説明

ディスプレイ用光学フィルムの切断方法及びこれを用いた製造方法

【課題】 ディスプレイ用光学フィルムを帯状シートから打抜き加工によって枚葉シートに切断後、セパレータフィルムを剥離するときに、粘着剤層も剥離される所謂泣き別れが生じない様な、ディスプレイ用光学フィルムの切断方法とこれを用いた製造方法を提供する。
【解決手段】一方の側の最外層から、セパレータフィルム3、粘着剤層2、光学フィルム本体層1を少なくとも有するディスプレイ用光学フィルム10を、打抜き刃Bによって打抜く際に、セパレータフィルムの側からではなく、光学フィルム本体層の側から打抜き刃を押込んで切断する切断方法とする。ディスプレイ用光学フィルムの製造方法は、ディスプレイ用光学フィルムを準備した後、この切断方法による切断方法で切断して製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイの前面に配置する粘着剤層付きの光学フィルムの切断方法とこれを用いた製造方法に関する。特に、帯状シートから所定サイズの枚葉シートに打抜き加工によって切断した後の光学フィルムからセパレータフィルムを剥離するときに、セパレータフィルムと共に粘着剤層の一部分も同時に剥がれてしまう所謂「泣き別れ」現象を解消できる、切断方法とこれを用いた製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、プラズマディスプレイなどのディスプレイの前面(画像観察者側面)には、電磁波遮蔽フィルタ、近赤外線吸収フィルタ、反射防止フィルタ、或いはハードコート層等と各種機能を付与した光学フィルムが配置されている。また、この様な光学フィルムとしては、ディスプレイ前面板等の被着体に貼り付ける為に、一方の面に粘着剤層を形成し、この粘着剤層で貼り付けている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
例えば、特許文献1では、電磁波遮蔽フィルムのメッシュ面上に、アース部が露出する様に該フィルムよりも一回り小さい、反射防止や近赤外線吸収機能を有し粘着剤層を設けた枚葉光学フィルムを、該粘着剤層によって貼り付けている。
また、特許文献2では、プラズマディスプレイバネルの前面ガラス板に、反射防止や近赤外線吸収機能を有する前面シートに衝撃吸収層を兼用する粘着剤層を積層した光学フィルムを、該粘着剤層によって貼り付けている。
また、枚葉の光学フィルムは、生産効率が良い点で、一般に帯状シートの形態で必要な層を積層してから、適用するディスプレイ形状に合わせた所定サイズの枚葉シートに、打抜き等によって切断して製造する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−36107号公報
【特許文献2】特開2005−215554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図4に示す様に、枚葉化された後の、粘着剤層付きの光学フィルム10を、その粘着剤層2によって被着体(不図示)に貼り付けるときは、通常、該粘着剤層2の粘着面を一時的に保護しておく樹脂フィルムなどからなるセパレータフィルム3を剥がす必要がある。ところが、粘着面を保護しているセパレータフィルム3を剥離するときに、セパレータフィルム3側に粘着剤層2の一部が移行して剥がれる「泣き別れ」が生じてしまうことがある。
泣き別れが生じた跡は、本来粘着剤層2が存在する部分が、粘着剤層2の欠落部となっており、該欠落部では粘着剤層2による光学フィルム10の貼り付けが部分的に行われていない箇所となってしまう、という問題があった。
【0006】
すなわち、本発明の課題は、粘着剤層を含むディスプレイ用光学フィルムについて、帯状シートから打抜き加工によって枚葉シートに切断した後に、セパレータフィルムを剥離するときに、泣き別れが生じない様な、帯状シートから枚葉シートへの打抜き加工による切断方法と、それを用いた光学フィルムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明では、次の様な構成とした。
(1)ディスプレイ用光学フィルムを、帯状シートから所定サイズの枚葉シートに打抜き加工によって切断する、ディスプレイ用光学フィルムの切断方法であって、
該ディスプレイ用光学フィルムは、一方の側の最外層から、セパレータフィルム、粘着剤層、及び光学フィルム本体層を、少なくともこの順に有する光学フィルムであって、
打抜き刃によって打抜く際に、前記セパレータフィルムの側からではなく、前記光学フィルム本体層の側から打抜き刃を押し込んで切断する、ディスプレイ用光学フィルムの切断方法。
(2)少なくとも次の(a)及び(b)の各工程をこの順に含むディスプレイ用光学フィルムの製造方法。
(a)一方の側の最外層から、セパレータフィルム、粘着剤層、及び光学フィルム本体層を、少なくともこの順に有する帯状シート形態のディスプレイ用光学フィルムを準備する準備工程。
(b)上記準備工程で準備したディスプレイ用光学フィルムを、前記(1)のディスプレイ用光学フィルムの切断方法によって枚葉シートに切断する切断工程。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、打抜きによって切断された後の光学フィルムから、セパレータフィルムを剥離するときに、セパレータフィルムに粘着剤層の一部が不本意に付いてくる、所謂泣き別れを解消できる。従って、品質の良い、セパレータフィルム及び粘着剤層付きのディスプレイ用光学フィルムを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明によるディスプレイ用光学フィルムの切断方法及び製造方法を、概念的に説明する説明図(a)と、該光学フィルムの一例を示す断面図(b)。
【図2】光学フィルムの別の一例(微小ルーバー層あり)を例示する断面図(a)と、微小ルーバー層自体の拡大断面図(b)。
【図3】光学フィルムの別の一例(反射防止フィルム)を例示する断面図。
【図4】泣き別れを説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。尚、図1以下の各図は概念図であり、その各部分の寸法比は、図示の便宜上、適宜、実寸とは変えて誇張して図示してある。
【0011】
《概要》
先ず、図1を参照して、本発明によるディスプレイ用光学フィルムの切断方法及びこれを用いた製造方法について、その概要を説明する。
【0012】
本発明が対象とするディスプレイ用の光学フィルムは、図1(b)にその一例を示す光学フィルム10(以下、ディスプレイ用光学フィルムを単に光学フィルムとも言う)の様に、光学フィルム本体層1、粘着剤層2、セパレータフィルム3がこの順に積層されており、片側のみに粘着剤層2とセパレータフィルム3との組を有するものである。言い換えると、光学フィルム本体層1を他の被着体に貼り付ける為の粘着剤層2を片側のみに有し、この粘着剤層2を保護するセパレータフィルム3が更に積層された構成のものである。
なお、必須ではないが、通常は、粘着剤層2とは反対側の図面上方の光学フィルム本体層1の方の面上には、剥離可能な保護フィルム4が積層された構成となることが多い。
【0013】
そして、本発明によるディスプレイ用光学フィルムの切断方法では、図1(a)に示す如く、所謂トムソン刃と言われている打抜き刃Bを押し込んで該光学フィルム10を帯状シートから所定の寸法且つ形状の枚葉シートに切断するときに、打抜き刃Bを押し込む向きを、剥離時に泣き分かれが発生すると困るセパレータフィルム3の側からではなく、光学フィルム本体層1の側からとする。なお、該光学フィルム10は通常、刃受台T上で一時停止させて載置された状態で切断する。
また、本発明によるディスプレイ用光学フィルムの製造方法では、上記の用な光学フィルム10を帯状シートとして準備し、次いで、この光学フィルムに対して、上記の様な切断方法によって枚葉シートに切断する。
この様な切断方法或いは該切断方法を用いた光学フィルムの製造方法とすることによって、セパレータフィルムを剥離するときの泣き別れを解消でき、高品質のディスプレイ用光学フィルムを得ることが可能となる。
【0014】
《ディスプレイ用光学フィルムの切断方法》
実施の形態を、ディスプレイ用光学フィルムの切断方法から説明する。
【0015】
〔1.ディスプレイ用光学フィルム〕
本発明が対象とするディスプレイ用の光学フィルムは、図1(b)で説明した光学フィルム10の様に、光学フィルム本体層1を有し更に片側に被着体に貼り付け用の粘着剤層2と、その粘着面を一時的に保護しておくセパレータフィルム3とを有し、少なくとも、該光学フィルム本体層1、粘着剤層2、セパレータフィルム3とを有するフィルムである。この様な構成の光学フィルム10乃至はそれを構成する光学フィルム本体層1、粘着剤層2、セパレータフィルム3などは、従来公知のものでよい。そこで、ここでは、図1(b)乃至は、別の一例を示す図2の断面図を参照して、光学フィルム10の各構成層について説明しておく。
【0016】
[光学フィルム本体層]
光学フィルム本体層1は、光学フィルム10としての目的とする機能を担う層であり、反射防止等の各種光学フィルタ、電磁波遮蔽フィルタ、或いはハードコート層を、その目的に応じて有する層である。
【0017】
例えば、光学フィルム本体層1としては、近赤外線吸収フィルタ、電磁波遮蔽フィルタ、紫外線吸収フィルタ、PDPのネオン光を吸収するネオン光吸収フィルタ、表示画像を好みの色調に補正する色補正フィルタ、反射防止フィルタ、微小ルーバー層による光線制御フィルタ(例えば特開2007−272161号公報などに記載の、コントラスト向上フィルタであり、正面方向に出射するディスプレイ光は透過し、斜め上方向から入射する外来光は吸収するフィルタ)などの各種フィルタ機能を担う層がある。
【0018】
また、光学フィルム本体層1としては、光学フィルタ機能を有する上記各種フィルタを必須要素とするが、これに加えて更に、光学フィルタ機能を有する層以外のもの、例えば、ハードコート層、帯電防止層、汚染防止層、耐衝撃層、2層間の物質移動を防ぐバリア層などの非フィルタ機能を担う層を追加、複合しても良い。
【0019】
光学フィルム本体層1は、上記各種のフィルタ機能及び必要に応じてこれに追加される非光学フィルタ機能を担う層であるが、これらの層は、ディスプレイ用途において公知の層を適宜採用できる。
【0020】
(機能実現層)
また、光学フィルム本体層1は、目的とする機能を専ら実現する機能実現層と、それの形成対象として或いはそれを機械的に支持する基材としての透明基材シートと、から構成されることがある。
例えば、図2(a)に例示の光学フィルム10では、表側の最外層として保護フィルム4の下に、光学フィルム本体層1として、表側から順に、機能実現層としての反射防止層5、透明基材シート6、本体内粘着剤層7、透明基材シート6、機能実現層としての微小ルーバー層8を有する構成である。
【0021】
各種機能実現層は、フィルタ本体層1に付与する各種機能に応じた層であり、例えば、近赤外線吸収層であれば透明樹脂中に近赤外線吸収剤を含有させた層として形成され、ハードコート層であれば電離放射線硬化性樹脂の硬化物層として形成される。なお、機能実現層は上記各種機能の1又は2以上を単層で又は多層構成で実現することもある。
なお、例えば、透明基材シート6中に紫外線吸収剤を含有させる等、透明基材シート6自体が機能実現層となることもある。
また、粘着剤層2中に紫外線吸収剤を含有させる等、粘着剤層2が機能実現層を兼用することもある。
【0022】
(微小ルーバー層)
ここでは更に、図2(a)で例示した微小ルーバー層8について説明しておく。
微小ルーバー層8自体は、公知のものであり、図2(b)の断面図で示す様に、暗色線条部8aと透明樹脂層8bとからなり、暗色線条部8aは平面視が直線状形状をしており、この暗色線条部8aが、その延在方向を互いに平行に、フィルタ面に平行な方向に所定の間隔で、多数配列しており、暗色線条部8aの少なくとも間に該暗色線条部8aを支持する様に透明樹脂層8bを有する。なお、同図の透明樹脂層8bは、暗色線条部8aの図面上方側の部分にも存在し、図面上方の側からも該暗色線条部8aを支持する。
暗色線条部8aはカーボンブラック等の暗色の着色剤を樹脂中に含ませた暗色材料から形成し、透明樹脂層8bは透明な樹脂から形成する。また、これらの樹脂には、代表的には紫外線や電子線で硬化させるアクリレート系電離放射線硬化性樹脂が用いられ、その硬化物層として形成される。そして、通常は、透明基材シート6上に、暗色線条部8aとは逆凹凸形状の溝状凹部が形成された透明樹脂層8bを、賦形等の成形法で先に形成した後に、前記溝状凹部の内部のみに暗色樹脂材料を公知のワイビング法などで充填して、微小ルーバー層8が形成される。
【0023】
また、微小ルーバー層8は、その光線制御の目的からして、暗色線条部8aは厚み方向の距離が必要である関係上、粘着剤層2等に比べて厚くなるのが普通である。例えば、微小ルーバー層8の厚みは50〜300μm程度である。従って、厚みの厚い樹脂層となると可撓性が低下し、保管や運搬などの取り扱いを考えてロールに巻き取り難くなり取扱性が低下する。この為、その様なことが無い様に、好ましくは、微小ルーバー層8中で暗色線条部8aを支持し、また光透過部にもなる透明樹脂層8bには可撓性のある樹脂を用いる。尚、微小ルーバー層8の暗色線条部8aの底部(図2(b)に於いては、下方の透明樹脂層8b表面に露出する部分の幅)は10〜300μm程度とする。又、隣接する暗色線条部8a同士の間隔(配列周期)は10〜1000μm程度である。
【0024】
(透明基材シート)
なお、上記微小ルーバー層8及びこれ以外の機能実現層に付随させる場合の透明基材シート6は、透明な樹脂シート(乃至フィルム)が使用される。該樹脂シートの樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、或いは、シクロオレフィン重合体などのポリオレフィン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂等である。なかでも、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは好適な材料である。なお、透明基材シート2の厚みは、取扱性、コスト等の点で通常は12〜500μm、好ましくは25〜200μmだが、特に制限はない。
透明基材シート6は、図1(a)に図示の如く、帯状シート形態の物を巻取(ロール)Rから巻き出して、供給し、機能実現層、粘着剤層等の形成、打抜き加工等の加工に供する。帯状シート形態での透明基材シート6の幅は、通常、300〜1500mm程度である。巻取Rの巻きm数は、加工状況に応じて、適宜、設定すれば良く、又厚みによっても適性値は異なるが、通常、100〜5000m巻き程度である。
なお、前記した様に、例えば、透明基材シート6中に紫外線吸収剤を含有させて紫外線吸収フィルタとするなど、透明基材シート6自体が機能実現層となることもある。
なお、透明基材シート6の両面に機能実現層を設けるなど、複数の機能実現層で透明基材シート6を共用することもある。
【0025】
なお、「シート」は「フィルム」に対して一般に厚い物を意味することがあるが、本発明では単に呼称上の違いのみであり、その意味の区別は特にない。これは、透明基材シート以外に、セバレータフィルム、保護フィルムも同様である。
【0026】
(本体内粘着剤層)
本体内粘着剤層7は、上記した機能実現層、透明基材シート6等の光学フィルム本体層1を構成する任意の2層間を粘着によって積層する層である。つまり、粘着剤層ではあるが、ディスプレイ用光学フィルム10を、他の被着体に貼り付ける為の粘着剤層3ではない。
但し、この本体内粘着剤層7としては、他の被着体に貼り付ける為の粘着剤層3と同様の粘着剤を積層対象に応じて公知の粘着剤を適宜選択使用することができる。例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ゴム系粘着剤等の透明な粘着剤によって形成される。
なお、本体内粘着剤層7の厚みは通常15〜50μm程度であるが、薄すぎると粘着力(接着力)が弱くなり、厚過ぎるとコスト高となる上、粘着剤による糊汚れが発生し易くなるので、より好ましくは20〜30μm程度である。
【0027】
なお、本体内粘着剤層7としては、積層対象や積層法等に応じて粘着剤に代えて接着剤を用いることもできる。例えば、ドライラミネーション法で積層する場合には、ウレタン樹脂等の熱硬化型接着剤等を用いる。
【0028】
[粘着剤層]
粘着剤層2としては、公知のものを適宜採用できる。例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ゴム系粘着剤等の透明な粘着剤によって形成される。
なお、粘着剤層2の厚みは通常15〜50μm程度であるが、薄すぎると粘着力(接着力)が弱くなり、厚過ぎるとコスト高となる上、粘着剤による糊汚れが発生し易くなるので、より好ましくは20〜30μm程度である。
【0029】
[セパレータフィルム]
セパレータフィルム3としては、公知のものを適宜使用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル樹脂、或いはポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂等からなる樹脂フィルムの表面をシリコーン処理等で剥離処理した、透明なフィルムを用いることができる。なお、セパレータフィルムの厚さは、通常10〜250μm、好ましくは25〜100μm程度である。
【0030】
なお、本実施形態では、セパレータフィルム3(及びそれに隣接した粘着剤層2)が、光学フィルム10の表裏面の片側のみに有する形態であった。つまり、この光学フィルム10は、被着体への貼り付け面が片側面の形態例であった。しかし、変形例として、セパレータフィルム3(及びそれに隣接した粘着剤層2)が、光学フィルム10の表裏面の両側に有する形態もあり得る。但し、この両側に有する形態の光学フィルム10の場合、表裏何れかのセパレータフィルム3の側から打抜くことは避けられない。したがって、最初に打抜きされる側のセパレータフィルム3では、それを剥がすときに、泣き別れがあり得る。しかし、最初に打抜きされる側のセパレータフィルム3を剥がしたときに泣き別れが発生しても、その泣き別れが製品使用上、問題が生じない泣き別れである用途であれば、泣き別れを問題視する必要はない。であるから、セパレータフィルム3(及びそれに隣接した粘着剤層2)が、光学フィルム10の表裏面の両側に有する形態も、用途によってはあり得る形態である。
【0031】
[保護フィルム]
また、保護フィルム4としも、同様に公知のものを適宜採用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル樹脂、或いはポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン樹脂等からなる樹脂フィルムの接着面に弱粘着性の粘着剤層を形成した、透明な粘着フィルムを用いることができる。なお、保護フィルムの厚みは、通常10〜250μm、好ましくは25〜100μm程度である。
【0032】
〔2.打抜き加工による切断〕
上記したディスプレイ用光学フィルム10を、帯状シート形態から枚葉シート形態に所定形状且つ所定サイズに切断する為に、本発明では打抜き刃Bを用いた打抜き加工を行う。この際、図1(a)で示す様に、打抜き刃Bを、該光学フィルム10に押し当てる面は、セパレータフィルム3側からではなく、光学フィルム本体層1側の面とする。そして、光学フィルム10のフィルム面に対して、打抜き刃Bを垂直に押し込み切断する。
なお、所定形状は、適用するディスプレイ形状に応じたものとなり、通常は、長方形である。又、所定サイズは、適用するディスプレイのサイズに応じたものとなり、通常有効画面サイズより一回り大きいサイズとなる。また、枚葉シートに切断する際、帯状シートを流れ方向で分断する切断は必須となるが、帯状シートの幅方向も同じ打抜き加工工程で最終的に適用するディスプレイのサイズに応じたサイズに切断すると、効率的である。
【0033】
この様に、打抜きを、セパレータフィルム3側からではなく光学フィルム本体層1側から行うことによって、打抜いた後の枚葉の光学フィルム10から、セパレータフィルム3を剥離する時の、粘着剤層2の泣き別れを解消できる。
【0034】
何故、セパレータフィルム3がない方の面から打抜くと泣き別れが解消するのか、その理由を想像すると、泣き別れが生じるのは、セパレータフィルム3はその表面、それも通常は粘着剤層2側の面のみが剥離処理されているのが原因であると思われる。
つまり、その反対側の面、及び特に切断されて露出した断面は、剥離処理されてなく、粘着剤が付着し易い面となっている。この為、図4で概念的に示した様に、打抜き刃Bをセパレータフィルム3側から光学フィルム10に押し込んでから、戻すときに、打抜き刃Bに引き連れられて粘着剤層2の切断面から、その粘着剤の一部がセパレータフィルム3の断面に接触すると、該断面に付着してしまう。更に、打抜き刃Bの表面に付着し打抜き刃Bの移動につられた粘着剤が、セパレータフィルム3の粘着剤層2側とは反対側の表面(図4では図面上方)まで到達すると、該表面に付着する。そして、この様な状態のまま、セパレータフィルム3を剥離すると、該セパレータフィルム3と共に、その断面や表面に付着してしまった粘着剤が粘着剤層2に連結していると、粘着剤層2自体を引き連れて、光学フィルム本体層1から剥がしてしまうのではと思われる。
或いは、隣接する粘着剤層2が柔軟で変形し易い為、打抜き時に、セパレータフィルム3の切断部端面が、押し込まれる打抜き刃Bと共に、その直下の粘着剤層2の切断端面中に食い込んでしまうのではとも思われる。
【0035】
ところが、図1(a)で示した本発明の様に、打抜きを、セパレータフィルム3側からではなく光学フィルム本体層1側から行うときは、粘着剤層2、更にはセパレータフィルム3まで切断した打抜き刃Bが戻るときは、粘着剤層2から粘着剤を引き連れて来ても、その粘着剤は光学フィルム本体層1の断面に接触し該断面に付着することになる。従って、セパレータフィルム3の切断面には付着しない。ただ、打抜き刃Bが押し込まれる過程に於いては、セパレータフィルム3の切断面に付着する可能性は否定できない。しかし、引き連れて来た粘着剤は、セパレータフィルム3の粘着剤層2側とは反対側の表面には付着できない。なぜならば、打抜き加工は、打抜き刃Bの刃先を受ける刃受板Tに、該表面が接触しているからである。更に、打抜き時に粘着剤層2の断面を接触しながら移動する打抜き刃Bの移動距離も小さくなり、打抜き刃Bによる粘着剤の引き連れの確率が小さくなる。
以上の結果、セパレータフィルム3側からではなく光学フィルム本体層1側から打抜くと、泣き別れが解消するのではと思われる。
【0036】
[打抜き刃]
打抜き刃Bは、帯状板材の幅方向一方の端を先細り形状の刃先とし他方の側は固定用の本体部とした、トムソン刃等と呼ばれているものである。打抜き刃Bとしては、打抜き対象の光学フィルム10の素材等に応じて、公知のものを適宜選択使用することができる。例えば、打抜き刃Bの材質は、金属、セラミックス等である。なかでも、鉄、それも炭素鋼は代表的である。例えば、炭素鋼では、中炭素鋼や高炭素鋼を用い、具体例を挙げれば、炭素含有量が0.5%であるS50Cの中炭素鋼を用いる。
【0037】
また、打抜き刃Bとしては、刃先の先端角度θが20〜40°で、更に、刃先の表面にシリコーン処理を施したものを用いるのも、好ましい。更に、より好ましくは、先端角度θは25〜30°とし、更に上限はこの範囲内であっても、29°、28°、27°となるべく小さくするのが良い。この様にすると、糊玉等の糊汚れを減らすことができる。
なお、打抜き刃Bの板厚(本体部の厚み)は、0.5〜1.0mm程度のものを用いる。薄い方が糊汚れや断面荒れの点では好ましいが、機械的強度がその分低下する。従って、例えば0.71mmのものを用いる。
この様な打抜き刃Bを用いることで、打抜き刃Bの表面や光学フィルム10の切断面に粘着剤が玉状に付着する糊玉や、切断面で光学フィルムの一部が、飛び出すバリ、或いは欠損等の打抜き時の問題発生を抑えることができる。
なお、刃先の横断面形状は左右非対称形状の片刃でも良いが、切断時に打抜き刃Bが受ける力が左右均等に加わり刃先が曲がり難く等の点で、図1に図示の如くの左右対称形状の両刃の方が好ましい。この際、刃先は傾斜が一段の一段刃でも良いが傾斜が2段ある二段刃でも良い。二段刃では、刃先の先端角度が小さくなって機械的強度が落ちて刃先が欠け易くなるのを、二段目の角度を小さくして、先端角度をそれよりも大きくすることで、耐久性を向上させて防ぐことができる。
【0038】
なお、打抜き刃Bは、通常、合板等に設けた所定形状の溝に嵌合して、刃先の平面視形状が所定の打抜き形状としてなる、抜き型にして使用される。
そして、打抜く光学フィルム10は、刃受台T上に載置して切断する。刃受台Tの上面には、打抜き刃Bの刃先の耐久性を考慮して、樹脂フィルムなどを設けておくと良い。樹脂フィルムは、光学フィルムに使用されているものと同じものでも良い。例えば、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム等である。この樹脂フィルム中にも打抜き刃Bの刃先が入り込むが、切り口が大きくなったら取り替える。
【0039】
そして、上記の様にして、光学フィルム10をセパレータフィルム3とは反対側の面から打抜いて切断することで、、切断後の枚葉シートとなった光学フィルム10をセパレータフィルム3を剥離するときに、粘着剤層2も剥離されてしまう泣き別れを解消することができる。
【0040】
《ディスプレイ用光学フィルムの製造方法》
本発明によるディスプレイ用光学フィルムの製造方法は、上記したディスプレイ用光学フィルムの切断方法を利用して、該光学フィルム10を枚葉シートとして製造する方法である。
従って、ディスプレイ用光学フィルムの製造方法としては、少なくとも、次の(a)及び(b)の各工程をこの順に含む。
(a)一方の側の最外層から、セパレータフィルム、粘着剤層、及び光学フィルム本体層を、少なくともこの順に有する帯状シート形態のディスプレイ用光学フィルムを準備する準備工程、及び、
(b)上記(a)準備工程で準備したディスプレイ用光学フィルムを、前記したディスプレイ用光学フィルムの切断方法によって枚葉シートに切断する切断工程、すなわち、前記セパレータフィルム側からではなく、前記光学フィルム本体層の側から打抜き刃を押し込んで切断して枚葉シートとする切断工程、
の2工程である。
【0041】
準備工程(a)では、光学フィルム10を構成する帯状で粘着剤層(粘着剤層2或いは本体内粘着剤層7)が未形成の各層(1層以上の光学フィルタ、セパレータフィルム)を製造後、各層を、間に前記粘着剤層を介して、積層して切断対象とする帯状の光学フィルム10を製造することで準備しても良いし、或いは、間に粘着剤層を介して、1層以上の光学フィルタとセパレータフィルムとが既に積層されている帯状の光学フィルム10を市場から購入し入手することで準備しても良い。各層を形成し積層する場合は、上記した様な層を公知の方法で形成し積層し、製造すれば良い。
【0042】
切断工程(b)では、準備工程(a)で準備した光学フィルム10を切断対象として、上記したディスプレイ用光学フィルムの切断方法、つまり、セパレータフィルム側からではなく、前記光学フィルム本体層の側から打抜き刃を押し込んで切断して枚葉シートとする切断方法によって、切断することで、光学フィルタ10を製造する。
【0043】
この様な、ディスプレイ用光学フィルムの製造方法とすることで、切断後にセパレータフィルム3を剥離する時に、その直下の粘着剤層2も同時に一部が剥離されてしまう泣き別れが生じない、高品質の光学フィルム10を製造できる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例及び比較例によって更に詳述する
【0045】
〔実施例1〕
帯状シート形態の光学フィルタ10として、図3の断面図で示す様な、観察者側となる表側から順に、反射防止層5、透明基材シート6、粘着剤層2、セパレータフィルム3が積層された反射防止フィルムを用意した。各層の厚みは、反射防止層6は5μm、透明基材シート6は100μm、粘着剤層2は25μm、セパレータフィルム3は38μmである。透明基材シート6、及びセパレータフィルム3には、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いてある。反射防止層5は中空シリカ粒子を分散させた弗素樹脂から成る反射防止塗料で塗工形成し、粘着剤層2にはアクリル系粘着剤を用いてある。該光学フィルタ10は幅900mmの帯状形態の物を直径15.24cm(6インチ)の巻芯に1000m巻き取った巻取(ロ−ル)Rの形態とした。
【0046】
そして、図1(a)の如く、上記光学フィルタ10を巻取Rから巻き出して、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを敷いてある刃受台T上に静置して、板厚0.71mmの表面にシリコーン被覆した炭素鋼製の刃を平面視形状が縦360mm、横290mm長方形の打抜き形状の輪郭に沿って配置してなる打抜き刃Bを、セパレータフィルム3とは反対側の面である反射防止層5側の面から、フィルム面に垂直に押し込んで打抜き、所定サイズの枚葉シートに切断された光学フィルム10sを得た。
次に、この枚葉シートとなった光学フィルム10sから、セパレータフィルム3を剥離してみたところ、その直下の粘着剤層2はセパレータフィルム3と共に剥離することなく、泣き別れは発生しなかった。
【0047】
〔比較例1〕
実施例1に於いて、打抜き方向のみを逆にして、セパレータフィルム3の側から打抜いて、枚葉シートの光学フィルムを作製した。
次に、この枚葉シートとなった光学フィルム10から、セパレータフィルム3を剥離してみたところ、その直下の粘着剤層2はセパレータフィルム3と共に剥離し、泣き別れが発生した。
【0048】
《用途》
本発明によるディスプレイ用光学フィルムの切断方法及びこれを用いた製造方法が対象とするセパレータフィルム及び粘着剤層付きの光学フィルムは、ディスプレイ用途して、例えば、テレビジョン受像器、測定機器や計器類、事務用機器、医療機器、電算機器、電話機、電子看板、遊戯機器等の表示部等に用いられるPDP(プラズマディスプレイ)、LCD(液晶ディスプレイ)、電界発光(EL)ディスプレイなどのFPD(フラットパネルディスプレイ)、或いは、CRT(ブラウン管)等の各種画像表示装置の前面に配置する光学フィルムとして好適である。この他、住宅、事務所、店舗、病院等の建築物の窓、扉等に貼着する赤外線遮断、紫外線遮断等の目的に使う光学フィルムとしても好適である。
【符号の説明】
【0049】
1 光学フィルム本体層
2 粘着剤層
3 セパレータフィルム
4 保護フィルム
5 反射防止層
6 透明基材シート
7 本体内粘着剤層
8 微小ルーバー層
8a 暗色線条部
8b 透明樹脂層
10 (帯状)ディスプレイ用光学フィルム
10s (枚葉)ディスプレイ用光学フィルム
B 打抜き刃
E 泣き別れ
R 巻取(ロール)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイ用光学フィルムを、連続帯状シートから所定サイズの枚葉シートに打抜き加工によって切断する、ディスプレイ用光学フィルムの切断方法であって、
該ディスプレイ用光学フィルムは、一方の側の最外層から、セパレータフィルム、粘着剤層、及び光学フィルム本体層を、少なくともこの順に有する光学フィルムであって、
打抜き刃によって打ち抜く際に、前記セパレータフィルムの側からではなく、前記光学フィルム本体層の側から打抜き刃を押込んで切断する、ディスプレイ用光学フィルムの切断方法。
【請求項2】
少なくとも次の(a)及び(b)の各工程をこの順に含むディスプレイ用光学フィルムの製造方法。
(a)一方の側の最外層から、セパレータフィルム、粘着剤層、及び光学フィルム本体層を、少なくともこの順に有する帯状シート形態のディスプレイ用光学フィルムを準備する準備工程。
(b)上記準備工程で準備したディスプレイ用光学フィルムを、前記請求項1記載のディスプレイ用光学フィルムの切断方法によって枚葉シートに切断する切断工程。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−58574(P2012−58574A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202935(P2010−202935)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】