・サーボ・パターンである場合を示す図である。
【符号の説明】
【0111】
112 ヘッド素子部、112b ライトヘッド、112a リードヘッド
120 回路基板、121 チャネル、121 信号処理回路
122 モータ・ドライバ・ユニット、123 チャネル、
201 スライダ、202 キャリッジ
211 APB算出部、212 基準値算出部
213 欠陥トラック判定部、214 欠陥テーブル
300 ヘッド素子部、300a リードヘッド、300b ライトヘッド
301 サーボ領域、302 データ領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともデータを再生するヘッドと、
前記ヘッドをトラック中心に位置決めする際に使用する第1及び第2のバースト・パターンを含むサーボ・データが記録されたディスクと、
前記ヘッドが1回で再生した第1及び第2のバースト・パターンの再生結果に基づき得られる比較値が所定範囲から外れる場合に、当該第1及び第2のバースト・パターンが共に記録された判定対象のトラックをトラック幅が異常である欠陥トラックとして検出する欠陥トラック検出部と
を有することを特徴とするディスク装置。
【請求項2】
前記欠陥トラック検出部は、前記第1のバースト・パターンの再生結果と第2のバースト・パターンの再生結果とがバランスする位置を前記トラック中心とし、前記トラック中心に位置決めされた前記ヘッドの再生結果から前記欠陥トラックを検出する
ことを特徴とする請求項1記載のディスク装置。
【請求項3】
前記第1及び第2のバースト・パターンは、トラック幅に拘わらずトラック幅方向の大きさが一定である
ことを特徴とする請求項1記載のディスク装置。
【請求項4】
前記第1及び第2のバースト・データは、トリミングなしで記録されたものである
ことを特徴とする請求項1記載のディスク装置。
【請求項5】
前記第1及び第2のバースト・パターンは、トラック幅方向にそのトラック幅に応じた間隙が形成さている
ことを特徴とする請求項1記載のディスク装置。
【請求項6】
前記比較値として算出する比較値算出部を有し、
前記欠陥トラック検出部は、トラック幅が異常であるか否かを判定するための基準値と判定対象のトラックにおける前記比較値との比較結果に基づき、前記判定対象のトラックが欠陥トラックか否かを判定する
ことを特徴とする請求項1記載のディスク装置。
【請求項7】
前記第1のバースト・パターンは、一のトラックにおける一方のトラック境界上に記録され、前記第2のバースト・パターンは、前記一のトラックにおける他方のトラック境界上に記録される
ことを特徴とする請求項1記載のディスク装置。
【請求項8】
前記ヘッドは、前記第1及び第2のバースト・パターンの再生信号の振幅が等しくなる位置に位置決めされる
ことを特徴とする請求項2記載のディスク装置。
【請求項9】
前記比較値算出部は、前記第1及び第2のバースト・パターンの再生信号の振幅の和に基づき前記比較値を算出する
ことを特徴とする請求項1記載のディスク装置。
【請求項10】
前記サーボ・データは、奇数トラック上に記録される第3のバースト・パターン及び偶数トラック上に記録される第4のバースト・パターンを含み、
前記比較値算出部は、前記第1及び第2のバースト・パターンと第3又は第4のバースト・パターンの再生結果に基づき前記比較値を算出する
ことを特徴とする請求項7記載のディスク装置。
【請求項11】
前記比較値算出部は、前記第1及び第2のバースト・パターンの再生信号の振幅の和を前記第3又は第4のバースト・パターンの再生信号の振幅で除した値を前記比較値とする
ことを特徴とする請求項10記載のディスク装置。
【請求項12】
前記比較値に基づき、前記所定範囲を決定する基準値を算出する基準値算出部を更に有する
ことを特徴とする請求項1記載のディスク装置。
【請求項13】
前記基準値算出部は、前記比較値算出部にて算出された前記比較値のうち、前記欠陥トラックを除く所定数のトラックの前記比較値の平均値を前記基準値とする
ことを特徴とする請求項11記載のディスク装置。
【請求項14】
前記基準値算出部は、前記判定対象のトラックが奇数トラックである場合、前記比較値算出部にて算出された前記比較値のうち、前記欠陥トラックを除く所定数の奇数トラックの前記比較値の平均値を前記基準値とし、前記判定対象のトラックが偶数トラックである場合、前記比較値算出部にて算出された前記比較値のうち、前記欠陥トラックを除く所定数の偶数トラックの前記比較値の平均値を前記基準値とする
ことを特徴とする請求項11記載のディスク装置。
【請求項15】
前記比較値に基づき、前記所定範囲を決定する基準値を算出する基準値算出部を更に有し、
前記基準値算出部は、前記判定対象のトラック近傍のトラックの前記比較値に基づき前記基準値を算出する
ことを特徴とする請求項1記載のディスク装置。
【請求項16】
前記比較値に基づき、前記所定範囲を決定する基準値を算出する基準値算出部を更に有し、
前記基準値算出部は、前記判定対象のトラックの判定後、前記判定結果に基づき前記基準値を更新する
ことを特徴とする請求項1記載のディスク装置。
【請求項17】
前記基準値算出部は、前記判定対象のトラックが欠陥トラックではない場合、当該判定対象のトラックを含む所定数のトラックの前記比較値から前記平均値を求め、前記基準値を更新する
ことを特徴とする請求項16記載のディスク装置。
【請求項18】
前記欠陥トラック検出部は、前記欠陥トラックを欠陥テーブルに登録する
ことを特徴とする請求項1記載のディスク装置。
【請求項19】
前記欠陥テーブルを参照して前記ヘッドに対するデータの記録を制御する書き込み制御部を更に有し、
書き込み制御部は、前記欠陥テーブルを参照し前記欠陥トラックに対する書き込みを禁止する
ことを特徴とする請求項18記載のディスク装置。
【請求項20】
前記欠陥トラック検出部は、前記欠陥トラックを有するシリンダを欠陥シリンダとして欠陥テーブルに登録する
ことを特徴とする請求項19記載のディスク装置。
【請求項21】
前記ディスクは、前記欠陥テーブルを有する
ことを特徴とする請求項18記載のディスク装置。
【請求項22】
トラック幅に拘わらずトラック幅方向の大きさが一定の大きさで記録された第1及び第2のバースト・パターンを含み、前記第1のバースト・パターンの再生結果と前記第2のバースト・パターンの再生結果とがバランスする位置がトラック中心とされるサーボ・データが記録されたディスクと、
少なくともデータを再生するヘッドと、
前記ヘッドの1回の再生により前記第1及び第2のバースト・パターンが共に再生される位置にて再生された再生結果から得られる比較値が所定範囲から外れる欠陥トラックを検出する欠陥トラック検出部と
を有することを特徴とするディスク装置。
【請求項23】
前記欠陥トラック検出部は、前記トラック中心に位置決めされた前記ヘッドの再生結果から得られる前記比較値に基づき前記欠陥トラックを検出する
ことを特徴とする請求項22記載のディスク装置。
【請求項24】
前記第1及び第2のバースト・データは、トリミングなしで記録されたものである
ことを特徴とする請求項22記載のディスク装置。
【請求項25】
前記第1及び第2のバースト・パターンは、トラック幅方向にそのトラック幅に応じた間隙が形成さている
ことを特徴とする請求項22記載のディスク装置。
【請求項26】
少なくともデータを再生するヘッドと、前記ヘッドをトラック中心に位置決めする際に使用する第1及び第2のバースト・パターンを含むサーボ・データが記録されたディスクとを具備するディスク装置の製造方法において、
前記ヘッドの1回のリードによる第1及び第2のバースト・パターンの再生結果に基づき比較値を算出し、
前記比較値が所定範囲から外れる場合に、当該第1及び第2のバースト・パターンが共に記録された判定対象のトラックを欠陥トラックとして検出し、
前記欠陥トラックを予め使用不可とする
ことを特徴とするディスク装置の製造方法。
【請求項27】
前記欠陥テーブルを前記ディスクの所定領域に書き込み前記欠陥トラックを予め使用不可とする
ことを特徴とする請求項26記載のディスク装置の製造方法。
【請求項28】
前記ディスクにサーボ・データを記録し、
前記記録したサーボ・データを再生して前記欠陥トラックを検出し、検出した前記欠陥トラックを予め使用不可とする
ことを特徴とする請求項27記載のディスク装置の製造方法。
【請求項29】
前記第1及び第2のバースト・パターンがトラック幅に拘わらずトラック幅方向の大きさが一定となるよう前記サーボ・データを記録する
ことを特徴とする請求項28記載のディスク装置。
【請求項30】
前記サーボ・データを記録する際、前記第1及び第2のバースト・データをトリミングなしで記録する
ことを特徴とする請求項28記載のディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−12353(P2006−12353A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−191183(P2004−191183)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(503116280)ヒタチグローバルストレージテクノロジーズネザーランドビーブイ (1,121)
【Fターム(参考)】