説明

ディスプレイ保持機構及び開閉式ディスプレイ装置

【課題】 簡素な構成により、回動時の品位を保ちつつ、使用状態のディスプレイを確実に保持することができるディスプレイ保持機構を提供する。
【解決手段】 ディスプレイ保持機構は、ディスプレイの回転軸54に制動トルクを付与するブレーキシュー52と、ブレーキレバー部を備える。ブレーキレバー部は、ブレーキシュー52を押圧する押圧部60a,62aとカム部材56により付勢される板バネ部60b、62bを有する第1,第2レバー60,62を備える。ディスプレイの回動時は、第1レバー60の板バネ部60bのみが付勢され、回転軸54には小さなトルクが与えられる。ディスプレイが使用位置で停止すると、カム部材56が回転して第2レバー60の板バネ部62bを付勢し、回転軸54に大きなトルクが与えられる。これにより、ディスプレイ18は停止位置で確実に保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回動可能なディスプレイを保持するためのディスプレイ保持機構、及び、このディスプレイ保持機構を備えた開閉式ディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ワンボックス車や大型車などでは、リアシート用のディスプレイ装置を搭載するものが多くなっている。このリアシート用ディスプレイ装置は、例えば車両の天井内側に固定され、ディスプレイが筐体内の収納位置から通過範囲を通って使用範囲へと回動可能に支持されている。装置を使用しないときは、ディスプレイが前方の視界を遮ることのないように、ディスプレイが収納位置に収納される。また、装置の使用時には、ディスプレイが通過範囲を通って使用範囲まで回動され、ユーザーによって使用範囲内の適宜の位置(使用位置)で保持される。
【0003】
このようなディスプレイ装置では、収納位置を基準としたときに、ディスプレイが90度を超えて回動した時点で、ディスプレイを駆動するギヤがディスプレイの自重によって受ける負荷の向きが変わる結果、当該駆動ギヤにバックラッシの反転が発生してディスプレイががたつくため、回動時の品位が損なわれてしまう。さらに、使用中のディスプレイが車両の振動を受けてがたつくことを防止するために、ディスプレイを使用位置で保持する必要がある。
【0004】
そこで、特許文献1では、ディスプレイのヒンジ部に取り付けられたブラケットに傾斜部を設け、このブラケットに接触するスプリングプレートを変位させることで、ヒンジ部にトルクを発生させる第1及び第2のトルク発生機構を、ディスプレイ回転軸の両側に配置するとともに、ディスプレイ回動角度に応じて変化するトルク特性を、第1及び第2のトルク発生機構で異ならせるようにしたディスプレイ装置が開示されている。
【0005】
また、特許文献2では、ディスプレイが使用位置で停止したときに、ディスプレイの回転軸を外側から締め付けることで、回転軸との摩擦力によりディスプレイを使用位置で保持するディスプレイロック機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−119165号公報
【特許文献2】特開2007−171922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載のディスプレイ装置では、ディスプレイのヒンジ部に各々取り付けられたブラケットに設けられた傾斜部と、当該ブラケットに接続されたスプリングプレートとの接触によりトルクを発生させるものであり、発生するトルク量が小さく、ディスプレイを確実に保持することが困難であった。特に、ディスプレイが比較的大きく重量がある場合には、その傾向が顕著であった。
【0008】
そこで、上記特許文献1に記載のトルク発生機構に、上記特許文献2に記載のディスプレイロック機構を組み合わせることで、通過範囲と使用範囲の境界におけるがたつきを防止しつつ、ディスプレイを使用位置で確実に保持することができるため好ましい。しかし、複数の機構を組み合わせることで、部品点数が増加してしまうため、コスト及び装置の小型化の観点から問題があった。
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであり、簡素な構成により、回動時の品位を保ちつつ、使用状態のディスプレイを確実に保持することができるディスプレイ保持機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のディスプレイ保持機構は、通過範囲及び使用範囲においてディスプレイの回動に抵抗する第1のトルクを発生する第1のトルク発生部と、前記使用範囲内の使用位置で前記ディスプレイを保持するための第2のトルクを発生する第2のトルク発生部と、前記第1のトルク発生部を動作させるとともに、前記使用位置に前記ディスプレイが停止したときに前記第2のトルク発生部を動作させる制動部とを備えた構成を有する。
【0011】
かかる構成により、ディスプレイの回動時、及び、ディスプレイの停止時にトルクを発生させる複数のトルク発生部を、単一の制動部により動作させるようにしたから、簡素な構成により、回動時の品位を保ちつつ、使用状態のディスプレイを確実に保持するという機能を損なうことなく、装置の小型化、低コスト化を図ることができる。
【0012】
本発明のディスプレイ保持機構において、前記第2のトルク発生部によるトルクは、前記第1のトルク発生部によるトルクよりも大きくなるように設定される。この構成により、ディスプレイが停止位置にある場合のみ、大きなトルクを付与することができるから、ディスプレイ回動時の制動トルクを抑えつつ、ディスプレイを停止位置で確実に保持することができる。したがって、ディスプレイの回動制御に必要な消費電力を低減することができる。
【0013】
本発明のディスプレイ保持機構は、前記ディスプレイの回転軸を挟み込むことで前記ディスプレイを制動するブレーキ部を備え、前記第1及び前記第2のトルク発生部の各々は、前記制動部に接続される板バネ部と、前記板バネ部が前記制動部によって付勢されたときに、前記ブレーキ部の一端を押圧して前記ディスプレイを制動するための押圧部とを有するレバー部材とした構成を有する。これにより、ディスプレイ保持機構をコンパクトに構成することができる。
【0014】
本発明のディスプレイ保持機構において、前記制動部は、前記第1のトルク発生部の前記板バネ部に当接するカム部材と、前記カム部材を駆動する駆動機構とを備え、前記第1のトルク発生部の板バネ部は、前記カム部材によって常に付勢されており、前記第2のトルク発生部の板バネ部は、前記カム部材が所定位置に回動した場合にのみ付勢される構成を有する。かかる構成により、簡易な構成で2つのトルク発生部の動作を制御することができ、装置の小型化、低コスト化を図ることができる。
【0015】
本発明のディスプレイ装置は、上記のディスプレイ保持機構と、映像を表示するディスプレイと、前記ディスプレイを前記使用位置と前記収納位置との間で回動するディスプレイ開閉機構とを備えた構成を有する。かかる構成によっても、上記と同様に、簡素な構成により、回動時の品位を保ちつつ、使用状態のディスプレイを確実に保持するという機能を損なうことなく、装置の小型化、低コスト化を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡素な構成により、回動時の品位を保ちつつ、使用状態のディスプレイを確実に保持することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る開閉式ディスプレイ装置を備えた車両の構成を示す側面図
【図2】図1の開閉式ディスプレイ装置の使用位置における外観斜視図
【図3】図1の開閉式ディスプレイ装置の収納位置における外観斜視図
【図4】ディスプレイの回動範囲を示す説明図
【図5】開閉式ディスプレイ装置の内部構成を示す平面図
【図6】ディスプレイ制動部の構成を示す側面図
【図7】2種類の板バネの位置関係を示す外観斜視図
【図8】ブレーキレバー部及びブレーキシューの構成を示す平面図
【図9】ディスプレイ制動部の構成を示す平面図であり、(A)はディスプレイが回動範囲にある状態、(B)ディスプレイが使用位置で停止した状態
【図10】ディスプレイの回動角度と回転軸にかかるバネ荷重との関係を示すグラフ
【図11】開閉式ディスプレイ装置の電気的構成を示すブロック図
【図12】ディスプレイ装置の回動動作の処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態に係るディスプレイ保持機構を備えたリアシート用ディスプレイ装置について、図面を用いて説明する。
【0019】
図1は、ディスプレイ装置を備えた車両の側面図である。ディスプレイ装置10は、車両12の前部座席14及び後部座席16の間で、車両12の天板の内面に固定されている。また、ディスプレイ装置10は、映像を出力表示するディスプレイ18を備え、このディスプレイ18は装置本体から下方に突出するよう構成されている。これにより、後部座席の同乗者がディスプレイ18に表示される映像を鑑賞することができる。
【0020】
ディスプレイ装置10の外観を図2及び図3に示す。ディスプレイ装置10は、筐体20と、再生装置22と、ディスプレイ18とを備えている。ディスプレイ18は、筐体20に形成された収納部24から下方に突出する使用位置(図2参照)と、筐体20に形成された収納部24内に収納される収納位置(図3参照)との間で、回動可能に構成されている。ここで、再生装置22としては、例えばDVDドライブ、BDドライブを用いることができる。
【0021】
また、図4に示すように、ディスプレイ18は、収納位置(図3に対応)から通過範囲を通過して、使用範囲内の使用位置(図2に対応)へと回動される。収納位置におけるディスプレイ18の角度を基準(0度)としたとき、使用範囲は、ユーザの体型及び姿勢のばらつきを考慮してユーザが画面を見やすいように設定されており、例えば、90度から120度に設定されている。本実施形態のディスプレイ装置はいわゆるフリーストップタイプであり、ディスプレイ18が使用範囲まで回動され、使用範囲内の適宜の位置(使用位置)に保持される。
【0022】
図5は、ディスプレイ装置10の駆動機構の構成を示す平面図である。ディスプレイ装置10の駆動機構は、ディスプレイ開閉部26とディスプレイ制動部28とを備えている。ディスプレイ開閉部26は、開閉用モータ30、伝達ギヤ列32、終端ギヤ34と、この終端ギヤ34に同軸に取り付けられた回転軸36とを備えている。開閉用モータ30からの駆動力が伝達ギヤ列34及び終端ギヤ34を介して回転軸36に伝達され、この回転軸36が回転することで、ディスプレイ18が収納位置と使用位置との間で回動する。
【0023】
また、終端ギヤ34の近傍には、終端ギヤ34の回転の有無及び回転位置を検出するディスプレイ位置センサ38(図11参照)が設けられている。このディスプレイ位置センサ38は、例えばロータリーセンサが用いられ、ディスプレイ位置センサ38からの信号を検出することで、ディスプレイ18が回動中か否か、及び回動量を検出することができる。
【0024】
図6に示すように、ディスプレイ制動部28は、保持用モータ40、ウォームギヤ42、伝達ギヤ44、46、セクタギヤ48、ブレーキレバー部50、ブレーキシュー52、回転軸54を備えており、略円環状のブレーキシュー52の内側にディスプレイ18の回転軸54が取り付けられている。保持用モータ40が駆動すると、ウォームギヤ42、伝達ギヤ44,46を介して、保持用モータ40の駆動力がセクタギヤ48に伝えられ、セクタギヤ48が回転する。
【0025】
セクタギヤ48には、ブレーキレバー部50に付勢を与えるためのカム部材56が同軸に取り付けられており、セクタギヤ48の回転に伴いカム部材56が回転し、後述する第1レバー60及び第2レバー62を押圧する。また、カム部材56の近傍には、カム部材56の回転角度を検出するための回転角センサ72(図11参照)が設けられている。なお、セクタギヤ48とカム部材56を一体に形成しても良い。
【0026】
ブレーキレバー部50は、ブレーキシュー52を締め付けることで回転軸54にトルクを与えるものであり、本実施形態では、ブレーキシュー52にほぼ均等に負荷をかけることができるよう、一対のブレーキレバー部50が設けられている。図7に示すように、ブレーキレバー部50は、外側の第1レバー60、内側の第2レバー62と、これら第1レバー60及び第2レバー62を回転可能に保持するピン64とを備える。
【0027】
第1レバー60は、ピン64によって回動可能に支持される押圧部60aと、この押圧部60aから延びた平板状の板バネ部60bとを備えている。また、第2レバー62は、第1レバー60の内側に配置されており、ピン64によって回動可能に支持される押圧部62aと、この押圧部62aから延びた平板状の板バネ部62bとを備えている。
【0028】
図8は、カム部材56を取り外した状態のブレーキレバー部50及びブレーキシュー52の構成を示したものである。外側に設けられた第1レバー60の板バネ部60bは、互いに内側を向くように(図7では反るように)曲げられている。また、第1レバー60の押圧部60aの一端は、ブレーキシュー52の一端に形成された突起52aと当接しており、これにより、一対の板バネ部60bが互いに広がる方向に付勢を受けたときに、押圧部60aがブレーキシュー52の突起52aを押圧し、ブレーキシュー52により回転軸54を締め付けるトルクが付与される。
【0029】
第2レバー62の板バネ部62bは、押圧部60aに対してほぼ水平の位置を保っており、カム部材56が設けられていない状態では、これら板バネ部60b,62bは互いに離れた状態で保持される。また、第2レバー62の押圧部60aは、第1レバー60の押圧部60aと当接しており、一対の板バネ部62bが互いに広がる方向に付勢を受けたときに、第2レバー60の押圧部62aが第1レバー60の押圧部60aを介して、ブレーキシュー52の突起52aを押圧し、ブレーキシュー52により回転軸54を締め付けるトルクが付与される。
【0030】
また、第1レバー60の板バネ部60bは、第2レバー62の板バネ部62bよりも細く形成されており、第1レバー60の板バネ部60bのバネ定数が、第2レバー62のバネ定数よりも小さく設定されている。これにより、第1レバー60によるブレーキシュー52への押圧力(回転軸54へのトルク)を、第2レバー62による押圧力(回転軸54へのトルク)よりも小さくすることができる。
【0031】
図9は、ディスプレイ制動部28の動作を示す説明図であり、図9(A)はディスプレイ18が回動中の場合であり、図9(B)はディスプレイ18が使用位置で停止している場合を示している。第1レバー60の板バネ部60bの先端がカム部材56の外周に当接しており、第1レバー60の押圧部60aの先端がブレーキシュー52に形成された突起52aに当接している。また、略円環状のブレーキシュー52の一部が、ディスプレイ18の回転軸54と当接している。
【0032】
図9(A)に示すように、ディスプレイ18が通過範囲および使用範囲で回動中の場合には、カム部材56が第1レバー60の板バネ部60bと当接し、一対の板バネ部60bが離れる方向に付勢を受ける。このため、第1レバー60の押圧部60aがブレーキシュー52の突起52aを押圧し、ブレーキシュー52がディスプレイ18の回転軸54を一定のトルクで締め付ける。これにより、回動中のディスプレイ18に対し、常に一定量のトルクが与えられるので、ディスプレイ18が通過範囲と使用範囲との境界を通過する際に、駆動ギヤのバックラッシの反転に起因するがたつきが発生するのを防止することができる。
【0033】
また、図9(A)に示す状態では、第2レバー62の板バネ部62bはカム部材56による付勢を受けていないため、第2レバー62の押圧部62aにおいてブレーキシュー52を押圧することはない。これにより、第1レバー60による小さなトルクのみを、回動中のディスプレイ18に与えることができ、ディスプレイ回動中の消費電力を低く抑えることができる。
【0034】
図9(B)に示すように、ディスプレイ18が使用位置で停止した場合には、保持用モータ40が駆動して、セクタギヤ48及びカム部材56が図中時計方向に回転する。そして、第1レバー60及び第2レバー62の板バネ部60b,62bの双方がカム部材56の突起による付勢を受け、一対の板バネ部60b,62bのいずれもが互いに広がる方向に撓められる。第1レバー60及び第2レバー62の押圧部60a,62aの双方がブレーキシュー52の突起52aを押圧し、ブレーキシュー52がディスプレイ18の回転軸54を一定のトルクで締め付ける。第2レバー62の板バネ部62bは厚く形成されており、ブレーキシュー52は第2レバー62による強いトルクで締め付けられるため、停止位置にあるディスプレイ18が確実に保持される。
【0035】
図10は、第1レバー60及び第2レバー62による荷重(バネ荷重)の変化の一例を示すグラフである。図10において、横軸は、第1レバー60を基準とした板バネ部60bのたわみ量、縦軸は、第1レバー60及び第2レバー62によるバネ荷重を示す。ここで、第2レバーの板バネ部62bが第1レバー60の板バネ部60bよりも厚く形成されているため、第1レバー60のバネ荷重の傾きに比して、第2レバー62のバネ荷重の傾きが大きくなっている。
【0036】
ここで、図10の横軸は第1レバー60の板バネ部60bのたわみ量を基準としており、第1レバー60のみがカム部材56による付勢を受けている状態(図9(A)で示す状態)に、たわみ量がL1となり、このときは第2レバー62がカム部材56による付勢を受けていないため、第2レバー62によるバネ荷重は0となり、合計荷重(ブレーキシュー52の突起52aが受けるバネ荷重)はW1となる。
【0037】
そして、第1レバーのたわみ量がL1を超えると、第1レバー及び第2レバーの板バネ部60b,62bの双方がカム部材56の突起により付勢を受けるので、たわみ量の増加に伴って第1レバー60及び第2レバー62のバネ荷重は増加し、図10に示す合計荷重も増加する。そして、ディスプレイ18を停止位置に保持するのに必要な合計荷重W2に対応するときのたわみ量がL2になるように、カム部材56の回転角度(設定角度)が調整される。
【0038】
ここで、回動中のディスプレイ18に与えるべき制動トルク(バネ荷重W1に対応)は、ディスプレイを回動するギヤのバックラッシの反転を抑制できる程度であれば十分であり、過度に制動トルクを高くしてしまうと、ディスプレイの回動に多くの電力が必要となるため好ましくないことから、回動中のディスプレイ18へ与える制動トルクの誤差を一定範囲に抑える必要がある。この点、従来の制動機構では、部品精度のばらつきのために歩留まりを向上することができなかったところ、本発明に係るディスプレイ保持機構によれば、第1レバー60の板バネ部60bのたわみ量を調整するだけで、適正なバネ荷重W1を容易に実現することができるので、装置の歩留まり向上を図ることができる。また、仮に第1レバー60の板バネ部60bのたわみ量にずれが生じたとしても、第1レバー60の板バネ部60bバネ荷重の変動量(回動中のディスプレイに与えられるトルクの変化量)は小さいため、消費電力の変動も抑制することができる。
【0039】
また、本発明に係るディスプレイ保持機構によれば、ディスプレイを停止位置に保持する第2レバー62の外側にもう一つのレバーを設けるだけで、従来と同様のディスプレイ保持機構を実現することができるので、部品点数の削減及び装置の小型化を図ることができる。
【0040】
なお、第1及び第2レバー60,62の板バネ部60b、62bの厚さ及びたわみ量は、回動中のディスプレイに与えるべきトルク、及び、停止位置にあるディスプレイに与えるべきトルクに応じて、適宜定めることができる。
【0041】
ディスプレイ装置10の電気的構成の一例を図11に示す。制御部70は、ディスプレイ位置センサ38及び回転角センサ72からの情報を受けて、開閉用モータ30及び保持用モータ40への出力を制御する。また、操作部74は、ディスプレイ18を使用位置と収納位置との間で回動するために、利用者によって操作される。
【0042】
図12のフローチャートは、ディスプレイ18を収納位置から使用位置へと回動する処理の手順を示したものである。ディスプレイ18が収納位置にあるときは、カム部材56は図9(A)に示す位置にあり、ブレーキシュー52は第1レバー60による押圧のみを受けている。
【0043】
この状態で、利用者が操作部74を操作したことが検出されると(S11)、制御部70は、開閉用モータ30を駆動して、ディスプレイ18を収納位置から使用位置に向けて回動させる(S12)。そして、利用者による回動操作が終了し、ディスプレイ回動センサからの信号により、ディスプレイ18が使用位置で停止したか否かが検出される(S13)。ディスプレイ18が使用位置で停止したことが検出されると、制御部70は、開閉用モータ38を停止するとともに(S14)、保持用モータ42を駆動してカム部材56を回転させる(S15)。
【0044】
そして、制御部70は、設定角度だけカム部材56が回動したか否かを検出し(S16)、当該設定角度だけカム部材56が回転すると、制御部70は、保持用モータ42を停止する(S17)。ブレーキシュー52は第1レバー60及び第2レバー62による押圧を受け、ディスプレイ18の回転軸54がブレーキシュー52によって強いトルクで締め付けられる。これにより、停止位置にあるディスプレイ18が確実に保持され、走行中の車両の振動を受けて、ディスプレイ18ががたつくおそれをなくすことができる。
【0045】
以上、本発明の実施の形態を例示により説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。例えば、第1レバー及び第2レバーは、図示した形状に限定されることはなく、本発明と同一の作用効果を奏する限り、種々の形態をとることができる。
【0046】
また、上記実施形態では、車両用の開閉式ディスプレイ装置を例にして説明を行っているが、本発明はこれに限られることはなく、例えば、航空機の客室エリアに設けられる開閉式のディスプレイ装置にも、同様に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の開閉式ディスプレイ装置は、回動時の品位を保ちつつ、使用状態のディスプレイを確実に保持するという機能を損なうことなく、駆動機構の小型化・低コスト化に寄与することができ、車両用のディスプレイ装置として有用である。
【符号の説明】
【0048】
10 開閉式ディスプレイ装置
18 ディスプレイ
26 ディスプレイ開閉部
28 ディスプレイ制動部
30 開閉用モータ
36,54 回転軸
38 ディスプレイ位置センサ
40 保持用モータ
50 ブレーキレバー部
52 ブレーキシュー
56 カム部材
60 第1レバー
62 第2レバー
60a,62a 押圧部
60b、62b 板バネ部
70 制御部
72 回転角センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納位置から通過範囲を超えて使用範囲へと回動可能なディスプレイを保持するディスプレイ保持機構であって、
前記通過範囲及び前記使用範囲において前記ディスプレイの回動に抵抗する第1のトルクを発生する第1のトルク発生部と、
前記使用範囲内の使用位置で前記ディスプレイを保持するための第2のトルクを発生する第2のトルク発生部と、
前記第1のトルク発生部を動作させるとともに、前記使用位置に前記ディスプレイが停止したときに前記第2のトルク発生部を動作させる制動部とを備えたことを特徴とするディスプレイ保持機構。
【請求項2】
前記第2のトルク発生部によるトルクは、前記第1のトルク発生部によるトルクよりも大きくなるように設定されていることを特徴とする、請求項1記載のディスプレイ保持機構。
【請求項3】
前記ディスプレイの回転軸を挟み込むことで前記ディスプレイを制動するブレーキ部を備え、
前記第1及び前記第2のトルク発生部の各々は、前記制動部に接続される板バネ部と、前記板バネ部が前記制動部によって付勢されたときに、前記ブレーキ部の一端を押圧して前記ディスプレイを制動するための押圧部とを有するレバー部材であることを特徴とする、請求項1または2記載のディスプレイ保持機構。
【請求項4】
前記制動部は、前記第1のトルク発生部の前記板バネ部に当接するカム部材と、前記カム部材を駆動する駆動機構とを備え、
前記第1のトルク発生部の板バネ部は、前記カム部材によって常に付勢されており、
前記第2のトルク発生部の板バネ部は、前記カム部材が所定位置に回動した場合にのみ付勢されることを特徴とする、請求項3記載のディスプレイ保持機構。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか記載のディスプレイ保持機構と、
映像を表示するディスプレイと、
前記ディスプレイを前記使用位置と前記収納位置との間で回動するディスプレイ開閉機構とを備えたことを特徴とする、開閉式ディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−37266(P2013−37266A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174746(P2011−174746)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】