説明

ディスコデルモライド製剤

輸液濃縮物の形のディスコデルモライドを含む医薬製剤、および非経腸投与に適した形でのディスコデルモライドの投与法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、ディスコデルモライドの医薬製剤、および特に非経腸的、例えば、静脈内(i.v.)投与可能な医薬製剤に関する。
【0002】
発明の背景
【化1】

(+)−ディスコデルモライドは、Harbor Branch Oceanographic Institution (HBOI)の研究者らにより、海綿ディスコデルモライド・ディスソルタ(Discodermolide dissoluta )抽出物から単離された新規ポリケチド天然産物である。Gunasekera et al., “Discodermolide: A New Bioactive Polyhydroxylated Lactone From the Marine Sponge Discodermia Dissolute”, J Org Chem, Vol. 55, pp. 4912-4915 (1990)参照。ディスコデルモライドは、パクリタキセルとの明白な構造類似性を欠くが、まだ、パクリタキセル(Taxol(登録商標)の主成分)と、微小管を安定させる能力を共有する。機構に基づいたアッセイにおいて、ディスコデルモライドはパクリタキセルよりも有効である。実際、精製チューブリンの重合化を誘発することが知られている一握りの化合物の中で、ディスコデルモライドは最も強力である。しかしながら、細胞中の主要な構造要素である微小管は、チューブリンの単純な均衡ポリマーではない。それらは、α−およびβ−チューブリンのヘテロダイマーの制御されたGTP誘発同定会合として存在する。動力学は、中間期細胞で相対的に遅いが、有糸分裂に入ると、増殖および短縮は、20−から100倍増加する―平均で微小管はチューブリンサブユニットの半分を10秒毎にターンオーバーする。速度のこの変化は、細胞骨格微小管ネットワークを消滅させ、微小管の二極性紡錘状配置を集合させる。この紡錘体は染色体と結合し、それらを動かして離す。細胞における微小管動力学の完全な阻止に対する応答は死である。しかしながら、有糸分裂細胞は、より感受性であり、耐性閾値は細胞型特異的であるように見える。高親和性で微小管と結合するパクリタキセルのような分子は、腫瘍細胞における動力学過程を混乱させ、チューブリンへの薬剤の結合割合が非常に低いときでさえ、致死的結果を伴う。ディスコデルモライドは、チューブリンにパクリタキセルと競合的に結合する。パクリタキセルが、ある種の癌の知立鬼有用であることが証明されているため、同じ機構の他の化合物が過増殖性障害に対して有用性を有する可能性がある。
【0003】
しかしながら、ディスコデルモライドに適当な製剤についてほとんど発表されていない。我々は、本化合物の安定性が乏しく、水性溶媒および水性−有機混合物に溶解性が乏しいことを発見した。本化合物は特に水に不溶性である。これらの化合物が非常に難溶性であるため、非経腸投与用医薬製剤の形成が非常に困難である。i.v.投与前に水性媒体で希釈できる微小管剤タキソール(登録商標)の濃縮溶液が記載されている。しかしながら、このような溶液は、通常Cremophor(登録商標)(ポリエトキシル化ヒマシ油)のような界面活性剤を用いる。Cremophor(登録商標)のような界面活性剤が、患者でアレルギー反応を起こし得ることが既知である。
【0004】
加えて、ディスコデルモライドは加水分解してカルボン酸を形成し得るラクトン基を含み、故に本化合物は特に分解に対して不安定である。
【0005】
故にディスコデルモライドの商業的に許容される医薬製剤、例えば、2−8℃のような冷蔵庫中および/または25℃で貯蔵可能な、医薬製剤の必要性がある。
【0006】
我々は、驚くべきことに、効果に不利に影響することなく、ディスコデルモライドの溶解性および安定性を改善し、および/またはそれらをより可溶性にするための手段を発見した。
【0007】
発明の概要
本発明は、改善された溶解性および安定性を有するディスコデルモライドを含む医薬製剤に関する。本発明はまた、i.v.投与前に輸液を調製するために希釈媒体で希釈し得るディスコデルモライドの輸液濃縮物を含む。
【0008】
発明の詳細な記載
腫瘍疾患および他の状態の処置に有用なディスコデルモライドは、米国特許5,010,099;4,939,168;5,840,750;および5,681,847に記載され、それらは引用によりその全体を本明細書に包含する。
【0009】
本発明は、その局面の一つにおいて、ディスコデルモライドを含む医薬製剤を提供し、、これは、以後、本発明の製剤と称し得る。
【0010】
好ましい態様において、本発明は、ディスコデルモライドおよび薬学的に許容される有機溶媒を含む、輸液濃縮物の形態の医薬製剤を提供する。輸液濃縮物は希釈媒体で希釈して、輸液を調製する。
【0011】
本発明の第一の局面は、ディスコデルモライドおよび当分野で既知のすべての有機溶媒から選択される薬学的に許容される有機溶媒を含む輸液濃縮物である。該溶媒は個々に、または他の溶媒と組み合わせて使用し得る。好ましくは溶媒は、炭素鎖長少なくとも2、例えば、C−C、例えば、CまたはCまたはCのアルコールである。アルコールの典型例はグリコール、例えば、エチレンオキシドのようなオキシドから得られるすべてのグリコール、例えば、プロピレングリコールである。他の例は、ポリオール、例えば、ポリアルキレングリコール、例えば、ポリ(C2−)アルキレングリコールまたは、例えば、ポリエチレングリコールである。他のアルコールは無水エタノールまたはグリセロールを含む。最も好ましいのはプロピレングリコールである。
【0012】
ディスコデルモライドは、輸液濃縮物中、有機溶媒と共に0.1−50mg/mL、例えば、1−50mg/mLまたは0.5−50mg/mL、より好ましくは0.1−20mg/mL、または0.3−5mg/mLまたは0.5−4mg/mL、0.6−3mg/mL、または2mg/mLの量で存在し得る。
【0013】
本輸液濃縮物の形態の本発明医薬製剤は、後処理、例えば、ディスコデルモライドを薬学的に許容される溶媒に、所望により他の賦形剤と溶解させることにより製造できる。好ましくは、他の賦形剤は存在しない。しかしながら他の賦形剤が存在するとき、それらは好ましくは<5%、例えば、<2%、例えば0.1−1.5%の間の量で存在する。
【0014】
本発明の輸液濃縮物は、簡便には適当な容器、例えば、バイアル、2区画バイアル系またはアンプル中に貯蔵する。典型的にバイアルまたはアンプルはガラス製、例えば、ホウケイ酸ガラス製またはソーダ石灰ガラス製である。バイアルまたはアンプルは当分野で慣用のいずれの容量であってもよく、好ましくはそれらは1−5mL、より好ましくは2mLの輸液濃縮物を入れるのに十分なサイズである。本容器は、好ましくは、液体の容器からのまたは容器への移動を可能にするために容器に適当な密閉性を提供し得る孔が開いていてよい栓、例えば、滅菌ゴム栓を装着することができる。
【0015】
本発明の輸液濃縮物は、例えば、実施例に記載の通りの、標準安定性試験において示される通り、長時間、例えば、12−36ヶ月まで、例えば、24ヶ月、少なくとも2−8℃または25℃で安定であり得る。
【0016】
一般に、輸液濃縮物は、化合物を非経腸投与する前に典型的に希釈して輸液を調製する。非経腸投与は、輸液または注射による投与を含むことは理解されよう。
【0017】
本発明の輸液濃縮物は水性媒体中で安定ではなく、故にi.v.投与の前に、当分野で典型的な食塩水のような水性媒体で希釈できない。例えば、生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム)中では、ディスコデルモライドの沈殿が観察され、本化合物は加水分解産物に分解する。結果的に、希釈媒体が食塩水中に有機溶媒を含むとき、安定性および溶解性が維持されることが、本発明により判明した。
【0018】
従って、本発明はその別の局面で、有機溶媒および食塩水を含む希釈媒体を提供する。有機溶媒の例は、プロピレングリコール、エタノール、Tween 80、安息香酸、ベンジルアルコールおよびそれらの混合物を含む。希釈媒体の例は、生理食塩水中のエタノール;生理食塩水中のエタノールおよびTween 80;生理食塩水中のエタノール/安息香酸;および生理食塩水中のエタノール/安息香酸/ベンジルアルコールを含む。有機溶媒対食塩水の比率は、ディスコデルモライドの適当な溶解性が得られるものであるが、しかしながら有機溶媒の量は、実施上の限界により制限される。有機溶媒の比率が低すぎるとき、ディスコデルモライドは溶解性ではない。しかしながら、患者に投与する有機溶媒が多すぎるほど有機溶媒の量が高すぎてはならない。好ましいのは食塩水中10−20%w/vのエタノールまたは食塩水中15−17%w/vのエタノールである。最も好ましい希釈媒体は食塩水中16.3%w/vのエタノールを含み、ここで、7.3mg NaClおよび163mg エタノールを1mLあたり含む。
【0019】
該輸液濃縮物および希釈媒体を別々に調製し、貯蔵する。投与前に、該輸液濃縮物および希釈媒体を合わせ、輸液を調製する。このようにして作った輸液を、好ましくは直ぐにまたは作った後短時間以内、例えば、8時間以内に使用し得る。あるいは、該輸液濃縮物および予定された量の希釈剤を各々2区画バイアル系の別々の区画に入れ、患者へのi.v.投与直前にのみ混合してよい。
【0020】
輸液を調製するために輸液濃縮物との混合で使用する希釈剤の量は、輸液中にディスコデルモライドの所望の濃度が得られるように選択し得る。使用する希釈剤の量はまた、該溶液が投与のために十分に長い間安定であるように選択する。輸液の濃度は、0.1−2.0mg/mLまたは0.1−1.5mg/mLまたは好ましくは0.5−8.0mg/mLまたは0.77mg/mLである。このような溶液は8時間まで安定であることが判明した。
【0021】
好ましくは本発明の輸液は、輸液濃縮物と、食塩水中16.3%w/vのエタノールのような希釈剤を適当な容器中で混合することにより調製する。好ましい製剤は、0.77mg/mL ディスコデルモライドを40%プロピレングリコール、10%エタノールおよび50%生理食塩水中に含む輸液の製造のために、1.6mLの食塩水中16.3%w/vのエタノールで希釈した1mLの2mg/mL 輸液濃縮物を含む。この溶液を、i.v.輸液を介して、または0.9%生理食塩水ドリップを含むY字型チューブに穿刺して直接静脈に投与し、チューブ中に残った本薬剤溶液を生理食塩水で流し込む。i.v.穿刺を介して投与すべきディスコデルモライド溶液の用量は、0.3mL(0.2mgまたは0.13mg/mの開始用量)から26mL(20mgまたは11.43mg/mの用量)または43mL(33mgまたは19.2mg/mの用量)まで変化するであろう。静脈内への直接i.v.輸液と、その後の生理食塩水による流し込みは、ディスコデルモライドのいかなる沈殿ももたらさないことが判明した。
【0022】
好ましくは輸液の濃度および投与濃度は、3週間毎に約0.5−70mg、より好ましくは3週間毎に1−30mg、またはより好ましくは3週間毎に30−40mgの有効用量レベルを達成するようなものであり得る。i.v.投与により受ける用量および血中濃度は、既知のインビボおよびインビトロ技術に基づいて正確に測定し得る。
【0023】
本発明の輸液は、i.v.で投与すべき製剤に一般に用いられる他の賦形剤を含み得る。賦形剤は、抗酸化剤を含み、これは当分野で既知であり、i.v.製剤に適したすべてのこのような抗酸化剤から選択し得る。抗酸化剤の量は、日常的な実験により決定できる。抗酸化剤の添加とは別に、またはそれに加えて、酸素(空気)を輸液と接触させないようにすることにより、抗酸化効果を達成し得る。これは、簡便には、該輸液を含む容器を、不活性ガス、例えば、窒素でパージすることにより行い得る。存在し得る他の賦形剤は、等張剤(複数もある)である。
【0024】
非経腸、例えば、i.v.投与に適した形態の本発明の医薬製剤、例えば、輸液濃縮物を希釈剤で希釈することにより調製した輸液を、該医薬製剤と非反応性の慣用の任意の容器から選択された容器に充填し得る。
【0025】
本発明の輸液は、悪性増殖性障害、例えばその内容をその全体を引用することにより本明細書に包含する米国特許5,010,099;4,939,168;5,840,75;および5,681,847に記載の適応症の処置および予防に有用である。より具体的に、それらは腫瘍疾患、例えば、黒色腫、卵巣癌、膵臓癌、神経芽腫、頭頚部癌、膀胱癌、腎臓、脳、胃または好ましくは結腸直腸、前立腺、乳房、肺(とりわけ非小細胞肺)または上皮性、とりわけ類表皮性、例えば、子宮頚癌の処置に有用であり得る。本発明の製剤は、とりわけタキサン類またはエポチロンに難治性の主要を含む固形腫瘍の処置に有用である。さらに、本発明の輸液は、パクリタキセル(登録商標)を使用できる状態の処置に、それと同じ方法で有益である。ある種の腫瘍について、ディスコデルモライドは、パクリタキセル(登録商標)と比較して増加した利益を提供する。
【0026】
一般に、本発明の輸液は、ディスコデルモライドの投与により処置できる増殖性疾患に対して治療的に有効である量で投与し得る。このような増殖性疾患は、治療的有効量に対する応答が好ましくはそれ自体増殖の減少、例えば、腫瘍増殖の減少、さらにより好ましくは腫瘍緩解、または最も好ましくは腫瘍消失として顕在化する、上記のいずれかの増殖性疾患、とりわけ腫瘍疾患である。正確な用量および投与期間は、ディスコデルモライドの性質、特定の腫瘍の特徴である悪性増殖細胞の特定の型、状態の重症度、投与の割合、ならびに患者の健康状態および処置への応答に依存し得る。
【0027】
また、非経腸投与に適した形の本発明の医薬製剤、例えば、輸液濃縮物を希釈媒体で希釈することにより調製した輸液を、単剤としてまたは、照射のような当業者に既知の他の腫瘍処置と組み合わせて、または少なくとも1種の他の化学療法剤を含む組み合わせ治療の一部として投与し得る。活性剤の組み合わせ剤の投与は、同時または、いずれか一方の活性剤を最初に投与する連続的であってよい。組み合わせ処置の活性剤の投与路油は、各活性剤の効果および作用部位、ならびに組み合わせ治療で使用する薬剤間の相乗効果に依存し得る。非経腸投与は輸液または注射による投与を含むことは理解されよう。
【0028】
他の化学療法剤は、下記クラスに由来する化学療法剤のような腫瘍疾患の処置に使用されているかまたは使用できるすべての化学療法剤を含み得る:
1)アルキル化剤、好ましくは架橋化学療法剤、好ましくはビス−アルキル化剤;
2)抗腫瘍抗生物質、好ましくはドキソルビシン(アドリアマイシン(登録商標)、ルベックス(登録商標));
3)代謝拮抗剤;
4)植物アルカロイド;
5)ホルモン剤およびアンタゴニスト;
6)生物学的応答修飾因子、好ましくはリンホカインまたはインターフェロン;
7)タンパク質チロシンキナーゼおよび/またはセリン/スレオニンキナーゼの阻害剤;
8)アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド誘導体;または
9)その他の薬剤または、他のもしくは未知の作用機序を有する薬剤、好ましくはタキサンクラスのもの、とりわけTaxotere(登録商標)または最もとりわけパクリタキセル(タキソール(登録商標))。
【0029】
希釈した本発明の製剤は、故に、単剤抗癌製剤として、または組み合わせレジメンの一部として、様々な腫瘍の処置に有用であり得る。
【0030】
本発明の輸液の有用性は、75kgの哺乳動物、例えば1.73m2の成人に、例えば、毎日、毎週、2週毎または3週毎、約0.1−75mg/m2、好ましくは0.5−60mg/mまたは0.6−20mg/mの用量を使用して、例えば、ディスコデルモライドの等価血中濃度を与えるディスコデルモライド投与量で既知の適応症で、標準的な臨床試験で、および標準動物モデルで観察され得る。好ましくは、用量は約0.1−30mg/mである。好ましい投与量の例は、0.6mg/m、1.2mg/m、2.4mg/m、4.8mg/m、9.6mg/m、14.4mg/mおよび19.2mg/mを含む。好ましい投与量は、3週毎に1−40mgまたは30−40mgである。この投与量をヒトにi.v.投与により投与する。
【0031】
希釈した本発明の製剤の形で投与したディスコデルモライドの増加したバイオアベイラビリティは標準動物試験および上記の臨床試験において観察し得る。本質的に、投与すべきディスコデルモライドおよび医薬製剤の正確な量は、処置すべき状態、正確なディスコデルモライド化合物、所望の処置期間、およびディスコデルモライドの投与速度のような多くの因子に依存し得る。例えば、必要なディスコデルモライドの量およびその投与速度は、どの程度長く特定のディスコデルモライドの血漿濃度が治療効果のために許容されるレベルで残るかを測定する、例えば上記の通りの、既知のインビボおよびインビトロ技術に基づいて決定できる。
【0032】
さらに別の局面において、本発明は、ディスコデルモライド処置を必要とする対象にディスコデルモライドを投与する方法であって、このような処置を必要とする対象に本発明の輸液を非経腸的に投与することを含む方法を提供する。より具体的に、このようなディスコデルモライドの投与方法は:
(a)例えば、輸液濃縮物の形の本発明の医薬製剤を希釈媒体で希釈し、非経腸、例えば、i.v.投与に適した溶液を調製し;そして
(b)このような輸液を対象に投与する
ことを含む方法を提供する。
【0033】
さらに別の局面において、本発明は、非経腸投与に適した医薬の製造におけるディスコデルモライドの使用を提供する。
【0034】
本発明を下記の実施例の方法により説明し、それは本発明の範囲を限定する意図はない。
【0035】
実施例1
2mgのディスコデルモライドを含む輸液濃縮物を98−100%プロピレングリコール(PG)(1.0mL)に溶解し、6mL バイアルに入れる。該バイアルを貯蔵および輸送に使用する。該バイアルは、2−8℃の温度で少なくとも2年間安定である。該媒体を、別々に、2mL 1回量バイアル中に調製する。溶液1mLあたり7.3mgの塩化ナトリウムUSP、および163mgのエタノール(EtOH)を注射用水(食塩水)(0.9%塩化ナトリウム溶液中16.3%エタノール、2mL 充填量)中に含む。貯蔵条件は、媒体について25℃である。i.v.投与の前に、1.6mLの媒体を、滅菌使い捨てシリンジに吸引し、ディスコデルモライドを含むバイアルに注入する。該溶液を、0.77mg/mL ディスコデルモライドを40%プロピレングリコール、10%エタノールおよび50%生理食塩水中に含む輸液のための透明かつ均質な溶液となるまで穏やかに振盪する。希釈した溶液中のディスコデルモライド濃縮物に対する希釈媒体の比率は1:1.6である。このようにして作ったi.v.溶液は8時間の期間、室温で安定である。
【0036】
実施例2−10
様々な溶媒系中のディスコデルモライドの溶解性をHPLCにより測定し、結果を下記に示す:
【表1】

【0037】
実施例11
3種のディスコデルモライド製剤を調製し、インビトロ沈殿試験で評価して、製剤中のディスコデルモライドの注射による沈殿の可能性を予測する。試験する製剤は:
製剤A:D5W中の8.3%EtOH/16.7%Cremophor EL中の2mg/mL ディスコデルモライド
製剤B:60%PG/40%生理食塩水中の2mg/mL ディスコデルモライド
製剤C:50%PG/10%EtOH/40%生理食塩水中の2mg/mLのディスコデルモライド
静置条件下、製剤A中のディスコデルモライドの沈殿は、66.7mM 等張リン酸緩衝化食塩水(ISPB)/アルブミン中、非常に低い薬剤濃度、すなわち、0.05mg/mLで起こったが、プロピレングリコールを使用した製剤は類似条件下で沈殿しなかった。この結果は、ディスコデルモライドがi.v.投与により沈殿する可能性は、プロピレングリコール製剤では低いが、Cremophor EL/EtOH/D5W製剤では高いことを示す。
【0038】
実施例12
ディスコデルモライドを異なる濃度で含み、かつ様々な温度のプロピレングリコール輸液濃縮物の安定性を測定する。表2は、3ヶ月までの期間中に形成した分解産物の量を記載する。安定性を、時間および温度の関数として、各輸液濃縮物中の分解産物の形成を測定することにより分析する。各サンプルをUV検出器を備えたHPLCで分析する。ディスコデルモライド含量の有意な変化は、5℃で3ヶ月間観察されない;総不純物量は、=2.0%の提案された具体的限界より低い。加速条件下、不純物の濃度は、25℃/60%相対湿度(RH)および45℃/60%RHの両方で増加する。
【表2】

【0039】
実施例13
プロピレングリコール中16mg/mLの輸液濃縮物の異なる温度での安定性を測定する。表3は、12週までの期間にわたり形成された分解産物の量を記載する。安定性を、時間および温度の関数として、各輸液濃縮物中の分解産物の形成を測定することにより分析する。各サンプルをUV検出器を備えたHPLCで分析する。分解プロフィールおよび長期安定性は、実施例2に示す2.0mg/mLと同等である。
【表3】

【0040】
実施例14
本実施例において、20/80 プロピレングリコール/0.9%塩化ナトリウム溶液で1:5に希釈したディスコデルモライド輸液濃縮物の環境条件下の安定性を測定する。表4は、24時間までの期間中に形成した分解産物の量を記載する。安定性を、時間および温度の関数として、各輸液中の分解産物の形成を測定することにより分析する。各サンプルをUV検出器を備えたHPLCで分析する。輸液は、ディスコデルモライド濃縮物、0.6mg/mL、2.0mg/mLおよび3.0mg/mLを20/80 プロピレングリコール/0.9%塩化ナトリウム溶液で1:5比に希釈することにより調製した。0.6mg/mL、2.0mg/mLおよび3.0mg/mLのディスコデルモライド濃縮溶液は、各々0.12mg/mL、0.4mg/mLおよび0.6mg/mLの輸液用ディスコデルモライド溶液を産生する。これらの溶液の安定性を24時間にわたり評価しており、データを表4に示す。
【表4】

【0041】
実施例15
本実施例において、0.9%塩化ナトリウム溶液(0.77mg)中16.3%w/vエタノール/mLで1:1.6に希釈した溶液中のディスコデルモライドの環境条件下の安定性を測定する。表5は24時間までの期間中に形成した分解産物の量を記載する。安定性を、時間および温度の関数として、各輸液中の分解産物の形成を測定することにより分析する。各サンプルをUV検出器を備えたHPLCで分析する。輸液は、2.0mg/mL ディスコデルモライド濃縮物を、0.9%塩化ナトリウム溶液中16.3%エタノールで1:1.6比に希釈することにより調製した。この溶液の安定性を24時間にわたり評価しており、データを表5に示す。
【表5】

【0042】
実施例16
表6は、ディスコデルモライドの溶解性に対する有機溶媒比の変化の影響を示す。
【表6】

【0043】
実施例17
親水性(hydrotropic)試薬で希釈した40%プロピレングリコール/10%エタノール/50%生理食塩水中のディスコデルモライドの溶解性および安定性を表7に示す。
【表7】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスコデルモライドおよびアルコールから選択される、薬学的に許容される有機溶媒を含む、輸液濃縮物の形態の医薬製剤。
【請求項2】
薬学的に許容される有機溶媒がプロピレングリコールである、請求項1記載の医薬製剤。
【請求項3】
ディスコデルモライドが0.1−20mg/mLの濃度である、請求項1記載の医薬製剤。
【請求項4】
ディスコデルモライドが0.6−3mg/mLの濃度である、請求項1記載の医薬製剤。
【請求項5】
ディスコデルモライドが2mg/mLの濃度である、請求項1記載の医薬製剤。
【請求項6】
請求項1記載の輸液濃縮物および食塩水と薬学的に許容される溶媒(当該溶媒の混合物を含む)との混合物から選択される希釈媒体を含む、輸液。
【請求項7】
溶媒がプロピレングリコール、エタノール、安息香酸、ベンゾエート、ベンジルアルコールおよびそれらの混合物から選択される、請求項6記載の輸液。
【請求項8】
希釈媒体が食塩水中のエタノールから選択される、請求項6記載の輸液。
【請求項9】
希釈媒体が食塩水中10−20%w/vのエタノールである、請求項6記載の輸液。
【請求項10】
希釈媒体が食塩水中16.3%w/vのエタノールである、請求項6記載の輸液。
【請求項11】
有機溶媒中のディスコデルモライドの輸液濃縮物および希釈媒体を含む、医薬キット。
【請求項12】
有機溶媒中のディスコデルモライドの輸液濃縮物および希釈溶媒を含み、輸液濃縮物および希釈媒体が別々の容器に充填されている、医薬キット。
【請求項13】
ディスコデルモライド処置を必要とする対象にディスコデルモライドを投与する方法であって、このような処置を必要とする対象に、請求項6記載の輸液を非経腸的に投与することを含む、方法。
【請求項14】
処置を必要とする哺乳動物に、ディスコデルモライドでの処置に感受性の増殖性疾患の処置のために治療的有効量でディスコデルモライドを投与する方法であって:
(a)希釈媒体で請求項1記載の輸液濃縮物を希釈して輸液を調製し;そして
(b)該輸液をi.v.で対象に投与する
ことを含む、方法。
【請求項15】
処置を必要とする哺乳動物に、ディスコデルモライドでの処置に感受性の増殖性疾患の処置のために治療的有効量でディスコデルモライドを投与する方法であって:
(a)ディスコデルモライドを含む輸液濃縮物を、食塩水中16.3%w/vのエタノールを含む希釈剤で希釈して輸液を調製し;そして
(b)該輸液をi.v.で対象に投与する
ことを含む、方法。
【請求項16】
処置を必要とする哺乳動物に、ディスコデルモライドでの処置に感受性の増殖性疾患の処置のために治療的有効量でディスコデルモライドを投与する方法であって:
(a)ディスコデルモライドを含む2mg/mL 輸液濃縮物を、食塩水中16.3%w/vのエタノールを含む希釈剤で1:1.6比率で希釈して輸液を調製し;そして
(b)該輸液をi.v.で対象に投与する
ことを含む、方法。
【請求項17】
工程(a)を投与の前8時間以内に完了する、請求項14記載の方法。
【請求項18】
投与用の輸液の調製法であって:
(a)有機溶媒でディスコデルモライドの溶液を調製し;そして
(b)工程(a)の溶液を食塩水およびエタノールを含む媒体で希釈し、ここで、工程(b)を投与の前8時間以内に行う、
方法。


【公表番号】特表2007−510688(P2007−510688A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538751(P2006−538751)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【国際出願番号】PCT/EP2004/012557
【国際公開番号】WO2005/044257
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】