説明

ディーゼル燃料の製造方法、及びディーゼル燃料

【課題】 水洗した場合でも、精製工程を円滑に実施し、高品質のディーゼル燃料を高い歩留まりで廉価に製造することができる方法、及びディーゼル燃料を提供する。
【解決手段】 処理タンク5内の原料油に反応液を流入させ、メチルエステル化された脂肪酸を主に含む軽層、及びグリセリンを主に含む重層の二層に分離させた後、重層を除去する。得られた軽層を所要温度まで加熱した後、洗浄水タンク8から処理タンク5内へ洗浄水を投入して洗浄し、洗浄された脂肪酸を主に含む軽層、及び洗浄水を主に含む重層の二層に分離させ、重層を除去する。この間、排気ファンを作動させて、気化したメチルアルコールを排出させる。この軽層を仕上精製装置27に導入し、遠心分離及び濾過を行うことによって精製油を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリセリンと脂肪酸とが結合した対象油を含む原料油からディーゼル燃料を製造する方法、及びその方法により製造されたディーゼル燃料に関する。
【背景技術】
【0002】
グリセリンと脂肪酸とが結合した植物油を原料としたディーゼル燃料、所謂BDF(Biodiesel Fuel)は、植物が環境中から吸収・固定した炭素から構成されているため、燃焼によって二酸化炭素等の炭素酸化物が環境へ排出されても、もともと環境中に存在していた炭素が再び環境中へ戻るだけ、所謂カーボンニュートラルであるので、環境中の二酸化炭素を増大させないエネルギーとしてその需要が拡大している。
【0003】
そのようなBDFを製造する方法として、例えば後記する特許文献1には次のような方法が開示されている。
【0004】
すなわち、原料とする廃食油を脱水処理した後、適宜量の水酸化カリウム及びメチルアルコールを添加し、60℃で1時間撹拌することによって、グリセリンと結合している脂肪酸をメチルエステル化してグリセリンから分離させるエステル交換反応を行わせる反応工程を実施した後、次のような精製工程を実施している。
【0005】
まず、エステル交換反応させた後、撹拌を停止すると共に反応液を冷却することによって、エステル交換反応によって生じた脂肪酸メチルエステルを含む軽層とグリセリンを含む重層との二層に分離させ、分離した重層と軽層とを各別に分取することによってそれらを分離する。
【0006】
このようにして得られた軽層に水を添加して撹拌することによって軽層を水洗し、撹拌を停止して静置させることによって、軽層と水層との二層に分離させ、水層を排出することによって水洗した軽層を得る。
【0007】
このような軽層には水分及びメチルアルコールが残留しているので、残留する水分及びメチルアルコールを蒸留除去して脂肪酸メチルエステルを得、適宜のフィルターを用いて脂肪酸メチルエステルを濾過することによってBDFを得ていた。
ここで、前述した残留する水分及びメチルアルコールの蒸留除去操作は、軽層を120℃程度に加熱することによって行われていた。
【特許文献1】特開2003−96473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような従来の製造方法にあっては、精製工程において次のような問題があった。
すなわち、水の沸点である100℃を越える高い温度に加熱することによって、残留する水分及びメチルアルコールを蒸留除去しているため、軽層を構成する脂肪酸メチルエステルが突沸する場合があり、かかる高温で安全に運転し得る蒸留除去設備に多大なコストを要するとともに、蒸留除去設備の運転に熟練を要する。
【0009】
また、軽層を水洗することによって軽層中に残留するグリセリンといった水溶性物質を洗浄除去する操作は所要の製品品質を得るために重要であるが、かかる操作によっては、エステル交換反応によって副産された石鹸等の不純物を十分に除去することができず、前述した蒸留除去後に実施する濾過工程において、フィルターを短時間で目詰まりさせてしまうため、濾過工程に支障を来たして、BDFの製造を円滑に行うことができない。
【0010】
そのため、大きな孔径のフィルターを用いると製品品質が低下するため、ディーゼルエンジンには使用することができない。一方、フィルターの目詰まりを防止すべく、濾過助剤を用いた前濾過工程を実施することも考えられるが、この場合、濾過助剤にコストを要し、更に濾過助剤中にBDFの一部が残留してしまうため、製品の歩留まりが低下する。また、大きな孔径のフィルターを用いた場合であっても、前濾過工程を実施した場合であっても、当該フィルターの目詰まり又は当該前濾過工程における目詰まりが発生する虞もあった。
【0011】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、水洗操作を行った場合であっても、精製工程を円滑に実施することができ、高品質のディーゼル燃料を可及的に高い歩留まりで廉価に製造することができる方法、及び該製造方法により製造されたディーゼル燃料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明に係るディーゼル燃料の製造方法は、グリセリンと脂肪酸とが結合した対象油を含む原料油とメチルアルコールとをアルカリ触媒を介在させた状態で反応させて前記脂肪酸をメチルエステル化する工程と、メチルエステル化された脂肪酸を主に含む軽層と、脂肪酸が分離したグリセリンを主に含む第1重層とに分離させた後、当該第1重層を除去することによって軽層を得る工程と、軽層を洗浄水で洗浄する洗浄工程とを実施してディーゼル燃料を製造する方法において、少なくとも前記洗浄工程において、軽層及び洗浄水を、メチルアルコールの沸点を超え、軽層が突沸する温度未満の適宜温度になすことによって、軽層に残存するメチルアルコールを気化除去し、更に、洗浄した軽層と洗浄水を主に含む第2重層とに分離させ、当該第2重層を除去して洗浄した軽層を得る工程と、この洗浄した軽層を遠心分離処理して残存する水を含む不純物を除去する工程と、遠心分離処理した後の軽層を濾過器によって濾過して残存する不純物を更に除去する工程とを実施してディーゼル燃料を得ることを特徴とする。
【0013】
本発明のディーゼル燃料の製造方法にあっては、グリセリンと脂肪酸とが結合した対象油を含む原料油とメチルアルコールとをアルカリ触媒を介在させた状態で反応させて、前記脂肪酸をメチルエステル化するエステル交換反応を行わせる。
【0014】
そして、メチルエステル化された脂肪酸を主に含む軽層と、エステル交換反応によって脂肪酸が分離したグリセリンを主に含む第1重層とに分離させた後、当該第1重層を除去することによって軽層を得る。この工程は二層分離法によって実施することができ、第1重層は、例えば二層を形成させたタンクの底部から排出させることによって除去することができる。なお、第1重層の除去は、前記タンクの上方から挿入した管にて吸引することによっても実施できる。
【0015】
次に、得られた軽層を洗浄水で洗浄して、水溶性の不純物を洗浄水中へ溶解除去するととも軽層より重い比重の不純物を洗浄水中へ沈降除去するが、少なくともこの洗浄工程において、軽層及び洗浄水を、メチルアルコールの沸点を超え、軽層が突沸する温度未満の適宜温度になすことによって、軽層に残存するメチルアルコールを気化除去する。具体的には、軽層及び洗浄水を65℃〜80℃内の適宜温度に加熱する。
【0016】
なお、このような軽層の加熱は、洗浄工程以外に、後述する凝集・沈殿工程及び/又は酸性処理においても実施することができる。
そして、洗浄した軽層と洗浄水を主に含む第2重層とに分離させ、当該第2重層を除去することによって殆どの水分を除去し、洗浄した軽層を得る。
【0017】
更に、この洗浄した軽層を遠心分離処理して残存する水を含む不純物を除去し、遠心分離処理した後の軽層を濾過器によって濾過して残存する不純物を更に除去してディーゼル燃料を得る。
【0018】
前述したように、軽層が突沸する温度未満の適宜温度でメチルアルコールを気化除去し、略室温で実施することができる遠心分離法により水分を除去している。このように、ディーゼル燃料を製造する全工程を、80℃以下の比較的低い温度範囲内で実施いているため、当該温度範囲での耐久性及び安全性の基準を満たすように製造設備を設計することができ、設備コストが廉価である。また、軽層が突沸する温度未満の適宜温度でメチルアルコールを気化除去するため、突沸に対応した設計が不要であり、設備コストを更に廉価にすることができるとともに、メチルアルコールの気化除去操作中、軽層の突沸が発生しないため、気化除去操作に熟練を要さない。
また、遠心分離処理した後に濾過器で濾過しているため、濾過操作を円滑に行うことができる。
【0019】
一方、洗浄工程により不純物を除去した後、なお残存する不純物を遠心分離及び濾過にて除去するため、濾過助剤が不要であり、高品質のディーゼル燃料を可及的に高い歩留まりで廉価に製造することができる。
【0020】
(2)また、本発明に係るディーゼル燃料の製造方法は必要に応じて、前記洗浄工程を実施するのに先立って、前記軽層に凝集剤溶液を添加して不純物を凝集・沈殿させる凝集・沈殿工程と、凝集剤溶液によって処理された処理済の軽層と凝集剤溶液及び沈殿物を主に含む第3重層とに分離させ、当該第3重層を除去して処理済の軽層を得る工程とを実施し、前記洗浄工程は、この処理済の軽層に対して実施することを特徴とする。
【0021】
本発明のディーゼル燃料の製造方法にあっては、前述した洗浄工程を実施するのに先立って、軽層に凝集剤溶液を添加して不純物を凝集・沈殿させ、凝集剤溶液によって処理された処理済の軽層と凝集剤溶液及び沈殿物を主に含む第3重層とに分離させ、この第3重層を除去して処理済の軽層を得る。そして、この処理済の軽層に対して洗浄工程を実施する。
このように、前述した遠心分離及び濾過を行う前に、凝集・沈澱処理を実施するため、純度が高い、更に高品質のディーゼル燃料を得ることができる。
【0022】
このとき、凝集・沈澱処理によって、軽層に含まれる不純物の大部分が沈殿除去されるため、遠心分離処理及び濾過処理に与える負荷を可及的に低減することができ、両処理をより円滑に行うことができる。
また、濾過器を洗浄する間隔が長いため、濾過操作の効率が高い。
【0023】
(3)本発明に係るディーゼル燃料の製造方法は必要に応じて、前記凝集剤溶液として硫酸マグネシウム溶液を用いることを特徴とする。
本発明者は、種々の凝集剤を検討したところ、メチルエステル化した脂肪酸に含まれる不純物を凝集・沈殿させるには、硫酸マグネシウムが最適であるという知見を得た。
【0024】
メチルエステル化した脂肪酸を主に含む軽層に硫酸マグネシウム溶液を添加すると、軽層に含まれる不純物が凝集し、軽層と硫酸マグネシウム溶液を主に含む第3重層とに二層分離させた場合、凝集した不純物が沈殿物として第3重層の底部中へ沈殿する。
このため、第3重層をタンクの底部から排除するのに伴って、沈殿物も除去することができ、凝集した不純物の除去操作を容易に行うことができる。
【0025】
(4)更に、本発明に係るディーゼル燃料の製造方法は必要に応じて、前記凝集・沈殿工程を実施するのに先立って、前記軽層と酸性溶液とを混合して当該軽層を酸性処理し、酸性処理した軽層と酸性溶液を主に含む第4重層とに分離させ、当該第4重層を除去することを特徴とする。
【0026】
本発明のディーゼル燃料の製造方法にあっては、前述した凝集・沈殿工程を実施するのに先立って、軽層と酸性溶液とを混合して当該軽層を酸性処理し、酸性処理した軽層と酸性溶液を主に含む第4重層とに分離させ、当該第4重層を除去する。
【0027】
酸性処理に用いる処理剤としては、希硫酸、希塩酸、酢酸溶液等、種々の酸性溶液を用いることができる。
このように、凝集・沈殿工程を実施するのに先立って、軽層を予め酸性処理しておくことによって、軽層に残留するアルカリ性の不純物によって、軽層がエマルジョン化するのが防止され、軽層の突沸を回避することができるとともに、凝集・沈殿工程以降の各工程を円滑に実施することができる。
【0028】
また、前述した凝集剤は酸性処理に用いる処理剤より単位質量当たりの価格が高いが、本工程を実施した後に凝集・沈殿工程を実施した場合、本工程を省略して凝集・沈殿工程を実施した場合に比べて凝集剤の使用量を少なくすることができるので、ディーゼル燃料を安価に製造することができる。
【0029】
(5)一方、本発明に係るディーゼル燃料は、グリセリンと脂肪酸とが結合した主油を含む原料油とメチルアルコールとをアルカリ触媒を介在させた状態で反応させて前記脂肪酸をメチルエステル化する工程と、メチルエステル化された脂肪酸を主に含む軽層と、脂肪酸が分離したグリセリンを主に含む第1重層とに分離させた後、当該第1重層を除去することによって軽層を得る工程と、軽層を洗浄水で洗浄する洗浄工程とを実施し、少なくとも前記洗浄工程において、軽層及び洗浄水を、メチルアルコールの沸点を超え、軽層が突沸する温度未満の適宜温度になすことによって、軽層に残存するメチルアルコールを気化除去し、更に、洗浄した軽層と洗浄水を主に含む第2重層とに分離させ、当該第2重層を除去して洗浄した軽層を得る工程と、この洗浄した軽層を遠心分離処理して残存する水を含む不純物を除去する工程と、遠心分離処理した後の軽層を濾過器によって濾過して残存する不純物を更に除去する工程とを実施して得たことを特徴とする。
【0030】
本発明のディーゼル燃料にあっては、前述した各工程を実施することによって得たものである。従って、その品質が高く、製造設備に要するコストが低く、歩留まりが高いので廉価である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
(本発明の第1の実施形態)
図1は、本発明に係るディーゼル燃料の製造方法を適用するための設備の構成を説明する説明図であり、図中、2は、原料油を貯留する原料油タンクである。
ここで、原料油としては、食品製造業、外食産業及び一般家庭等から廃棄される廃食用油を主に用いるが、使用前の食用油又は植物性の非食用油等も用いることができる。すなわち、グリセリンに脂肪酸が結合してなる対象油を主に含むものであれば原料油とすることができる。
【0032】
原料油タンク2の上流側には、搬入された原料油を濾過する濾過タンク1が配してあり、濾過タンク1によって天かす及び混入ゴミ等の異物が除去された原料油が原料油タンク2に貯留される。
【0033】
原料油タンク2の下流には、原料油を処理する処理タンク5が配置してあり、原料油タンク2と処理タンク5との間を連絡する原料油ライン41によって、原料油タンク2から処理タンク5へ所要量の原料油が導入されるようになっている。
【0034】
また、処理タンク5の上流側には、エステル交換反応を行うための反応液を貯留する反応液タンク3、処理タンク5内のpHを調整するための調整液を貯留する調整液タンク6、凝集剤を溶解させた凝集剤溶液を貯留する凝集剤タンク7、及び洗浄水を貯留する洗浄水タンク8がそれぞれ設置してある。反応液タンク3と処理タンク5との間には反応液ライン42が介装してあり、該反応液ライン42によって反応液タンク3から処理タンク5内へ、所要量の反応液が導入される。一方、前述した調整液タンク6、凝集剤タンク7、洗浄水タンク8の出側は、処理タンク5から延設した共通ライン43にそれぞれバルブを介して連結してあり、各タンク6,7,8から処理タンク5へ、調整液、凝集剤溶液、洗浄水を各別に所要量だけ導入し得るようになっている。
【0035】
また、調整液タンク6及び凝集剤タンク7には、駆動モータ61,71、回転軸62,72及び撹拌羽根63,63,…、73,73,…が設けてあり、両タンク6,7内の液体を撹拌し得るようになしてある。更に、調整液タンク6、凝集剤タンク7及び洗浄水タンク8にはそれぞれ、ヒータ65,75,85が各タンク6,7,8の周壁を貫通する様態で設けてあり、各ヒータ65,75,85によって対応するタンク6,7,8内の液体を所要の温度に加熱し得るようになっている。
【0036】
この調整液タンク6にはpH2.0程度の希硫酸溶液が貯留されており、ヒータ65によって65℃〜80℃程度に加温されている。なお、pH調製液としては、希硫酸に限らず、希塩酸溶液、又は酢酸溶液等、種々の酸性溶液を用いることができる。
【0037】
また、凝集剤タンク7には、適宜濃度の硫酸マグネシウム溶液が貯留されており、前同様、ヒータ75によって65℃〜80℃程度に加温されている。
更に、洗浄水タンク8には水道水又は地下水等の洗浄水が貯留されており、前同様、ヒータ85によって65℃〜80℃程度に加温されている。
【0038】
前述した反応液タンク3は、倒立円錐形状の底部に円筒状の胴部を連結してなり、上部開口を蓋部材30で塞いである。この蓋部材30上の略中央位置には駆動モータ31が立設してあり、該駆動モータ31の出力軸には、蓋部材30を貫通する回転軸32の基端部が連結してある。回転軸32の先端領域には撹拌羽根33,33,…が取り付けてあり、駆動モータ31の駆動力による回転軸32の回転に伴って撹拌羽根33,33,…が回転駆動して反応液タンク3内の反応液を撹拌するようになっている。
【0039】
前記蓋部材30の周縁部近傍の適宜位置にはアルカリ触媒を投入するためのホッパー36が取り付けてあり、蓋部材30に開設した投入口を通って前記ホッパー36から反応液タンク3内へ所要量のアルカリ触媒を徐々に投入し得るようになしてある。また、前記蓋部材30には、エステル交換を行わせるためのメチルアルコールを投入するためのアルコール流入口38が前記投入口と位置を異ならせて設けてある。
【0040】
なお、反応液タンク3及びホッパー36は、メチルアルコールが外部へ気散しないように封止してある。
ここで、アルカリ触媒としては、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムを用いることができる。
【0041】
このような反応液タンク3によって、エステル交換を行わせるための反応液を調製するには、所要量のアルカリ触媒をホッパー36内へ投入し、また所要量のメチルアルコールを前記アルコール流入口38から反応液タンク3内へ流入させておく。そして、駆動モータ31を作動させて回転軸32及び撹拌羽根33,33,…を回転させながら、前記ホッパー36から反応液タンク3内のメチルアルコール中へ、フレーク状、微粒子状又は粉状のアルカリ触媒を徐々に投入し、アルカリ触媒を沈降させることなくメチルアルコール中に略均一に分散させる。
【0042】
このようにして調製した反応液は、反応液タンク3の底部中央に設けられた吐出口39からバルブを介して反応液ライン42へ吐出され、該反応液ライン42によって処理タンク5へ導入される。なお、反応液タンク3内に反応液が残存している間中、駆動モータ31を作動させて、メチルアルコール中にアルカリ触媒を分散させる。
【0043】
図2は、図1に示した処理タンク5の拡大図である。
図2に示した如く、処理タンク5は、倒立円錐形状の底部に円筒状の胴部を連結してなり、上部開口は蓋部材50によって封止してある。この蓋部材50上には、1又は複数台(図1にあっては2台)の駆動モータ51,51が立設してあり、両駆動モータ51,51の出力軸には、蓋部材50を貫通する回転軸52,52の基端部が連結してある。回転軸52,52の先端領域にはそれぞれ撹拌羽根53,53,…、53,53,…が取り付けてあり、駆動モータ51,51の駆動力による回転軸52,52の回転に伴って撹拌羽根53,53,…、53,53,…が回転駆動して処理タンク5内を撹拌する。
【0044】
この処理タンク5の胴部の内周面には、複数の縦長の邪魔板54,54,…が周方向へ適宜の間隔で突設してあり、該邪魔板54,54,…によって、撹拌羽根53,53,…、53,53,…による撹拌効果を増大させるようになっている。
【0045】
また、処理タンク5の胴部の内周面であって、前記邪魔板54,54,…より下方の位置には、複数のヒータ55,55,…が処理タンク5の周壁を貫通する様態で取り付けてあり、該ヒータ55,55,…によって処理タンク5内の液体を所要の温度に昇温又は保温する。
【0046】
処理タンク5の蓋部材50上の適宜位置には、排気ダクト56a及び排気ファン56bが設置してあり、排気ダクト56aの一端を蓋部材50の排気孔の周囲に連結して、排気ファン56bの駆動によって処理タンク5内の気体を排気ダクト56aを介して外部へ排出するようになしてある。
【0047】
また、前記蓋部材50の適宜位置には反応液を流入させるための反応液口57a、原料油を流入させるための原料油口57b、精製用の液体を流入させるための精製用口57cがそれぞれ設けてあり、反応液口57aには前述した反応液ライン42が、原料油口57bには前述した原料油ライン41が、また精製用口57cには前述した共通ライン43がそれぞれ連結してある。
【0048】
一方、処理タンク5の底部中央に設けられた排出口58には、排出バルブ58a及び剛性筒体の周面の適宜位置に透明部材を嵌合させてなる視認用筒部材59がこの順に連結してあり、排出バルブ58aを開にした場合、処理タンク5から排出される排出物の状態を目視用筒部材59を介して視認し得るようになっている。
【0049】
また、図1に示したように、目視用筒部材59の下流には2つの三方コックがタンデムに連結してあり、両三方コックの下流にはグリセリンを貯留するグリセリン用タンク9が連結してある。
【0050】
一方、前記両三方コックの内の上流側の三方コックには、処理タンク5内で後述する如く粗精製した粗精製油を移送するための粗精製油用ライン44の一端が連結してあり、該粗精製油用ライン44の他端は粗精製油用タンク26に連結してある。
【0051】
粗精製油用タンク26の下流には、遠心分離及び濾過によって粗精製油を仕上げ精製する仕上精製装置27が配設してあり、粗精製油用タンク26と仕上精製装置27との間は粗精製油ライン45によって接続されている。
【0052】
図3は、図1に示した仕上精製装置27の要部構成を示す模式図である。
図3に示した如く、仕上精製装置27には、1又は複数台(図3にあっては1台)の遠心分離機271が配設してあり、粗精製油ライン45から遠心分離機271内へ導入された粗精製油は、そこで連続的に遠心分離され、粗精製油に残留する固形分及び水分等の不純物の大部分が除去されて中間精製油として遠心分離機271から吐出され、中間タンク273に貯留される。
【0053】
かかる遠心分離機271としては、例えば、Fuji Oil チェンジャーFU−80(富士エネルギー株式会社製)を用いることができ、その場合、略3000rpmの回転速度で遠心分離を実施する。
【0054】
中間タンク273の下流には、複数台(図3にあっては4台)の濾過器272,272,…が並列に連結してあり、濾過器272,272,…によって不純物が更に濾過除去されて精製油タンク274に貯留される。
【0055】
かかる濾過器272としては、例えばFN−20型(富士エネルギー株式会社製)を用いることができる。このFN−20型の濾過器272には、ステンレス材製の筒材の周面に直径が1〜10μm程度の複数の細孔を開設してなる複数のフィルターが内蔵されており、各フィルターによって細孔のサイズより大きいサイズの固形分及び水分が除去される。なお、残留する水分は油中水の環境下では粒子状形態であるため、その直径が細孔のサイズより大きい場合は、濾過圧力を適切に調整することによって、前記各フィルターにて除去され得る。
【0056】
精製油タンク274には、開閉コック277を介して循環ライン276の一端が連結してあり、該循環ライン276の他端は前述した粗精製油ライン45に介装された三方コック45aに連結してある。そして、前記開閉コック277及び前記三方コック45aを操作することによって、精製油タンク274に貯留された被精製液を遠心分離機271及び濾過器272へ循環させ得るようになっている。
【0057】
なお、図中、278,279はライン内の液体を移送させるためのポンプである。
このように、遠心分離機271及び濾過器272,272,…に被精製液を循環させることによって、被精製液の精製度を向上させることができ、高純度の精製品を製造することができる。
このようにして仕上げ精製された精製油たるBDFは、図1に示したように、仕上精製装置27から貯留タンク28へ移送され、出荷されるまでそこに貯留されるようになっている。
【0058】
次に、このような製造設備を用いてBDFを製造する方法について説明する。
図4は、本発明に係るディーゼル燃料の製造工程を説明するフローチャートである。
図4に示した如く、原料油を濾過タンク1に導入し、該濾過タンク1によって天かす及び混入ゴミ等の異物を除去する(ステップS1)。
【0059】
異物が除去された原料油は原料油タンク2に貯留されており、その所定量、例えば5000L程度を処理タンク5に流入させた後、ヒータ55,55,…にて原料油を60℃程度まで昇温させ、当該温度に維持させる(ステップS2)。
【0060】
一方、前述した如く反応液タンク3によって、メチルアルコール中へアルカリ触媒を分散させてなる反応液を調製しておく。5000Lの原料油をエステル交換反応させるには、略800Lから略1000Lのメチルアルコールに、例えば略400kgから略500kgの水酸化ナトリウムを分散させる。
【0061】
そして、駆動モータ51,51によって回転軸52,52及び撹拌羽根53,53,…、53,53,…を回転駆動させて、処理タンク5内で所要温度に昇温された原料油をに反応液を撹拌しつつ、反応液タンク3から処理タンク5内へ反応液を徐々に流入させ、略60℃で40分から1時間程度、エステル交換反応を行わせて、次式に示すように、原料油のグリセンリンと結合した脂肪酸をメチルエステル化させて(ステップS3)、脂肪酸とグリセリンとを分離させる。
【0062】
【化1】

【0063】
このようにしてエステル交換反応が終了すると、駆動モータ51,51及びヒータ55,55を停止して処理タンク5内の液体を静置させ、メチルエステル化された脂肪酸を主に含む軽層、及びグリセリンを主に含む重層の二層に分離させ(ステップS4)た後、処理タンク5の排出バルブ58aを適宜解放して、グリセリンを主に含む重層を処理タンク5から排出させ、グリセリン用タンク9へ流入させる(ステップS5)。この間、オペレータは視認用筒部材59を視認し、重層と軽層との界面を確認したタイミングで排出バルブ58aを閉じる。
なお、エステル交換反応後に残ったメチルアルコールの大部分はグリセリンと共に排出されるので、軽層に残留するメチルアルコールの量は少ない。
ここで、前述した容量の原料油及び反応液を用いてエステル交換反応させた場合、排出される重層の容量は略1000Lである。
【0064】
次に、処理タンク5のヒータ55,55を再び動作させて、処理タンク5内に残留させた軽層をメチルアルコールの沸点より高い適宜温度であって軽層が突沸しない適宜範囲の温度、即ち65℃〜80℃程度まで加熱する(ステップS6)。そして、当該軽層が残留するアルカリ性の不純物によってエマルジョン化することを回避するために、軽層を撹拌しつつ、調整液タンク6から処理タンク5内へ、前述した如く65℃〜80℃程度に加熱されたpH調整液を適宜量投入する(ステップS7)。
【0065】
ここで、前述した容量の原料油及び反応液を用いてエステル交換反応させた場合、残留する軽層は略5000Lであり、pH調整液としてpH2程度の希硫酸溶液を用いた場合、例えば1000L程度のpH調整液を投入する。
【0066】
そして、pH調整液を投入してから15分間程度程度、撹拌を続け、これによって軽層を酸性に調整するとともに、pH調整液によって軽層を洗浄した後、駆動モータ51,51及びヒータ55,55を停止して処理タンク5内の液体を静置させ、メチルエステル化された脂肪酸を主に含む軽層、及びpH調整液を主に含む重層の二層に分離させ(ステップS8)た後、処理タンク5の排出バルブ58aを適宜解放して、重層を処理タンク5から排出させる(ステップS9)。
【0067】
前述した如く、1000L程度のpH調整液を投入した場合、これと同程度の容量の廃液が排出され、5000L程度の軽層が残留する。
【0068】
軽層中にはメチルアルコールが残存するが、前述したように軽層を加熱し、メチルアルコールの沸点より高い温度で撹拌することによって、軽層中に残存するメチルアルコールを気化・蒸散させて除去する。この間、排気ファン56bを作動させて、気化したメチルアルコールを処理タンク5から排出させる。
【0069】
このとき、軽層の温度は突沸しない温度に保持されているため、対応する処置を施すことなく軽層の突沸が防止され、軽層のpH調整及び洗浄操作を円滑に実施することができる。
【0070】
次に、処理タンク5のヒータ55,55を再び動作させて、処理タンク5内に残留させた軽層を65℃〜80℃程度まで加熱した(ステップS10)後、石鹸成分といった軽層中に残存する不純物を凝集沈殿させるべく、軽層を撹拌しつつ、凝集剤タンク7から処理タンク5内へ、前述した如く65℃〜80℃程度に加熱された硫酸マグネシウム溶液を適宜量投入する(ステップS11)。
【0071】
0.15質量%の硫酸マグネシウム溶液を用いた場合、5000L程度の軽層に対して1000L程度の硫酸マグネシウム溶液を投入する。
【0072】
硫酸マグネシウム溶液を投入してから2〜3分間程度、撹拌を続けて硫酸マグネシウム溶液と軽層とを十分に混合させた後、ヒータ55,55及び駆動モータ51,51を停止して、凝集物を処理タンク5の底部へ沈殿させるとともに、メチルエステル化された脂肪酸を主に含む軽層、及び硫酸マグネシウム溶液及び沈殿物を主に含む重層の二層に分離させ(ステップS12)、処理タンク5の排出バルブ58aを適宜解放して、重層及び沈殿物を処理タンク5から排出させる(ステップS13)。
この間、前同様、排気ファン56bを作動させて、気化したメチルアルコールを処理タンク5から排出させる。
【0073】
また、前同様、軽層の温度は突沸しない温度に保持されているため、対応する処置を施すことなく軽層の突沸が防止され、凝集剤による不純物の凝集・沈殿が円滑に行われる。
ここで、凝集剤としては硫酸マグネシウムを用いる。後述するように他の凝集剤を用いた場合、軽層に含まれる不純物の凝集能が低い、または凝集物の沈殿能が低いので、不純物を十分に除去することができない。
【0074】
一方、硫酸マグネシウムにあっては、軽層に含まれる不純物の凝集能が高く、また凝集物の沈殿能も高いので、不純物を十分に除去することができ、後述する仕上げ精製作業を円滑に行うことを可能にするのである。
【0075】
次に、処理タンク5のヒータ55,55を再び動作させて、処理タンク5内に残留させた軽層を65℃〜80℃程度、好ましくは75℃〜80℃程度まで加熱した(ステップS14)後、残存する水溶性の不純物を洗浄除去すべく、軽層を撹拌しつつ、洗浄水タンク8から処理タンク5内へ、前述した如く65℃〜80℃程度、好ましくは75℃〜80℃程度に加熱された洗浄水を投入する(ステップS15)。
投入する洗浄水は適宜量でよく、例えば5000Lの軽層に対して洗浄水を500L〜1000L程度投入する。
【0076】
洗浄水を投入してから10〜15分間程度、撹拌を続けて軽層を十分に洗浄して、水溶性の不純物を洗浄水に溶解させた後、ヒータ55,55及び駆動モータ51,51を停止して、メチルエステル化された脂肪酸を主に含む軽層、及び洗浄水を主に含む重層の二層に分離させ(ステップS16)、処理タンク5の排出バルブ58aを適宜解放して、重層を処理タンク5から排出させる(ステップS17)。
この間、前同様、排気ファン56bを作動させて、気化したメチルアルコールを処理タンク5から排出させる。
【0077】
なお、少なくとも洗浄処理とともに行われる加熱・排気処理によって軽層に残留するメチルアルコールは、ディーゼルエンジンに使用可能な値以下まで除去されるが、前述したごとく、酸性処理及び凝集処理とともに加熱・排気処理を行うことによって、メチルアルコールを略完全に除去することができる。
【0078】
また、前同様、軽層の温度は突沸しない温度に保持されているため、対応する処置を施すことなく軽層の突沸が防止されるとともに、洗浄効果が向上し、また軽層と重層との二層分離が円滑になされる。
【0079】
一方、軽層が突沸する温度未満の適宜温度でメチルアルコールを気化除去するため、処理タンク5について突沸に対応した設計が不要であり、設備コストを廉価にすることができるとともに、メチルアルコールの気化除去操作中、軽層の突沸が発生しないため、気化除去操作に熟練を要さない。
なお、洗浄水の排出後に、処理タンク5内の軽層を検査し、洗浄が不足している場合、前述した洗浄水による軽層の洗浄を再び実施する。
以上までの操作によって、軽層の粗精製が終了する。
【0080】
以上のように、処理タンク5でのエステル交換処理及び粗精製処理は、80℃以下の比較的低い温度範囲内で実施されるため、当該温度範囲での耐久性及び安全性の基準を満たすように処理タンク5を設計することができ、処理タンク5に要する設備コストが廉価である。
【0081】
このようにして粗精製された粗精製油を、図3に示した遠心分離機271及び濾過器272,272,…を備える仕上精製装置27に導入し、該仕上精製装置27によって遠心分離及び濾過を行うことによって(ステップS20、ステップS21)、粗精製油に含まれる固形分及び水分等の不純物が除去された精製油を得る。
【0082】
このとき、前述した如く、粗精製の凝集処理によって、軽層に含まれる不純物の大部分が沈殿除去されているため、仕上精製装置27の濾過器272,272,…に目詰まりが発生し難く、仕上げ精製を円滑に行うことができる。また、濾過器272,272,…のフィルターを洗浄する間隔が長いため、濾過操作の効率が高い。
【0083】
一方、二層分離法により凝集沈殿物を除去した後、残存する不純物を遠心分離及び濾過にて除去するため、濾過助剤が不要であり、歩留まりが高い精製油を廉価に製造することができる。
また、粗精製にて凝集処理を行った後、仕上精製にて遠心分離及び濾過を行うため、純度が高い、高品質の精製油を得ることができる。
【0084】
なお、本実施の形態にあっては、軽層にpH調整液を添加することによって酸性処理を実施しているが、本発明はこれに限らず、硫酸マグネシウム溶液の添加・撹拌によって凝集処理と平行して酸性処理を実施するようにしてもよい。これは、硫酸マグネシウム溶液も強酸性側のpHを有し、軽層を酸性処理できるからである。これによって、pH調整液の添加による酸性処理を省略することができる。
一方、pH調整液の添加による酸性処理を独立して実施した場合、価格が比較的高い凝集剤の添加量を少なくすることができるという優れた効果を奏する。
【実施例1】
【0085】
次に、複数種類の凝集剤について凝集・沈殿試験を行った結果について説明する。
表1は、試験に用いた凝集剤の種類及び試験結果を示すものである。表1中、二重丸印は「非常に良い」を示しており、丸印は「良い」を示しており、三角印は「あまり良くない」を示しており、バツ印は「悪い」を示している。なお、横バー印は検出されなかったことを示している。
【0086】
かかる試験の試料には、図4に示したステップS9で得られた軽層を用いた。また、各凝集剤は0.15質量%の溶液とし、定量の軽層に各凝集溶液を軽層:凝集溶液が5:1になるように添加して撹拌した後、所定時間静置し、目視によって凝集性及び沈殿性を判断した。
【0087】
【表1】

【0088】
表1から明らかなように、硫酸マグネシウム以外の各凝集剤にあっては、凝集性が不良であるか、又は凝集性が比較的良好であっても、沈殿性が悪いという結果であった。
これによって、凝集剤としては硫酸マグネシウムの使用が至適であると判断された。
【実施例2】
【0089】
次に、BDFを分析した結果について説明する。
表2は、比較試験により製造されたBDFの分析結果を示すものである。すなわち、比較試験にあっては、図4に示したステップS1からステップS17までは,液体を加熱しない以外は同様の操作を実行し、ステップS17で得られた軽層を110℃に加熱することによって、残存する水分及びメチルエタノールを気化除去した。
【0090】
【表2】

【0091】
表2から明らかな如く、反応性、引火点、流動点、灰分、窒素分及び硫黄分等の各項目に係る値は略良好であったが、残留炭素分が0.13質量%と高く、車載されたディーゼルエンジンには用いることができない品質であった。
【0092】
これに対して、本発明に係る製造方法で得られたBDFにあっては、残留炭素分が0.001質量%程度であり、車載されたディーゼルエンジンにも十分に使用できる品質であった。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明に係るディーゼル燃料の製造方法を適用するための設備の構成を説明する説明図である。
【図2】図1に示した処理タンクの拡大図である。
【図3】図1に示した仕上精製装置の要部構成を示す模式図である。
【図4】本発明に係るディーゼル燃料の製造工程を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0094】
2 原料油タンク
3 反応液タンク
5 処理タンク
6 調整液タンク
7 凝集剤タンク
8 洗浄水タンク
27 仕上精製装置
51 駆動モータ
55 ヒータ
56a 排気ダクト
56b 排気ファン
271 遠心分離機
272 濾過器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリセリンと脂肪酸とが結合した対象油を含む原料油とメチルアルコールとをアルカリ触媒を介在させた状態で反応させて前記脂肪酸をメチルエステル化する工程と、メチルエステル化された脂肪酸を主に含む軽層と、脂肪酸が分離したグリセリンを主に含む第1重層とに分離させた後、当該第1重層を除去することによって軽層を得る工程と、軽層を洗浄水で洗浄する洗浄工程とを実施してディーゼル燃料を製造する方法において、
少なくとも前記洗浄工程において、軽層及び洗浄水を、メチルアルコールの沸点を超え、軽層が突沸する温度未満の適宜温度になすことによって、軽層に残存するメチルアルコールを気化除去し、
更に、
洗浄した軽層と洗浄水を主に含む第2重層とに分離させ、当該第2重層を除去して洗浄した軽層を得る工程と、
この洗浄した軽層を遠心分離処理して残存する水を含む不純物を除去する工程と、
遠心分離処理した後の軽層を濾過器によって濾過して残存する不純物を更に除去する工程と
を実施してディーゼル燃料を得ることを特徴とするディーゼル燃料の製造方法。
【請求項2】
前記洗浄工程を実施するのに先立って、
前記軽層に凝集剤溶液を添加して不純物を凝集・沈殿させる凝集・沈殿工程と、
凝集剤溶液によって処理された処理済の軽層と凝集剤溶液及び沈殿物を主に含む第3重層とに分離させ、当該第3重層を除去して処理済の軽層を得る工程と
を実施し、
前記洗浄工程は、この処理済の軽層に対して実施する請求項1記載のディーゼル燃料の製造方法。
【請求項3】
前記凝集剤溶液として硫酸マグネシウム溶液を用いる請求項2記載のディーゼル燃料の製造方法。
【請求項4】
前記凝集・沈殿工程を実施するのに先立って、
前記軽層と酸性溶液とを混合して当該軽層を酸性処理し、酸性処理した軽層と酸性溶液を主に含む第4重層とに分離させ、当該第4重層を除去する請求項1から3のいずれかに記載のディーゼル燃料の製造方法。
【請求項5】
グリセリンと脂肪酸とが結合した主油を含む原料油とメチルアルコールとをアルカリ触媒を介在させた状態で反応させて前記脂肪酸をメチルエステル化する工程と、
メチルエステル化された脂肪酸を主に含む軽層と、脂肪酸が分離したグリセリンを主に含む第1重層とに分離させた後、当該第1重層を除去することによって軽層を得る工程と、
軽層を洗浄水で洗浄する洗浄工程とを実施し、
少なくとも前記洗浄工程において、軽層及び洗浄水を、メチルアルコールの沸点を超え、軽層が突沸する温度未満の適宜温度になすことによって、軽層に残存するメチルアルコールを気化除去し、
更に、
洗浄した軽層と洗浄水を主に含む第2重層とに分離させ、当該第2重層を除去して洗浄した軽層を得る工程と、
この洗浄した軽層を遠心分離処理して残存する水を含む不純物を除去する工程と、
遠心分離処理した後の軽層を濾過器によって濾過して残存する不純物を更に除去する工程と
を実施して得たことを特徴とするディーゼル燃料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−1329(P2010−1329A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−159175(P2008−159175)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【出願人】(508183944)株式会社万作の花 (1)
【Fターム(参考)】