説明

ディスプレイ兼用カートン

【課題】商品の小分けカートンにおいて、簡便な操作でカートン正面に安定的で且つ表示面積の大きな表示板を形成するディスプレイ兼用カートン。
【解決手段】矩形状の底面板と該底面板各辺から垂直に立設されたそれぞれ矩形状の正面板2、背面板、左右側面板からなるカートンであって、少なくとも正面板の上辺延長上に順に表示板6、係止板を連設し、正面板の下辺から所定距離離れた位置に下辺に平行な表示部下端横折線L7を設け、表示部下端横折線の略中央部に所定幅を有する係止溝17を刻設すると共に、表示部下端横折線の両端から正面板の上辺に向かって略平行な切目線16を正面板の上端縁まで刻設して表示部下端横折線の上方に表示部重合板8を形成することを特徴とするディスプレイ兼用カートンP’。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商品を収納し、封入時点では商品を保管・搬送するために用いられ、店頭における販売時点では商品を展示するために用いられるディスプレイ兼用カートンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、個装された商品はダースや10個単位に小分けされてカートンに収納、輸送され、市場での販売に供される。しかしながら、スーパーやコンビニエンスストア等の店頭では、同種の商品群が同じスペースに並べられ販売されるため、競合する商品群の中で自社商品をアピールし、消費者の購買意欲をそそるかが、商品を小分けして収納するカートンに求められている。
【0003】
上記のように、スーパーやコンビニエンスストア等の商品陳列棚において、それぞれの商品には棚割により限られた展示スペースしか与えられておらず、且つ販売者には陳列のために割ける時間が限定されているため、商品を小分けして収納するカートンには、開封作業性に加え、いかに他社製品より目立つように展示できる構造かが併せて求められているものである。
【0004】
従来、上記のような展示機能を備えた小分けカートンのディスプレイ形式としては、カートンの背面部から延設される閉蓋パネルを二つ折りに折り畳み、収納カートンの背面上部方向にディスプレイパネルとして突出形成しアピール力を持たせることができる構造のものが一般的である。しかしながら、現在のスーパーやコンビニエンスストでは棚の上部空間は限定されていることに加え、小分け収納カートンの背面上部は見えにくく、展示効果が高いとは言えない。
【0005】
そこで、小分け収納カートンの周囲を構成する胴部構成板のうち、収納商品の正面が当接する前板に2本の横方向の折目線と、両側縁に沿う切目線とを設け、切目線を切断し、前板を折目線で折り重ねて表示板を形成し、カートン胴部前方に突出させて、販売促進効果を期待する包装展示兼用箱などが提案されている(たとえば、特許文献1)。しかしながら、上記特許文献に示された包装展示兼用箱において形成された表示板は、前板を区画し折り重ねて形成されるものであるため、表示スペースが狭く、告知事項を十分に記載できないという欠点があった。また、実施例に示された前板上端に延設される蓋受片に差込片を形成するために設けられた切り込みのために、形成される表示板の上端が切断部分となって見苦しくなり易いという欠点があった。
【0006】
【特許文献1】特開2001−354237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、商品の収納・搬送及び展示に供されるディスプレイ兼用カートンにおいて、煩雑な操作を要することなく、告知事項を十分に記載できるスペースを有し、且つ正面板の前面に美麗な表示板を形成することの出来るディスプレイ兼用カートンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、シート状部材で形成される、矩形状底面板と該底面板各辺から垂直に立設された正面板、背面板、左右側面板からなるディスプレイ兼用カートンであって、少なくとも前記正面板の上辺延長上に順に表示板、係止板を連設し、前記正面板の下辺から所定距離離れた位置に前記下辺に平行な表示部下端横折線を設け、該表示部下端横折線に係止溝を刻設すると共に、前記表示部下端横折線の両端から前記正面板の上辺に向かって略平行な切目線を前記正面板の上端縁まで刻設して前記表示部下端横折線の上方に表示部重合板を形成することを特徴とするディスプレイ兼用カートンである。このように構成することにより、正面板の上辺延長上に連設される表示板は、正面板に設けられた表示部下端横折線と上辺との間の幅で大きく形成される表示部重合板と略同じ幅で形成できるので、告知事項を十分に記載できるスペースを有し、且つ表示板の形成には破断等の操作に寄らないので美麗な表示板を形成することができ、しかも表示板の折り曲げ操作と係止板の係止溝への係止操作により表示部を簡単に形成することができる。
【0009】
請求項2の発明は、前記左右側面板のいずれか一方の側面板の上辺を破断予定線とし延長上に順に天面板、差込板を連設すると共に、前記背面板の上辺を破断予定線とし延長上に天面支持板を連設したことを特徴とする請求項1記載のディスプレイ兼用カートンである。このように構成することにより、ディスプレイ兼用カートンの組み立てによって収納される商品を封入すると共に、開封時に破断予定線により天面板と天面支持板を取去ることが出来、且つ表示部を正面板の前面に形成するので、簡便な操作で限られた展示スペースに対応したディスプレイ兼用カートンとすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るディスプレイ兼用カートンによれば、商品の収納・搬送及び展示に供されるディスプレイ兼用カートンにおいて、煩雑な操作を要することなく、カートンの開封を行うことことができると共に、告知事項を十分に記載できるスペースを有し且つカートンの正面板の前面に美麗な表示板を形成することが出来るので、限られた展示スペースにおいて競合する商品群の中で自社商品をアピールし、売上の増加を図ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るディスプレイ兼用カートンの第1実施形態の展開平面図。
【図2】(a)第1実施形態の組み立て完了状態を示す斜視図。(b)第1実施形態の展示状態を示す斜視図。(c)第1実施形態の展示状態の右側面図。
【図3】本発明に係るディスプレイ兼用カートンの第2実施形態の展開平面図。
【図4】(a)第2実施形態の組み立て完了状態を示す斜視図。(b)第2実施形態の展示状態を示す斜視図。
【図5】(a)〜(d)展示状態における表示部のバリエーションを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明につき、図面等を用いて以下に詳述する。尚、図1は本発明に係るディスプレイ兼用カートンの第1実施形態の展開平面図。図2(a)は第1実施形態の組み立て完了状態を示す斜視図。図2(b)は第1実施形態の展示状態を示す斜視図。図2(c)は第1実施形態の展示状態の右側面図。図3は本発明に係るディスプレイ兼用カートンの第2実施形態の展開平面図。図4(a)は第2実施形態の組み立て完了状態を示す斜視図。図4(b)は第2実施形態の展示状態を示す斜視図。図5(a)〜(d)はそれぞれ展示状態における表示部のバリエーションを示す斜視図である。
【0013】
本発明に係るディスプレイ兼用カートンは、菓子・食品や洗剤等の袋状個装製品およびガムやキャラメルに見られるブロック状や箱状個装製品の集積・搬送並びに販売用を兼ねるディスプレイ兼用カートンであって、通常個装製品はダース単位或いは10個単位で集積・収納されるものである。その製造にあたっては、カートンサイズや内容商品の形状・重量等を考慮して、板紙、厚紙或いは段ボール等のシート状部材を選択的に用い、打ち抜き、貼り合せ、これを起立させて内容商品を収納して後に封入もしくは閉塞することで、ほぼ直方体状に完成するものである。
【0014】
図1は、本発明に係るディスプレイ兼用カートンの第1実施形態の展開平面図で、図1においては左から順に縦折線L1、L2、L3、L4を介して順次連設される貼着板5、左側面板1、正面板2、右側面板3、背面板4からカートンの胴部が構成される。さらに前記左側面板1、正面板2、右側面板3、背面板4のそれぞれ下辺の下部延長上には、底面構成板12、13、14、15が、それぞれ横折線L11、L12、L13、L14を介して連設されている。尚、図1に示された第1実施形態において、前記底部構成板12、13、14、15は、一方の対向する底部構成板12、14それぞれの角部に斜め折線L15、L16を介して貼着部が形成され、それぞれの貼着部が隣合う底部構成板13、15に貼着され、カートンの起函により自動的に底面を形成する所謂オートマチックロッキングボトム形式としているが、これに限定されるものではない。
【0015】
正面板2の下辺から所定距離離れた位置に、該下辺に平行な表示部下端横折線L7を設け、該表示部下端横折線L7の両端から前記正面板2の上辺に向かって略平行もしくはやや上方に向かって拡がる逆ハ字状をなし断続する切目線16、16’がそれぞれ上端縁まで刻設されて表示部重合板8が区設されると共に、前記正面板2の上辺すなわち前記表示部重合板8の上辺には横折線L5を介して略矩形状の表示板6が連設され、さらに該表示板6の上端辺略中央部には横折線L6を介して係止板7が突設されている。尚、前記表示部下端横折線L7の略中央部には前記係止板7が嵌挿される上向き略コ字状の係止溝17が刻設され、前記係止板7の両側上端部には係止突起α、α’が突設されている。
【0016】
第1実施形態の組み立てにあたっては、図1のように形成されたブランクの、底部構成板12、13、14、15が横折線L11、L12、L13、L14を用いて折り込まれ、斜め折線L15、L16を折り曲げると共に、縦折線L2とL4を用いて折り畳み、前記底部構成板12と13、14と15をそれぞれ貼着すると共に、背面板4と貼着板5とが貼着されて、扁平に折り畳まれたカートンを形成する。
【0017】
次に、商品の集積収納を行う工程においては、縦折線L1、L2、L3、L4を用いて起函を行い、同時にカートン下辺のそれぞれ横折線L11、L12、L13、L14並びに斜め折線L15、L16が働いて底面が自動的に形成され、上方が開放したカートンが形成される。該カートンに商品βを集積・整列・収納し、横折線L5を用いて表示板6及び係止板7を収納された商品β上に折り曲げて、図2(a)に示す組み立て完了状態とした後、全体を収縮性フィルムによるシュリンク包装或いは防湿性フィルムによる上包をおこなうことで包装が完成する。
【0018】
商品の展示にあたっては、前述の包装状態から、シュリンク包装或いは上包したフィルムを取り去り、正面板2に刻設した切目線16、16’をそれぞれカートンの外方向に切り破り、表示部下端横折線L7を用いて表示部重合板8を外向きに折り曲げ、さらに横折線L5を用いて表示板6を折り曲げて前記表示部重合板8に折り重ねると共に、横折線L6を用いて折り曲げた係止板7を前記表示部下端横折線L7の略中央部に刻設された係止溝17に差し込んで係止することにより、正面板2の前面に前記表示部下端横折線L7から斜め下向きに傾斜した図2(b)及び図2(c)に示した展示用ディスプレイ状態を形成する。尚、表示部重合板8を形成する表示部下端横折線L7と正面板2の上辺の横折線L5との間の距離よりも、表示板6を形成する前記正面板2の上辺の横折線L5と表示板6の上端の横折線L6との間の距離を大きくすることによって、表示板6が表示部重合板8を押し下げ、図2(b)及び図2(c)に示すように、表示板6が正面板2から斜め下向きに傾斜するようにすることができる。
【0019】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、本発明の第1実施形態と共通する部分には同一の符号を附し、共通する部分の説明を一部省略する。
【0020】
図3は本発明に係るディスプレイ兼用カートンの第2実施形態の展開平面図で、図3においては左から順に縦折線L1、L2、L3、L4を介して順次連設される貼着板5、左側面板1、正面板2、右側面板3、背面板4からカートンの胴部が構成される。前記左側面板1の上部延長上には、天面板9、差込板10が横折線L8、L9を介して連設され、前記背面板4の上部延長上には、天面支持板11が横折線L10を介して連接されている。なお、前記横折線L8と同じく前記横折線L10は、いずれも断続する切目線を備えた折線で構成され、開封後の展示にあたって、前記天面板9および差込板10と前記天面支持板11を切り取り可能としている。
【0021】
第2実施形態の組み立てにあたっては、図3のように形成されたブランクの、底部構成板12、13、14、15が横折線L11、L12、L13、L14を用いて折り込まれ、斜め折線L15、L16を折り曲げると共に、縦折線L2とL4を用いて折り畳み、前記底部構成板12と13、14と15をそれぞれ貼着すると共に、背面板4と貼着板5とが貼着されて、扁平に折り畳まれたカートンを形成する。
【0022】
次に、商品の集積収納を行う工程においては、縦折線L1、L2、L3、L4を用いて起函を行い、同時にカートン下辺のそれぞれ横折線L11、L12、L13、L14並びに斜め折線L15、L16が働いて底面が自動的に形成され、上方が開放したカートンが形成される。該カートンに商品βを集積・整列・収納し、次いで横折線L5およびL10を用いてそれぞれ表示板6と係止板7および天面支持板11を収納された商品β上に折り曲げた後、横折線L8、L9を用いて天面板9を折り曲げ、差込板10を差し込み閉蓋することにより、包装が完成する。なお、天面ならびに底面の構成は、上記構成に限定されるものでなく、他の形式を用いても良い。
【0023】
商品の展示にあたっては、前述の包装状態から、天面を開放すると共に横折線L8およびL10を破断して天面板9と差込板10および天面支持板11を取り去り、次いで、正面板2に刻設した切目線16、16’をそれぞれカートンの外方向に切り破り、表示部下端横折線L7を用いて表示部重合板8を外向きに折り曲げ、さらに横折線L5を用いて表示板6を折り曲げて前記表示部重合板8に折り重ねると共に、横折線L6を用いて折り曲げた係止板7を前記表示部下端横折線L7の略中央部に刻設された係止溝17に差し込んで係止して、図4(b)に示すように、表示板6が正面板2から斜め下向きに傾斜して表示部を形成し、店頭展示用ディスプレイ状態とする。
【0024】
本発明に係るディスプレイ兼用カートンにおいて、表示板6はカートンの奥行方向の長さすなわち正面板2から背面板4までの長さから差込板7の長さを減じた長さの構成とすることができ大きな表示スペースを形成できるものであるが、第1実施形態および第2実施形態では、正面板2に設けた表示重合板8の長さと略同一もしくはやや大きい長さで構成したものを示した。しかしながら、これに限定されるものではなく、表示部重合板8の奥行方向の長さより表示板6の奥行方向の長さを長くする構成によって、それぞれの展開平面図は省略するが、図5(a)に示すように表示板を曲面として側断面略半円状の表示部や、図5(b)、(c)に示すように補助横折線を一部に設けて側断面略多角形状の表示部とすることができる。さらに、図5(d)に示すように、前記補助横折線の一部に切目線を刻設して修飾した突出部を有する表示部とすることができる。
【符号の説明】
【0025】
P、P’ カートン
1 左側面板
2 正面板
3 右側面板
4 背面板
5 貼着板
6、6a、6b、6c 表示板
7 係止板
8 表示部重合板
9 天面板
10 差込板
11 天面支持板
12〜15 底面構成板
16、16’ 切目線
17 係止溝
L7 表示部下端横折線
α、α’ 係止突起
β 商品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状部材で形成される、矩形状の底面板と該底面板各辺から垂直に立設されたそれぞれ矩形状の正面板、背面板、左右側面板からなるディスプレイ兼用カートンであって、少なくとも前記正面板の上辺延長上に順に表示板、係止板を連設し、前記正面板の下辺から所定距離離れた位置に前記下辺に平行な表示部下端横折線を設け、該表示部下端横折線に係止溝を刻設すると共に、前記表示部下端横折線の両端から前記正面板の上辺に向かって略平行な切目線を前記正面板の上端縁まで刻設して前記表示部下端横折線の上方に表示部重合板を形成することを特徴とするディスプレイ兼用カートン。
【請求項2】
前記左右側面板のいずれか一方の側面板の上辺を破断予定線とし延長上に順に天面板、差込板を連設すると共に、前記背面板の上辺を破断予定線とし延長上に天面支持板を連設したことを特徴とする請求項1記載のディスプレイ兼用カートン。
【請求項3】
前記表示板が、該表示板の前記正面板上辺から前記係止板に亘る長さを、前記表示部重合板の前記表示部下端横折線から前記正面板上辺に亘る長さより大きい長さとして形成されることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のディスプレイ兼用カートン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−230778(P2011−230778A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100450(P2010−100450)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】