説明

ディスプレイ保護膜形成具

【課題】保護シートを、ディスプレイ表面に貼り付ける際にディスプレイと保護シートとの間への気泡の混入を抑制できるディスプレイ保護膜形成具を提供する。
【解決手段】ディスプレイ保護膜形成具1には、胴体部材2に設けられ、乾燥すると保護膜を形成する保護液を貯留した容体3と、当該容体に装着された塗布部5、及び保護液の塗布直後に、余分な保護液を拭取る拭取部7と塗布部蓋部材6と拭取部蓋部材8を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、携帯型情報端末に設けられたディスプレイを、傷や汚れ等の欠陥の発生から保護する保護液を塗布するディスプレイ保護膜形成具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話、携帯型情報検索端末、若しくは携帯型ゲーム機等の携帯型情報端末に設けられたディスプレイに傷や汚れ等の欠陥が発生することから保護するために透明保護シートが利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−305254号公報
【特許文献2】特開2006−155452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来利用されている保護シートは、ディスプレイ表面に貼り付ける際にディスプレイと保護シートとの間に気泡が入り込み易い。気泡が入り込んだままでは見栄えが悪くなる他、ディスプレイがタッチパネル式の入力機能を有している場合には気泡が邪魔になり操作性が悪くなるという問題があった。
【0005】
しかし、このような気泡が入らないように保護シートを貼り付けるためには熟練が必要であり、保護シートを張り直す際に当該保護シートを損傷させてしまい保護シートが無駄になってしまうという問題もあった。
【0006】
さらに、保護シートを利用することによりディスプレイそのものは傷や汚れ等の欠陥の発生から保護されるが、その代わりに保護シートに欠陥が発生するため、ディスプレイの視認性を維持するためには保護シートを頻繁に張り替えなければならないという煩わしさがあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、上記課題を解決する手段として本願発明に係るディスプレイ保護膜形成具は、携帯に適する大きさに形成された胴体部材の一端部に、保護液を収容し得る容体が設けられると共に、胴体部材の他端部に拭取部が設けられ、容体は、内部が保護液貯留部とされると共に外方に開口を向けて胴体部材に設けられ、前記開口には、保護液を塗布するための塗布部が設けられ、前記塗布部は、保護液を滲出させる塗布面を有し、前記拭取部は、保護液を吸収する拭取面を有してなり、携帯型情報端末装置のディスプレイ面上に前記塗布面によって塗布液を塗布した直後に、余分な保護液を前記拭取面によって拭き取り、保護液の乾燥によって保護膜を形成するために用いられることを特徴とする。
【0008】
胴体部材は、携帯に適する大きさに形成されている。従って、胴体部材を手で把持することが可能であり、塗布部を携帯型情報端末装置のディスプレイに当接させて保護液を塗布可能な大きさであることが好ましい。なお、本願発明に係るディスプレイ保護膜形成具の大きさは、保護液の塗布作業をいつでも行なうことができるように、鞄などに収納して持ち運び可能な大きさに形成されていることが好ましい。より好ましくは、ディスプレイ保護膜形成具が衣服のポケットに収納可能な大きさに形成する。
【0009】
塗布部は、貯蔵部に貯蔵された保護液を胴体部材の外部まで送り出すと共に、ディスプレイに保護液を塗布することができる機能を備えるものである。従って、塗布部は保護液を吸い上げることが可能な多孔質体(以下、多孔質塗布部材という。)を備えるものであることが望ましい。多孔質塗布部材としては、ポリエチレン樹脂若しくはウレタン樹脂からなる多孔質樹脂、又はポリエチレン及びウレタンの混合樹脂からなる多孔質樹脂であることが好ましい。また、多孔質塗布部材は発泡シリコンであっても好ましい。
【0010】
また、塗布部は、前記多孔質塗布部材のみからなり容体の開口に直接挿し込まれるなどして設けられても良いが、より好ましくは多孔質塗布部材及び多孔質塗布部材を保持可能な塗布側保持部材とから構成される。塗布側保持部材を樹脂等で成形し、容体の開口に装着することで塗布部を安定に固定することができる。
【0011】
塗布部には、ディスプレイに保護液を塗布するため保護液が滲出する塗布面が形成されており、前記多孔質塗布部材の先端部が平坦面に形成されてなるものが好ましい。塗布面が形成されていることによって、ディスプレイ全体への保護液の塗布を短時間で行なうことができる。
【0012】
拭取部は、塗布部によってディスプレイ上に塗布された保護液のうち、余分な保護液を吸収して、保護液を均一な層に成形するために用いられる。
【0013】
すなわち、塗布部をディスプレイに押付けながら掃引して保護液を塗布した場合、塗布中に塗布面から滲出する保護液の量が均一ではなかったり、塗布面の外周縁部分が既に塗布されている保護液を押しのけることによって、周囲とは異なる厚みに塗布された状態となる液斑が部分的に生ずる。
【0014】
このような液斑を放置すると、保護液が乾燥して保護膜が形成された際に、液斑が隆起した状態で固化し、ディスプレイの美観を損なうほか、表示内容の視認性が低下する。また、若しくはタッチパネル型ディスプレイでは操作性にも支障を生じるという問題が生じる。
【0015】
そこで、保護液が塗布部によって塗布された直後に、乾燥前の保護液が塗布されたディスプレイ上を拭取部で拭き取ることによって、拭取部が余分な保護液を吸収し、保護膜を均一な層状に成形することができる。
【0016】
拭取部は、保護液を吸収する機能を有するものである。従って、拭取部には保護液を吸収することが可能な多孔質体(以下、多孔質拭取部材という。)が設けられていることが望ましい。多孔質拭取部材は、フェルトであることが好ましく、また、ポリエチレン樹脂若しくはウレタン樹脂からなる多孔質樹脂、又はポリエチレン及びウレタンの混合樹脂からなる多孔質樹脂を用いても好ましい。
【0017】
なお拭取部は、余分な保護液を拭き取ると同時に、保護液を塗布直後よりも薄い薄膜状に引き延ばす効果も有するので、当該拭き取り作業で全ての保護液が除去されることはない。
【0018】
また、拭取部は、前記多孔質拭取部材のみからなり胴体部材に直接固定されても良いが、より好ましくは多孔質拭取部材、及び多孔質拭取部材が保持可能な拭取側保持部材とから構成される。拭取側保持部材を樹脂等で成形して胴体部材に装着することで、拭取部を安定に固定することができる。
【0019】
拭取部には拭取面が形成されており、前記多孔質拭取部材の先端部が平坦面に形成されてなるものが好ましい。拭取面が形成されていることによって、ディスプレイ全体への保護液の拭取作業を短時間で行なうことができる。
【0020】
本願発明において、塗布部と拭取部とが胴体部材に設けられていることにより、保護液を塗布した直後の保護液が乾燥する前に、余分な保護液を液体状態で拭き取ることができるため、平滑な保護膜を容易に形成することができる。このため、ディスプレイの優れた視認性及び美観を保持することができる。また、タッチパネル型ディスプレイの操作性も阻害することがない。
【0021】
容体は、胴体部材成形時に胴体部材と一体に形成されてもよく、または別途制作した後胴体部材に装着して形成されてもよい。容体を一体成形すれば部品点数を少なくすることができ、製造コストを低減させることができる。
【0022】
また、容体を胴体部材に装着して形成する場合には、容体を胴体部材に固着させてもよく、また、容体が胴体部材に対して着脱可能に取付けられても好ましい。容体が胴体部材に対して着脱可能に取付けられることによって、保護液を使いきった後に、新しく保護液を貯留部に貯留させた容体に取り替えて本願発明を使用することができる。これにより、保護液を使い切った後にも容体の購入コストのみで本願発明を使い続けることができ、需要者の負担を軽減することができる。また、容体以外の部分は廃棄されずに使うことができるので環境に対する負担も減らすことができる。
【0023】
胴体部材に対して着脱可能に形成された容体は、胴体部材に一端方向から挿し入れられて装着されていることが好ましい。これにより少なくとも容体の開口部分以外の部分が胴体部材の内部に格納されることで、容体を安定に保持することができる。
【0024】
また、胴体部材に装着された容体は、容体の一部が胴体部材外部に露出した状態で装着されていてもよい。
【0025】
容体の一部が胴体部材外部に露出して装着された場合には、例えば容体を胴体部材に対して着脱可能に形成した場合に、容体を胴体部材一端面に隣接する側面方向からの嵌め込み式で保持可能に形成させることができる。この場合には容体は胴体部材内部に格納されている必要はなく、容体が胴体部材側面から外部に露出した状態で保持されていても良い。この場合には、引き抜き式に比べて容体を脱離させるための力を軽減させることも可能である。
【0026】
なお、容体が着脱可能に形成されている場合には、開口に塗布部を取り付けた状態で胴体部材に装着することが好ましい。
【0027】
保護液としては、例えばシリコンエマルジョン、若しくはフッ素樹脂などの被膜材を含有する揮発性有機溶剤であることが好ましい。保護液は、ディスプレイ上に塗布後に薄膜状に乾燥及び固化する性質を有しており、揮発成分が揮発した後、前記被膜材がディスプレイ上を被膜して保護膜を形成する。当該保護膜がディスプレイ表面を傷や汚れなどの欠陥の発生から保護する。
【0028】
また、前記胴体部材の一端部に、前記塗布部を被覆可能な塗布部蓋部材が取付けられると共に、前記胴体部材の他端部に、前記拭取部を被覆可能な拭取部蓋部材が取付けられ、塗布部蓋部材及び拭取部蓋部材を、それぞれ開放位置において胴体部材に係止固定する塗布部開放係止部及び拭取部開放係止部が設けられていることとしても好ましい。
【0029】
塗布部蓋部材は、ディスプレイ保護膜形成具を持ち運ぶ際には閉塞した状態で用いられる。塗布部蓋部材が閉塞した状態においては、塗布部は、塗布部蓋部材の内部に格納された状態となるため、外部からの接触から保護される。一方、保護液を塗布する際には塗布部蓋部材を開放することにより塗布部を外部に露出させることができ、塗布面をディスプレイに当接させて保護液を塗布することができる。
【0030】
また、胴体部材には塗布部蓋部材を開放位置において係止固定することができる塗布部開放係止部が設けられており、塗布部を下方に向けて塗布作業を行なう場合であっても塗布部蓋部材を開放位置に保持することができる。これにより、意図せずに塗布部蓋部材が閉塞位置に戻って塗布作業の邪魔になる、若しくは塗布作業中に塗布部蓋部材が紛失するといった問題の発生を防止することができる。
【0031】
さらに、塗布部蓋部材は胴体部材の一端部に開閉可能に保持され、脱離できない状態に設けられていることが好ましい。このような構成により保護液の塗布作業を行なう際にも閉塞状態の塗布部蓋部材を一方の片手で開放位置に操作することができ、ディスプレイ保護膜形成具を持ち変えることなく塗布作業を行なうことができる。また、塗布作業終了後にも一方の片手で保持したまま塗布部蓋部材を閉塞状態にして次の拭取作業に迅速に移ることができ、手を保護液で汚すこともない。
【0032】
拭取部蓋部材は、ディスプレイ保護膜形成具を持ち運ぶ際には閉塞した状態で用いられる。拭取部蓋部材が閉塞した状態においては、拭取部は、拭取部蓋部材の内部に格納された状態となるため、外部からの接触から保護される。一方、余分な保護液を拭き取る際には拭取部蓋部材を開放することにより拭取部を外部に露出させることができ、拭取面をディスプレイに当接させて拭取り作業を行なうことができる。
【0033】
また、胴体部材には拭取部蓋部材を開放位置において係止固定することができる拭取部開放係止部が設けられており、拭取部を下方に向けて拭き取り作業を行なう場合であっても拭取部蓋部材を開放位置に保持することができる。これにより、意図せずに拭取部蓋部材が閉塞位置に戻って拭き取り作業の邪魔になる、若しくは拭き取り作業中に拭取部蓋部材が紛失するといった問題の発生を防止することができる。
【0034】
さらに、拭取部蓋部材は胴体部材の一端部に開閉可能に保持され、脱離できない状態に設けられていることが好ましい。このような構成により余分な保護液の拭き取り作業を行なう際にも閉塞状態の拭取部蓋部材を一方の片手で開放位置に操作することができ、ディスプレイ保護膜形成具を持ち変えることなく拭き取り作業を行なうことができる。
【0035】
なお、胴体部材、容体、塗布側保持部材、拭取側保持部材、塗布部蓋部、拭取部蓋部、塗布部開放係止部、及び拭取部開放係止部は、いずれも生分解性樹脂を用いて成形することができる。生分解性樹脂を用いて成形されたこれらの部品は土中等で分解させることができるため、廃棄後の環境への負担も軽減することができる。
【発明の効果】
【0036】
本願発明によれば、保護膜形成時にディスプレイとの間に気泡を発生させることがなく保護膜形成後のディスプレイの美観を損なうことがない。
【0037】
塗布された保護液のうちの余分な保護液は、保護液の塗布直後に拭取部によって拭取れるので、保護膜には液斑が残らず、膜厚の均一な膜を形成させることができる。このため、保護膜形成前のディスプレイと同等の優れた視認性と美観を保持することができる。
【0038】
さらに、保護膜形成後に、携帯型情報端末を使用して保護膜に欠陥が生じた際には、先に形成した保護膜の表面上にさらに保護液を塗布し、余分な保護液を拭取部で拭き取ることによって膜厚の均一な保護膜を再形成させることができる。これにより、従来の保護シートを張り替えるよりも容易に、かつ継続してディスプレイの優れた視認性及び美観を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】保護部蓋部材6及び拭取部蓋部材8を備え、蓋部材を閉塞状態に保持したディスプレイ保護膜形成具1の縦断面図である。
【図2】容体3の縦断面図及び塗布部5部分縦断面図(a)、容体3を塗布部5に装着する様子を示す図(b)、並びに塗布部7の部分縦断面図を示す図(c)である。
【図3】蓋部材を開放状態に保持し、塗布部5及び拭取部7を本体部材2から脱離させた状態のディスプレイ保護膜形成具1の縦断面図である。
【図4】保護部蓋部材6を開放状態としたディスプレイ保護膜形成具1の斜視図である。
【図5】ディスプレイ保護膜形成具1を使用してディスプレイSに保護液Lを塗布する方法を説明する図である。
【図6】保護部蓋部材106及び拭取部蓋部材108を備え、蓋部材を閉塞状態に保持したディスプレイ保護膜形成具1の縦断面図である。
【図7】保護部蓋部材106を開放状態に保持したディスプレイ保護膜形成具1の縦断面図である。
【図8】保護部蓋部材106を開放状態としたディスプレイ保護膜形成具1の斜視図である。
【図9】蓋部材を閉塞状態に保持したディスプレイ保護膜形成具201の縦断面図である。
【図10】蓋部材を開放状態に保持したディスプレイ保護膜形成具201の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本願発明に係る第一の実施形態を、図を参照しながら詳しく説明する。
【0041】
図1は、本願発明に係るディスプレイ保護膜形成具1の縦断面図である。ディスプレイ保護膜形成具1は、中心部に胴体部材2を有しており、当該胴体部材2を手で保持して操作することができる。なお当該第一の実施形態において、胴体部材2の一端部は図1紙面上方向の胴体部材2の端部、他端部は図1紙面下方向の胴体部材2の端部を示す。
【0042】
胴体部材2の一端部には、内部に保護液Lを貯留した容体3が格納されており、当該容体3の開口4に取付けられた塗布部5が、胴体部材2の一端から外方に突出して設置されている。また、胴体部材2の一方の側壁には塗布部蓋部材6が開閉可能に取り付けられており、ディスプレイ保護膜形成具1の不使用時には、塗布部5を被覆した閉塞状態に保持して外部からの接触から保護する。
【0043】
一方、胴体部材2の他端部には、拭取部7が取付けられている。また、胴体部材2の他方の側壁には拭取部蓋部材8が開閉可能に取り付けられており、ディスプレイ保護膜形成具1の不使用時には、拭取部7を被覆した閉塞状態に保持して外部からの接触から保護する。
【0044】
保護液Lは、図2(a)に示すように、容体3内部の貯留部9に貯留されている。また容体3上端の開口4には多孔質ポリウレタン樹脂からなる多孔質栓10が嵌入され、保護液Lは一気にこぼれ出ない構成となっている。容体3は、前記開口4に塗布部5を装着して使用する。
【0045】
容体3を装着した塗布部5は、図3に示すように胴体部材2の一端部に設けられた塗布部取付穴11に挿入することにより、胴体部材2の一端部に着脱自在に設置される。このとき容体3は塗布部取付穴11内部に格納される。
【0046】
塗布部5は、先端部分にポリエチレン及びウレタンの混合樹脂からなる多孔質塗布部材12と、該多孔質塗布部材12を保持する塗布側保持部材13とからなる。多孔質塗布部材12は、塗布側保持部材13を上下方向に貫通する貫通孔14に挿入されて保持されている。多孔質塗布部材12の一端面は保護液Lの塗布面15である。塗布部5を容体3に装着すると、図2(b)に示すように多孔質塗布部材12の下端が前記多孔質栓10の上端と当接させることができる。これにより、塗布部5を下方に向けることによって、保護液Lを、多孔質栓10を介して多孔質塗布部材12まで誘導し、塗布面15から滲出させることができる。
【0047】
塗布側保持部材13の下端部側周面には塗布部環状突部16が形成されており、当該塗布部環状突部16が塗布部取付穴11の内壁面に圧接されることによって、塗布部5が胴体部材2から抜け落ちることを防止できる。
【0048】
塗布部蓋部材6は、胴体部材2の一方の側壁に沿って細長に形成された軸穴17に、枢軸18を挿通して取付けられている。枢軸18は、軸穴17内において一端方向又は他端方向に自由に移動可能である。塗布部蓋部材6には、胴体部材2の他方の側壁部と当接する部分に蓋係合部19が設けられている。一方、胴体部材2一端部において他方の側壁側には、蓋係合部19に対応する形状に形成された胴体係合部20が設けられている。
【0049】
従って、塗布部蓋部材6を閉塞し、胴体係合部20に、蓋係合部19を係合させることで、図1に示すように塗布部蓋部材6を閉塞状態に固定することができる。閉塞状態において、枢軸18は軸穴17の中間位置にあり、塗布部蓋部材6を開放する際には、初めに塗布部蓋部材6を一端方向に移動させた後、枢軸18を回転軸として軸回転させることによって開放させることができる。
【0050】
軸穴17の他端部には、軸穴17内面に突起が設けられることにより塗布部開放係止部21が形成される。前記突起により軸穴17の幅は枢軸18の直径よりも小さく形成される。これにより、蓋係合部19が軸穴17の直上となる位置まで塗布部蓋部材6を開放させた後、塗布部蓋部材6を他端方向に移動させて枢軸18を突起よりも他端側に押し込むことにより塗布側蓋部材6を固定し、一端側に戻らないようにすることができる。また、軸穴17の一端の外面には係止溝22が形成されており、蓋係合部19を係止溝22に係止することによって、図3に示すように塗布部蓋部材6を胴体部材2の一方の側壁に密着させた状態で固定することができる。また、図4には塗布部蓋部材6が開放された状態のディスプレイ保護膜形成具1の斜視図を示す。
【0051】
拭取部7は、図2(c)に示すように、フェルトによって形成された多孔質拭取部材23と、該多孔質拭取部材23を保持する拭取側保持部材24とからなる。多孔質拭取部材23は拭取側保持部材24に設けられた保持孔25に挿入されて保持されている。多孔質拭取部材23の先端面は余分な保護液Lを吸収する拭取面26を形成する。
【0052】
胴体部材2の他端部には拭取部取付穴27が形成されており、図3に示すように拭取側保持部材24を当該拭取部取付穴27に挿し込むことによって、拭取部7を取付けることができる。このような構成により、拭取部7は着脱自在に胴体部材2に取付けられる。
【0053】
以上より、塗布部5及び拭取部7は、図1に示すように塗布面15と拭取面26とが同一軸上にあって反対方向を向いて胴体部材2を介して一体となるように設けられている。従って、以下の第一の実施形態の使用方法に説明するように、塗布部5を用いて保護液Lを塗布した直後に胴体部材2を反転させることで、保護液Lが乾燥する前に拭取部7を用いて余分な保護液Lの拭き取り作業を行なうことができる。
【0054】
拭取部蓋部材8は、胴体部材2の他方の側壁に沿って細長に形成された軸穴17に枢軸18を挿通して取付けられている。枢軸18は軸穴17において一端方向又は他端方向に自由に移動可能である。また、軸穴17の内面には突起が設けられることにより、拭取部開放係止部28が形成されており、拭取部蓋部材8の閉塞状態の固定、開放動作、及び開放状態の固定は塗布部蓋部材6と同じ動作で行なうことができる。
【0055】
次に、当該第一の実施形態における本願発明の使用方法について説明する。
【0056】
まず塗布部蓋部材6を開放状態とし、図5(a)に示すように塗布部5の塗布面15を携帯型情報端末のディスプレイS表面に押し当てながらディスプレイ保護膜形成具1を掃引すると、塗布面15に滲出している保護液LがディスプレイS表面に塗布される。
【0057】
このとき、保護液LはディスプレイSの表面を層状に被覆するが、一部において塗布中に塗布面15から滲出する保護液Lが不均一に塗布される、若しくは塗布面15の外周縁部分が既に塗布されている保護液Lを押しのけることによって、余分な保護液Lが付着し、周囲の保護液層とは厚さの異なる液斑L1が生ずる。液斑L1を放置したまま乾燥させると保護膜の厚みが不均一になりディスプレイSの美観が損なわれる等の不良要因となりうる。
【0058】
従って保護液Lを塗布した直後に、胴体部材2の一端と他端とを反転させて拭取部蓋部材8を開放状態とし、図5(b)に示すように拭取面26をディスプレイS表面に押し当てながらディスプレイ保護膜形成具1を掃引すると、液斑L1を形成する余分な保護液Lを多孔質拭取部材23に吸収させることができる。
【0059】
余分な保護液Lを拭き取ることによって液斑L1を除去することができる。液斑L1が除去された保護液L層はその後乾燥することによって、厚みの均一で表面形状が平滑な保護膜F1が形成される。
【0060】
このようにして形成された保護膜F1はディスプレイSの表面を傷や汚れ等の欠陥の発生から保護し、ディスプレイSの視認性及び美観を保持する機能を有する。
【0061】
ここで、保護液Lは保護膜F1の形成後すぐに携帯型情報端末を使用できるようにするため速乾性であることが好ましい。本願発明に係るディスプレイ保護膜形成具1は胴体部材2の他端部に拭取部7を備えるので、速乾性の保護液Lが乾燥する前に拭取り作業を開始することができる。
【0062】
しかし、その後の携帯型情報端末の使用継続によって保護膜F1自体には図5(c)に示すような欠陥Dが発生する。
【0063】
このように、保護膜F1に欠陥Dが発生した場合には、図5(d)、(e)に示すように保護膜F1の表面上に再び塗布部5を用いて保護液Lを塗布し、拭取部7を用いて液斑L2を除去することにより、欠陥Dが埋められると共に保護膜F1上に平滑な保護膜F2を形成することができる。保護膜F2は保護膜F1と同一成分の保護液Lからなるため、保護膜F1と保護膜F2との境界に存在する欠陥Dをみえなくすることができる。これにより、保護膜F1の形成直後と同等の優れた視認性及び美観を保持する保護膜を再生することができる。
【0064】
なお胴体部材2には、図6に示すように、側壁からそれぞれ外方に突設された弾性板からなる塗布部開放係止部121、拭取部開放係止部128が形成されていても好ましい。塗布部蓋部材106は、閉塞状態から枢軸118を回転軸として半回転することによって塗布部蓋部材106の周壁の端部が塗布部開放係止部121に圧接して固定されることにより、図7に示すように開放状態が保持される。拭取部開放係止部128の開放動作についても塗布部開放係止部121と同様に行われる。なお、この場合軸穴117の内壁には突起は必要ない。また、図8には塗布部蓋部材106が開放された状態のディスプレイ保護膜形成具1の斜視図を示す。
【0065】
次に、本願発明に係る第二の実施の形態について説明する。
【0066】
第二の実施形態に係るディスプレイ保護膜形成具201は、胴体部材202の先端が頂角部である略三角形を呈する外形に形成されてなる。図9はディスプレイ保護膜形成具201の縦断面図を示す図である。胴体部材202の一端部には塗布部205が設けられ、胴体部材202の他端部には拭取部207が設けられている。
【0067】
そして本体部材202には、塗布部蓋部材206及び拭取部蓋部材208が取付けられている。これらの蓋部材が閉塞状態となることで塗布部205及び拭取部207は被覆され、ディスプレイ保護膜形成具201の不使用時に外部との接触から保護される。なお、閉塞状態の塗布部蓋部材206及び拭取部蓋部材208が、ディスプレイ保護膜形成具201が呈する略三角形の底辺を挟む角部を、それぞれ形成する。
【0068】
第二の実施形態では、塗布部205の塗布面215の向きと拭取部207の拭取面226の向きが拡開する方向となるように、すなわち塗布面215の垂線と拭取面226の垂線とが鈍角に交わる関係となるように備えられている。
【0069】
このように構成することにより、塗布部205で保護液Lを塗布した直後の余分な保護液Lを拭き取るための動作を、本体部材202を持ちかえることなく、本体部材202の傾きを変えるだけで行なうことができる。従って、ディスプレイ保護膜形成具201を落とすこともなく、保護液Lの塗布作業及び拭き取り作業を連続して行なうことができる。
【0070】
塗布部蓋部材206には、胴体部材202と係合し、閉塞状態を保持する蓋係合部219が設けられている。そして、胴体部材202には、当該蓋係合部219と係合可能な胴体係合部220が設けられている。
【0071】
また、本体部材202の外縁内部であって、前記一端部及び他端部よりも頂角側には、軸溝217が形成されている。塗布部蓋部材206及び拭取部蓋部材207の上端部には当該軸溝217に挿し込まれた軸足218が形成されており、軸足218を当該軸溝217に沿って移動させることによって塗布部蓋部材206及び拭取部蓋部材207を閉塞状態から開放状態にすることができる。
【0072】
なお、軸足218は、中央部分が胴体部材202の厚み方向に突出した構造に形成されている。そして、軸溝217の中央部も胴体部材202の外縁に沿って厚み方向に幅広に形成されており、当該幅広部に軸足218の突出部を嵌め込むことによって、蓋部材の開閉動作中に軸足218が軸溝217から脱離することはない。
【0073】
軸溝217の上端部の内面には、軸足218を係止可能な突起が設けられ、塗布部開放係止部221及び拭取部開放係止部228が形成されている。それぞれの係止部221,228において、軸足218を前記突起よりも上側に押し込むことにより蓋部材を固定し、図10に示すように開放状態を保持することができる。
【0074】
なお、塗布部205及び拭取部207は、第一の実施形態で述べた塗布部5及び拭取部7と同一構造を備えるものである。塗布部205は、塗布側保持部材213に設けられた貫通孔214に多孔質塗布部材212が挿入されてなる。さらに塗布部205は、容体203と同一構造である容体203の開口204に装着されている。
【0075】
容体203の開口204の内側には多孔質ポリウレタン樹脂からなる多孔質栓210が嵌入されており、保護液Lは一気にこぼれ出ることがない。
【0076】
容体203を装着した塗布部205は、胴体部材202の一端部に設けられた塗布部取付穴211に挿入することにより、胴体部材202の一端部に設置される。このとき容体203は塗布部取付穴211内部に格納される。
【0077】
また、拭取部207は、拭取側保持部材224に設けられた保持孔225に多孔質拭取部材223が挿し込まれてなる。胴体部材202の他端部には拭取部取付穴227が形成されており、拭取側保持部材224を挿し込むことによって、拭取部207を取付けることができる。
【符号の説明】
【0078】
1 ディスプレイ保護膜形成具
2 胴体部材
3 容体
4 開口
5 塗布部
6 塗布部蓋部材
7 拭取部
8 拭取部蓋部材
12 多孔質塗布部材
15 塗布面
17 軸穴
18 枢軸
21 塗布部開放係止部
23 多孔質拭取部材
26 拭取面
28 拭取部開放係止部
L 保護液
L1 液斑
D 欠陥
F1 保護膜
F2 保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯に適する大きさに形成された胴体部材の一端部に、保護液を収容し得る容体が設けられると共に、
胴体部材の他端部に拭取部が設けられ、
容体は、内部が保護液貯留部とされると共に外方に開口を向けて胴体部材に設けられ、
前記開口には、保護液を塗布するための塗布部が設けられ、
前記塗布部は、保護液を滲出させる塗布面を有し、
前記拭取部は、保護液を吸収する拭取面を有してなり、
携帯型情報端末装置のディスプレイ面上に前記塗布面によって塗布液を塗布した直後に、余分な保護液を前記拭取面によって拭き取り、保護液の乾燥によって保護膜を形成するために用いられる
ことを特徴とするディスプレイ保護膜形成具。
【請求項2】
携帯に適する大きさに形成された胴体部材の一端部に、保護液を収容し得る容体が装着されると共に、
胴体部材の他端部に拭取部が設けられ、
容体は、内部が保護液貯留部とされると共に外方に開口を向けて胴体部材に装着され、
前記開口には、保護液を塗布するための塗布部が設けられ、
前記塗布部は、保護液を滲出させる塗布面を有し、
前記拭取部は、保護液を吸収する拭取面を有してなり、
携帯型情報端末装置のディスプレイ面上に前記塗布面によって塗布液を塗布した直後に、余分な保護液を前記拭取面によって拭き取り、保護液の乾燥によって保護膜を形成するために用いられる
ことを特徴とする請求項1に記載のディスプレイ保護膜形成具。
【請求項3】
前記容体が胴体部材に着脱可能に取付けられてなる
ことを特徴とする請求項2に記載のディスプレイ保護膜形成具。
【請求項4】
前記胴体部材の一端部に、前記塗布部を被覆可能な塗布部蓋部材が取付けられると共に、前記胴体部材の他端部に、前記拭取部を被覆可能な拭取部蓋部材が取付けられ、
塗布部蓋部材及び拭取部蓋部材を、それぞれ開放位置において胴体部材に係止固定する塗布部開放係止部及び拭取部開放係止部が設けられている
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のディスプレイ保護膜形成具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−234003(P2012−234003A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101550(P2011−101550)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(390003609)株式会社クニムネ (11)
【Fターム(参考)】