ディスク駆動装置
【課題】ディスクトレーに対するディスクの配置や取り出しが容易で、奥行きの小さい薄型テレビなどにも組み込むことのできる簡便なトレー搬送方式の縦型ディスク駆動装置を提供する。
【解決手段】ディスクを回転させるためのターンテーブル7の軸線に直交する支点軸4d回りに旋回可能とされて、ターンテーブル7を内蔵する筐体1からターンテーブル7の軸線方向に張り出すイジェクト位置と、ターンテーブル7よりも筐体1の内部側に退避したドライブ位置と、の間を旋回移動するディスクトレー4を備える。ディスクトレー4には、ドライブ位置において外向きとなる面にディスクを配置する凹状のディスク配置部4aが形成される。
【解決手段】ディスクを回転させるためのターンテーブル7の軸線に直交する支点軸4d回りに旋回可能とされて、ターンテーブル7を内蔵する筐体1からターンテーブル7の軸線方向に張り出すイジェクト位置と、ターンテーブル7よりも筐体1の内部側に退避したドライブ位置と、の間を旋回移動するディスクトレー4を備える。ディスクトレー4には、ドライブ位置において外向きとなる面にディスクを配置する凹状のディスク配置部4aが形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク(円盤状記録媒体)を回転駆動しながらオーディオ情報やビジュアル情報を記録したり、その記録情報を再生したりするのに用いられるディスク駆動装置に係わり、特にディスクを回転させるのに用いられるターンテーブルの軸線が水平方向を指向する状態に配置される縦型のディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディスク駆動装置として、ターンテーブル上にディスクを手動で載せるもの、マガジン内に収納された複数のディスクから選択された一枚のディスクを取り出してターンテーブル上に自動搬送するオートチェンジャ機能を備えたもの、及びディスクをトレーに載せて搬送するトレー搬送方式のものが知られる。
【0003】
このうち、トレー搬送方式のディスク駆動装置では、ディスクを載せたディスクトレーが水平状態を保って移動しながら、水平状に配置されるターンテーブル上までディスクを搬送する横型が主流であるが、コンピュータ本体などに内蔵されるものではターンテーブルの軸線が水平方向に指向される縦型も多い(例えば、特許文献1)。
【0004】
ここに、トレー搬送方式の縦型ディスク駆動装置によれば、ディスクトレーに載せられたディスクをターンテーブルに装着できるよう、ディスクトレーはターンテーブルに平行して垂直姿勢に配置され、ターンテーブルの軸線と直交する方向に平行移動する構成とされるものが一般的であるが、その種のディスクトレーは左右いずれかの面にディスクが配置されるようになっているので、ユーザによってはディスクトレーに対するディスクの配置が困難になることがある。
【0005】
例えば、ディスクの配置面が向かって右側にあるとき、左利きのユーザにとってはディスクの配置が困難となり、逆にディスクの配置面が向かって左側にあるときには右利きのユーザにとってディスクの配置が困難になる。
【0006】
そこで、ディスクトレーがターンテーブルの軸線と直交する方向に沿って装置本体の内部と外部との間を平行移動する構成の縦型ディスク駆動装置にして、そのディスクトレーが外部に突出されたとき垂直姿勢から水平姿勢に変換するようにしたものが提案されている(例えば、特許文献2)。
【0007】
【特許文献1】特開平10−064150号公報(段落0015、図2)
【0008】
【特許文献2】特開平09−320162号公報(段落0006、0017、0022、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2によれば、ディスクトレーの角度を変更する機構のほか、ディスクトレーをターンテーブルの軸線と直交する方向に平行移動させる機構を必要とするので装置全体が複雑な構造となるし、ディスクトレーが垂直姿勢のまま装置本体内に引き込まれるので、奥行きの大きな装置でなければ適用できないという問題がある。
【0010】
加えて、特許文献1、2のいずれもディスクトレーがターンテーブルの軸線と直交する方向に沿って直進平行移動する構成であるから、これに載せたれたディスクをターンテーブルに装着するには、ターンテーブルを含むユニット(通常、トラバースメカと呼ばれるもの)をディスクトレーのディスク配置面と直交する方向に移動させる機構を必要とするので、装置の小型化、薄型化がより困難になるという欠点がある。
【0011】
尚、ディスクトレーにターンテーブルやピックアップを一体として組み付けた縦型ディスク駆動装置も知られるが、その種の装置ではディスクトレーにディスクを載せる際などにピックアップに指先が触れ、ピックアップ機能を損ねてしまう可能性がある。
【0012】
本発明は以上のような事情に鑑みて成されたものであり、その目的は従来装置に比べて簡易構造でありながらディスクトレーに対するディスクの配置や取り出しが容易で、奥行きの小さい薄型テレビなどにも組み込むことのできる簡便なトレー搬送方式の縦型ディスク駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記目的を達成するため、
ディスクを回転させるためのターンテーブル7と、該ターンテーブル7を内蔵する筐体1と、を有するディスク駆動装置であって、
ターンテーブル7の軸線に直交する支点軸4d回りに旋回可能とされて、筐体1からターンテーブル7の軸線方向に張り出すイジェクト位置と、ターンテーブル7よりも筐体1の内部側に退避したドライブ位置と、の間を旋回移動するディスクトレー4を備えることを特徴とする。
【0014】
加えて、ディスクトレー4は、前記ドライブ位置において外向きとなる面にディスクDを配置するための凹状のディスク配置部4aを有することを特徴とする。
【0015】
又、支点軸4dは、ディスクトレー4がイジェクト位置とドライブ位置との間を旋回移動するときに上下方向に直進移動する移動支点であることを特徴とする。
【0016】
更に、ディスクトレー4の旋回移動に連動し、前記ドライブ位置におけるディスクトレー4を覆う状態となるフロントドア2を有し、
そのフロントドア2は、該フロントドア2が前記ドライブ位置のディスクトレー4を覆う状態に位置するときに、ターンテーブル7と協同してディスクの中心部をチャッキングする回転自在なクランプ盤3を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るディスク駆動装置によれば、
ディスクトレーが、ターンテーブルの軸線方向に張り出すイジェクト位置と、ターンテーブルよりも筐体の内部側に退避したドライブ位置と、の間を旋回移動する構成とされていることから、ディスクトレーの旋回移動のみでターンテーブルにディスクを装着したり、そのディスクをディスクトレーに載せてイジェクトしたりすることができる。よって、従来装置のようにターンテーブルやピックアップをターンテーブルの軸線方向に移動させる機構が不要となり、装置構造を簡易化することができる。
【0018】
しかも、ディスクトレーが上記2つの位置の間で旋回移動することにより、従来装置のようにディスクトレーを筐体の奥まで引き込む機構も不要となる。このため、装置構造を更に簡易化することができるほか、情報の記録再生機として薄型テレビなどの奥行きの小さな機器にも組み込むことが可能になる。
【0019】
加えて、ディスクトレーは、ドライブ位置において外向きとなる面にディスクDを配置するための凹状のディスク配置部4aを有することから、ディスクトレーをイジェクト位置に旋回移動させたときには、ディスク配置部を上向きとすることができる。よって、ユーザの利き手に拘わらずディスクの配置や取り出しを容易に行え、自動車内などの振動伝播系での使用に際してもイジェクト位置におけるディスクトレーからディスクが脱落してしまうことがない。
【0020】
又、支点軸は、ディスクトレーがイジェクト位置とドライブ位置との間を旋回移動するときに上下方向に直進移動する移動支点とされることから、ディスクトレーの旋回に要する占有スペースを小さくすることができる。このため、筐体に大きな開閉部分を設けずしてディスクトレーの旋回移動を行うことが可能になる。
【0021】
更に、ディスクトレーの旋回移動に連動し、ドライブ位置におけるディスクトレーを覆う状態となるフロントドアを有することから、そのフロントドアによりディスクトレーの出入り部分を遮蔽して体裁を損なわず、防塵効果も得られ、しかもフロントドアにはターンテーブルと協同してディスクの中心部をチャッキングする回転自在なクランプ盤が設けられることから、ディスクをターンテーブルに押し付けたまま確実に回転させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係るディスク駆動装置の具体的な構成例を図面に基づいて詳しく説明する。図1はディスクを回転駆動するときの状態であり、図2にはディスクをイジェクトするときの状態を示している。
【0023】
図1、図2において、1は本発明に係るディスク駆動装置の外装を成す筐体であり、その下部前面側は上縁を自由端として開閉動作するフロントドア2とされる。図2に示されるように、フロントドア2の裏側には回転自在なクランプ盤3が設けられており、フロントドア2が図1の如く閉じられた状態でそのクランプ盤3と後述するターンテーブルとによりディスクDの中心部がチャッキングされるようになっている。
【0024】
又、図2において、4はフロントドア2が開かれることによって現れるディスクトレーであり、このディスクトレー4は、筐体1から水平状態(ターンテーブルの軸線方向)に張り出すイジェクト位置(図2参照)と、後述するターンテーブルに平行して垂直姿勢となるドライブ位置と、の間を旋回移動し、図2に示されるイジェクト位置では当該ディスクトレー4にディスクを配置可能とされる。特に、ディスクトレー4にはイジェクト位置において上向きとなる面(ドライブ位置では外向きとなる面)に凹状のディスク配置部4aが形成される。そのディスク配置部4aは同心円状の第1配置部4a1と第2配置部4a2から成り、このうち第1配置部4a1に小径(例えば直径8cm)のディスクが嵌合配置され、第2配置部4a2には大径(例えば直径12cm)のディスクが配置可能とされる。
【0025】
このようなディスク駆動装置によれば、フロントドア2に内部を透視可能な窓を設けることにより、ディスクDの回転状態を視認可能となるので、ディスクDの表面(印刷面)のデザインを工夫して視覚的な趣向を凝らすことができ、しかもディスクDの裏面(記録面)が常にユーザの反対側に向けられるので当該記録面が汚損されることを防止できる。
【0026】
尚、図2において、5はディスクトレー4に取り付けたピックアップカバーであり、このピックアップカバー5は、ディスクトレー4がイジェクト位置にあるときに後述するピックアップを覆って該ピックアップに塵埃が付着したりユーザが触れたりするのを防止する働きをする。ここに、上記のフロントドア2は、ディスクトレー4の旋回移動に連動して開閉動作を行うが、ディスクトレー4がイジェクト位置にあるときには、フロントドア2が傾斜姿勢に開かれたままディスクトレー4の下方領域を覆うようになるので、そのフロントドア2によってもピックアップがユーザにより触れられることを防止することができる。
【0027】
又、6はフロントドア2より上方に設けられるスライドドアであり、このスライドドア6はディスクトレー4の旋回移動を許容するべく上下方向に摺動し、ディスクトレー4が上述のドライブ位置まで旋回移動したときには、該スライドドア6と上述のフロントドア2とにより筐体1の前面開閉部分が図1のように密閉される構成となっている。
【0028】
図3はドライブ位置のディスクトレー4を実線で示している。尚、図3において、7はディスクDを回転させるターンテーブル、8はターンテーブル7を回転駆動するモータ、9はディスクDに情報を記録したりその記録情報を読み出したりするのに用いられるピックアップであり、ディスクトレー4がドライブ位置にあるときには、ターンテーブル7がその軸線を水平方向に向けたまま、上記クランプ盤3と協同してディスクDの中心部をチャッキングしてディスクDの回転駆動を行い、ディスクトレー4はターンテーブル7に装着されたディスクDに対して平行な垂直姿勢(ターンテーブル7よりも筐体1の内部側に退避していれば、必ずしもディスクに対して平行であることに限らず、ディスクに対して若干傾いた状態でもよい)になる。又、ピックアップ9は、回転されるディスクDの盤面に沿ってその半径方向に移動しながら、情報の読み出しや書き込みを行う。
【0029】
ここに、ディスクトレー4は、その旋回移動により、ドライブ位置ではターンテーブル7にディスクDを引き渡してディスクDから離間し、ディスクDをイジェクトするときにはターンテーブル7側に旋回移動してターンテーブル7からディスクDを引き取るよう動作する。
【0030】
次に、ディスクトレーの構成を説明する。図4はディスクトレーの平面図、図5は同トレーを表面側からみた透視図である。これらの図で明らかなように、ディスクトレー4はその中央部から一端側に開放せしめた切欠部4bを有する平面視略門形の形態で、切欠部4bの開放側とは反対の端縁には左右一対のブラケット4cが突設され、その両ブラケットからディスクトレー4の幅方向に支点軸4d(ヒンジピン)が突出されている。
【0031】
切欠部4bは、図5のようにピックアップ9の移動経路に対応する位置に形成されるもので、ディスクDをターンテーブル7に装着するときには、係る切欠部4bの位置でターンテーブル7がディスクトレー4をその厚さ方向(図示面直角方向)に透過することが許容され、ターンテーブル7に装着されたディスクDに対しては切欠部4bを通じてピックアップ9からレーザ光を照射することが可能とされる。
【0032】
又、支点軸4dは、ディスクトレー4が上述のイジェクト位置とドライブ位置との間を旋回移動するときの支点となる移動支点で、ディスクトレー4の旋回移動時には当該支点軸4dが自転しながら上下方向(ターンテーブル7の軸線と直交する方向)に直進移動する構成とされている。
【0033】
一方、図4に示されるように、ディスクトレー4に形成される上記ディスク配置部4aにおいて、第1配置部4a1にはその周壁を部分的に切り欠いてなるスリット4eが形成され、第2配置部4a2には切欠部4bの開放側の周縁に沿って円弧状の凸条4fが形成される。スリット4eと凸条4fは、ディスクトレー4の旋回移動時にディスク配置部4aからディスクが脱落するのを防止するためのもので、このうちスリット4eの近隣には、第1配置部4a1に配置されたディスクを保持するためのリテーナプレート10と該リテーナプレートを作動させるためのトリガープレート11とが設けられる。
【0034】
リテーナプレート10とトリガープレート11は、スリット4eに隣接してディスクトレー4の裏面側に設けられており、一方のリテーナプレート10は図5に示される軸部4gを中心に揺動可能とされ、他方のトリガープレート11はディスクトレー4に形成されるガイドレール4hに沿ってリテーナプレート10に対し接近する方向と離間する方向とに移動可能とされている。このうち、リテーナプレート10は、その一端部に上述のスリット4eに対応する爪部10aと後述する凸部10bが形成されると共に、リテーナプレート10の他端側はバネ12によりディスクトレー4の部位に繋がれ、そのバネ12により爪部10aが第1配置部4a1に向かうような付勢力が与えられている。特に、リテーナプレート10には、図6のように一端が開放された係止溝10cが形成されている。
【0035】
図7は、リテーナプレート10とトリガープレート11の配置部分をディスクトレー4の裏面側からみた拡大図である。この図で明らかなように、トリガープレート11にはリテーナプレート10の係止溝10cに嵌るロックピン11aが形成され、そのロックピン11aが係止溝10cに嵌ることでリテーナプレート10がバネ12の付勢力に抗して図7の実線位置に拘束されるようにしてある。そして、係るトリガープレート11が図7の矢印方向(図7の上側)に移動してロックピン11aが係止溝10cから脱出されたとき、リテーナプレート10がバネ12の作用により図7の時計回りに揺動され、しかして爪部10aが上記スリット4e(図4参照)から第1配置部4a1内に進入してディスクDの端面に押し付き、これによって当該ディスクDの保持が行われるようになっている。
【0036】
尚、図7に示されるように、トリガープレート11にはその長手方向(移動方向)に沿ってラック部11bが形成され、そのラック部11bに動力伝達が行われることにより当該トリガープレート11がその長手方向に移動しながらリテーナプレート10を上記のように作動させるようになっているが、ディスクトレー4が上記ドライブ位置とイジェクト位置にあるときは、リテーナプレート10によるディスクDの保持は行われず(リテーナプレート10が図7の実線位置に拘束され)、ディスクトレー4がドライブ位置とイジェクト位置との間で旋回移動する途上の傾斜姿勢において、リテーナプレート10によるディスクDの保持動作が行われるようなメカニズムとなっている。
【0037】
次に、図8はディスクトレー4と上記したピックアップカバー5との斜視分解図を示す。この図で明らかなように、ピックアップカバー5は矩形状の薄板で、その一角に直角に折れ曲がった長短2つの脚部5a,5bが形成されると共に、左右両側縁には一対の軸部5cが形成される。又、脚部5aが形成される端縁とは反対の端縁には円弧状の切欠部5dが形成される。この切欠部5dは、ディスクトレー4がドライブ位置にあるときピックアップカバー5が上記ターンテーブルに干渉するのを防止するためのもので、該切欠部5dの曲率中心はドライブ位置におけるディスクトレー4のディスク配置部4aの中心に一致する。
【0038】
一方、ディスクトレー4のブラケット4cには、ピックアップカバー5の軸部5cを回転自在に支持する孔部4iが形成される。そして、ピックアップカバー5はその軸部5cを孔部4iに差し込んでディスクトレー4の裏面側に揺動自在に取り付けられる。特に、軸部5cの外周にはトーションバネ5eが設けられ、その一端がピックアップカバー5の裏面側に係止されると共に、他端がディスクトレー4の部位に係止される。
【0039】
これにより、ピックアップカバー5は図8の時計回り(CW)に付勢され、ディスクトレー4に平行してその裏面に密着するようになっている。但し、ディスクトレー4がドライブ位置からイジェクト位置に移行するとき、ピックアップカバー5はディスクトレー4に追従して旋回せず、上記脚部5a,5bからトーションバネ5eの付勢力に抗する反力が与えられることによりディスクトレー4の裏面より離脱してディスクトレー4と直交する状態となる。
【0040】
図9はディスクトレー4がドライブ位置とイジェクト位置にあるときのピックアップカバーの状態を示し、図10はディスクトレー4が旋回移動しているときのピックアップカバー5の状態を示している。
【0041】
図9から明らかなように、ディスクトレー4が一点鎖線で示されるイジェクト位置にあるとき、ピックアップカバー5はディスクトレー4に直交してピックアップ9を覆い、ディスクトレー4が実線で示されるドライブ位置にあるときには、ピックアップカバー5がピックアップ9およびターンテール7上から退けられる。
【0042】
又、図10のように、ディスクトレー4がドライブ位置とイジェクト位置との間を旋回移動するとき、ピックアップカバー5はその脚部5aが床板13に摺接して図10の時計回りの旋回を規制されたまま、ターンテーブル7に干渉せぬようその上を傾斜姿勢で通過し、ディスクトレー4が図10の一点鎖線で示されるイジェクト位置に達したときには、ピックアップカバー5が脚部5bを床板13に接したまま、ディスクトレー4に直交してピックアップ9を覆うようになる。
【0043】
よって、ピックアップ9が外部に露出されてユーザに触れられることがなく、しかもピックアップカバー5によって外部からの塵埃の侵入が防止されるので、ピックアップ9の機能が損なわれず、長期に亘って高品質を維持することができる。
【0044】
尚、図10において、床板13はターンテーブル7やピックアップ9に対向する部分を開口せしめた段付きの板材で、その裏側(図10の右側)にはディスクトレー4の旋回移動に必要な伝動部材が配置される。
【0045】
次に、ディスクトレー4の旋回移動に関係する内部機構について説明する。図11〜図13において、14はディスク駆動装置の背面を成すベースフレームであり、その左右両側には直角に立ち上がる側板15,16が設けられる。
【0046】
図11、図12のように、両側板15,16にはディスクトレー4の支点軸4dを移動案内するガイド溝15a,16aが形成され、それらガイド溝15a,16aに沿ってディスクトレー4の支点軸4dが摺動自在に支持される構成とされている。
【0047】
特に、一方の側板15には、図11のようにガイド溝15aに平行する第2ガイド溝15bが形成され、他方の側板16には、図12のようにガイド溝16aの長さ方向に沿って摺動可能なスライドプレート17が取り付けられる。
【0048】
又、図11および図12において、18は図1、図2に示したフロントドア2を構成するドアフレームであり、その両端は軸部18aにより両側板15,16に結節され、該ドアフレーム18の自由端側の中央に上記のクランプ盤3(図12では省略)が取り付けられている。又、19,20は左右一対の旋回アームであり、その各一端は軸部19a(旋回アーム20の軸部は図示せず)にて両側板15,16に結節され、他方の各一端は軸部19b,20bにてディスクトレー4の両側縁中央部に結節されている。特に、一方の旋回アーム19の一端には軸部19bを中心とする扇形のギア部19cが形成され、そのギア部19cが図7などに示したトリガープレート11のラック部11bと噛み合わされている。他方、旋回アーム20には図12に示される如くその中央部にピン20cが突設される。
【0049】
図12において、17aはピン20cに対応してスライドプレート17に形成したカム溝、17bはカム溝17aに近接してスライドプレート17に形成したカム溝、21は側板16とドアフレーム18とを連接するリンクであり、リンク21の中間部分にはカム溝17bに嵌る従節ピン21aが突設され、スライドプレート17にはリンク21と側板16との結節点21bに対応して逃げ溝17cが形成される。
【0050】
又、図11および図12から明らかなように、スライドプレート17と側板15との間には図1、図2に示したスライドドア6が掛け渡され、これがスライドプレート17に連動して上下方向に移動するようにしてある。
【0051】
ここに、スライドプレート17が図12の上下方向に移動すると、そのカム溝17bで従節ピン21aが加圧されることによりリンク21が側板16との結節点21bを支点に揺動してドアフレーム18に開閉運動を行わせるようになる一方、旋回アーム20はピン20cがカム溝17aに嵌まり込んでいる間だけスライドプレート17から旋回駆動力を与えられてディスクトレー4を旋回移動せしめるが、スライドプレート17の移動に伴って旋回アーム20のピン20cがカム溝17aから外れると、ディスクトレー4に対する旋回駆動力が旋回アーム20から後述する伝動系に切り換わり、旋回アーム20が上記とは逆にディスクトレー4の旋回移動に追従して旋回される構成とされている。
【0052】
尚、一対の旋回アーム19,20は同調して駆動するよう軸部19a側が図示せぬ連結板により連結されており、その旋回時には図14のように一方の旋回アーム19に形成されたギア部19cにより、トリガープレート11が移動されて上記のようなディスクの保持動作と解放動作が行われる。
【0053】
又、ディスクトレー4がドライブ位置と図12に示されるイジェクト位置との間を旋回移動する途上において、ドアフレーム18はディスクトレー4の旋回移動を阻害せぬよう図12の実線で示される最大開放状態となるが、ディスクトレー4がイジェクト位置に達するときにはドアフレーム18が閉鎖方向に向かって図12の一点鎖線で示される位置となり、逆にドアフレーム18が閉じられるとき(ディスクトレー4がイジェクト位置からドライブ位置に旋回移動するとき)には、ドアフレーム18が図12の一点鎖線で示す位置から実線位置に開度を拡大させた後で閉鎖方向に向かうという逆行動作が行われる。
【0054】
次に、図13において、ベースフレーム14には、ディスクトレー4に旋回移動を行わせるトレー移動機構22のほか、ターンテーブル7やピックアップ9が組み付けられる。トレー移動機構22は、上記スライドプレート17や旋回アーム19,20を含んで構成される伝動系で、23はその駆動源を成すモータを示している。
【0055】
モータ23の駆動軸にはプーリ24が取り付けられ、そのプーリ24とモータ23に隣接するプーリ25とにはベルトBが巻き掛けられる。25aはプーリ25と一体に形成されるギア部、26はギア部25aと噛み合う大径ギア部26aを有するアイドルギア26、27はアイドルギア26の小径ギア部26bと噛み合う大径ギア部27aを有するカムギア、28はカムギア27の小径ギア部27bと噛み合う大径ギア部28aを有する出力ギアであり、出力ギア28の小径ギア部28bは可動ラック29に噛み合わされている。尚、これらの部材23〜29は図10に示した床板13により覆われる。
【0056】
ここに、カムギア27の小径ギア部27bおよび出力ギア28の大径ギア部28aは、それぞれ円周の一部が欠歯部27c,28cとされる欠歯ギアであり、このうち出力ギア28には、欠歯部28cの位置にてカムギア27の小径ギア部27b上に突き出す係止爪28dが形成される。一方、カムギア27には係止爪28dに対応して小径ギア部27bの上面外周縁(欠歯部27cの一端位置)に係止突起27dが形成され、欠歯部27c,28cにより断絶されたカムギア27と出力ギア28の噛合いが、係止突起27dと係止爪28dとの係合により復帰されるようになっている。
【0057】
又、カムギア27の小径ギア部27bの上面には、後述するディスク解放レバーを作動させるためのカム溝27eが形成され、カムギア27の底部には揺動レバー30を作動させるためのカム溝27fが形成される。
【0058】
揺動レバー30は、モータ23の駆動力を上記スライドプレート17に伝達して該スライドプレート17を移動させるもので、その一端部にはカム溝27fに嵌る従節ピン30aが設けられ、他端部にはスライドプレート17に形成される突起17dと係合する係止部30bが形成される。尚、揺動レバー30は、ベースフレーム14との結節点30cを中心に揺動可能とされると共に、ベースフレーム14との間にバネ31で繋がれて図13の反時計回りに付勢されている。
【0059】
又、図15から明らかなように、カムギア27のカム溝27fは、その一端から他端に向かってカムギア27の中心との距離が漸次小さくなる第1経路27f1と、カムギア27の中心との距離が漸次大きくなる第2経路27f2と、が連続する形態であり、このためカムギア27が一方向に回転する間に図13に示した揺動レバー30は正逆に揺動し、以って図12に示したドアフレーム18の開閉時における一時的な逆行動作が実現されている。
【0060】
一方、図13において、上記の可動ラック29は、その長手方向に摺動可能にしてベースフレーム14に配置されるラック部品で、これにはピニオン32が回転自在に取り付けられている。又、ベースフレーム14には、可動ラック29に平行して固定ラック14aが形成されるほか、可動ラック29に隣接して該可動ラック29と同方向に移動可能なキャリヤプレート33が設けられ、そのキャリヤプレート33にはフックレバー34が揺動自在に結合されている。
【0061】
図16、図17で明らかなように、キャリヤプレート33にはラック部33aが形成されており、そのラック部33aと固定ラック14aにピニオン32が常時噛み合う構成とされている。又、図17で明らかなように、キャリヤプレート33は、フックレバー34の先端部との間にディスクトレーの支点軸4dを挟み込むための凹部35を形成する突起33bを有している。尚、図17において、34aはフックレバー34に形成したガイドピンで、このガイドピン34aは図11に示した第2ガイド溝15bに嵌め込まれる。又、34bはフックレバー34の揺動中心を成す結節ピンであり、その結節ピン34bにてフックレバー34がキャリヤプレート33に揺動自在に結合されている。
【0062】
そして、以上のようなトレー移動機構22によれば、出力ギア28により可動ラック29がその長さ方向に移動されると、これに取り付けられたピニオン32が可動ラック29と同方向に移動されつつ固定ラック14aにより回転されるために、該ピニオン32と噛み合うラック部33aを有するキャリヤプレート33が可動ラック29より高速で可動ラック29と同方向に移動する。従って、図17に示される如くキャリヤプレート33とフックレバー34とより支点軸4dを挟み込まれたディスクトレー4は、その支点軸4dがキャリヤプレート33の移動方向(ガイド溝15aに沿う上下方向)に移動され、これにより当該ディスクトレー4の旋回移動が行われる。
【0063】
次に、図18において、36は上述のディスク解放レバーを示す。このディスク解放レバー36は、上記ディスクトレーがドライブ位置に達したときリテーナプレート10によるディスクの保持を解除するもので、その一端にはリテーナプレート10の凸部10bに対応する押圧片36aが形成される。ここに、係るディスク解放レバー36は図10に示した床板13上にあって出力ギア28と同軸上に揺動自在に設けられており、その一端には上記押圧片36aが形成され、他端にはカムギア27のカム溝27eに嵌まり込む従節ピン36bが設けられる。一方、同図18から明らかなように、カム溝27eは無端のリング形で、その一部はカムギア27の外周側に張り出した膨出部27e1とされている。そして、その膨出部27e1に従節ピン36bが位置したとき、他方の押圧片36aによりリテーナプレート10の凸部10bが押圧されてリテーナプレート10が図18の時計回りに揺動され、これによりリテーナプレート10の爪部10aがディスクの端面から離間して該リテーナプレート10によるディスクの保持が解除されるようになっている。尚、従節ピン36bが膨出部27e1に位置するタイミングは、ディスクトレーがドライブ位置に達するタイミングに一致し、以ってディスクトレーがドライブ位置に達したときはディスクをリテーナプレート10から解放し、該ディスクを上記ターンテーブルで回転自在に支持することができる。
【0064】
ここで、以上のように構成されるディスク駆動装置の動作について概説すれば、ディスクトレーがドライブ位置にある状態(図1の状態)において、図示せぬスイッチの操作で図13に示されるモータ23を同図反時計回りに駆動すると、カムギア27が反時計回りに回転しながら揺動レバー30を時計回りに揺動せしめる。尚、このとき、出力ギア28はカムギア27と噛み合わずして静止状態を保っている。
【0065】
又、揺動レバー30が上記のように時計回りに揺動されると、スライドプレート17が図13の上方に向かって移動を開始する。これにより、図12に示したドアフレーム18が開放され始めるほか、旋回アーム20がそのピン20cをスライドプレート17のカム溝17aにより押圧されて旋回を始めることにより、ディスクトレー4が図12の一点鎖線で示すイジェクト位置に向かって旋回移動を開始する。
【0066】
そして、旋回アーム20のピン20cがカム溝17aから脱出するのと同期して図13に示されるカムギア27の係止突起27dが出力ギア28の係止爪28dに係合することにより、出力ギア28の回転が開始される。これにより、キャリヤプレート33とフックレバー34が図17のようにディスクトレー4の支点軸4dを支持しながら同図17の下方に向かって高速移動するようになるため、ディスクトレー4がイジェクト位置に向かって急速に旋回移動するようになる。
【0067】
尚、キャリヤプレート33とフックレバー34とによるディスクトレー4の旋回移動が進められる途上において、揺動レバー30の従節ピン30aの軌道がカム溝27fの第1経路27f1から第2経路27f2(図15参照)に移行するため、スライドプレート17は図12の実線位置に達した後、同図12の下方に逆行する。従って、ドアフレーム18は図12の実線位置まで開放してディスクトレー4の旋回移動を許容し、ディスクトレー4がイジェクト位置に達したときには同図一点鎖線で示される位置まで旋回して開度を縮小する。
【0068】
又、ディスクトレー4がイジェクト位置に達した段階では、上記のようにピックアップ9がピックアップカバー5で覆われるほか(図10参照)、旋回アーム19のギア部19cによるトリガープレート11の移動により、リテーナプレート10の揺動が行われてディスクの保持が解除される(図7、図14参照)。よって、イジェクト位置におけるディスクトレー4からイジェクトされたディスクを取り出すことができる。
【0069】
次に、ディスクトレーがイジェクト位置にある状態(図2の状態)において、図示せぬスイッチの操作で図13に示されるモータ23を同図時計回りに駆動すると、カムギア27と出力ギア28が噛み合った状態となっているために、キャリヤプレート33とフックレバー34が図13の下方位置から同図実線位置に向かって上方移動されるのであり、このためディスクトレーがドライブ位置に向かって旋回移動を開始する。
【0070】
このとき、旋回アーム19がディスクトレー4にて旋回されることにより、そのギア部19cに噛み合うトリガープレート11を介してリテーナプレート10の揺動が開始されてディスクが保持されるようになる(図7、図14参照)。尚、リテーナプレート10で保持されるディスクは、第1配置部4a1に配置された小径ディスクであるが、第2配置部4a2に配置された大径ディスクも凸条4f(図4参照)によりその外周縁を支持されるため脱落が防止される。
【0071】
一方、ディスクトレー4がドライブ位置に向かって旋回移動するとき、カムギア27はそのカム溝27f(図15参照)により、揺動レバー30を図13の時計回りに揺動させた後、その揺動方向を反転させるのであり、このためスライドプレート17が上方移動後に下方移動して図12に示されるドアフレーム18を閉鎖方向に旋回させるようになる。
【0072】
そして、スライドプレート17が所定位置まで移動すると、そのカム溝17aに図12に示される旋回アーム20のピン20cが導入するために、ディスクトレー4の旋回移動が旋回アーム20を介してスライドプレート17で行われるようになる。
【0073】
尚、この段階でフックレバー34は図13の実線で示される上限位置に達し、そのガイドピン34aが図11に示される第2ガイド溝15bの端部(図11の上端)に位置するために、スライドプレート17によるディスクトレー4の旋回移動時にはフックレバー34が図17の一点鎖線で示す位置に揺動してディスクトレー4の支点軸4dを解放する。よって、ディスクトレー4はその支点軸4dを図17の上方に移動させながらイジェクト位置に達することになる。このとき、図18のディスク解放レバー36により、リテーナプレート10がバネ12の付勢力に抗して揺動されてディスクが解放されつつ、同ディスクがターンテーブル7とクランプ盤3により中心部をチャッキングされ(図3参照)、更にピックアップカバー5がピックアップ9上から排除されてディスクの記録再生準備が整えられることになる。
【0074】
以上、本発明に係るディスク駆動装置の好適な構成例を説明したが、ディスクトレー4は円形のディスク配置部4aを形成するものに限らず、MD(ミニディスク)のようにカートリッジ付のディスクに対応して断面C字形の形態とするなどしてもよい。
【0075】
又、上記例ではディスクトレーの支点軸4dを移動支点としたが、これを定位置で回転のみ許容される回転支点としてもよい。但し、支点軸4dを回転支点とした場合には図19(a)のようにディスクトレー4の旋回移動による占有スペースが大きくなって筐体の開閉部分の高さ寸法W1を大きくする必要が生ずるのに対し、支点軸4dを移動支点とした場合には、図19(b)のようにディスクトレー4の旋回移動による占有スペースが小さくなって筐体の開閉部分の高さ寸法W2を小さくできるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明に係るディスク駆動装置を示す斜視図(ディスク回転時の状態)
【図2】同装置を示す斜視図(ディスクイジェクト時の状態)
【図3】ディスクがターンテーブルに装着された状態を示す説明図
【図4】ディスクトレーの平面図
【図5】ディスクトレーを表面側からみた透視図
【図6】ディスクトレーに配置されたディスクを保持する部品を示す平面図
【図7】ディスクが保持された状態を示す部分拡大図
【図8】ディスクトレーとピックアップカバーの斜視分解図
【図9】ディスクトレーのイジェクト位置とドライブ位置を示す説明図
【図10】ディスクトレーの旋回移動時の状態を示す説明図
【図11】本装置の内部構造を部分的に示す右側面図
【図12】本装置の内部構造を部分的に示す左側面図
【図13】本装置の内部構造を部分的に示す正面図
【図14】ディスクトレーの一部を側方から透視図
【図15】本装置の構成部品を示す底面図
【図16】ディスクの旋回移動に用いる部品の構成図
【図17】図16を側方からみた説明図
【図18】ディスクトレーに保持されたディスクを解放する機構を示す説明図
【図19】ディスクトレーの旋回移動時の動作領域を示す説明図
【符号の説明】
【0077】
1 筐体
2 フロントドア
3 クランプ盤
4 ディスクトレー
4a ディスク配置部
4d 支点軸
5 ピックアップカバー
7 ターンテーブル
9 ピックアップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク(円盤状記録媒体)を回転駆動しながらオーディオ情報やビジュアル情報を記録したり、その記録情報を再生したりするのに用いられるディスク駆動装置に係わり、特にディスクを回転させるのに用いられるターンテーブルの軸線が水平方向を指向する状態に配置される縦型のディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディスク駆動装置として、ターンテーブル上にディスクを手動で載せるもの、マガジン内に収納された複数のディスクから選択された一枚のディスクを取り出してターンテーブル上に自動搬送するオートチェンジャ機能を備えたもの、及びディスクをトレーに載せて搬送するトレー搬送方式のものが知られる。
【0003】
このうち、トレー搬送方式のディスク駆動装置では、ディスクを載せたディスクトレーが水平状態を保って移動しながら、水平状に配置されるターンテーブル上までディスクを搬送する横型が主流であるが、コンピュータ本体などに内蔵されるものではターンテーブルの軸線が水平方向に指向される縦型も多い(例えば、特許文献1)。
【0004】
ここに、トレー搬送方式の縦型ディスク駆動装置によれば、ディスクトレーに載せられたディスクをターンテーブルに装着できるよう、ディスクトレーはターンテーブルに平行して垂直姿勢に配置され、ターンテーブルの軸線と直交する方向に平行移動する構成とされるものが一般的であるが、その種のディスクトレーは左右いずれかの面にディスクが配置されるようになっているので、ユーザによってはディスクトレーに対するディスクの配置が困難になることがある。
【0005】
例えば、ディスクの配置面が向かって右側にあるとき、左利きのユーザにとってはディスクの配置が困難となり、逆にディスクの配置面が向かって左側にあるときには右利きのユーザにとってディスクの配置が困難になる。
【0006】
そこで、ディスクトレーがターンテーブルの軸線と直交する方向に沿って装置本体の内部と外部との間を平行移動する構成の縦型ディスク駆動装置にして、そのディスクトレーが外部に突出されたとき垂直姿勢から水平姿勢に変換するようにしたものが提案されている(例えば、特許文献2)。
【0007】
【特許文献1】特開平10−064150号公報(段落0015、図2)
【0008】
【特許文献2】特開平09−320162号公報(段落0006、0017、0022、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2によれば、ディスクトレーの角度を変更する機構のほか、ディスクトレーをターンテーブルの軸線と直交する方向に平行移動させる機構を必要とするので装置全体が複雑な構造となるし、ディスクトレーが垂直姿勢のまま装置本体内に引き込まれるので、奥行きの大きな装置でなければ適用できないという問題がある。
【0010】
加えて、特許文献1、2のいずれもディスクトレーがターンテーブルの軸線と直交する方向に沿って直進平行移動する構成であるから、これに載せたれたディスクをターンテーブルに装着するには、ターンテーブルを含むユニット(通常、トラバースメカと呼ばれるもの)をディスクトレーのディスク配置面と直交する方向に移動させる機構を必要とするので、装置の小型化、薄型化がより困難になるという欠点がある。
【0011】
尚、ディスクトレーにターンテーブルやピックアップを一体として組み付けた縦型ディスク駆動装置も知られるが、その種の装置ではディスクトレーにディスクを載せる際などにピックアップに指先が触れ、ピックアップ機能を損ねてしまう可能性がある。
【0012】
本発明は以上のような事情に鑑みて成されたものであり、その目的は従来装置に比べて簡易構造でありながらディスクトレーに対するディスクの配置や取り出しが容易で、奥行きの小さい薄型テレビなどにも組み込むことのできる簡便なトレー搬送方式の縦型ディスク駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記目的を達成するため、
ディスクを回転させるためのターンテーブル7と、該ターンテーブル7を内蔵する筐体1と、を有するディスク駆動装置であって、
ターンテーブル7の軸線に直交する支点軸4d回りに旋回可能とされて、筐体1からターンテーブル7の軸線方向に張り出すイジェクト位置と、ターンテーブル7よりも筐体1の内部側に退避したドライブ位置と、の間を旋回移動するディスクトレー4を備えることを特徴とする。
【0014】
加えて、ディスクトレー4は、前記ドライブ位置において外向きとなる面にディスクDを配置するための凹状のディスク配置部4aを有することを特徴とする。
【0015】
又、支点軸4dは、ディスクトレー4がイジェクト位置とドライブ位置との間を旋回移動するときに上下方向に直進移動する移動支点であることを特徴とする。
【0016】
更に、ディスクトレー4の旋回移動に連動し、前記ドライブ位置におけるディスクトレー4を覆う状態となるフロントドア2を有し、
そのフロントドア2は、該フロントドア2が前記ドライブ位置のディスクトレー4を覆う状態に位置するときに、ターンテーブル7と協同してディスクの中心部をチャッキングする回転自在なクランプ盤3を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るディスク駆動装置によれば、
ディスクトレーが、ターンテーブルの軸線方向に張り出すイジェクト位置と、ターンテーブルよりも筐体の内部側に退避したドライブ位置と、の間を旋回移動する構成とされていることから、ディスクトレーの旋回移動のみでターンテーブルにディスクを装着したり、そのディスクをディスクトレーに載せてイジェクトしたりすることができる。よって、従来装置のようにターンテーブルやピックアップをターンテーブルの軸線方向に移動させる機構が不要となり、装置構造を簡易化することができる。
【0018】
しかも、ディスクトレーが上記2つの位置の間で旋回移動することにより、従来装置のようにディスクトレーを筐体の奥まで引き込む機構も不要となる。このため、装置構造を更に簡易化することができるほか、情報の記録再生機として薄型テレビなどの奥行きの小さな機器にも組み込むことが可能になる。
【0019】
加えて、ディスクトレーは、ドライブ位置において外向きとなる面にディスクDを配置するための凹状のディスク配置部4aを有することから、ディスクトレーをイジェクト位置に旋回移動させたときには、ディスク配置部を上向きとすることができる。よって、ユーザの利き手に拘わらずディスクの配置や取り出しを容易に行え、自動車内などの振動伝播系での使用に際してもイジェクト位置におけるディスクトレーからディスクが脱落してしまうことがない。
【0020】
又、支点軸は、ディスクトレーがイジェクト位置とドライブ位置との間を旋回移動するときに上下方向に直進移動する移動支点とされることから、ディスクトレーの旋回に要する占有スペースを小さくすることができる。このため、筐体に大きな開閉部分を設けずしてディスクトレーの旋回移動を行うことが可能になる。
【0021】
更に、ディスクトレーの旋回移動に連動し、ドライブ位置におけるディスクトレーを覆う状態となるフロントドアを有することから、そのフロントドアによりディスクトレーの出入り部分を遮蔽して体裁を損なわず、防塵効果も得られ、しかもフロントドアにはターンテーブルと協同してディスクの中心部をチャッキングする回転自在なクランプ盤が設けられることから、ディスクをターンテーブルに押し付けたまま確実に回転させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係るディスク駆動装置の具体的な構成例を図面に基づいて詳しく説明する。図1はディスクを回転駆動するときの状態であり、図2にはディスクをイジェクトするときの状態を示している。
【0023】
図1、図2において、1は本発明に係るディスク駆動装置の外装を成す筐体であり、その下部前面側は上縁を自由端として開閉動作するフロントドア2とされる。図2に示されるように、フロントドア2の裏側には回転自在なクランプ盤3が設けられており、フロントドア2が図1の如く閉じられた状態でそのクランプ盤3と後述するターンテーブルとによりディスクDの中心部がチャッキングされるようになっている。
【0024】
又、図2において、4はフロントドア2が開かれることによって現れるディスクトレーであり、このディスクトレー4は、筐体1から水平状態(ターンテーブルの軸線方向)に張り出すイジェクト位置(図2参照)と、後述するターンテーブルに平行して垂直姿勢となるドライブ位置と、の間を旋回移動し、図2に示されるイジェクト位置では当該ディスクトレー4にディスクを配置可能とされる。特に、ディスクトレー4にはイジェクト位置において上向きとなる面(ドライブ位置では外向きとなる面)に凹状のディスク配置部4aが形成される。そのディスク配置部4aは同心円状の第1配置部4a1と第2配置部4a2から成り、このうち第1配置部4a1に小径(例えば直径8cm)のディスクが嵌合配置され、第2配置部4a2には大径(例えば直径12cm)のディスクが配置可能とされる。
【0025】
このようなディスク駆動装置によれば、フロントドア2に内部を透視可能な窓を設けることにより、ディスクDの回転状態を視認可能となるので、ディスクDの表面(印刷面)のデザインを工夫して視覚的な趣向を凝らすことができ、しかもディスクDの裏面(記録面)が常にユーザの反対側に向けられるので当該記録面が汚損されることを防止できる。
【0026】
尚、図2において、5はディスクトレー4に取り付けたピックアップカバーであり、このピックアップカバー5は、ディスクトレー4がイジェクト位置にあるときに後述するピックアップを覆って該ピックアップに塵埃が付着したりユーザが触れたりするのを防止する働きをする。ここに、上記のフロントドア2は、ディスクトレー4の旋回移動に連動して開閉動作を行うが、ディスクトレー4がイジェクト位置にあるときには、フロントドア2が傾斜姿勢に開かれたままディスクトレー4の下方領域を覆うようになるので、そのフロントドア2によってもピックアップがユーザにより触れられることを防止することができる。
【0027】
又、6はフロントドア2より上方に設けられるスライドドアであり、このスライドドア6はディスクトレー4の旋回移動を許容するべく上下方向に摺動し、ディスクトレー4が上述のドライブ位置まで旋回移動したときには、該スライドドア6と上述のフロントドア2とにより筐体1の前面開閉部分が図1のように密閉される構成となっている。
【0028】
図3はドライブ位置のディスクトレー4を実線で示している。尚、図3において、7はディスクDを回転させるターンテーブル、8はターンテーブル7を回転駆動するモータ、9はディスクDに情報を記録したりその記録情報を読み出したりするのに用いられるピックアップであり、ディスクトレー4がドライブ位置にあるときには、ターンテーブル7がその軸線を水平方向に向けたまま、上記クランプ盤3と協同してディスクDの中心部をチャッキングしてディスクDの回転駆動を行い、ディスクトレー4はターンテーブル7に装着されたディスクDに対して平行な垂直姿勢(ターンテーブル7よりも筐体1の内部側に退避していれば、必ずしもディスクに対して平行であることに限らず、ディスクに対して若干傾いた状態でもよい)になる。又、ピックアップ9は、回転されるディスクDの盤面に沿ってその半径方向に移動しながら、情報の読み出しや書き込みを行う。
【0029】
ここに、ディスクトレー4は、その旋回移動により、ドライブ位置ではターンテーブル7にディスクDを引き渡してディスクDから離間し、ディスクDをイジェクトするときにはターンテーブル7側に旋回移動してターンテーブル7からディスクDを引き取るよう動作する。
【0030】
次に、ディスクトレーの構成を説明する。図4はディスクトレーの平面図、図5は同トレーを表面側からみた透視図である。これらの図で明らかなように、ディスクトレー4はその中央部から一端側に開放せしめた切欠部4bを有する平面視略門形の形態で、切欠部4bの開放側とは反対の端縁には左右一対のブラケット4cが突設され、その両ブラケットからディスクトレー4の幅方向に支点軸4d(ヒンジピン)が突出されている。
【0031】
切欠部4bは、図5のようにピックアップ9の移動経路に対応する位置に形成されるもので、ディスクDをターンテーブル7に装着するときには、係る切欠部4bの位置でターンテーブル7がディスクトレー4をその厚さ方向(図示面直角方向)に透過することが許容され、ターンテーブル7に装着されたディスクDに対しては切欠部4bを通じてピックアップ9からレーザ光を照射することが可能とされる。
【0032】
又、支点軸4dは、ディスクトレー4が上述のイジェクト位置とドライブ位置との間を旋回移動するときの支点となる移動支点で、ディスクトレー4の旋回移動時には当該支点軸4dが自転しながら上下方向(ターンテーブル7の軸線と直交する方向)に直進移動する構成とされている。
【0033】
一方、図4に示されるように、ディスクトレー4に形成される上記ディスク配置部4aにおいて、第1配置部4a1にはその周壁を部分的に切り欠いてなるスリット4eが形成され、第2配置部4a2には切欠部4bの開放側の周縁に沿って円弧状の凸条4fが形成される。スリット4eと凸条4fは、ディスクトレー4の旋回移動時にディスク配置部4aからディスクが脱落するのを防止するためのもので、このうちスリット4eの近隣には、第1配置部4a1に配置されたディスクを保持するためのリテーナプレート10と該リテーナプレートを作動させるためのトリガープレート11とが設けられる。
【0034】
リテーナプレート10とトリガープレート11は、スリット4eに隣接してディスクトレー4の裏面側に設けられており、一方のリテーナプレート10は図5に示される軸部4gを中心に揺動可能とされ、他方のトリガープレート11はディスクトレー4に形成されるガイドレール4hに沿ってリテーナプレート10に対し接近する方向と離間する方向とに移動可能とされている。このうち、リテーナプレート10は、その一端部に上述のスリット4eに対応する爪部10aと後述する凸部10bが形成されると共に、リテーナプレート10の他端側はバネ12によりディスクトレー4の部位に繋がれ、そのバネ12により爪部10aが第1配置部4a1に向かうような付勢力が与えられている。特に、リテーナプレート10には、図6のように一端が開放された係止溝10cが形成されている。
【0035】
図7は、リテーナプレート10とトリガープレート11の配置部分をディスクトレー4の裏面側からみた拡大図である。この図で明らかなように、トリガープレート11にはリテーナプレート10の係止溝10cに嵌るロックピン11aが形成され、そのロックピン11aが係止溝10cに嵌ることでリテーナプレート10がバネ12の付勢力に抗して図7の実線位置に拘束されるようにしてある。そして、係るトリガープレート11が図7の矢印方向(図7の上側)に移動してロックピン11aが係止溝10cから脱出されたとき、リテーナプレート10がバネ12の作用により図7の時計回りに揺動され、しかして爪部10aが上記スリット4e(図4参照)から第1配置部4a1内に進入してディスクDの端面に押し付き、これによって当該ディスクDの保持が行われるようになっている。
【0036】
尚、図7に示されるように、トリガープレート11にはその長手方向(移動方向)に沿ってラック部11bが形成され、そのラック部11bに動力伝達が行われることにより当該トリガープレート11がその長手方向に移動しながらリテーナプレート10を上記のように作動させるようになっているが、ディスクトレー4が上記ドライブ位置とイジェクト位置にあるときは、リテーナプレート10によるディスクDの保持は行われず(リテーナプレート10が図7の実線位置に拘束され)、ディスクトレー4がドライブ位置とイジェクト位置との間で旋回移動する途上の傾斜姿勢において、リテーナプレート10によるディスクDの保持動作が行われるようなメカニズムとなっている。
【0037】
次に、図8はディスクトレー4と上記したピックアップカバー5との斜視分解図を示す。この図で明らかなように、ピックアップカバー5は矩形状の薄板で、その一角に直角に折れ曲がった長短2つの脚部5a,5bが形成されると共に、左右両側縁には一対の軸部5cが形成される。又、脚部5aが形成される端縁とは反対の端縁には円弧状の切欠部5dが形成される。この切欠部5dは、ディスクトレー4がドライブ位置にあるときピックアップカバー5が上記ターンテーブルに干渉するのを防止するためのもので、該切欠部5dの曲率中心はドライブ位置におけるディスクトレー4のディスク配置部4aの中心に一致する。
【0038】
一方、ディスクトレー4のブラケット4cには、ピックアップカバー5の軸部5cを回転自在に支持する孔部4iが形成される。そして、ピックアップカバー5はその軸部5cを孔部4iに差し込んでディスクトレー4の裏面側に揺動自在に取り付けられる。特に、軸部5cの外周にはトーションバネ5eが設けられ、その一端がピックアップカバー5の裏面側に係止されると共に、他端がディスクトレー4の部位に係止される。
【0039】
これにより、ピックアップカバー5は図8の時計回り(CW)に付勢され、ディスクトレー4に平行してその裏面に密着するようになっている。但し、ディスクトレー4がドライブ位置からイジェクト位置に移行するとき、ピックアップカバー5はディスクトレー4に追従して旋回せず、上記脚部5a,5bからトーションバネ5eの付勢力に抗する反力が与えられることによりディスクトレー4の裏面より離脱してディスクトレー4と直交する状態となる。
【0040】
図9はディスクトレー4がドライブ位置とイジェクト位置にあるときのピックアップカバーの状態を示し、図10はディスクトレー4が旋回移動しているときのピックアップカバー5の状態を示している。
【0041】
図9から明らかなように、ディスクトレー4が一点鎖線で示されるイジェクト位置にあるとき、ピックアップカバー5はディスクトレー4に直交してピックアップ9を覆い、ディスクトレー4が実線で示されるドライブ位置にあるときには、ピックアップカバー5がピックアップ9およびターンテール7上から退けられる。
【0042】
又、図10のように、ディスクトレー4がドライブ位置とイジェクト位置との間を旋回移動するとき、ピックアップカバー5はその脚部5aが床板13に摺接して図10の時計回りの旋回を規制されたまま、ターンテーブル7に干渉せぬようその上を傾斜姿勢で通過し、ディスクトレー4が図10の一点鎖線で示されるイジェクト位置に達したときには、ピックアップカバー5が脚部5bを床板13に接したまま、ディスクトレー4に直交してピックアップ9を覆うようになる。
【0043】
よって、ピックアップ9が外部に露出されてユーザに触れられることがなく、しかもピックアップカバー5によって外部からの塵埃の侵入が防止されるので、ピックアップ9の機能が損なわれず、長期に亘って高品質を維持することができる。
【0044】
尚、図10において、床板13はターンテーブル7やピックアップ9に対向する部分を開口せしめた段付きの板材で、その裏側(図10の右側)にはディスクトレー4の旋回移動に必要な伝動部材が配置される。
【0045】
次に、ディスクトレー4の旋回移動に関係する内部機構について説明する。図11〜図13において、14はディスク駆動装置の背面を成すベースフレームであり、その左右両側には直角に立ち上がる側板15,16が設けられる。
【0046】
図11、図12のように、両側板15,16にはディスクトレー4の支点軸4dを移動案内するガイド溝15a,16aが形成され、それらガイド溝15a,16aに沿ってディスクトレー4の支点軸4dが摺動自在に支持される構成とされている。
【0047】
特に、一方の側板15には、図11のようにガイド溝15aに平行する第2ガイド溝15bが形成され、他方の側板16には、図12のようにガイド溝16aの長さ方向に沿って摺動可能なスライドプレート17が取り付けられる。
【0048】
又、図11および図12において、18は図1、図2に示したフロントドア2を構成するドアフレームであり、その両端は軸部18aにより両側板15,16に結節され、該ドアフレーム18の自由端側の中央に上記のクランプ盤3(図12では省略)が取り付けられている。又、19,20は左右一対の旋回アームであり、その各一端は軸部19a(旋回アーム20の軸部は図示せず)にて両側板15,16に結節され、他方の各一端は軸部19b,20bにてディスクトレー4の両側縁中央部に結節されている。特に、一方の旋回アーム19の一端には軸部19bを中心とする扇形のギア部19cが形成され、そのギア部19cが図7などに示したトリガープレート11のラック部11bと噛み合わされている。他方、旋回アーム20には図12に示される如くその中央部にピン20cが突設される。
【0049】
図12において、17aはピン20cに対応してスライドプレート17に形成したカム溝、17bはカム溝17aに近接してスライドプレート17に形成したカム溝、21は側板16とドアフレーム18とを連接するリンクであり、リンク21の中間部分にはカム溝17bに嵌る従節ピン21aが突設され、スライドプレート17にはリンク21と側板16との結節点21bに対応して逃げ溝17cが形成される。
【0050】
又、図11および図12から明らかなように、スライドプレート17と側板15との間には図1、図2に示したスライドドア6が掛け渡され、これがスライドプレート17に連動して上下方向に移動するようにしてある。
【0051】
ここに、スライドプレート17が図12の上下方向に移動すると、そのカム溝17bで従節ピン21aが加圧されることによりリンク21が側板16との結節点21bを支点に揺動してドアフレーム18に開閉運動を行わせるようになる一方、旋回アーム20はピン20cがカム溝17aに嵌まり込んでいる間だけスライドプレート17から旋回駆動力を与えられてディスクトレー4を旋回移動せしめるが、スライドプレート17の移動に伴って旋回アーム20のピン20cがカム溝17aから外れると、ディスクトレー4に対する旋回駆動力が旋回アーム20から後述する伝動系に切り換わり、旋回アーム20が上記とは逆にディスクトレー4の旋回移動に追従して旋回される構成とされている。
【0052】
尚、一対の旋回アーム19,20は同調して駆動するよう軸部19a側が図示せぬ連結板により連結されており、その旋回時には図14のように一方の旋回アーム19に形成されたギア部19cにより、トリガープレート11が移動されて上記のようなディスクの保持動作と解放動作が行われる。
【0053】
又、ディスクトレー4がドライブ位置と図12に示されるイジェクト位置との間を旋回移動する途上において、ドアフレーム18はディスクトレー4の旋回移動を阻害せぬよう図12の実線で示される最大開放状態となるが、ディスクトレー4がイジェクト位置に達するときにはドアフレーム18が閉鎖方向に向かって図12の一点鎖線で示される位置となり、逆にドアフレーム18が閉じられるとき(ディスクトレー4がイジェクト位置からドライブ位置に旋回移動するとき)には、ドアフレーム18が図12の一点鎖線で示す位置から実線位置に開度を拡大させた後で閉鎖方向に向かうという逆行動作が行われる。
【0054】
次に、図13において、ベースフレーム14には、ディスクトレー4に旋回移動を行わせるトレー移動機構22のほか、ターンテーブル7やピックアップ9が組み付けられる。トレー移動機構22は、上記スライドプレート17や旋回アーム19,20を含んで構成される伝動系で、23はその駆動源を成すモータを示している。
【0055】
モータ23の駆動軸にはプーリ24が取り付けられ、そのプーリ24とモータ23に隣接するプーリ25とにはベルトBが巻き掛けられる。25aはプーリ25と一体に形成されるギア部、26はギア部25aと噛み合う大径ギア部26aを有するアイドルギア26、27はアイドルギア26の小径ギア部26bと噛み合う大径ギア部27aを有するカムギア、28はカムギア27の小径ギア部27bと噛み合う大径ギア部28aを有する出力ギアであり、出力ギア28の小径ギア部28bは可動ラック29に噛み合わされている。尚、これらの部材23〜29は図10に示した床板13により覆われる。
【0056】
ここに、カムギア27の小径ギア部27bおよび出力ギア28の大径ギア部28aは、それぞれ円周の一部が欠歯部27c,28cとされる欠歯ギアであり、このうち出力ギア28には、欠歯部28cの位置にてカムギア27の小径ギア部27b上に突き出す係止爪28dが形成される。一方、カムギア27には係止爪28dに対応して小径ギア部27bの上面外周縁(欠歯部27cの一端位置)に係止突起27dが形成され、欠歯部27c,28cにより断絶されたカムギア27と出力ギア28の噛合いが、係止突起27dと係止爪28dとの係合により復帰されるようになっている。
【0057】
又、カムギア27の小径ギア部27bの上面には、後述するディスク解放レバーを作動させるためのカム溝27eが形成され、カムギア27の底部には揺動レバー30を作動させるためのカム溝27fが形成される。
【0058】
揺動レバー30は、モータ23の駆動力を上記スライドプレート17に伝達して該スライドプレート17を移動させるもので、その一端部にはカム溝27fに嵌る従節ピン30aが設けられ、他端部にはスライドプレート17に形成される突起17dと係合する係止部30bが形成される。尚、揺動レバー30は、ベースフレーム14との結節点30cを中心に揺動可能とされると共に、ベースフレーム14との間にバネ31で繋がれて図13の反時計回りに付勢されている。
【0059】
又、図15から明らかなように、カムギア27のカム溝27fは、その一端から他端に向かってカムギア27の中心との距離が漸次小さくなる第1経路27f1と、カムギア27の中心との距離が漸次大きくなる第2経路27f2と、が連続する形態であり、このためカムギア27が一方向に回転する間に図13に示した揺動レバー30は正逆に揺動し、以って図12に示したドアフレーム18の開閉時における一時的な逆行動作が実現されている。
【0060】
一方、図13において、上記の可動ラック29は、その長手方向に摺動可能にしてベースフレーム14に配置されるラック部品で、これにはピニオン32が回転自在に取り付けられている。又、ベースフレーム14には、可動ラック29に平行して固定ラック14aが形成されるほか、可動ラック29に隣接して該可動ラック29と同方向に移動可能なキャリヤプレート33が設けられ、そのキャリヤプレート33にはフックレバー34が揺動自在に結合されている。
【0061】
図16、図17で明らかなように、キャリヤプレート33にはラック部33aが形成されており、そのラック部33aと固定ラック14aにピニオン32が常時噛み合う構成とされている。又、図17で明らかなように、キャリヤプレート33は、フックレバー34の先端部との間にディスクトレーの支点軸4dを挟み込むための凹部35を形成する突起33bを有している。尚、図17において、34aはフックレバー34に形成したガイドピンで、このガイドピン34aは図11に示した第2ガイド溝15bに嵌め込まれる。又、34bはフックレバー34の揺動中心を成す結節ピンであり、その結節ピン34bにてフックレバー34がキャリヤプレート33に揺動自在に結合されている。
【0062】
そして、以上のようなトレー移動機構22によれば、出力ギア28により可動ラック29がその長さ方向に移動されると、これに取り付けられたピニオン32が可動ラック29と同方向に移動されつつ固定ラック14aにより回転されるために、該ピニオン32と噛み合うラック部33aを有するキャリヤプレート33が可動ラック29より高速で可動ラック29と同方向に移動する。従って、図17に示される如くキャリヤプレート33とフックレバー34とより支点軸4dを挟み込まれたディスクトレー4は、その支点軸4dがキャリヤプレート33の移動方向(ガイド溝15aに沿う上下方向)に移動され、これにより当該ディスクトレー4の旋回移動が行われる。
【0063】
次に、図18において、36は上述のディスク解放レバーを示す。このディスク解放レバー36は、上記ディスクトレーがドライブ位置に達したときリテーナプレート10によるディスクの保持を解除するもので、その一端にはリテーナプレート10の凸部10bに対応する押圧片36aが形成される。ここに、係るディスク解放レバー36は図10に示した床板13上にあって出力ギア28と同軸上に揺動自在に設けられており、その一端には上記押圧片36aが形成され、他端にはカムギア27のカム溝27eに嵌まり込む従節ピン36bが設けられる。一方、同図18から明らかなように、カム溝27eは無端のリング形で、その一部はカムギア27の外周側に張り出した膨出部27e1とされている。そして、その膨出部27e1に従節ピン36bが位置したとき、他方の押圧片36aによりリテーナプレート10の凸部10bが押圧されてリテーナプレート10が図18の時計回りに揺動され、これによりリテーナプレート10の爪部10aがディスクの端面から離間して該リテーナプレート10によるディスクの保持が解除されるようになっている。尚、従節ピン36bが膨出部27e1に位置するタイミングは、ディスクトレーがドライブ位置に達するタイミングに一致し、以ってディスクトレーがドライブ位置に達したときはディスクをリテーナプレート10から解放し、該ディスクを上記ターンテーブルで回転自在に支持することができる。
【0064】
ここで、以上のように構成されるディスク駆動装置の動作について概説すれば、ディスクトレーがドライブ位置にある状態(図1の状態)において、図示せぬスイッチの操作で図13に示されるモータ23を同図反時計回りに駆動すると、カムギア27が反時計回りに回転しながら揺動レバー30を時計回りに揺動せしめる。尚、このとき、出力ギア28はカムギア27と噛み合わずして静止状態を保っている。
【0065】
又、揺動レバー30が上記のように時計回りに揺動されると、スライドプレート17が図13の上方に向かって移動を開始する。これにより、図12に示したドアフレーム18が開放され始めるほか、旋回アーム20がそのピン20cをスライドプレート17のカム溝17aにより押圧されて旋回を始めることにより、ディスクトレー4が図12の一点鎖線で示すイジェクト位置に向かって旋回移動を開始する。
【0066】
そして、旋回アーム20のピン20cがカム溝17aから脱出するのと同期して図13に示されるカムギア27の係止突起27dが出力ギア28の係止爪28dに係合することにより、出力ギア28の回転が開始される。これにより、キャリヤプレート33とフックレバー34が図17のようにディスクトレー4の支点軸4dを支持しながら同図17の下方に向かって高速移動するようになるため、ディスクトレー4がイジェクト位置に向かって急速に旋回移動するようになる。
【0067】
尚、キャリヤプレート33とフックレバー34とによるディスクトレー4の旋回移動が進められる途上において、揺動レバー30の従節ピン30aの軌道がカム溝27fの第1経路27f1から第2経路27f2(図15参照)に移行するため、スライドプレート17は図12の実線位置に達した後、同図12の下方に逆行する。従って、ドアフレーム18は図12の実線位置まで開放してディスクトレー4の旋回移動を許容し、ディスクトレー4がイジェクト位置に達したときには同図一点鎖線で示される位置まで旋回して開度を縮小する。
【0068】
又、ディスクトレー4がイジェクト位置に達した段階では、上記のようにピックアップ9がピックアップカバー5で覆われるほか(図10参照)、旋回アーム19のギア部19cによるトリガープレート11の移動により、リテーナプレート10の揺動が行われてディスクの保持が解除される(図7、図14参照)。よって、イジェクト位置におけるディスクトレー4からイジェクトされたディスクを取り出すことができる。
【0069】
次に、ディスクトレーがイジェクト位置にある状態(図2の状態)において、図示せぬスイッチの操作で図13に示されるモータ23を同図時計回りに駆動すると、カムギア27と出力ギア28が噛み合った状態となっているために、キャリヤプレート33とフックレバー34が図13の下方位置から同図実線位置に向かって上方移動されるのであり、このためディスクトレーがドライブ位置に向かって旋回移動を開始する。
【0070】
このとき、旋回アーム19がディスクトレー4にて旋回されることにより、そのギア部19cに噛み合うトリガープレート11を介してリテーナプレート10の揺動が開始されてディスクが保持されるようになる(図7、図14参照)。尚、リテーナプレート10で保持されるディスクは、第1配置部4a1に配置された小径ディスクであるが、第2配置部4a2に配置された大径ディスクも凸条4f(図4参照)によりその外周縁を支持されるため脱落が防止される。
【0071】
一方、ディスクトレー4がドライブ位置に向かって旋回移動するとき、カムギア27はそのカム溝27f(図15参照)により、揺動レバー30を図13の時計回りに揺動させた後、その揺動方向を反転させるのであり、このためスライドプレート17が上方移動後に下方移動して図12に示されるドアフレーム18を閉鎖方向に旋回させるようになる。
【0072】
そして、スライドプレート17が所定位置まで移動すると、そのカム溝17aに図12に示される旋回アーム20のピン20cが導入するために、ディスクトレー4の旋回移動が旋回アーム20を介してスライドプレート17で行われるようになる。
【0073】
尚、この段階でフックレバー34は図13の実線で示される上限位置に達し、そのガイドピン34aが図11に示される第2ガイド溝15bの端部(図11の上端)に位置するために、スライドプレート17によるディスクトレー4の旋回移動時にはフックレバー34が図17の一点鎖線で示す位置に揺動してディスクトレー4の支点軸4dを解放する。よって、ディスクトレー4はその支点軸4dを図17の上方に移動させながらイジェクト位置に達することになる。このとき、図18のディスク解放レバー36により、リテーナプレート10がバネ12の付勢力に抗して揺動されてディスクが解放されつつ、同ディスクがターンテーブル7とクランプ盤3により中心部をチャッキングされ(図3参照)、更にピックアップカバー5がピックアップ9上から排除されてディスクの記録再生準備が整えられることになる。
【0074】
以上、本発明に係るディスク駆動装置の好適な構成例を説明したが、ディスクトレー4は円形のディスク配置部4aを形成するものに限らず、MD(ミニディスク)のようにカートリッジ付のディスクに対応して断面C字形の形態とするなどしてもよい。
【0075】
又、上記例ではディスクトレーの支点軸4dを移動支点としたが、これを定位置で回転のみ許容される回転支点としてもよい。但し、支点軸4dを回転支点とした場合には図19(a)のようにディスクトレー4の旋回移動による占有スペースが大きくなって筐体の開閉部分の高さ寸法W1を大きくする必要が生ずるのに対し、支点軸4dを移動支点とした場合には、図19(b)のようにディスクトレー4の旋回移動による占有スペースが小さくなって筐体の開閉部分の高さ寸法W2を小さくできるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明に係るディスク駆動装置を示す斜視図(ディスク回転時の状態)
【図2】同装置を示す斜視図(ディスクイジェクト時の状態)
【図3】ディスクがターンテーブルに装着された状態を示す説明図
【図4】ディスクトレーの平面図
【図5】ディスクトレーを表面側からみた透視図
【図6】ディスクトレーに配置されたディスクを保持する部品を示す平面図
【図7】ディスクが保持された状態を示す部分拡大図
【図8】ディスクトレーとピックアップカバーの斜視分解図
【図9】ディスクトレーのイジェクト位置とドライブ位置を示す説明図
【図10】ディスクトレーの旋回移動時の状態を示す説明図
【図11】本装置の内部構造を部分的に示す右側面図
【図12】本装置の内部構造を部分的に示す左側面図
【図13】本装置の内部構造を部分的に示す正面図
【図14】ディスクトレーの一部を側方から透視図
【図15】本装置の構成部品を示す底面図
【図16】ディスクの旋回移動に用いる部品の構成図
【図17】図16を側方からみた説明図
【図18】ディスクトレーに保持されたディスクを解放する機構を示す説明図
【図19】ディスクトレーの旋回移動時の動作領域を示す説明図
【符号の説明】
【0077】
1 筐体
2 フロントドア
3 クランプ盤
4 ディスクトレー
4a ディスク配置部
4d 支点軸
5 ピックアップカバー
7 ターンテーブル
9 ピックアップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクを回転させるためのターンテーブルと、該ターンテーブルを内蔵する筐体と、を有するディスク駆動装置であって、
前記ターンテーブルの軸線に直交する支点軸回りに旋回可能とされて、前記筐体から前記ターンテーブルの軸線方向に張り出すイジェクト位置と、前記ターンテーブルよりも前記筐体の内部側に退避したドライブ位置と、の間を旋回移動するディスクトレーを備えることを特徴とするディスク駆動装置。
【請求項2】
前記ディスクトレーは、前記ドライブ位置において外向きとなる面にディスクを配置するための凹状のディスク配置部を有することを特徴とする請求項1記載のディスク駆動装置。
【請求項3】
前記支点軸は、ディスクトレーがイジェクト位置とドライブ位置との間を旋回移動するときに上下方向に直進移動する移動支点であることを特徴とする請求項1、又は2記載のディスク駆動装置。
【請求項4】
前記ディスクトレーの旋回移動に連動し、前記ドライブ位置におけるディスクトレーを覆う状態となるフロントドアを有し、
そのフロントドアは、該フロントドアが前記ドライブ位置のディスクトレーを覆う状態に位置するときに、前記ターンテーブルと協同してディスクの中心部をチャッキングする回転自在なクランプ盤を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のディスク駆動装置。
【請求項1】
ディスクを回転させるためのターンテーブルと、該ターンテーブルを内蔵する筐体と、を有するディスク駆動装置であって、
前記ターンテーブルの軸線に直交する支点軸回りに旋回可能とされて、前記筐体から前記ターンテーブルの軸線方向に張り出すイジェクト位置と、前記ターンテーブルよりも前記筐体の内部側に退避したドライブ位置と、の間を旋回移動するディスクトレーを備えることを特徴とするディスク駆動装置。
【請求項2】
前記ディスクトレーは、前記ドライブ位置において外向きとなる面にディスクを配置するための凹状のディスク配置部を有することを特徴とする請求項1記載のディスク駆動装置。
【請求項3】
前記支点軸は、ディスクトレーがイジェクト位置とドライブ位置との間を旋回移動するときに上下方向に直進移動する移動支点であることを特徴とする請求項1、又は2記載のディスク駆動装置。
【請求項4】
前記ディスクトレーの旋回移動に連動し、前記ドライブ位置におけるディスクトレーを覆う状態となるフロントドアを有し、
そのフロントドアは、該フロントドアが前記ドライブ位置のディスクトレーを覆う状態に位置するときに、前記ターンテーブルと協同してディスクの中心部をチャッキングする回転自在なクランプ盤を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のディスク駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2008−204559(P2008−204559A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−40335(P2007−40335)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】
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