ディスプレイ用フィルター
【課題】
外光によるコントラストの低下を防止し、かつ低価格化を実現したディスプレイ用フィルターを提供することにある。
【解決手段】
プラスチックフィルム上に5〜50μmの高さを有する光吸収部がストライプ状に平行に複数配列されたシート(以下、外光遮蔽シートとする)と、プラスチックフィルム上に光学機能層を有するシート(以下、光学フィルムとする)とが、外光遮蔽シートの光吸収部を有する面が光学シートに面するように接着層を介して、かつ、外光遮蔽シートの複数の光吸収部の間が接着層で埋設されて貼り合わされたディスプレイ用フィルター。
外光によるコントラストの低下を防止し、かつ低価格化を実現したディスプレイ用フィルターを提供することにある。
【解決手段】
プラスチックフィルム上に5〜50μmの高さを有する光吸収部がストライプ状に平行に複数配列されたシート(以下、外光遮蔽シートとする)と、プラスチックフィルム上に光学機能層を有するシート(以下、光学フィルムとする)とが、外光遮蔽シートの光吸収部を有する面が光学シートに面するように接着層を介して、かつ、外光遮蔽シートの複数の光吸収部の間が接着層で埋設されて貼り合わされたディスプレイ用フィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ用フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(以下、LCD)、プラズマディスプレイ(以下、PDP)などのディスプレイは、明瞭なフルカラー表示が可能な表示装置である。ディスプレイには、通常、外光の反射やギラツキを防止するために、反射防止層あるいは防眩層等の光学機能層を有する光学フィルムがディスプレイの視認側に配置されている。
【0003】
近年、外光によるコントラストの低下を抑制するために、透明基材上に短冊状の光吸収部を多数平行に並べて配置(いわゆる、ブラックストライプ)したシートと上記の光学フィルムを組み合わせたディスプレイ用フィルターが提案されている(例えば、特許文献1、2)。
【0004】
これらの特許文献によれば、光吸収部(ブラックストライプ)は紫外線硬化性樹脂からなる基盤層に楔形溝を形成し、この楔形溝に光を吸収できる黒色物質を含む紫外線硬化性樹脂を充填して形成されている。
【特許文献1】特開2006−189867号公報
【特許文献2】特開2006−201577号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1,2に係る光吸収部を有するシートの製造工程は、樹脂から成る基盤層の形成、基盤層に楔形溝の形成、楔形溝に黒色物質を含む樹脂を充填する工程からなる。更にディスプレイ用フィルターとするためには、反射防止や防眩機能を有する光学フィルムと上記光吸収部を有するシートとを接着材で貼合する工程が必要となり、また更に、ディスプレイパネルに装着するための粘着材を積層する工程が必要となる。このように、光吸収部を有するシートと光学フィルムとを組み合わせたディスプレイ用フィルターの製造は、多くの工程が必要であり、生産効率の低下を招いている。また更に、これらのフィルターは層構成が複雑となり、コストアップの要因にもなっている。
【0006】
従って、本発明の目的は、外光によるコントラストの低下を防止し、かつ生産効率の向上と構成の簡略化により低価格化を実現したディスプレイ用フィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、以下の発明によって基本的に達成された。
(1)プラスチックフィルム上に5〜50μmの高さを有する光吸収部がストライプ状に平行に複数配列されたシートの光吸収部の配列された面と、プラスチックフィルム上に光学機能層を有するシートとが、接着層を介して、かつ、複数の光吸収部の間が接着層で埋設されて貼り合わされたディスプレイ用フィルター。
(2)プラスチックフィルムの一方の面に光学機能層を有し、該プラスチックフィルムの他方の面に5〜50μmの高さを有する光吸収部がストライプ状に平行に複数配列され、プラスチックフィルムの他方の面に複数の光吸収部の間を埋めるように接着層が積層されたディスプレイ用フィルター。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、外光によるコントラスト低下の防止と、生産効率の向上及び構成の簡略化により低価格化が図られたディスプレイ用フィルターを提供することできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のディスプレイ用フィルターの1つの態様は、プラスチックフィルム上に5〜50μmの高さを有する光吸収部がストライプ状に平行に複数配列されたシート(以降、、外光遮蔽シートと称す)と、プラスチックフィルム上に光学機能層を有するシート(以降、光学フィルムと称す)とが、外光遮蔽シートの光吸収部を有する面が光学フィルムと面するように接着層を介して、かつ、外光遮蔽シートの複数の光吸収部の間を接着層が埋めるように貼り合わされたものである。
【0010】
上記ディスプレイ用フィルターの構成を図1(模式断面図)に示す。図1において、プラスチックフィルム1に光吸収部2がストライプ状に平行に複数配列された外光遮蔽シート6と、プラスチックフィルム3に光学機能層4を有する光学フィルム7とが接着層5を介して貼合されており、かかる貼合は、外光遮蔽シート6の光吸収部2が形成されている面と光学フィルム7の光学機能層4とは反対面とが向き合うように、かつ接着層5が複数の光吸収部2の間を埋めるようになされている。
【0011】
かかるディスプレイ用フィルターは、光学機能層4が観賞側となるようにディスプレイパネルに接着層8を介して直接あるいはガラス板やプラスチック樹脂板を介して装着される。
【0012】
本発明のディスプレイ用フィルターの別の態様は、プラスチックフィルムの一方の面に光学機能層を有し、該プラスチックフィルムの他方の面に5〜50μmの高さを有する光吸収部がストライプ状に平行に複数配列され、その光吸収部が配列された面に複数の光吸収部の間を埋めるように接着層が積層されたものである。 図2に上記ディスプレイ用フィルターの模式断面図を示す。図2において、プラスチックフィルム11の一方の面に光学機能層12を有し、他方の面に光吸収部13がストライプ状に平行に複数配列され、複数の光吸収部13の間を埋めるように接着層14が積層されている。接着層14は、ディスプレイ用フィルターをディスプレイパネルに直接あるいはガラス板やプラスチック樹脂板を介して装着するための接着層として機能する。
【0013】
上述した本発明の2つの態様は、光吸収部と光吸収部との間の空隙を接着層で埋めることに特徴を有する。これによって、従来技術に比べディスプレイ用フィルターの製造工程が大幅に短縮され、更にディスプレイ用フィルターの層構成も簡略化される。
【0014】
本発明のプラスチックフィルム上に突出した光吸収部の形成は、後述するように1つの工程で形成することが可能であり、従来の光吸収部の製造工程、即ち、樹脂から成る基盤層の形成、基盤層に楔形溝の形成、楔形溝に黒色物質を含む樹脂を充填することからなる製造工程に比べて大幅に製造工程が短縮できる。また、本発明のディスプレイ用フィルターは、外光遮蔽シートと光学フィルムとを貼り合わせるための接着層、あるいはディスプレイ用フィルターをディスプレイパネルに貼り合わせるための接着層を利用して、光吸収部と光吸収部の間の空隙を埋めるので、従来の層構成に比べて簡略化できる。
【0015】
次に、光吸収部の構成について説明する。光吸収部が配列されたプラスチックフィルムの平面図を図3に、図3のA−Aの模式断面図を図4に示す。プラスチックフィルム1上に光吸収部2が、水平方向(横方向)にストライプ状に多数形成されている。光吸収部2の高さhは、5〜50μmであり、好ましくは10〜30μmである。光吸収部2の幅wは、1〜10μmが好ましく、2〜8μmがより好ましい。光吸収部2と光吸収部2の間隔(ピッチ)pは、8〜50μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。光吸収部2のアスペクト比(h/w)は、2〜10の範囲が好ましく、3〜8の範囲がより好ましい。
【0016】
上記の光吸収部の構成(幅、ピッチ、アスペクト比)にすることによって、光吸収部の高さhを比較的小さくしても、従来の光吸収部(高さ約100μm以上)と同程度の効果が得られ、更に光吸収部の高さを小さくすることによって凹凸の高低差が小さくなるので光吸収部への接着層の積層工程における問題点(例えば、気泡混入、接着層面の不均一、接着層の塗工欠陥等)を回避することが可能となる。 本発明において、光吸収部の形状は、図4に示すように断面が矩形であっても、台形(図5)あるいは三角形(図6)であってもよい。光吸収部の形状が台形及び三角形の場合のアスペクト比の計算には、底部の幅wを用いる。
【0017】
本発明のプラスチックフィルムとは、ポリエステル、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、ポリアミド、トリアセチルセルロース、アクリル、ポリウレタンなどから構成されるフィルムを用いうるが、特にポリエステルフィルムが好ましい。ポリエステルフィルムのポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリプロピレンナフタレートなどが挙げられ、これらの2種以上が混合されたものであってもよい。また、これらと他のジカルボン酸成分やジオール成分が共重合されたポリエステルであってもよいが、この場合は、結晶配向が完了したフィルムにおいて、その結晶化度が好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは35%以上のフィルムが好ましい。結晶化度が25%未満の場合には、寸法安定性や機械的強度が不十分となりやすい。結晶化度は、密度勾配法(JIS−K7112(1980))やラマンスペクトル分析法により得ることができる。
【0018】
上述したポリエステルを使用する場合には、その極限粘度(JIS K7367に従い、25℃のo−クロロフェノール中で測定)は、0.4〜1.2dl/gが好ましく、より好ましくは0.5〜0.8dl/gである。
【0019】
また、本発明で用いられるポリエステルフィルムは、2層以上の積層構造の複合体フィルムであっても良い。複合体フィルムとしては、例えば、内層部に実質的に粒子を含有せず、表層部に粒子を含有させた層を設けた複合体フィルムを挙げることができ、内層部と表層部が化学的に異種のポリマーであっても同種のポリマーであっても良い。本発明の目的用途であるディスプレイ用に用いる場合には、ポリエステルフィルム中には粒子などを含有しない方が内部散乱などがなく透明性などの光学特性上好ましい。
【0020】
本発明におけるポリエステルフィルムは、フィルムの熱安定性、特に寸法安定性や機械的強度を十分なものとし、平面性を良好にする観点から、ハードコート層が設けられた状態では二軸延伸により結晶配向されたフィルムであることが好ましい。二軸延伸により結晶配向しているとは、結晶配向が完了する前の熱可塑性樹脂フィルムを長手方向および/または幅方向にそれぞれ2.5〜5倍程度延伸し、その後熱処理により結晶配向を完了させたものであり、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。
【0021】
ポリエステルフィルムの厚みは、特に限定するものでは無いが機械的強度やハンドリング性などの点から、好ましくは10〜500μm、より好ましくは20〜300μmである。
【0022】
ポリエステルフィルム中には本発明の効果を阻害しない範囲内で各種の添加剤や樹脂組成物、架橋剤などを含有しても良い。例えば酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、有機、無機の粒子(例えば例えばシリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック、ゼオライト、酸化チタン、金属微粉末など)、顔料、染料、帯電防止剤、核剤、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系樹脂、ワックス組成物、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、メチロール化、アルキロール化された尿素系架橋剤、アクリルアミド、ポリアミド、エポキシ樹脂、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、各種シランカップリング剤、各種チタネート系カップリング剤などを挙げることができる。
【0023】
特にプラズマディスプレイ用に使用する場合には、色補正や近赤外カット機能を有する染料を用いるためにポリエステルフィルムには紫外線カット機能を有するのが好ましく、紫外線吸収剤を含有させるのが好ましい。
【0024】
紫外線吸収剤としては、例えばサリチル酸系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、およびベンゾオキサジノン系化合物、環状イミノエステル系化合物などを好ましく例示することができるが380nm〜390nmでの紫外線カット性、色調などの点からベンゾオキサジノン系化合物が最も好ましい。これらの化合物は1種で用いても良いし、2種以上併用しても良い。またHALS(ヒンダードアミン系光安定剤)や酸化防止剤などの安定剤の併用はより好ましい。
【0025】
好ましい材料であるベンゾオキサジノン系化合物の例としては、2−p−ニトロフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(p−ベイゾイルフェニル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(2−ナフチル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−2´−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2´−(2,6−ナフチレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)などを例示することができる。これらの化合物の添加量は基材フィルム中に0.5〜5重量%好ましくは1〜5重量%含有させるのが好ましい。
【0026】
また、更に優れた耐光性を付与するためにシアノアクリレート系4量体化合物を併用することが好ましい。シアノアクリレート系4量体化合物は基材フィルム中に0.05〜2重量%含有させることが好ましい。シアノアクリレート系4量体化合物とは、シアノアクリレートの4量体を基本とする化合物であり、例えば1,3−ビス(2´シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイルオキシ)−2、2−ビス−(2´シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイルオキシメチルプロパン)などを例示することができる。これと併用する場合には、前述の紫外線吸収剤は基材フィルム中に0.3〜3重量%添加するのが好適である。
【0027】
上記の紫外線吸収剤添加による本発明の基材プラスチックフィルムは波長380nmでの透過率が5%以下、好ましくは3%以下であるのが望ましく、これにより特にプラズマディスプレイ用部材に適用した場合、紫外線から基材フィルムや染料色素などを保護することができる。上記の透過率は、分光光度計U−3410((株)日立製作所製)に直径60mmの積分球130−063((株)日立製作所製)及び10度傾斜スペーサーを取り付けた状態で波長380nmの透過率を求めることができる。本発明に用いられるプラスチックフィルムは、光学機能層、ハードコート層、あるいは後述する導電層や近赤外線遮蔽層との密着性(接着強度)を強化のための下引き層(プライマー層)を設けておくのが好ましい。下引き層はフィルム製膜中に塗布するインラインコーティング法によるのが経済性の点から好ましく、ポリエステル共重合体、アクリル共重合体、各種ウレタン、メラミン、ポリアミド、エポキシなどから選択することができ、これらを公知の方法で架橋剤などを添加して接着性向上や耐溶剤性向上などの特性を賦与することができる。
【0028】
光吸収部は、マトリックス組成物に着色剤を分散あるいは溶解したもので形成することができる。マトリックス組成物としては、紫外線や電子線等の電離放射線で硬化する樹脂、オリゴマー、モノマーおよびこれらの混合体、熱硬化性組成物等の硬化性樹脂を用いることができる。特に電離放射線硬化組成物は硬化速度が早く生産性に優れ、かつ光吸収層を被覆する際の塗布組成物およびそれに使用する溶剤などに対する耐久性に優れるので好ましい。
【0029】
電離放射線硬化性樹脂、オリゴマー、モノマーとしては、分子内にエチレン性不飽和二重結合を含有する組成物であり特に限定するものではない。具体的には1〜3個のエチレン性不飽和二重結合を有する組成物、4個以上のエチレン性不飽和二重結合を有する組成物などを挙げることができるが、ストライプ形状の精度、耐傷性などを考慮するとその主成分として多官能アクリレートを用いるのが好ましい。多官能アクリレートとは、1分子中に3(より好ましくは4、更に好ましくは5)個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体もしくはオリゴマー、プレポリマーであって、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基(但し、本明細書において「・・・(メタ)アクリ・・・」とは、「・・・アクリ・・・又は・・・メタアクリ・・・」を略して表示したものである。)を有する単量体、オリゴマー、プレポリマーを言う。このような組成物としては、1分子中に3個以上のアルコール性水酸基を有する多価アルコールの該水酸基が、3個以上の(メタ)アクリル酸のエステル化物となっている化合物などを挙げることができる。
【0030】
具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマーなどを用いることができる。これらは、1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0031】
これらの1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体、オリゴマー、プレポリマーの使用割合は構成成分総量に対して50〜90重量%が好ましく、より好ましくは50〜80重量%である。
【0032】
上記の化合物以外に剛直性を緩和させたり、硬化時の収縮を緩和させたり、塗液の粘度を調整する目的で1〜2官能のアクリレートを併用するのが好ましい。
1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体としては、ラジカル重合性のある通常の単量体ならば特に限定されずに使用することができる。
【0033】
分子内に2個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、下記(a)〜(f)の(メタ)アクリレート等を用いることができる。すなわち、(a)炭素数2〜12のアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなど、
(b)ポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリレート酸ジエステル類:ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなど、
(c)多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類:ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートなど、
(d)ビスフェノールAあるいはビスフェノールAの水素化物のエチレンオキシド及びプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類:2,2’−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリロキシプロポキシフェニル)プロパンなど、
(e)ジイソシアネート化合物と2個以上のアルコール性水酸基含有化合物を予め反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物に、更にアルコール性水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られる分子内に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するウレタン(メタ)アクリレート類など、および、
(f)分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物にアクリル酸又はメタクリル酸を反応させて得られる分子内に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート類など。
【0034】
分子内に1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−及びi−プロピル(メタ)アクリレート、n−、sec−、およびt−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−3−メチルピロリドン、N−ビニル−5−メチルピロリドンなどを用いることができる。これらの単量体は、1種または2種以上混合して使用してもよい。
【0035】
これらの1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体の使用割合は、構成成分総量に対して10〜40重量%が好ましく、より好ましくは20〜40重量%である。アクリルオリゴマーとは、アクリル系樹脂骨格に反応性のアクリル基が結合されたもの、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレートおよびポリエーテルアクリレートなどであり、また、メラミンやイソシアヌール酸などの剛直な骨格にアクリル基を結合したものなども用い得る。
【0036】
これらの材料により構成された塗剤の粘度は1000〜5000mPa・s(25℃)、加温時には50〜200mPa・s(100℃)であることが形状をコントロールしやすくなるので好ましい。これらのアクリルオリゴマーなどの具体例は、山下晋三、金子東助編、「架橋剤ハンドブック」、大成社1981年発行、第267頁から第275頁、第562頁から第593頁を参考とすることができる。また、市販されている多官能アクリル系硬化塗料としては三菱レイヨン株式会社;(商品名“ダイヤビーム”シリーズなど)、長瀬産業株式会社;(商品名“デナコール”シリーズなど)、新中村株式会社;(商品名“NKエステル”シリーズなど)、大日本インキ化学工業株式会社;(商品名“UNIDIC”シリーズなど)、東亜合成化学工業株式会社;(商品名“アロニックス”シリーズなど)、日本油脂株式会社;(商品名“ブレンマー”シリーズなど)、日本化薬株式会社;(商品名“KAYARAD”シリーズなど)、共栄社化学株式会社;(商品名“ライトエステル”シリーズ、“ライトアクリレート”シリーズなど)、JSR株式会社;(商品名“デソライト”シリーズ)などの製品を利用することができる。
【0037】
また、光吸収部のマトリックス組成物中に改質剤を含有させることができる。改質剤として、塗布性改良剤、消泡剤、増粘剤、帯電防止剤、無機系粒子、有機系粒子、有機系潤滑剤、有機高分子化合物、紫外線吸収剤、光安定剤、染料、顔料あるいは安定剤などを用いることができ、これらは活性線または熱による反応を損なわない範囲内で構成する塗布層の組成物成分として使用され、用途に応じて特性を改良することができる。
【0038】
電離放射線の種類、例えば紫外線を用いる場合などは、従来公知の光重合開始剤を用いるのが好ましい。
【0039】
光吸収部の着色剤としては、黒色顔料等の各種顔料や染料が用いることができる。黒色顔料としては、カーボンブラック、チタンや鉄等の黒色金属粒子等が挙げられる。黒色顔料以外の青色、紫色、黄色、赤色の各種顔料及び/又は染料を単独あるいは混合して用いることができる。着色剤の含有量は、光吸収部のマトリックス組成物に対して1〜50質量%の範囲が適当である。
【0040】
本発明のディスプレイ用フィルターを構成する光学機能層は、反射防止層、防眩層、あるいは反射防止機能と防眩機能を兼ね備えた層である。光学機能層は単一層であっても複数層で構成されていてもよい。以下、光学機能層について詳細に説明する。
【0041】
反射防止層は、ディスプレイの画像表示に影響を与える蛍光灯などの外光の反射や映り込みを防止するものである。反射防止層は、表面の視感反射率が5%以下であることが好ましく、4%以下がより好ましく、特に3%以下であることが好ましい。ここで視感反射率は、分光光度計等を使用して可視領域波長(380〜780nm)の反射率を測定し、CIE1931システムに準じて計算された視感反射率(Y)である。
【0042】
このような反射防止層としては、高屈折率層と低屈折率層とを低屈折率層が視認側になるように2層以上積層したものを用いることが好ましい。高屈折率層の屈折率は1.5〜1.7の範囲が好ましく、特に1.55〜1.69の範囲が好ましい。低屈折率層の屈折率は1.25〜1.49の範囲が好ましく、特に1.3〜1.45の範囲が好ましい。
【0043】
高屈折率層を形成する材料としては、上述した光吸収部の形成に用いられる組成物と同様のもの、あるいは酸化インジウムを主成分としこれに二酸化チタンなどを少量含ませたもの、あるいはAl2 O3 、MgO、TiO2 等の無機系材料が挙げられる。特に上記光吸収部の形成に用いられる組成物中に金属酸化物粒子を分散配合する方法が屈折率の向上と帯電防止効果の両立が可能となるので特に好ましい。金属酸化物微粒子としては錫含有酸化アンチモン粒子(ATO)、亜鉛含有酸化アンチモン粒子、錫含有酸化インジウム粒子(ITO)、酸化亜鉛/酸化アルミニウム粒子、酸化アンチモン粒子等が好ましく、より好ましくは錫含有酸化インジウム粒子(ITO)、錫含有酸化アンチモン粒子(ATO)である。
【0044】
かかる金属酸化物粒子は、平均粒子径(JIS R1626に示されるBET法により測定される球相当径(JIS Z8819−1にて定義))が0.5μm以下の粒子が好適に使用されるが、より好ましくは、0.001〜0.3μm、更に好ましくは0.005〜0.2μmの粒子径のものが用いられる。該平均粒子径が、この範囲を超えると高屈折率層の透明性を低下させ、この範囲未満では、該粒子が凝集し易くヘイズ値が増大する場合がある。金属酸化物粒子の含有量は、樹脂成分に対して、0.1〜20質量%の範囲が好ましい。
【0045】
高屈折率層には、更にカルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基等の酸性官能基を有する(メタ)アクリレート化合物(モノマー)を使用することができる。具体的には、酸性官能基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸などの不飽和カルボン酸、モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジフェニル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート等のリン酸(メタ)アクリル酸エステル、2−スルホエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。その他、アミド結合、ウレタン結合、エーテル結合などの極性を持った結合を有する(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。
【0046】
高屈折率層には、塗布した組成物の硬化を進めるために開始剤を使用してもよい。該開始剤としては、塗布した組成物を、ラジカル反応、アニオン反応、カチオン反応等による重合および/または架橋反応を開始あるいは促進せしめるものであり、従来から公知の各種光重合開始剤が使用可能である。かかる光重合開始剤としては、具体的には、ソジウムメチルジチオカーバメイトサルファイド、ジフェニルモノサルファイド、ジベンゾチアゾイルモノサルファイド及びジサルファイド等のサルファイド類や、チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン誘導体や、ヒドラゾン、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物や、ベンゼンジアゾニウム塩等のジアゾ化合物や、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾフェノン、ジメチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジルアントラキノン、t−ブチルアントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−クロロアントラキノン等の芳香族カルボニル化合物や、p−ジメチルアミノ安息香酸メチル、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、D−ジメチルアミノ安息香酸ブチル、p−ジエチルアミノ安息香酸イソプロピル等のジアルキルアミノ安息香酸エステルや、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物や、9−フェニルアクリジン、9−p−メトキシフェニルアクリジン、9−アセチルアミノアクリジン、ベンズアクリジン等のアクリジン誘導体や、9,10−ジメチルベンズフェナジン、9−メチルベンズフェナジン、10−メトキシベンズフェナジン等のフェナジン誘導体や、6,4’,4”−トリメトキシ−2、3−ジフェニルキノキサリン等のキノキサリン誘導体や、2,4,5−トリフェニルイミダゾイル二量体、2−ニトロフルオレン、2,4,6−トリフェニルピリリウム四弗化ホウ素塩、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、3,3’−カルボニルビスクマリン、チオミヒラーケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等が挙げられる。
【0047】
また、高屈折率層には、上記開始剤の酸素阻害による感度の低下を防止するために、光重合開始剤にアミン化合物を共存させてもよい。このようなアミン化合物としては、例えば、脂肪族アミン化合物や、芳香族アミン化合物等の不揮発性のものであれば、特に限定されないが、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン等が適切である。
【0048】
更に、高屈折率層には、重合禁止剤、硬化触媒、酸化防止剤、分散剤等の各種添加剤を含有することができる。
【0049】
高屈折率層の厚みは、0.05〜20μmの範囲が好ましく、0.1〜10μmの範囲がより好ましい。
【0050】
反射防止層を構成する低屈折率層は、含フッ素系組成物が好ましく具体的な一例を挙げれば(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル、含フッ素シリコーン等の有機系材料、MgF2 、CaF2 など。またSiO2 等の無機系材料で構成することができ、特に内部に空洞を有する中空シリカは空気相の存在により低屈折率化できるので特に好ましい。以下に低屈折率層の好ましい態様を例示する。
【0051】
低屈折率層の1つの好ましい態様として、MgF2やSiO2等の薄膜を真空蒸着法やスパッタリング、プラズマCVD法等の気相法により形成する方法、或いはSiO2ゾルを含むゾル液からSiO2ゲル膜を形成する方法等が挙げられる。
【0052】
低屈折率層の他の好ましい態様として、シリカ系微粒子と結合してなるシロキサンポリマーを主成分とする構成を採用することができる。なお、ここで言う「結合」とは、シリカ系微粒子のシリカ成分とマトリックスのシロキサンポリマーが反応して均質化している状態を意味する。シリカ系微粒子と結合してなるシロキサンポリマーは、該シリカ系微粒子の存在下、多官能性シラン化合物を溶剤中、酸触媒により、公知の加水分解反応によって、一旦シラノール化合物を形成し、公知の縮合反応を利用することによって得ることができる。
【0053】
かかる多官能性シラン化合物としては、多官能性フッ素含有シラン化合物を含むことが低屈折率化、防汚性の点から好ましく、トリフルオロメチルメトキシシラン、トリフルオロメチルエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシランなどの3官能性フッ素含有シラン化合物、ヘプタデカフルオロデシルメチルジメトキシシランなどの2官能性フッ素含有シラン化合物などが挙げられ、いずれも好適に用いられるが、表面硬度の観点から、トリフルオロメチルメトキシシラン、トリフルオロメチルエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシランが、より好ましい。
【0054】
かかる多官能性フッ素非含有シラン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−(N,N−ジグリシジル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシシプロピルトリメトキシシランなどの3官能性シラン化合物、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメトキシシラン、オクタデシルメチルジメトキシシランなどの2官能性シラン化合物、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどの4官能性シラン化合物などが挙げられ、いずれも好適に用いられるが、表面硬度の観点からビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランが、より好ましい。
【0055】
また、上述のシリカ系微粒子としては、平均粒子径1nm〜200nmのシリカ系微粒子であることが好ましく、特に好ましくは、平均粒子径1nm〜70nmである。平均粒子径が1nmを下回ると、マトリックス材料との結合が不十分となり、硬度が低下することがある。一方、平均粒子径が200nmを越えると、粒子を多く導入して生じる粒子間の空隙の発生が少なくなり、低屈折率化の効果が十分発現しないことがある。さらに、かかるシリカ系微粒子の中でも、内部に空洞を有する構造のものが、屈折率を低下させるために、特に好ましく使用される。
【0056】
かかる内部に空洞を有するシリカ系微粒子とは、外殻によって包囲された空洞部を有するシリカ系微粒子、多数の空洞部を有する多孔質のシリカ系微粒子等が挙げられ、いずれも好適に用いられる。このような例としては例えば、特許第3272111号公報に開示されている方法によって製造でき、微粒子内部の空洞の占める体積、すなわち微粒子の空隙率としては、5%以上が好ましく、30%以上がさらに好ましい。また、該微粒子自体の屈折率は、1.20〜1.40であるのが好ましく、1.20〜1.35であるのがより好ましい。このようなシリカ系微粒子としては、例えば特開2001−233611号公報に開示されているものや、特許第3272111号公報等の一般に市販されているものを挙げることができる。
【0057】
低屈折率層の厚みは、0.01〜1μmの範囲が好ましく、0.02〜0.5μmの範囲がより好ましい。
【0058】
防眩層は、画像のギラツキを防止するものであり、表面に微小な凹凸を有する膜が好ましく用いられる。防眩層としては、例えば、熱硬化型樹脂または光硬化型樹脂に粒子を分散させて支持体上に塗布および硬化させたもの、あるいは、熱硬化型樹脂または光硬化型樹脂を表面に塗布し、所望の表面状態を有する型を押し付けて凹凸を形成した後に硬化させたものなどが用いられる。防眩層は、ヘイズ値(JIS K 7136;2000年)が0.5〜20%であることが好ましい。防眩層の厚みは、0.1〜20μmの範囲が好ましく、0.5〜15μmの範囲がより好ましい。
【0059】
本発明の光学機能層は、上述した反射防止機能と防眩機能を併せ持つ層であってもよい。また、高屈折率層あるいは防眩層に後述するハードコート層の機能併せ持たせてもよい。
【0060】
本発明において、プラスチックフィルムと光学機能層との間に、耐傷性向上のためにハードコート層を設けるのが好ましい。ハードコート層は、アクリル系、ウレタン系、メラミン系、エポキシ系、有機シリケート化合物、シリコーン系などの硬化組成物で構成することができる。特に、硬度と耐久性などの点で、シリコーン系やアクリル系が好ましい。さらに、硬化性、可撓性および生産性の点で、活性エネルギー線硬化型のアクリル系組成物、または熱硬化型のアクリル系組成物からなるものが好ましく、特に活性エネルギー線硬化型のアクリル系組成物が好ましい。
【0061】
ハードコート層の厚さは、0.5〜20μmが好ましく、より好ましくは1〜10μmである。
【0062】
本発明のディスプレイ用フィルターにおいて、接着層には公知の接着材あるいは粘着材を用いることができる。粘着材としては、アクリル、シリコン、ウレタン、ポリビニルブチラール、エチレン−酢酸ビニルなどが挙げられる。接着材としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、ポリオレフィン型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリ−1、2−ブタジエン、ポリイソブテン、ポリブテン、ポリ−2−ヘプチル−1、3−ブタジエン、ポリ−1、3−ブタジエンなどの(ジ)エン類、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルヘキシルエーテルなどのポリエーテル類、ポリビニルアセテート 、ポリビニルプロピオネートなどのポリエステル類、ポリウレタン、エチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、ポリスルフォン、フェノキシ樹脂などが挙げられる。
【0063】
接着層の厚みは、光吸収部の高さと同等もしくはそれ以上にする必要があり、光吸収部の高さによって適宜設計されるが、好ましくは、光吸収部の高さの1.1倍以上であり、より好ましくは1.3倍以上である。上限は、1000μm程度である。
【0064】
本発明のディスプレイ用フィルターは、光学機能層の上に更に防汚層を設けることができる。防汚層は、ディスプレイ用フィルターに人が指で触ることによって油脂性物質が付着するのを防止したり、大気中のごみや埃が付着するのを防止したり、あるいはこれらの付着物が付着しても除去しやすくするための層である。かかる防汚層としては、例えば、フッ素系コート剤、シリコーン系コート剤、シリコン・フッ素系コート剤等が用いられる。防汚層の厚さは、1〜10nmの範囲が好ましい。
【0065】
本発明のディスプレイ用フィルターをプラズマディスプレイの前面フィルターに適用する場合は、更に導電層を設けるのが好ましい。図1の態様においては、導電層は、プラスチックフィルム3と光学機能層4の間、プラスチックフィルム3と接着層5の間、あるいはプラスチックフィルム1と接着層8の間に設けることができる。図2の態様においては、導電層は、プラスチックフィルム11と光学機能層12の間、あるいはプラスチックフィルム11と光吸収部13の間に設けることができる。
【0066】
図2の態様において、導電層をプラスチックフィルム11と光吸収部13の間に設ける場合は、導電層と光吸収部13との間に更に樹脂層を介在させるのが好ましい。
【0067】
本発明において、導電層は、ディスプレイから発生する電磁波を遮蔽するための層であり、金属薄膜や導電性メッシュ等を用いることができる。導電層の面抵抗値は、低い方が好ましく、10Ω/□以下が好ましく、5Ω/□以下がより好ましく、特に3Ω/□以下が好ましい。面抵抗の下限値は0.01Ω/□程度である。導電層の面抵抗値は、4端子法により測定することができる。
【0068】
本発明において、導電層として導電性メッシュが好ましく用いられる。導電性メッシュは、スパッタ法や真空蒸着法等によって形成された金属薄膜あるいは導電性フィラーと樹脂バインダーからなる導電層に比べて、低い面抵抗値が得られるという利点がある。特に、導電性フィラーと樹脂バインダーからなる導電層では本発明が所望する面抵抗値が得られず、スパッタ法や真空蒸着法等によって金属薄膜を形成するためには大がかりな装置が必要であり、高い生産性が得られないという問題がある。
【0069】
また、導電層をプラスチックフィルムと光学機能層との間に設ける場合は、導電層上に積層される光学機能層との密着性(接着力)の観点からも、導電性メッシュが好ましい。導電層上に光学機能層を塗工形成するのが生産性の観点から好ましいが、スパッタ法や真空蒸着法等によって形成された金属薄膜の上に組成の異なる光学機能層を塗工形成した場合、密着性が不十分となり光学機能層が剥離することがある。
【0070】
これに対して導電性メッシュは、上記した10Ω/□以下の面抵抗値が容易に得られ、また導電性メッシュの開口部を通して光学機能層と基材のプラスチックフィルムとが接するので、光学機能層とプラスチックフィルムとの密着性も十分に確保することができる。導電性メッシュの場合は、ディスプレイ用フィルターの透過率を低下させないために70%以上の開口率になるように設計するのが好ましく(ここで、導電性メッシュの開口率とは、導電性メッシュの投影面積における開口部分が占める面積割合を意味する)、従って導電性メッシュからなる導電層の上に塗工される光学機能層と導電層との接触面積はわずかであり、上記のような密着性の問題は生じない。
【0071】
また、導電性メッシュ上に光学機能層を塗工形成する場合は、光学機能層の塗工性の観点からは、導電性メッシュの厚みは小さい方が好ましく、導電性メッシュの厚みは10μm以下が好ましく、6μm以下がより好ましく、特に3μm以下が好ましい。導電性メッシュの厚みが、上記範囲を超えて大きくなると導電層表面の凹凸が大きくなり平滑性が低下するので光学機能層の塗布性が悪化する。導電性メッシュの厚みの下限は電磁波遮蔽性能の観点から0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましい。メッシュの線幅及び線間隔(ピッチ)は、開口率が70%以上となるように設計されるが、線幅としては5〜40μmが好ましく、線間隔(ピッチ)は100〜500μmの範囲が好ましい。
【0072】
また、導電性メッシュからなる導電層はプラスチックフィルム上に接着層を介さずに形成するのが好ましい。ここで接着層は、粘着材あるいは接着材で構成される層を意味する。導電層とプラスチックフィルムとの間に接着層が存在すると導電層面の平滑性が更に低下し、光学機能層の塗布性を悪化させる。また更に、プラスチックフィルム上に接着層を介さずに直接に導電性メッシュを形成することによって、塗工形成された光学機能層の大部分はプラスチックと接触するので、上述したような樹脂を含む光学機能層を用いることによってプラスチックフィルムと光学機能層との密着性が向上する。
【0073】
上記観点から本発明の導電層に好適な導電性メッシュの形成方法として、1)金属薄膜をエッチング加工する方法、2)印刷パターン上にメッキする方法、3)感光性銀塩を用いる方法、4)印刷パターン上に金属膜積層後に現像する方法、及び5)金属薄膜をレーザーアブレーションする方法が挙げられる。以下にそれぞれの方法を詳細に説明する。
【0074】
1)金属薄膜をエッチング加工する方法は、プラスチックフィルム上に粘着材あるいは接着材からなる接着層を介さずに金属薄膜を形成し、この金属薄膜をフォトリソグラフ法あるいはスクリーン印刷法等を利用してエッチングレジストパターンを作製した後、金属薄膜をエッチングする方法である。金属薄膜の形成は、金属(例えば銀、金、パラジウム、銅、インジウム、スズ、あるいは銀とそれ以外の金属の合金など)をスパッタリング、イオンプレーティング、真空蒸着、あるいはメッキ等の公知の方法を用いて行うことができる。
【0075】
上記フォトリソグラフ法は、金属薄膜に紫外線等の照射により感光する感光層を設け、この感光層にフォトマスク等を用いて像様露光し、現像してレジスト像を形成し、次に、金属薄膜をエッチングして導電性メッシュを形成し、最後にレジストを剥離する方法である。
【0076】
上記スクリーン印刷法は、金属薄膜表面にエッチングレジストインクをパターン印刷し、硬化させた後エッチング処理により導電性メッシュを形成し、この後レジストを剥離する方法である。
【0077】
エッチングする方法としては、ケミカルエッチング法等がある。ケミカルエッチングとは、エッチングレジストで保護された導体部分以外の不要導体をエッチング液で溶解し、除去する方法である。エッチング液としては、塩化第二鉄水溶液、塩化第二銅水溶液、アルカリエッチング液等がある。
【0078】
2)印刷パターン上にメッキする方法は、プラスチックフィルムに触媒インク等でメッシュパターンを印刷し、これに金属メッキを施す方法である。この1つの方法として、パラジウムコロイド含有ペーストからなる触媒インクを用いてメッシュパターンに印刷し、これを無電解銅メッキ液中に浸漬して無電解銅メッキを施し、続いて電解銅メッキを施し、さらにNi−Sn合金の電解メッキを施して導電性メッシュパターンを形成する方法がある。
【0079】
3)感光性銀塩を用いる方法は、ハロゲン化銀などの銀塩乳剤層をプラスチックフィルムにコーティングし、フォトマスク露光あるいはレーザー露光の後、現像処理して銀のメッシュを形成する方法である。形成された銀メッシュは更に銅、ニッケル等の金属でメッキするのが好ましい。この方法は、WO2004/7810、特開2004−221564号、特開2006−12935号公報等に記載されており、参照することができる。
【0080】
4)印刷パターン上に金属膜形成後に現像する方法は、プラスチックフィルム上に剥離可能な樹脂でメッシュパターンとは逆パターンの印刷を施し、その印刷パターン上に金属薄膜を上記1)と同様の方法で形成した後、現像して樹脂とその上の金属膜を剥離して金属のメッシュパターンを形成する方法である。剥離可能な樹脂として、水、有機溶剤あるいはアルカリに可溶な樹脂やレジストを用いることができる。この方法は、特開2001−185834号、特開2001−332889号、特開2003−243881号、特開2006−140346号、特開2006−156642号公報等に記載されており、参照することができる。
【0081】
5)金属薄膜をレーザーアブレーションする方法は、上記1)と同様の方法でプラスチックフィルム上に形成された金属薄膜をレーザーアブレーション方式で金属メッシュを作製する方法である。
レーザーアブレーションとは、レーザー光を吸収する固体表面へエネルギー密度の高いレーザー光を照射した場合、照射された部分の分子間の結合が切断され、蒸発することにより、照射された部分の固体表面が削られる現象である。この現象を利用することで固体表面を加工することが出来る。レーザー光は直進性、集光性が高い為、アブレーションに用いるレーザー光の波長の約3倍程度の微細な面積を選択的に加工することが可能であり、レーザーアブレーション法により高い加工精度を得ることが出来る。
【0082】
かかるアブレーションに用いるレーザーは金属が吸収する波長のあらゆるレーザーを用いることが出来る。例えばガスレーザー、半導体レーザー、エキシマレーザー、または半導体レーザーを励起光源に用いた固体レーザーを用いることが出来る。また、これら固体レーザーと非線形光学結晶を組み合わせることにより得られる第二高調波光源(SHG)、第三高調波光源(THG)、第四高調波光源(FHG)を用いることが出来る。
【0083】
かかる固体レーザーの中でも、プラスチックフィルムを加工しないという観点から、波長が254nmから533nmの紫外線レーザーを用いることが好ましい。中でも好ましくはNd:YAG(ネオジウム:イットリウム・アルミニウム・ガーネット) などの固体レーザーのSHG(波長533nm)、さらに好ましくはNd:YAG などの固体レーザーのTHG(波長355nm)の紫外線レーザーを用いることが好ましい。
【0084】
かかるレーザーの発振方式としてはあらゆる方式のレーザーを用いることが出来るが,加工精度の点からパルスレーザーを用い,さらに望ましくはパルス幅がns以下のQスイッチ方式のパルスレーザーを用いることが好ましい。
【0085】
金属薄膜の上(視認側)に更に0.01〜0.1μmの金属酸化物層を形成した後に、金属薄膜と金属酸化物層とをレーザーアブレーションするのが好ましい。金属酸化物としては銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、金、銀、ステンレス、クロム、チタン、すずなどの金属酸化物を用いることができるが、価格や膜の安定性などの点から銅酸化物が好ましい。金属酸化物の形成方法は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレート法、化学蒸着法、無電解および電解めっき法等を用いることができる。
【0086】
上述した方法によって形成された導電層は、その厚みを小さくすることが可能であり、光学機能層を導電層上に直接に塗工形成することが可能となる。
【0087】
本発明に用いることができる導電性メッシュのメッシュパターンとしては、格子状パターン、5角形以上の多角形からなるパターン、円形パターン、あるいはこれらの複合パターンが挙げられ、更にランダムパターンも好ましく用いられる。
【0088】
本発明において、導電性メッシュは黒化処理するのが好ましい。黒化処理は、酸化処理や黒色印刷により行うことができる。例えば、特開平10−41682号、特開2000−9484号、2005−317703号公報等に記載の方法を用いることができる。黒化処理は、導電性メッシュの視認側の表面と両側面を行うのが好ましく、更に導電性メッシュの両面及び両側面を黒化処理するのが好ましい。
【0089】
また、ディスプレイ用フィルターを連続生産ラインで効率よく製造するためには、導電層は連続メッシュであることが好ましい。連続メッシュとは、メッシュパターンが途切れることなく形成されていることであり、例えば、導電層を少なくとも有する積層体を長尺ロール状で製造した場合に、ロールの巻き方向にメッシュが連続的に形成されていることである。このような連続メッシュを用いることにより、積層体ロールをカットしてシート状のディスプレイ用フィルターを製造するときに、歩留まり及び生産性が向上する。また、連続メッシュは、いろんなサイズのディスプレイへの対応が容易であること、及び、ディスプレイ用フィルターの製造過程において欠陥が発生した場合は、欠陥部分のみの限られた量の廃棄ですむこと等の利点がある。
【0090】
本発明のディスプレイ用フィルターをプラズマディスプレイの前面フィルターに適用する場合には、更に近赤外線遮蔽機能を付与するのが好ましい。
【0091】
近赤外線遮蔽機能は、波長800〜1100nmの範囲における光線透過率の最大値が15%以下となるように調整するのが好ましい。近近赤外線遮蔽機能は、プラスチックフィルムに近赤外線吸収色素や顔料を混錬することによって付与してもよいし、近赤外線遮蔽層を新たに設けてもよい。あるいは、接着層に近赤外線遮蔽機能を持たせてもよい。近赤外線遮蔽機能は、近赤外線吸収色素や顔料を用いることによって、あるいは導電性薄膜のような金属の自由電子によって近赤外線を反射する層を設けることによって付与することができる。本発明においては、近赤外線吸収色素や顔料を樹脂バインダー中に分散もしくは溶解した塗料を塗布乾燥して形成した近赤外線遮蔽層を用いること、あるいは接着層に上記近赤外線吸収色素や顔料を含有させる態様が好ましく用いられる。
【0092】
近赤外線遮蔽層を新たに設ける場合、図1の態様においては、プラスチックフィルム3と光学機能層との間、プラスチックフィルム3と接着層5との間、あるいはプラスチックフィルム1と接着層8との間に設けることができ、図2の態様においては、プラスチックフィルム11と光学機能層12との間、あるいはプラスチックフィルム11と接着層14との間に設けることができる。
【0093】
近赤外線遮蔽層に用いることができる近赤外線吸収色素としては、フタロシアニン系化合物、アントラキノン系化合物、ジチオール系化合物、ジイモニウム系化合物等の公知の色素が挙げられる。
【0094】
本発明のディスプレイ用フィルターには、更に色調調整機能、可視光透過率調整機能を付与するのが好ましい。
【0095】
色調調整機能は、ディスプレイから発光される特定波長の光を吸収して色純度や白色度を向上させるための機能である。特に赤色発光の色純度を低下させるオレンジ光を遮蔽するのが好ましく、波長580〜620nmの範囲に吸収極大を有する色素を含有させるのが好ましい。更に、白色度を向上させるために波長480〜500nmに吸収極大を有する色素を含有させるのが好ましい。また更に、反射の色味調整のために550nm付近に極大吸収を有する色素を含有させるのが好ましい。色調調整機能は、上記した波長の光を吸収する色素を含有する層を新たに設けてもよいし、上述の近赤外線遮蔽層あるいは接着層に色素を含有させてもよい。
可視光透過率調整機能は、可視光の透過率を調整するための機能であり、染料や顔料を含有させて調整することができる。可視光透過率調整機能は、プラスチックフィルム、近赤外線遮蔽層、接着層に付与してもよいし、あるいは新たに透過率調整層を設けてもよい。
【0096】
色調調整機能、あるいは可視光透過率調整機能を有する層を新たに設ける場合は、前述した近赤外線遮蔽層を設ける位置、あるいは近赤外線遮蔽層に隣接した位置に設けることができる。
【0097】
次に、本発明のディスプレイ用フィルターの製造方法について説明する。先ず、プラスチックフィルム上に光吸収部を形成する方法について説明する。光吸収部は図7に示すロールを用いて形成することができる。以降、かかるロールを光吸収部形成ロールと称す。光吸収部形成ロール21は、円周方向に光吸収部に対応する溝を有する。光吸収部形成ロール21の溝にカーボンブラック等の黒顔料が分散された硬化性樹脂を充填し、プラスチックフィルムを光吸収部形成ロール21に密着した状態で硬化性樹脂を硬化させることによってプラスチックフィルム上に黒顔料と硬化性樹脂からなる光吸収部が転写される。なお該ロールからプラスチックフィルムへの光吸収部の転写において、ロールからの剥離性を向上させるためにロール面(溝部分を含む)をフッ素化合物やシリコーン化合物で被覆処理しておくのが好ましい。
【0098】
図8は、光吸収部をプラスチックフィルム上に形成する工程の概略模式図である。黒顔料が分散された電離放射線硬化性樹脂が、供給装置22から矢印の方向に回転する光吸収部形成ロール21に供給され、光吸収部形成ロール21の溝に充填される。光吸収部形成ロール21に供給された余剰の樹脂はドクターブレード23でかき落とされる。次いで、連続走行するプラスチックフィルム24がニップロール25によって光吸収部形成ロール21に密着され、プラスチックフィルム24が光吸収部形成ロール21に密着した状態で電離放射線照射装置26にて電離放射線を照射して光吸収部形成ロール21の溝に充填された樹脂を硬化させる。次いで、折り返しロール27でプラスチックフィルム24が光吸収部形成ロール21から引き離される。このときに、光吸収部形成ロール21の溝に充填され硬化した樹脂がプラスチックフィルム24に転写され、ストライプ状の光吸収部がプラスチックフィルム24に形成される。次いで光吸収部が形成されたプラスチックフィルム24は、巻き取りロール28で巻き取られる。このようにして長尺の外光遮蔽シートを製造することができるが、本発明は上記の製造方法に限定されない。
【0099】
上記した本発明の製造方法において、ストライプ状の光吸収部は図9に示すように、プラスチックフィルムの流れ方向(搬送方向)に平行に連続して形成される。
【0100】
上記のようにして製造された長尺の外光遮蔽シートは、光学機能層を有するプラスチックフィルム(光学フィルム)と接着層を介して貼合される。貼合に際し、接着層は予め、光学フィルム側に積層しておいてもよいし、外光遮蔽シート側に積層しておいてもよい。接着層の積層は、直接に接着層を塗布する方法、あるいは接着層が離型フィルムでサンドウィッチされた接着シートの離型フィルムを剥離しながら接着層を積層する方法を用いることができる。
【0101】
本発明において、上記した外光遮蔽シートの製造工程、接着層の積層工程、及び光学フィルムと外光遮蔽シートの貼合工程は、少なくともそれぞれの工程内では長尺シートあるいは長尺フィルムを用いて連続的に行うのが好ましい。
【0102】
本発明の製造方法において、長尺の外光遮蔽シートに接着層を積層する工程、あるいは長尺の光学フィルムに積層された接着層を介して長尺の外光遮蔽シートと貼合する工程は、外光遮蔽シートの光吸収部と光吸収部の間の凹部は接着層で隙間なくほぼ完全に埋める必要がある。気泡等の空気層が存在するとヘイズ値が高くなり透明性が低下する。この課題は、図9に示すようにストライプ状の光吸収部をプラスチックフィルムの流れ方向(搬送方向)に平行に形成すること、及び光吸収部の高さを50μm以下にすることによって解決した。
【0103】
また、長尺の外光遮蔽シートと長尺の光学フィルムとの連続貼合を、減圧下で行うことによって、上記の気泡混入の抑制を更に完全なものとすることができる。
【0104】
減圧下での連続貼合において、長尺ロール状シートの巻き出し、搬送、貼合、積層シートの巻き取り等の一連の工程を減圧室(減圧チャンバー)の中で行うのが好ましい。減圧の程度は、貼合速度等によって適宜設定されるが、15kPa以下が好ましく、10kPa以下がより好ましく、特に5kPa以下が好ましい。気圧の下限は50Pa程度が適当である。
【0105】
外光遮蔽シートあるいは光学フィルムへの接着層の積層工程及び両シートの貼合工程は、外光遮蔽シートの製造工程及び光学フィルムの製造工程とは、別の工程で行ってもよいが、同一工程内で行うことによって更に生産効率が向上する。
【0106】
例えば、図8では、外光遮蔽シートの製造工程のみを示しているが、光吸収部が形成されたプラスチックフィルムを巻き取らずに、オンライン上で連続して光吸収部が形成された面に接着層を塗布し、接着層面に離型フィルムを積層した後に巻き取ることもできる。また更に、上記のように外光遮蔽シートに接着層を塗布した後、巻き取らずに、オンライン上で連続して長尺の光学フィルムと接着層付き外光遮蔽シートを貼合することもできる。
【0107】
また、図8のようにしてプラスチックフィルム上に光吸収部を形成した後、巻き取らずに、オンライン上で連続して、予め接着層が積層された長尺の光学フィルムと貼合することもできる。
【0108】
以上は、図1に示したディスプレイ用フィルターの製造方法の一例であるが、以下に図2に示したディスプレイ用フィルターの製造方法について説明する。
【0109】
先ず、プラスチックフィルムの一方の面に光学機能層を有する光学フィルムの他面に光吸収部を形成する。光吸収部の形成は前述の方法を用いることができる。即ち、図8において、プラスチックフィルム24を光学フィルムに代えることによって、光学フィルムの光学機能層とは反対面に光吸収部を形成することができる。次いで、光学フィルムの光吸収部側に接着層を積層する。接着層の積層方法としては、光学フィルムの光吸収部側に直接に接着層を塗布する方法、あるいは接着層が離型フィルムでサンドウィッチされた接着シートの離型フィルムを剥離しながら接着層を積層する方法を用いることができる。後者の離型フィルムにサンドウィッチされた接着シートを用いて積層する場合は、前述したように減圧下で行うのが好ましい。
【0110】
接着層の光学フィルムへの積層は、光学フィルムに光吸収部を形成した後に、オンライン上で連続して行うことができる。これによって生産効率の向上が図られる。
【0111】
次に、本発明のディスプレイ用フィルターをプラズマディスプレイの前面フィルターに適用した場合の態様について説明する。プラズマディスプレイ用前面フィルターに適用するには、前述したようにフィルターに電磁波遮蔽機能や近赤外線遮蔽機能を持たせるのが好ましい。図1及び図2の構成のフィルターに導電層と近赤外線遮蔽層を設けたフィルターの構成例の模式断面図を図10、図11に示す。
図10は、図1の構成のフィルターに導電層と近赤外線遮蔽層を配置した例であり、かかるフィルターは、プラスチックフィルム1上に光吸収部2が形成された外光遮蔽シート6と、プラスチックフィルム3の一方の面に導電層31と光学機能層4が積層され、かつ他方の面に近赤外線遮蔽層32が積層された光学フィルム7とが、接着層5を介して貼合された構成になっている。
【0112】
図11は、図2の構成のフィルターに導電層と近赤外線遮蔽層を配置した例であり、かかるフィルターは、プラスチックフィルム11の一方の面に導電層31と光学機能層12が積層され、他方の面に光吸収部13がストライプ状に平行に多数配列され、光吸収部13と光吸収部13の間を埋めるように近赤外線遮蔽機能が付与された接着層33が積層された構成になっている。
【0113】
上述したように本発明のディスプレイ用フィルターをプラズマディスプレイ用前面フィルターに適用する場合は、ディスプレイ用フィルターをディスプレイに装着し筐体に組み立てたときに導電層と筐体の外部電極とを電気的に接続するための電極をディスプレイ用フィルターに設ける必要がある。従って、ディスプレイ用フィルターに導電層に導通した電極を形成する必要がある。かかる電極の形成方法として、ディスプレイ用フィルターの周辺部(画像表示領域の外周)に額縁状に導電層を剥き出しにする方法があるが、導電層上に光学機能層を連続的に積層する製造方法には適用することができない。本発明においては、ディスプレイ用フィルターの周辺部に光学機能層側からレーザーを照射して、導電層に達する空隙を形成し、導電層を露出する方法が好ましく用いられる。以下、レーザーを用いた電極形成方法について詳細に説明する。
【0114】
図12はディスプレイ用フィルターの平面図であり、図13は図12のB−Bの模式断面図である。ディスプレイ用フィルターの周辺部に、4辺の側辺に略平行に直線状に細長い空隙41が設けられている。このディスプレイ用フィルターの構成は図10と同一であり、図13において空隙41は光学機能層4の表面から光学機能層4を貫通して導電層31に達しており、導電層31が露出している。この導電層の露出部が電極となる。
【0115】
図14は、空隙を直線状に不連続(破線状)に設けた態様の平面図である。ディスプレイ用フィルターの周辺部に、4辺の側辺に略平行に空隙41が破線状に設けられている。空隙を破線状に設ける場合は、1辺当たりの空隙部分の数は3〜50個が好ましく、5〜40個の範囲がより好ましい。1辺当たりの空隙部分の合計の長さ(A)と空隙部分と空隙部分の距離(間隔)の合計長さ(B)の比率(A/B)は、0.2〜20の範囲が好ましく、0.5〜10の範囲がより好ましい。
【0116】
空隙41、即ち導電層の露出部は、ディスプレイ用フィルターの周辺部に設けられるが、ここで、ディスプレイ用フィルターの周辺部とは、かかるディスプレイ用フィルターをディスプレイに装着した際に、ディスプレイの画像表示領域の外周に相当する部分のことを言い、好ましくはディスプレイ用フィルターの端部から1mm以上内側で、画像表示領域に相当する部分から1mm以上外側の範囲である。
【0117】
ディスプレイ用フィルターは通常長方形であり、空隙は少なくとも対向する2辺の端縁部に設けるのが好ましく、4辺の端縁部にそれぞれ形成するのがより好ましい。空隙は、側辺に略平行に直線状に細長く溝状に形成するのが好ましい。空隙の幅は、3mm以下が好ましく、2mm以下がより好ましく、更に1.5mm以下が好ましい。空隙の幅の下限としては、0.3mm以上が好ましく、0.4mm以上がより好ましい。空隙の幅が3mmを越えて大きくなると、導電層の露出面が大きくなり導電層が酸化劣化しやすくなるという問題、後述するように生産効率が低下するという問題、及び後述するように空隙に導電性材料を配置したときに導電性材料が剥離しやすくなるという問題が生じる場合がある。一方、空隙の幅が0.3mmより小さくなるとディスプレイ筐体(外部電極)との導通が不十分になり十分な電磁波遮蔽効果が得られない場合がある。
【0118】
ディスプレイ用フィルターの1辺における空隙の長さは、辺の長さに対して10%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、特に50%以上が好ましい。上記の比率は高い方が電磁波遮蔽性能の観点から好ましい。本発明における空隙は、直線状に連続した空隙であってもよいし、破線状の不連続な空隙であってもよい。後者の不連続な空隙の場合は合計の長さが上記比率の対象となる。
【0119】
以下に空隙の形成方法について説明する。本発明において、導電層の上に位置する光学機能層等を物理的な方法で剥離することなく空隙を形成することが好ましく、レーザーを用いることによって光学機能層等の有機物を蒸発あるいは燃焼させることによって空隙を形成することができる。レーザーを照射する方法は、ディスプレイ用フィルターに物理的な接触なしに空隙が形成できること、ほぼ一定の幅で空隙を形成できること、及び空隙の深さ方向の制御が精度よくできるという利点がある。このようなレーザーの出力源としては、ヨウ素、YAG、CO2などがあるが、特にCO2レーザーは、空隙幅及び空隙深さが精度よく制御できること、及び金属からなる導電層は破壊せずに光学機能層を蒸発・燃焼させて空隙を形成できる点で好ましい。
【0120】
空隙形成方法として、ナイフ等のカッター刃を用いて積層体表面から切り込みを入れる方法があるが、この方法では0.3mm以上の幅の空隙は形成できないので導通が取れないこと、及び導電性メッシュが切断されて導通が不十分になる場合がある。空隙形成の他の方法として、超音波半田コテを用いて光学機能層を除去する方法があるが、この方法は高温のコテ先をディスプレイ用フィルターに接触させるのでプラスチックフィルムが熱変形を起こす可能性があること、及び導電層の露出を完全にかつ安定的に行うことが難しいという問題がある。更に他の方法として、ドライエッチングする方法があるが、この方法は装置が大がかりとなること、及び操作中に高温となり積層体が変形することがある。
【0121】
上述に鑑み、導電性メッシュの上に積層された光学機能層を貫通し導電性メッシュが露出するような空隙を形成する方法として、レーザーを用いる方法が極めて有益である。
【0122】
空隙をレーザー照射で形成する場合、空隙の幅及び深さは、レーザーの焦点位置、レーザーの出力、及びレーザーの走査速度(ヘードスピード)を調整することによって制御することができる。空隙の幅は更に走査回数を調整することによって制御することができるが、1回の走査でも本発明が所望とする空隙を形成することができる。空隙の幅は3mm以下が好ましいことは前述した通りであるが、幅が3mmを越える空隙を形成するためにはレーザーの走査回数を多くする必要があり、生産効率が低下する。
【0123】
空隙は、レーザーを用いて光学機能層を蒸発あるいは燃焼させて形成するので、導電層を完全に露出することが可能となる。図10及び図11の構成のフィルターにおいては、導電層上には光学機能層等の薄層が配置されるのみで、導電層からフィルター表面までの距離は小さくなるように設計されており、上述したような狭幅の空隙を形成するのみでアース効率を十分に確保することができる。この場合、導電層からフィルター表面までの距離は、30μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、下限は光学機能層の設計上1μm以上が好ましい。
【0124】
本発明においては、更に空隙に導電性材料を配置することが好ましく、これによって更に外部電極との導通が安定的に確保することができる。
【0125】
空隙に導電性材料を配置する1つの態様として、空隙に導電性ペーストやはんだ等の流動性の導電性材料を塗布あるいは充填する態様がある。導電性ペーストとしては、銀、金、パラジウム、銅、インジウム、スズ、あるいは銀とそれ以外の金属の合金などを含有する金属ペーストを用いることができる。
【0126】
空隙に導電性材料を配置する他の態様として、空隙に挿入することができるように加工された導電性固体を配置する態様がある。導電性固体としては導電性金属あるいは非導電体の表面に導電性金属を被覆したものが用いられる。
【0127】
空隙に導電性材料を配置する更に他の態様として、導電性粘着テープを空隙の上から貼り付ける態様がある。導電性粘着テープを貼り付けた後にヒートシーラー等で導電性粘着テープを加熱加圧するのが好ましい。本発明のディスプレイ用フィルターは、フィルター最表面から導電層表面までの距離が短いため、導電性粘着テープを加熱加圧することで、導電性粘着テープを導電層と接触させることができる。導電性粘着テープは、金属箔の一方の面に導電性粒子を分散させた粘着層を設けたものであって、この粘着層には、アクリル系、ゴム系、シリコン系粘着剤や、エポキシ系、フェノール系樹脂に硬化剤を配合したものを用いることができるが、特に架橋型導電粘着剤であるエチレン−酢酸ビニル系共重合体を主成分とするポリマーとその架橋剤とを含む後架橋型接着層であるものが好ましい。
【0128】
図15は、空隙に導電性材料を配置したディスプレイ用フィルターの模式断面図である。空隙41に導電性ペースト等からなる導電性材料42が塗布されて、導電層31と電気的に接続された電極が形成されている。
【0129】
上述した空隙の形成工程及び空隙に導電性材料を配置する工程において、ディスプレイ用フィルターの光学機能層側表面に更にカバーフィルムが積層された状態で行うのが好ましい。カバーフィルムは光学機能層等の表面層を保護する等の目的で設けられるものであり、最終的には剥離除去されるものである。カバーフィルムの上からレーザーを照射して空隙を形成することによって、レーザー照射時に発生する有機物の分解物残渣がディスプレイ用フィルターへ再付着するのを防止するという利点があり、またカバーフィルムが存在する状態で空隙に導電性ペースト等の導電性材料を充填することによって、光学機能層等の表面層に導電性材料が付着するのを防止する効果、及び表面層から盛り上がった電極を容易に形成することができるという利点がある。
【0130】
本発明に用いられるカバーフィルムとしては、各種プラスチックフィルムを用いることができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブチレンフィルム等のポリオレフィンフィルム、ポリアセチルセルロースフィルム、ポリアクリルフィルム、ポリカーボネートフィルム、エポキシ系フィルム、ポリウレタンフィルム等が挙げられ、これらの中でもポリエステルフィルムやポリオレフィンフィルムが好ましく用いられる。カバーフィルムの厚みは、10〜100μmが好ましい。
【0131】
カバーフィルムは、最終的にはディスプレイ用フィルターから剥離除去されるので、剥離可能な粘着材または接着材が用いられる。あるいは、カバーフィルムとして粘着性を有するフィルムを用いる場合には、粘着材等は不要である。カバーフィルムはディスプレイ用フィルターをディスプレイに装着する前もしくは装着した後に剥離除去するのが好ましい。
【実施例】
【0132】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0133】
(実施例1)
図10の構成の本発明のディスプレイ用フィルターを用いたプラズマディスプレイ用の前面フィルターを作製した。
【0134】
<光学フィルムの作製>
プラスチックフィルム(PETフィルム)の一方の面に導電層と光学機能層を積層し、他方の面に近赤外線遮蔽層を有する光学フィルムを作製した。更にこの光学フィルムの光学機能層上にカバーフィルムを積層した。
【0135】
<導電層の形成>
厚み100μmのPETフィルムの一方の面に、抵抗加熱による真空蒸着法(真空度:3×10−3Pa)にて銅蒸着を行い、厚み0.3μmの銅の金属薄膜を形成した。次いでスパッタリング法(真空度:0.5Pa、ターゲット:銅、導入ガス分率:酸素100%)にて、上記金属薄膜の上に厚み0.05μmの酸化銅(金属酸化物層)を形成した。作製したフィルムの金属薄膜/金属酸化物層面側へ、波長355nmのNd:YAGレーザーの第3高調波を照射し、線幅10μm、線ピッチ150μm、開口率87%の格子状メッシュパターンからなる導電層をPETフィルム上に形成した。
【0136】
<光学機能層の塗工>
上記の導電層が形成されたPETフィルムの導電層上に、下記のハードコート層、高屈折率層、及び低屈折率層を順次塗工した。
【0137】
<ハードコート層>
市販のハードコート剤(JSR製“デソライトZ7528”)をイソプロピルアルコールで固形分濃度30%に希釈した塗料を、マイクログラビアコーターで塗工し、80℃で乾燥後、紫外線1.0J/cm2を照射して硬化させ、厚み3μmのハードコート層を設けた。
【0138】
<高屈折率層>
錫含有酸化インジウム粒子(ITO)6質量部、多官能アクリレート2質量部、メタノール18質量部とポリプロピレングリコールモノエチルエーテル54質量部、イソプロピルアルコール20質量部の混合物を攪拌して塗膜屈折率1.67の高屈折率塗料を調製した。この塗料をハードコート層上にマイクログラビアコーターを用いて塗工し、80℃で乾燥後、紫外線1.0J/cm2を照射して、塗工層を硬化させ、厚さ約0.1μmの高屈折率層を形成した。
【0139】
<低屈折率層>
一次粒子径50nmの外殻を有する中空シリカ粒子(空隙率40%)144質量部、イソプロピルアルコール560質量部からなるシリカスラリーを準備し、メチルトリメトキシシラン219質量部、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン158質量部、上述シリカスラリー704質量部、ポリプロピレングリコールモノエチルエーテル713質量部を攪拌混合し、燐酸1質量部と水130質量部を配合して、30℃±10℃で攪拌しながら60分加水分解し、さらに温度を80℃±5℃に上げて60分攪拌しながら重合し、シリカ粒子含有ポリマーを得た。次に、このシリカ粒子含有ポリマー1200質量部、イソプロピルアルコール5244質量部を攪拌混合した後、硬化触媒としてアセトキシアルミニウムを15質量部添加して再度攪拌混合し、屈折率1.35の塗料を調整した。この塗料を高屈折率層上に小径グラビアコーターで塗工し、130℃で乾燥、硬化して、厚さ約0.1μmの低屈折率層を形成した。
【0140】
<カバーフィルムの積層>
低屈折率層の上に、カバーフィルム(日東電工(株)製の「E−MASK IP300」;38μmのPETフィルムに5μmの微粘着層を積層)を積層した。
【0141】
<近赤外線遮蔽層の積層>
前記PETフィルムの導電層を設けた面とは反対側の面に、オレンジ光遮蔽機能を併せ持つ近赤外線遮蔽層(近赤外線吸収色素としてのフタロシアニン系色素とジイモニウム系色素、およびオレンジ光吸収色素としてのテトラアザポルフィリン系色素をアクリル系樹脂に混合した塗料を、乾燥膜厚みが12μmになるように塗工した層)を塗工した。
【0142】
<外光遮蔽シートの作製>
厚み100μmのPETフィルム上に下記の組成物からなる光吸収部を形成した。光吸収部の仕様を以下に示す。
【0143】
<光吸収部形成組成物>
電離放射線硬化性組成物(JSR(株)製の「デソライトZ7528」)100質量部
カーボンブラック 10質量部
上記硬化組成物を70℃に加温して低粘度化し、ミキサーで攪拌しながらカーボンブラックを徐々に添加しながら分散させ、黒色塗料を作成した。
【0144】
上記を本発明の図8の方法により以下の光吸収部を形成した
光吸収部の断面形状;台形、テーパー角度3度
光吸収部の高さ;25μm
光吸収部の底部幅;5μm
光吸収部のピッチ;25μm。
【0145】
<光学フィルムに接着層積層>
光学フィルムの近赤外線遮蔽層の上に、アクリル系粘着材を厚みが50μmになるように接着層を積層した。
【0146】
<光学フィルムと外光遮蔽シートの貼合>
上記のようにして予め光学フィルムに積層された接着層を介して、光学フィルムと外光遮蔽シートの光吸収部側とを、減圧下(1kPa)で貼合し、前面フィルターを作製した。
【0147】
<前面フィルターへの接着層の積層>
上記のようにして作製した前面フィルターの外光遮蔽シートの裏面に、ディスプレイパネルに直接に貼り付けるための接着層(ウレタン系粘着材;300μm)を積層した。
【0148】
<電極の形成>
上記のようにして作成した前面フィルターを長辺964mm、短辺554mmのシート状に切断した後、この前面フィルターをレーザーカッター(コマックス製のCO2レーザーカッター)に固定して、フィルターの4辺の端部に直線状にレーザーを照射して直線状の空隙(幅0.8mm)を形成した。この空隙は、カバーフィルム表面から導電層に達しており導電層が露出していた。次いで、この空隙に導電性ペースト(藤倉化成(株)製の銀ペースト「ドータイト」(登録商標))をディスペンサーで塗布して、導電層と電気的に接続された電極を形成した。
【0149】
<前面フィルターのPDPへの装着>
上記で作製した前面フィルターをプラズマディスプレイパネルに装着し、カバーフィルムを剥離した後、筐体を組み立てた。表示画像の状態を観察したところ、本発明の前面フィルターは外光遮蔽シートを有しない前面フィルターに比べ、明るく鮮明で明所コントラストが向上していた。また、プラスディスプレイから発生される電磁波及び近赤外線も前面フィルターによって有効に遮蔽されており、周辺機器やリモコンへの影響もなかった。
【0150】
(実施例2)
図11の構成の本発明のディスプレイ用フィルターを用いたプラズマディスプレイ用の前面フィルターを作製した。
【0151】
<光学フィルムの作製>
厚み100μmのPETフィルムの一方の面に、実施例1と同様にして、導電層、ハードコート層、高屈折率層、低屈折率層、及びカバーフィルムを積層して光学フィルムを作製した。
【0152】
<光吸収部の形成>
上記の光学フィルムの反対面(導電層等を積層していない面)に実施例1と同様にして光吸収部を形成した。
【0153】
<接着層の積層>
近赤外線吸収色素としてジイモニウム系色素とフタロシアニン系色素とを含有するアクリル系粘着剤(厚み50μm)が離型フィルムにサンドウィッチされた粘着シートの一方の離型フィルムを剥離しながら減圧下(1kPa)で、光学フィルムの光吸収部側に積層して前面フィルターを作製した。
【0154】
<電極の形成及びPDPへの装着>
実施例1と同様にしてディスプレイ用フィルターに電極を形成して前面フィルターを作製した。作製した前面フィルターを接着層を介してプラズマディスプレイパネルに装着した。次いで、カバーフィルムを剥離し、筐体を組み立てた。表示画像の状態を観察したところ、本発明の前面フィルターは外光遮蔽シートを有しない前面フィルターに比べ、明るく鮮明で明所コントラストが向上していた。また、プラスディスプレイから発生される電磁波及び近赤外線も前面フィルターによって有効に遮蔽されており、周辺機器やリモコンへの影響もなかった。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】本発明のディスプレイ用フィルターの一例の模式断面図。
【図2】本発明のディスプレイ用フィルターの他の例の模式断面図。
【図3】本発明の外光遮蔽シートの平面図。
【図4】図3のA−Aの模式断面図。
【図5】光吸収部の他の態様の断面形状を示す図。
【図6】光吸収部のさらに他の態様の断面形状を示す図。
【図7】光吸収部を形成するためのロールの斜視図。
【図8】光吸収部形成工程の概略模式図。
【図9】本発明の製造方法における光吸収部の形成方向を表す平面図。
【図10】図1の態様のディスプレイ用フィルターをPDP用前面フィルターに適用したときの模式断面図。
【図11】図2の態様のディスプレイ用フィルターをPDP用前面フィルターに適用したときの模式断面図。
【図12】電極が形成された前面フィルターの平面図。
【図13】図12のB−Bの模式断面図。
【図14】電極が形成された前面フィルターの平面図。
【図15】空隙に導電性材料を配置したときの模式断面図。
【符号の説明】
【0156】
1、3、11 プラスチックフィルム
2、13 光吸収部
4、12 光学機能層
5、14 接着層
6 外光遮蔽シート
7 光学フィルム
21 光吸収部形成ロール
22 供給装置
23 ドクターブレード
24 プラスチックフィルム
25 電離放射線放射装置
31 導電層
32 近赤外線遮蔽層
33 近赤外線遮蔽機能を有する接着層
41 空隙
42 導電性材料
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ用フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(以下、LCD)、プラズマディスプレイ(以下、PDP)などのディスプレイは、明瞭なフルカラー表示が可能な表示装置である。ディスプレイには、通常、外光の反射やギラツキを防止するために、反射防止層あるいは防眩層等の光学機能層を有する光学フィルムがディスプレイの視認側に配置されている。
【0003】
近年、外光によるコントラストの低下を抑制するために、透明基材上に短冊状の光吸収部を多数平行に並べて配置(いわゆる、ブラックストライプ)したシートと上記の光学フィルムを組み合わせたディスプレイ用フィルターが提案されている(例えば、特許文献1、2)。
【0004】
これらの特許文献によれば、光吸収部(ブラックストライプ)は紫外線硬化性樹脂からなる基盤層に楔形溝を形成し、この楔形溝に光を吸収できる黒色物質を含む紫外線硬化性樹脂を充填して形成されている。
【特許文献1】特開2006−189867号公報
【特許文献2】特開2006−201577号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1,2に係る光吸収部を有するシートの製造工程は、樹脂から成る基盤層の形成、基盤層に楔形溝の形成、楔形溝に黒色物質を含む樹脂を充填する工程からなる。更にディスプレイ用フィルターとするためには、反射防止や防眩機能を有する光学フィルムと上記光吸収部を有するシートとを接着材で貼合する工程が必要となり、また更に、ディスプレイパネルに装着するための粘着材を積層する工程が必要となる。このように、光吸収部を有するシートと光学フィルムとを組み合わせたディスプレイ用フィルターの製造は、多くの工程が必要であり、生産効率の低下を招いている。また更に、これらのフィルターは層構成が複雑となり、コストアップの要因にもなっている。
【0006】
従って、本発明の目的は、外光によるコントラストの低下を防止し、かつ生産効率の向上と構成の簡略化により低価格化を実現したディスプレイ用フィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、以下の発明によって基本的に達成された。
(1)プラスチックフィルム上に5〜50μmの高さを有する光吸収部がストライプ状に平行に複数配列されたシートの光吸収部の配列された面と、プラスチックフィルム上に光学機能層を有するシートとが、接着層を介して、かつ、複数の光吸収部の間が接着層で埋設されて貼り合わされたディスプレイ用フィルター。
(2)プラスチックフィルムの一方の面に光学機能層を有し、該プラスチックフィルムの他方の面に5〜50μmの高さを有する光吸収部がストライプ状に平行に複数配列され、プラスチックフィルムの他方の面に複数の光吸収部の間を埋めるように接着層が積層されたディスプレイ用フィルター。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、外光によるコントラスト低下の防止と、生産効率の向上及び構成の簡略化により低価格化が図られたディスプレイ用フィルターを提供することできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のディスプレイ用フィルターの1つの態様は、プラスチックフィルム上に5〜50μmの高さを有する光吸収部がストライプ状に平行に複数配列されたシート(以降、、外光遮蔽シートと称す)と、プラスチックフィルム上に光学機能層を有するシート(以降、光学フィルムと称す)とが、外光遮蔽シートの光吸収部を有する面が光学フィルムと面するように接着層を介して、かつ、外光遮蔽シートの複数の光吸収部の間を接着層が埋めるように貼り合わされたものである。
【0010】
上記ディスプレイ用フィルターの構成を図1(模式断面図)に示す。図1において、プラスチックフィルム1に光吸収部2がストライプ状に平行に複数配列された外光遮蔽シート6と、プラスチックフィルム3に光学機能層4を有する光学フィルム7とが接着層5を介して貼合されており、かかる貼合は、外光遮蔽シート6の光吸収部2が形成されている面と光学フィルム7の光学機能層4とは反対面とが向き合うように、かつ接着層5が複数の光吸収部2の間を埋めるようになされている。
【0011】
かかるディスプレイ用フィルターは、光学機能層4が観賞側となるようにディスプレイパネルに接着層8を介して直接あるいはガラス板やプラスチック樹脂板を介して装着される。
【0012】
本発明のディスプレイ用フィルターの別の態様は、プラスチックフィルムの一方の面に光学機能層を有し、該プラスチックフィルムの他方の面に5〜50μmの高さを有する光吸収部がストライプ状に平行に複数配列され、その光吸収部が配列された面に複数の光吸収部の間を埋めるように接着層が積層されたものである。 図2に上記ディスプレイ用フィルターの模式断面図を示す。図2において、プラスチックフィルム11の一方の面に光学機能層12を有し、他方の面に光吸収部13がストライプ状に平行に複数配列され、複数の光吸収部13の間を埋めるように接着層14が積層されている。接着層14は、ディスプレイ用フィルターをディスプレイパネルに直接あるいはガラス板やプラスチック樹脂板を介して装着するための接着層として機能する。
【0013】
上述した本発明の2つの態様は、光吸収部と光吸収部との間の空隙を接着層で埋めることに特徴を有する。これによって、従来技術に比べディスプレイ用フィルターの製造工程が大幅に短縮され、更にディスプレイ用フィルターの層構成も簡略化される。
【0014】
本発明のプラスチックフィルム上に突出した光吸収部の形成は、後述するように1つの工程で形成することが可能であり、従来の光吸収部の製造工程、即ち、樹脂から成る基盤層の形成、基盤層に楔形溝の形成、楔形溝に黒色物質を含む樹脂を充填することからなる製造工程に比べて大幅に製造工程が短縮できる。また、本発明のディスプレイ用フィルターは、外光遮蔽シートと光学フィルムとを貼り合わせるための接着層、あるいはディスプレイ用フィルターをディスプレイパネルに貼り合わせるための接着層を利用して、光吸収部と光吸収部の間の空隙を埋めるので、従来の層構成に比べて簡略化できる。
【0015】
次に、光吸収部の構成について説明する。光吸収部が配列されたプラスチックフィルムの平面図を図3に、図3のA−Aの模式断面図を図4に示す。プラスチックフィルム1上に光吸収部2が、水平方向(横方向)にストライプ状に多数形成されている。光吸収部2の高さhは、5〜50μmであり、好ましくは10〜30μmである。光吸収部2の幅wは、1〜10μmが好ましく、2〜8μmがより好ましい。光吸収部2と光吸収部2の間隔(ピッチ)pは、8〜50μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。光吸収部2のアスペクト比(h/w)は、2〜10の範囲が好ましく、3〜8の範囲がより好ましい。
【0016】
上記の光吸収部の構成(幅、ピッチ、アスペクト比)にすることによって、光吸収部の高さhを比較的小さくしても、従来の光吸収部(高さ約100μm以上)と同程度の効果が得られ、更に光吸収部の高さを小さくすることによって凹凸の高低差が小さくなるので光吸収部への接着層の積層工程における問題点(例えば、気泡混入、接着層面の不均一、接着層の塗工欠陥等)を回避することが可能となる。 本発明において、光吸収部の形状は、図4に示すように断面が矩形であっても、台形(図5)あるいは三角形(図6)であってもよい。光吸収部の形状が台形及び三角形の場合のアスペクト比の計算には、底部の幅wを用いる。
【0017】
本発明のプラスチックフィルムとは、ポリエステル、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、ポリアミド、トリアセチルセルロース、アクリル、ポリウレタンなどから構成されるフィルムを用いうるが、特にポリエステルフィルムが好ましい。ポリエステルフィルムのポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリプロピレンナフタレートなどが挙げられ、これらの2種以上が混合されたものであってもよい。また、これらと他のジカルボン酸成分やジオール成分が共重合されたポリエステルであってもよいが、この場合は、結晶配向が完了したフィルムにおいて、その結晶化度が好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは35%以上のフィルムが好ましい。結晶化度が25%未満の場合には、寸法安定性や機械的強度が不十分となりやすい。結晶化度は、密度勾配法(JIS−K7112(1980))やラマンスペクトル分析法により得ることができる。
【0018】
上述したポリエステルを使用する場合には、その極限粘度(JIS K7367に従い、25℃のo−クロロフェノール中で測定)は、0.4〜1.2dl/gが好ましく、より好ましくは0.5〜0.8dl/gである。
【0019】
また、本発明で用いられるポリエステルフィルムは、2層以上の積層構造の複合体フィルムであっても良い。複合体フィルムとしては、例えば、内層部に実質的に粒子を含有せず、表層部に粒子を含有させた層を設けた複合体フィルムを挙げることができ、内層部と表層部が化学的に異種のポリマーであっても同種のポリマーであっても良い。本発明の目的用途であるディスプレイ用に用いる場合には、ポリエステルフィルム中には粒子などを含有しない方が内部散乱などがなく透明性などの光学特性上好ましい。
【0020】
本発明におけるポリエステルフィルムは、フィルムの熱安定性、特に寸法安定性や機械的強度を十分なものとし、平面性を良好にする観点から、ハードコート層が設けられた状態では二軸延伸により結晶配向されたフィルムであることが好ましい。二軸延伸により結晶配向しているとは、結晶配向が完了する前の熱可塑性樹脂フィルムを長手方向および/または幅方向にそれぞれ2.5〜5倍程度延伸し、その後熱処理により結晶配向を完了させたものであり、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。
【0021】
ポリエステルフィルムの厚みは、特に限定するものでは無いが機械的強度やハンドリング性などの点から、好ましくは10〜500μm、より好ましくは20〜300μmである。
【0022】
ポリエステルフィルム中には本発明の効果を阻害しない範囲内で各種の添加剤や樹脂組成物、架橋剤などを含有しても良い。例えば酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、有機、無機の粒子(例えば例えばシリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック、ゼオライト、酸化チタン、金属微粉末など)、顔料、染料、帯電防止剤、核剤、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系樹脂、ワックス組成物、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、メチロール化、アルキロール化された尿素系架橋剤、アクリルアミド、ポリアミド、エポキシ樹脂、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、各種シランカップリング剤、各種チタネート系カップリング剤などを挙げることができる。
【0023】
特にプラズマディスプレイ用に使用する場合には、色補正や近赤外カット機能を有する染料を用いるためにポリエステルフィルムには紫外線カット機能を有するのが好ましく、紫外線吸収剤を含有させるのが好ましい。
【0024】
紫外線吸収剤としては、例えばサリチル酸系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、およびベンゾオキサジノン系化合物、環状イミノエステル系化合物などを好ましく例示することができるが380nm〜390nmでの紫外線カット性、色調などの点からベンゾオキサジノン系化合物が最も好ましい。これらの化合物は1種で用いても良いし、2種以上併用しても良い。またHALS(ヒンダードアミン系光安定剤)や酸化防止剤などの安定剤の併用はより好ましい。
【0025】
好ましい材料であるベンゾオキサジノン系化合物の例としては、2−p−ニトロフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(p−ベイゾイルフェニル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(2−ナフチル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−2´−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2´−(2,6−ナフチレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)などを例示することができる。これらの化合物の添加量は基材フィルム中に0.5〜5重量%好ましくは1〜5重量%含有させるのが好ましい。
【0026】
また、更に優れた耐光性を付与するためにシアノアクリレート系4量体化合物を併用することが好ましい。シアノアクリレート系4量体化合物は基材フィルム中に0.05〜2重量%含有させることが好ましい。シアノアクリレート系4量体化合物とは、シアノアクリレートの4量体を基本とする化合物であり、例えば1,3−ビス(2´シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイルオキシ)−2、2−ビス−(2´シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイルオキシメチルプロパン)などを例示することができる。これと併用する場合には、前述の紫外線吸収剤は基材フィルム中に0.3〜3重量%添加するのが好適である。
【0027】
上記の紫外線吸収剤添加による本発明の基材プラスチックフィルムは波長380nmでの透過率が5%以下、好ましくは3%以下であるのが望ましく、これにより特にプラズマディスプレイ用部材に適用した場合、紫外線から基材フィルムや染料色素などを保護することができる。上記の透過率は、分光光度計U−3410((株)日立製作所製)に直径60mmの積分球130−063((株)日立製作所製)及び10度傾斜スペーサーを取り付けた状態で波長380nmの透過率を求めることができる。本発明に用いられるプラスチックフィルムは、光学機能層、ハードコート層、あるいは後述する導電層や近赤外線遮蔽層との密着性(接着強度)を強化のための下引き層(プライマー層)を設けておくのが好ましい。下引き層はフィルム製膜中に塗布するインラインコーティング法によるのが経済性の点から好ましく、ポリエステル共重合体、アクリル共重合体、各種ウレタン、メラミン、ポリアミド、エポキシなどから選択することができ、これらを公知の方法で架橋剤などを添加して接着性向上や耐溶剤性向上などの特性を賦与することができる。
【0028】
光吸収部は、マトリックス組成物に着色剤を分散あるいは溶解したもので形成することができる。マトリックス組成物としては、紫外線や電子線等の電離放射線で硬化する樹脂、オリゴマー、モノマーおよびこれらの混合体、熱硬化性組成物等の硬化性樹脂を用いることができる。特に電離放射線硬化組成物は硬化速度が早く生産性に優れ、かつ光吸収層を被覆する際の塗布組成物およびそれに使用する溶剤などに対する耐久性に優れるので好ましい。
【0029】
電離放射線硬化性樹脂、オリゴマー、モノマーとしては、分子内にエチレン性不飽和二重結合を含有する組成物であり特に限定するものではない。具体的には1〜3個のエチレン性不飽和二重結合を有する組成物、4個以上のエチレン性不飽和二重結合を有する組成物などを挙げることができるが、ストライプ形状の精度、耐傷性などを考慮するとその主成分として多官能アクリレートを用いるのが好ましい。多官能アクリレートとは、1分子中に3(より好ましくは4、更に好ましくは5)個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体もしくはオリゴマー、プレポリマーであって、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基(但し、本明細書において「・・・(メタ)アクリ・・・」とは、「・・・アクリ・・・又は・・・メタアクリ・・・」を略して表示したものである。)を有する単量体、オリゴマー、プレポリマーを言う。このような組成物としては、1分子中に3個以上のアルコール性水酸基を有する多価アルコールの該水酸基が、3個以上の(メタ)アクリル酸のエステル化物となっている化合物などを挙げることができる。
【0030】
具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマーなどを用いることができる。これらは、1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0031】
これらの1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体、オリゴマー、プレポリマーの使用割合は構成成分総量に対して50〜90重量%が好ましく、より好ましくは50〜80重量%である。
【0032】
上記の化合物以外に剛直性を緩和させたり、硬化時の収縮を緩和させたり、塗液の粘度を調整する目的で1〜2官能のアクリレートを併用するのが好ましい。
1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体としては、ラジカル重合性のある通常の単量体ならば特に限定されずに使用することができる。
【0033】
分子内に2個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、下記(a)〜(f)の(メタ)アクリレート等を用いることができる。すなわち、(a)炭素数2〜12のアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなど、
(b)ポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリレート酸ジエステル類:ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなど、
(c)多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類:ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートなど、
(d)ビスフェノールAあるいはビスフェノールAの水素化物のエチレンオキシド及びプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類:2,2’−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリロキシプロポキシフェニル)プロパンなど、
(e)ジイソシアネート化合物と2個以上のアルコール性水酸基含有化合物を予め反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物に、更にアルコール性水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られる分子内に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するウレタン(メタ)アクリレート類など、および、
(f)分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物にアクリル酸又はメタクリル酸を反応させて得られる分子内に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート類など。
【0034】
分子内に1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−及びi−プロピル(メタ)アクリレート、n−、sec−、およびt−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−3−メチルピロリドン、N−ビニル−5−メチルピロリドンなどを用いることができる。これらの単量体は、1種または2種以上混合して使用してもよい。
【0035】
これらの1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体の使用割合は、構成成分総量に対して10〜40重量%が好ましく、より好ましくは20〜40重量%である。アクリルオリゴマーとは、アクリル系樹脂骨格に反応性のアクリル基が結合されたもの、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレートおよびポリエーテルアクリレートなどであり、また、メラミンやイソシアヌール酸などの剛直な骨格にアクリル基を結合したものなども用い得る。
【0036】
これらの材料により構成された塗剤の粘度は1000〜5000mPa・s(25℃)、加温時には50〜200mPa・s(100℃)であることが形状をコントロールしやすくなるので好ましい。これらのアクリルオリゴマーなどの具体例は、山下晋三、金子東助編、「架橋剤ハンドブック」、大成社1981年発行、第267頁から第275頁、第562頁から第593頁を参考とすることができる。また、市販されている多官能アクリル系硬化塗料としては三菱レイヨン株式会社;(商品名“ダイヤビーム”シリーズなど)、長瀬産業株式会社;(商品名“デナコール”シリーズなど)、新中村株式会社;(商品名“NKエステル”シリーズなど)、大日本インキ化学工業株式会社;(商品名“UNIDIC”シリーズなど)、東亜合成化学工業株式会社;(商品名“アロニックス”シリーズなど)、日本油脂株式会社;(商品名“ブレンマー”シリーズなど)、日本化薬株式会社;(商品名“KAYARAD”シリーズなど)、共栄社化学株式会社;(商品名“ライトエステル”シリーズ、“ライトアクリレート”シリーズなど)、JSR株式会社;(商品名“デソライト”シリーズ)などの製品を利用することができる。
【0037】
また、光吸収部のマトリックス組成物中に改質剤を含有させることができる。改質剤として、塗布性改良剤、消泡剤、増粘剤、帯電防止剤、無機系粒子、有機系粒子、有機系潤滑剤、有機高分子化合物、紫外線吸収剤、光安定剤、染料、顔料あるいは安定剤などを用いることができ、これらは活性線または熱による反応を損なわない範囲内で構成する塗布層の組成物成分として使用され、用途に応じて特性を改良することができる。
【0038】
電離放射線の種類、例えば紫外線を用いる場合などは、従来公知の光重合開始剤を用いるのが好ましい。
【0039】
光吸収部の着色剤としては、黒色顔料等の各種顔料や染料が用いることができる。黒色顔料としては、カーボンブラック、チタンや鉄等の黒色金属粒子等が挙げられる。黒色顔料以外の青色、紫色、黄色、赤色の各種顔料及び/又は染料を単独あるいは混合して用いることができる。着色剤の含有量は、光吸収部のマトリックス組成物に対して1〜50質量%の範囲が適当である。
【0040】
本発明のディスプレイ用フィルターを構成する光学機能層は、反射防止層、防眩層、あるいは反射防止機能と防眩機能を兼ね備えた層である。光学機能層は単一層であっても複数層で構成されていてもよい。以下、光学機能層について詳細に説明する。
【0041】
反射防止層は、ディスプレイの画像表示に影響を与える蛍光灯などの外光の反射や映り込みを防止するものである。反射防止層は、表面の視感反射率が5%以下であることが好ましく、4%以下がより好ましく、特に3%以下であることが好ましい。ここで視感反射率は、分光光度計等を使用して可視領域波長(380〜780nm)の反射率を測定し、CIE1931システムに準じて計算された視感反射率(Y)である。
【0042】
このような反射防止層としては、高屈折率層と低屈折率層とを低屈折率層が視認側になるように2層以上積層したものを用いることが好ましい。高屈折率層の屈折率は1.5〜1.7の範囲が好ましく、特に1.55〜1.69の範囲が好ましい。低屈折率層の屈折率は1.25〜1.49の範囲が好ましく、特に1.3〜1.45の範囲が好ましい。
【0043】
高屈折率層を形成する材料としては、上述した光吸収部の形成に用いられる組成物と同様のもの、あるいは酸化インジウムを主成分としこれに二酸化チタンなどを少量含ませたもの、あるいはAl2 O3 、MgO、TiO2 等の無機系材料が挙げられる。特に上記光吸収部の形成に用いられる組成物中に金属酸化物粒子を分散配合する方法が屈折率の向上と帯電防止効果の両立が可能となるので特に好ましい。金属酸化物微粒子としては錫含有酸化アンチモン粒子(ATO)、亜鉛含有酸化アンチモン粒子、錫含有酸化インジウム粒子(ITO)、酸化亜鉛/酸化アルミニウム粒子、酸化アンチモン粒子等が好ましく、より好ましくは錫含有酸化インジウム粒子(ITO)、錫含有酸化アンチモン粒子(ATO)である。
【0044】
かかる金属酸化物粒子は、平均粒子径(JIS R1626に示されるBET法により測定される球相当径(JIS Z8819−1にて定義))が0.5μm以下の粒子が好適に使用されるが、より好ましくは、0.001〜0.3μm、更に好ましくは0.005〜0.2μmの粒子径のものが用いられる。該平均粒子径が、この範囲を超えると高屈折率層の透明性を低下させ、この範囲未満では、該粒子が凝集し易くヘイズ値が増大する場合がある。金属酸化物粒子の含有量は、樹脂成分に対して、0.1〜20質量%の範囲が好ましい。
【0045】
高屈折率層には、更にカルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基等の酸性官能基を有する(メタ)アクリレート化合物(モノマー)を使用することができる。具体的には、酸性官能基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸などの不飽和カルボン酸、モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジフェニル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート等のリン酸(メタ)アクリル酸エステル、2−スルホエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。その他、アミド結合、ウレタン結合、エーテル結合などの極性を持った結合を有する(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。
【0046】
高屈折率層には、塗布した組成物の硬化を進めるために開始剤を使用してもよい。該開始剤としては、塗布した組成物を、ラジカル反応、アニオン反応、カチオン反応等による重合および/または架橋反応を開始あるいは促進せしめるものであり、従来から公知の各種光重合開始剤が使用可能である。かかる光重合開始剤としては、具体的には、ソジウムメチルジチオカーバメイトサルファイド、ジフェニルモノサルファイド、ジベンゾチアゾイルモノサルファイド及びジサルファイド等のサルファイド類や、チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン誘導体や、ヒドラゾン、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物や、ベンゼンジアゾニウム塩等のジアゾ化合物や、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾフェノン、ジメチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジルアントラキノン、t−ブチルアントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−クロロアントラキノン等の芳香族カルボニル化合物や、p−ジメチルアミノ安息香酸メチル、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、D−ジメチルアミノ安息香酸ブチル、p−ジエチルアミノ安息香酸イソプロピル等のジアルキルアミノ安息香酸エステルや、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物や、9−フェニルアクリジン、9−p−メトキシフェニルアクリジン、9−アセチルアミノアクリジン、ベンズアクリジン等のアクリジン誘導体や、9,10−ジメチルベンズフェナジン、9−メチルベンズフェナジン、10−メトキシベンズフェナジン等のフェナジン誘導体や、6,4’,4”−トリメトキシ−2、3−ジフェニルキノキサリン等のキノキサリン誘導体や、2,4,5−トリフェニルイミダゾイル二量体、2−ニトロフルオレン、2,4,6−トリフェニルピリリウム四弗化ホウ素塩、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、3,3’−カルボニルビスクマリン、チオミヒラーケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等が挙げられる。
【0047】
また、高屈折率層には、上記開始剤の酸素阻害による感度の低下を防止するために、光重合開始剤にアミン化合物を共存させてもよい。このようなアミン化合物としては、例えば、脂肪族アミン化合物や、芳香族アミン化合物等の不揮発性のものであれば、特に限定されないが、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン等が適切である。
【0048】
更に、高屈折率層には、重合禁止剤、硬化触媒、酸化防止剤、分散剤等の各種添加剤を含有することができる。
【0049】
高屈折率層の厚みは、0.05〜20μmの範囲が好ましく、0.1〜10μmの範囲がより好ましい。
【0050】
反射防止層を構成する低屈折率層は、含フッ素系組成物が好ましく具体的な一例を挙げれば(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル、含フッ素シリコーン等の有機系材料、MgF2 、CaF2 など。またSiO2 等の無機系材料で構成することができ、特に内部に空洞を有する中空シリカは空気相の存在により低屈折率化できるので特に好ましい。以下に低屈折率層の好ましい態様を例示する。
【0051】
低屈折率層の1つの好ましい態様として、MgF2やSiO2等の薄膜を真空蒸着法やスパッタリング、プラズマCVD法等の気相法により形成する方法、或いはSiO2ゾルを含むゾル液からSiO2ゲル膜を形成する方法等が挙げられる。
【0052】
低屈折率層の他の好ましい態様として、シリカ系微粒子と結合してなるシロキサンポリマーを主成分とする構成を採用することができる。なお、ここで言う「結合」とは、シリカ系微粒子のシリカ成分とマトリックスのシロキサンポリマーが反応して均質化している状態を意味する。シリカ系微粒子と結合してなるシロキサンポリマーは、該シリカ系微粒子の存在下、多官能性シラン化合物を溶剤中、酸触媒により、公知の加水分解反応によって、一旦シラノール化合物を形成し、公知の縮合反応を利用することによって得ることができる。
【0053】
かかる多官能性シラン化合物としては、多官能性フッ素含有シラン化合物を含むことが低屈折率化、防汚性の点から好ましく、トリフルオロメチルメトキシシラン、トリフルオロメチルエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシランなどの3官能性フッ素含有シラン化合物、ヘプタデカフルオロデシルメチルジメトキシシランなどの2官能性フッ素含有シラン化合物などが挙げられ、いずれも好適に用いられるが、表面硬度の観点から、トリフルオロメチルメトキシシラン、トリフルオロメチルエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシランが、より好ましい。
【0054】
かかる多官能性フッ素非含有シラン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−(N,N−ジグリシジル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシシプロピルトリメトキシシランなどの3官能性シラン化合物、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメトキシシラン、オクタデシルメチルジメトキシシランなどの2官能性シラン化合物、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどの4官能性シラン化合物などが挙げられ、いずれも好適に用いられるが、表面硬度の観点からビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランが、より好ましい。
【0055】
また、上述のシリカ系微粒子としては、平均粒子径1nm〜200nmのシリカ系微粒子であることが好ましく、特に好ましくは、平均粒子径1nm〜70nmである。平均粒子径が1nmを下回ると、マトリックス材料との結合が不十分となり、硬度が低下することがある。一方、平均粒子径が200nmを越えると、粒子を多く導入して生じる粒子間の空隙の発生が少なくなり、低屈折率化の効果が十分発現しないことがある。さらに、かかるシリカ系微粒子の中でも、内部に空洞を有する構造のものが、屈折率を低下させるために、特に好ましく使用される。
【0056】
かかる内部に空洞を有するシリカ系微粒子とは、外殻によって包囲された空洞部を有するシリカ系微粒子、多数の空洞部を有する多孔質のシリカ系微粒子等が挙げられ、いずれも好適に用いられる。このような例としては例えば、特許第3272111号公報に開示されている方法によって製造でき、微粒子内部の空洞の占める体積、すなわち微粒子の空隙率としては、5%以上が好ましく、30%以上がさらに好ましい。また、該微粒子自体の屈折率は、1.20〜1.40であるのが好ましく、1.20〜1.35であるのがより好ましい。このようなシリカ系微粒子としては、例えば特開2001−233611号公報に開示されているものや、特許第3272111号公報等の一般に市販されているものを挙げることができる。
【0057】
低屈折率層の厚みは、0.01〜1μmの範囲が好ましく、0.02〜0.5μmの範囲がより好ましい。
【0058】
防眩層は、画像のギラツキを防止するものであり、表面に微小な凹凸を有する膜が好ましく用いられる。防眩層としては、例えば、熱硬化型樹脂または光硬化型樹脂に粒子を分散させて支持体上に塗布および硬化させたもの、あるいは、熱硬化型樹脂または光硬化型樹脂を表面に塗布し、所望の表面状態を有する型を押し付けて凹凸を形成した後に硬化させたものなどが用いられる。防眩層は、ヘイズ値(JIS K 7136;2000年)が0.5〜20%であることが好ましい。防眩層の厚みは、0.1〜20μmの範囲が好ましく、0.5〜15μmの範囲がより好ましい。
【0059】
本発明の光学機能層は、上述した反射防止機能と防眩機能を併せ持つ層であってもよい。また、高屈折率層あるいは防眩層に後述するハードコート層の機能併せ持たせてもよい。
【0060】
本発明において、プラスチックフィルムと光学機能層との間に、耐傷性向上のためにハードコート層を設けるのが好ましい。ハードコート層は、アクリル系、ウレタン系、メラミン系、エポキシ系、有機シリケート化合物、シリコーン系などの硬化組成物で構成することができる。特に、硬度と耐久性などの点で、シリコーン系やアクリル系が好ましい。さらに、硬化性、可撓性および生産性の点で、活性エネルギー線硬化型のアクリル系組成物、または熱硬化型のアクリル系組成物からなるものが好ましく、特に活性エネルギー線硬化型のアクリル系組成物が好ましい。
【0061】
ハードコート層の厚さは、0.5〜20μmが好ましく、より好ましくは1〜10μmである。
【0062】
本発明のディスプレイ用フィルターにおいて、接着層には公知の接着材あるいは粘着材を用いることができる。粘着材としては、アクリル、シリコン、ウレタン、ポリビニルブチラール、エチレン−酢酸ビニルなどが挙げられる。接着材としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、ポリオレフィン型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリ−1、2−ブタジエン、ポリイソブテン、ポリブテン、ポリ−2−ヘプチル−1、3−ブタジエン、ポリ−1、3−ブタジエンなどの(ジ)エン類、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルヘキシルエーテルなどのポリエーテル類、ポリビニルアセテート 、ポリビニルプロピオネートなどのポリエステル類、ポリウレタン、エチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、ポリスルフォン、フェノキシ樹脂などが挙げられる。
【0063】
接着層の厚みは、光吸収部の高さと同等もしくはそれ以上にする必要があり、光吸収部の高さによって適宜設計されるが、好ましくは、光吸収部の高さの1.1倍以上であり、より好ましくは1.3倍以上である。上限は、1000μm程度である。
【0064】
本発明のディスプレイ用フィルターは、光学機能層の上に更に防汚層を設けることができる。防汚層は、ディスプレイ用フィルターに人が指で触ることによって油脂性物質が付着するのを防止したり、大気中のごみや埃が付着するのを防止したり、あるいはこれらの付着物が付着しても除去しやすくするための層である。かかる防汚層としては、例えば、フッ素系コート剤、シリコーン系コート剤、シリコン・フッ素系コート剤等が用いられる。防汚層の厚さは、1〜10nmの範囲が好ましい。
【0065】
本発明のディスプレイ用フィルターをプラズマディスプレイの前面フィルターに適用する場合は、更に導電層を設けるのが好ましい。図1の態様においては、導電層は、プラスチックフィルム3と光学機能層4の間、プラスチックフィルム3と接着層5の間、あるいはプラスチックフィルム1と接着層8の間に設けることができる。図2の態様においては、導電層は、プラスチックフィルム11と光学機能層12の間、あるいはプラスチックフィルム11と光吸収部13の間に設けることができる。
【0066】
図2の態様において、導電層をプラスチックフィルム11と光吸収部13の間に設ける場合は、導電層と光吸収部13との間に更に樹脂層を介在させるのが好ましい。
【0067】
本発明において、導電層は、ディスプレイから発生する電磁波を遮蔽するための層であり、金属薄膜や導電性メッシュ等を用いることができる。導電層の面抵抗値は、低い方が好ましく、10Ω/□以下が好ましく、5Ω/□以下がより好ましく、特に3Ω/□以下が好ましい。面抵抗の下限値は0.01Ω/□程度である。導電層の面抵抗値は、4端子法により測定することができる。
【0068】
本発明において、導電層として導電性メッシュが好ましく用いられる。導電性メッシュは、スパッタ法や真空蒸着法等によって形成された金属薄膜あるいは導電性フィラーと樹脂バインダーからなる導電層に比べて、低い面抵抗値が得られるという利点がある。特に、導電性フィラーと樹脂バインダーからなる導電層では本発明が所望する面抵抗値が得られず、スパッタ法や真空蒸着法等によって金属薄膜を形成するためには大がかりな装置が必要であり、高い生産性が得られないという問題がある。
【0069】
また、導電層をプラスチックフィルムと光学機能層との間に設ける場合は、導電層上に積層される光学機能層との密着性(接着力)の観点からも、導電性メッシュが好ましい。導電層上に光学機能層を塗工形成するのが生産性の観点から好ましいが、スパッタ法や真空蒸着法等によって形成された金属薄膜の上に組成の異なる光学機能層を塗工形成した場合、密着性が不十分となり光学機能層が剥離することがある。
【0070】
これに対して導電性メッシュは、上記した10Ω/□以下の面抵抗値が容易に得られ、また導電性メッシュの開口部を通して光学機能層と基材のプラスチックフィルムとが接するので、光学機能層とプラスチックフィルムとの密着性も十分に確保することができる。導電性メッシュの場合は、ディスプレイ用フィルターの透過率を低下させないために70%以上の開口率になるように設計するのが好ましく(ここで、導電性メッシュの開口率とは、導電性メッシュの投影面積における開口部分が占める面積割合を意味する)、従って導電性メッシュからなる導電層の上に塗工される光学機能層と導電層との接触面積はわずかであり、上記のような密着性の問題は生じない。
【0071】
また、導電性メッシュ上に光学機能層を塗工形成する場合は、光学機能層の塗工性の観点からは、導電性メッシュの厚みは小さい方が好ましく、導電性メッシュの厚みは10μm以下が好ましく、6μm以下がより好ましく、特に3μm以下が好ましい。導電性メッシュの厚みが、上記範囲を超えて大きくなると導電層表面の凹凸が大きくなり平滑性が低下するので光学機能層の塗布性が悪化する。導電性メッシュの厚みの下限は電磁波遮蔽性能の観点から0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましい。メッシュの線幅及び線間隔(ピッチ)は、開口率が70%以上となるように設計されるが、線幅としては5〜40μmが好ましく、線間隔(ピッチ)は100〜500μmの範囲が好ましい。
【0072】
また、導電性メッシュからなる導電層はプラスチックフィルム上に接着層を介さずに形成するのが好ましい。ここで接着層は、粘着材あるいは接着材で構成される層を意味する。導電層とプラスチックフィルムとの間に接着層が存在すると導電層面の平滑性が更に低下し、光学機能層の塗布性を悪化させる。また更に、プラスチックフィルム上に接着層を介さずに直接に導電性メッシュを形成することによって、塗工形成された光学機能層の大部分はプラスチックと接触するので、上述したような樹脂を含む光学機能層を用いることによってプラスチックフィルムと光学機能層との密着性が向上する。
【0073】
上記観点から本発明の導電層に好適な導電性メッシュの形成方法として、1)金属薄膜をエッチング加工する方法、2)印刷パターン上にメッキする方法、3)感光性銀塩を用いる方法、4)印刷パターン上に金属膜積層後に現像する方法、及び5)金属薄膜をレーザーアブレーションする方法が挙げられる。以下にそれぞれの方法を詳細に説明する。
【0074】
1)金属薄膜をエッチング加工する方法は、プラスチックフィルム上に粘着材あるいは接着材からなる接着層を介さずに金属薄膜を形成し、この金属薄膜をフォトリソグラフ法あるいはスクリーン印刷法等を利用してエッチングレジストパターンを作製した後、金属薄膜をエッチングする方法である。金属薄膜の形成は、金属(例えば銀、金、パラジウム、銅、インジウム、スズ、あるいは銀とそれ以外の金属の合金など)をスパッタリング、イオンプレーティング、真空蒸着、あるいはメッキ等の公知の方法を用いて行うことができる。
【0075】
上記フォトリソグラフ法は、金属薄膜に紫外線等の照射により感光する感光層を設け、この感光層にフォトマスク等を用いて像様露光し、現像してレジスト像を形成し、次に、金属薄膜をエッチングして導電性メッシュを形成し、最後にレジストを剥離する方法である。
【0076】
上記スクリーン印刷法は、金属薄膜表面にエッチングレジストインクをパターン印刷し、硬化させた後エッチング処理により導電性メッシュを形成し、この後レジストを剥離する方法である。
【0077】
エッチングする方法としては、ケミカルエッチング法等がある。ケミカルエッチングとは、エッチングレジストで保護された導体部分以外の不要導体をエッチング液で溶解し、除去する方法である。エッチング液としては、塩化第二鉄水溶液、塩化第二銅水溶液、アルカリエッチング液等がある。
【0078】
2)印刷パターン上にメッキする方法は、プラスチックフィルムに触媒インク等でメッシュパターンを印刷し、これに金属メッキを施す方法である。この1つの方法として、パラジウムコロイド含有ペーストからなる触媒インクを用いてメッシュパターンに印刷し、これを無電解銅メッキ液中に浸漬して無電解銅メッキを施し、続いて電解銅メッキを施し、さらにNi−Sn合金の電解メッキを施して導電性メッシュパターンを形成する方法がある。
【0079】
3)感光性銀塩を用いる方法は、ハロゲン化銀などの銀塩乳剤層をプラスチックフィルムにコーティングし、フォトマスク露光あるいはレーザー露光の後、現像処理して銀のメッシュを形成する方法である。形成された銀メッシュは更に銅、ニッケル等の金属でメッキするのが好ましい。この方法は、WO2004/7810、特開2004−221564号、特開2006−12935号公報等に記載されており、参照することができる。
【0080】
4)印刷パターン上に金属膜形成後に現像する方法は、プラスチックフィルム上に剥離可能な樹脂でメッシュパターンとは逆パターンの印刷を施し、その印刷パターン上に金属薄膜を上記1)と同様の方法で形成した後、現像して樹脂とその上の金属膜を剥離して金属のメッシュパターンを形成する方法である。剥離可能な樹脂として、水、有機溶剤あるいはアルカリに可溶な樹脂やレジストを用いることができる。この方法は、特開2001−185834号、特開2001−332889号、特開2003−243881号、特開2006−140346号、特開2006−156642号公報等に記載されており、参照することができる。
【0081】
5)金属薄膜をレーザーアブレーションする方法は、上記1)と同様の方法でプラスチックフィルム上に形成された金属薄膜をレーザーアブレーション方式で金属メッシュを作製する方法である。
レーザーアブレーションとは、レーザー光を吸収する固体表面へエネルギー密度の高いレーザー光を照射した場合、照射された部分の分子間の結合が切断され、蒸発することにより、照射された部分の固体表面が削られる現象である。この現象を利用することで固体表面を加工することが出来る。レーザー光は直進性、集光性が高い為、アブレーションに用いるレーザー光の波長の約3倍程度の微細な面積を選択的に加工することが可能であり、レーザーアブレーション法により高い加工精度を得ることが出来る。
【0082】
かかるアブレーションに用いるレーザーは金属が吸収する波長のあらゆるレーザーを用いることが出来る。例えばガスレーザー、半導体レーザー、エキシマレーザー、または半導体レーザーを励起光源に用いた固体レーザーを用いることが出来る。また、これら固体レーザーと非線形光学結晶を組み合わせることにより得られる第二高調波光源(SHG)、第三高調波光源(THG)、第四高調波光源(FHG)を用いることが出来る。
【0083】
かかる固体レーザーの中でも、プラスチックフィルムを加工しないという観点から、波長が254nmから533nmの紫外線レーザーを用いることが好ましい。中でも好ましくはNd:YAG(ネオジウム:イットリウム・アルミニウム・ガーネット) などの固体レーザーのSHG(波長533nm)、さらに好ましくはNd:YAG などの固体レーザーのTHG(波長355nm)の紫外線レーザーを用いることが好ましい。
【0084】
かかるレーザーの発振方式としてはあらゆる方式のレーザーを用いることが出来るが,加工精度の点からパルスレーザーを用い,さらに望ましくはパルス幅がns以下のQスイッチ方式のパルスレーザーを用いることが好ましい。
【0085】
金属薄膜の上(視認側)に更に0.01〜0.1μmの金属酸化物層を形成した後に、金属薄膜と金属酸化物層とをレーザーアブレーションするのが好ましい。金属酸化物としては銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、金、銀、ステンレス、クロム、チタン、すずなどの金属酸化物を用いることができるが、価格や膜の安定性などの点から銅酸化物が好ましい。金属酸化物の形成方法は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレート法、化学蒸着法、無電解および電解めっき法等を用いることができる。
【0086】
上述した方法によって形成された導電層は、その厚みを小さくすることが可能であり、光学機能層を導電層上に直接に塗工形成することが可能となる。
【0087】
本発明に用いることができる導電性メッシュのメッシュパターンとしては、格子状パターン、5角形以上の多角形からなるパターン、円形パターン、あるいはこれらの複合パターンが挙げられ、更にランダムパターンも好ましく用いられる。
【0088】
本発明において、導電性メッシュは黒化処理するのが好ましい。黒化処理は、酸化処理や黒色印刷により行うことができる。例えば、特開平10−41682号、特開2000−9484号、2005−317703号公報等に記載の方法を用いることができる。黒化処理は、導電性メッシュの視認側の表面と両側面を行うのが好ましく、更に導電性メッシュの両面及び両側面を黒化処理するのが好ましい。
【0089】
また、ディスプレイ用フィルターを連続生産ラインで効率よく製造するためには、導電層は連続メッシュであることが好ましい。連続メッシュとは、メッシュパターンが途切れることなく形成されていることであり、例えば、導電層を少なくとも有する積層体を長尺ロール状で製造した場合に、ロールの巻き方向にメッシュが連続的に形成されていることである。このような連続メッシュを用いることにより、積層体ロールをカットしてシート状のディスプレイ用フィルターを製造するときに、歩留まり及び生産性が向上する。また、連続メッシュは、いろんなサイズのディスプレイへの対応が容易であること、及び、ディスプレイ用フィルターの製造過程において欠陥が発生した場合は、欠陥部分のみの限られた量の廃棄ですむこと等の利点がある。
【0090】
本発明のディスプレイ用フィルターをプラズマディスプレイの前面フィルターに適用する場合には、更に近赤外線遮蔽機能を付与するのが好ましい。
【0091】
近赤外線遮蔽機能は、波長800〜1100nmの範囲における光線透過率の最大値が15%以下となるように調整するのが好ましい。近近赤外線遮蔽機能は、プラスチックフィルムに近赤外線吸収色素や顔料を混錬することによって付与してもよいし、近赤外線遮蔽層を新たに設けてもよい。あるいは、接着層に近赤外線遮蔽機能を持たせてもよい。近赤外線遮蔽機能は、近赤外線吸収色素や顔料を用いることによって、あるいは導電性薄膜のような金属の自由電子によって近赤外線を反射する層を設けることによって付与することができる。本発明においては、近赤外線吸収色素や顔料を樹脂バインダー中に分散もしくは溶解した塗料を塗布乾燥して形成した近赤外線遮蔽層を用いること、あるいは接着層に上記近赤外線吸収色素や顔料を含有させる態様が好ましく用いられる。
【0092】
近赤外線遮蔽層を新たに設ける場合、図1の態様においては、プラスチックフィルム3と光学機能層との間、プラスチックフィルム3と接着層5との間、あるいはプラスチックフィルム1と接着層8との間に設けることができ、図2の態様においては、プラスチックフィルム11と光学機能層12との間、あるいはプラスチックフィルム11と接着層14との間に設けることができる。
【0093】
近赤外線遮蔽層に用いることができる近赤外線吸収色素としては、フタロシアニン系化合物、アントラキノン系化合物、ジチオール系化合物、ジイモニウム系化合物等の公知の色素が挙げられる。
【0094】
本発明のディスプレイ用フィルターには、更に色調調整機能、可視光透過率調整機能を付与するのが好ましい。
【0095】
色調調整機能は、ディスプレイから発光される特定波長の光を吸収して色純度や白色度を向上させるための機能である。特に赤色発光の色純度を低下させるオレンジ光を遮蔽するのが好ましく、波長580〜620nmの範囲に吸収極大を有する色素を含有させるのが好ましい。更に、白色度を向上させるために波長480〜500nmに吸収極大を有する色素を含有させるのが好ましい。また更に、反射の色味調整のために550nm付近に極大吸収を有する色素を含有させるのが好ましい。色調調整機能は、上記した波長の光を吸収する色素を含有する層を新たに設けてもよいし、上述の近赤外線遮蔽層あるいは接着層に色素を含有させてもよい。
可視光透過率調整機能は、可視光の透過率を調整するための機能であり、染料や顔料を含有させて調整することができる。可視光透過率調整機能は、プラスチックフィルム、近赤外線遮蔽層、接着層に付与してもよいし、あるいは新たに透過率調整層を設けてもよい。
【0096】
色調調整機能、あるいは可視光透過率調整機能を有する層を新たに設ける場合は、前述した近赤外線遮蔽層を設ける位置、あるいは近赤外線遮蔽層に隣接した位置に設けることができる。
【0097】
次に、本発明のディスプレイ用フィルターの製造方法について説明する。先ず、プラスチックフィルム上に光吸収部を形成する方法について説明する。光吸収部は図7に示すロールを用いて形成することができる。以降、かかるロールを光吸収部形成ロールと称す。光吸収部形成ロール21は、円周方向に光吸収部に対応する溝を有する。光吸収部形成ロール21の溝にカーボンブラック等の黒顔料が分散された硬化性樹脂を充填し、プラスチックフィルムを光吸収部形成ロール21に密着した状態で硬化性樹脂を硬化させることによってプラスチックフィルム上に黒顔料と硬化性樹脂からなる光吸収部が転写される。なお該ロールからプラスチックフィルムへの光吸収部の転写において、ロールからの剥離性を向上させるためにロール面(溝部分を含む)をフッ素化合物やシリコーン化合物で被覆処理しておくのが好ましい。
【0098】
図8は、光吸収部をプラスチックフィルム上に形成する工程の概略模式図である。黒顔料が分散された電離放射線硬化性樹脂が、供給装置22から矢印の方向に回転する光吸収部形成ロール21に供給され、光吸収部形成ロール21の溝に充填される。光吸収部形成ロール21に供給された余剰の樹脂はドクターブレード23でかき落とされる。次いで、連続走行するプラスチックフィルム24がニップロール25によって光吸収部形成ロール21に密着され、プラスチックフィルム24が光吸収部形成ロール21に密着した状態で電離放射線照射装置26にて電離放射線を照射して光吸収部形成ロール21の溝に充填された樹脂を硬化させる。次いで、折り返しロール27でプラスチックフィルム24が光吸収部形成ロール21から引き離される。このときに、光吸収部形成ロール21の溝に充填され硬化した樹脂がプラスチックフィルム24に転写され、ストライプ状の光吸収部がプラスチックフィルム24に形成される。次いで光吸収部が形成されたプラスチックフィルム24は、巻き取りロール28で巻き取られる。このようにして長尺の外光遮蔽シートを製造することができるが、本発明は上記の製造方法に限定されない。
【0099】
上記した本発明の製造方法において、ストライプ状の光吸収部は図9に示すように、プラスチックフィルムの流れ方向(搬送方向)に平行に連続して形成される。
【0100】
上記のようにして製造された長尺の外光遮蔽シートは、光学機能層を有するプラスチックフィルム(光学フィルム)と接着層を介して貼合される。貼合に際し、接着層は予め、光学フィルム側に積層しておいてもよいし、外光遮蔽シート側に積層しておいてもよい。接着層の積層は、直接に接着層を塗布する方法、あるいは接着層が離型フィルムでサンドウィッチされた接着シートの離型フィルムを剥離しながら接着層を積層する方法を用いることができる。
【0101】
本発明において、上記した外光遮蔽シートの製造工程、接着層の積層工程、及び光学フィルムと外光遮蔽シートの貼合工程は、少なくともそれぞれの工程内では長尺シートあるいは長尺フィルムを用いて連続的に行うのが好ましい。
【0102】
本発明の製造方法において、長尺の外光遮蔽シートに接着層を積層する工程、あるいは長尺の光学フィルムに積層された接着層を介して長尺の外光遮蔽シートと貼合する工程は、外光遮蔽シートの光吸収部と光吸収部の間の凹部は接着層で隙間なくほぼ完全に埋める必要がある。気泡等の空気層が存在するとヘイズ値が高くなり透明性が低下する。この課題は、図9に示すようにストライプ状の光吸収部をプラスチックフィルムの流れ方向(搬送方向)に平行に形成すること、及び光吸収部の高さを50μm以下にすることによって解決した。
【0103】
また、長尺の外光遮蔽シートと長尺の光学フィルムとの連続貼合を、減圧下で行うことによって、上記の気泡混入の抑制を更に完全なものとすることができる。
【0104】
減圧下での連続貼合において、長尺ロール状シートの巻き出し、搬送、貼合、積層シートの巻き取り等の一連の工程を減圧室(減圧チャンバー)の中で行うのが好ましい。減圧の程度は、貼合速度等によって適宜設定されるが、15kPa以下が好ましく、10kPa以下がより好ましく、特に5kPa以下が好ましい。気圧の下限は50Pa程度が適当である。
【0105】
外光遮蔽シートあるいは光学フィルムへの接着層の積層工程及び両シートの貼合工程は、外光遮蔽シートの製造工程及び光学フィルムの製造工程とは、別の工程で行ってもよいが、同一工程内で行うことによって更に生産効率が向上する。
【0106】
例えば、図8では、外光遮蔽シートの製造工程のみを示しているが、光吸収部が形成されたプラスチックフィルムを巻き取らずに、オンライン上で連続して光吸収部が形成された面に接着層を塗布し、接着層面に離型フィルムを積層した後に巻き取ることもできる。また更に、上記のように外光遮蔽シートに接着層を塗布した後、巻き取らずに、オンライン上で連続して長尺の光学フィルムと接着層付き外光遮蔽シートを貼合することもできる。
【0107】
また、図8のようにしてプラスチックフィルム上に光吸収部を形成した後、巻き取らずに、オンライン上で連続して、予め接着層が積層された長尺の光学フィルムと貼合することもできる。
【0108】
以上は、図1に示したディスプレイ用フィルターの製造方法の一例であるが、以下に図2に示したディスプレイ用フィルターの製造方法について説明する。
【0109】
先ず、プラスチックフィルムの一方の面に光学機能層を有する光学フィルムの他面に光吸収部を形成する。光吸収部の形成は前述の方法を用いることができる。即ち、図8において、プラスチックフィルム24を光学フィルムに代えることによって、光学フィルムの光学機能層とは反対面に光吸収部を形成することができる。次いで、光学フィルムの光吸収部側に接着層を積層する。接着層の積層方法としては、光学フィルムの光吸収部側に直接に接着層を塗布する方法、あるいは接着層が離型フィルムでサンドウィッチされた接着シートの離型フィルムを剥離しながら接着層を積層する方法を用いることができる。後者の離型フィルムにサンドウィッチされた接着シートを用いて積層する場合は、前述したように減圧下で行うのが好ましい。
【0110】
接着層の光学フィルムへの積層は、光学フィルムに光吸収部を形成した後に、オンライン上で連続して行うことができる。これによって生産効率の向上が図られる。
【0111】
次に、本発明のディスプレイ用フィルターをプラズマディスプレイの前面フィルターに適用した場合の態様について説明する。プラズマディスプレイ用前面フィルターに適用するには、前述したようにフィルターに電磁波遮蔽機能や近赤外線遮蔽機能を持たせるのが好ましい。図1及び図2の構成のフィルターに導電層と近赤外線遮蔽層を設けたフィルターの構成例の模式断面図を図10、図11に示す。
図10は、図1の構成のフィルターに導電層と近赤外線遮蔽層を配置した例であり、かかるフィルターは、プラスチックフィルム1上に光吸収部2が形成された外光遮蔽シート6と、プラスチックフィルム3の一方の面に導電層31と光学機能層4が積層され、かつ他方の面に近赤外線遮蔽層32が積層された光学フィルム7とが、接着層5を介して貼合された構成になっている。
【0112】
図11は、図2の構成のフィルターに導電層と近赤外線遮蔽層を配置した例であり、かかるフィルターは、プラスチックフィルム11の一方の面に導電層31と光学機能層12が積層され、他方の面に光吸収部13がストライプ状に平行に多数配列され、光吸収部13と光吸収部13の間を埋めるように近赤外線遮蔽機能が付与された接着層33が積層された構成になっている。
【0113】
上述したように本発明のディスプレイ用フィルターをプラズマディスプレイ用前面フィルターに適用する場合は、ディスプレイ用フィルターをディスプレイに装着し筐体に組み立てたときに導電層と筐体の外部電極とを電気的に接続するための電極をディスプレイ用フィルターに設ける必要がある。従って、ディスプレイ用フィルターに導電層に導通した電極を形成する必要がある。かかる電極の形成方法として、ディスプレイ用フィルターの周辺部(画像表示領域の外周)に額縁状に導電層を剥き出しにする方法があるが、導電層上に光学機能層を連続的に積層する製造方法には適用することができない。本発明においては、ディスプレイ用フィルターの周辺部に光学機能層側からレーザーを照射して、導電層に達する空隙を形成し、導電層を露出する方法が好ましく用いられる。以下、レーザーを用いた電極形成方法について詳細に説明する。
【0114】
図12はディスプレイ用フィルターの平面図であり、図13は図12のB−Bの模式断面図である。ディスプレイ用フィルターの周辺部に、4辺の側辺に略平行に直線状に細長い空隙41が設けられている。このディスプレイ用フィルターの構成は図10と同一であり、図13において空隙41は光学機能層4の表面から光学機能層4を貫通して導電層31に達しており、導電層31が露出している。この導電層の露出部が電極となる。
【0115】
図14は、空隙を直線状に不連続(破線状)に設けた態様の平面図である。ディスプレイ用フィルターの周辺部に、4辺の側辺に略平行に空隙41が破線状に設けられている。空隙を破線状に設ける場合は、1辺当たりの空隙部分の数は3〜50個が好ましく、5〜40個の範囲がより好ましい。1辺当たりの空隙部分の合計の長さ(A)と空隙部分と空隙部分の距離(間隔)の合計長さ(B)の比率(A/B)は、0.2〜20の範囲が好ましく、0.5〜10の範囲がより好ましい。
【0116】
空隙41、即ち導電層の露出部は、ディスプレイ用フィルターの周辺部に設けられるが、ここで、ディスプレイ用フィルターの周辺部とは、かかるディスプレイ用フィルターをディスプレイに装着した際に、ディスプレイの画像表示領域の外周に相当する部分のことを言い、好ましくはディスプレイ用フィルターの端部から1mm以上内側で、画像表示領域に相当する部分から1mm以上外側の範囲である。
【0117】
ディスプレイ用フィルターは通常長方形であり、空隙は少なくとも対向する2辺の端縁部に設けるのが好ましく、4辺の端縁部にそれぞれ形成するのがより好ましい。空隙は、側辺に略平行に直線状に細長く溝状に形成するのが好ましい。空隙の幅は、3mm以下が好ましく、2mm以下がより好ましく、更に1.5mm以下が好ましい。空隙の幅の下限としては、0.3mm以上が好ましく、0.4mm以上がより好ましい。空隙の幅が3mmを越えて大きくなると、導電層の露出面が大きくなり導電層が酸化劣化しやすくなるという問題、後述するように生産効率が低下するという問題、及び後述するように空隙に導電性材料を配置したときに導電性材料が剥離しやすくなるという問題が生じる場合がある。一方、空隙の幅が0.3mmより小さくなるとディスプレイ筐体(外部電極)との導通が不十分になり十分な電磁波遮蔽効果が得られない場合がある。
【0118】
ディスプレイ用フィルターの1辺における空隙の長さは、辺の長さに対して10%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、特に50%以上が好ましい。上記の比率は高い方が電磁波遮蔽性能の観点から好ましい。本発明における空隙は、直線状に連続した空隙であってもよいし、破線状の不連続な空隙であってもよい。後者の不連続な空隙の場合は合計の長さが上記比率の対象となる。
【0119】
以下に空隙の形成方法について説明する。本発明において、導電層の上に位置する光学機能層等を物理的な方法で剥離することなく空隙を形成することが好ましく、レーザーを用いることによって光学機能層等の有機物を蒸発あるいは燃焼させることによって空隙を形成することができる。レーザーを照射する方法は、ディスプレイ用フィルターに物理的な接触なしに空隙が形成できること、ほぼ一定の幅で空隙を形成できること、及び空隙の深さ方向の制御が精度よくできるという利点がある。このようなレーザーの出力源としては、ヨウ素、YAG、CO2などがあるが、特にCO2レーザーは、空隙幅及び空隙深さが精度よく制御できること、及び金属からなる導電層は破壊せずに光学機能層を蒸発・燃焼させて空隙を形成できる点で好ましい。
【0120】
空隙形成方法として、ナイフ等のカッター刃を用いて積層体表面から切り込みを入れる方法があるが、この方法では0.3mm以上の幅の空隙は形成できないので導通が取れないこと、及び導電性メッシュが切断されて導通が不十分になる場合がある。空隙形成の他の方法として、超音波半田コテを用いて光学機能層を除去する方法があるが、この方法は高温のコテ先をディスプレイ用フィルターに接触させるのでプラスチックフィルムが熱変形を起こす可能性があること、及び導電層の露出を完全にかつ安定的に行うことが難しいという問題がある。更に他の方法として、ドライエッチングする方法があるが、この方法は装置が大がかりとなること、及び操作中に高温となり積層体が変形することがある。
【0121】
上述に鑑み、導電性メッシュの上に積層された光学機能層を貫通し導電性メッシュが露出するような空隙を形成する方法として、レーザーを用いる方法が極めて有益である。
【0122】
空隙をレーザー照射で形成する場合、空隙の幅及び深さは、レーザーの焦点位置、レーザーの出力、及びレーザーの走査速度(ヘードスピード)を調整することによって制御することができる。空隙の幅は更に走査回数を調整することによって制御することができるが、1回の走査でも本発明が所望とする空隙を形成することができる。空隙の幅は3mm以下が好ましいことは前述した通りであるが、幅が3mmを越える空隙を形成するためにはレーザーの走査回数を多くする必要があり、生産効率が低下する。
【0123】
空隙は、レーザーを用いて光学機能層を蒸発あるいは燃焼させて形成するので、導電層を完全に露出することが可能となる。図10及び図11の構成のフィルターにおいては、導電層上には光学機能層等の薄層が配置されるのみで、導電層からフィルター表面までの距離は小さくなるように設計されており、上述したような狭幅の空隙を形成するのみでアース効率を十分に確保することができる。この場合、導電層からフィルター表面までの距離は、30μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、下限は光学機能層の設計上1μm以上が好ましい。
【0124】
本発明においては、更に空隙に導電性材料を配置することが好ましく、これによって更に外部電極との導通が安定的に確保することができる。
【0125】
空隙に導電性材料を配置する1つの態様として、空隙に導電性ペーストやはんだ等の流動性の導電性材料を塗布あるいは充填する態様がある。導電性ペーストとしては、銀、金、パラジウム、銅、インジウム、スズ、あるいは銀とそれ以外の金属の合金などを含有する金属ペーストを用いることができる。
【0126】
空隙に導電性材料を配置する他の態様として、空隙に挿入することができるように加工された導電性固体を配置する態様がある。導電性固体としては導電性金属あるいは非導電体の表面に導電性金属を被覆したものが用いられる。
【0127】
空隙に導電性材料を配置する更に他の態様として、導電性粘着テープを空隙の上から貼り付ける態様がある。導電性粘着テープを貼り付けた後にヒートシーラー等で導電性粘着テープを加熱加圧するのが好ましい。本発明のディスプレイ用フィルターは、フィルター最表面から導電層表面までの距離が短いため、導電性粘着テープを加熱加圧することで、導電性粘着テープを導電層と接触させることができる。導電性粘着テープは、金属箔の一方の面に導電性粒子を分散させた粘着層を設けたものであって、この粘着層には、アクリル系、ゴム系、シリコン系粘着剤や、エポキシ系、フェノール系樹脂に硬化剤を配合したものを用いることができるが、特に架橋型導電粘着剤であるエチレン−酢酸ビニル系共重合体を主成分とするポリマーとその架橋剤とを含む後架橋型接着層であるものが好ましい。
【0128】
図15は、空隙に導電性材料を配置したディスプレイ用フィルターの模式断面図である。空隙41に導電性ペースト等からなる導電性材料42が塗布されて、導電層31と電気的に接続された電極が形成されている。
【0129】
上述した空隙の形成工程及び空隙に導電性材料を配置する工程において、ディスプレイ用フィルターの光学機能層側表面に更にカバーフィルムが積層された状態で行うのが好ましい。カバーフィルムは光学機能層等の表面層を保護する等の目的で設けられるものであり、最終的には剥離除去されるものである。カバーフィルムの上からレーザーを照射して空隙を形成することによって、レーザー照射時に発生する有機物の分解物残渣がディスプレイ用フィルターへ再付着するのを防止するという利点があり、またカバーフィルムが存在する状態で空隙に導電性ペースト等の導電性材料を充填することによって、光学機能層等の表面層に導電性材料が付着するのを防止する効果、及び表面層から盛り上がった電極を容易に形成することができるという利点がある。
【0130】
本発明に用いられるカバーフィルムとしては、各種プラスチックフィルムを用いることができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブチレンフィルム等のポリオレフィンフィルム、ポリアセチルセルロースフィルム、ポリアクリルフィルム、ポリカーボネートフィルム、エポキシ系フィルム、ポリウレタンフィルム等が挙げられ、これらの中でもポリエステルフィルムやポリオレフィンフィルムが好ましく用いられる。カバーフィルムの厚みは、10〜100μmが好ましい。
【0131】
カバーフィルムは、最終的にはディスプレイ用フィルターから剥離除去されるので、剥離可能な粘着材または接着材が用いられる。あるいは、カバーフィルムとして粘着性を有するフィルムを用いる場合には、粘着材等は不要である。カバーフィルムはディスプレイ用フィルターをディスプレイに装着する前もしくは装着した後に剥離除去するのが好ましい。
【実施例】
【0132】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0133】
(実施例1)
図10の構成の本発明のディスプレイ用フィルターを用いたプラズマディスプレイ用の前面フィルターを作製した。
【0134】
<光学フィルムの作製>
プラスチックフィルム(PETフィルム)の一方の面に導電層と光学機能層を積層し、他方の面に近赤外線遮蔽層を有する光学フィルムを作製した。更にこの光学フィルムの光学機能層上にカバーフィルムを積層した。
【0135】
<導電層の形成>
厚み100μmのPETフィルムの一方の面に、抵抗加熱による真空蒸着法(真空度:3×10−3Pa)にて銅蒸着を行い、厚み0.3μmの銅の金属薄膜を形成した。次いでスパッタリング法(真空度:0.5Pa、ターゲット:銅、導入ガス分率:酸素100%)にて、上記金属薄膜の上に厚み0.05μmの酸化銅(金属酸化物層)を形成した。作製したフィルムの金属薄膜/金属酸化物層面側へ、波長355nmのNd:YAGレーザーの第3高調波を照射し、線幅10μm、線ピッチ150μm、開口率87%の格子状メッシュパターンからなる導電層をPETフィルム上に形成した。
【0136】
<光学機能層の塗工>
上記の導電層が形成されたPETフィルムの導電層上に、下記のハードコート層、高屈折率層、及び低屈折率層を順次塗工した。
【0137】
<ハードコート層>
市販のハードコート剤(JSR製“デソライトZ7528”)をイソプロピルアルコールで固形分濃度30%に希釈した塗料を、マイクログラビアコーターで塗工し、80℃で乾燥後、紫外線1.0J/cm2を照射して硬化させ、厚み3μmのハードコート層を設けた。
【0138】
<高屈折率層>
錫含有酸化インジウム粒子(ITO)6質量部、多官能アクリレート2質量部、メタノール18質量部とポリプロピレングリコールモノエチルエーテル54質量部、イソプロピルアルコール20質量部の混合物を攪拌して塗膜屈折率1.67の高屈折率塗料を調製した。この塗料をハードコート層上にマイクログラビアコーターを用いて塗工し、80℃で乾燥後、紫外線1.0J/cm2を照射して、塗工層を硬化させ、厚さ約0.1μmの高屈折率層を形成した。
【0139】
<低屈折率層>
一次粒子径50nmの外殻を有する中空シリカ粒子(空隙率40%)144質量部、イソプロピルアルコール560質量部からなるシリカスラリーを準備し、メチルトリメトキシシラン219質量部、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン158質量部、上述シリカスラリー704質量部、ポリプロピレングリコールモノエチルエーテル713質量部を攪拌混合し、燐酸1質量部と水130質量部を配合して、30℃±10℃で攪拌しながら60分加水分解し、さらに温度を80℃±5℃に上げて60分攪拌しながら重合し、シリカ粒子含有ポリマーを得た。次に、このシリカ粒子含有ポリマー1200質量部、イソプロピルアルコール5244質量部を攪拌混合した後、硬化触媒としてアセトキシアルミニウムを15質量部添加して再度攪拌混合し、屈折率1.35の塗料を調整した。この塗料を高屈折率層上に小径グラビアコーターで塗工し、130℃で乾燥、硬化して、厚さ約0.1μmの低屈折率層を形成した。
【0140】
<カバーフィルムの積層>
低屈折率層の上に、カバーフィルム(日東電工(株)製の「E−MASK IP300」;38μmのPETフィルムに5μmの微粘着層を積層)を積層した。
【0141】
<近赤外線遮蔽層の積層>
前記PETフィルムの導電層を設けた面とは反対側の面に、オレンジ光遮蔽機能を併せ持つ近赤外線遮蔽層(近赤外線吸収色素としてのフタロシアニン系色素とジイモニウム系色素、およびオレンジ光吸収色素としてのテトラアザポルフィリン系色素をアクリル系樹脂に混合した塗料を、乾燥膜厚みが12μmになるように塗工した層)を塗工した。
【0142】
<外光遮蔽シートの作製>
厚み100μmのPETフィルム上に下記の組成物からなる光吸収部を形成した。光吸収部の仕様を以下に示す。
【0143】
<光吸収部形成組成物>
電離放射線硬化性組成物(JSR(株)製の「デソライトZ7528」)100質量部
カーボンブラック 10質量部
上記硬化組成物を70℃に加温して低粘度化し、ミキサーで攪拌しながらカーボンブラックを徐々に添加しながら分散させ、黒色塗料を作成した。
【0144】
上記を本発明の図8の方法により以下の光吸収部を形成した
光吸収部の断面形状;台形、テーパー角度3度
光吸収部の高さ;25μm
光吸収部の底部幅;5μm
光吸収部のピッチ;25μm。
【0145】
<光学フィルムに接着層積層>
光学フィルムの近赤外線遮蔽層の上に、アクリル系粘着材を厚みが50μmになるように接着層を積層した。
【0146】
<光学フィルムと外光遮蔽シートの貼合>
上記のようにして予め光学フィルムに積層された接着層を介して、光学フィルムと外光遮蔽シートの光吸収部側とを、減圧下(1kPa)で貼合し、前面フィルターを作製した。
【0147】
<前面フィルターへの接着層の積層>
上記のようにして作製した前面フィルターの外光遮蔽シートの裏面に、ディスプレイパネルに直接に貼り付けるための接着層(ウレタン系粘着材;300μm)を積層した。
【0148】
<電極の形成>
上記のようにして作成した前面フィルターを長辺964mm、短辺554mmのシート状に切断した後、この前面フィルターをレーザーカッター(コマックス製のCO2レーザーカッター)に固定して、フィルターの4辺の端部に直線状にレーザーを照射して直線状の空隙(幅0.8mm)を形成した。この空隙は、カバーフィルム表面から導電層に達しており導電層が露出していた。次いで、この空隙に導電性ペースト(藤倉化成(株)製の銀ペースト「ドータイト」(登録商標))をディスペンサーで塗布して、導電層と電気的に接続された電極を形成した。
【0149】
<前面フィルターのPDPへの装着>
上記で作製した前面フィルターをプラズマディスプレイパネルに装着し、カバーフィルムを剥離した後、筐体を組み立てた。表示画像の状態を観察したところ、本発明の前面フィルターは外光遮蔽シートを有しない前面フィルターに比べ、明るく鮮明で明所コントラストが向上していた。また、プラスディスプレイから発生される電磁波及び近赤外線も前面フィルターによって有効に遮蔽されており、周辺機器やリモコンへの影響もなかった。
【0150】
(実施例2)
図11の構成の本発明のディスプレイ用フィルターを用いたプラズマディスプレイ用の前面フィルターを作製した。
【0151】
<光学フィルムの作製>
厚み100μmのPETフィルムの一方の面に、実施例1と同様にして、導電層、ハードコート層、高屈折率層、低屈折率層、及びカバーフィルムを積層して光学フィルムを作製した。
【0152】
<光吸収部の形成>
上記の光学フィルムの反対面(導電層等を積層していない面)に実施例1と同様にして光吸収部を形成した。
【0153】
<接着層の積層>
近赤外線吸収色素としてジイモニウム系色素とフタロシアニン系色素とを含有するアクリル系粘着剤(厚み50μm)が離型フィルムにサンドウィッチされた粘着シートの一方の離型フィルムを剥離しながら減圧下(1kPa)で、光学フィルムの光吸収部側に積層して前面フィルターを作製した。
【0154】
<電極の形成及びPDPへの装着>
実施例1と同様にしてディスプレイ用フィルターに電極を形成して前面フィルターを作製した。作製した前面フィルターを接着層を介してプラズマディスプレイパネルに装着した。次いで、カバーフィルムを剥離し、筐体を組み立てた。表示画像の状態を観察したところ、本発明の前面フィルターは外光遮蔽シートを有しない前面フィルターに比べ、明るく鮮明で明所コントラストが向上していた。また、プラスディスプレイから発生される電磁波及び近赤外線も前面フィルターによって有効に遮蔽されており、周辺機器やリモコンへの影響もなかった。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】本発明のディスプレイ用フィルターの一例の模式断面図。
【図2】本発明のディスプレイ用フィルターの他の例の模式断面図。
【図3】本発明の外光遮蔽シートの平面図。
【図4】図3のA−Aの模式断面図。
【図5】光吸収部の他の態様の断面形状を示す図。
【図6】光吸収部のさらに他の態様の断面形状を示す図。
【図7】光吸収部を形成するためのロールの斜視図。
【図8】光吸収部形成工程の概略模式図。
【図9】本発明の製造方法における光吸収部の形成方向を表す平面図。
【図10】図1の態様のディスプレイ用フィルターをPDP用前面フィルターに適用したときの模式断面図。
【図11】図2の態様のディスプレイ用フィルターをPDP用前面フィルターに適用したときの模式断面図。
【図12】電極が形成された前面フィルターの平面図。
【図13】図12のB−Bの模式断面図。
【図14】電極が形成された前面フィルターの平面図。
【図15】空隙に導電性材料を配置したときの模式断面図。
【符号の説明】
【0156】
1、3、11 プラスチックフィルム
2、13 光吸収部
4、12 光学機能層
5、14 接着層
6 外光遮蔽シート
7 光学フィルム
21 光吸収部形成ロール
22 供給装置
23 ドクターブレード
24 プラスチックフィルム
25 電離放射線放射装置
31 導電層
32 近赤外線遮蔽層
33 近赤外線遮蔽機能を有する接着層
41 空隙
42 導電性材料
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルム上に5〜50μmの高さを有する光吸収部がストライプ状に平行に複数配列されたシートの光吸収部が配列された面と、プラスチックフィルム上に光学機能層を有するシートとが、接着層を介して、かつ、複数の光吸収部の間が接着層で埋設されて貼り合わされたディスプレイ用フィルター。
【請求項2】
プラスチックフィルムの一方の面に光学機能層を有し、プラスチックフィルムの他方の面に5〜50μmの高さを有する光吸収部がストライプ状に平行に複数配列され、プラスチックフィルムの他方の面に複数の光吸収部の間を埋めるように接着層が積層されたディスプレイ用フィルター。
【請求項1】
プラスチックフィルム上に5〜50μmの高さを有する光吸収部がストライプ状に平行に複数配列されたシートの光吸収部が配列された面と、プラスチックフィルム上に光学機能層を有するシートとが、接着層を介して、かつ、複数の光吸収部の間が接着層で埋設されて貼り合わされたディスプレイ用フィルター。
【請求項2】
プラスチックフィルムの一方の面に光学機能層を有し、プラスチックフィルムの他方の面に5〜50μmの高さを有する光吸収部がストライプ状に平行に複数配列され、プラスチックフィルムの他方の面に複数の光吸収部の間を埋めるように接着層が積層されたディスプレイ用フィルター。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−176088(P2008−176088A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−9866(P2007−9866)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】
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