説明

ディテント機構

【課題】従来のディテント機構では、コイルスプリングによりスチールボールを押し当てる構造となっているので、操作感覚をソフトにしようとすると柔らかく大きなコイルスプリングが必要となり、機構全体が大きくなってしまう。
【解決手段】固定部材4には、往復自在にプランジャ6が取り付けられるとともに、プランジャ6の他端が当接するように板状弾性部材7が取り付けられており、該板状弾性部材7は、プランジャ6がピン2によって第1付勢方向Cへ付勢されたときに、該プランジャ6を前記第1付勢方向Cとは逆の第2付勢方向Dへ付勢する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作レバー等に取り付けられるディテント機構に関し、特に、プランジャと板状弾性部材とを用いることにより、操作感覚をソフトにした場合でも機構全体が大きくなることを防ぐことができる新規な改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来用いられていたこの種のディテント機構としては、例えば後述の特許文献1のようにコイルスプリングを用いた構成で伸縮用途が一般的である。図示していないが具体的には、利用者によって操作される操作レバーの一端には、側面が円弧状に形成され、前記操作レバーの操作によって回動されるディスクが取り付けられている。ディスクの側面には、ディテント溝が設けられているとともにコイルスプリングによってスチールボールが常に押し当てられており、前記操作レバーの操作によってディスクが回動されディテント溝の位置がスチールボールの位置に達した際に、該ディテント溝にスチールボールが係合されるようになっている。即ち、従来機構での操作感覚は、コイルスプリングの硬さによりソフト及びハードになる。
【0003】
【特許文献1】特開平10−37233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来のディテント機構では、コイルスプリングによりスチールボールを押し当てる構造となっているので、操作感覚をソフトにしようとすると柔らかく大きなコイルスプリングが必要となり、機構全体が大きくなってしまう。また、スチールボールを常に押し当てる必要があるので、操作レバーの操作量に対応した広さの面を有するディスクが必要あり、部品の小形化に制限がある。さらに、従来機構ではクリック感を与えるだけで、操作レバーの操作方向までは分からないという問題もある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るディテント機構は、基台に形成された軌道溝に沿って往復自在なピンと、前記軌道溝に隣接して前記基台に固定された固定部材と、前記固定部材に往復自在に取り付けられるとともに一端が前記軌道溝に臨んで配置され、前記一端に前記ピンが当接されることで第1付勢方向へ付勢されるプランジャと、前記プランジャの他端に当接されるように前記固定部材に取り付けられ、前記プランジャが前記ピンによって前記第1付勢方向へ付勢されたときに、前記第1付勢方向とは逆の第2付勢方向へ前記プランジャを付勢する板状弾性部材とを備える。
また、前記プランジャの前記一端及び前記ピンには、前記ピンが第1移動方向に移動する際に互いに当接される第1プランジャ側部及び第1ピン側部が設けられるとともに、前記ピンが前記第1移動方向とは逆の第2移動方向に移動する際に互いに当接される第2プランジャ側部及び第2ピン側部が設けられ、前記第1及び第2プランジャ側部と前記第1及び第2ピン側部との少なくとも一方は、前記ピンの移動量に対する前記プランジャの移動量が前記ピンの前記移動方向によって異なるように形成されている。
また、前記第1及び第2プランジャ側部は、前記第1プランジャ側部の前記プランジャの軸方向に対する第1傾斜角度が、前記第2プランジャ側部の前記プランジャの軸方向に対する第2傾斜角度と異なるように形成されている。
【発明の効果】
【0006】
本発明のディテント機構によれば、板状弾性部材が第1付勢方向へ付勢されたプランジャを第1付勢方向とは逆の第2付勢方向へ付勢するので、操作感覚をソフトにしたとしてもコイルスプリングを用いる場合に比べて小さな板状弾性部材で済ますことができ、機構全体が大きくなることを防ぐことができる。また、プランジャを何らかの部材に常に押し当てる必要がないので、操作レバーの操作量に対応した広さの面を有するディスクを不要とすることができ、コストを低減できる。
また、前記第1及び第2プランジャ側部と前記第1及び第2ピン側部との少なくとも一方は、前記ピンの移動量に対する前記プランジャの移動量が前記ピンの前記移動方向によって異なるように形成され、詳細には、第1及び第2プランジャ側部は、前記第1プランジャ側部の前記プランジャの軸方向に対する第1傾斜角度が、前記第2プランジャ側部の前記プランジャの軸方向に対する第2傾斜角度と異なるように形成されているので、操作感覚によって操作レバーの操作方向を利用者が感知でき、利用者の利便性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1によるディテント機構を示す正面図である。図2は、図1の線II−IIに沿う断面図である。図において、基台1には円弧状の軌道溝1aが設けられており、該軌道溝1aにはピン2が挿入されている。このピン2は該軌道溝1aに沿って往復自在に設けられており、利用者による操作レバー(図示せず)の操作に応じて第1及び第2移動方向A,Bのいずれか一方に選択的に移動する。
【0008】
前記基台1には前記軌道溝1aに隣接して固定部材4が複数本のネジ3により固定されており、該固定部材4には互いに平行な第1及び第2横溝4a,4bとこれら各横溝4a,4bに直交する第1縦溝4cとが設けられている。固定部材4は、第1縦溝4cの延在方向が前記各移動方向A,Bと直交するように配置されている。尚、図中の複数本のネジ3のうち、2本が固定部材4の基台1への固定用であり、他の2本は後に説明するカバー5取付用である。
【0009】
前記固定部材4には、図2に示された(図1では記載を省略している)カバー5と、プランジャ6と、板状のゴムである板状弾性部材7とが取り付けられている。尚、板状弾性部材7として板状のゴムを用いているのは、硬さを変えてもスプリングコイルに比べて大きさが変わりにくいためであり、ピン2及びプランジャ6は耐摩耗性が考慮されて金属製である。プランジャ6の形状は、一端61が先細り状で他端62が扁平の略四角柱であり、これら端61,62の間には突起部63が設けられている。該プランジャ6は、第1縦溝4cに嵌入されることで前記固定部材4に往復自在に取り付けられ、その一端61は前記軌道溝1aに臨んで配置されている。プランジャ6は、その一端61に前記ピン2が当接されることで第1付勢方向Cへ付勢される。突起部63は、前記第1横溝4aに挿入されており、プランジャ6の移動を所定範囲内に規制するものである。板状弾性部材7は、前記第2横溝4bに嵌入されており、前記他端62が当接されている。該板状弾性部材7は、前記プランジャ6が前記ピン2によって前記第1付勢方向Cへ付勢されたときに、該プランジャ6を前記第1付勢方向Cとは逆の第2付勢方向Dへ付勢する。
【0010】
プランジャ6の一端61及びピン2には、ピン2が第1移動方向Aに移動する際に互いに当接される第1プランジャ側部61a及び第1ピン側部2aが設けられるとともに、ピン2が第2移動方向Bに移動する際に互いに当接される第2プランジャ側部61b及び第2ピン側部2bが設けられている。これら第1及び第2プランジャ側部61a,61bと第1及び第2ピン側部2a,2bとの少なくとも一方は、ピン2の移動量に対する前記プランジャ6の移動量がピン2の移動方向A,Bによって異なるように形成されている。
【0011】
次に、図3は、図1のプランジャ6の一端61の形状を示す説明図である。図において、この実施の形態では、ピン2の移動量に対するプランジャ6の移動量がピン2の移動方向A,Bによって異なるようにするために、第1及び第2プランジャ側部61a,61bは、第1プランジャ側部61aのプランジャ6の軸方向に対する第1傾斜角度θ1が、第2プランジャ側部61aのプランジャ6の軸方向に対する第2傾斜角度θ2と異なるように形成されている。
【0012】
このようなディテント機構では、板状弾性部材7が第1付勢方向Cへ付勢されたプランジャ6を第1付勢方向Cとは逆の第2付勢方向Dへ付勢するので、操作感覚をソフトにしたとしてもコイルスプリングを用いる場合に比べて小さな板状弾性部材で済ますことができ、機構全体が大きくなることを防ぐことができる。また、プランジャ6を何らかの部材に常に押し当てる必要がないので、操作レバーの操作量に対応した広さの面を有するディスクを不要とすることができ、コストを低減できる。
【0013】
また、第1及び第2プランジャ側部61a,61bと第1及び第2ピン側部2a,2bとの少なくとも一方は、ピン2の移動量に対するプランジャ6の移動量がピン2の移動方向A,Bによって異なるように形成され、詳細には、第1及び第2プランジャ側部61a,61bは、第1プランジャ側部61aのプランジャ6の軸方向に対する第1傾斜角度θ1が、第2プランジャ側部61bのプランジャ6の軸方向に対する第2傾斜角度θ2と異なるように形成されているので、操作感覚によって操作レバーの操作方向を利用者が感知でき、利用者の利便性を向上できる。
【0014】
尚、実施の形態1では、板状弾性部材7として板状のゴムを用いると説明したが、例えばウェーブワッシャや皿ばね等、その他の板状弾性部材を用いてもよい。
でもよい。
【0015】
また、実施の形態1では、ピン2の移動量に対するプランジャ6の移動量がピン2の移動方向A,Bで異なるようにするために、第1及び第2プランジャ側部61a,61bのプランジャ6の軸方向に対する傾斜角度θ1,θ2が互いに異なるようにすると説明したが、これに加えて、ピンの移動方向に対する第1及び第2ピン側部の傾斜角度を互いに異なるように形成してもよい。また、ピンの移動方向に対する第1及び第2ピン側部の傾斜角度だけを互いに異なるように形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1によるディテント機構を示す正面図である。
【図2】図1の線II−IIに沿う断面図である。
【図3】図1のプランジャ6の一端61の形状を示す説明図である。
【符号の説明】
【0017】
2 ピン、2a,2b 第1及び第2ピン側部、4 固定部材、6 プランジャ、7 板状弾性部材、61a,61b 第1及び第2プランジャ側部、61 ピンの一端、62 ピンの他端、A,B 第1及び第2第1及び第2移動方向、C,D 第1及び第2付勢方向、θ1,θ2 第1及び第2傾斜角度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台(1)に形成された軌道溝(1a)に沿って往復自在なピン(2)と、
前記軌道溝(1a)に隣接して前記基台(1)に固定された固定部材(4)と、
前記固定部材(4)に往復自在に取り付けられるとともに一端(61)が前記軌道溝(1a)に臨んで配置され、前記一端(61)に前記ピン(2)が当接されることで第1付勢方向(C)へ付勢されるプランジャ(6)と、
前記プランジャ(6)の他端(62)に当接されるように前記固定部材(4)に取り付けられ、前記プランジャ(6)が前記ピン(2)によって前記第1付勢方向(C)へ付勢されたときに、前記第1付勢方向(C)とは逆の第2付勢方向(D)へ前記プランジャ(6)を付勢する板状弾性部材(7)と
を備えていることを特徴とするディテント機構。
【請求項2】
前記プランジャ(6)の前記一端(61)及び前記ピン(2)には、前記ピン(2)が第1移動方向(A)に移動する際に互いに当接される第1プランジャ側部(61a)及び第1ピン側部(2a)が設けられるとともに、前記ピン(2)が前記第1移動方向(A)とは逆の第2移動方向(B)に移動する際に互いに当接される第2プランジャ側部(61b)及び第2ピン側部(2b)が設けられ、
前記第1及び第2プランジャ側部(61a,61b)と前記第1及び第2ピン側部(2a,2b)との少なくとも一方は、前記ピン(2)の移動量に対する前記プランジャ(6)の移動量が前記ピン(2)の前記移動方向(A,B)によって異なるように形成されていることを特徴とする請求項1記載のディテント機構。
【請求項3】
前記第1及び第2プランジャ側部(61a,61b)は、前記第1プランジャ側部(61a)の前記プランジャ(6)の軸方向に対する第1傾斜角度(θ1)が、前記第2プランジャ側部(61b)の前記プランジャ(6)の軸方向に対する第2傾斜角度(θ2)と異なるように形成されていることを特徴とする請求項2記載のディテント機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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