説明

ディスプレイデバイス

例えばオイルの層の分裂又はオイルの層の移動に基づいており、且つ少なくとも2つの異なる状態を有するディスプレイデバイスであって、壁(13)の高さが、ピクセルの幅と、充填針(15)の先端におけるオイル界面の一般的な曲率とに比較して大きくはなく、ピクセルに針を挿入することなくピクセルに充填される、ディスプレイデバイス。充填針をピクセルに入れる必要がないため、比較的大きな注入針からのオイル(5)によってピクセルを充填することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに混ざり合わない少なくとも1つの第1の流体及び第2の流体を備えている光学要素を製造する方法であって、デバイスが、第2の流体に対する濡れ性の低い表面領域を備えている1つの支持板を少なくとも有する、方法に関する。
【0002】
詳細には、本発明は、第1の透明な支持板と第2の支持板との間の空間内に、互いに混ざり合わない少なくとも1つの第1の流体及び第2の流体を有する画素(ピクセル)を備えているディスプレイデバイスを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
光学スイッチは、シャッター用途、ダイアフラムのほか、例えばディスプレイ用途における切替可能なカラーフィルタに使用することができる。流体が(着色)オイルであり、第2の流体が水である場合、(界面張力により)水の層とオイルの層とを含んでいる2層系が形成される。しかしながら、水と、第1の支持板における電極との間に電圧を印加すると、静電気力に起因してオイルの層が脇に移動するか又は分裂する。すると水の一部がオイルの層に瞬時に侵入し、画素が部分的に透明になる。
【0004】
この原理に基づくディスプレイデバイスは、PCT出願の国際公開第03/00196号パンフレット(PH−NL02.0129)に記載されている。
【0005】
この出願に記載されている実施形態のほとんどにおいては、画素は、画成された空間(例:実質的に閉じた空間)に対応しており、第2の状態において、他方の流体が第1の支持板に実質的に完全に隣接する。この出願に記載されている1つの実施形態においては、画素は、その壁が画素の厚さ全体には延びてないものとして記載されている。
【0006】
これらのディスプレイデバイスの性能、特に、1つのディスプレイデバイス内でのグレーレベルの制御は、ディスプレイデバイスにおけるいくつかの画素(ピクセル)にオイルを高い再現性にて充填することに極めて大きく依存する。このことは、大量生産によって、多数のディスプレイデバイスを高い再現性にて製造するうえでも極めて重要である。
【0007】
ピクセルごとの個々の画素に、オイルの幾何学形状及び表面特性が均一になるようにオイルが正確に充填されているときには、非常に良好なグレーレベル制御を得ることができる。このような充填は、相応の多量のオイルを含んでいる大きな画素の場合、オイルを水の層に注入することによって行うことができるが、画素のサイズが減少するにつれて、極めて小さな画素寸法における充填は、不可能ではないにせよ難しくなる。これとは別に、ピクセルごとの充填は、非常に時間がかかる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的の1つは、上述した問題を少なくともある程度克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のため、本発明による方法は、
− 濡れ性の低い表面領域を画成するステップと、
− 少なくとも濡れ性の低い表面領域に第1の流体の層を設けるステップと、
− 前記第1の流体の層の上側から第2の流体を導入するステップと、
− 更なる透明な支持板と支持板との間の空間を閉じるステップと、
を含んでいる。
【0010】
本発明は、以下の洞察、すなわち、オイルは画素の壁に接触しうるが、オイルを導入した後、例えばオイルを注入する針が通過した後、濡れ性の低い表面にオイルが選択的に移動する、という洞察に基づいている。この理由は、おそらくは、画素の壁(又はピクセル間の面)が水によって濡れた状態を維持しようとする傾向にあるためである。
【0011】
本発明においては、ピクセルごとの手法を使用することなく、第1の流体に注入することによって、例えば、第1の流体の上に第2の流体を拡散させる(spread)ことによって、第2の流体を導入することが可能である。
【0012】
このようにして、ディスプレイのいくつかの画素の第1の流体に第2の流体を同時に導入することができる。
【0013】
絶対的に必要ではないが、濡れ性の低い表面領域は、壁に設けられている濡れ性の高い表面によって隔てられていることが好ましい。
【0014】
本発明の上記及びその他の態様は、以下に説明する実施形態に関連して明らかに解明されるであろう。
【0015】
図は概略的であり、正しい縮尺では描かれていない。対応する要素は、基本的には同じ参照数字によって表してある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、ディスプレイデバイス1の一部の概略的な断面図であり、本発明によるディスプレイデバイスが基づいている原理を示している。2枚の透明な基板すなわち支持板3,4の間には、第1の流体5及び第2の流体6が含まれており、これらの流体は互いに混ざり合わない。第1の流体5は、例えば、ヘキサデカンなどのアルカンであり、或いは本例におけるように(シリコン)オイルである。第2の流体は、導電性又は極性の流体であり、例えば、水或いは塩の溶液(例:水及びエチルアルコールの混合物を溶媒としたKCl溶液)である。
【0017】
第1の状態において、外部電圧が印加されていないとき(図1a)、流体5,6は、例えばガラス或いはプラスチックの第1の透明な支持板3及び第2の透明な支持板4に隣接している。第1の支持板3には、透明電極7(例:酸化インジウム(スズ))と、濡れ性のより低い(疎水性の)中間層8(本例においては非晶質フルオロポリマー(AF1600))とが設けられている。
【0018】
配線20,21を介して電圧が印加されると(電圧源9)、層5が脇へ動く、或いは小さな液滴に分かれる(図1b)。これは、湾曲面の形成に起因して、静電エネルギの得が表面エネルギの損よりも大きくなるときに起こる。極めて重要な面として、電気的スイッチング手段(電圧源9)によって、支持板3を覆っている連続的な膜5の状態と壁2に隣接している膜の状態とによって可逆的なスイッチングが達成されることが判明した。
【0019】
図2は、本発明によるディスプレイデバイスの実施形態を示しており、画素の壁13は、画素の厚さ全体には延びていない。そのような壁は、オフセット印刷、又はこの技術分野において公知であるその他の印刷手法によって得ることができる。オイル膜5は非常に安定的であると考えられ、この安定性は、画素のサイズが小さくなるにつれて更に高まる。従って、スイッチングの間、オイルは各領域内に閉じ込められたままである。その他の参照数字は、図1における参照数字と同じ意味である。
【0020】
本例における層13は、厚さが約20μm以下であり、第1の流体に対して濡れ性のより高い(疎水性)下側部分13bと、第1の流体に対して濡れ性のより低い(親水性)上側部分13aとから成る(図3を参照)。このようにして、画素の壁の下側部分がオイルによって濡れていることによって、均質な光学的オフ状態が確保される。画素が駆動されるとき、上側部分が第1の流体に対して濡れ性がより低い(親水性である)ため、オイルの移動の可逆性も維持される。
【0021】
導入部で述べたように、そのようなエレクトロウェッティングディスプレイの画素の性能、特にグレーレベルの制御は、ディスプレイの画素にオイルを高い再現性にて充填することに極めて大きく依存する。大きな画素に充填するために使用されている方法では、例えば、マイクロマニピュレータによって駆動される注入器15(矢印16の方向に水の層6を貫いて挿入される)を使用して、必要な量の着色オイルを画素に加える(図4a)。垂れ下がったオイル滴5’が疎水性のフルオロポリマー層8に触れると、オイル滴が広がって膜(厚さは本例においては10μオーダー)を形成する(図4b)。
【0022】
膜の最小厚さは、画素のサイズと、オイル及び水の界面張力の両方に依存する。この方法を使用する場合、注入器(又は充填針)15を画素領域のそれぞれに挿入しなければならず、従って、製造する画素の寸法より針の寸法が小さくなければならない。しかしながら、小さな画素の場合、それに応じて針の寸法を低減することができず(図5)、隣り合う画素のオイル滴5’が互いに混ざる可能性が生じる。更に、画素レベルでの充填は、かなり時間がかかる。
【0023】
図6は、エレクトロウェッティングディスプレイにおいて画素に充填するための、本発明による方法を示しており、この方法においては、オイル滴5’の直径が画素領域より大きくてもよい。注入器(又は充填針)15は、例えば矢印17によって示したように横方向の動きによってディスプレイ基板を横切り、その一方で、液体5’が液体6(水)を通じて連続的に充填される。この場合、オイル5は画素の壁に接触するが、疎水性のフルオロポリマー面に選択的に移動することが観察された。この理由は、おそらくは、濡れ性のより高い画素の壁が水に濡れている状態を維持しようとするためである。従って、画素に針を挿入することなく、画素に充填することができる(図6)。もはや充填針を画素に入れる必要がないため、比較的大きな注入針からのオイルによって画素を充填することができる。充填針を基板から一定の高さに維持することも有効であり、さらに、この手順を自動化することによって充填の均質性が向上する。
【0024】
本発明は、上述した例に限定されない。針を使用する代わりに、図6の右側に示したように、オイル滴5’を噴霧することも可能である。この方法では、隣り合う画素列に異なる着色オイルを充填することもできる。ピクセルは、物理的な壁を使用する代わりに、基板を化学的に処理することによって隔てることができる。
【0025】
本発明は、新規の特徴すべてと、特徴の組合せすべてを含んでいる。請求項における参照数字は、請求項の保護範囲を制限するものではない。動詞「備えている」及びその活用形の使用は、請求項に記載されている以外の要素が存在することを除外するものではない。要素の前の冠詞「a」又は「an」の使用は、そのような要素が複数存在することを除外するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】ディスプレイデバイスの一部の概略的な断面図であり、本発明のディスプレイデバイスが基づいている原理を示している。
【図2】本発明に係るディスプレイデバイスの一部の概略的な断面図である。
【図3】本発明に係るディスプレイデバイスの一部の更なる概略的な断面図である。
【図4】ディスプレイデバイスの一部の概略的な断面図であり、現在の製造方法を示している。
【図5】ディスプレイデバイスの一部の概略的な断面図であり、現在の製造方法におけるいくつかの制約を示している。
【図6】本発明による製造方法を示すための概略的な断面図である。
【図1a】

【図1b】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに混ざり合わない少なくとも1つの第1の流体(6)及び第2の流体(5)を備えている光学要素を製造する方法で、デバイスが、前記第2の流体に対する濡れ性の低い表面領域を備えている1つの支持板を少なくとも有する、前記方法であって、
− 前記濡れ性の低い表面領域を画成するステップと、
− 少なくとも前記濡れ性の低い表面領域に前記第1の流体(6)の層を設けるステップと、
− 前記第1の流体の層の上側から前記第2の流体(5)を導入するステップと、
− 更なる透明な支持板(3)と前記支持板(4)との間の空間を閉じるステップと、
を含んでいる、方法。
【請求項2】
濡れ性の高い表面領域を有する領域が、前記濡れ性の低い表面領域を囲んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
濡れ性の高い表面(13a)が壁(13)に設けられている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ディスプレイデバイスを製造する請求項1に記載の方法であって、前記第2の流体が前記第1の流体を通じての注入によって導入される、方法。
【請求項5】
ディスプレイデバイスを製造する請求項1に記載の方法であって、前記第2の流体が、前記第1の流体の上に前記第2の流体を拡散させることによって導入される、方法。
【請求項6】
前記第2の流体が、ディスプレイのいくつかの画素の前記第1の流体に同時に導入される、請求項4又は5に記載の方法。

【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−532942(P2007−532942A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506876(P2007−506876)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【国際出願番号】PCT/IB2005/051035
【国際公開番号】WO2005/098797
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(506255669)リクアヴィスタ ビー. ヴィー. (12)
【Fターム(参考)】