ディスク装置
【課題】本発明は、上記問題に鑑みて為されたものであり、記録ディスクの回転加速中における静音化を実現するディスク装置を提供することをその目的の一つとする。
【解決手段】ハードディスク装置1Aは、ボイスコイルモータVCMに生じている逆起電圧をドライバ72により監視することによって装置筐体2に生じている振動が所定レベル以上であることを検知すると、スピンドルモータSPMへ付与する駆動信号の状態を、電流レベルがより低い状態や波形がより円滑な状態に切替えることによって、装置筐体2に生じる振動を低減する。
【解決手段】ハードディスク装置1Aは、ボイスコイルモータVCMに生じている逆起電圧をドライバ72により監視することによって装置筐体2に生じている振動が所定レベル以上であることを検知すると、スピンドルモータSPMへ付与する駆動信号の状態を、電流レベルがより低い状態や波形がより円滑な状態に切替えることによって、装置筐体2に生じる振動を低減する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスク装置等のディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハードディスク装置等のディスク装置は、コンピュータのみならず、家庭用電化製品などの分野にも適用されることがあり、静音性が求められるようになってきている。
【特許文献1】特開平10−172231号公報
【特許文献2】特開2002−300793号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、ディスク装置は、スピンドルモータによって記録ディスクを静止状態から所定回転速度にまで加速させる回転加速中(いわゆるスピンアップ時)に、スピンドルモータの回転に起因する振動によって特に騒音を生じやすい。具体的には、記録ディスクを静止状態から回転させ始める際には、回転機構に働く摩擦が変動することから回転が不安定となりやすく、騒音を生じやすい。また、ある回転速度領域では、スピンドルモータの回転に起因する振動がディスク装置の構造共振を引き起こすこととなって、騒音を生じやすい。
【0004】
特許文献1には、スピンドルの回転周波数の波形を生成し、生成波形から得られる回転速度に応じてスピンドルの回転を制御する技術が開示されている。また、特許文献2には、低騒音を優先させる場合にはスピンドルの駆動制御を切り替える技術が開示されている。しかしながら、スピンアップ時の静音化対策は、特には為されていない。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みて為されたものであり、記録ディスクの回転加速中における静音化を実現するディスク装置を提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のディスク装置は、記録ディスクを回転させるスピンドルモータと、装置筐体の振動を検知する検知デバイスと、記録ディスクの回転加速中、検知デバイスが所定レベル以上の振動を検知した場合に、スピンドルモータへ付与する駆動信号の状態を装置筐体の振動がより少なくなる状態へと切替える制御デバイスと、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記ディスク装置において、検知デバイスは、装置筐体に含まれるスピンドルモータとは別のモータに生じる逆起電圧を監視することにより、装置筐体の振動を検知する。
【0008】
上記ディスク装置において、制御デバイスは、スピンドルモータへ付与する駆動信号の電流レベルをより低い状態へと切替える。
【0009】
上記ディスク装置において、制御デバイスは、スピンドルモータへ付与する駆動信号の波形をより円滑な状態へと切替える。
【0010】
また、本発明のディスク装置は、記録ディスクを回転させるスピンドルモータと、装置筐体の振動が所定レベル以上となる回転速度領域を記憶している記憶デバイスと、記録ディスクの回転加速中、スピンドルモータの回転速度が回転速度領域に在る場合に、スピンドルモータへ付与する駆動信号の状態を装置筐体の振動がより少なくなる状態へと切替える制御デバイスと、を備えることを特徴とする。
【0011】
上記ディスク装置において、装置筐体の振動を検知する検知デバイスを備え、記憶デバイスに記憶されている回転速度領域は、検知デバイスが所定レベル以上の振動を検知した場合に更新される。
【発明の効果】
【0012】
本発明のディスク装置は、記録ディスクの回転加速中において、装置筐体の振動が所定レベル以上となることを防止するようにスピンドルモータへ駆動信号を付与することから、記録ディスクの回転加速中における静音化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のディスク装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、ここでは、本発明をハードディスク装置に適用した例について説明しているが、これに限らず、光ディスク装置など他のディスク装置にも適用することができる。
【0014】
本発明のディスク装置の構成について説明する。図1は、第1ないし第3実施形態に係るハードディスク装置1(1A,1B,1C)の断面構造の概略を表す図である。ハードディスク装置1は、装置筐体2の内部に、磁気記録ディスク6と、スピンドルモータSPMと、磁気ヘッドアッセンブリ5と、ボイスコイルモータVCMと、が納められている。
【0015】
磁気記録ディスク6は、表面に記録領域を有しており、磁気ヘッドアッセンブリ5の先端に設けられた磁気ヘッドによりデータが読み書きされる。この磁気ヘッドアッセンブリ5は、回動可能に支持されており、ボイスコイルモータVCMによって回転駆動されることで、磁気ヘッドが磁気記録ディスク6の径方向に移動する。また、磁気記録ディスク6は、DCブラシレスモータ等のモータからなるスピンドルモータSPMによって回転駆動される。
【0016】
図2は、ハードディスク装置1の動作を制御する制御デバイス7(7A,7B,7C)の構成を表すブロック図である。この制御デバイス7は、装置筐体2の外側または内側に設置されている。制御デバイス7は、処理部71(71A,71B,71C)と、ドライバ72と、メモリ73と、アンプ74と、を備える。
【0017】
処理部71は、CPU等で構成されている。メモリ73は、処理部71の動作に必要なプログラムやデータを格納しているフラッシュROMや、処理部71のワークメモリとされるRAMなどを有する。
【0018】
ドライバ72は、処理部71から入力される命令に従って、ボイスコイルモータVCMおよびスピンドルモータSPMの駆動制御を行う。
【0019】
アンプ74は、処理部71から入力される信号を増幅して磁気ヘッドへ出力する。また、このアンプ74は、磁気ヘッドから出力される信号を増幅して処理部71へ出力する。
【0020】
処理部71は、ホスト側から入力されるデータをアンプ74へ出力するとともに、データの書き込み位置に磁気ヘッドを移動させるようドライバ72を制御する。また、処理部71は、データの読み出し位置に磁気ヘッドを移動するようドライバ72を制御するとともに、アンプ74からデータの入力を受けてホスト側へ出力する。
【0021】
本発明のディスク装置の動作について説明する。なお、第1ないし第3実施形態に係るハードディスク装置1A,1B,1Cは、上記のように構成が共通するものの、その動作がそれぞれ異なっている。すなわち、制御デバイス7A,7B,7Cに含まれる処理部71A,71B,71Cを動作させるためのプログラムがそれぞれ異なっている。
【0022】
図11は、スピンドルモータSPMによって磁気記録ディスク6を静止状態から所定回転速度にまで加速させる回転加速中(いわゆるスピンアップ時)において、後述する処理を行わなかったとした場合に装置筐体2に生じる振動の時間的変化を概略的に表すグラフである。
【0023】
具体的には、磁気記録ディスク6を静止状態から回転させ始める際(P1付近)には、スピンドルモータSPMとの間に働く摩擦が変動することから回転が不安定となって、振動が他の領域よりも大きくなっている。また、ある回転速度領域となる際(P2付近)には、スピンドルモータSPMの回転に起因する振動が装置筐体2の構造共振を引き起こすことから、振動が他の領域よりも大きくなっている。これらのような大きな振動によって騒音が生じることになる。
【0024】
そこで、第1ないし第3実施形態のハードディスク装置1A,1B,1Cでは、静音化を実現するべく、磁気記録ディスク6のスピンアップ時に生じる大きな振動を低減する処理を行っている。ここで、第1ないし第3実施形態ハードディスク装置1A,1B,1Cでは、振動を低減するために行う処理がそれぞれ異なる。以下、それぞれについて説明する。
【0025】
[第1実施形態]
図3に、第1実施形態のハードディスク装置1Aの動作を表すフローチャートを示す。制御デバイス7Aの処理部71Aは、装置筐体2に生じている振動が所定レベル以上であることをドライバ72を経由して検知すると(S11:YES)、スピンドルモータSPMへ付与する駆動信号の状態を装置筐体2の振動がより少なくなる状態へと切替える(S2)。ここで、閾値となる振動レベルは、求められる静粛性に応じて適宜定めることができる。
【0026】
ステップS11において、装置筐体2の振動の検知は、装置筐体2に納められているスピンドルモータSPMとは別のモータに生じている逆起電圧を監視することによって行うことができる。ここでは、ボイスコイルモータVCMに生じている逆起電圧をドライバ72により監視している。すなわち、ドライバ72が検知デバイスとなる。
【0027】
すなわち、スピンドルモータSPMの回転に起因して装置筐体2に振動が生じると、その中に納められているボイスコイルモータVCMにも振動が生じ、この振動がボイスコイルモータVCMに生じている逆起電圧に影響を及ぼすことから、この逆起電圧を監視することによって装置筐体2の振動レベルを検知することができる。
【0028】
また、処理部71Aは、監視している逆起電圧の複数のサンプルポイントから装置筐体2に生じている振動の変化率を求めて、この変化率から振動が所定レベル以上となることを事前に検知するようにしても良い。
【0029】
なお、このようにボイスコイルモータVCMに生じている逆起電圧を利用する態様に限らず、装置筐体2の振動を検知する振動センサを検知デバイスとして別に設けて、処理部71Aに入力させるようにしても良い。
【0030】
次に、ステップS2における、スピンドルモータSPMへ付与する駆動信号の状態の切替えについて説明する。ここでは、スピンドルモータSPMへ付与する駆動信号の状態を、例えば、電流レベルがより低い状態や波形がより円滑な状態に切替えることによって、装置筐体2に生じる振動を低減する。
【0031】
更に詳しくは、スピンドルモータSPMへ付与する駆動信号の状態の切替えは、回転速度などのスピンドルモータSPMの動作状況に応じて切替えの態様が異なる。駆動信号の状態の切替えは、例えば、メモリ73に、切替えるべき駆動信号のパラメータを格納しておき、処理部71Aが、そのパラメータを適用することによって行うことができる。
【0032】
図6に、スピンアップ時におけるスピンドルモータSPMの回転速度の時間的変化の例を表すグラフを示す。スピンドルモータSPMへ付与する駆動信号は、第1の動作状況,第2の動作状況,第3の動作状況という3つの動作状況に応じて状態が切替えられる。以下、各々の動作状況における駆動信号の状態の切替えについて説明する。
【0033】
第1の動作状況は、磁気記録ディスク6を静止状態から回転させ始める際に、スピンドルモータSPMの回転が所定回数に達するまでの動作状況である。ここでは、逆起電圧によりロータの位置を検出しながら、ロータを一定量回転させる駆動信号をロータの位置に応じて順次スイッチしていく制御(例えば、3相モータにおける120°通電矩形波駆動)が行われている。この制御は、駆動信号のスイッチが所定回数行われると終了する。
【0034】
この第1の動作状況下では、駆動信号の電流レベルを下げることによって装置筐体2に生じる振動を低減する。図7に、第1の動作状況での駆動信号の切替えについての説明図を示す。具体的には、第1の動作状況において、駆動信号は、ロータの位置を検出するための位置検出相Tsとロータにトルクを付加するための電流供給相Tdとが交互に現れる形となっている。図は、スピンドルモータSPMにおける複数の相(例えばUVW相)の1つの相に対して通電される駆動信号の概略を表す。位置検出相Tsは、逆起電圧を検知するために他の相との間で通電が行われる突状の部分を有している。すなわち、位置検出相Tsでは、ある相と相の間(例えばU相とV相)に電流を流すことによって、残りの相(例えばW相)とセンタータップ(中性点)の間に出現する逆起電圧に基づいて位置検出を行う。そのため、処理部71Aは、位置検出相Tsについて、逆起電圧を検出するために流す電流(突状の部分)を減らすべく時間間隔を小さくすることによって駆動信号の電流レベルを下げる。また、電流供給層Tdについて、ドライバ72における電流の設定値を下げることによってドライバ72から出力される駆動信号の電流レベルを下げるようにしても良い。
【0035】
第2の動作状況は、第1の動作状況の後、スピンドルモータSPMの回転が所定回転速度に達するまでの動作状況である。ここでは、ロータの回転を高回転速度まで引き上げるために周波数を漸増させていく制御が行われている。この第2の動作状況下では、駆動信号の電流レベルを下げることによって装置筐体2に生じる振動を低減する。図8に、第2の動作状況での駆動信号の切替えについての説明図を示す。具体的には、第2の動作状況において、処理部71Aは、ドライバ72における電流の設定値を下げることによってドライバ72から出力される駆動信号の電流レベルを下げる。また、ドライバ72から出力される駆動信号のデューティ比(振幅が0ではない部分の時間割合)を下げることによって全体の電流値を下げて、静音化を図るようにしても良い。
【0036】
第3の動作状況は、第2の動作状況の後、スピンアップが終了するまでの動作状況である。ここでは、第2の動作状況の場合と同様に、ロータの回転を高回転速度まで引き上げるために周波数を漸増させていく制御が行われている。この第3の動作状況下では、駆動信号の波形を円滑化することによって装置筐体2に生じる振動を低減する。図9に、第3の動作状況での駆動信号の切替えについての説明図を示す。具体的には、第3の動作状況において、処理部71Aは、ドライバ72から出力される駆動信号をハードスイッチング(矩形波の駆動信号)からソフトスイッチング(正弦波の駆動信号)に切替えることによって波形を円滑化する。また、ソフトスイッチングにおける駆動信号の波形は、例えば、矩形波の角が丸みを帯びたように円滑化された波形であっても良い。
【0037】
ここで、第2の動作状況と第3の動作状況とで駆動信号の状態の切替えの方法が変わるのは、回転速度が低いままソフトスイッチングに切替えると、制御が十分に安定しないからである。なお、第2の動作状況から第3の動作状況へは、ドライバ72から得られる位相情報に基づいて、ロータの回転速度が所定値に達したことを処理部71Aが検知した場合に移行する。
【0038】
以上のようにして切替えた駆動信号の状態は、所定時間が経過したら、若しくは、装置筐体2に生じている振動が所定レベルを下回ったら、元に戻すようにする。これにより、装置筐体2に生じる振動が大きくなる状況に対して、適切に振動を低減させることができる。または、切替えた状態のままスピンアップを継続しても良い。これにより、例えば装置筐体2に生じる振動が何度も大きくなってしまうような場合に、駆動信号の状態を何度も切替えることなく安定してスピンアップを行うことができる。
【0039】
なお、切替える駆動信号の状態は、複数段階設けておくことができる。例えば、駆動信号における電流レベルの低減の程度や波形の円滑化の程度を、検知した装置筐体2の振動のレベルに応じて変えるようにすることができる。また、装置筐体2の振動が所定レベル以上となる度に、駆動信号における電流レベルの低減の程度や波形の円滑化の程度を段階的に変えていくようにすることもできる。これらのようにすることで、装置筐体2に生じる振動のレベルに応じて、振動を低減する程度を適切に変えることができる。これらは、メモリ73に、複数の駆動信号のパラメータが記述されたテーブルを格納しておき、処理部71Aが、そのテーブルから適切なパラメータを選択するようにすることで実現できる。
【0040】
具体的には、上述した第1の動作状況であれば、位置検出相Tsの時間間隔を段階的に小さくしたり、電流供給層Tdの電流の設定値を段階的に小さくすることで、装置筐体2に生じる振動をより低減することができる。また、上述した第2の動作状況であれば、電流の設定値を段階的に小さくすることで、装置筐体2に生じる振動をより低減することができる。また、上述した第3の動作状況であれば、図10に示すように、正弦波の立ち上がり部分(振幅が0から立ち上がる部分)の傾きが段階的に小さくなるようにする(例えば、逆起電圧を検知するために振幅が0である部分の時間幅を段階的に小さくし、不連続性の少ない正弦波により近似させる)ことで、装置筐体2に生じる振動をより低減することができる。
【0041】
[第2実施形態]
図4に、第2実施形態のハードディスク装置1Bの動作を表すフローチャートを示す。なお、第1実施形態と重複するステップについては、同じ符号を付すことで詳細な説明を省略する。制御デバイス7Bの処理部71Bは、装置筐体2の振動が所定レベル以上となる回転速度領域に、スピンドルモータSPMの回転速度が在る場合に(S21:YES)、スピンドルモータSPMへ付与する駆動信号の状態を装置筐体2の振動がより少なくなる状態へと切替える(S2)。
【0042】
制御デバイス7Bの処理部71Bは、ドライバ72によりスピンドルモータSPMから検出される信号に基づいてスピンドルモータSPMの回転速度を監視していることから、ステップS21では、装置筐体2の振動が所定レベル以上となる回転速度領域に、監視している現在の回転速度が含まれるか否かの判断を行う。
【0043】
制御デバイス7Bのメモリ73(記憶デバイス)には、装置筐体2の振動が所定レベル以上となる回転速度領域が予め記憶されている。
【0044】
この回転速度領域は、例えば、製造工程等においてスピンアップ時の装置筐体2の振動を測定することにより求めてメモリ73に記憶させておくことができる。
【0045】
また、メモリ73に記憶されている回転速度領域を書換え可能として、処理部71Bが、スピンアップ時に装置筐体2の振動が所定レベル以上となったことを検知した場合に、メモリ73に記憶されている回転速度領域を更新するようにすることで、次回以降のスピンアップ時における装置筐体2に生じる振動を低減することができる。
【0046】
ここで、装置筐体2に生じる振動の検知は、上述したように、ボイスコイルモータVCMに生じている逆起電圧をドライバ72(検知デバイス)により監視することによって行うことができる。
【0047】
ステップS2における、スピンドルモータSPMへ付与する駆動信号の状態の切替えは、上述したように、スピンドルモータSPMへ付与する駆動信号の状態を、例えば、電流レベルがより低い状態や波形がより円滑な状態に切替えるようにすることができる。
[第3実施形態]
【0048】
図5に、第3実施形態のハードディスク装置1Cの動作を表すフローチャートを示す。なお、第1および第2実施形態と重複するステップについては、同じ符号を付すことで詳細な説明を省略する。制御デバイス7Cの処理部71Cは、装置筐体2の振動が所定レベル以上となる回転速度領域に、スピンドルモータSPMの回転速度が在る場合に(S21:YES)、スピンドルモータSPMへ付与する駆動信号の状態を装置筐体2の振動がより少なくなる状態へと切替えるとともに(S2)、その後、装置筐体2に生じている振動が所定レベル以上であることをドライバ72経由で検知すると(S11:YES)、スピンドルモータSPMへ付与する駆動信号の状態を装置筐体2の振動がより少なくなる状態へと切替える(S2)。
【0049】
すなわち、制御デバイス7Cの処理部71Cは、スピンアップ時に最初に生じる所定レベル以上の振動に対しては、第2実施形態の如く、過去のスピンアップ時の振動レベルに基づいて駆動信号の状態を切替え、その後に生じる所定レベル以上の振動に対しては、第1実施形態の如く、検知している振動レベルに基づいて駆動信号の状態を切替える。
【0050】
図11に示すように、スピンアップ時において騒音が問題となる箇所は、主に、磁気記録ディスク6を静止状態から回転させ始める際(P1付近)と、スピンドルモータSPMの回転に起因する振動が装置筐体2の構造共振を引き起こす際(P2付近)であることから、上記のように制御デバイス7Cの処理部71Cが制御を行うことによって、P1付近の振動に対しては、過去のスピンアップ時の振動レベルに基づいて駆動信号の状態を切替え、P2付近の振動に対しては、検知している振動レベルに基づいて駆動信号の状態を切替えるようにすることができる(グラフ中の破線付近に閾値を設けた場合)。
【0051】
これによると、スピンドルモータSPMの回転に起因する振動が装置筐体2の構造共振を引き起こす際(P2付近)の振動は、装置が固定されている場合など周囲の環境によって、発生する回転速度領域が変化することから、振動レベルを検知しながら所定レベル以上となったときに駆動信号の状態を切替えるようにすることで、構造共振を引き起こす振動が発生する回転速度領域が変化したとしても適切に振動を低減することができる。
【0052】
これに対し、磁気記録ディスク6を静止状態から回転させ始める際(P1付近)の振動は、発生する回転速度やタイミングがおおよそ決まっていることから、過去のスピンアップ時に装置筐体2の振動が所定レベル以上になった回転速度領域において駆動信号の状態を切替えるようにすることで、回転の初期段階については後々まで安定して振動を低減させておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】ハードディスク装置の断面構造の概略を表す図である。
【図2】ハードディスク装置の動作を制御する制御デバイスの構成を表すブロック図である。
【図3】第1実施形態のハードディスク装置の動作を表すフローチャートである。
【図4】第2実施形態のハードディスク装置の動作を表すフローチャートである。
【図5】第3実施形態のハードディスク装置の動作を表すフローチャートである。
【図6】スピンアップ時におけるスピンドルモータの回転速度の時間的変化の例を表すグラフである。
【図7】第1の動作状況での駆動信号の切替えについての説明図である。
【図8】第2の動作状況での駆動信号の切替えについての説明図である。
【図9】第3の動作状況での駆動信号の切替えについての説明図である。
【図10】第3の動作状況での駆動信号の切替えを段階的に行う場合についての説明図である。
【図11】スピンアップ時に装置筐体に生じる振動の時間的変化を概略的に表すグラフである。
【符号の説明】
【0054】
1A,1B,1C ハードディスク、2 装置筐体、5 磁気ヘッドアッセンブリ、6 磁気記録ディスク、7A,7B,7C 制御デバイス、71A,71B,71C 処理部、72 ドライバ、73 メモリ、74 アンプ、SPM スピンドルモータ、VCM ボイスコイルモータ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスク装置等のディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハードディスク装置等のディスク装置は、コンピュータのみならず、家庭用電化製品などの分野にも適用されることがあり、静音性が求められるようになってきている。
【特許文献1】特開平10−172231号公報
【特許文献2】特開2002−300793号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、ディスク装置は、スピンドルモータによって記録ディスクを静止状態から所定回転速度にまで加速させる回転加速中(いわゆるスピンアップ時)に、スピンドルモータの回転に起因する振動によって特に騒音を生じやすい。具体的には、記録ディスクを静止状態から回転させ始める際には、回転機構に働く摩擦が変動することから回転が不安定となりやすく、騒音を生じやすい。また、ある回転速度領域では、スピンドルモータの回転に起因する振動がディスク装置の構造共振を引き起こすこととなって、騒音を生じやすい。
【0004】
特許文献1には、スピンドルの回転周波数の波形を生成し、生成波形から得られる回転速度に応じてスピンドルの回転を制御する技術が開示されている。また、特許文献2には、低騒音を優先させる場合にはスピンドルの駆動制御を切り替える技術が開示されている。しかしながら、スピンアップ時の静音化対策は、特には為されていない。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みて為されたものであり、記録ディスクの回転加速中における静音化を実現するディスク装置を提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のディスク装置は、記録ディスクを回転させるスピンドルモータと、装置筐体の振動を検知する検知デバイスと、記録ディスクの回転加速中、検知デバイスが所定レベル以上の振動を検知した場合に、スピンドルモータへ付与する駆動信号の状態を装置筐体の振動がより少なくなる状態へと切替える制御デバイスと、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記ディスク装置において、検知デバイスは、装置筐体に含まれるスピンドルモータとは別のモータに生じる逆起電圧を監視することにより、装置筐体の振動を検知する。
【0008】
上記ディスク装置において、制御デバイスは、スピンドルモータへ付与する駆動信号の電流レベルをより低い状態へと切替える。
【0009】
上記ディスク装置において、制御デバイスは、スピンドルモータへ付与する駆動信号の波形をより円滑な状態へと切替える。
【0010】
また、本発明のディスク装置は、記録ディスクを回転させるスピンドルモータと、装置筐体の振動が所定レベル以上となる回転速度領域を記憶している記憶デバイスと、記録ディスクの回転加速中、スピンドルモータの回転速度が回転速度領域に在る場合に、スピンドルモータへ付与する駆動信号の状態を装置筐体の振動がより少なくなる状態へと切替える制御デバイスと、を備えることを特徴とする。
【0011】
上記ディスク装置において、装置筐体の振動を検知する検知デバイスを備え、記憶デバイスに記憶されている回転速度領域は、検知デバイスが所定レベル以上の振動を検知した場合に更新される。
【発明の効果】
【0012】
本発明のディスク装置は、記録ディスクの回転加速中において、装置筐体の振動が所定レベル以上となることを防止するようにスピンドルモータへ駆動信号を付与することから、記録ディスクの回転加速中における静音化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のディスク装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、ここでは、本発明をハードディスク装置に適用した例について説明しているが、これに限らず、光ディスク装置など他のディスク装置にも適用することができる。
【0014】
本発明のディスク装置の構成について説明する。図1は、第1ないし第3実施形態に係るハードディスク装置1(1A,1B,1C)の断面構造の概略を表す図である。ハードディスク装置1は、装置筐体2の内部に、磁気記録ディスク6と、スピンドルモータSPMと、磁気ヘッドアッセンブリ5と、ボイスコイルモータVCMと、が納められている。
【0015】
磁気記録ディスク6は、表面に記録領域を有しており、磁気ヘッドアッセンブリ5の先端に設けられた磁気ヘッドによりデータが読み書きされる。この磁気ヘッドアッセンブリ5は、回動可能に支持されており、ボイスコイルモータVCMによって回転駆動されることで、磁気ヘッドが磁気記録ディスク6の径方向に移動する。また、磁気記録ディスク6は、DCブラシレスモータ等のモータからなるスピンドルモータSPMによって回転駆動される。
【0016】
図2は、ハードディスク装置1の動作を制御する制御デバイス7(7A,7B,7C)の構成を表すブロック図である。この制御デバイス7は、装置筐体2の外側または内側に設置されている。制御デバイス7は、処理部71(71A,71B,71C)と、ドライバ72と、メモリ73と、アンプ74と、を備える。
【0017】
処理部71は、CPU等で構成されている。メモリ73は、処理部71の動作に必要なプログラムやデータを格納しているフラッシュROMや、処理部71のワークメモリとされるRAMなどを有する。
【0018】
ドライバ72は、処理部71から入力される命令に従って、ボイスコイルモータVCMおよびスピンドルモータSPMの駆動制御を行う。
【0019】
アンプ74は、処理部71から入力される信号を増幅して磁気ヘッドへ出力する。また、このアンプ74は、磁気ヘッドから出力される信号を増幅して処理部71へ出力する。
【0020】
処理部71は、ホスト側から入力されるデータをアンプ74へ出力するとともに、データの書き込み位置に磁気ヘッドを移動させるようドライバ72を制御する。また、処理部71は、データの読み出し位置に磁気ヘッドを移動するようドライバ72を制御するとともに、アンプ74からデータの入力を受けてホスト側へ出力する。
【0021】
本発明のディスク装置の動作について説明する。なお、第1ないし第3実施形態に係るハードディスク装置1A,1B,1Cは、上記のように構成が共通するものの、その動作がそれぞれ異なっている。すなわち、制御デバイス7A,7B,7Cに含まれる処理部71A,71B,71Cを動作させるためのプログラムがそれぞれ異なっている。
【0022】
図11は、スピンドルモータSPMによって磁気記録ディスク6を静止状態から所定回転速度にまで加速させる回転加速中(いわゆるスピンアップ時)において、後述する処理を行わなかったとした場合に装置筐体2に生じる振動の時間的変化を概略的に表すグラフである。
【0023】
具体的には、磁気記録ディスク6を静止状態から回転させ始める際(P1付近)には、スピンドルモータSPMとの間に働く摩擦が変動することから回転が不安定となって、振動が他の領域よりも大きくなっている。また、ある回転速度領域となる際(P2付近)には、スピンドルモータSPMの回転に起因する振動が装置筐体2の構造共振を引き起こすことから、振動が他の領域よりも大きくなっている。これらのような大きな振動によって騒音が生じることになる。
【0024】
そこで、第1ないし第3実施形態のハードディスク装置1A,1B,1Cでは、静音化を実現するべく、磁気記録ディスク6のスピンアップ時に生じる大きな振動を低減する処理を行っている。ここで、第1ないし第3実施形態ハードディスク装置1A,1B,1Cでは、振動を低減するために行う処理がそれぞれ異なる。以下、それぞれについて説明する。
【0025】
[第1実施形態]
図3に、第1実施形態のハードディスク装置1Aの動作を表すフローチャートを示す。制御デバイス7Aの処理部71Aは、装置筐体2に生じている振動が所定レベル以上であることをドライバ72を経由して検知すると(S11:YES)、スピンドルモータSPMへ付与する駆動信号の状態を装置筐体2の振動がより少なくなる状態へと切替える(S2)。ここで、閾値となる振動レベルは、求められる静粛性に応じて適宜定めることができる。
【0026】
ステップS11において、装置筐体2の振動の検知は、装置筐体2に納められているスピンドルモータSPMとは別のモータに生じている逆起電圧を監視することによって行うことができる。ここでは、ボイスコイルモータVCMに生じている逆起電圧をドライバ72により監視している。すなわち、ドライバ72が検知デバイスとなる。
【0027】
すなわち、スピンドルモータSPMの回転に起因して装置筐体2に振動が生じると、その中に納められているボイスコイルモータVCMにも振動が生じ、この振動がボイスコイルモータVCMに生じている逆起電圧に影響を及ぼすことから、この逆起電圧を監視することによって装置筐体2の振動レベルを検知することができる。
【0028】
また、処理部71Aは、監視している逆起電圧の複数のサンプルポイントから装置筐体2に生じている振動の変化率を求めて、この変化率から振動が所定レベル以上となることを事前に検知するようにしても良い。
【0029】
なお、このようにボイスコイルモータVCMに生じている逆起電圧を利用する態様に限らず、装置筐体2の振動を検知する振動センサを検知デバイスとして別に設けて、処理部71Aに入力させるようにしても良い。
【0030】
次に、ステップS2における、スピンドルモータSPMへ付与する駆動信号の状態の切替えについて説明する。ここでは、スピンドルモータSPMへ付与する駆動信号の状態を、例えば、電流レベルがより低い状態や波形がより円滑な状態に切替えることによって、装置筐体2に生じる振動を低減する。
【0031】
更に詳しくは、スピンドルモータSPMへ付与する駆動信号の状態の切替えは、回転速度などのスピンドルモータSPMの動作状況に応じて切替えの態様が異なる。駆動信号の状態の切替えは、例えば、メモリ73に、切替えるべき駆動信号のパラメータを格納しておき、処理部71Aが、そのパラメータを適用することによって行うことができる。
【0032】
図6に、スピンアップ時におけるスピンドルモータSPMの回転速度の時間的変化の例を表すグラフを示す。スピンドルモータSPMへ付与する駆動信号は、第1の動作状況,第2の動作状況,第3の動作状況という3つの動作状況に応じて状態が切替えられる。以下、各々の動作状況における駆動信号の状態の切替えについて説明する。
【0033】
第1の動作状況は、磁気記録ディスク6を静止状態から回転させ始める際に、スピンドルモータSPMの回転が所定回数に達するまでの動作状況である。ここでは、逆起電圧によりロータの位置を検出しながら、ロータを一定量回転させる駆動信号をロータの位置に応じて順次スイッチしていく制御(例えば、3相モータにおける120°通電矩形波駆動)が行われている。この制御は、駆動信号のスイッチが所定回数行われると終了する。
【0034】
この第1の動作状況下では、駆動信号の電流レベルを下げることによって装置筐体2に生じる振動を低減する。図7に、第1の動作状況での駆動信号の切替えについての説明図を示す。具体的には、第1の動作状況において、駆動信号は、ロータの位置を検出するための位置検出相Tsとロータにトルクを付加するための電流供給相Tdとが交互に現れる形となっている。図は、スピンドルモータSPMにおける複数の相(例えばUVW相)の1つの相に対して通電される駆動信号の概略を表す。位置検出相Tsは、逆起電圧を検知するために他の相との間で通電が行われる突状の部分を有している。すなわち、位置検出相Tsでは、ある相と相の間(例えばU相とV相)に電流を流すことによって、残りの相(例えばW相)とセンタータップ(中性点)の間に出現する逆起電圧に基づいて位置検出を行う。そのため、処理部71Aは、位置検出相Tsについて、逆起電圧を検出するために流す電流(突状の部分)を減らすべく時間間隔を小さくすることによって駆動信号の電流レベルを下げる。また、電流供給層Tdについて、ドライバ72における電流の設定値を下げることによってドライバ72から出力される駆動信号の電流レベルを下げるようにしても良い。
【0035】
第2の動作状況は、第1の動作状況の後、スピンドルモータSPMの回転が所定回転速度に達するまでの動作状況である。ここでは、ロータの回転を高回転速度まで引き上げるために周波数を漸増させていく制御が行われている。この第2の動作状況下では、駆動信号の電流レベルを下げることによって装置筐体2に生じる振動を低減する。図8に、第2の動作状況での駆動信号の切替えについての説明図を示す。具体的には、第2の動作状況において、処理部71Aは、ドライバ72における電流の設定値を下げることによってドライバ72から出力される駆動信号の電流レベルを下げる。また、ドライバ72から出力される駆動信号のデューティ比(振幅が0ではない部分の時間割合)を下げることによって全体の電流値を下げて、静音化を図るようにしても良い。
【0036】
第3の動作状況は、第2の動作状況の後、スピンアップが終了するまでの動作状況である。ここでは、第2の動作状況の場合と同様に、ロータの回転を高回転速度まで引き上げるために周波数を漸増させていく制御が行われている。この第3の動作状況下では、駆動信号の波形を円滑化することによって装置筐体2に生じる振動を低減する。図9に、第3の動作状況での駆動信号の切替えについての説明図を示す。具体的には、第3の動作状況において、処理部71Aは、ドライバ72から出力される駆動信号をハードスイッチング(矩形波の駆動信号)からソフトスイッチング(正弦波の駆動信号)に切替えることによって波形を円滑化する。また、ソフトスイッチングにおける駆動信号の波形は、例えば、矩形波の角が丸みを帯びたように円滑化された波形であっても良い。
【0037】
ここで、第2の動作状況と第3の動作状況とで駆動信号の状態の切替えの方法が変わるのは、回転速度が低いままソフトスイッチングに切替えると、制御が十分に安定しないからである。なお、第2の動作状況から第3の動作状況へは、ドライバ72から得られる位相情報に基づいて、ロータの回転速度が所定値に達したことを処理部71Aが検知した場合に移行する。
【0038】
以上のようにして切替えた駆動信号の状態は、所定時間が経過したら、若しくは、装置筐体2に生じている振動が所定レベルを下回ったら、元に戻すようにする。これにより、装置筐体2に生じる振動が大きくなる状況に対して、適切に振動を低減させることができる。または、切替えた状態のままスピンアップを継続しても良い。これにより、例えば装置筐体2に生じる振動が何度も大きくなってしまうような場合に、駆動信号の状態を何度も切替えることなく安定してスピンアップを行うことができる。
【0039】
なお、切替える駆動信号の状態は、複数段階設けておくことができる。例えば、駆動信号における電流レベルの低減の程度や波形の円滑化の程度を、検知した装置筐体2の振動のレベルに応じて変えるようにすることができる。また、装置筐体2の振動が所定レベル以上となる度に、駆動信号における電流レベルの低減の程度や波形の円滑化の程度を段階的に変えていくようにすることもできる。これらのようにすることで、装置筐体2に生じる振動のレベルに応じて、振動を低減する程度を適切に変えることができる。これらは、メモリ73に、複数の駆動信号のパラメータが記述されたテーブルを格納しておき、処理部71Aが、そのテーブルから適切なパラメータを選択するようにすることで実現できる。
【0040】
具体的には、上述した第1の動作状況であれば、位置検出相Tsの時間間隔を段階的に小さくしたり、電流供給層Tdの電流の設定値を段階的に小さくすることで、装置筐体2に生じる振動をより低減することができる。また、上述した第2の動作状況であれば、電流の設定値を段階的に小さくすることで、装置筐体2に生じる振動をより低減することができる。また、上述した第3の動作状況であれば、図10に示すように、正弦波の立ち上がり部分(振幅が0から立ち上がる部分)の傾きが段階的に小さくなるようにする(例えば、逆起電圧を検知するために振幅が0である部分の時間幅を段階的に小さくし、不連続性の少ない正弦波により近似させる)ことで、装置筐体2に生じる振動をより低減することができる。
【0041】
[第2実施形態]
図4に、第2実施形態のハードディスク装置1Bの動作を表すフローチャートを示す。なお、第1実施形態と重複するステップについては、同じ符号を付すことで詳細な説明を省略する。制御デバイス7Bの処理部71Bは、装置筐体2の振動が所定レベル以上となる回転速度領域に、スピンドルモータSPMの回転速度が在る場合に(S21:YES)、スピンドルモータSPMへ付与する駆動信号の状態を装置筐体2の振動がより少なくなる状態へと切替える(S2)。
【0042】
制御デバイス7Bの処理部71Bは、ドライバ72によりスピンドルモータSPMから検出される信号に基づいてスピンドルモータSPMの回転速度を監視していることから、ステップS21では、装置筐体2の振動が所定レベル以上となる回転速度領域に、監視している現在の回転速度が含まれるか否かの判断を行う。
【0043】
制御デバイス7Bのメモリ73(記憶デバイス)には、装置筐体2の振動が所定レベル以上となる回転速度領域が予め記憶されている。
【0044】
この回転速度領域は、例えば、製造工程等においてスピンアップ時の装置筐体2の振動を測定することにより求めてメモリ73に記憶させておくことができる。
【0045】
また、メモリ73に記憶されている回転速度領域を書換え可能として、処理部71Bが、スピンアップ時に装置筐体2の振動が所定レベル以上となったことを検知した場合に、メモリ73に記憶されている回転速度領域を更新するようにすることで、次回以降のスピンアップ時における装置筐体2に生じる振動を低減することができる。
【0046】
ここで、装置筐体2に生じる振動の検知は、上述したように、ボイスコイルモータVCMに生じている逆起電圧をドライバ72(検知デバイス)により監視することによって行うことができる。
【0047】
ステップS2における、スピンドルモータSPMへ付与する駆動信号の状態の切替えは、上述したように、スピンドルモータSPMへ付与する駆動信号の状態を、例えば、電流レベルがより低い状態や波形がより円滑な状態に切替えるようにすることができる。
[第3実施形態]
【0048】
図5に、第3実施形態のハードディスク装置1Cの動作を表すフローチャートを示す。なお、第1および第2実施形態と重複するステップについては、同じ符号を付すことで詳細な説明を省略する。制御デバイス7Cの処理部71Cは、装置筐体2の振動が所定レベル以上となる回転速度領域に、スピンドルモータSPMの回転速度が在る場合に(S21:YES)、スピンドルモータSPMへ付与する駆動信号の状態を装置筐体2の振動がより少なくなる状態へと切替えるとともに(S2)、その後、装置筐体2に生じている振動が所定レベル以上であることをドライバ72経由で検知すると(S11:YES)、スピンドルモータSPMへ付与する駆動信号の状態を装置筐体2の振動がより少なくなる状態へと切替える(S2)。
【0049】
すなわち、制御デバイス7Cの処理部71Cは、スピンアップ時に最初に生じる所定レベル以上の振動に対しては、第2実施形態の如く、過去のスピンアップ時の振動レベルに基づいて駆動信号の状態を切替え、その後に生じる所定レベル以上の振動に対しては、第1実施形態の如く、検知している振動レベルに基づいて駆動信号の状態を切替える。
【0050】
図11に示すように、スピンアップ時において騒音が問題となる箇所は、主に、磁気記録ディスク6を静止状態から回転させ始める際(P1付近)と、スピンドルモータSPMの回転に起因する振動が装置筐体2の構造共振を引き起こす際(P2付近)であることから、上記のように制御デバイス7Cの処理部71Cが制御を行うことによって、P1付近の振動に対しては、過去のスピンアップ時の振動レベルに基づいて駆動信号の状態を切替え、P2付近の振動に対しては、検知している振動レベルに基づいて駆動信号の状態を切替えるようにすることができる(グラフ中の破線付近に閾値を設けた場合)。
【0051】
これによると、スピンドルモータSPMの回転に起因する振動が装置筐体2の構造共振を引き起こす際(P2付近)の振動は、装置が固定されている場合など周囲の環境によって、発生する回転速度領域が変化することから、振動レベルを検知しながら所定レベル以上となったときに駆動信号の状態を切替えるようにすることで、構造共振を引き起こす振動が発生する回転速度領域が変化したとしても適切に振動を低減することができる。
【0052】
これに対し、磁気記録ディスク6を静止状態から回転させ始める際(P1付近)の振動は、発生する回転速度やタイミングがおおよそ決まっていることから、過去のスピンアップ時に装置筐体2の振動が所定レベル以上になった回転速度領域において駆動信号の状態を切替えるようにすることで、回転の初期段階については後々まで安定して振動を低減させておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】ハードディスク装置の断面構造の概略を表す図である。
【図2】ハードディスク装置の動作を制御する制御デバイスの構成を表すブロック図である。
【図3】第1実施形態のハードディスク装置の動作を表すフローチャートである。
【図4】第2実施形態のハードディスク装置の動作を表すフローチャートである。
【図5】第3実施形態のハードディスク装置の動作を表すフローチャートである。
【図6】スピンアップ時におけるスピンドルモータの回転速度の時間的変化の例を表すグラフである。
【図7】第1の動作状況での駆動信号の切替えについての説明図である。
【図8】第2の動作状況での駆動信号の切替えについての説明図である。
【図9】第3の動作状況での駆動信号の切替えについての説明図である。
【図10】第3の動作状況での駆動信号の切替えを段階的に行う場合についての説明図である。
【図11】スピンアップ時に装置筐体に生じる振動の時間的変化を概略的に表すグラフである。
【符号の説明】
【0054】
1A,1B,1C ハードディスク、2 装置筐体、5 磁気ヘッドアッセンブリ、6 磁気記録ディスク、7A,7B,7C 制御デバイス、71A,71B,71C 処理部、72 ドライバ、73 メモリ、74 アンプ、SPM スピンドルモータ、VCM ボイスコイルモータ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ディスクを回転させるスピンドルモータと、
装置筐体の振動を検知する検知デバイスと、
前記記録ディスクの回転加速中、前記検知デバイスが所定レベル以上の振動を検知した場合に、前記スピンドルモータへ付与する駆動信号の状態を前記装置筐体の振動がより少なくなる状態へと切替える制御デバイスと、
を備えることを特徴とするディスク装置。
【請求項2】
請求項1に記載のディスク装置において、
前記検知デバイスは、前記装置筐体に含まれる前記スピンドルモータとは別のモータに生じる逆起電圧を監視することにより、前記装置筐体の振動を検知することを特徴とするディスク装置。
【請求項3】
請求項1に記載のディスク装置において、
前記制御デバイスは、前記スピンドルモータへ付与する駆動信号の電流レベルをより低い状態へと切替えることを特徴とするディスク装置。
【請求項4】
請求項1に記載のディスク装置において、
前記制御デバイスは、前記スピンドルモータへ付与する駆動信号の波形をより円滑な状態へと切替えることを特徴とするディスク装置。
【請求項5】
記録ディスクを回転させるスピンドルモータと、
装置筐体の振動が所定レベル以上となる回転速度領域を記憶している記憶デバイスと、
前記記録ディスクの回転加速中、前記スピンドルモータの回転速度が前記回転速度領域に在る場合に、前記スピンドルモータへ付与する駆動信号の状態を前記装置筐体の振動がより少なくなる状態へと切替える制御デバイスと、
を備えることを特徴とするディスク装置。
【請求項6】
請求項5に記載のディスク装置において、
前記装置筐体の振動を検知する検知デバイスを備え、
前記記憶デバイスに記憶されている前記回転速度領域は、前記検知デバイスが所定レベル以上の振動を検知した場合に更新されることを特徴とするディスク装置。
【請求項1】
記録ディスクを回転させるスピンドルモータと、
装置筐体の振動を検知する検知デバイスと、
前記記録ディスクの回転加速中、前記検知デバイスが所定レベル以上の振動を検知した場合に、前記スピンドルモータへ付与する駆動信号の状態を前記装置筐体の振動がより少なくなる状態へと切替える制御デバイスと、
を備えることを特徴とするディスク装置。
【請求項2】
請求項1に記載のディスク装置において、
前記検知デバイスは、前記装置筐体に含まれる前記スピンドルモータとは別のモータに生じる逆起電圧を監視することにより、前記装置筐体の振動を検知することを特徴とするディスク装置。
【請求項3】
請求項1に記載のディスク装置において、
前記制御デバイスは、前記スピンドルモータへ付与する駆動信号の電流レベルをより低い状態へと切替えることを特徴とするディスク装置。
【請求項4】
請求項1に記載のディスク装置において、
前記制御デバイスは、前記スピンドルモータへ付与する駆動信号の波形をより円滑な状態へと切替えることを特徴とするディスク装置。
【請求項5】
記録ディスクを回転させるスピンドルモータと、
装置筐体の振動が所定レベル以上となる回転速度領域を記憶している記憶デバイスと、
前記記録ディスクの回転加速中、前記スピンドルモータの回転速度が前記回転速度領域に在る場合に、前記スピンドルモータへ付与する駆動信号の状態を前記装置筐体の振動がより少なくなる状態へと切替える制御デバイスと、
を備えることを特徴とするディスク装置。
【請求項6】
請求項5に記載のディスク装置において、
前記装置筐体の振動を検知する検知デバイスを備え、
前記記憶デバイスに記憶されている前記回転速度領域は、前記検知デバイスが所定レベル以上の振動を検知した場合に更新されることを特徴とするディスク装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−294049(P2007−294049A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−122692(P2006−122692)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(503116280)ヒタチグローバルストレージテクノロジーズネザーランドビーブイ (1,121)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(503116280)ヒタチグローバルストレージテクノロジーズネザーランドビーブイ (1,121)
【Fターム(参考)】
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