説明

デイタイムランニングランプおよび車両用前照灯

【課題】デイタイムランニングランプ専用の車載スペースを必要とすることなく、かつ低コストで、車両に搭載することができるデイタイムランニングランプを提供する。
【解決手段】デイタイムランニングランプ50を、ヘッドランプ用のリフレクタユニット20に組み込まれた灯具ユニットとして構成し、専用の車載スペースを不要とする。また、このデイタイムランニングランプ50を、リフレクタユニット20のリフレクタ24を前後方向に貫通するようにして延びる光軸Ax2上に、該リフレクタ24の前方側において前方へ向けて配置された発光素子52と、その前方側において、光軸Ax2上に配置されたメインレンズ54と、その後面周縁部から後方へ向けて延びるようにしてリング状に形成され、発光素子52からの光を、リフレクタ24の反射面24aに入射させるように偏向出射させるサブレンズ56とを備えた構成とし、これにより大きい発光面積を確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、昼間走行時に車両前方へ向けて光照射を行うように構成されたデイタイムランニングランプ、および、このデイタイムランニングランプが組み込まれた車両用前照灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デイタイムランニングランプは、車両の走行安全性を高めるため、昼間走行時に車両前方へ向けて光照射を行い、これにより対向車ドライバや歩行者等に自車の存在を知らせるように構成された灯具である。
【0003】
このデイタイムランニングランプは、例えば「特許文献1」に記載されているように、ヘッドランプ(すなわち車両用前照灯)とは別の独立した灯具として、例えば車両のフロントバンパ等に取り付けられた状態で用いられるようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−164909号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のデイタイムランニングランプは、ヘッドランプとは別の独立した灯具として構成されているので、これを搭載するための専用の車載スペースが必要となり、また製品コストおよび取付コストが高くついてしまう、という問題がある。
【0006】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、デイタイムランニングランプ専用の車載スペースを必要とすることなく、かつ低コストで、車両に搭載することができるデイタイムランニングランプ、および、このデイタイムランニングランプが組み込まれた車両用前照灯を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は、デイタイムランニングランプを、ヘッドランプ用のリフレクタユニットに灯具ユニットとして組み込むようにした上で、その構成に工夫を施すことにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0008】
すなわち、本願発明に係るデイタイムランニングランプは、
昼間走行時に車両前方へ向けて光照射を行うように構成されたデイタイムランニングランプにおいて、
車両前後方向に延びる第1の光軸上に配置された光源と、この光源からの光を前方へ向けて反射させるリフレクタと、を備えてなるヘッドランプ用のリフレクタユニットに組み込まれた灯具ユニットとして構成され、
上記リフレクタを前後方向に貫通するようにして延びる第2の光軸上に、該リフレクタの前方側において前方へ向けて配置された発光素子と、
この発光素子の前方側において、上記第2の光軸上に配置されたメインレンズと、
このメインレンズの後面周縁部から後方へ向けて延びるようにしてリング状に形成され、上記発光素子からの光を上記リフレクタの反射面に入射させるように偏向出射させるサブレンズと、を備えてなることを特徴とするものである。
【0009】
上記「リフレクタユニット」は、ヘッドランプ用のリフレクタユニットであれば、ハイビーム用配光パターンを形成するためのリフレクタユニットであってもよいし、ロービーム用配光パターンを形成するためのリフレクタユニットであってもよい。
【0010】
上記「第2の光軸」は、リフレクタを前後方向に貫通するようにして延びる軸線であれば、必ずしも第1の光軸と平行な軸線でなくてもよい。
【0011】
上記「発光素子」の種類は特に限定されるものではなく、例えば、発光ダイオードやレーザダイオード等が採用可能である。また、この「発光素子」の発光チップの形状や大きさは特に限定されるものではない。
【0012】
上記「メインレンズ」は、発光素子の前方側において、第2の光軸上に配置されたものであれば、その具体的なレンズ形状や発光素子からの距離等については特に限定されるものではない。
【0013】
上記「サブレンズ」は、メインレンズの後面周縁部から後方へ向けて延びるようにしてリング状に形成されたものであれば、メインレンズと一体で形成されていてもよいし別体で形成されていてもよい。また、この「サブレンズ」は、発光素子からの光を、リフレクタの反射面に入射させるように偏向出射させる構成となっていれば、その具体的なレンズ形状については特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0014】
上記構成に示すように、本願発明に係るデイタイムランニングランプは、ヘッドランプ用のリフレクタユニットに組み込まれた灯具ユニットとして構成されているので、従来のようにヘッドランプとは別にデイタイムランニングランプを搭載するための専用の車載スペースを不要とすることができる。
【0015】
その上で、本願発明に係るデイタイムランニングランプは、上記リフレクタユニットのリフレクタを前後方向に貫通するようにして延びる第2の光軸上に、該リフレクタの前方側において前方へ向けて配置された発光素子と、この発光素子の前方側において、第2の光軸上に配置されたメインレンズと、このメインレンズの後面周縁部から後方へ向けて延びるようにしてリング状に形成され、発光素子からの光を、リフレクタの反射面に入射させるように偏向出射させるサブレンズとを備えた構成となっているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0016】
すなわち、メインレンズにより、発光素子からの光を適宜偏向制御して出射させることにより、対向車ドライバや歩行者等に対して自車の存在を知らせるのに必要な角度範囲にわたって光照射を行うことができる。
【0017】
その際、このメインレンズからの出射光のみにより、デイタイムランニングランプとしての光照射を行うようにすると、メインレンズの前方投影面積が小さい場合には、その輝度が高くなってしまう。一方、この輝度を、対向車ドライバや歩行者等にグレアを与えてしまうおそれがない程度まで低くするためには、メインレンズの前方投影面積をかなり大きくする必要がある。しかしながら、このようにした場合には、リフレクタユニットにおけるデイタイムランニングランプの占有スペースが大きくなってしまうので、リフレクタユニットの機能に支障を生じてしまうこととなる。
【0018】
その点、本願発明においては、リング状に形成されたサブレンズにより、発光素子からの光を偏向出射させてリフレクタの反射面に入射させるようになっているので、このリフレクタの反射面からの反射光とメインレンズからの出射光とにより、デイタイムランニングランプとして要求される光照射を行うようにすることができる。そして、このようにした場合、デイタイムランニングランプとしての発光面は、メインレンズとリフレクタの反射面の一部とで構成されることとなるので、かなり大きい発光面積を確保することができる。したがって、メインレンズの前方投影面積を小さくしても、その輝度が高くなりすぎないようにした上で、デイタイムランニングランプとしての機能を確保することができる。またこれにより、リフレクタユニットにおけるデイタイムランニングランプの占有スペースを小さく抑えることができるので、リフレクタユニットの機能に支障を生じてしまわないようにすることができる。
【0019】
このように本願発明によれば、デイタイムランニングランプ専用の車載スペースを必要とすることなく、かつ低コストで、車両に搭載することができるデイタイムランニングランプを得ることができる。
【0020】
上記構成において、サブレンズから偏向出射した発光素子からの光の光線束内に、ヘッドランプ用のリフレクタユニットにおける光源の発光中心が含まれるようにすれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0021】
すなわち、ヘッドランプ用のリフレクタユニットにおいて、その光源からの光に対して行われるリフレクタによる反射制御は、第1の光軸が延びる車両前後方向を基準として行われるので、発光素子からの光の一部が光源の発光中心を通るようにしておくことにより、リフレクタによる反射制御が、発光素子からの光の一部に対しても、光源からの光に対するのと同様にして行われるようにすることができる。そしてこれにより、リフレクタで反射した発光素子からの光により形成される配光パターンを、車両正面方向を中心とする配光パターンして形成することが容易に可能となり、これをデイタイムランニングランプの配光パターンに適したものとすることができる。
【0022】
上記構成において、サブレンズに、発光素子からの光を、少なくとも前後方向に拡散させるための表面処理を施しておくようにすれば、サブレンズから偏向出射した発光素子からの光を、リフレクタの反射面に対してより広範囲にわたって入射させることができ、これにより一層大きい発光面積を確保することができる。
【0023】
この場合における「少なくとも前後方向に拡散させるための表面処理」の種類は特に限定されるものではなく、例えばシボ加工やフロスト加工等が採用可能である。
【0024】
上記構成において、第2の光軸が、第1の光軸の略鉛直下方に位置する構成とすれば、ヘッドランプ用のリフレクタユニットの光源で発生した熱により、デイタイムランニングランプの発光素子の特性が変化してしまうおそれをなくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0026】
図1は、本願発明の一実施形態に係るデイタイムランニングランプ50が組み込まれたリフレクタユニット20を備えたヘッドランプ10を示す正面図である。また、図2は、そのリフレクタユニット20を示す、図1のII−II線断面図である。
【0027】
これらの図に示すように、ヘッドランプ10は、ハイビーム用ヘッドランプであって、ランプボディ12と素通し状の透明カバー14とで形成される灯室内に、リフレクタユニット20が光軸調整可能に収容された構成となっている。
【0028】
リフレクタユニット20は、車両前後方向に延びる第1の光軸Ax1上に配置された光源22aと、この光源22aからの光を前方へ向けて反射させるリフレクタ24とを備えてなり、光軸調整が完了した段階では、その光軸Ax1が車両前後方向と一致するようになっている。
【0029】
光源22aは、ハロゲンバルブ22のフィラメントであって、光軸Ax1に沿って延びる線分光源として構成されている。
【0030】
リフレクタ24は、光軸Ax1上における光源22aの発光中心Aを焦点とするとともに光軸Ax1を中心軸とする回転放物面上に複数の反射素子24sが縦縞状に形成された反射面24aを有している。そして、このリフレクタ24は、その反射面24aの各反射素子24sにおいて、光源22aからの光を、上下方向に関しては光軸Ax1と平行な光として反射させるとともに、水平方向に関しては光軸Ax1の左右両側へ拡散する光として反射させ、これにより横長のハイビーム用配光パターンを形成するようになっている。
【0031】
なお、このリフレクタ24においては、その反射面24aの後頂部に形成されたバルブ挿着孔24bに、ハロゲンバルブ22が挿入固定された構成となっている。また、このリフレクタ24の反射面24aは、その外周縁形状が円形形状に設定されており、その外径はφ150mm程度の大きさに設定されている。
【0032】
デイタイムランニングランプ50は、光軸Ax1の下方においてリフレクタユニット20に組み込まれた小型の灯具ユニットとして構成されており、昼間走行時に車両前方へ向けて光照射を行うようになっている。
【0033】
このデイタイムランニングランプ50は、リフレクタ24を前後方向に貫通するようにして延びる第2の光軸Ax2上に、該リフレクタ24の前方側において前方へ向けて配置された発光素子52と、この発光素子52の前方側において、光軸Ax2上に配置されたメインレンズ54と、このメインレンズ54の後面周縁部から後方へ向けて延びるようにしてリング状に形成されたサブレンズ56と、これらを支持するヒートシンク58とからなっている。
【0034】
光軸Ax2は、光軸Ax1の鉛直下方において、該光軸Ax1と平行に延びる軸線として設定されている。
【0035】
発光素子52は、白色発光ダイオードであって、横長矩形状(具体的には、縦1mm横4mm程度の長方形)の発光面を有する発光チップ52aと、この発光チップ52aを支持する基板52bとからなっている。その際、この発光素子52の発光チップ52aは、その発光面を覆うように形成された薄膜により封止されている。そして、この発光素子52は、その発光チップ52aの発光中心を、光軸Ax2上に位置させるとともに、前後方向に関して光源22aの発光中心Aとリフレクタ24の前端縁との間(具体的には両者の略中央)に位置させるようにして、ヒートシンク58に位置決め固定されている。
【0036】
メインレンズ54とサブレンズ56とは、ガラスレンズとして互いに一体で形成されており、その最外径はφ26mm程度の大きさに設定されている。そして、これらメインレンズ54およびサブレンズ56は、サブレンズ56の後端面においてヒートシンク58に位置決め固定されている。
【0037】
メインレンズ54は、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸レンズであって、その焦点距離は10mm程度の値に設定されており、そのレンズ厚も10mm程度の値に設定されている。このメインレンズ54の後方側表面から発光チップ52aの発光面までの距離は、5mm程度の値に設定されている。したがって、発光チップ52aは、メインレンズ54の後側焦点よりも前方側に位置することとなる。そしてこれにより、メインレンズ54は、発光チップ52aからの光を、上下方向および左右方向にある程度拡散する光(具体的には光軸Ax2からの拡散角度が20〜25°程度の拡散光)として出射させるようになっている。
【0038】
サブレンズ56は、その内周面が、光軸Ax2を中心とする円筒面で構成されており、その外周面が、光軸Ax2上における発光チップ52aの発光中心近傍の点を中心とする球面で構成されている。そして、このサブレンズ56は、発光チップ52aからの光を偏向出射させて、リフレクタ24の反射面24aに入射させるようになっている。
【0039】
具体的には、このサブレンズ56は、発光チップ52aからの光を、サブレンズ56が存在しないと仮定した場合に発光チップ52aからの光が進む方向よりも後方側へ偏向させるとともに、前後方向に僅かに拡散させるようにして、出射させる構成となっている。その際、このサブレンズ56は、その前端縁近傍部位からの出射光を、光軸Ax2と直交する平面に対してやや前方へ向かう光とするとともに、その後端縁近傍部位からの出射光を、光軸Ax2と直交する平面に対してやや後方へ向かう光とするようになっている。そして、このサブレンズ56からの偏向出射光は、該サブレンズ56が、光源22aの発光中心Aとリフレクタ24の前端縁との間に位置していることから、リフレクタ24の反射面24aにおける外周縁近傍領域に入射することとなる。
【0040】
この反射面24aの上端縁近傍領域に入射した発光チップ52aからの光は、下向きの光として反射し、その下端縁近傍領域に入射した発光チップ52aからの光は、上向きの光として反射し、その左端縁近傍領域に入射した発光チップ52aからの光は、右向きの光として反射し、その右端縁近傍領域に入射した発光チップ52aからの光は、左向きの光として反射することとなる。その際、この反射面24aにおける各領域からの反射光は、該反射面24aに複数の反射素子24sが形成されていることから、左右両側に拡散する光となる。
【0041】
ヒートシンク58は、リフレクタ24における光軸Ax1の下方領域に形成された開口部24cに挿入固定されており、その前端面において発光素子52およびサブレンズ56を位置決め支持するようになっている。なお、このヒートシンク58の後端面には複数の放熱フィン58aが形成されている。
【0042】
図3は、デイタイムランニングランプ50が点灯した状態にあるリフレクタユニット20を示す正面図である。
【0043】
同図に示すように、デイタイムランニングランプ50が点灯すると、その発光素子52の発光チップ52aの発光により、そのメインレンズ54が、図中網線で示すように発光領域Z1として明るく光って見えるとともに、リフレクタ24の反射面24aにおける外周縁近傍領域が、図中網線で示すよう発光領域Z2として光って見える。その際、発光領域Z2は、リフレクタ24の反射面24aにおける下端縁寄りの部分が狭く、その上端縁寄りの部分が広い上下不均一な環状領域となる。
【0044】
図4(a)は、本実施形態に係るデイタイムランニングランプ50から前方へ照射される光により、灯具前方10mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンP1を透視的に示す図である。
【0045】
この配光パターンP1は、同図(b)に示す配光パターンPAと同図(c)に示す配光パターンPBとの合成配光パターンとして形成されている。
【0046】
配光パターンPAは、発光素子52の発光チップ52aから出射して、メインレンズ54を介して前方へ出射した光により形成される配光パターンである。
【0047】
この配光パターンPAは、灯具正面方向の消点であるH−Vを中心にして、略円形状に拡がる配光パターンとして形成されており、その最高光度は800cd程度の値に設定されている。
【0048】
この配光パターンPAが、H−Vを中心にして、略円形状に拡がる配光パターンとして形成されるのは、発光チップ52aがメインレンズ54の後側焦点よりも前方側に位置しており、該発光チップ52aからの光がメインレンズ54によって上下方向および左右方向に均等に拡散する拡散光として出射することによるものである。その際、この配光パターンPAの中心領域が、やや横長に形成されるのは、発光チップ52aが横長矩形状の発光面を有していることによるものである。
【0049】
なお、この配光パターンPAにおいて、その輪郭を示す曲線と略同心状に形成された複数の曲線は等光度曲線であって、該配光パターンPAがその外周縁から中心へ向けて徐々に明るくなることを示している。
【0050】
一方、配光パターンPBは、発光素子52の発光チップ52aから出射して、サブレンズ56を介してリフレクタ24の反射面24aに入射した後、この反射面24aで前方へ向けて反射した光により形成される配光パターンである。
【0051】
この配光パターンPBは、H−Vを中心にして、やや横長の略逆A字形の配光パターンとして形成されている。その際、この配光パターンPBは、H−Vを中心とする略逆三角形の領域が中抜けとなっており、配光パターンPAの周縁部と重複する配光パターンとして形成されている。
【0052】
この配光パターンPBが、H−Vを中心とする略逆A字形の配光パターンとして形成されるのは、デイタイムランニングランプ50のサブレンズ56が、光軸Ax1の鉛直下方において光源22aの発光中心Aよりも前方側に配置されるとともに、このサブレンズ56からの偏向出射光が、リフレクタ24の反射面24aにおける外周縁近傍領域に入射することによるものである。その際、この配光パターンPBが、やや横長の配光パターンとして形成されるのは、発光チップ52aが横長矩形状の発光面を有しているとともに、リフレクタ24の反射面24aに複数の反射素子24sが形成されていることによるものである。
【0053】
なお、この配光パターンPBは、配光パターンPAの周縁部の明るさと同程度の明るさの配光パターンとして形成されている。
【0054】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0055】
本実施形態に係るデイタイムランニングランプ50は、ヘッドランプ10用のリフレクタユニット20に組み込まれた灯具ユニットとして構成されているので、ヘッドランプ10とは別にデイタイムランニングランプ50を搭載するための専用の車載スペースを不要とすることができる。
【0056】
その上で、本実施形態に係るデイタイムランニングランプ50は、リフレクタユニット20のリフレクタ24を前後方向に貫通するようにして延びる光軸Ax2上に、該リフレクタ24の前方側において前方へ向けて配置された発光素子52と、この発光素子52の前方側において、光軸Ax2上に配置されたメインレンズ54と、このメインレンズ54の後面周縁部から後方へ向けて延びるようにしてリング状に形成され、発光素子52からの光を、リフレクタ24の反射面24aに入射させるように偏向出射させるサブレンズ56とを備えた構成となっているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0057】
すなわち、メインレンズ54により、発光素子52からの光を適宜偏向制御して出射させることにより、対向車ドライバや歩行者等に対して自車の存在を知らせるのに必要な角度範囲にわたって光照射を行うことができる。
【0058】
その際、このメインレンズ54からの出射光のみにより、デイタイムランニングランプ50としての光照射を行うようにすると、このメインレンズ54の前方投影面積は小さいので、その輝度が高くなってしまう。一方、この輝度を、対向車ドライバや歩行者等にグレアを与えてしまうおそれがない程度まで低くするためには、メインレンズ54の前方投影面積を本実施形態の場合よりもかなり大きくする必要がある。しかしながら、このようにした場合には、リフレクタユニット20におけるデイタイムランニングランプ50の占有スペースが大きくなってしまうので、リフレクタユニット20の機能に支障を生じてしまうこととなる。
【0059】
その点、本実施形態においては、リング状に形成されたサブレンズ56により、発光素子52からの光を偏向出射させてリフレクタ24の反射面24aに入射させるようになっているので、このリフレクタ24の反射面24aからの反射光とメインレンズ54からの出射光とにより、デイタイムランニングランプ50として要求される光照射を行うようにすることができる。そして、このようにした場合、デイタイムランニングランプ50としての発光面は、メインレンズ54の発光領域Z1とリフレクタ24の反射面24aの一部の発光領域Z2とで構成されることとなるので、かなり大きい発光面積を確保することができる。したがって、メインレンズ54の前方投影面積を小さくしても、その輝度が高くなりすぎないようにした上で、デイタイムランニングランプ50としての機能を確保することができる。またこれにより、リフレクタユニット20におけるデイタイムランニングランプ50の占有スペースを小さく抑えることができるので、リフレクタユニット20の機能に支障を生じてしまわないようにすることができる。
【0060】
このように本実施形態によれば、デイタイムランニングランプ専用の車載スペースを必要とすることなく、かつ低コストで、車両に搭載することができるデイタイムランニングランプ50を得ることができる。
【0061】
その際、本実施形態においては、デイタイムランニングランプ50の光軸Ax2が、リフレクタユニット20の光軸Ax1の鉛直下方に位置しているので、リフレクタユニット20の光源22aで発生した熱により、デイタイムランニングランプ50の発光素子52の特性が変化してしまうおそれをなくすことができる。
【0062】
なお、上記実施形態においては、メインレンズ54とサブレンズ56とは、ガラスレンズとして互いに一体で形成されているものとして説明したが、これらをガラスレンズとする代わりに樹脂レンズとすることも可能であり、また、これらを別体で形成して接着等により互いに固定するようにしてもよい。
【0063】
また、上記実施形態においては、発光素子52の発光チップ52aが、横長矩形状の発光面を有しているものとして説明したが、これ以外の形状(例えば正方形等)の発光面を有する構成とすることももちろん可能である。
【0064】
さらに、上記実施形態においては、リフレクタ24の反射面24aが円形の外周縁形状を有しており、その外径がφ150mm程度の大きさに設定されているものとして説明したが、これ以外の外周縁形状および外径寸法を有する構成とすることももちろん可能である。
【0065】
なお、上記実施形態においては、リフレクタユニット20の光源22aが、ハロゲンバルブ22のフィラメントであるものとして説明したが、放電バルブの発光部等である場合においても、上記実施形態の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0066】
また、上記実施形態においては、デイタイムランニングランプ50が、ハイビーム用のリフレクタユニット20に組み込まれる場合について説明したが、ロービーム用のリフレクタユニットに組み込まれる場合においても、上記実施形態の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0067】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0068】
まず、上記実施形態の第1変形例について説明する。
【0069】
図5および6は、本変形例に係るデイタイムランニングランプ150が組み込まれたリフレクタユニット120を示す、図2および3と同様の図である。
【0070】
これらの図に示すように、本変形例に係るデイタイムランニングランプ150の基本的な構成は上記実施形態の場合と同様であるが、そのヒートシンク158の構成およびリフレクタユニット120への組込み位置が上記実施形態の場合と異なっている。また、本変形例に係るリフレクタユニット120は、その基本的な構成については上記実施形態のリフレクタユニット20と同様であるが、そのリフレクタ124の構成が上記実施形態のリフレクタ24と一部異なっている。
【0071】
なお、本変形例に係るデイタイムランニングランプ150およびリフレクタユニット120において、上記実施形態に係るデイタイムランニングランプ50およびリフレクタユニット20と同一の部分には、同一の参照符号を付してその説明は省略する。
【0072】
本変形例に係るデイタイムランニングランプ150は、その発光素子52における発光チップ52aの発光中心を、前後方向に関して光源22aの発光中心Aと略同じ位置に位置させるようにして配置されている。これに伴い、このデイタイムランニングランプ150のヒートシンク158は、上記実施形態のヒートシンク58よりも前後長が短くなっている。このデイタイムランニングランプ150におけるそれ以外の構成は、上記実施形態のデイタイムランニングランプ50の場合と同様である。
【0073】
本変形例に係るリフレクタユニット120は、そのリフレクタ124の反射面24aにおけるデイタイムランニングランプ150の下方に位置する部分に、反射面24aとは異なる反射面124dが形成されている。これは、反射面24aにおけるデイタイムランニングランプ150の下方に位置する部分には、光源22aからの光がほとんど入射しないことから、この部分をデイタイムランニングランプ150専用の反射面124dとして有効に利用するようにしたものである。なお、リフレクタ124における反射面24aの構成自体は、上記実施形態の場合と全く同様である。
【0074】
本変形例に係るデイタイムランニングランプ150の発光素子52は、その発光チップ52aが、前後方向に関して光源22aの発光中心Aと略同じ位置にあり、かつ、この発光素子52のやや前方に位置するサブレンズ56が、その前端縁近傍部位からの出射光を、光軸Ax2と直交する平面に対してやや前方へ向かう光とするとともに、その後端縁近傍部位からの出射光を、光軸Ax2と直交する平面に対してやや後方へ向かう光とするようになっていることから、サブレンズ56からリフレクタ124の反射面24aへ向けて偏向出射した発光チップ52aからの光の光線束内には、リフレクタユニット20における光源22aの発光中心Aが含まれることとなる。そして、このサブレンズ56からの偏向出射光は、リフレクタ124の反射面24aにおける外周縁近傍領域よりも内周側の領域に入射し、これにより図6に網線で示す領域が発光領域Z3として光って見えることとなる。
【0075】
そしてこれにより、サブレンズ56から偏向出射して反射面24aに入射した発光チップ52aからの光は、この反射面24aにおいて、上下方向に関してはやや下向きで上下両側に拡散するとともに水平方向に関しては左右両側に拡散する拡散光として反射することとなる。その際、この反射面24aにおける各領域からの反射光は、該反射面24aに複数の反射素子24sが形成されていることから、左右両側により大きく拡散する光となる。
【0076】
一方、リフレクタ124の反射面124dは、発光チップ52aの発光中心を第1焦点とするとともに該反射面124dの前方に位置する点を第2焦点とする回転楕円面で構成されている。これにより、サブレンズ56から偏向出射して、この反射面124dに入射した発光チップ52aからの光は、上下方向に関してはやや上向きで上下両側に拡散するとともに水平方向に関しては左右両側に拡散する拡散光として反射することとなる。そして、この反射面124dは、図6に網線で示す領域が発光領域Z4として光って見えることとなる。
【0077】
図7(a)は、本変形例に係るデイタイムランニングランプ150から前方へ照射される光により、灯具前方10mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンP2を透視的に示す図である。
【0078】
この配光パターンP2は、同図(b)に示す配光パターンPAと同図(c)に示す2つの配光パターンPC、PDとの合成配光パターンとして形成されている。
【0079】
配光パターンPAに関しては、上記実施形態の配光パターンP1における配光パターンPAと全く同様である。
【0080】
配光パターンPCは、発光素子52の発光チップ52aから出射して、サブレンズ56を介してリフレクタ124の反射面24aに入射した後、この反射面24aで前方へ向けて反射した光により形成される配光パターンである。
【0081】
この配光パターンPCは、H−Vのやや下方に位置する点を中心とする横長の配光パターンとして形成されている。
【0082】
この配光パターンPCが、H−Vのやや下方に位置する点を中心とする配光パターンとして形成されるのは、サブレンズ56からリフレクタ124の反射面24aへ向けて偏向出射した発光チップ52aからの光の光線束内に、リフレクタユニット20における光源22aの発光中心Aが含まれており、かつ、この反射面24aからの反射光が、やや下向きになることによるものである。また、この配光パターンPCが、横長の配光パターンとして形成されるのは、発光チップ52aが横長矩形状の発光面を有しており、かつ、反射面24aからの反射光が、複数の反射素子24sにより、上下方向よりも左右両側により大きく拡散することによるものである。
【0083】
一方、配光パターンPDは、発光素子52の発光チップ52aから出射して、サブレンズ56を介してリフレクタ124の反射面124dに入射した後、この反射面124dで前方へ向けて反射した光により形成される配光パターンである。
【0084】
この配光パターンPDは、H−Vのやや上方に位置する点を中心とするやや横長の配光パターンとして形成されている。
【0085】
この配光パターンPDは、H−Vのやや上方に位置する点を中心とする配光パターンとして形成されるのは、リフレクタ124の反射面124dが、発光チップ52aの発光中心を第1焦点とするとともに該反射面124dの前方に位置する点を第2焦点とする回転楕円面で構成されており、この反射面124dからの反射光が、やや上向きになることによるものである。また、この配光パターンPDが、やや横長の配光パターンとして形成されるのは、発光チップ52aが横長矩形状の発光面を有していることによるものである。
【0086】
本変形例の構成を採用することにより、リフレクタ24の反射面24aで反射した発光素子52からの光により形成される配光パターンPCを、中抜けの配光パターンではなく、H−V近傍の点を中心とする配光パターンして形成することが容易に可能となり、これをデイタイムランニングランプ50の配光パターンに適したものとすることができる。
【0087】
しかも、本変形例に係るリフレクタユニット120は、そのリフレクタ124の反射面24aにおけるデイタイムランニングランプ150の下方に位置する部分に、反射面24aとは異なる反射面124dが形成されているので、この反射面124dで反射した発光素子52からの光により形成される配光パターンPDを、H−V近傍の点を中心とするとともに配光パターンPCと部分的に重複する配光パターンして形成することができ、これにより、全体としての配光パターンP2を、デイタイムランニングランプ50の配光パターンとしてより好ましいものとすることができる。
【0088】
また、このようにリフレクタ124の反射面24aにおけるデイタイムランニングランプ150の下方に位置する部分をデイタイムランニングランプ150専用の反射面124dとして利用することにより、上述したように配光パターンP2をより好ましい配光パターンとすることができるだけでなく、発光素子52からの光に対する光束利用率を一層高めることができる。
【0089】
次に、上記実施形態の第2変形例について説明する。
【0090】
図8および9は、本変形例に係るデイタイムランニングランプ250が組み込まれたリフレクタユニット20を示す、図2および3と同様の図である。
【0091】
これらの図に示すように、本変形例に係るデイタイムランニングランプ250の基本的な構成は上記実施形態の場合と同様であるが、そのサブレンズ256の構成が上記実施形態の場合と一部異なっている。
【0092】
なお、本変形例に係るデイタイムランニングランプ250およびリフレクタユニット20において、上記実施形態に係るデイタイムランニングランプ50およびリフレクタユニット20と同一の部分には、同一の参照符号を付してその説明は省略する。
【0093】
本変形例に係るデイタイムランニングランプ250は、そのサブレンズ256に、発光素子52からの光を、少なくとも前後方向に拡散させるための表面処理が施されている。具体的には、このサブレンズ256は、その外周面が、シボ加工が施されたシボ加工面256aとして形成されており、これにより発光素子52からの光を全方向に僅かずつ拡散する光として出射させるようになっている。
【0094】
本変形例の構成を採用することにより、サブレンズ256から偏向出射した発光素子52からの光を、リフレクタ24の反射面24aに対してより広範囲にわたって入射させることができ、これにより一層大きい発光面積を確保することができる。
【0095】
すなわち、図9に網線で示す領域が発光領域Z5として光って見えることとなる。この発光領域Z5は、上記実施形態のように、サブレンズ256の外周面にシボ加工が施されていないとした場合の発光領域(すなわち図9に2点鎖線で境界線を示す上記実施形態の発光領域Z2)に比して、より大きい発光面積を確保することができる。
【0096】
なお、上記実施形態および変形例において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本願発明の一実施形態に係るデイタイムランニングランプが組み込まれたリフレクタユニットを備えたヘッドランプを示す正面図
【図2】上記リフレクタユニットを示す、図1のII−II線断面図
【図3】上記デイタイムランニングランプが点灯した状態にある上記リフレクタユニットを示す正面図
【図4】(a)は、上記デイタイムランニングランプから前方へ照射される光により、灯具前方10mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを透視的に示す図、(b)、(c)は、上記配光パターンを構成する配光パターンをそれぞれ示す図
【図5】上記実施形態の第1変形例に係るデイタイムランニングランプが組み込まれたリフレクタユニットを示す、図2と同様の図
【図6】上記第1変形例に係るデイタイムランニングランプが組み込まれたリフレクタユニットを示す、図3と同様の図
【図7】上記第1変形例の作用を示す、図4と同様の図
【図8】上記実施形態の第2変形例に係るデイタイムランニングランプが組み込まれたリフレクタユニットを示す、図2と同様の図
【図9】上記第2変形例に係るデイタイムランニングランプが組み込まれたリフレクタユニットを示す、図3と同様の図
【符号の説明】
【0098】
10 ヘッドランプ
12 ランプボディ
14 透明カバー
20、120 リフレクタユニット
22 ハロゲンバルブ
22a 光源
24、124 リフレクタ
24a、124d 反射面
24b バルブ挿着孔
24c 開口部
24s 反射素子
50、150、250 デイタイムランニングランプ
52 発光素子
52a 発光チップ
52b 基板
54 メインレンズ
56、256 サブレンズ
58、158 ヒートシンク
58a 放熱フィン
256a シボ加工面
A 発光中心
Ax1 第1の光軸
Ax2 第2の光軸
Z1、Z2、Z3、Z4、Z5 発光領域
P1、P2、PA、PB、PC、PD 配光パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昼間走行時に車両前方へ向けて光照射を行うように構成されたデイタイムランニングランプにおいて、
車両前後方向に延びる第1の光軸上に配置された光源と、この光源からの光を前方へ向けて反射させるリフレクタと、を備えてなるヘッドランプ用のリフレクタユニットに組み込まれた灯具ユニットとして構成され、
上記リフレクタを前後方向に貫通するようにして延びる第2の光軸上に、該リフレクタの前方側において前方へ向けて配置された発光素子と、
この発光素子の前方側において、上記第2の光軸上に配置されたメインレンズと、
このメインレンズの後面周縁部から後方へ向けて延びるようにしてリング状に形成され、上記発光素子からの光を上記リフレクタの反射面に入射させるように偏向出射させるサブレンズと、を備えてなることを特徴とするデイタイムランニングランプ。
【請求項2】
上記サブレンズから偏向出射した上記発光素子からの光の光線束内に、上記光源の発光中心が含まれるように構成されている、ことを特徴とする請求項1記載のデイタイムランニングランプ。
【請求項3】
上記サブレンズに、上記発光素子からの光を、少なくとも前後方向に拡散させるための表面処理が施されている、ことを特徴とする請求項1または2記載のデイタイムランニングランプ。
【請求項4】
上記第2の光軸が、上記第1の光軸の略鉛直下方に位置している、ことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載のデイタイムランニングランプ。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか記載のデイタイムランニングランプが組み込まれてなる、ことを特徴とする車両用前照灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−211980(P2009−211980A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−54567(P2008−54567)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】