説明

デジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタ

【課題】光学ファインダを用いる撮影モードと、電子ファインダを用いる撮影モードとを可能にした、デジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタを提供する。
【解決手段】光学ファインダを用いて撮影する場合のセット状態では、ホールド部材27が、軸7dで反時計方向へ回転し、先端に取り付けた押圧部材29が鉄片部材24,26の被押動部24a,26aを押して先羽根用係止解除部材23と後羽根用係止解除部材25を回転させ、鉄片部材24,26を電磁石19,20の鉄芯部材19a,20aに接触させている。電子ファインダを用いて撮影したい場合は、電磁石19,20が励磁されていない状態で、電磁装置33の永久磁石回転子33aを回転させ、抑止部材33bを、後羽根用係止解除部材25の被抑止部25bの作動軌跡内に臨ませ、その後、ホールド部材27を時計方向へ回転させることにより、電子ファインダでの観察を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ用のフォーカルプレンシャッタの中には、先羽根と後羽根という二つのシャッタ羽根を備えたものがある。そして、この種のフォーカルプレンシャッタは、通常は、フィルムを使用するカメラ用のフォーカルプレンシャッタと同様に、先羽根と後羽根が、先羽根用駆動部材と後羽根用駆動部材に連結されていて、撮影待機状態であるセット状態においては、先羽根が露光開口を覆い、後羽根が露光開口から退いており、撮影時には、それらの二つの駆動部材が先羽根用駆動ばねと後羽根用駆動ばねの付勢力によって同じ方向に順に回転させられ、先羽根が露光開口を開いてゆき、後羽根がその後から閉じていくことによって、撮像装置の撮像面を露光していくように構成されている。そのため、このような構成のフォーカルプレンシャッタを備えているデジタルカメラは、光学式ビューファインダ(以下、光学ファインダという)を備えているのが普通である。
【0003】
また、このような構成のデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタは、後羽根が露光開口を完全に閉じると、撮像情報が撮像装置から情報処理回路を介して記憶装置に記憶され、直ちにセット作動が行われるが、そのセット作動は、初期位置から回転させられるセット部材が、それらの二つの駆動部材を、各々の駆動ばねの付勢力に抗してセット位置まで逆転させるようにしている。そして、それらの二つの駆動部材を、次の撮影が行われるまで、セット状態に保っておくための構成としては、係止タイプと言われているものと、ダイレクトタイプと言われているものが知られている。
【0004】
即ち、係止タイプというのは、撮影に際して先羽根及び後羽根に露光作動を行わせるまでは、二つの駆動部材は、係止部材によって係止されているようにしたものである。そのため、セット部材は、セット作動によって二つの駆動部材がセット位置で各々の係止部材によって係止され得るようになると、直ちに初期位置へ復帰させられるように構成することが可能であるが、カメラのレリーズ時に、先羽根の開き作動に先立って初期位置へ復帰させられるように構成することも可能である。そして、先羽根と後羽根の露光作動は、各々の電磁石によって順に作動を可能にさせられる二つの解除手段が、各々の係止部材による各々の駆動部材の係止を解くことによって行われる。
【0005】
他方、ダイレクトタイプというのは、二つの駆動部材が、各々鉄片部材を備えており、セット部材は、セット作動によって、それらの鉄片部材が、未だ励磁されていない各々の電磁石に接触するようになるまで、二つの駆動部材を各々の駆動ばねの付勢力に抗して回転させるようにしたものである。そのため、セット部材は、直ちに初期位置へは復帰させられず、その後もその状態を保っていて、カメラのレリーズ時に、各々の電磁石が励磁されそれらの鉄片部材を磁気吸引力によって吸着保持すると、初期位置へ復帰させられるようにしている。そして、先羽根と後羽根の露光作動は、その後、各々の電磁石が順に消磁し、各鉄片部材の吸着保持力を失うことによって行われる。
【0006】
本発明は、それらのうち、先羽根と後羽根とを備えている係止タイプのデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタに関するものであるが、下記の特許文献1には、そのような係止タイプであって、デジタルカメラにも、フィルムを使用するカメラにも採用することの可能なカメラ用フォーカルプレンシャッタが記載されている。
【0007】
ところで、先羽根と後羽根を備えているデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタの中には、特許文献1に記載されているような係止タイプではないが、光学ファインダの代りに、液晶やEL(エレクトロルミネッセンス)などの表示パネルを備えた電子式ビューモニタ(以下、モニタという)を用いて撮影をするようにしたものがある。また、その場合には、撮影用の撮像素子を、モニタ用の撮像素子と兼用させるようにすることが知られているが、そのようなことを可能にしたデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタの一例が下記の特許文献2に記載されている。
【0008】
そして、この特許文献2に記載されているフォーカルプレンシャッタは、撮影待機状態においては、先羽根と後羽根の両方を露光開口から退いた状態にしておき、撮影に際してレリーズボタンが押されると、その初期段階で、先羽根を露光開口を覆った状態に作動させ、次の段階で、先羽根と後羽根の両方に順に露光作動を行わせるようにしたモードでの撮影のほか、撮影に際してレリーズボタンが押されると、先羽根を作動させず、電子制御回路が撮像素子を制御することによって撮影が開始され、後羽根が露光開口を閉鎖することによって撮影が終了するようにしたモードでの撮影や、撮影の開始と終了をいずれも電子制御回路が制御するようにしたモードでの撮影も行えるようにすることもできるし、さらには、レリーズボタンを押している間は、電子制御回路が所定の動作を繰り返すようにすることによって動画の撮影も行えるようにすることが可能なものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−305605号公報
【特許文献2】特開2004−317590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、特許文献1に記載されているような係止タイプのフォーカルプレンシャッタを備えているデジタルカメラの場合にも、光学ファインダを用いた撮影のほかに、切換手段を設けることによって、特許文献2に記載されているフォーカルプレンシャッタのように、モニタを用いた撮影も行えるようにすることが要求されている。ところが、係止タイプのフォーカルプレンシャッタに、特許文献2に記載されているフォーカルプレンシャッタの構成を採用して、特許文献2に記載されているフォーカルプレンシャッタでは可能である、上記のような複数のモードのうちの一つを選択して撮影できるようにすることは困難である。
【0011】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、光学ファインダを用いる撮影モードでの撮影と、撮影者が撮影前に予め操作をすることによって、モニタ用の撮像素子を撮影用の撮像素子で兼用させるようにしたモニタを用いる撮影モードでの撮影をも可能にした、二つのシャッタ羽根を備えている係止タイプのデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明は、シャッタ地板と補助地板との間を中間板で仕切って構成した二つの羽根室内に個別に配置されている先羽根及び後羽根と、前記先羽根と前記後羽根に連結されていて先羽根用係止部材と後羽根用係止部材による係止が順に解かれると先羽根用駆動ばねと後羽根用駆動ばねの付勢力によって各々回転し前記先羽根と前記後羽根に露光作動を行わせる先羽根用駆動部材及び後羽根用駆動部材と、前記先羽根と前記後羽根が露光作動を行うときは前記二つの駆動部材の作動軌跡外に退いた初期位置にあり前記露光作動が終了すると該初期位置からセット作動を開始し前記二つの駆動部材を前記二つの駆動ばねの付勢力に抗して前記二つの係止部材に係止され得る位置まで回転させ撮影前には該初期位置へ復帰しているセット部材と、先羽根用電磁石と後羽根用電磁石のコイルに通電されているときは該二つの電磁石の鉄芯部材に各々吸着保持されていて該二つの電磁石の各コイルに対する通電が順に断たれると先羽根用解除ばねと後羽根用解除ばねの付勢力によって該鉄芯部材から各々離反して前記二つの係止部材による前記二つの駆動部材の係止を個別に解く先羽根用係止解除手段及び後羽根用係止解除手段と、前記セット部材の前記セット作動に連動して作動させられ前記二つの解除ばねの付勢力に抗して前記二つの係止解除手段を押動し前記二つの鉄芯部材に接触させ前記二つの電磁石のコイルに通電されると前記二つの係止解除手段の作動軌跡外に作動させられるホールド手段と、を備えているカメラ用フォーカルプレンシャッタにおいて、往復作動可能な可動子を有している電磁装置と、前記可動子によって往復作動させられ前記後羽根用係止解除手段の作動軌跡内に進退させられる抑止手段とを備えていて、前記後羽根用係止解除手段が前記後羽根用電磁石の鉄芯部材に接触しているときに、前記抑止手段を前記後羽根用係止解除手段の作動軌跡内に進出させたときには、前記二つの電磁石のコイルに通電せずに前記ホールド手段を前記二つの係止解除手段の作動軌跡外へ作動させ、それに伴って前記後羽根用電磁石の鉄芯部材から離反する前記後羽根用係止解除手段の作動を、前記後羽根用係止部材による前記後羽根用駆動部材の係止を解く前に、前記抑止手段が抑止し、その後、前記電磁装置が前記抑止手段を前記後羽根用係止解除手段の作動軌跡外に作動させると、前記後羽根用係止解除手段が前記後羽根用係止部材による前記後羽根用駆動部材の係止を解くようにする。
【0013】
その場合、前記抑止手段が、前記電磁装置の可動子と一体化されているようにしてもよい。また、前記可動子が、永久磁石を有する回転子であるようにしてもよいし、前記電磁装置がプランジャであるようにしてもよい。
【0014】
また、本発明のデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタは、前記後羽根用駆動部材が、同軸上に回転可能に取り付けられた後羽根用第1駆動部材と後羽根用第2駆動部材とで構成されており、該後羽根用第1駆動部材は、先羽根を連結していて、セット作動時には、セットばねの付勢力によって該後羽根用第2駆動部材に追従して回転し、該後羽根用第2駆動部材は、後羽根に露光作動を開始させる前には、前記後羽根用係止部材に係止されていて、その係止が解かれたときには、該セットばねの付勢力に抗して前記後羽根用駆動ばねの付勢力により該後羽根用第1駆動部材を押しながら回転するようにすると、セット状態における後羽根の格納スペースが小さくなり、シャッタ全体として、先羽根及び後羽根の作動方向の寸法を小さくすることが可能になる。
【0015】
また、前記後羽根は、前記シャッタ地板に枢着された二つのアームと、それらのアームに対して長さ方向に順に枢支された複数枚の略短冊状をした羽根とからなっていて、露光作動開始直前の状態においては、それらの羽根が露光開口から退いて重畳状態となるように構成されており、前記中間板は、重畳状態にある前記複数枚の羽根と重なる領域の外形縁が、露光開口側に向けて凸状となる円弧状をしていて、前記複数枚の羽根とは、それらの羽根の長さ方向の略中央部において、それらとの重なり幅が小さくなるように形成されているようにすると、中間板との接触面積が小さくなって、後羽根の露光作動の開始が円滑に行えるようになり、シャッタ地板と補助地板との間隔を小さくすることも可能になる。
【0016】
更に、前記ホールド手段は、二つの押圧部を有する押圧部材を所定の回転角度内で回転可能に取り付けていて、前記セット部材の前記セット作動に連動して作動するときは、該二つの押圧部によって前記二つの係止解除手段を前記二つの解除ばねの付勢力に抗して押し、前記二つの係止解除手段を前記二つの鉄芯部材に接触させた状態でレリーズ部材に係止され、該レリーズ部材がその係止を解くと、ばねの付勢力によって前記二つの係止解除手段の作動軌跡外へ作動させられるように構成されており、該ばねの付勢力による作動の停止時においては、前記押圧部材の少なくとも一方の押圧部が、前記シャッタ地板と一体の部材に取り付けられている緩衝部材に当接し得るようにすると、前記ホールド手段の静止状態が早く得られるので、カメラのレリーズボタンを押してから、先羽根が露光作動を開始するまでの時間を短縮することが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、二つのシャッタ羽根を備えている係止タイプのデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタにおいて、抑止手段が、電磁装置によって後羽根用係止解除手段の作動軌跡内に作動させられた場合には、後羽根用電磁石のコイルに通電されないようにし、ホールド手段の作動に追従して後羽根用電磁石の鉄芯部材から離反作動を行う後羽根用係止解除手段が、後羽根用係止部材による後羽根用駆動部材の係止を解く前に、抑止手段によって抑止されるような構成にしたから、光学ファインダを用いる撮影モードでの撮影と、モニタ用の撮像素子を撮影用の撮像素子で兼用させるようにしたモニタを用いる撮影モードでの撮影とを、撮影者が撮影前に選択して行なえるという特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】露光作動終了直後の状態を示した平面図であって、シャッタ羽根の制御機構については、主に、シャッタ地板の近くに配置されている開閉駆動機構の構成部材だけを示したものである。
【図2】図1における左約半分だけを拡大して示した平面図である。
【図3】露光作動終了直後の状態を示した平面図であって、主に、図2に示されている開閉駆動機構よりもシャッタ地板から離れたところに、その開閉駆動機構と重なるようにして配置されている係止解除機構の構成部材を示したものである。
【図4】図2に示されている開閉駆動機構のオーバーセット状態を示した平面図である。
【図5】図2に示されている開閉駆動機構のセット完了状態を示した平面図である。
【図6】図3に示されている係止解除機構のセット完了状態を示した平面図である。
【図7】図3に示されている係止解除機構が、カメラのレリーズ直後に発生させる現象を示した平面図である。
【図8】図7に示した状態の直後における係止解除機構の状態を示した平面図である。
【図9】光学ファインダを用いる撮影モードで静止画像を撮影する場合における主な構成部材の作動関係を示したタイミングチャートである。
【図10】モニタを用いる撮影モードを選択したことによって図6の状態から電磁装置が作動した状態を示す係止解除機構の平面図である。
【図11】モニタを用いる撮影モードで撮影する場合における係止解除機構の撮影待機状態を示す平面図である。
【図12】モニタを用いる撮影モードで撮影する場合における開閉駆動機構の撮影待機状態を示す平面図である。
【図13】モニタを用いる撮影モードで静止画像を撮影する場合における主な構成部材の作動関係を示したタイミングチャートである。
【図14】モニタを用いる撮影モードで動画撮影をする場合における主な構成部材の作動関係を示したタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態を、図示した実施例によって説明する。尚、本実施例の係止タイプのデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタは、撮影を行う前に、カメラに備えられている切換手段を操作することによって、光学ファインダを用いて撮影を行うか、モニタを用いて撮影を行うかを選択することが可能であって、光学ファインダを用いて撮影を行う場合には、先羽根が露光開口を開き始めることによって撮影露光を開始し、後羽根が露光開口を閉じ終わることによって撮影露光を終了するようにしたモードでの静止画像の撮影が行われ、モニタを用いて撮影を行う場合には、電子制御回路が撮像素子を制御することによって撮影が開始され、後羽根が露光開口を閉鎖することによって撮影が終了するようにしたモードでの静止画像の撮影と、静止画像の撮影をする場合とは別のレリーズボタンを押すことによって、そのボタンを押している間は、電子制御回路が所定の動作を繰り返すモードでの動画の撮影も行えるようにしたものである。
【実施例】
【0020】
先ず、主に、図1〜図3を用いて本実施例の構成を説明する。尚、図1〜図3は、いずれも露光作動終了直後の状態を示した平面図である。そして、図1は、シャッタ地板の背面側に配置されているシャッタ羽根などの構成も破線で示している。しかし、開閉駆動機構と係止解除機構とからなっていてシャッタ地板の表面側(手前側)に配置されているシャッタ羽根の制御機構については、シャッタ地板の近くに配置されている開閉駆動機構の構成部材だけを示してある。また、図2は、図1における左約半分だけを拡大して示した平面図である。更に、図3は、図2に示されている開閉駆動機構と重なるようにして、開閉駆動機構よりもシャッタ地板から離れて配置されている係止解除機構の構成部材を示したものである。そのため、図3には、図2に示されている一部の構成も示されている。
【0021】
図1において、シャッタ地板1は、その略中央部に開口部1aを形成している。シャッタ地板1の背面側には、所定の間隔を空けて、中間板2と補助地板3が順に取り付けられており、シャッタ地板1と中間板2との間に後述する先羽根の羽根室を構成し、中間板2と補助地板3との間に後述する後羽根の羽根室を構成している。また、中間板2にも、開口部1aと重なるところに独特の形状をした開口部2aが形成されていて、補助地板3にも、開口部1aと重なるところに、開口部1aよりも若干大きな長方形の開口部3aが形成されている。通常、長方形を横長にした形状をしている露光開口(シャッタとして被写体光を通過させる開口)は、それらの開口部1a,2a,3aの一つによって形成されるか、二つ以上の合成によって形成されるようにしているが、本実施例の場合には、開口部1aだけによって形成されている。
【0022】
また、本実施例の中間板2は、右上隅と、左下隅と、右下隅の3箇所に形成されている取付け孔(符号なし)によってシャッタ地板1に取り付けられている。そして、開口部2aの左側となる外形形成縁の形状は、周知のように、後述する二つの駆動ピンの作動軌跡を避けるようにして複雑な形状に形成されている。また、この中間板2は、開口部2aの上方となる外形形成縁2bの形状が、開口部2a側に向けて、即ち本実施例では開口部1aである露光開口側に向けて凸状となる円弧状に形成されているが、その理由は、後述する作動説明の中で説明する。また、補助地板3の外形形状は、シャッタ地板1と略同じであるが局部的に若干小さく形成されており、中間板2の場合と同じ3箇所のほか、図示していない左上隅の1箇所でシャッタ地板1に取り付けられている。尚、図2においては、図1に示されている補助地板3の外形形状の図示が省略されている。
【0023】
図1及び図2に示されているように、シャッタ地板1には、開口部1aの左側の領域に、円弧状の二つの長孔1b,1cが形成されており、それらの下端部には、周知のように、平面形状が略C字状をしているゴム製の緩衝部材4,5が取り付けられている。また、シャッタ地板1には、開口部1aの左側の領域に、三つの柱1d,1e,1fが立設されている。それらのうち、柱1fは、その先端に形成された図示していないねじ孔に、図3に示されているねじ6を螺合させることによって、図3に示されている上地板7を取り付けている。また、柱1d,1eは、長さ方向の途中で上地板7を取り付けているほか、図3に示されているように、上地板7に立設されている柱7a及び軸7bと共に、それらの先端に形成された図示していないねじ孔に、図示していないねじを螺合させることによって、上地板7との間に所定の間隔をあけてカバー板8(外形が二点鎖線で示されている)を取り付けている。
【0024】
次に、主に図2を用いて、シャッタ地板1と上地板7との間に配置されている構成部材を説明するが、その前に、それらを取り付けるためにシャッタ地板1に立設されている軸部材を説明する。シャッタ地板1には、上地板7に向けて六つの軸1g,1h,1i,1j,1k,1mが立設されている。それらのうち、軸1g,1hは、シャッタ地板1を貫通していて背面側にも軸部を立設しており、シャッタ地板1の背面側に立設された軸1n,1pと共に、後述する先羽根の二つのアームと後羽根の二つのアームとを、それぞれ回転可能に取り付けるようにしている。また、軸1k,1mは、先端に形成されている小径部を上地板7に形成された孔に嵌合させ、小径部との間に形成されたリング状の段差端面で上地板7を支える役目もしている。
【0025】
そこで先ず、シャッタ地板1の上記の柱1dには、リング状の緩衝部材9が取り付けられている。また、上記の軸1gには、上地板7側に立設されている軸部に、先羽根用駆動部材10が回転可能に取り付けられており、図示していない先羽根用駆動ばねによって、時計方向へ回転するように付勢されている。また、この先羽根用駆動部材10は、被係止部10aを有しており、上地板7側の面にはローラ10bを回転可能に取り付け、シャッタ地板1側には駆動ピン10cを有している。そして、その駆動ピン10cは、シャッタ地板1の長孔1bを貫通しており、根元部が上記の緩衝部材4に当接し得るようになっていて、先端部は、羽根室内で先羽根に連結されている。その先羽根の構成については後述する。
【0026】
シャッタ地板1の上記の軸1hには、上地板7側に立設されている軸部に、後羽根用第1駆動部材11と、後羽根用第2駆動部材12とが、後羽根用第1駆動部材11をシャッタ地板1側にして、個々に回転可能に取り付けられている。そして、後羽根用第1駆動部材11は、上地板7側に円柱形をした係合部11aを設けており、シャッタ地板1側には駆動ピン11bを有している。そして、その駆動ピン11bは、シャッタ地板1の長孔1cを貫通しており、根元部が上記の緩衝部材5に当接し得るようになっていて、先端部は、羽根室内で後羽根に連結されている。その後羽根の構成については後述する。
【0027】
また、後羽根用第2駆動部材12は、被係止部12aと、上記の係合部11aを挿入させた窓部12bとを有していて、上地板7側にはローラ12cを回転可能に取り付けている。そして、この後羽根用第2駆動部材12は、図示していない後羽根用駆動ばねによって、時計方向へ回転するように付勢されている。また、本実施例の場合には、この後羽根用第2駆動部材12と上記の後羽根用第1駆動部材11との間に、図示していないセットばねが掛けられていて、後羽根用第2駆動部材12を時計方向へ回転させ、後羽根用第1駆動部材11を反時計方向へ回転させるように付勢しているが、図1及び図2の状態においては、後羽根用第1駆動部材11の係合部11aが後羽根用第2駆動部材12の窓部12bの縁に接触しているので、その付勢力は働かないようになっている。尚、周知のように、そのセットばねを二つのばねで構成し、一方のばねが、後羽根用第2駆動部材12を時計方向へ回転させるように付勢し、他方のばねが、後羽根用第1駆動部材11を反時計方向へ回転させるように付勢するようにしても構わない。
【0028】
シャッタ地板1の上記の軸1iには、セット部材13が回転可能に取り付けられており、図示していないばねによって、反時計方向へ回転するように付勢されている。そして、このセット部材13は、シャッタ地板1側の面に、上記した先羽根用駆動部材10のローラ10bに接触し得るローラ13aと、上記した後羽根用第2駆動部材12のローラ12cに接触し得るローラ13bとを回転可能に取り付けている。
【0029】
シャッタ地板1の上記の軸1jには、セット操作部材14が回転可能に取り付けられている。このセット操作部材14は、カメラ本体側の部材によって操作されるローラ14aを回転可能に取り付けていると共に、シャッタ地板1側の面に軸14bを立設している。そして、このセット操作部材14は、リンク部材15を介して上記のセット部材13に連結されている。即ち、リンク部材15には一端に孔が形成されていて、そこに、セット操作部材14の上記の軸14bが回転可能に嵌合している。また、リンク部材15の他端には、上地板7側にピン15aが設けられ、そのピン15aと同心となるようにしてシャッタ地板1側には軸が立設されている。そして、その軸が、セット部材13に形成されている孔に回転可能に嵌合している。
【0030】
そのため、図1においては、セット操作部材14は、セット部材13が図示していないばねの付勢力によって反時計方向へ回転したのに伴って、リンク部材15を介して反時計方向へ回転させられ、緩衝部材9をストッパとして停止させられた状態になっている。尚、このセット操作部材14は、セット作動時に、カメラ本体側の部材によってローラ14aを押されて時計方向へ回転させられたとき、リンク部材15を介して、セット部材13を時計方向へ回転させるためのものであるが、このようなセット操作部材14を備えることなく、セット作動時には、直接、カメラ本体側の部材によって、セット部材13を時計方向へ回転させるようにしても構わない。しかし、その場合には、リンク部材15も不要になってくるので、後述の説明からも分かるように、上記のピン15aに代るピンを、セット部材13に設ける必要がある。
【0031】
シャッタ地板1の上記の軸1kには、先羽根用係止部材16が回転可能に取り付けられていて、図示していないばねによって、反時計方向へ回転するように付勢されている。この先羽根用係止部材16は、シャッタ地板1側に折り曲げられた係止部16aを有しているが、この係止部16aは、先羽根用駆動部材10の被係止部10aを係止し、先羽根用駆動部材10の時計方向への回転を阻止するためのものである。また、この先羽根用係止部材16は、上地板7側に折り曲げられた折曲部の上端に、さらに上地板7側に突出させた被押動部16bを有していて、その被押動部16bを、上地板7の略長方形をした孔7c(図3参照)に挿入することによって、被押動部16bの先端が上地板7とカバー板8との間に存在するようにしている。
【0032】
シャッタ地板1の上記の軸1mには、後羽根用係止部材17が回転可能に取り付けられていて、図示していないばねによって、時計方向へ回転するように付勢されている。この後羽根用係止部材17は、シャッタ地板1側に折り曲げられた係止部17aと、上地板7側に折り曲げられた被押動部17bを有している。そして、それらのうち、係止部17aは、後羽根用第2駆動部材12の被係止部12aを係止し、後羽根用駆動部材12の時計方向への回転を阻止するためのものである。また、被押動部17bは、図3に示されているように、上地板7とカバー板8の側方において、その先端が、上地板7とカバー板8との間に存在するようにさせられている。
【0033】
図3に示されているように、上地板7には、カバー板8側に向けて軸7dが立設されているが、その軸7dと同心上に、シャッタ地板1側に向けて軸7eが立設されており、その軸7eには、補助セット部材18が回転可能に取り付けられている。そして、この補助材セット部18には、ばねが掛けられていない。また、この補助セット部材18は、押動部18aと、円弧状をした長孔18bと、大きな逃げ孔18cとを有していて、長孔18bには、上記したリンク部材15のピン15aが挿入されている。そのため、この補助セット部材18は、セット部材13が時計方向へ回転すると反時計方向へ回転し、その後、セット部材13が反時計方向へ回転すると時計方向へ回転するようになっている。また、逃げ孔18cは、先羽根用係止部材16の被押動部16bを貫通させ、上地板7の孔7cに挿入し得るようにしていると共に、作動上で、被押動部16bとは干渉しない形状をしている。尚、図3には、リンク部材15のピン15aが図示されているが、作動説明で用いる図6〜図8,図10及び図11においては図示が省略されている。
【0034】
次に、主に図3を用いて、上地板7とカバー板8との間に配置されている構成部材を説明するが、その前に、上地板7の全体の形状と、それらの構成部材を取り付けるためにカバー板8側に向けて上地板7に立設されている軸部材などについて説明する。先ず、上地板7は、図3において実線で示されているように、全体として上下方向に長い形状をしているが、右半分は同一平面領域として形成されているのに対して、左半分は、右半分の領域から左方向へ張り出した四つの張出し領域として形成されている。
【0035】
そして、一番上と上から三番目の張出し領域は、右半分の領域と同一平面となるように形成されているのに対して、残りの二つの張出し領域は、折曲部7f,7g,7hによって段差が付けられ、カバー板8側に高くなるように形成されている。また、二つの折曲部7g,7hの間には、特殊な形状をした細長い窓部7iが形成されている。更に、このような上地板7の右上方部には折曲部7jが形成され、右下方部には被当接部7kが形成されているが、折曲部7jは、シャッタ地板1側に折り曲げられていて、上記の後羽根用係止部材17が反時計方向へ回転させられたときのストッパの役目をするものである。
【0036】
このような形状をした上地板7には、既に説明した軸7b,7dのほかに、カバー板8に向けて二つの軸7m,7nが立設されている。そして、それらのうち、軸7d,7nは、先端に形成されている小径部をカバー板8に形成された孔に嵌合させ、小径部との間に形成されているリング状の段差端面でカバー板8を支えている。また、上地板7の上記した上から三番目の張出し領域には、二つの位置決めピン7p,7qが、カバー板8側に向けて立設されている。
【0037】
そこで次に、このような上地板7に取り付けられている構成部材を説明する。先ず、先羽根用電磁石19と後羽根用電磁石20は、鉄芯部材19a,20aに形成されている孔を上記の位置決めピン7p,7qに嵌合させた後、ねじ21,22によって上地板7に取り付けられている。これらの電磁石19,20は、U字形をしていて各々の二つの脚部の先端を磁極部とした上記の鉄芯部材19a,20aと、コイル19b,20bを巻回していて鉄芯部材19a,20aの一方の脚部に嵌装されたボビン19c,20cとからなっている。そのため、鉄芯部材19a,20aの脚部は、上地板7の表面には接しておらず、浮いていることになる。
【0038】
上地板7の上記の軸7nには、先羽根用係止解除部材23が回転可能に取り付けられており、図示していない先羽根用解除ばねによって時計方向へ回転するように付勢されている。この先羽根用係止解除部材23は、先羽根用係止部材16の被押動部16bを押す押動部23aを有しているほか、上方先端に形成された折曲部には鉄片部材24を、周知のようにして取り付けている。そして、その鉄片部材24には、被押動部24aが、その折曲部の右側に突き出るようにして設けられている。
【0039】
上地板7の上記の軸7bには、後羽根用係止解除部材25が回転可能に取り付けられており、図示していない後羽根用解除ばねによって反時計方向へ回転するように付勢されている。この後羽根用係止解除部材25は、後羽根用係止部材17の被押動部17bを押す押動部25aと、被抑止部25bを有しているほか、下方先端に形成された折曲部には鉄片部材26を取り付けている。そして、その鉄片部材26には、被押動部26aが、その折曲部の右側に突き出るようにして設けられている。
【0040】
上地板7の上記の軸7dには、ホールド部材27とホールド補助部材28とが個々に回転可能に取り付けられている。そして、ホールド部材27は、上記の先羽根用係止解除部材23よりも上地板7側に配置され、ホールド補助部材28は、上記の先羽根用係止解除部材23よりもカバー板8側に配置されている。また、ホールド部材27は、図示していない第1のばねによって時計方向に回転するように付勢されており、ホールド部材27とホールド補助部材28との間には、ホールド部材27を反時計方向へ回転させるように付勢し、ホールド補助部材28を時計方向へ回転させるように付勢している図示していない第2のばねが掛けられている。そして、図3においては、ホールド部材27とホールド補助部材28との相対関係は、上記の第2のばねの付勢力によって互いに異なる方向へ回転し得る限度状態になっており、しかも、両者は、上記の第1のばねの付勢力によって、一緒に時計方向へ回転して停止させられた状態になっている。
【0041】
そのため、図3に状態において、ホールド補助部材28が反時計方向へ回転させられると、上記の第1のばねの付勢力に抗して、ホールド部材27も一緒に反時計方向へ回転させられ、その後、ホールド補助部材28を反時計方向へ回転させる力が失われると、上記の第1のばねの付勢力によって両者は一緒に時計方向へ回転させられるようになっているが、そのように、ホールド部材27とホールド補助部材28とが一緒に反時計方向へ回転されてゆき、ホールド部材27の回転が阻止されるようになった場合にだけ、上記の第2のばねを緊張させながら、ホールド補助部材28だけが、反時計方向への回転を若干続け得るようになっている。尚、両者間をこのように構成することは周知であって、その具体的な構成の一例が、例えば、特開2007−34042号公報に記載されている。
【0042】
ホールド部材27の先端には軸27aが立設されており、その軸27aには、周知の押圧部材29が取り付けられている。この押圧部材29は、図3の上下方向に延伸して形成された二つの押圧部29a,29bを有していて、それらで、上記の鉄片部材24,26の被押動部24a,26aを押し、鉄片部材24,26を鉄芯部材19a,20aに押圧し得るようになっている。そして、この押圧部材29は、二つの鉄片部材24,26を鉄芯部材19a,20aに確実に押圧できるようにするために、周知の構成により、軸27aに対して所定の角度だけ回転し得るようにして取り付けられている。他方、ホールド補助部材28は、その先端が、窓部7iを通って上地板7の背面側に配置されており、シャッタ地板1側に折り曲げられた被押動部28aが、補助セット部材18の押動部18aによって押され得るようになっている。
【0043】
上地板7の上記の軸7mには、レリーズ部材30が回転可能に取り付けられていて、図示していないばねによって、反時計方向へ回転するように付勢されている。このレリーズ部材30は、一方の腕部の先端に係止部30aを有していて、他方の腕部の先端に被押動部30bと当接部30cを有しており、上記のホールド補助部材28よりも上地板7側に配置されている。そして、係止部30aは、窓部7iを通っていて、上地板7の背面側で、ホールド補助部材28の被押動部28aを係止し、ホールド補助部材28の時計方向の回転を阻止し得るようになっている。また、被押動部30bは、図示していないカメラ本体側の部材によって押される部位であり、当接部30cは、レリーズ部材30が、図示していないばねの付勢力によって反時計方向へ回転させられたとき、上地板7に形成された上記の被当接部7kに当接して停止させられる部位である。
【0044】
上地板7のカバー板8側の面には、二つのねじ31,32によって、電磁装置33が取り付けられている。本実施例の電磁装置33は、特開2005−173132号公報などに記載されている周知の電流制御式アクチュエータの構成を変形し、永久磁石回転子33aに抑止部材33bを一体化させたものである。即ち、上記の特許公開公報に記載されている電磁アクチュエータでは、シャッタ羽根を往復回転させるための出力ピンが、永久磁石回転子の回転軸と平行になるようにして、永久磁石回転子と一体的に形成されているのに対して、本実施例の電磁装置33は、上記の後羽根用係止解除部材25が反時計方向へ回転するのを抑止し得るようにするために、合成樹脂製であって棒状をしている抑止部材33bを、永久磁石回転子33aに、その回転軸に対して垂直になるようにして一体化している。
【0045】
そして、上記の特許公開公報に記載されている電流制御式アクチュエータは、その出力ピンによってシャッタ羽根や絞り羽根などを駆動するものであるため、まさしく、アクチュエータであるが、本実施例の電磁装置33は、永久磁石回転子33aを備えているとはいえ、抑止部材33bによって、後羽根用係止解除部材25の回転を抑止するためだけのものであるから、アクチュエータとはいえない。そこで、抑止部材33b以外の電磁装置33の構成は、実質的には周知であるとはいえ、一応、簡単にその構成を説明しておく。
【0046】
先ず、第1固定子枠33cは、円筒形の一端を封鎖したコップ状をしていて、他端を板状の第2固定子枠33dで塞ぐことにより、第2固定子枠33dとの間に、径方向に2極に着磁されている永久磁石回転子33aの収容室を構成している。また、それらの固定子枠33c,33dは、収容室内で永久磁石回転子33aを軸受け状態にしておき、収容室の外側に、両方の軸受け部を囲むようにしてコイル33eを巻回することによって相互に一体化されている。そして、上記の二つのねじ31,32は、第2固定子枠33dを上地板7に螺着している。
【0047】
第1固定子枠33cの外側には、コイル33eをも囲むようにして、円筒状のヨーク33fが嵌装されている。また、明示されていないが、第1固定子枠33cには、径方向の一部に窓が形成されており、上記の抑止部材33bは、その窓から外部へ突き出ていて、永久磁石回転子33aの回転によって往復作動させられるようになっている。そして、その回転作動範囲は、図示していない二つのストッパによって規制されるようになっている。更に、第1固定子枠33cには、鉄ピン(磁性体棒)33gが、永久磁石回転子33aの回転軸と平行になるようにして取り付けられている。尚、本実施例では、この鉄ピン(磁性体棒)33gを一つだけ備えているが、二つ以上(上記の特許公開公報では四つ)備えることも知られている。
【0048】
更にここで、このような電磁装置33の作動方法と機能についても簡単に説明しておく。永久磁石回転子33aは、コイル33eに対して順方向に通電すると、時計方向へ回転させられ、抑止部材33bが図示していないストッパに当接することによって停止させられるが、その後、コイル33eに対して逆方向に通電すると、反時計方向へ回転させられ、抑止部材33bが図示していないストッパに当接することによって停止させられるようになっている。そして、抑止部材33bがいずれかのストッパに接触しているときに、コイル33eに対する通電を断っても、永久磁石回転子33aと鉄ピン(磁性体棒)33gとの間に作用する永久磁石回転子33aの磁力によって、永久磁石回転子33aには回転力が付与されているので、その回転力によって、抑止部材33bとストッパとの接触状態が維持されるようになっている。
【0049】
上地板7とカバー板8との間には、もう一つの部材が配置されている。即ち、カバー板8には、図3の中央右端に、上地板7側に向けて、折曲部8aが上下方向に細長く形成されており、その折曲部8aの左側に、細長い直方体をしたゴム製の緩衝部材34(便宜的に破線で示してある)が接着剤で取り付けられている。そして、この緩衝部材34は、図3においては、ホールド部材27と一部が重なって示されているが、実際には、カバー板8側に寄ったところで折曲部8aに取り付けられているため、ホールド部材27の作動には影響を与えず、ホールド部材27に取り付けられている押圧部材29の押圧部29a,29bだけが当接し得るように配置されている。
【0050】
次に、既に説明した中間板2と補助地板3以外に、シャッタ地板1の背面側に配置されている構成部材を、図1及び図2を用いて説明する。先ず、シャッタ地板1と中間板2の間に配置されている先羽根は、シャッタ地板1に立設された二つの軸1g,1nに一端を枢着されている二つのアーム35,36と、それらの自由端に向けて順に枢支された4枚の羽根37,38,39,40とで構成されていて、それらの最先端に枢支された羽根40をスリット形成羽根としている。そして、アーム35は、周知の孔に、先羽根用駆動部材10の駆動ピン10cを嵌合させていると共に、軸1gに対する枢着部の近傍に、二つの遮光部35a,35bを形成している。また、アーム35,36と羽根37,38,39,40との重なり関係は、アーム35,36が最もシャッタ地板1側に存在し、羽根37が最も中間板2側に存在するようになっている。
【0051】
また、中間板2と補助地板3の間に配置されている後羽根は、シャッタ地板1に立設された二つの軸1h,1pに一端を枢着されている二つのアーム41,42と、それらの自由端に向けて順に枢支された4枚の羽根43,44,45,46とで構成されていて、それらの最先端に枢支された羽根46をスリット形成羽根としている。そして、アーム41は、周知の孔に、後羽根用第1駆動部材11の駆動ピン11bを嵌合させていると共に、軸1hに対する枢着部の近傍に、二つの遮光部41a,41bを形成している。また、アーム41,42と羽根43,44,45,46との重なり関係は、アーム41,42が最も補助地板3側に存在し、羽根43が最も中間板2側に存在するようになっている。
【0052】
最後に、シャッタ地板1の背面側には、軸1g,1hの近傍部に、同じ構成をした二つの光電センサ47,48が取り付けられている。これらの光電センサ47,48は、一般にフォトインターラプタといわれているものであって、発光部と受光部とが対向して配置されていて、発光部から出射した光を受光部で受光するように構成されており、受光部が受光しているときはH(High)信号を出力し、受光していないときにはL(Low)信号を出力するようになっている。そして、本実施例の場合には、上記のアーム35の遮光部35a,35bが、光電センサ47の光路を遮断し、上記のアーム41の遮光部41a,41bが、光電センサ48の光路を遮断し得るようになっている。
【0053】
次に、本実施例の作動を説明するが、上記したように、本実施例は、カメラに備えられた選択手段を切換え操作することによって、光学ファインダを用いて撮影するか、モニタを用いて撮影するかを選択することが可能になっており、光学ファインダを用いて撮影する場合には、静止画像の撮影が可能であって、モニタを用いて撮影する場合は、別々のレリーズボタン(レリーズスイッチ)を押すことによって、静止画像の撮影と動画撮影とを選択して行えるようにしたものである。そのため、本実施例のフォーカルプレンシャッタを組み込んだデジタルカメラの場合には、光学ファインダを用いて撮影するかモニタを用いて撮影するかを選択する選択手段(スイッチ)と、静止画撮影用のレリーズボタンと、動画撮影用のレリーズボタンとが備えられていることにする。
【0054】
図1〜図3は、既に説明したように、露光作動終了直後の状態、即ち撮影終了直後の状態を示したものであるが、本実施例の場合には、光学ファインダを用いた撮影の場合にも、モニタを用いた撮影の場合にも、撮影終了直後においては、いずれもこの状態になる。そして、このとき、図1及び図2に示されているセット部材13は、図示していないばねの付勢力によって反時計方向へ回転するように付勢されているが、このセット部材13と連動しているセット操作部材14が緩衝部材9に接触していることによって、この停止状態が維持されている。以下、セット部材13については、この停止位置を初期位置ということにする。
【0055】
また、このとき、先羽根用駆動部材10と後羽根用第1駆動部材11は、それらの駆動ピン10c,11bを緩衝部材4,5に当接させ、時計方向の回転を停止させられており、それによって、先羽根の4枚の羽根37〜40は、相互の重なり量を最大にした重畳状態となって、開口部1aの下方領域に格納され、後羽根の4枚の羽根43〜46は、相互の重なり量を最小にした展開状態になって、開口部1aを閉鎖している。また、このとき、ホールド部材27とホールド補助部材28は、図示していない上記の第1ばねによって時計方向へ回転するように付勢されているが、図3に示されているように、ホールド補助部材28の被押動部28aが、補助セット部材18の押動部18aに接触していることによって、その回転を阻止されている。
【0056】
また、このとき、先羽根用係止解除部材23は、図示していない先羽根用解除ばねの付勢力によって時計方向へ回転させられ、鉄片部材24を先羽根用電磁石19の鉄芯部材19aから離反させており、押動部23aが先羽根用係止部材16の被押動部16bを上地板7の孔7cの縁に押し付けた状態で停止させられている。また、後羽根用係止解除部材25は、図示していない後羽根用解除ばねの付勢力によって反時計方向へ回転させられ、鉄片部材26を後羽根用電磁石20の鉄芯部材20aから離反させており、押動部25aが後羽根用係止部材17の被押動部17bを押し、後羽根用係止部材17を上地板7の折曲部7jに押し付けた状態で停止させられている。
【0057】
更に、電磁装置33の回転子33aは、反時計方向へ回転させられ、抑止部材33bが図示していないストッパに当接して停止させられた状態を維持している。そして、この状態においては、二つの電磁石19,20のコイル19c,20cと電磁装置33のコイル33eには通電されていない。
【0058】
先羽根と後羽根の露光作動が終了して、このような状態になると、撮像情報が、撮像素子から画像処理回路を介して転送され、記憶装置に記憶された後、直ちにセット作動が行われる。本実施例の場合、そのセット作動は、セット操作部材14が、図示していないカメラ本体側の部材によってローラ14aを押され、時計方向へ回転させられることによって開始されるが、そのセット作動の完了状態、即ち撮影待機状態は、カメラに備えられている選択手段が、光学ファインダを用いる撮影モードを選択しているときと、モニタを用いる撮影モードを選択しているときとでは異なっている。そこで、以下の作動説明は、先ず、光学ファインダを用いる撮影モードが選択されている場合を、図4〜図9を用いて説明する。
【0059】
上記のようにして、撮像情報が記憶装置に記憶されると、図2において、図示していないカメラ本体側の部材がローラ14aを押し、セット操作部材14を時計方向へ回転させる。それによって、セット部材13は、図示していないばねの付勢力に抗して時計方向へ回転させられる。そのため、一方では、セット部材13の二つのローラ13a,13bが、開閉駆動機構をセットしていくことになり、他方では、リンク部材15のピン15aが、図3において補助セット部材18を反時計方向へ回転させ、係止解除機構をセットしていくことになる。そして、それらのセット作動は、並行して行われていくことになるが、先ずは、開閉駆動機構のセット作動の方から説明する。
【0060】
そこで先ず、図2において、セット部材13が時計方向へ回転を開始すると、最初に、ローラ13aが先羽根用駆動部材10のローラ10bを押し、先羽根用駆動部材10を、図示していない先羽根用駆動ばねの付勢力に抗して、反時計方向へ回転させるので、開口部1aの下方位置に格納されていた先羽根の4枚の羽根37〜40が、隣接する羽根同士の重なり量を小さくしつつ、スリット形成羽根40を先頭にして上方へ作動させられていく。そして、先羽根のスリット形成羽根40と後羽根のスリット形成羽根46の重なりが所定量に達すると、セット部材13の他方のローラ13bが、後羽根用第2駆動部材12のローラ12cを押し始めるため、後羽根用第2駆動部材12は、図示していない後羽根用駆動ばねの付勢力に抗して、反時計方向へ回転させられようになる。
【0061】
また、上記したように、図示していないセットばねが、後羽根用第1駆動部材11と後羽根用第2駆動部材12との間に掛けられていて、後羽根用第1駆動部材11を反時計方向へ回転させ且つ後羽根用第2駆動部材12を時計方向へ回転させるように付勢しているので、後羽根用第2駆動部材12が、上記のようにして、セット部材13によって反時計方向へ回転させられると、先羽根用第1駆動部材11も、その係合部11aが後羽根用第2駆動部材12の窓部12bの縁に追従して、反時計方向へ回転させられる。そのため、後羽根の4枚の羽根43〜46は、その時点から隣接する羽根同士の重なり量を小さくしつつ上方へ作動させられていく。そして、それ以後は、先羽根と後羽根は、スリット形成羽根同士の重なり量を好適に保ちながら作動を続けていくことになる。
【0062】
このようにして、セット作動が行われてゆき、先羽根の4枚の羽根37〜40が展開状態となって開口部1aを覆い、後羽根の4枚の羽根43〜46が重畳状態となって開口部1aの上方位置に格納された段階になると、後羽根用第1駆動部材11は、その駆動ピン11bが、シャッタ地板1に形成されている円弧状の長孔1cの上端に当接して停止させられる。
【0063】
そして、先羽根用駆動部材10と後羽根用第2駆動部材12は、その後も、僅かに反時計方向への回転を続けるので、先羽根の4枚の羽根37〜40も上方への作動を続けるが、後羽根の4枚の羽根43〜46は停止したままになるため、後羽根用第1駆動部材11と後羽根用第2駆動部材12との間に掛けられた図示していないセットばねが緊張されていく。つまり、本実施例の場合には、このような作動を可能にしたことによって、後羽根用第2駆動部材12がそれ以上回転しても、後羽根の4枚の羽根43〜46は、それに伴って、それ以上は上方へ作動させられないようになっている。
【0064】
そのため、後羽根の格納領域のスペース、言い換えれば、開口部1aの上端縁からシャッタ地板1の上端縁までの距離が小さくて済むので、光学ファインダなどの図示していないカメラ本体側の構成部材を、少しでも有利に設置できるようになっている。従って、そのように構成する必要がない場合には、後羽根用第1駆動部材11と後羽根用第2駆動部材12とを、一つの部材としてしまっても構わない。
【0065】
本実施例の場合には、このようにして、後羽根用第1駆動部材11の回転が停止した後も、先羽根用駆動部材10と後羽根用第2駆動部材12は、なおも反時計方向へ回転させられていく。それによって、先羽根用駆動部材10は、その被係止部10aが、その段階では既に被係止部10aの作動軌跡内に存在している(その理由は、後述の係止解除機構のセット作動説明から理解することができる)係止部16aを押すことによって、先羽根用係止部材16を、図示していないばねの付勢力に抗して僅かに時計方向へ回転させ始める。そして、先羽根用駆動部材10がなおも回転してそれらの接触が解かれると、先羽根用係止部材16は、図示していないばねの付勢力によって反時計方向へ回転させられ、係止部16aを、被係止部10aの係止可能状態にする。
【0066】
他方、上記のように、先羽根用駆動部材10の被係止部10aが、先羽根用係止部材16の係止部16aを押している段階では、後羽根用第2駆動部材12も、被係止部12aが、その被係止部12aの作動軌跡内に既に存在している(後述の係止解除機構のセット作動説明から理解することができる)係止部17aを押すことによって、後羽根用係止部材17を、図示していないばねの付勢力に抗して、反時計方向へ回転させ始めている。そして、後羽根用第2駆動部材12がなおも回転することによってそれらの接触が解かれると、後羽根用係止部材17は、図示していないばねの付勢力によって時計方向へ回転させられ、係止部17aを、被係止部12aの係止可能状態にする。そのときの状態が、図4に示されたオーバーセット状態である。
【0067】
このようなオーバーセット状態になると、図示していないカメラ本体側の部材が、セット操作部材14のローラ14aから離れていく。そのため、セット部材13は、図示していないばねの付勢力によって反時計方向へ回転し得るようになり、リンク部材15を介して、セット操作部材14を反時計方向へ回転させながら、初期位置へ復帰していく。
【0068】
他方、この回転によって、セット部材13のローラ13a,13bが、二つの駆動部材10,12のローラ10b,12cに対する押圧力を解いていくので、それらの駆動部材10,12は、図示していない駆動ばねの付勢力によって時計方向へ回転させられるが、いずれも僅かに回転したところで、それらの被係止部10a,12aが上記の各係止部材16,17の係止部16a,17aによって係止され、停止させられる。また、この僅かな回転で、先羽根の4枚の羽根37〜40は僅かに下方へ作動させられるが、開口部1aの一部を開いてしまうことはない。そして、その後、セット部材13が初期位置で停止すると、セット作動が完了するが、図5は、そのセット完了状態、即ち光学ファインダを用いる撮影モードで撮影するときの撮影待機状態を示したものである。
【0069】
以上で、開閉駆動機構のセット作動の説明を終え、次に、セット作動時に、セット部材13が、図2において、図示していないばねの付勢力に抗して時計方向へ回転し、リンク部材15のピン15aによって、係止解除機構をセットする場合を説明する。セット部材13が図2において時計方向へ回転すると、図3に示されている補助セット部材18は、その長孔18bの幅方向の縁をリンク部材15のピン15aに押されて反時計方向へ回転させられ、その押動部18aによってホールド補助部材28の被押動部28aを押し、図示していない上記の第1ばねの付勢力に抗して、ホールド部材27とホールド補助部材28を反時計方向へ回転させていく。
【0070】
それにより、ホールド部材27の先端に取り付けられている押圧部材29は、その二つの押圧部29a,29bによって鉄片部材24,26の被押動部24a,26aを押し、各々の図示していないばねの付勢力に抗して、先羽根用係止解除部材23を反時計方向へ回転させ、後羽根用係止解除部材25を時計方向へ回転させていく。また、その回転に伴って、二つの係止解除部材23,25の押動部23a,25aが、上記の先羽根用係止部材16と後羽根用係止部材17の被押動部16b,17bに対する押圧力を解いていく。
【0071】
その結果、各々の図示していないばねの付勢力によって、先羽根用係止部材16は反時計方向へ回転し、後羽根用係止部材17は時計方向へ回転するので、上記の開閉駆動機構の作動説明で述べたように、それらの係止部16a,17aが、二つの駆動部材10,12に形成されている被係止部10a,12aの作動軌跡内に存在するようになる。そして、それらの係止部材16,17の回転は、それらの被押動部16b,17bが上地板7の縁に当接することによって停止させられる。
【0072】
ホールド部材27は、その後も、押圧部材29によって先羽根用係止解除部材23と後羽根用係止解除部材25を回転させていくと、やがて、鉄片部材24,26が、先羽根用電磁石19と後羽根用電磁石20の各々の鉄芯部材19a,20aに接触する。そのため、先羽根用係止解除部材23と後羽根用係止解除部材25の回転は停止し、ホールド部材27もそれ以上は反時計方向へ回転できなくなる。しかしながら、その後もホールド補助部材28の被押動部28aが補助セット部材18の押動部18aに押されるので、ホールド補助部材28は、ホールド部材27との間に掛けられた図示していない上記の第2のばねを緊張させながら僅かに回転させられたところで停止することになる。
【0073】
他方、上記のように鉄片部材24,26が鉄芯部材19a,20aに接触した後、レリーズレバー30は、それまで、ホールド補助部材28の被押動部28aによって阻止されていた回転を許されるようになり、図示していないばねの付勢力によって反時計方向へ回転させられ、その当接部30cが上地板7の被当接部7kに当接して停止させられる。それによって、レリーズ部材30の係止部30aが、ホールド補助部材28の被押動部28aの作動軌跡内に入り込んで、ホールド補助部材28の時計方向の回転を阻止し得る状態になる。補助セット部材18の回転が停止して、係止解除機構がこのような状態になったときが、上記の開閉駆動機構のセット作動で説明したオーバーセット状態のときである。
【0074】
このようなオーバーセット状態から、上記したように、レリーズ部材13が初期位置へ復帰させられると、補助セット部材18も時計方向へ回転させられるので、ホールド補助部材28も、ホールド部材27との間に掛けられた図示していない上記の第2のばねの付勢力によって時計方向へ回転させられるが、その回転は、僅かに回転したところで、ホールド補助部材28の被押動部28aが、レリーズ部材30の係止部30aに係止されて停止させられる。
【0075】
そして、このときのホールド補助部材28の回転は、ホールド部材27との間に掛けられている図示していない第2のばねの付勢力が作用する範囲内であるから、ホールド部材27は回転せず、押圧部材29の押圧部29a,29bは、依然として鉄片部材24,26を鉄芯部材19a,20aに接触させている。このような状態が、図6に示された係止解除機構のセット完了状態、即ち光学ファインダを用いて撮影を行うときの撮影待機状態である。
【0076】
既に説明したように、本実施例のフォーカルプレンシャッタを備えたデジタルカメラは、光学ファインダを用いる撮影モードとモニタを用いる撮影モードのいずれか一方を選択する選択手段と、静止画撮影用のレリーズボタンと、動画撮影用のレリーズボタンとを備えているが、光学ファインダを用いる撮影が選択されている場合には、動画撮影用のレリーズボタンはロックされ、押せないようになっている。そのため、図5及び図6に示されたセット完了状態、即ち光学ファインダを用いる撮影モードが選択されているときの撮影待機状態においては、動画撮影用のレリーズボタンは押すことができない。また、光電センサ47,48は、カメラの電源をONにしたときから通電されているので、セット完了状態では、いずれも、アーム35,41の遮光部35a,41aによって光路を遮断され、L信号を出力している。
【0077】
このような状態において、撮影者が、光学ファインダで被写体を観察しながら静止画像用のレリーズボタンを押すと、先ず、一方では、可動ミラーを跳ね上げて、撮影光路から退かせ、他方では、先羽根用電磁石19のコイル19bと後羽根用電磁石20のコイル20bに通電する。そのため、それまでは、単に鉄芯部材19a,20aに接触させられていただけの鉄片部材24,26が、鉄芯部材19a,20aに電磁力で吸着される。そこで次に、図示していないカメラ本体側の部材が、レリーズ部材30の被押動部30bを押すので、レリーズ部材30は、図6において時計方向へ回転し、係止部30aによって行っていた、ホールド補助部材28の係止を解く。
【0078】
被押動部28aの係止を解かれたホールド補助部材28は、図示していない上記の第2のばねの付勢力によって極めて僅かに回転した後、図示していない上記の第1のばねの付勢力によってホールド部材27と共に時計方向へ回転する。このようにしてホールド部材27が時計方向へ回転を開始すると、上記のように、鉄芯部材24,26が既に鉄芯部材19a,20aによって吸着されているので、先羽根用係止解除部材23と後羽根用係止解除部材25とは、各々の図示していないばねの付勢力によって回転することができず、押圧部材29の押圧部29a,29bが、鉄片部材24,26の被押動部24a,26aから離れていく。そして、ホールド部材27とホールド補助部材28との時計方向の回転は、ホールド補助部材28の被押動部28aが補助セット部材18の押動部18aに当接することによって停止させられる。
【0079】
このようにして、ホールド部材27の回転は停止させられるが、そのとき、ホールド部材27に取り付けられている押圧部材29が、軸27aを中心にして大きく傾いて振動する。ところが、本実施例の場合には、カバー板8の折曲部8aに、ゴム製の緩衝部材34が取り付けられているので、押圧部材29が傾くと、押圧部29a,29bのいずれかが緩衝部材34に当接し、押圧部材29の振動が早期に収まるようになっている。図7は、そのような傾きによって、押圧部材29の押圧部29bが緩衝部材34に当接している状態を示したものである。また、その後、押圧部材29が理想的な姿勢になって静止した状態が図8に示されている。
【0080】
図8に示された状態が得られると、次に、先羽根用電磁石19のコイル19bに対する通電が断たれる。そのため、鉄片部材24に対する吸着力が失われるので、先羽根用係止解除部材23は、図示していない先羽根用解除ばねの付勢力によって時計方向へ回転させられ、その過程で、押動部23aが、先羽根用係止部材16の被押動部16bを押していく。そのため、先羽根用係止部材16は、図示していないばねの付勢力に抗して時計方向へ回転させられ、それまで係止部16aによって係止していた先羽根用駆動部材10の係止を解く。そして、その後における先羽根用係止解除部材23の回転は、その押動部23aが先羽根用係止部材16の被押動部16bを、上地板7に形成されている孔7cの縁に押し付けることによって停止する。
【0081】
ところで、本実施例においては、上記のように、ホールド部材27が時計方向へ回転して停止したとき、押圧部材29が大きく傾いて振動するので、それを早期に静止させるために緩衝部材34を備えている。しかし、緩衝部材34を備えていない場合には、ホールド部材27の回転が停止した後も、押圧部材29は、早期に静止できないため、その後、先羽根用電磁石19のコイル19bに対する通電が断たれて先羽根用係止解除部材23が時計方向へ回転させられ、未だ先羽根用係止部材16による先羽根用駆動部材10の係止を解除する前に、鉄片部材24の被押動部24aが、たまたま時計方向へ回転してきた押圧部材29の押圧部29aに当接すると、それによって、先羽根用係止部材16によって先羽根用駆動部材10の係止を解くタイミングが、所定のタイミングよりも遅れてしまうことになる。
【0082】
また、その場合、鉄片部材24の被押圧部24aが、押圧部材29の押圧部29aに当接するときには、押圧部材29の傾き方が常に同じになっているとは限らないので、先羽根用駆動部材10の係止を解除するタイミングのずれ方も、撮影ごとに異なってしまうことになる。そのため、先羽根用駆動部材10の係止を解除するタイミングが一定せず、同じ状態にある被写体を複数枚撮影したときには、常に同じ露光状態の写真が得られず、いわゆる切りむらという事態が発生してしまう。
【0083】
また、本実施例のように、緩衝部材34を設けることなく、そのような事態が避けられるようにするためには、レリーズ部材30がホールド補助部材28の係止を解除してから、先羽根用電磁石19のコイル19bに対する通電を断つまでの時間を長くすればよいことになるが、そのようにすると、静止画像用のレリーズボタンを押してから実際に先羽根が露光作動を開始するまでの時間が長くなってしまい、被写体が動いていたりするとシャッタチャンスを逸してしまうおそれが大きくなる。本実施例の場合には、緩衝部材34を設けることによって、それらのような事態が起きないようになっている。
【0084】
上記のようにして、先羽根用係止解除部材23が、先羽根用係止部材16の係止部16aによる先羽根用駆動部材10の被係止部10aの係止を解くと、先羽根用駆動部材10は、図5の状態から、図示していない先羽根用駆動ばねの付勢力によって急速に時計方向へ回転させられる。そのため、先羽根の4枚の羽根37〜40は、隣接する羽根同士の重なりを大きくしつつ開口部1aの下方へ作動し、スリット形成羽根40の上端縁によって、開口部1aを開いていく。そして、周知のように、被写体が暗い場合やフラッシュ撮影をする場合には、先羽根の4枚の羽根37〜40が開口部1aを全開にしてから、二つの後羽根用駆動部材11,12が時計方向へ回転させられることになるが、本実施例の作動説明においては、被写体が明るく、しかもフラッシュを使用しないで撮影をする場合で説明する。
【0085】
上記のようにして、先羽根用電磁石19のコイル19bに対する通電が断たれてから所定時間後に、後羽根用電磁石20のコイル20bに対する通電が断たれる。そのため、鉄片部材26に対する吸着力が失われ、後羽根用係止解除部材25は、図8の状態から、図示していない後羽根用解除ばねの付勢力によって反時計方向へ回転させられるが、その過程で、押動部25aが、後羽根用係止部材17の被押動部17bを押していく。それによって、後羽根用係止部材17は、図示していないばねの付勢力に抗して反時計方向へ回転させられ、それまで係止部17aで係止していた後羽根用第2駆動部材12の係止を解く。そして、その後の後羽根用係止解除部材25の回転は、その押動部25aが後羽根用係止部材17を、上地板7に形成されている折曲部7jに押し付けることによって停止する。
【0086】
このようにして、後羽根用係止部材17による係止が解かれると、後羽根用第2駆動部材12は、図示していない後羽根用駆動ばねの付勢力によって、図5の状態から急速に時計方向へ回転させられるが、その初期段階において、窓部12bの縁が後羽根用第1駆動部材11の係合部11aを押すので、後羽根用第1駆動部材11も時計方向へ回転を開始する。従って、それ以後は、二つの駆動部材11,12は、時計方向へ一体的に回転することになる。そして、後羽根用第1駆動部材11が時計方向へ回転を開始すると、後羽根の4枚の羽根43〜46は、隣接する羽根同士の重なりを小さくしつつ開口部1a内へ作動してゆき、スリット形成羽根46の下端縁によって、開口部1aを上方から閉じていく。そのため、それ以後は、先羽根のスリット形成羽根40と後羽根のスリット形成羽根46の間に形成されたスリットにより、撮像素子の撮像面を上方から下方に向けて露光していく。
【0087】
ところで、本実施例の場合には、中間板2の形状が従来とは異なっている。即ち、本実施例の中間板2は、既に説明したように、後羽根の4枚の羽根43〜46が重畳状態にさせられて格納される側の外形形成縁が、露光開口、即ち開口部1a側に向けて凸状となる円弧状をしている。そのため、図5に示されているセット完了状態においては、後羽根の4枚の羽根43〜46は、それらの羽根の長さ方向の略中央部において、中間板2との重なり幅が小さくなるようになっている。そこで、本実施例の中間板2が何故このような形状をしているのかを、ここで説明しておく。
【0088】
周知のように、本実施例のように、シャッタ地板1と中間板2との間に先羽根が配置され、中間板2と補助地板3の間に後羽根が配置されている場合には、シャッタ地板1と中間板2の間は、先羽根の4枚の羽根37〜40が重畳状態になるところで最も大きな間隔を必要とするし、中間板2と補助地板3の間では、後羽根の4枚の羽根43〜46が重畳状態になるところで最も大きな間隔を必要とする。即ち、本実施例の場合には、シャッタ地板1と中間板2の間の羽根室は、開口部1aの下方において最も大きな間隔を必要とするし、中間板2と補助地板3の間の羽根室は、開口部1aの上方において最も大きな間隔を必要とする。
【0089】
ところが、最近では、カメラの小型化に伴い、シャッタ地板1と補助地板3との間隔を少しでも小さくすることが要求されているため、重畳状態になっているときには、先羽根の4枚の羽根37〜40は、シャッタ地板1と中間板2とによって強く挟まれ、後羽根の4枚の羽根43〜46は、中間板2と補助地板3とによって強く挟まれるようになっている。そのため、先羽根の4枚の羽根37〜40の場合も、後羽根の4枚の羽根43〜46の場合も、重畳状態から展開状態に作動するときには、従来よりも大きな摩擦力に抗して作動を開始させる必要が生じている。
【0090】
このような状況において、本実施例の場合には、先羽根の4枚の羽根37〜40が、重畳状態から展開状態に作動させられるのは、セット作動を行うときである。そのため、先羽根の場合は、その作動開始のタイミングが多少不安定になったとしても特に大きな問題は生じない。しかし、後羽根の4枚の羽根43〜46が、重畳状態から展開状態に作動するのは、露光作動を行うときである。そのため、その作動開始のタイミングが少しでも不安定になるのは大きな問題である。
【0091】
そこで、本実施例の場合には、重畳状態における後羽根の羽根43と中間板2との接触面積を、全体構成上からみて効率的に小さくするために、中間板2の外形形成縁を上記のような円弧状にしている。つまり、中間板2の上方両端の位置は、シャッタ地板1に対する取付けの都合や、その取付け部が羽根の作動に干渉しないようにするために、従来どおりにしており、その上で上端縁を円弧状にしたのは、羽根41が作動を開始するとき、円滑に作動し少しでも左右方向の傾きが生じにくいように配慮したものである。尚、外形形成縁の形状は、重畳状態における後羽根の羽根43と中間板2との接触面積を小さくすることができれば、本実施例のように円弧状でなくても、それ相当の効果が得られる。
【0092】
ここで、先羽根と後羽根による露光作動の説明に戻る。本実施例における先羽根と後羽根は、上記のようにして、所定の間隔のスリットを形成して、撮像素子の撮像面を露光していくが、周知のように、その露光量は、撮像面のどの領域においても同じであることが要求される。ところが、シャッタユニットを製作するときには、所定の規格どおりに製作されていても、カメラ本体に組み込まれたときや、カメラの発売後においては、撮像面の露光量の分布が一定せず、露光むらを発生させてしまうことがある。そこで、本実施例のフォーカルプレンシャッタを備えたデジタルカメラにおいては、そのような事態が生じても、それを自動的に補正できるようになっている。
【0093】
そこで、そのような補正を可能にするため、本実施例では、上記したように、シャッタ地板1に二つの光電センサ47,48が取り付けられており、先羽根のアーム35には遮光部35a,35bが形成され、後羽根のアーム41には遮光部41a,41bが形成されていて、先羽根と後羽根とによって形成されるスリットが、開口部1aの上方領域にあるときと、真中の領域にあるときと、下方領域にあるときとの3箇所で、スリット幅を検出するようになっている。
【0094】
そして、各領域でのスリット幅の検出は、上方領域の場合には、アーム33の遮光部35aが光電センサ47の光路から退いてから、アーム41の遮光部41aが光電センサ48の光路から退くまでの時間を検出し、真中の領域の場合には、アーム35の遮光部35bが光電センサ47の光路を遮断してから、アーム41の遮光部41bが光電センサ48の光路を遮断するまでの時間を検出し、下方領域の場合には、アーム35の遮光部35bが光電センサ47の光路から退いてから、アーム41の遮光部41bが光電センサ48の光路から退くまでの時間を検出することによって行なわれる。
【0095】
尚、このようなスリット幅の検出結果による補正は、カメラ側の制御回路が後羽根用電磁石20のコイル20bに対する通電を遮断する時機を、電気的に微調整するようにして、次の撮影が適正露光で行われるようにしてもよいが、検出時に撮影した画像情報を、記憶装置からカメラ本体側の画像処理回路に呼び出して補正をし、その補正後の画像情報を記憶装置に記憶させるようにすることも可能である。
【0096】
このようにして、先羽根の4枚の羽根37〜40と後羽根の4枚の羽根43〜46とが、それらのスリット形成羽根40,46の間にスリットを形成して下方へ移動していくが、先羽根の露光作動は、4枚の羽根37〜40が重畳状態になって開口1aからその下方位置へ退いた直後に、先羽根用駆動部材10の駆動ピン10cが緩衝部材4に当接することによって停止され、後羽根の露光作動は、4枚の羽根43〜46が展開状態になって開口1aを完全に閉鎖した直後に、後羽根用第1駆動部材11の駆動ピン11bが緩衝部材5に当接することによって停止させられる。その状態が、図1及び図2に示されている状態である。そして、既に説明したように、この状態で撮像情報が記憶装置に記憶された後、直ちにセット作動が行われるが、それと並行して、カメラ本体側に備えられている可動ミラーが撮影光路内に復帰する。
【0097】
このように、撮影終了後は直ちにセット作動が行われるため、光学ファインダを用いる撮影モードからモニタを用いる撮影モードに切り換える場合には、撮影者は、図5及び図6に示されている、光学ファインダを用いる撮影モードでの撮影待機状態において、カメラに備えられている選択手段を操作することになる。そして、そのようにしてモニタを用いる撮影モードを選択した場合には、一方では、静止画撮影用のレリーズボタンのほかに、それまでロックされていた動画撮影用のレリーズボタンも押し得るようになり、撮影光路内に復帰していた可動ミラーを撮影光路外に退避させる。また、他方では、図5及び図6に示されている状態を、モニタを用いる撮影モードでのセット状態、即ち撮影待機状態にさせることになる。
【0098】
そこで先ず、図5及び図6に示されている、光学ファインダを用いる撮影モードでの撮影待機状態を、モニタを用いる撮影モードでの撮影待機状態に切り換えるための作動を、新たに図10〜図13を用いて説明する。尚、図13は、そのように、光学ファインダを用いる撮影モードでの撮影待機状態から、モニタを用いる撮影モードでの撮影待機状態に切り換えるときの作動を説明するだけのものではなく、モニタを用いる撮影モードにおいて、静止画像を撮影する場合の作動をも説明するためのタイミングチャートである。
【0099】
既に説明したように、図6に示された、光学ファインダを用いる撮影モードでの撮影待機状態においては、二つの電磁石19,20のコイル19b,20bには通電されていない。この状態で、カメラに備えられている選択手段を操作して、モニタを用いる撮影モードに切り換えると、電磁装置33のコイル33eに順方向の電流が供給される。そのため、永久磁石回転子33aは、図6の状態から時計方向へ回転させられ、抑止部材33bを、後羽根用係止解除部材25の作動軌跡内に臨ませていく。そして、抑止部材33bが、図示していないストッパに当接することによって抑止可能位置で停止させられ、コイル33eに対する通電の断たれた状態が、図10に示された状態であるが、周知のように、この状態においては、コイル33eに対する通電が断たれていても、永久磁石回転子33aの回転位置は、鉄ピン33gとの位置関係によって維持されるようになっている。
【0100】
この図10に示された状態が得られると、その直後には、カメラ本体側の部材が、レリーズ部材30を時計方向へ回転させる。それによって、既に説明したように、ホールド部材27とホールド補助部材28が時計方向へ回転する。ところが、このときには、上記したように、二つの電磁石19,20のコイル19b,20bには通電されていない(図13の記載では「遮断」)。そのため、ホールド部材27が時計方向への回転を開始すると、それまで、押圧部材29に押されて鉄片部材24,26を鉄芯部材19a,20aに接触させられていた先羽根用係止解除部材23と後羽根用係止解除部材25とが、各々の図示していない解除ばねの付勢力によって回転を開始させられる。
【0101】
このとき、先羽根用係止解除部材23の方は、押圧部材29に追従して時計方向への回転を続け、やがて、押動部23aによって、先羽根用係止部材16の被押動部16bを押すようになるが、後羽根用係止解除部材25の方は、直ちにその被抑止部25bが抑止部材31bに当接するので、回転を抑止されてしまい、押動部25aによって後羽根用係止部材17の被押動部16bを押すことができなくなってしまう。
【0102】
このように、先羽根用係止解除部材23の方は、後羽根用係止解除部材25が抑止部材31bによって反時計方向へ回転するのを抑止された後も、ホールド部材27に追従して回転していくため、押動部23aが被押動部16bを押すことによって、先羽根用係止部材16を時計方向へ回転させ、先羽根用駆動部材10の係止を解除させる。そして、その直後に、後羽根用係止解除部材25の回転は、押動部23aが被押動部16bを、上地板7の孔7cの縁に押し付けることによって停止させられる。その状態が、図11に示された、モニタを用いる撮影モードでの係止解除機構の撮影待機状態である。
【0103】
先羽根用駆動部材10は、上記のようにして、先羽根用係止部材16による係止を解除されると、既に説明したように、図示していない先羽根用駆動ばねの付勢力によって時計方向へ急速に回転させられる。そして、先羽根の4枚の羽根37〜40が開口部1aを全開にした後、駆動ピン10cが緩衝部材4に当接することによって停止させられる。図12は、そのときの状態を示したものであって、この状態が、モニタを用いる撮影モードの場合における開閉駆動機構の撮影待機状態であり、モニタでの被写体像の観察が可能になる。
【0104】
尚、本実施例においては、光学ファインダを用いる撮影モードとモニタを用いる撮影モードとの切換えが行われるときと、モニタを用いる撮影モードでの撮影が行われるときには、光電センサ47,48の検出信号が変化するが、それらの検出信号は、すべて無視されるようになっている。このことから、カメラに備えられている選択手段によってモニタを用いる撮影モードが選択された場合には、光電センサ47,48に対する通電が自動的に断たれるようにしても構わない。
【0105】
そこで次に、このような撮影待機状態から静止画像を撮影する場合を説明する。その場合には、上記の光学ファインダを用いる撮影モードの場合と同様に、静止画撮影用のレリーズボタンを押すことになる。それによって、電子制御回路が、それまで撮像素子に蓄積されていた電荷を放出させ、新たに電荷の蓄積を開始させることによって撮影が開始する。そして、所定の時間が経過すると、図11の状態において、電磁装置33のコイル33eに、逆方向の電流が供給される。そのため、永久磁石回転子33aは、反時計方向へ回転させられ、抑止部材33bによる後羽根用係止解除部材25の抑止を解く。そして、抑止部材33bが、図示していないストッパに当接し、抑止不能位置に停止させられると、コイル33eに対する通電が断たれる。
【0106】
他方、図11の状態から、抑止部材33bによる抑止を解かれた後羽根用係止解除部材25は、図示していない後羽根用解除ばねの付勢力によって反時計方向へ回転させられ、押動部25aが、後羽根用係止部材17の被押動部17bを押すことによって、後羽根用係止部材17による後羽根用第2駆動部材12の係止を解く。その後の後羽根用係止解除部材25の回転は、後羽根用係止部材17が上地板7に形成されている折曲部7jに当接することによって停止させられる。そして、そのときにおける本実施例の係止解除機構は、図3に示された状態と同じになる。
【0107】
このようにして、後羽根用係止部材17による係止が解かれると、後羽根用第2駆動部材12は、図示していない後羽根用駆動ばねの付勢力によって、図12の状態から急速に時計方向へ回転させられ、その初期段階において、窓部12bの縁が後羽根用第1駆動部材11の係合部11aを押すことによって、後羽根用第1駆動部材11を時計方向へ回転させる。そのため、後羽根の4枚の羽根43〜46は、隣接する羽根同士の重なりを小さくしつつ開口部1aを上方から閉じていく。そして、後羽根の4枚の羽根43〜46が開口部1aを完全に閉鎖すると、後羽根用第1駆動部材11と後羽根用第2駆動部材12の回転は、駆動ピン11bが緩衝部材5に当接することによって停止される。そのときにおける本実施例の開閉駆動機構は、図2に示された状態と同じになる。
【0108】
上記のようにして、本実施例の開閉駆動機構と係止解除機構とが、図2及び図3に示された状態になると、撮像情報が、撮像素子から画像処理回路を介して転送され、記憶装置に記憶された後、直ちにセット作動が行われる。そして、そのセット作動は、図5及び図6に示された状態になるまでは、上記の光学ファインダを用いた撮影モードの場合と全く同じである。そのため、その説明を省略するが、このモニタを用いた撮影モードの場合には、その図5及び図6に示された状態になってもセット作動が終了したことにはならず、その後もさらに続行されることになる。
【0109】
即ち、図5及び図6に示された状態になった後は、光学ファインダを用いた撮影モードからモニタを用いた撮影モードに切り換えるときに説明した作動と同様に、係止解除機構は、さらに、図6に示された状態から、図10に示された状態を経て、図11に示された状態になるまで作動させられることによって、モニタを用いた撮影モードでのセット作動が終了する。従って、このときには、開閉駆動機構の方も、図5に示された状態から図12に示された状態に作動させられ、モニタによって撮影前における被写体像の観察が可能になる。
【0110】
次に、カメラに備えられている選択手段が、モニタを用いる撮影モードを選択しているときであって、動画撮影を行う場合の作動を、図13の代わりに図14のタイミングチャートを用いて説明する。尚、この図14は、動画撮影を行う場合の作動だけを示したものではなく、図13の場合と同様に、光学ファインダを用いる撮影モードでの撮影待機状態を、モニタを用いる撮影モードでの撮影待機状態に切り換える場合の作動も含めて示したものである。そして、その切換え作動は、既に説明したようにして行われるので、ここでは、その切換え作動の説明を省略する。
【0111】
また、動画撮影を行う場合の撮影待機状態は、モニタを用いる撮影モードで静止画像の撮影を行う場合の撮影待機状態と全く同じである。そのため、係止解除機構は図11に示された状態になっていて、開閉駆動機構は図12に示された状態になっており、モニタを用いて被写体像の観察が可能になっている。しかし、動画撮影を行う場合には、静止画像撮影用のレリーズボタンを押すのではなく、上記のように、選択手段によってモニタを用いる撮影モードが選択されたときにロックを解除されていた動画撮影用のレリーズボタンを押すことになる。
【0112】
図11及び図12に示された状態において、動画撮影用のレリーズボタンを押す(図14の記載では「動画撮影用レリーズボタンON」)と、電子制御回路が、それまで撮像素子に蓄積されていた電荷を放出させ、新たに電荷の蓄積を開始させることによって動画撮影が開始し、動画撮影用のレリーズボタンを押している間は動画撮影が続行されることになる。そして、動画撮影用のレリーズボタンを離す(図14の記載では「動画撮影用レリーズボタンOFF」)と、その信号で、電磁装置33のコイル33eに、逆方向の電流が供給され、永久磁石回転子33aは、図11の状態から反時計方向へ回転させられ、抑止部材33bによる後羽根用係止解除部材25の抑止を解く。そのため、本実施例の係止解除機構は、後羽根用係止解除部材25が、図示していない後羽根用解除ばねの付勢力によって反時計方向へ回転させられ、後羽根用係止部材17による後羽根用第2駆動部材12の係止を解くことによって、図3に示された状態になる。
【0113】
他方、図12の状態において、後羽根用係止部材17による後羽根用第2駆動部材12の係止が解かれると、既に説明したようにして、後羽根用第2駆動部材12は、後羽根用第1駆動部材11を伴って時計方向へ回転させられ、後羽根の4枚の羽根43〜46に開口部1aを閉じさせる。そして、後羽根の4枚の羽根43〜46が開口部1aを完全に閉鎖すると、後羽根用第1駆動部材11と後羽根用第2駆動部材12の回転は、駆動ピン11bが緩衝部材5に当接することによって停止させられる。そのとき、本実施例の開閉駆動機構は、図2に示された状態になる。
【0114】
このようにして、図2及び図3に示された状態になると、本実施例の開閉駆動機構と係止解除機構とは、既に説明した、モニタを用いる撮影モードでの静止画撮影におけるセット作動の場合と同様にしてセット作動を行わされ、図11及び図12に示された撮影待機状態に復帰させられる。従って、この動画撮影後のセット完了状態、即ち次の撮影待機状態は、モニタを用いる撮影モードでの撮影待機状態であるため、次の撮影に際して、静止画撮影用のレリーズボタンを押せば、静止画撮影が行われ、動画撮影用のレリーズボタンを押せば、動画撮影が行われることになる。
【0115】
尚、上記の動画撮影の作動説明は、動画撮影を終了するに際して、動画撮影用のレリーズボタンを離したときに、その信号で、電磁装置33のコイル33eに逆方向の電流が供給され、抑止部材33bによる後羽根用係止解除部材25の抑止を解くことによって、次の撮影待機状態になるまでの一連のセット作動が行われる場合で説明した。しかしながら、この動画撮影を行った場合には、上記のような静止画撮影の場合と同じようなセット作動を行わせず、動画撮影用のレリーズボタンを離しただけで、次の撮影待機状態とすることも可能である。
【0116】
最後に、図11及び図12に示されている、モニタを用いる撮影モードでの撮影待機状態を、光学ファインダを用いる撮影モードでの撮影待機状態に切り換える場合について説明する。カメラに備えられている選択手段を操作して、光学ファインダを用いる撮影モードに切り換えると、図11の状態において、電磁装置33のコイル33eに、逆方向の電流が供給され、永久磁石回転子33aが、反時計方向へ回転させられる。それによって、抑止部材33bが、後羽根用係止解除部材25の抑止を解き、抑止不能位置において図示していないストッパに当接すると、コイル33eに対する通電が断たれる。
【0117】
そして、図11の状態から、抑止部材33bによる抑止を解かれた後羽根用係止解除部材25は、図示していない後羽根用解除ばねの付勢力によって反時計方向へ回転させられ、押動部25aが、後羽根用係止部材17の被押動部17bを押すことによって、後羽根用係止部材17による後羽根用第2駆動部材12の係止を解く。その後、後羽根用係止解除部材25の回転は、後羽根用係止部材17が上地板7に形成されている折曲部7jに当接することによって停止させられる。そのときにおける本実施例の係止解除機構は、図3に示された状態と同じになる。
【0118】
他方、後羽根用係止部材17による係止が解かれると、後羽根用第2駆動部材12は、図示していない後羽根用駆動ばねの付勢力によって、図12の状態から急速に時計方向へ回転させられ、後羽根用第1駆動部材11を時計方向へ回転させる。そのため、後羽根の4枚の羽根43〜46は、隣接する羽根同士の重なりを小さくしつつ開口部1aを上方から閉じていく。そして、後羽根の4枚の羽根43〜46が開口部1aを完全に閉鎖すると、後羽根用第1駆動部材11と後羽根用第2駆動部材12の回転は、駆動ピン11bが緩衝部材5に当接することによって停止される。そのときにおける本実施例の開閉駆動機構は、図2に示された状態と同じになる。
【0119】
このようにして、開閉駆動機構と係止解除機構とが、図2及び図3に示された状態になると、直ちに、既に説明した光学ファインダを用いる撮影モードにおけるセット作動と全く同じ作動が行われる。そして、その作動は、図5及び図6に示された状態になって停止する。従って、その状態が、次に行われる、光学ファインダを用いる撮影モードでの撮影待機状態ということになる。そしてまた、このときには、動画撮影用のレリーズボタンは、ロック状態にさせられる。
【0120】
尚、本実施例の場合には、カメラに備えられている選択手段によって、モニタを用いる撮影モードに切り換えたときには、静止画撮影と動画撮影のいずれかを選択して撮影できるようにしているが、本発明は、そのようにすることに限定されず、いずれか一方だけの撮影しかできないようにしても構わない。
【0121】
また、本実施例の電磁装置33は、上記のように、永久磁石回転子33aを有していて、その永久磁石回転子33aに抑止部材33bを一体化している。そして、その永久磁石回転子33aは、本発明の可動子に相当し、抑止部材33bは本発明の抑止手段に相当するものである。しかしながら、本発明の電磁装置と抑止手段とは、このような構成に限定されるものではない。例えば、本実施例の抑止部材33bを永久磁石回転子33aとは別体の部材として上地板7に回転可能に取り付けておき、永久磁石回転子33aの出力手段である出力ピンや出力歯車によって往復回転させるように構成してもよい。
【0122】
また、本発明の電磁装置は、永久磁石回転子を可動子とするステッピングモータであっても差し支えない。その場合、抑止手段は、本実施例のように、その永久磁石回転子と一体化することが好ましいが、上記のように別体の部材とし、その永久磁石回転子の出力手段によって往復回転させるようにしてもよい。また、そのように、本発明の電磁装置をステッピングモータとした場合には、抑止手段の回転を停止させるためのストッパを設けなくても済む場合がある。
【0123】
更に、本発明の電磁装置は、ソレノイドの中で往復作動させられる棒状の鉄芯部材を可動子とした電磁プランジャであっても差し支えない。その場合にも、抑止手段は、鉄芯部材と一体化しておき、後羽根用係止解除手段の作動軌跡内に進退させるようにすることが好ましいが、上記のように別体の部材とし、鉄芯部材によって往復回転させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0124】
1 シャッタ地板
1a,2a,3a 開口部
1b,1c,18b 長孔
1d〜1f,7a 柱
1g〜1k,1m,1n,1p,7b,7d,7e,7m,7n,14b,27a 軸
2 中間板
2b 外形形成縁
3 補助地板
4,5,9,34 緩衝部材
6,21,22,31,32 ねじ
7 上地板
7c 孔
7f〜7h,7j,8a 折曲部
7i,12b 窓部
7k 被当接部
7p,7q 位置決めピン
8 カバー板
10 先羽根用駆動部材
10a,12a 被係止部
10b,12c,13a,13b,14a ローラ
10c,11b 駆動ピン
11 後羽根用第1駆動部材
11a 係合部
12 後羽根用第2駆動部材
13 セット部材
14 セット操作部材
15 リンク部材
15a ピン
16 先羽根用係止部材
16a,17a,30a 係止部
16b,17b,24a,26a,28a,30b 被押動部
17 後羽根用係止部材
18 補助セット部材
18a,23a,25a 押動部
18c 逃げ孔
19 先羽根用電磁石
19a,20a 鉄芯部材
19b,20b,33e コイル
19c,20c ボビン
20 後羽根用電磁石
23 先羽根用係止解除部材
24,26 鉄片部材
25 後羽根用係止解除部材
25b 被抑止部
27 ホールド部材
28 ホールド補助部材
29 押圧部材
29a,29b 押圧部
30 レリーズ部材
30c 当接部
33 電磁装置
33a 永久磁石回転子
33b 抑止部材
33c 第1固定子枠
33d 第2固定子枠
33f ヨーク
33g 鉄ピン(磁性体棒)
35,36,41,42 アーム
35a,35b,41a,41b 遮光部
37〜40,43〜46 羽根
47,48 光電センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャッタ地板と補助地板との間を中間板で仕切って構成した二つの羽根室内に個別に配置されている先羽根及び後羽根と、前記先羽根と前記後羽根に連結されていて先羽根用係止部材と後羽根用係止部材による係止が順に解かれると先羽根用駆動ばねと後羽根用駆動ばねの付勢力によって各々回転し前記先羽根と前記後羽根に露光作動を行わせる先羽根用駆動部材及び後羽根用駆動部材と、前記先羽根と前記後羽根が露光作動を行うときは前記二つの駆動部材の作動軌跡外に退いた初期位置にあり前記露光作動が終了すると該初期位置からセット作動を開始し前記二つの駆動部材を前記二つの駆動ばねの付勢力に抗して前記二つの係止部材に係止され得る位置まで回転させ撮影前には該初期位置へ復帰しているセット部材と、先羽根用電磁石と後羽根用電磁石のコイルに通電されているときは該二つの電磁石の鉄芯部材に各々吸着保持されていて該二つの電磁石の各コイルに対する通電が順に断たれると先羽根用解除ばねと後羽根用解除ばねの付勢力によって該鉄芯部材から各々離反して前記二つの係止部材による前記二つの駆動部材の係止を個別に解く先羽根用係止解除手段及び後羽根用係止解除手段と、前記セット部材の前記セット作動に連動して作動させられ前記二つの解除ばねの付勢力に抗して前記二つの係止解除手段を押動し前記二つの鉄芯部材に接触させ前記二つの電磁石のコイルに通電されると前記二つの係止解除手段の作動軌跡外に作動させられるホールド手段と、を備えているカメラ用フォーカルプレンシャッタにおいて、往復作動可能な可動子を有している電磁装置と、前記可動子によって往復作動させられ前記後羽根用係止解除手段の作動軌跡内に進退させられる抑止手段とを備えていて、前記後羽根用係止解除手段が前記後羽根用電磁石の鉄芯部材に接触しているときに、前記抑止手段を前記後羽根用係止解除手段の作動軌跡内に進出させたときには、前記二つの電磁石のコイルに通電せずに前記ホールド手段を前記二つの係止解除手段の作動軌跡外へ作動させ、それに伴って前記後羽根用電磁石の鉄芯部材から離反する前記後羽根用係止解除手段の作動を、前記後羽根用係止部材による前記後羽根用駆動部材の係止を解く前に、前記抑止手段が抑止し、その後、前記電磁装置が前記抑止手段を前記後羽根用係止解除手段の作動軌跡外に作動させると、前記後羽根用係止解除手段が前記後羽根用係止部材による前記後羽根用駆動部材の係止を解くようにしたことを特徴とするデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタ。
【請求項2】
前記抑止手段が、前記電磁装置の可動子と一体化されていることを特徴とする請求項1に記載のデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタ。
【請求項3】
前記可動子が、永久磁石を有する回転子であることを特徴とする請求項1又は2に記載のデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタ。
【請求項4】
前記電磁装置がプランジャであることを特徴とする請求項1又は2に記載のデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタ。
【請求項5】
前記後羽根用駆動部材が、同軸上に回転可能に取り付けられた後羽根用第1駆動部材と後羽根用第2駆動部材とで構成されており、該後羽根用第1駆動部材は、先羽根を連結していて、セット作動時には、セットばねの付勢力によって該後羽根用第2駆動部材に追従して回転し、該後羽根用第2駆動部材は、後羽根に露光作動を開始させる前には、前記後羽根用係止部材に係止されていて、その係止が解かれたときには、該セットばねの付勢力に抗して前記後羽根用駆動ばねの付勢力により該後羽根用第1駆動部材を押しながら回転するようにしたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタ。
【請求項6】
前記後羽根は、前記シャッタ地板に枢着された二つのアームと、それらのアームに対して長さ方向に順に枢支された複数枚の略短冊状をした羽根とからなっていて、露光作動開始直前の状態においては、それらの羽根が露光開口から退いて重畳状態となるように構成されており、前記中間板は、重畳状態にある前記複数枚の羽根と重なる領域の外形縁が、露光開口側に向けて凸状となる円弧状をしていて、前記複数枚の羽根とは、それらの羽根の長さ方向の略中央部において、それらとの重なり幅が小さくなるように形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタ。
【請求項7】
前記ホールド手段は、二つの押圧部を有する押圧部材を所定の回転角度内で回転可能に取り付けていて、前記セット部材の前記セット作動に連動して作動するときは、該二つの押圧部によって前記二つの係止解除手段を前記二つの解除ばねの付勢力に抗して押し、前記二つの係止解除手段を前記二つの鉄芯部材に接触させた状態でレリーズ部材に係止され、該レリーズ部材がその係止を解くと、ばねの付勢力によって前記二つの係止解除手段の作動軌跡外へ作動させられるように構成されており、該ばねの付勢力による作動の停止時においては、前記押圧部材の少なくとも一方の押圧部が、前記シャッタ地板と一体の部材に取り付けられている緩衝部材に当接し得るようにしたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のデジタルカメラ用フォーカルプレンシャッタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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