説明

ディスク装置

【課題】ディスク装置において、スピンドルモータがショートにより故障しているか否かを正確に判定できるようにする。
【解決手段】ディスク装置1は、ディスク2を回転させるスピンドルモータ3と、スピンドルモータ3の正の端子及び負の端子との間に生じた電圧差を検出電圧値として検出する差動オペアンプ5と、装置全体を制御する制御部7と、検出電圧値に基づいてスピンドルモータ3が故障しているか否かを判定する故障判定部10を備える。ディスク2の停止状態からスピンドルモータ3を駆動する立ち上げ時に、差動オペアンプ5は、検出電圧値を検出し故障判定部10へ出力する。故障判定部10は、検出電圧値が予め定められた閾値より小さければスピンドルモータ3が故障していると判定する。これにより、故障判定部10は、検出電圧値と閾値の大きさを比較することによって、正確にスピンドルモータ3の故障を判定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクを回転させるDCモータを備えたディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スピンドルモータ等のDCモータを用いてCD、CD−R、またはDVDなどのディスクを回転させて、画像等を記録再生するディスク装置において、DCモータ内のブラシが磨耗することにより塵埃が発生し、この発生した塵埃によってDCモータ内の整流子がショートすることがある。整流子がショートするとスピンドルの回転が停止するため、ディスクの回転が停止する。ディスクの回転が停止すると、ディスク装置を制御する制御部は、スピンドルの回転速度を上げるためにDCモータを駆動させる駆動ICの出力電流を増加させる。駆動ICは、出力電流が増加することにより発熱する。駆動ICは、発熱により誤作動を起こし、アクチュエータに大電流を流す場合がある。また、ディスクの回転が停止することによって、制御部は、アクチュエータの正確な動作を把握できなくなる。そこで、制御部は、ディスクを回転させるために駆動ICを無理に動作させる。このとき、駆動ICからアクチュエータに大電流が流れ、これによって、アクチュエータのカバーが燃えることがあった。
【0003】
そこで、特許文献1に示される技術においては、駆動ICに大電流が流れないようにする手段が開示されている。また、特許文献2に示される技術においては、ディスクを回転させるスピンドルモータの停止制御を行う技術が開示されている。さらに、特許文献3に示される技術においては、駆動ICが温度センサーを備えることにより、駆動ICが所定の温度以上にならない状態で駆動ICを動作させる技術が開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1乃至特許文献3に示される技術においては、駆動ICに大電流が流れる原因となるスピンドルモータのショートによる故障を検出することができなかった。
【特許文献1】特開2004−127385号公報
【特許文献2】特開2003−224988号公報
【特許文献3】特開平10−112991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、ディスクを回転させるスピンドルモータを備えたディスク装置において、スピンドルモータがショートにより故障しているか否かを正確に判定できるようにし、さらに、スピンドルモータがショートにより故障しているとき、スピンドルモータを駆動させないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、ディスクを回転させるDCモータと、2本の電圧供給線を介してDCモータにオフセット電圧を供給する駆動部と、駆動部にオフセット電圧の供給を指示する制御部と、を備えたディスク装置において、2本の電圧供給線に接続され、ディスクの停止状態からDCモータを駆動する立ち上げ時に、2本の電圧供給線の電圧差を検出電圧値として検出する検出器と、検出電圧値に基づいてDCモータが故障しているか否かを判定する故障判定部と、を備え、故障判定部は、検出電圧値を保持電圧値として記憶する電圧記憶部と、保持電圧値と検出電圧値との差の絶対値を変化量として算出する算出手段と、算出手段が算出した複数の変化量のうち、変化量の最大値を最大変化量として記憶する変化量記憶部と、をさらに備え、制御部は、立ち上げ時にオフセット電圧の供給を指示し、故障判定部は、変化量と最大変化量の大きさを比較し、変化量が最大変化量より大きいとき、変化量を変化量記憶部に記憶させ、変化量と最大変化量の大きさを所定の回数比較すると、変化量記憶部が記憶している最大変化量が予め定められた閾値より大きいか否かを判定し、最大変化量が閾値より大きければDCモータが故障していると判定し、制御部は、故障判定部によってDCモータが故障していると判定されたことに応じて、DCモータを駆動させないように駆動部を制御するようにしたものである。
【0007】
また、請求項2の発明は、ディスクを回転させるDCモータと、2本の電圧供給線を介してDCモータにオフセット電圧を供給する駆動部と、駆動部にオフセット電圧の供給を指示する制御部と、を備えたディスク装置において、2本の電圧供給線に接続され、ディスクの停止状態からDCモータを駆動する立ち上げ時に、2本の電圧供給線の電圧差を検出電圧値として検出する検出器と、検出電圧値に基づいてDCモータが故障しているか否かを判定する故障判定部と、を備え、制御部は、立ち上げ時にオフセット電圧の供給を指示し、故障判定部は、検出器によって検出された検出電圧値が予め定められた閾値より小さければ、DCモータが故障していると判定し、制御部は、故障判定部によってDCモータが故障していると判定されたことに応じて、DCモータを駆動させないように駆動部を制御するようにしたものである。
【0008】
また、請求項3の発明は、請求項2のディスク装置において、検出器は、所定の回数検出電圧値を検出し、故障判定部は、検出された順に検出電圧値が閾値より大きいか否かを判定し、検出電圧値が連続して3回閾値より小さいとき、DCモータが故障していると判定するようにしたものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、ディスクの停止状態からDCモータを駆動する立ち上げ時に、故障判定部は、算出手段が算出した複数の変化量のうち、最も値の大きいのもを最大変化量として予め定められた閾値との大きさを比較することにより、DCモータが故障しているか否かを判定する。DCモータがショートしているときの変化量、またはディスクが偏芯成分にぶれながら回転しているときの変化量はいずれも、DCモータがショートしておらず、かつディスクが偏芯成分にぶれずに回転しているときの変化量に比べて大きな値となる。DCモータがショートしているときの変化量は、ディスクが偏芯成分にぶれながら回転しているときの変化量より大きな値となる。そこで、故障判定部は、変化量のうち最も大きな値である最大変化量が、予め定められた閾値より大きければDCモータがショートしていることによって故障していると判定する。これにより、故障判定部は、ディスクが偏芯成分にぶれながら回転していることによって生じる変化量の影響を受けることなく、正確にDCモータが故障しているか否かを判定することができる。
【0010】
請求項2の発明によれば、ディスクの停止状態からDCモータを駆動する立ち上げ時に、検出器は検出電圧値を検出する。故障判定部は、検出器が検出した検出電圧値が予め定められた閾値より小さければDCモータがショートしていることによって故障していると判定する。制御部は、故障判定部によってDCモータが故障していると判定されたことに応じて、DCモータを駆動させないように駆動部を制御する。これにより、故障しているDCモータに大電流が流れることが回避される。
【0011】
請求項3の発明によれば、ディスクの停止状態からDCモータを駆動する立ち上げ時に、検出器は、所定の回数、検出電圧値を検出する。故障判定部は、検出された順に検出電圧値が予め定められた閾値より大きいか否かを判定し、検出電圧値が連続して3回閾値より小さければDCモータがショートしていると判定する。ディスクに傷がついているとき、検出器によって検出される検出電圧値は、一時的に閾値より大きくなることがある。そこで、故障判定部は、検出器が検出した全ての検出電圧値が予め定められた閾値より大きければDCモータが故障していると判定することによって、ディスクに傷がついている影響を受けることなく、正確にDCモータが故障しているか否かを判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係るディスク装置について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1及び第2の実施形態に係るディスク装置の概略構成を示す。ディスク装置1は、ディスク2を回転させるスピンドルモータ3(DCモータ)と、スピンドルモータ3を駆動させる駆動IC4(駆動部)と、スピンドルモータ3と駆動IC4との間に接続された差動オペアンプ5(検出器)と、ディスク2に対して録画再生処理を行う録画再生部6と、ディスク装置1全体を制御する制御部7とを備える。録画再生部6は、ディスク2から情報を読み取るピックアップユニット8と、ピックアップユニット8が読み出した情報に対してデコード処理を行う信号処理部9とを備える。
【0013】
制御部7は、差動オペアンプ5から出力された検出電圧値に基づいてスピンドルモータ3が故障しているか否かを判定する故障判定部10と、故障判定部10の判定に応じて駆動IC4を制御するIC制御部11とを備える。故障判定部10は、検出電圧値を保持電圧値として記憶する電圧記憶部12と、保持電圧値と検出器が新たに検出した検出電圧値との差の絶対値を変化量として算出する算出手段13と、算出手段13が算出した変化量を最大変化量として記憶する変化量記憶部14とを備える。ここで、ディスク2は、例えばCDやDVDである。
【0014】
IC制御部11は、駆動IC4に対して、ピックアップユニット8から受信したディスク2の回転状態を表す信号に基づいて、基準電圧であるリファレンス電圧VREFを通知し、さらに、スピンドルモータ3を駆動させるために基準電圧からのずれを表すオフセット電圧Vfの供給を指示する。駆動IC4は、端子O1と、端子O2とを備える。端子O1は、電圧供給線SP+を介してスピンドルモータ3のブラシB1に接続され、端子O2は、電圧供給線SP−を介してスピンドルモータ3のブラシB2に接続されている。駆動IC4は、IC制御部11から指示されたリファレンス電圧VREF及びオフセット電圧Vfに基づいて、端子O1及び端子O2の電圧を設定する。差動オペアンプ5の非反転入力端子5aは、電圧供給線SP+に接続されており、反転入力端子5bは、電圧供給線SP−に接続されている。差動オペアンプ5は、非反転入力端子5aの電位と反転入力端子5bの電位との差であるブラシB1とブラシB2との間の電圧差を検出する。差動オペアンプ5は、検出した電圧差を検出電圧値として故障判定部10へ出力する。
【0015】
故障判定部10は、差動オペアンプ5から入力された検出電圧値に基づいて、スピンドルモータ3が故障しているか否かを判定する。故障判定部10は、スピンドルモータ3が故障しているか否かを判定する基準として、検出電圧値に関する予め定められた閾値を保持している。故障判定部10は、差動オペアンプ5から入力された検出電圧値が閾値より大きければスピンドルモータ3がショートにより故障していると判定し、スピンドルモータ3が故障していることを示す故障信号をIC制御部11に送信する。IC制御部11は、故障判定部10から故障信号を受信すると、駆動IC4に対してスピンドルモータ3を駆動させないように命令する。これにより、故障しているスピンドルモータ3は駆動しなくなるため、駆動IC4に大電流が流れることが回避され、アクチュエータのカバーが燃えることが防止される。
【0016】
図2は、本発明の第1及び第2の実施形態におけるスピンドルモータ3の概略構成を示す。スピンドルモータ3は、DCモータであって、正側の端子であるブラシB1と、負側の端子であるブラシB2と、整流子C1乃至C3と、コイルL1乃至L3とを備える。ブラシB1は電圧供給線SP+に接続され、ブラシB2は電圧供給線SP−に接続されている。駆動IC4が電圧供給線SP+及び電圧供給線SP−を介してブラシB1及びブラシB2に直流電圧を供給することにより、直流電流が、整流子C1乃至C3の一部とコイルL1乃至L3の一部とを介してブラシB1とブラシB2の間に流れる。これにより、スピンドルモータ3は回転する。
【0017】
スピンドルモータ3が回転することによりブラシB1及びB2が磨耗すると、ブラシB1及びブラシB2の塵埃が発生する。この塵埃が整流子C1乃至C3の間に入り込むことによりブラシB1とブラシB2との間がショートした状態となる。ブラシB1とブラシB2との間がショートした状態であるとき、差動オペアンプ5が故障判定部10に出力する検出電圧値は0に近い値となる。ここで、整流子C1乃至整流子C3の間に存在する3つの隙間のうち、全ての隙間かいずれか2つの隙間がショートしている状態のことを完全ショートとする。また、整流子C1乃至整流子C3の間に存在する3つの隙間のうち、1つの隙間だけがショートしている状態を部分ショートとする。
【0018】
スピンドルモータ3が完全ショートしているとき、ブラシB1とブラシB2とは常にショートした状態となるため、整流子C1乃至整流子C3は回転しない。一方、スピンドルモータ3が部分ショートしているとき、整流子C1乃至整流子C3が回転すると、ブラシB1とブラシB2とがショートしている状態と、ショートしていない状態とが交互に現れることになる。ブラシB1とブラシB2とがショートしている状態のときに、差動オペアンプ5が検出電圧値を検出すると0に近い値となるが、ブラシB1とブラシB2とがショートしていない状態のときに、差動オペアンプ5が検出電圧値を検出すると0より大きな値となる。故障判定部10は、差動オペアンプ5が検出した検出電圧値の大きさに基づいて、スピンドルモータ3がショートしているか否かを判定する。
【0019】
図3は、本発明の第1の実施形態に係るスピンドルモータ3の故障判定処理フローを示す。スピンドルモータ3の故障判定処理は、ディスク2の停止状態からスピンドルモータ3が駆動する立ち上げ時に行われる。立ち上げ時とは、例えば、録画再生部6が録画再生処理を開始するときである。録画再生部6が録画再生処理を開始すると、IC制御部11は、信号処理部9から出力されるディスク2の回転数を示す信号に基づいて、ディスク2が停止していることを確認する(S101)。ステップS101において、ディスク2が停止していなければ、IC制御部11は、ディスク2が停止するまで待機する。ディスク2が停止すると、駆動IC4は、IC制御部11から指示されたリファレンス電圧VREF及びオフセット電圧Vfに基づいて、スピンドルモータ3にオフセット電圧を印加する(S102)。差動オペアンプ5は、電圧供給線SP+上の電圧と電圧供給線SP−上の電圧との差を、検出電圧値として複数回(ディスクの半回転分、例えば30回)検出し、検出した順に全ての検出電圧値を故障判定部10に出力する(S103)。ここで、差動オペアンプ5が検出電圧値を30回検出するのは、検出した検出電圧値の信頼性を高めるためである。検出電圧値は、スピンドルモータ3がディスク装置1内のノイズやディスク2についた傷の影響を受けることにより突発的に変化することがある。差動オペアンプ5が検出電圧値を検出する回数を1回とすると、差動オペアンプ5は、突発的に変化した検出電圧値を偶然、検出する可能性がある。そこで、差動オペアンプ5が検出電圧値を30回検出することにより、突発的に変化した検出電圧値だけでなく、スピンドルモータ3の現状に応じた検出電圧値を検出することが可能となる。
【0020】
次に、故障判定部10は、差動オペアンプ5から入力された順に、30個の検出電圧値を保持電圧値として電圧記憶部12に記憶させる(S104)。故障判定部10は、スピンドルモータ3の故障の判定基準となる閾値と保持電圧値との大きさを、電圧記憶部12が保持電圧値を記憶した順に従って比較し、連続して記憶されている3個の保持電圧値が閾値より小さいか否かを判定する(S105)。ここで、連続して記憶されている3個の保持電圧値が閾値より小さくなければ、故障判定部10は、スピンドルモータ3が故障していないと判断する(S105でNo)。故障判定部10によってスピンドルモータ3が故障していないと判定されると、制御部7は、録画再生部6に録画再生処理を開始させて(S106)、スピンドルモータ3の故障判定処理を終了する。
【0021】
ステップS105において、連続して記憶されている3個の保持電圧値が閾値より小さいとき、故障判定部10は、スピンドルモータ3が故障していると判断する(S105でYes)。故障判定部10によってスピンドルモータ3が故障していると判定されると、IC制御部11は、駆動IC4にスピンドルモータ3を駆動させないように命令し、制御部7は、録画再生部6に録画再生処理を停止させ(S107)、スピンドルモータ3の故障判定処理を終了する。このように、故障判定部10は、差動オペアンプ5が検出した3つの検出電圧値に基づいて、スピンドルモータ3の故障を判定することにより、検出電圧値の突発的な変化の影響を受けることなく、正確にスピンドルモータ3の故障を判定することができる。
【0022】
図4は、本発明の第2の実施形態に係るスピンドルモータ3の故障判定処理フローを示す。スピンドルモータ3の故障判定処理は、ディスク2の停止状態からスピンドルモータ3が駆動する立ち上げ時に行われる。録画再生部6が録画再生処理を開始すると、IC制御部11は、信号処理部9から出力されるディスク2の回転数を示す信号に基づいて、ディスク2が停止していることを確認する(S201)。ステップS201において、ディスク2が停止していなければ、IC制御部11は、ディスク2が停止するまで待機する。ディスク2が停止すると、故障判定部10は、スピンドルモータ3の故障判定回数をカウントするのに用いられる変数iに0をセットし、電圧記憶部12及び変化量記憶部14が記憶している値を0にする(S202)。駆動IC4は、IC制御部11から指示されたリファレンス電圧VREF及びオフセット電圧Vfに基づいて、スピンドルモータ3にオフセット電圧を印加する(S203)。差動オペアンプ5は、電圧供給線SP+上の電圧と電圧供給線SP−上の電圧との差を、検出電圧値として検出し、検出した検出電圧値を故障判定部10に出力する(S204)。
【0023】
次に、故障判定部10は、変数iが0か否かを判定する(S205)。ここで、変数iが0とすると(S205でYes)、故障判定部10は、検出電圧値を保持電圧値として電圧記憶部12に記憶させる(S209)。次に、故障判定部10は、変数iに1を加えて変数iを1とする(S210)。制御部7は、変数iが11であるか否かを判定する(S211)。このとき、変数iは1であるため(S211でNo)、制御部7は、再び、差動オペアンプ5に検出電圧値を検出させ、差動オペアンプ5は、検出した検出電圧値を故障判定部10に出力する(S204)。故障判定部10は、変数iが0か否かを判定する(S205)。ここで、変数iは1であるため(S205でNo)、算出手段13は、差動オペアンプ5から故障判定部10に入力された検出電圧値と、電圧記憶部12が記憶している保持電圧値との差の絶対値を変化量として算出する(S206)。スピンドルモータ3が完全ショートしているとき、検出電圧値は常に低い値となる。しかし、スピンドルモータ3が部分ショートしているとき、検出電圧値は高い値と低い値を交互に示す。算出手段13が算出した変化量は、検出電圧値の高低差を示しており、故障判定部10は、変化量の大きさに基づいてスピンドルモータ3が故障しているか否かを判定する。
【0024】
故障判定部10は、算出手段13が算出した変化量が、変化量記憶部14に記憶されている最大変化量より大きいか否かを判定する(S207)。ここで、変化量記憶部14は、ステップS202の処理により0を記憶しているため、故障判定部10は、変化量が最大変化量より大きいと判定する(S207でYes)。次に、故障判定部10は、変化量を変化量記憶部14が記憶している最大変化量に替えて変化量記憶部14に記憶させる(S208)。一方、ステップS207において、故障判定部10は、変化量が最大変化量より大きくないと判定すると(S207でNo)、故障判定部10は、変化量記憶部14に変化量を記憶させることなくステップS209の処理を行う。
【0025】
ステップS204からステップS211の処理が繰り返えされることにより、故障判定部10は、変化量が最大変化量より大きいか否かを10回判定する。ステップS211において、制御部7が、変数iは11であると判定すると(S211でYes)、故障判定部10は、変化量記憶部14が記憶している最大変化量が、スピンドルモータ3の故障の判定基準となる閾値より大きいか否かを比較する(S212)。最大変化量が閾値より大きくなければ、故障判定部10は、スピンドルモータ3が故障していないと判断する(S212でNo)。ここで、故障判定部10が、最大変化量に基づいてスピンドルモータ3の故障を判定するのは、ディスク2が偏芯成分にぶれながら回転しているときの変化量に基づいてスピンドルモータ3の故障を判定することを回避するためである。検出電圧値は、ディスク2が偏芯成分にぶれながら回転しているとき、高い値と低い値を交互に示す。しかし、ディスク2が偏芯成分にぶれながら回転しているときの検出電圧値の高低差を示す変化量は、スピンドルモータ3が部分ショートしているときの変化量に比べて明からに小さい値となる。そこで、故障判定部10は、複数の変化量のうち最も大きな値である最大変化量が、予め定められた閾値より大きければスピンドルモータ3が故障していると判定する。これにより、故障判定部10は、ディスクが偏芯成分にぶれながら回転していることによって生じた変化量の影響を受けることなく、正確にスピンドルモータ3が故障しているか否かを判定することができる。
【0026】
ステップS212において、スピンドルモータ3が故障していないと判定されると、制御部7は、録画再生部6に録画再生処理を開始させて(S213)、スピンドルモータ3の故障判定処理を終了する。ステップS212において、最大変化量が閾値より大きいとき、故障判定部10は、スピンドルモータ3が故障していると判断する(S212でYes)。スピンドルモータ3が故障していると判定されると、IC制御部11は、駆動IC4にスピンドルモータ3を駆動させないように命令し、制御部7は、録画再生部6に録画再生処理を停止させ(S214)、スピンドルモータ3の故障判定処理を終了する。
【0027】
このように、第1の実施形態においては、故障判定部10が、複数の検出電圧値に基づいてスピンドルモータ3の故障を判定することにより、ディスク2の傷によって変化した検出電圧値の影響を受けることなく、正確にスピンドルモータ3の故障を判定することができる。また、第2の実施形態においては、故障判定部10が、最大変化量に基づいてスピンドルモータ3の故障を判定することにより、ディスク2が偏芯成分にぶれながら回転しているときの変化量の影響を受けることなく、正確にスピンドルモータ3の故障を判定することができる。さらに、第1の実施形態及び第2の実施形態において、故障判定部10によってスピンドルモータ3が故障していると判定されると、制御部7は、スピンドルモータ3を駆動させないように駆動IC4を制御する。これにより、駆動IC4が故障しているスピンドルモータ3に大電流を流すことが回避されるので、アクチュエータのカバーが燃えることを防止することができる。
【0028】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られず、種々の変形が可能であり、第1の実施形態において、例えば、差動オペアンプ5は、検出電圧値として30回検出する構成でなく、30回以上検出する構成であっても構わない。また、第2の実施形態において、例えば、故障判定部10は、変化量が最大変化量より大きいか否かを10回以上判定する構成であっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1及び第2の実施形態に係るディスク装置の概略を示す構成図。
【図2】本発明の第1及び第2の実施形態に係るスピンドルモータの概略を示す構成図。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る故障判定処理フローチャート。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る故障判定処理フローチャート。
【符号の説明】
【0030】
1 ディスク装置
2 ディスク
3 スピンドルモータ(DCモータ)
4 駆動IC(駆動部)
5 差動オペアンプ(検出器)
7 制御部
10 故障判定部
12 電圧記憶部
13 算出手段
14 変化量記憶部
Vf オフセット電圧
SP+ 電圧供給線
SP− 電圧供給線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクを回転させるDCモータと、
2本の電圧供給線を介して前記DCモータにオフセット電圧を供給する駆動部と、
前記駆動部に前記オフセット電圧の供給を指示する制御部と、を備えたディスク装置において、
前記2本の電圧供給線に接続され、前記ディスクの停止状態から前記DCモータを駆動する立ち上げ時に、該2本の電圧供給線の電圧差を検出電圧値として検出する検出器と、
前記検出電圧値に基づいて前記DCモータが故障しているか否かを判定する故障判定部と、を備え、
前記故障判定部は、
前記検出電圧値を保持電圧値として記憶する電圧記憶部と、
前記保持電圧値と前記検出電圧値との差の絶対値を変化量として算出する算出手段と、
前記算出手段が算出した複数の前記変化量のうち、該変化量の最大値を最大変化量として記憶する変化量記憶部と、をさらに備え、
前記制御部は、前記立ち上げ時に前記オフセット電圧の供給を指示し、
前記故障判定部は、前記変化量と前記最大変化量の大きさを比較し、前記変化量が前記最大変化量より大きいとき、該変化量を変化量記憶部に記憶させ、前記変化量と前記最大変化量の大きさを所定の回数比較すると、前記変化量記憶部が記憶している前記最大変化量が予め定められた閾値より大きいか否かを判定し、該最大変化量が該閾値より大きければ前記DCモータが故障していると判定し、
前記制御部は、前記故障判定部によって前記DCモータが故障していると判定されたことに応じて、前記DCモータを駆動させないように前記駆動部を制御することを特徴としたディスク装置。
【請求項2】
ディスクを回転させるDCモータと、
2本の電圧供給線を介して前記DCモータにオフセット電圧を供給する駆動部と、
前記駆動部に前記オフセット電圧の供給を指示する制御部と、を備えたディスク装置において、
前記2本の電圧供給線に接続され、前記ディスクの停止状態から前記DCモータを駆動する立ち上げ時に、該2本の電圧供給線の電圧差を検出電圧値として検出する検出器と、
前記検出電圧値に基づいて前記DCモータが故障しているか否かを判定する故障判定部と、を備え、
前記制御部は、前記立ち上げ時に前記オフセット電圧の供給を指示し、
前記故障判定部は、前記検出器によって検出された前記検出電圧値が予め定められた閾値より小さければ、前記DCモータが故障していると判定し、
前記制御部は、前記故障判定部によって前記DCモータが故障していると判定されたことに応じて、前記DCモータを駆動させないように前記駆動部を制御することを特徴としたディスク装置。
【請求項3】
前記検出器は、所定の回数前記検出電圧値を検出し、
前記故障判定部は、検出された順に前記検出電圧値が前記閾値より大きいか否かを判定し、該検出電圧値が連続して3回該閾値より小さいとき、前記DCモータが故障していると判定することを特徴とした請求項2に記載のディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−146718(P2008−146718A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−330591(P2006−330591)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】