説明

ディスク装置

【課題】 スティックスリップ現象による共振で異常音が発生しないようにする。
【解決手段】 スロットインaした大形ディスクDbの外周縁をロック解除ピン23に押
し付けることによりロックレバー20を介してロックピンを一方のロック溝から離脱させ
るようにしたディスク装置において、前記ロック解除ピン23が、ロックレバー20の他
端に突設したピン本体23Aを有し、該ピン本体23Aに円筒状のガイド筒23Bが回転
可能に外嵌されており、そのガイド筒23Bにスロットインaした大形ディスクDbの外
周縁を当接させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばDiscスロットローディング機構方式のBlu−ray Disc
式ディスク装置(レコーダまたはプレーヤ)に関し、特に、スティックスリップ現象によ
る共振で異常音が発生しないようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
図3〜図6はDiscスロットローディング機構方式のBlu−ray Disc式デ
ィスク装置を示すものであって、図3及び図4は直径8cmの小形ディスクDaをスロッ
トインaしている状態を示し、図5及び図6は直径12cmの大形ディスクDbをスロッ
トインaしている状態を示している。
【0003】
前記ディスク装置は、シャーシ1Aと、該シャーシ1Aに被せた蓋板1Bとからなるロ
ーダーシャーシ1を有し、該ローダーシャーシ1の前面にディスクDa,Dbをスロット
インa及びスロットアウトbするためのディスク挿入口2が形成され、シャーシ1Aにタ
ーンテーブル3付きスピンドルモータ4とガイド軸5に沿って移動可能な光ピックアップ
6とが配置され、シャーシ1Aに枢支軸7を中心に矢印c,d方向に回動可能に枢支され
た可動枠8が設けられ、ターンテーブル3に対向してクランパ9が可動枠8に一定範囲内
移動可能に取り付けられ、該クランパ9をターンテーブル3から離間させるために可動枠
8を矢印c方向に引っ張るばね10が設けられている。
【0004】
前記可動枠8に長孔11がスロットインa方向に沿って貫設され、その可動枠8の裏面
側で長孔11にスライド可能に係合するスライド枠12が設けられ、該スライド枠12に
ディスク位置決め片12aが一体突設されている。
【0005】
前記可動枠8の表面側に連結レバー14が支軸15を中心にe,f方向に回動可能に配
置され、該連結レバー14の一端に貫設した長孔状連結孔16をスライド枠12に一体突
設した連結片12bに回動可能に嵌合させることにより、連結レバー14とスライド枠1
2とが連動連結されている。
【0006】
前記連結レバー14の他端に支軸15を中心にして円弧状ロック孔17が貫設され、該
ロック孔17の外周側縁の両端に一対のロック溝17a,17bが凹設され、連結レバー
14を矢印f方向に引っ張るばね18が設けられている。
【0007】
前記蓋板1Bの表面側にロックレバー20が支軸21を中心に矢印g,h方向に回動可
能に配置され、該ロックレバー20の一端に突設したロックピン22がロック孔17から
いずれか一方のロック溝17a(または17b)に嵌入され、そのロックレバー20の他
端に突設したロック解除ピン23が蓋板1Bの貫通孔24を通ってディスク挿入口2内に
挿通され、ロックレバー20を矢印h方向に引っ張るばね25が設けられている。
【0008】
前記ディスク挿入口2に接近して蓋板1Bの裏面にガイドフラップ27が配置されると
共に、該ガイドフラップ27に対向してガイドローラ28が設けられ、該ガイドローラ2
8は、モータ(図示せず)により正逆回転されると共に、連動機構(図示せず)によりガ
イドフラップ27に対して接近離間可能に形成されている。
【0009】
上記構成において、図3及び図4に示す状態では、ばね18により連結レバー14が矢
印f方向に引っ張られてロックピン22が一方のロック溝17aに嵌入され、スライド枠
12がターンテーブル3に接近した前段位置Aでロックされており、この状態で、小形デ
ィスクDaをディスク挿入口2内にスロットインaすると、小形ディスクDaがロック解
除ピン23に接触しても、該小形ディスクDaの外径が小さいから、ロックレバー20は
ほとんど動かず、ロックピン22と一方のロック溝17aとの嵌合状態を維持する。
【0010】
スロットインaされた小形ディスクDaはガイドフラップ27とガイドローラ28とで
挟まれ、該ガイドローラ28の正転により小形ディスクDaがディスク位置決め片12a
に当たるまで送り込まれて前段位置Aでターンテーブル3と同心状に位置決めされ、それ
を検知する検知信号により、ガイドローラ28がガイドフラップ27から離間され(図4
仮想線参照)、可動枠8を矢印d方向に回動させてクランパ9が小形ディスクDaを介し
てターンテーブル3上に載置され、そのクランパ9とターンテーブル3とで小形ディスク
Daがクランプされる(図4仮想線参照)。続いて、スピンドルモータ4によりターンテ
ーブル3を介して小形ディスクDaが高速回転され、光ピックアップ6によりその小形デ
ィスクDaに記録されている情報を読み取る。
【0011】
図5に二点鎖線で示すように、大形ディスクDbをディスク挿入口2内にスロットイン
aすると、図6に示すように、大形ディスクDbの外周縁がロック解除ピン23に押し付
けられてロックレバー20を矢印g方向に回動させ、ロックピン22が一方のロック溝1
7aから離脱され、スライド枠12のロックが解除される。続いて、スロットインaした
大形ディスクDbによりディスク位置決め片12aが押されてスライド枠12が前段位置
Aから後段位置Bまでスライドされ、それに連動して連結レバー14が矢印e方向に回動
され、ロックピン22が他方のロック溝17bに嵌入され(図5実線参照)、スライド枠
12が後段位置Bでロックされ、ディスク位置決め片12aにより大形ディスクDbがタ
ーンテーブル3と同心状態に位置決めされる。以後は、小形ディスクDaの場合と同様の
手順で、大形ディスクDbがクランプされ、光ピックアップ6によりその大形ディスクD
bに記録されている情報を読み取る。
【0012】
従来、前記ロック解除ピン23は、図7に示すように、金属製円柱体からなり、その基
端部がカシメによりロックレバー20の他端に固着されている。なお、関連する技術とし
て特許文献1に記載したものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2009−271979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記従来の構成では、ロック解除ピン23が回転しない構造であるため、図7に示すよ
うに、スロットインaした大形ディスクDbの外周縁がロック解除ピン23に押し付けら
れることにより、その大形ディスクDbを形成するプラスチック層30と保護層31との
間から外周縁に滲み出した接着剤32にロック解除ピン23が擦れることによりその両者
間の摩擦抵抗が過大なものとなって、該ロック解除ピン23がばね25の引張力に抗して
大形ディスクDbから離間され〔図7(b)仮想線参照〕、その離間後に直ちにばね25
の引張力でロック解除ピン23が大形ディスクDbの外周縁に当接され〔図7(b)実線
参照〕、その当接離間が繰り返されることにより、スティックスリップ現象による共振で
異常音が発生し、ユーザーに不快感を与えるおそれがある。
【0015】
そこで、ロックレバー20や連結レバー14などの共振部品に制振ゴムを張り付けるこ
とが行なわれているが、これでは、部品点数が増加してコストアップになると共に、共振
による異常音の発生を根本的に解消することができない。
【0016】
本発明は、上記従来の欠点に鑑み、スティックスリップ現象による共振で異常音が発生
しないようにしたディスク装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、ターンテーブル及び光ピックアッ
プを内部に配置したローダーシャーシに可動枠が回動可能に枢支され、該可動枠にスライ
ド枠がスロットイン方向に沿って前段位置と後段位置との間でスライド可能に取り付けら
れ、そのスライド枠に連動連結した連結レバーにロック孔が貫設されると共に、該ロック
孔に一対のロック溝が形成され、ロック孔からいずれか一方のロック溝に嵌入するロック
ピンを一端に突設したロックレバーがローダーシャーシに回動可能に配置され、該ロック
レバーの他端に突設したロック解除ピンがディスク挿入口内に挿通されており、該ディス
ク挿入口内にスロットインした大形ディスクの外周縁をロック解除ピンに押し付けること
によりロックレバーを介してロックピンを一方のロック溝から離脱させ、連結レバーを介
してスライド枠のロックを解除し、スロットインした大形ディスクによりスライド枠を後
段位置までスライドさせ、それに連動して連結レバーを介して他方のロック溝をロックピ
ンに嵌入させることにより、スライド枠を後段位置にロックし、そのスライド枠により位
置決めされてターンテーブルにクランプされた大形ディスクを高速回転させ、その大形デ
ィスクに記録されている情報を光ピックアップにより読み取るようにしたディスク装置に
おいて、前記ロック解除ピンが、ロックレバーの他端に突設したピン本体を有し、該ピン
本体に円筒状のガイド筒が回転可能に外嵌されており、そのガイド筒にスロットインした
大形ディスクの外周縁を当接させるようにしたことを特徴としている。
【0018】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記ピン本体の先端側がそ
の基端側に比べて径を小さくした小径部とされ、該小径部の先端近傍に環状溝が形成され
、その小径部の先端面の角部を面取りしてテーパ面が形成され、前記ガイド筒の一端側に
周方向所定間隔をおいて複数の切れ目を入れることにより、その各切れ目間の切り残し部
分が拡径可能に形成され、その切り残し部分の内周面にストッパが一体突設されており、
ガイド筒を小径部に外嵌させてストッパを環状溝に嵌入させるようにしたことを特徴とし
ている。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の発明によれば、ロック解除ピンが回転可能なガイド筒を有しているか
ら、スロットインした大形ディスクの外周縁がガイド筒に押し付けられることにより、そ
れに追従してガイド筒が伴回りさせられ、大形ディスクに対してロック解除ピンが当接離
間することなく常に接触させられているから、従来のようにスティックスリップ現象によ
る共振で異常音を発生させてユーザーに不快感を与えることがなくなり、大形ディスクを
静かにスロットインさせることができる。
【0020】
共振による異常音を根本的に解消することができ、共振部品に制振ゴムを張り付ける場
合に比べて、コストダウンを図ることができる。
【0021】
請求項2に記載の発明によれば、ガイド筒の他端側の開口部をピン本体の小径部の先端
にあてがうことにより、該小径部のテーパ面に沿ってガイド筒をその小径部に円滑に嵌合
させることができる。
【0022】
また、ガイド筒の切り残し部分の内周面に一体突設されたストッパが小径部の外周面に
乗り上がることにより、その切り残し部分が拡径されるから、ストッパを小径部の環状溝
に対して容易に嵌入させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)は本発明の実施の一形態であるディスク装置の要部の拡大一部切欠き側面図、(b)はA−A矢視図である。
【図2】(a)は同要部の分解斜視図、(b)はB−B矢視図である。
【図3】ディスク装置の小形ディスクのスロットイン状態を示す平面図である。
【図4】同縦断面図である。
【図5】同大形ディスクのスロットイン状態を示す平面図である。
【図6】同水平断面図である。
【図7】(a)は従来例を示す要部の拡大一部切欠き側面図、(b)はC−C矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1及び図2は本発明の実施の一形態であるディスク装置の要部を示すものであり、こ
れは、Discスロットローディング機構方式のBlu−ray Disc式のレコーダ
またはプレーヤであって、ロック解除ピン23が、ロックレバー20の他端にカシメによ
り固着した金属製円柱体からなるピン本体23Aと、ポリアセタール(POM)などの機
械的強度が大きい硬質合成樹脂からなるガイド筒23Bとを有してる。
【0025】
前記ピン本体23Aの先端側がその基端側に比べて径を小さくした小径部33とされ、
該小径部33の先端近傍に環状溝34が形成され、その小径部33の先端面の角部を面取
りしてテーパ面35が形成されている。
【0026】
前記ガイド筒23Bは、その内径D1が小径部33の外径D2と同一またはわずかに大
きく設定され、その外径D3がピン本体23Aの基端側の外径D4と同一またはわずかに
大きく設定されており、ガイド筒23Bの一端側に周方向に所定間隔をおいて複数の切れ
目36を入れることにより、その各切れ目36間の切り残し部分37が拡径可能に形成さ
れ、その切り残し部分37の内周面にストッパ38が一体突設され、該ストッパ38の奥
側端面が前記小径部33のテーパ面35と平行するように傾斜するテーパ面39とされて
いる。上記以外の構成は図3〜図7に示す構成とほぼ同じであるから、同一部分に同一符
号を付してその説明を省略する。
【0027】
上記構成によれば、ガイド筒23Bの他端側の開口部を小径部33の先端にあてがうこ
とにより、該小径部33のテーパ面35に沿ってガイド筒23Bをその小径部33に円滑
に嵌合させることができる。
【0028】
また、ガイド筒23Bのストッパ38のテーパ面39が小径部33のテーパ面35に当
たることにより、そのストッパ38が小径部33の外周面にスムーズに乗り上げて切り残
し部分37が拡径されるから、ストッパ38を小径部33の環状溝34に対して容易に嵌
入させることができる。
【0029】
更に、切り残し部分37の端部を押し広げるだけで、ストッパ38を環状溝34から抜
き出して、ガイド筒23Bをピン本体23Aから簡単に分離させることができる。
【0030】
図1に示すように、スロットインaした大形ディスクDbの外周縁がガイド筒23Bに
押し付けられることにより、それに追従してガイド筒23Bが伴回りさせられ、大形ディ
スクDbに対してロック解除ピン23が当接離間することなく常に接触させられているか
ら、従来のようにスティックスリップ現象による共振で異常音を発生させてユーザーに不
快感を与えることがなくなり、大形ディスクDbを静かにスロットインaさせることがで
きる。
【0031】
共振による異常音を根本的に解消することができ、共振部品に制振ゴムを張り付ける場
合に比べて、コストダウンを図ることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 ローダーシャーシ
3 ターンテーブル
6 光ピックアップ
8 可動枠
12 スライド枠
14 連結レバー
17 ロック孔
17a,17b ロック溝
20 ロックレバー
22 ロックピン
23 ロック解除ピン
23A ピン本体
23B ガイド筒
33 小径部
34 環状溝
35 テーパ面
36 切れ目
37 切り残し部分
38 ストッパ
Db 大形ディスク
A 前段位置
B 後段位置
a スロットイン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターンテーブル及び光ピックアップを内部に配置したローダーシャーシに可動枠が回動
可能に枢支され、該可動枠にスライド枠がスロットイン方向に沿って前段位置と後段位置
との間でスライド可能に取り付けられ、そのスライド枠に連動連結した連結レバーにロッ
ク孔が貫設されると共に、該ロック孔に一対のロック溝が形成され、ロック孔からいずれ
か一方のロック溝に嵌入するロックピンを一端に突設したロックレバーがローダーシャー
シに回動可能に配置され、該ロックレバーの他端に突設したロック解除ピンがディスク挿
入口内に挿通されており、該ディスク挿入口内にスロットインした大形ディスクの外周縁
をロック解除ピンに押し付けることによりロックレバーを介してロックピンを一方のロッ
ク溝から離脱させ、連結レバーを介してスライド枠のロックを解除し、スロットインした
大形ディスクによりスライド枠を後段位置までスライドさせ、それに連動して連結レバー
を介して他方のロック溝をロックピンに嵌入させることにより、スライド枠を後段位置に
ロックし、そのスライド枠により位置決めされてターンテーブルにクランプされた大形デ
ィスクを高速回転させ、その大形ディスクに記録されている情報を光ピックアップにより
読み取るようにしたディスク装置において、前記ロック解除ピンが、ロックレバーの他端
に突設したピン本体を有し、該ピン本体に円筒状のガイド筒が回転可能に外嵌されており
、そのガイド筒にスロットインした大形ディスクの外周縁を当接させるようにしたことを
特徴とするディスク装置。
【請求項2】
前記ピン本体の先端側がその基端側に比べて径を小さくした小径部とされ、該小径部の
先端近傍に環状溝が形成され、その小径部の先端面の角部を面取りしてテーパ面が形成さ
れ、前記ガイド筒の一端側に周方向所定間隔をおいて複数の切れ目を入れることにより、
その各切れ目間の切り残し部分が拡径可能に形成され、その切り残し部分の内周面にスト
ッパが一体突設されており、ガイド筒を小径部に外嵌させてストッパを環状溝に嵌入させ
るようにしたことを特徴とする請求項1に記載のディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−53932(P2012−53932A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193418(P2010−193418)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】