デキャッパピン
【課題】簡単な構成で、マイクロチューブのキャップを取り外すことができるとともに、キャップ位置の誤差や、振動や衝撃が発生しても確実に取り外すことができ、キャップに強く挿入する必要がなく破損を防止するデキャッパピンを提供すること。
【解決手段】キャップの上面テーパ穴に挿入される挿入部112が本体部111から先端に向けて細くなるテーパ状に形成され、挿入部112の側面には、周方向の180°対向した位置に本体部111側から先端まで延びるように設けられた2箇所の平面状の切欠部113を有すること。
【解決手段】キャップの上面テーパ穴に挿入される挿入部112が本体部111から先端に向けて細くなるテーパ状に形成され、挿入部112の側面には、周方向の180°対向した位置に本体部111側から先端まで延びるように設けられた2箇所の平面状の切欠部113を有すること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロチューブの開口部を密封するキャップの上面テーパ穴に挿入されてキャップを取り外すデキャッパピンに関し、特に、創薬(drug discovery)、すなわち、医学、生物工学および薬学において薬剤を発見したり設計したりするプロセスにおいて、創薬用試料を封入するために使用される保管プレートに収容されている複数のマイクロチューブを密封するキャップを取り外すデキャッパピンに関する。
【背景技術】
【0002】
創薬研究の分野においては、大量の試料を低温で保管したり分析したりする実験を高効率で行う必要がある。
そのため、試料を溶解した溶液を創薬用マイクロチューブと呼ばれる円筒状または四角筒状の小型容器に封入し、この創薬用マイクロチューブをSBS(Society for Biomolecular Screening)規格に準拠した16行×24列の合計384個の区画を有する保管プレート(以下、「384プレート」と称す)に縦列収容し、保管や搬送を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような384プレートは、区画のピッチが4.5mmときわめて短いため、384プレートに収容されている創薬用マイクロチューブの開口部の密封に着脱可能なキャップを用いた場合、機械によるキャップの装着、取り外しが、きわめて困難であった。
【0004】
そこで、本発明者らは、図7、図8に示すように、デキャッパピン510を保管プレート502のピッチ間隔に離間させて平行かつ直線状に固設して軸方向に移動させるとともに、傾倒部材により傾倒させながら創薬用マイクロチューブからキャップを外す、キャップ外し装置500を開発した(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
創薬用マイクロチューブ530の開口部531を密封するキャップ520は、図9に示すように、その上部に上面側に開口する上面テーパ穴521が設けられており、該上面テーパ穴521に合致するテーパ状の挿入部を有するデキャッパピンを挿入することで、キャップと係合することが可能となっている。
【0006】
このデキャッパピン510は、図10に示すように、外形円柱状の本体部511と、該本体部511の先端側に設けられキャップ520の上面テーパ穴521に挿入される挿入部512とを有しており、キャップ520の上面テーパ穴521の内面形状とデキャッパピン510の挿入部512の外面形状は、同一のテーパ形状に形成されている。
【0007】
デキャッパピン510の挿入部512をキャップ520の上面テーパ穴521に強く挿入することで、図10に示すように、キャップ520の上面テーパ穴521の内面が押し拡げられる。
この時、キャップ520の弾性でデキャッパピン510の挿入部512が締め付けられ、デキャッパピン510とキャップ520が固定される。
【0008】
この締め付けにより、デキャッパピン510を傾倒させることでキャップ520がマイクロチューブの開口部から抜け、そのまま上方に引き上げることで取り外すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−33061号公報(第6頁、図1)
【特許文献2】特開2010−096627号公報(全頁、全図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前述したデキャッパピン510によれば、挿入部512の外面形状がキャップ520の上面テーパ穴521の内面形状と同一のテーパ形状に形成されているため、デキャッパピン510の挿入部512のキャップ520の上面テーパ穴521への挿入が不十分な場合、摩擦力を十分得ることができず、また、デキャッパピン510の挿入部512がキャップ520の上面テーパ穴521から僅かでも抜ける方向に移動すると、摩擦力が急激に低下するという問題があった。
【0011】
そして、このようなデキャッパピン510を用いたキャップ外し装置500で自動的にキャップ520を取り外す場合、キャップ位置の誤差や、振動や衝撃によって、キャップ520の取り外しミスが頻発するという問題があった。
【0012】
また、複数のデキャッパピン510を同時に昇降させて複数のキャップ520を同時に取り外す場合、全てのデキャッパピン510を全てのキャップ520に均等に挿入することが困難なため、キャップ520の取り外しミスを低減するためには、デキャッパピン510をキャップ520に強い力で深く挿入する必要があり、そのために装置を大型化して挿入力を増加させる必要があるとともに、キャップ位置が高いキャップ520が存在するとデキャッパピン510が過度に深く挿入されてキャップ520が破損するという問題があった。
【0013】
そこで、本発明が解決しようとする技術的課題、すなわち、本発明の目的は、簡単な構成で、マイクロチューブのキャップを取り外すことができるとともに、キャップ位置の誤差や、振動や衝撃が発生しても確実に取り外すことができ、キャップに強く挿入する必要がなく破損を防止するデキャッパピンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本請求項1に係る発明は、外形円柱状の本体部と、該本体部の先端側に設けられマイクロチューブの開口部を密封するキャップの上面テーパ穴に挿入される挿入部とを有するデキャッパピンであって、前記挿入部が、前記本体部から先端に向けて細くなるテーパ状に形成され、前記挿入部の先端の直径が、前記キャップの上面テーパ穴の入口部の最大径より小さく、かつ、前記キャップの上面テーパ穴の奥部の最小径より大きく、前記挿入部の側面には、周方向の180°対向した位置に本体側から先端まで延びるように設けられた2箇所の平面状の切欠部を有することにより、前記課題を解決したものである。
【0015】
本請求項2に係る発明は、請求項1に係るデキャッパピンの構成に加えて、前記挿入部のテーパ形状が、キャップの上面テーパ穴よりも大きな傾斜を有していることにより、前記課題を解決したものである。
【0016】
本請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に係るデキャッパピンの構成に加えて、前記挿入部の先端側には、前記2箇所の平面状の切欠部以外の位置に設けられる突起部を有することにより、前記課題をさらに解決したものである。
【0017】
本請求項4に係る発明は、マイクロチューブのキャップを取り外すキャップ外し装置であって、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のデキャッパピンを一列に複数併設し、プレートに縦立収容されたマイクロチューブに対して前記デキャッパピンを昇降自在かつ傾倒自在に設けたことにより、前記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0018】
本請求項1に係るデキャッパピンは、外形円柱状の本体部と、該本体部の先端側に設けられマイクロチューブの開口部を密封するキャップの上面テーパ穴に挿入される挿入部とを有するデキャッパピンであって、挿入部が本体部から先端に向けて細くなるテーパ状に形成され、挿入部の先端の直径が、キャップの上面テーパ穴の入口部の最大径より小さく、かつ、キャップの上面テーパ穴の奥部の最小径より大きく、挿入部の側面には、周方向の180°対向した位置に本体側から先端まで延びるように設けられた2箇所の平面状の切欠部を有することにより、キャップの上面テーパ穴にデキャッパピンの挿入部を挿入した際に、平面状の切欠部以外の部分でのみ、キャップの上面テーパ穴の内面を押し拡げることとなる。
【0019】
このため、挿入方向の力を大きくすることなく大きな締め付け力を得ることができる。
また、デキャッパピンの差込量や差込位置に誤差が生じても、キャップの変形により吸収されて締め付け力の低下が抑制されるため、キャップを確実に取り外すことができる。
また、デキャッパピンを強い力で深く挿入する必要がないため、キャップの破損を防止することができる。
【0020】
本請求項2に係るデキャッパピンによれば、請求項1に係るデキャッパピンが奏する効果に加えて、挿入部のテーパ形状が、キャップの上面テーパ穴よりも大きな傾斜を有していることにより、デキャッパピンの挿入部のテーパ角度を、局所的に大きく変形したキャップの上面テーパ穴の内面のテーパ角度に近い角度とすることが可能となるため、デキャッパピンとキャップとの位置の誤差や、振動や衝撃が発生しても挿入状態が変化することが抑制され、摩擦力が急激に低下することなくキャップを確実に取り外すことができる。
【0021】
本請求項3に係るデキャッパピンによれば、請求項1または請求項2に係るデキャッパピンが奏する効果に加えて、挿入部の先端側には、前記2箇所の平面状の切欠部以外の位置に設けられる突起部を有することにより、先端の突起部がキャップの上面テーパ穴の内面に食い込むように局所的に変形させて、デキャッパピンの挿入方向で固定力をさらに向上することができるため、さらにキャップを確実に取り外すことができる。
【0022】
本請求項4に係るキャップ外し装置によれば、マイクロチューブのキャップを取り外すキャップ外し装置であって、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のデキャッパピンを一列に複数併設し、プレートに縦立収容されたマイクロチューブに対してデキャッパピンを昇降自在かつ傾倒自在に設けたことにより、整列保持されたマイクロチューブのキャップを、複数まとめて取り外すことができるとともに、各デキャッパピンと各キャップとの位置の誤差があっても、複数のキャップを確実に取り外すことができる。
また、デキャッパピンを強い力で深く挿入する必要がないため、複数のデキャッパピンを昇降・傾倒させる機構も小型化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のデキャッパピンの全体斜視図。
【図2】図1のデキャッパピンの側面図。
【図3】図1のデキャッパピンの正面図。
【図4】図2のA−A断面図。
【図5】本発明のデキャッパピンの作用の平面説明図。
【図6】本発明のデキャッパピンの作用の一部断面説明図。
【図7】従来のキャップ外し装置の全体斜視図。
【図8】従来のキャップ外し装置の側面動作図。
【図9】従来のマイクロチューブおよびキャップの斜視図。
【図10】従来のデキャッパピンをキャップに挿入した際の断面図。
【図11】従来のデキャッパピンの作用説明図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のデキャッパピンは、外形円柱状の本体部と、該本体部の先端側に設けられマイクロチューブの開口部を密封するキャップの上面テーパ穴に挿入される挿入部とを有するデキャッパピンであって、挿入部が本体部から先端に向けて細くなるテーパ状に形成され、挿入部の先端の直径が、キャップの上面テーパ穴の入口部の最大径より小さく、かつ、キャップの上面テーパ穴の奥部の最小径より大きく、挿入部の側面には、周方向の180°対向した位置に本体側から先端まで延びるように設けられた2箇所の平面状の切欠部を有し、簡単な構成で、マイクロチューブのキャップを取り外すことができるとともに、キャップ位置の誤差や、振動や衝撃が発生しても確実に取り外すことができ、キャップに強く挿入する必要がなく破損を防止するものであれば、その具体的な実施の態様は、如何なるものであっても何ら構わない。
【0025】
また、本発明のキャップ外し装置は、マイクロチューブのキャップを取り外すキャップ外し装置であって、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のデキャッパピンを一列に複数併設し、プレートに縦立収容されたマイクロチューブに対してデキャッパピンを昇降自在かつ傾倒自在に設け、簡単な構成で、マイクロチューブのキャップを取り外すことができるとともに、キャップ位置の誤差や、振動や衝撃が発生しても複数のキャップを確実に取り外すことができ、キャップに強く挿入する必要がなく破損を防止するものであれば、その具体的な実施の態様は、如何なるものであっても何ら構わない。
【実施例】
【0026】
本発明の一実施例であるデキャッパピン110は、図1乃至図4に示すように、外形円柱状の本体部111と、該本体部111の先端側に設けられマイクロチューブの開口部を密封するキャップの上面テーパ穴に挿入される挿入部112とを有している。
【0027】
挿入部112は、本体部111から先端に向けて細くなるテーパ状に形成されるとともに、側面の周方向の180°対向した位置に本体部111側から先端まで延びるように2箇所の平面状の切欠部113が設けられている。
本実施例では、2箇所の平面状の切欠部113は、互いに平行(テーパ角度が0°)であるが、先端に向けて互いに近づく(テーパ角度を有する)ように形成されていても良い。
【0028】
挿入部112の先端側には、2箇所の平面状の切欠部113以外の位置に、周方向に延びる突起部114を有している。
なお、本実施例では、挿入部112の突起部114より先端側は、R形状に面取りがなされているが、当該面取りはなくても良く、突起部114が挿入部112の最先端に設けられても良い。
また、本実施例では、突起部114が周方向に延びているが、周方向の長さが短い凸形状として、複数箇所、あるいは、1箇所のみに設けられても良い。
【0029】
挿入部112の先端の直径は、図6に示すように、キャップ120の上面テーパ穴121の入口部の最大径より小さく、かつ、キャップ120の上面テーパ穴121の奥部の最小径より大きく形成されている。
【0030】
挿入部112のテーパ形状は、キャップ120の上面テーパ穴121よりも大きな傾斜を有している、すなわち、挿入部112のテーパ角が上面テーパ穴121のテーパ角度よりαだけ大きく形成されている。
【0031】
以上のように構成された本実施例のデキャッパピン110の動作について、図5、図6に基づいて説明する。
キャップ120の上面テーパ穴121にデキャッパピン110の挿入部112が挿入されると、キャップ120の上面テーパ穴121の内面が押し拡げられる。
【0032】
このとき、デキャッパピン110の挿入部112には2箇所の平面状の切欠部113が形成されているため、図5に示すように、平面状の切欠部113以外の部分でキャップ120を変形させ、デキャッパピン110の挿入部112を締め付ける力が局所的に大きくなる。
【0033】
このことで、デキャッパピン110の挿入部112をキャップ120の上面テーパ穴121に強く挿入することなく、挿入部112と上面テーパ穴121の内面との摩擦力を大きくしつつ、キャップ120の破損を防止することができる。
【0034】
また、その形状から、デキャッパピン110とキャップ120との位置の誤差や、振動や衝撃によるズレが発生しても、キャップ120がデキャッパピン110の挿入部112を締め付ける力は変動が少ない。
この状態で、デキャッパピン110を傾倒させることでキャップ120がマイクロチューブの開口部から抜け、そのまま上方に引き上げることで、マイクロチューブからキャップ120を確実に取り外すことができる。
【0035】
また、挿入部112のテーパ形状が、キャップ120の上面テーパ穴121よりも大きな傾斜を有していることで、図6に示すように、キャップ120がデキャッパピン110の挿入部112の平面状の切欠部113以外の部分で局所的に変形した際に、上面テーパ穴121の内面のテーパ角度は、挿入部112のテーパ角度に近い角度となる。
【0036】
このことで、デキャッパピン110とキャップ120との位置の誤差や、振動や衝撃が発生しても挿入状態が変化することが抑制され、キャップ120がデキャッパピン110の挿入部112を締め付ける力がさらに変動しにくくなる。
【0037】
さらに、デキャッパピン110の挿入部112の先端側に設けられた突起部114は、図6に示すように、キャップ120の上面テーパ穴121の内面に局所的に食い込むように変形させて係合状態となるため、デキャッパピン110の挿入部112とキャップ120の上面テーパ穴121の内面とが挿入方向でさらに強固に固定される。
【0038】
図7に示すような、従来のキャップ外し装置500において、前述したようなデキャッパピン110を、従来のデキャッパピン510に代えて一列に複数併設することで、キャップ外し装置を構成することができる。
このとき、2箇所の平面状の切欠部113がデキャッパピン110の傾倒方向と平行となるように配置される。
【0039】
このことで、プレートに縦立収容されたマイクロチューブに対してデキャッパピン110を昇降自在かつ傾倒自在とすることができ、整列保持されたマイクロチューブのキャップ120を、複数まとめて取り外すことができる。
また、前述したように、デキャッパピン110を強い力で挿入せずに確実に固定できるため、複数のデキャッパピン110を昇降させる機構も小型化することが可能となる。
【0040】
以上のように、本発明のデキャッパピン110によれば、簡単な構成で、マイクロチューブのキャップを取り外すことができるとともに、キャップ位置の誤差や、振動や衝撃が発生しても確実に取り外すことができ、キャップに強く挿入する必要がなく破損を防止するなど、その効果は甚大である。
【符号の説明】
【0041】
500 ・・・キャップ外し装置
501 ・・・キャップ押し下げピン
502 ・・・整列プレート
110、510 ・・・デキャッパピン
111、511 ・・・本体部
112、512 ・・・挿入部
113 ・・・切欠部
114 ・・・突起部
120、520 ・・・キャップ
121、521 ・・・上面テーパ穴
530 ・・・マイクロチューブ
531 ・・・開口部
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロチューブの開口部を密封するキャップの上面テーパ穴に挿入されてキャップを取り外すデキャッパピンに関し、特に、創薬(drug discovery)、すなわち、医学、生物工学および薬学において薬剤を発見したり設計したりするプロセスにおいて、創薬用試料を封入するために使用される保管プレートに収容されている複数のマイクロチューブを密封するキャップを取り外すデキャッパピンに関する。
【背景技術】
【0002】
創薬研究の分野においては、大量の試料を低温で保管したり分析したりする実験を高効率で行う必要がある。
そのため、試料を溶解した溶液を創薬用マイクロチューブと呼ばれる円筒状または四角筒状の小型容器に封入し、この創薬用マイクロチューブをSBS(Society for Biomolecular Screening)規格に準拠した16行×24列の合計384個の区画を有する保管プレート(以下、「384プレート」と称す)に縦列収容し、保管や搬送を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような384プレートは、区画のピッチが4.5mmときわめて短いため、384プレートに収容されている創薬用マイクロチューブの開口部の密封に着脱可能なキャップを用いた場合、機械によるキャップの装着、取り外しが、きわめて困難であった。
【0004】
そこで、本発明者らは、図7、図8に示すように、デキャッパピン510を保管プレート502のピッチ間隔に離間させて平行かつ直線状に固設して軸方向に移動させるとともに、傾倒部材により傾倒させながら創薬用マイクロチューブからキャップを外す、キャップ外し装置500を開発した(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
創薬用マイクロチューブ530の開口部531を密封するキャップ520は、図9に示すように、その上部に上面側に開口する上面テーパ穴521が設けられており、該上面テーパ穴521に合致するテーパ状の挿入部を有するデキャッパピンを挿入することで、キャップと係合することが可能となっている。
【0006】
このデキャッパピン510は、図10に示すように、外形円柱状の本体部511と、該本体部511の先端側に設けられキャップ520の上面テーパ穴521に挿入される挿入部512とを有しており、キャップ520の上面テーパ穴521の内面形状とデキャッパピン510の挿入部512の外面形状は、同一のテーパ形状に形成されている。
【0007】
デキャッパピン510の挿入部512をキャップ520の上面テーパ穴521に強く挿入することで、図10に示すように、キャップ520の上面テーパ穴521の内面が押し拡げられる。
この時、キャップ520の弾性でデキャッパピン510の挿入部512が締め付けられ、デキャッパピン510とキャップ520が固定される。
【0008】
この締め付けにより、デキャッパピン510を傾倒させることでキャップ520がマイクロチューブの開口部から抜け、そのまま上方に引き上げることで取り外すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−33061号公報(第6頁、図1)
【特許文献2】特開2010−096627号公報(全頁、全図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前述したデキャッパピン510によれば、挿入部512の外面形状がキャップ520の上面テーパ穴521の内面形状と同一のテーパ形状に形成されているため、デキャッパピン510の挿入部512のキャップ520の上面テーパ穴521への挿入が不十分な場合、摩擦力を十分得ることができず、また、デキャッパピン510の挿入部512がキャップ520の上面テーパ穴521から僅かでも抜ける方向に移動すると、摩擦力が急激に低下するという問題があった。
【0011】
そして、このようなデキャッパピン510を用いたキャップ外し装置500で自動的にキャップ520を取り外す場合、キャップ位置の誤差や、振動や衝撃によって、キャップ520の取り外しミスが頻発するという問題があった。
【0012】
また、複数のデキャッパピン510を同時に昇降させて複数のキャップ520を同時に取り外す場合、全てのデキャッパピン510を全てのキャップ520に均等に挿入することが困難なため、キャップ520の取り外しミスを低減するためには、デキャッパピン510をキャップ520に強い力で深く挿入する必要があり、そのために装置を大型化して挿入力を増加させる必要があるとともに、キャップ位置が高いキャップ520が存在するとデキャッパピン510が過度に深く挿入されてキャップ520が破損するという問題があった。
【0013】
そこで、本発明が解決しようとする技術的課題、すなわち、本発明の目的は、簡単な構成で、マイクロチューブのキャップを取り外すことができるとともに、キャップ位置の誤差や、振動や衝撃が発生しても確実に取り外すことができ、キャップに強く挿入する必要がなく破損を防止するデキャッパピンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本請求項1に係る発明は、外形円柱状の本体部と、該本体部の先端側に設けられマイクロチューブの開口部を密封するキャップの上面テーパ穴に挿入される挿入部とを有するデキャッパピンであって、前記挿入部が、前記本体部から先端に向けて細くなるテーパ状に形成され、前記挿入部の先端の直径が、前記キャップの上面テーパ穴の入口部の最大径より小さく、かつ、前記キャップの上面テーパ穴の奥部の最小径より大きく、前記挿入部の側面には、周方向の180°対向した位置に本体側から先端まで延びるように設けられた2箇所の平面状の切欠部を有することにより、前記課題を解決したものである。
【0015】
本請求項2に係る発明は、請求項1に係るデキャッパピンの構成に加えて、前記挿入部のテーパ形状が、キャップの上面テーパ穴よりも大きな傾斜を有していることにより、前記課題を解決したものである。
【0016】
本請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に係るデキャッパピンの構成に加えて、前記挿入部の先端側には、前記2箇所の平面状の切欠部以外の位置に設けられる突起部を有することにより、前記課題をさらに解決したものである。
【0017】
本請求項4に係る発明は、マイクロチューブのキャップを取り外すキャップ外し装置であって、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のデキャッパピンを一列に複数併設し、プレートに縦立収容されたマイクロチューブに対して前記デキャッパピンを昇降自在かつ傾倒自在に設けたことにより、前記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0018】
本請求項1に係るデキャッパピンは、外形円柱状の本体部と、該本体部の先端側に設けられマイクロチューブの開口部を密封するキャップの上面テーパ穴に挿入される挿入部とを有するデキャッパピンであって、挿入部が本体部から先端に向けて細くなるテーパ状に形成され、挿入部の先端の直径が、キャップの上面テーパ穴の入口部の最大径より小さく、かつ、キャップの上面テーパ穴の奥部の最小径より大きく、挿入部の側面には、周方向の180°対向した位置に本体側から先端まで延びるように設けられた2箇所の平面状の切欠部を有することにより、キャップの上面テーパ穴にデキャッパピンの挿入部を挿入した際に、平面状の切欠部以外の部分でのみ、キャップの上面テーパ穴の内面を押し拡げることとなる。
【0019】
このため、挿入方向の力を大きくすることなく大きな締め付け力を得ることができる。
また、デキャッパピンの差込量や差込位置に誤差が生じても、キャップの変形により吸収されて締め付け力の低下が抑制されるため、キャップを確実に取り外すことができる。
また、デキャッパピンを強い力で深く挿入する必要がないため、キャップの破損を防止することができる。
【0020】
本請求項2に係るデキャッパピンによれば、請求項1に係るデキャッパピンが奏する効果に加えて、挿入部のテーパ形状が、キャップの上面テーパ穴よりも大きな傾斜を有していることにより、デキャッパピンの挿入部のテーパ角度を、局所的に大きく変形したキャップの上面テーパ穴の内面のテーパ角度に近い角度とすることが可能となるため、デキャッパピンとキャップとの位置の誤差や、振動や衝撃が発生しても挿入状態が変化することが抑制され、摩擦力が急激に低下することなくキャップを確実に取り外すことができる。
【0021】
本請求項3に係るデキャッパピンによれば、請求項1または請求項2に係るデキャッパピンが奏する効果に加えて、挿入部の先端側には、前記2箇所の平面状の切欠部以外の位置に設けられる突起部を有することにより、先端の突起部がキャップの上面テーパ穴の内面に食い込むように局所的に変形させて、デキャッパピンの挿入方向で固定力をさらに向上することができるため、さらにキャップを確実に取り外すことができる。
【0022】
本請求項4に係るキャップ外し装置によれば、マイクロチューブのキャップを取り外すキャップ外し装置であって、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のデキャッパピンを一列に複数併設し、プレートに縦立収容されたマイクロチューブに対してデキャッパピンを昇降自在かつ傾倒自在に設けたことにより、整列保持されたマイクロチューブのキャップを、複数まとめて取り外すことができるとともに、各デキャッパピンと各キャップとの位置の誤差があっても、複数のキャップを確実に取り外すことができる。
また、デキャッパピンを強い力で深く挿入する必要がないため、複数のデキャッパピンを昇降・傾倒させる機構も小型化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のデキャッパピンの全体斜視図。
【図2】図1のデキャッパピンの側面図。
【図3】図1のデキャッパピンの正面図。
【図4】図2のA−A断面図。
【図5】本発明のデキャッパピンの作用の平面説明図。
【図6】本発明のデキャッパピンの作用の一部断面説明図。
【図7】従来のキャップ外し装置の全体斜視図。
【図8】従来のキャップ外し装置の側面動作図。
【図9】従来のマイクロチューブおよびキャップの斜視図。
【図10】従来のデキャッパピンをキャップに挿入した際の断面図。
【図11】従来のデキャッパピンの作用説明図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のデキャッパピンは、外形円柱状の本体部と、該本体部の先端側に設けられマイクロチューブの開口部を密封するキャップの上面テーパ穴に挿入される挿入部とを有するデキャッパピンであって、挿入部が本体部から先端に向けて細くなるテーパ状に形成され、挿入部の先端の直径が、キャップの上面テーパ穴の入口部の最大径より小さく、かつ、キャップの上面テーパ穴の奥部の最小径より大きく、挿入部の側面には、周方向の180°対向した位置に本体側から先端まで延びるように設けられた2箇所の平面状の切欠部を有し、簡単な構成で、マイクロチューブのキャップを取り外すことができるとともに、キャップ位置の誤差や、振動や衝撃が発生しても確実に取り外すことができ、キャップに強く挿入する必要がなく破損を防止するものであれば、その具体的な実施の態様は、如何なるものであっても何ら構わない。
【0025】
また、本発明のキャップ外し装置は、マイクロチューブのキャップを取り外すキャップ外し装置であって、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のデキャッパピンを一列に複数併設し、プレートに縦立収容されたマイクロチューブに対してデキャッパピンを昇降自在かつ傾倒自在に設け、簡単な構成で、マイクロチューブのキャップを取り外すことができるとともに、キャップ位置の誤差や、振動や衝撃が発生しても複数のキャップを確実に取り外すことができ、キャップに強く挿入する必要がなく破損を防止するものであれば、その具体的な実施の態様は、如何なるものであっても何ら構わない。
【実施例】
【0026】
本発明の一実施例であるデキャッパピン110は、図1乃至図4に示すように、外形円柱状の本体部111と、該本体部111の先端側に設けられマイクロチューブの開口部を密封するキャップの上面テーパ穴に挿入される挿入部112とを有している。
【0027】
挿入部112は、本体部111から先端に向けて細くなるテーパ状に形成されるとともに、側面の周方向の180°対向した位置に本体部111側から先端まで延びるように2箇所の平面状の切欠部113が設けられている。
本実施例では、2箇所の平面状の切欠部113は、互いに平行(テーパ角度が0°)であるが、先端に向けて互いに近づく(テーパ角度を有する)ように形成されていても良い。
【0028】
挿入部112の先端側には、2箇所の平面状の切欠部113以外の位置に、周方向に延びる突起部114を有している。
なお、本実施例では、挿入部112の突起部114より先端側は、R形状に面取りがなされているが、当該面取りはなくても良く、突起部114が挿入部112の最先端に設けられても良い。
また、本実施例では、突起部114が周方向に延びているが、周方向の長さが短い凸形状として、複数箇所、あるいは、1箇所のみに設けられても良い。
【0029】
挿入部112の先端の直径は、図6に示すように、キャップ120の上面テーパ穴121の入口部の最大径より小さく、かつ、キャップ120の上面テーパ穴121の奥部の最小径より大きく形成されている。
【0030】
挿入部112のテーパ形状は、キャップ120の上面テーパ穴121よりも大きな傾斜を有している、すなわち、挿入部112のテーパ角が上面テーパ穴121のテーパ角度よりαだけ大きく形成されている。
【0031】
以上のように構成された本実施例のデキャッパピン110の動作について、図5、図6に基づいて説明する。
キャップ120の上面テーパ穴121にデキャッパピン110の挿入部112が挿入されると、キャップ120の上面テーパ穴121の内面が押し拡げられる。
【0032】
このとき、デキャッパピン110の挿入部112には2箇所の平面状の切欠部113が形成されているため、図5に示すように、平面状の切欠部113以外の部分でキャップ120を変形させ、デキャッパピン110の挿入部112を締め付ける力が局所的に大きくなる。
【0033】
このことで、デキャッパピン110の挿入部112をキャップ120の上面テーパ穴121に強く挿入することなく、挿入部112と上面テーパ穴121の内面との摩擦力を大きくしつつ、キャップ120の破損を防止することができる。
【0034】
また、その形状から、デキャッパピン110とキャップ120との位置の誤差や、振動や衝撃によるズレが発生しても、キャップ120がデキャッパピン110の挿入部112を締め付ける力は変動が少ない。
この状態で、デキャッパピン110を傾倒させることでキャップ120がマイクロチューブの開口部から抜け、そのまま上方に引き上げることで、マイクロチューブからキャップ120を確実に取り外すことができる。
【0035】
また、挿入部112のテーパ形状が、キャップ120の上面テーパ穴121よりも大きな傾斜を有していることで、図6に示すように、キャップ120がデキャッパピン110の挿入部112の平面状の切欠部113以外の部分で局所的に変形した際に、上面テーパ穴121の内面のテーパ角度は、挿入部112のテーパ角度に近い角度となる。
【0036】
このことで、デキャッパピン110とキャップ120との位置の誤差や、振動や衝撃が発生しても挿入状態が変化することが抑制され、キャップ120がデキャッパピン110の挿入部112を締め付ける力がさらに変動しにくくなる。
【0037】
さらに、デキャッパピン110の挿入部112の先端側に設けられた突起部114は、図6に示すように、キャップ120の上面テーパ穴121の内面に局所的に食い込むように変形させて係合状態となるため、デキャッパピン110の挿入部112とキャップ120の上面テーパ穴121の内面とが挿入方向でさらに強固に固定される。
【0038】
図7に示すような、従来のキャップ外し装置500において、前述したようなデキャッパピン110を、従来のデキャッパピン510に代えて一列に複数併設することで、キャップ外し装置を構成することができる。
このとき、2箇所の平面状の切欠部113がデキャッパピン110の傾倒方向と平行となるように配置される。
【0039】
このことで、プレートに縦立収容されたマイクロチューブに対してデキャッパピン110を昇降自在かつ傾倒自在とすることができ、整列保持されたマイクロチューブのキャップ120を、複数まとめて取り外すことができる。
また、前述したように、デキャッパピン110を強い力で挿入せずに確実に固定できるため、複数のデキャッパピン110を昇降させる機構も小型化することが可能となる。
【0040】
以上のように、本発明のデキャッパピン110によれば、簡単な構成で、マイクロチューブのキャップを取り外すことができるとともに、キャップ位置の誤差や、振動や衝撃が発生しても確実に取り外すことができ、キャップに強く挿入する必要がなく破損を防止するなど、その効果は甚大である。
【符号の説明】
【0041】
500 ・・・キャップ外し装置
501 ・・・キャップ押し下げピン
502 ・・・整列プレート
110、510 ・・・デキャッパピン
111、511 ・・・本体部
112、512 ・・・挿入部
113 ・・・切欠部
114 ・・・突起部
120、520 ・・・キャップ
121、521 ・・・上面テーパ穴
530 ・・・マイクロチューブ
531 ・・・開口部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外形円柱状の本体部と、該本体部の先端側に設けられマイクロチューブの開口部を密封するキャップの上面テーパ穴に挿入される挿入部とを有するデキャッパピンであって、
前記挿入部が、前記本体部から先端に向けて細くなるテーパ状に形成され、
前記挿入部の先端の直径が、前記キャップの上面テーパ穴の入口部の最大径より小さく、かつ、前記キャップの上面テーパ穴の奥部の最小径より大きく、
前記挿入部の側面には、周方向の180°対向した位置に本体部側から先端まで延びるように設けられた2箇所の平面状の切欠部を有することを特徴とするデキャッパピン。
【請求項2】
前記挿入部のテーパ形状が、キャップの上面テーパ穴よりも大きな傾斜を有していることを特徴とする請求項1に記載のデキャッパピン。
【請求項3】
前記挿入部の先端側には、前記2箇所の平面状の切欠部以外の位置に設けられる突起部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のデキャッパピン。
【請求項4】
マイクロチューブのキャップを取り外すキャップ外し装置であって、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のデキャッパピンを一列に複数併設し、プレートに縦立収容されたマイクロチューブに対して前記デキャッパピンを昇降自在かつ傾倒自在に設けたことを特徴とキャップ外し装置。
【請求項1】
外形円柱状の本体部と、該本体部の先端側に設けられマイクロチューブの開口部を密封するキャップの上面テーパ穴に挿入される挿入部とを有するデキャッパピンであって、
前記挿入部が、前記本体部から先端に向けて細くなるテーパ状に形成され、
前記挿入部の先端の直径が、前記キャップの上面テーパ穴の入口部の最大径より小さく、かつ、前記キャップの上面テーパ穴の奥部の最小径より大きく、
前記挿入部の側面には、周方向の180°対向した位置に本体部側から先端まで延びるように設けられた2箇所の平面状の切欠部を有することを特徴とするデキャッパピン。
【請求項2】
前記挿入部のテーパ形状が、キャップの上面テーパ穴よりも大きな傾斜を有していることを特徴とする請求項1に記載のデキャッパピン。
【請求項3】
前記挿入部の先端側には、前記2箇所の平面状の切欠部以外の位置に設けられる突起部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のデキャッパピン。
【請求項4】
マイクロチューブのキャップを取り外すキャップ外し装置であって、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のデキャッパピンを一列に複数併設し、プレートに縦立収容されたマイクロチューブに対して前記デキャッパピンを昇降自在かつ傾倒自在に設けたことを特徴とキャップ外し装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−18007(P2012−18007A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154100(P2010−154100)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】
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