説明

デジタルコヒーレント受信機及び位相制御方法

【課題】偏波変動がある場合でも受信機において安定した位相制御を可能にする。
【解決手段】光伝送路から受信された信号をサンプリングしてデジタル信号を生成するデジタル変換部と、前記デジタル信号の位相を検出する位相検出部と、前記検出された位相に基づいて、前記デジタル信号のサンプリング位相を調整する位相調整部と、前記位相調整された前記デジタル信号を復調する復調部とを備え、前記位相検出部は、異なる等化特性で前記デジタル信号を等化する複数のフィルタと、前記複数のフィルタの各々に接続され、対応するフィルタから出力される信号の位相を表わす位相検出信号と位相検出感度を表す感度モニタ信号とを出力する複数の感度モニタ位相検出器と、対応する前記位相検出信号を補正するための感度補正係数を生成する複数の感度補正係数生成部と、前記感度補正係数により補正された前記各位相検出信号を合成して位相信号を出力する加算器とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルコヒーレント受信機及び位相制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超高速光通信において、OSNR(Optical Signal to Noise Ratio)の不足と、波長分散等の線形歪を解決するために、従来の直接検波方式に替えて、ADC(アナログデジタルコンバータ)を使用したデジタルコヒーレント受信が主流になりつつある。超高速ゆえにADCのサンプリング周波数をオーバーサンプリングするだけのハードウエア的な余裕がないため、要求される信号品質を満たすためには、最適のタイミングでサンプリングする必要がある。従来技術として、1シンボル当たり2回のサンプリングを行い、ガードナー位相検出器を用いて最適サンプリングからのズレを観測して位相補償を最適にする方法が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
図1(A)は、公知のデジタルコヒーレント受信機1000の概略構成図である。光伝送路からの信号光と局発光との検波結果を光電変換して得られるO/E変換信号は、デジタル変換部1150に入力される。デジタル変換部1150は、周波数可変発振器1140で生成されるクロックに同期して、O/E変換信号(アナログ信号)をデジタルサンプリングする。デジタルサンプリングされた信号は、デジタル信号処理回路1160で信号処理される。具体的には、波形歪補償回路1161で波形歪が補償され、位相制御回路1162でデジタル位相補償を受け、適応等化型復調回路1163で適応等化型の波形歪補償を受けた後に復調される。
【0004】
波形歪が補償された入力信号は、位相制御回路1162の位相補償器(PHA:Phase Adjustor)1511で位相補償を受け、適応等化型復調回路1163に入力されるとともに、位相検出部(PD:Phase Detector)1512に供給される。PD1512は、位相補償器1511の出力に基づいて、最適サンプリングからの位相ズレを検出する。検出された位相信号は、第1DLF(デジタルループフィルタ)1513を介して位相補償器1511にフィードバックされるとともに、第1DLF1513と第2DLF1514を介して周波数可変発振器1140にフィードバックされる。
【0005】
高速のジッタ(jitter)や局発光揺らぎによる影響は、位相信号をFIR(有限インパルス応答)フィルタで構成される位相補償器511へフィードバックすることで除去される。ワンダー等の低速のサンプリングからのずれは、位相信号を周波数可変発振器1140にフィードバックすることで、除去することができる。
【0006】
ところで、位相検出部1512にガードナー位相検出器を用いた場合、位相検出感度が低下する。その原因として、波形歪補償における波長分散補償誤差により符号間干渉が生じるため、シンボル変化点の位相が確定できない、あるいは、ファイバの複屈折によって生じる偏波モード分散(PMD:Polarization Mode Dispersion)により、PD出力においてH軸成分とV軸成分で正負が逆になり、互いに打ち消しあって感度が低下する、などが挙げられる。感度が低下すると、位相追従性が悪化し、同期はずれが発生する可能性がある。
【0007】
感度低下を補償するために、図1(B)のようなダイバーシチ加算型の位相検出部1512が提案されている。ダイバーシチ加算型の位相検出部1512では、等化特性が互いに異なる複数の等化フィルタ281−1〜281−Nを、複数の感度モニタ位相検出器282−1〜282−Nの前段に配置する。等化特性が異なる複数の処理系列を用いることで、一つの位相検出器で位相が検知できない場合でも、他の位相検出器の出力を用いて、位相追従性を維持することができる。特に、図1(B)の構成では、閾値を越える感度モニタ値を有する位相検出信号だけを合成部313で加算して位相信号を生成することによって、SN比を改善することができる。なお、位相検出結果の合成に先立って、各感度モニタ値から感度補正係数が生成され(321−1〜321−N)、対応する位相信号に乗算されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−9956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、感度が高い位相検出値のみを選択してダイバーシチ合成した場合でも、偏波変動による影響を受けざるをえない。各位相検出器282からの出力は、偏波モード分散の状態によって異なる。偏波モード分散は偏波状態(SOP:State of Polarization)により変化する。そのため、突然の偏波変動(偏波軸の回転など)が生じると各位相検出器の補正値が変動するが、補正値の切り替わり時にギャップが生じる。特に、これまで閾値未満であった検出値が突然大きくなる場合に位相補償の精度が低下し、最終的な出力である位相信号(位相制御量)に誤差が出てしまう。
【0010】
この問題を、図2を参照して説明する。ダイバーシチ加算型の位相検出部を用い、偏波状態を様々に変化させて、残留分散と位相制御幅の関係、及び残留分散と信号品質(Q値)の関係をシミュレーションした。図2に示すように、位相信号に誤差が生じる結果、同期はずれが生じバーストエラーが発生する。ここでは、1[sample]前後が正しい位相制御量であるが、残留分散が大きくなると感度が低下し、位相制御量に大きな誤差が生じる。
【0011】
そこで、偏波モード分散や偏波変動にもかかわらず、安定してサンプリング位相を制御することのできるデジタルコヒーレント受信機と、位相制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の観点では、デジタルコヒーレント受信機を提供する。デジタルコヒーレント受信機は、
光伝送路から受信された信号をサンプリングしてデジタル信号を生成するデジタル変換部と、
前記デジタル信号の位相を検出する位相検出部と、
前記検出された位相に基づいて、前記デジタル信号のサンプリング位相を調整する位相調整部と、
前記位相調整された前記デジタル信号を復調する復調部と
を備え、
前記位相検出部は、
異なる等化特性で前記デジタル信号を等化する複数のフィルタと、
前記複数のフィルタの各々に接続され、対応するフィルタから出力される信号の位相を表わす位相検出信号と、位相検出感度を表す感度モニタ信号とを出力する複数の感度モニタ位相検出器と、
前記感度モニタ信号の二乗和を用いて、対応する前記位相検出信号を補正するための感度補正係数を生成する複数の感度補正係数生成部と、
前記感度補正係数により補正された前記各位相検出信号を合成して位相信号を出力する加算器と、
を含む。
【0013】
第2の観点では、位相制御方法を提供する。位相制御方法は、
光伝送路から受信された信号をサンプリングしてデジタル信号を生成し、
前記デジタル信号を、異なる等化特性を有する複数のフィルタに入力し、
前記複数のフィルタの各々から出力される信号の位相を検出して位相検出信号を生成するとともに、位相検出感度を表す感度モニタ信号を生成し、
前記感度モニタ信号の二乗和を用いて前記位相検出感度を補正するための感度補正係数を生成し、
前記感度補正係数により感度補正された前記各位相検出信号を合成して位相信号を出力し、
前記位相信号を用いて、前記デジタル信号のサンプリング位相を調整する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
上記構成と手法により、偏波モード分散や偏波変動が生じた場合でも、デジタルコヒーレント受信機において安定してサンプリング位相制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来のデジタルコヒーレント受信機の概略構成図である。
【図2】従来技術の課題を説明するための図である。
【図3】本発明が適用されるデジタルコヒーレント受信機の構成例である。
【図4】図3のデジタルコヒーレント受信機のデジタル信号処理回路の構成例である。
【図5】図4のサンプリング位相制御部で用いられるループフィルタの構成例である。
【図6】図4のサンプリング位相制御部で用いられるサンプリング位相検出部(PD)の構成例である。
【図7】図6のサンプリング位相検出部で用いられる等化フィルタの構成例である。
【図8】図6の感度モニタ位相検出器で用いられるガードナー位相検出器の構成である。
【図9】図6の感度モニタ位相検出器で用いられる感度用δシフタの構成例である。
【図10】図6のサンプリング位相検出部で生成される感度補正された位相信号を説明するための図である。
【図11】図10の位相信号で制御されるサンプリング位相調整部の構成例である。
【図12】図11のサンプリング位相調整部の小数部補正回路の構成例である。
【図13】図11のサンプリング位相調整部の小数部補正回路の別の構成例である。
【図14】感度モニタ位相検出器の前段に配置されるフィルタの効果を説明するための図である。
【図15】感度モニタ位相検出器の前段に配置されるフィルタの効果を示す図である。
【図16】実施例による二乗和合成の効果を示す図である。
【図17】実施例による二乗和合成の効果を示す図である。
【図18】実施例の効果を示すグラフである。
【図19】その他の二乗和合成方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の実施例では、デジタル信号処理回路のサンプリング位相制御部において、サンプリング信号の位相検出を行う際に、特性の異なる複数の等化フィルタを対応する位相検出器と感度モニタ用位相シフタの前段に配置し、すべての感度モニタ用位相シフタから出力される感度モニタ信号の二乗和を用いて、各位相検出値の感度を補正する。二乗和を用いて感度補正をすることによって、単純加算法や閾値を越えた検出値のダイバーシチ加算法と比較して、全体としての感度ばらつきを大幅に低減することができる。その結果、PMDや偏波変動が生じた場合にも補正変動を抑制し、安定した位相検出が可能になる。
【0017】
図3は、本発明が適用されるデジタルコヒーレント受信機の概略構成図である。光伝送路を介して受信された信号光は、偏光ビームスプリッタ(PBS:Polarization Beam Splitters)11により水平偏波成分(H軸偏波成分)と垂直偏波成分(V軸偏波成分)に分離される。H軸偏波成分はハイブリッド回路(90° optical hybrid)14に入力され、V軸偏波成分はハイブリッド回路(90° optical hybrid)15に入力される。局発光源12から出力された局発光は、PBS13により分離され、それぞれハイブリッド回路14及びハイブリッド回路15に入力される。
【0018】
ハイブリッド回路14は、H軸偏光成分を局発光で検波し、同相での干渉成分(I成分)を光電変換器21に出力し、90°位相差での干渉成分(Q成分)を光電変換器22に出力する。ハイブリッド回路15は、V軸偏光成分と局発光で検波し、同相での干渉成分(I成分)を光電変換器23に出力し、90°位相差での干渉成分(Q成分)を光電変換器24に出力する。これにより、位相直交成分(I、Q)と、偏波直交成分(H、V)とに分離されて計4チャネルの信号光となる。
【0019】
光電変換器21−24は、たとえばバランス型フォトダイオードであり、入力された信号光の位相変化を電流強度変化に変換する。変換された電気信号は、デジタル変換部30の対応するアナログ−デジタルコンバータ(ADC)31−34に入力される。ADC31−34の各々は、周波数可変発振器35から出力されるクロックに同期してデジタルサンプリングを行なう。たとえば、1シンボルあたり2回のサンプリング(2倍のオーバーサンプリング)を行なう。これにより、各信号のアナログ値がデジタル値に変換され、CMOS等のLSIで実現可能なクロック速度まで並列展開される。デジタル信号はデジタル信号処理回路40に入力される。
【0020】
デジタル処理回路40は、波形歪補償部41と、サンプリング位相制御部42と、適応等化型波形歪補償及び復調回路43を含む。波長分散補償部41、サンプリング位相制御部42、適応等化型波形歪補償及び復調回路43は、一つのDSP(Digital Signal Processor)で実現されてもよいし、個別のDSPとして構成されてもよい。
【0021】
波形歪補償部41は、ADC31−34から出力されたデジタル信号の波形歪を等化する。サンプリングされた信号に含まれている波形歪は、光伝送路の波長分散などに起因するものである。サンプリング位相制御部42は、波形歪が等化された各信号にデジタル位相補償を行って、適応等化型波形歪補償及び復調回路43へ信号を供給する。これとともに、入力された信号の位相検出結果を周波数可変発信器35へフィードバックしてクロック調整を行なう。適応等化型歪補償及び復調回路43は、波形歪補償部41では補償されなかった高速で変動する波形歪を補償して信号を復調する。
【0022】
図4は、図3のデジタル信号処理回路40の構成図であり、特に、サンプリング位相制御部42の構成を示す図である。サンプリング位相制御部42は、サンプリング位相調整部51、サンプリング位相検出部52、第1ループフィルタ53、及び第2ループフィルタ54を含む。
【0023】
波形歪補償部41で波形歪が等化された各信号は、サンプリング位相調整部51に入力される。サンプリング位相調整部51は、後述するように、並列入力されるデジタルデータの入力位置をシフト調整することによって、サンプリングされた信号を本来あるべき位相位置に調整する。位相調整を受けた各信号は、適応等化型補償部及び復調回路43へ供給される。また、位相調整された信号の一部はサンプリング位相検出部52に入力され、サンプリングされた信号の位相が検出される。サンプリング位相検出部52の構成と動作は、図6を参照して詳述する。
【0024】
サンプリング位相検出部52で検出された位相信号は、第1ループフィルタ53を介して、サンプリング位相調整部51にフィードバックされる。サンプリング位相調整部51は、フィードバックされた位相信号により、入力信号を本来のサンプリング位相位置での値に書き換える。第1ループフィルタ53、サンプリング位相調整部51、及びサンプリング位相検出部52で内部ループを構成し、サンプリング位相をロックする。
【0025】
サンプリング位相検出部52の出力信号は、第2ループフィルタ54とデジタル-アナログコンバータ(DAC)36を介して周波数可変発振器35に入力され、クロック周波数の調整に用いられる。第2ループフィルタ54、DAC36、周波数可変発振器35、デジタル変換部30、サンプリング位相検出部52で外部ループを構成して、サンプリング周波数をロックする。
【0026】
図5は、図4のサンプリング位相制御部42で用いられる第1ループフィルタ53と第2ループフィルタ54の構成例を示す。第1ループルフィルタ53と第2ループフィルタ54は同じ構成を有するので、ここでは第1ループフィルタ53を例にとって説明する。
【0027】
第1ループフィルタ53は、PI(Proportional Integral:比例・積分)制御パラメータを格納しており、第1係数乗算器55、第2係数乗算器56、加算器57、遅延素子58、及び加算器59を含む。図4のサンプリング位相制御部52から出力された位相信号は、ループフィルタ53の第1係数乗算器55に入力され、係数Bで乗算される。第1係数乗算器55の出力は加算器57に入力され、1クロック前の出力が加算されて積分項として出力される。加算器57の出力は、遅延素子58と加算器59とに供給される。遅延素子58は、加算器57の出力をループフィルタ53の動作の1クロック分遅延させ、遅延信号を加算器57に供給する。他方、サンプリング位相制御部52から出力された位相信号は第2係数乗算器56に入力され、係数Aで乗算される。第2係数乗算器56の出力は、比例項として加算器59に入力される。加算器59は、積分項と比例項とを加算し、位相制御信号としてサンプリング調整部51に出力する。第2ループフィルタ54も同様の構成であるが、加算器59の出力は、周波数制御信号として周波数可変発振部35に出力される。
【0028】
図6は、図4のサンプリング位相制御部42のサンプリング位相検出部52の構成例を示す。サンプリング位相検出部52は、等化フィルタ60−0〜60−n(適宜、「等化フィルタ60」と総称する)、感度モニタ位相検出器70−0〜70−n(適宜、「感度モニタ位相検出器70」と総称する)、合成部(二乗和補正係数生成部)75−0〜75−n(適宜、「合成部75」と総称する)、乗算器77−0〜77−n(適宜、「乗算器77」と総称する)、及び加算器79を含む。感度モニタ位相検出器70−0〜70−nはそれぞれ、位相検出器(PD)71と、感度用δシフタ(感度モニタ信号生成部)72を有する。
【0029】
等化フィルタ60−0〜60−nは、互いに異なるPMD等化特性を有する。たとえばH軸偏波とV軸偏波の到達時間差(DGD;微分群遅延差)や、偏波回転などの条件が、互いに異なるように設定されている。等化特性を異ならせることにより、偏波回転などの偏波状態の変化によって一部のPD71で検出感度が低下した場合でも、必ずいずれかのPD71から検出結果が得られるように構成されている。
【0030】
図7は、アーム0〜アームnに設けられる等化フィルタ60−0〜60−nの構成例を示す図である。等化フィルタ60−0〜60−nの各々に、H軸信号(Hi+jHq)とV軸信号(Vi+jVq)が入力される。各等化フィルタ60は、それぞれ異なる等化特性値で、偏波モード分散を等化する。一例として、等化フィルタ60は、リターダ(retarder)61と、ローテータ(rotator)62と、H,Vサンプル遅延回路63を含む。リターダ61は、入力されたH軸信号とV軸信号の偏波軸位相差を変化させる。ローテータ62は、入力されたH軸信号とV軸信号の偏波軸を回転させる。H,Vサンプル遅延回路63は、H軸信号とV軸信号との間のサンプル遅延差を変化させる。図中、XnはH軸信号の1サンプル分の時間を表わし、Ynは軸信号の1サンプル分の時間を表す。
【0031】
これらのパラメータをアームごとに異なる値に設定することにより、等化フィルタ60−0〜60−nは、互いに異なる位相シフト量、異なる偏波軸回転量、異なるサンプル遅延差を有する。もちろん、3つのパラメータすべてを互いに異ならせる必要はなく、いずれか1つが異なっていれば、等化特性は他のフィルタと異なるものとなる。
【0032】
図6に戻って、各等化フィルタ60の出力信号は分岐され、対応する感度モニタ位相検出器70の位相検出器(PD)71と、感度用δシフタ72に、それぞれ入力される。PD71−0〜71−nは、波形歪補償、位相調整、及び等化を受けた入力サンプリング信号の位相を検出し、位相検出信号PDi(PD0〜PDn)を出力する。感度用δシフタ72−0〜72−nは、入力サンプリング信号の±δだけずれた位置での位相検出結果を、感度モニタ信号KPDi(KPD0〜KPDn)として出力する。
【0033】
感度は、PD71に入力される信号の位相を横軸にとり、PD71から出力される信号の振幅を縦軸にとってプロットしたときの、0クロス点近傍のリニアな領域での傾きによって評価することができる。感度用δシフタ72の位相検出出力(感度モニタ信号)KPDiは、感度劣化のない場合に最大となるが、偏波回転等により感度が劣化すると、入力位相に対する出力振幅、すなわち0クロス点近傍のリニア領域での傾きが小さくなる。
【0034】
図8は、PD71の一例として、ガードナー位相検出器を用いたときの構成例を示す。ガードナー位相検出器71は、Iチャネル用の遅延素子81、遅延素子82、減算器83、乗算器84と、Qチャネル用の遅延素子85、遅延素子86、減算器87、乗算器88と、乗算器84と88の出力を加算する加算器89を有する。
【0035】
等化フィルタ60から出力された信号のI成分は、遅延素子81と減算器83に入力される。遅延素子81は入力された信号を1/2シンボル分遅延させて、遅延素子82と乗算器84に供給する。遅延素子82は、遅延素子81から出力された信号をさらに1/2シンボル分遅延させて、減算器83に供給する。減算器83は、遅延素子82の出力信号から、PD71に入力されたI成分信号を減算して、減算結果を乗算器84に出力する。減算器83の出力は、1シンボルずれた信号の差分である。乗算器84は、減算器83の出力と、遅延素子81から出力された1/2シンボル遅延された信号を乗算して、加算器89に供給する。
【0036】
等化フィルタ60から出力された信号のQ成分は、遅延素子85と減算器87に入力される。遅延素子85は入力された信号を1/2シンボル分遅延させて、遅延素子86と乗算器88に供給する。遅延素子86は、遅延素子85から出力された信号をさらに1/2シンボル分遅延させて、減算器87に供給する。減算器87は、遅延素子86の出力信号から、PD71に入力されたQ成分信号を減算して、減算結果を乗算器88に出力する。減算器87の出力は、1シンボルずれた信号の差分である。乗算器84は、減算器87の出力と、遅延素子85から出力された1/2シンボル遅延された信号を乗算して、加算器89に供給する。
【0037】
加算器89は、乗算器84の出力と乗算器88の出力を加算して、位相検出信号PDnとして出力する。加算器89での処理は、1/2ダウンサンプリングされたレート、すなわちシンボルレートで行なわれる。
【0038】
図9は、感度用δシフタ72の構成例を示す。感度用δシフタ72は、等化フィルタ60から出力された入力サンプリング信号の位相を+δシフトした信号と、−δシフトした信号との位相差分を求めることで、位相の両方向の変動に対するPD71の位相検出感度をモニタする。具体的には、感度用δシフタ72は、+δ位相シフタ91、位相検出器92、平均化部93、−δ位相シフタ94、位相検出器95、平均化部96、乗算器97、及び加算器98を有する。
【0039】
+δ位相シフタ91は、入力サンプリング信号の位相を+δだけシフトさせて、位相検出器92に入力する。位相検出器92は、モニタ対象であるPD71と同じ感度劣化特性を有する位相検出器であり、この例では、ガードナー位相検出器である。並列展開された信号が入力されている場合は、位相検出器92の出力は平均化部93で平均化されて、加算器98に入力される。
【0040】
−δ位相シフタ94は、入力サンプリング信号の位相を−δだけシフトさせて、位相検出器95に入力する。位相検出器95はPD71と同様のガードナー位相検出器である。位相検出器95の出力は平均化部96で平均化され、−1乗算器97でマイナス1が乗算されて加算器98に入力される。加算器98は、平均化部93の出力(プラス側位相検出信号)から平均化部96の出力(マイナス側位相検出信号)を減算し、差分を感度モニタ信号KPDiとして出力する。上述のように、±δの範囲は、PD71がリニアに入力信号の位相を検出できる範囲である。これにより、対応するPD71の位相検出感度を精度よくモニタすることができる。
【0041】
なお、実施例では、フィルタ出力信号の位相をプラス側とマイナス側の両側に位相シフトして位相検出を行なっているが、いずれか一方の側だけに位相をシフトさせて位相検出を行なってもよい。たとえばプラス側にだけ位相シフトする場合は、マイナス側の処理ラインと乗算器97および加算器98は不要となり、位相検出器92(あるいは平均化部93)の出力が感度モニタ信号として、すべての合成部75−0〜75−nに入力される。
【0042】
図6に戻って、感度モニタ位相検出器70−0の感度用δシフタ72からの位相検出信号、すなわち感度モニタ信号KPD0は、合成部75−0〜75−nのすべてにそれぞれ入力される。感度モニタ位相検出器70−1の感度用δシフタ72からの出力KPD1は、すべての合成部75−0〜75−nに入力される。同様に、感度モニタ位相検出器70−2〜70−nの出力信号である感度モニタ信号KPD2−KPDnのそれぞれは、すべての合成部75−0〜75−nに入力される。
【0043】
この結果、合成部75−0〜75−nの各々は、すべての感度モニタ位相検出器70−0〜70−nからの感度モニタ信号を取得する。各合成部75は、取得した感度モニタ信号KPD0〜KPDnの二乗和ΣKPDj2を求め、この二乗和を利用して感度補正係数を生成する。より具体的には、着目する感度モニタ信号の二乗和に対する比率に基づいて、感度補正係数を生成する。図6の例では、KPD出力(KPDi)に、感度モニタ信号KPDjの二乗和の逆数を乗算して、位相検出器(PD)71のための感度補正係数を生成している。この場合、合成部75−iで生成される感度補正係数INTEG-KPDiは、以下のように表わされる。
【0044】
【数1】

【0045】
合成部75−0で生成された感度補正係数INTEG-KPD0は、乗算器77−0に入力されて、対応するPD71から出力された位相検出信号PD0に乗算される。乗算結果は、加算器79に供給される。
【0046】
合成部75−1で生成された感度補正係数INTEG-KPD1は、乗算器77−1に入力されて、感度モニタ位相検出器70−1のPD71から出力された位相検出信号PD1に乗算される。乗算結果は、加算器79に供給される。
【0047】
同様に、合成部75−nで生成された感度補正係数INTEG-KPDnは、乗算器77−nに入力されて、感度モニタ位相検出器70−nのPD71から出力された位相検出信号PDnに乗算され、乗算結果が加算器79に供給される。
【0048】
加算器79は、すべての乗算結果の単純和をとり、これを位相信号として出力する。出力された位相信号は、図4を参照して説明したように、サンプリング位相調整部51と周波数可変発振器35に、それぞれフィードバックされる。
【0049】
図10は、図6の感度モニタ位相検出器70−0〜70−n、合成部(二乗和補正係数生成部)75−0〜75−n、乗算器77−0〜77−n、及び加算器79の動作を模式化した図である。この例では、4つのアーム(i=0,1,2,3)の感度モニタ信号の二乗和を用いて、各PD71の位相検出感度を補正するための感度補正係数INTEG-KPDiが生成される。
【0050】
感度モニタ位相検出器70−0〜70−3から出力された位相検出信号PD0〜PD3はそれぞれ平均化され、対応する乗算器77−0〜77−3に入力される。また、感度モニタ移送検出器70−0〜70−3から出力された感度モニタ信号KPD0〜KPD3の二乗和を用いて合成部75−0〜75−3により感度補正係数INTEG-KPD0〜INTEG-KPD3が生成され、対応する乗算器77−0〜77−3に入力される。これにより、各PD71の位相検出信号PDiは、感度補正係数INTEG-KPDiで補正される。
【0051】
加算器79は、感度補正がされたすべての位相検出信号を加算して総和をとる。加算器79の出力PdOutが、図4及び図6のサンプリング位相検出器52から出力される位相信号となる。出力される位相信号PdOutは、以下のように表わされる。
【0052】
【数2】

【0053】
すべての感度モニタ値の二乗和を利用し、着目する感度モニタ信号KPDiに対する最大比で補正係数を生成し、補正されたPD出力を合成することにより、従来問題となっていた補正値の変動、切り替わり時に生じるギャップを防止し、安定した位相検出信号を出力することができる。
【0054】
図11は、位相信号(PdOut)をループフィルタ53を介して受け取るサンプリング位相調整部51(図4参照)の構成例を示す。サンプリング位相調整部51は整数・小数分離部111、整数部出力ポート112、小数部出力ポート113、入力バッファ114、セレクタ115、及び小数部補正部116を含む。入力された位相信号は、整数・小数分離部111によって、サンプル単位で整数値と小数値に分離される。すなわち、位相信号をサンプリング周期で割った値の整数値と、小数値に分離される。整数値は、整数部出力ポート112からセレクタ115に供給され、小数値は、小数部出力ポート113から小数部補正部116に供給される。
【0055】
入力サンプリング信号、すなわち、各チャネルでN個に並列展開され、波形歪が補償されたデジタルデータは、入力バッファ114を介して、セレクタ115に入力される。セレクタ115は、並列展開されたデジタルデータを、位相信号から求められた整数値(サンプル数)分だけバレルシフトする。小数部補正部116は、時間領域または周波数領域で、1サンプル未満の位相を調整する。
【0056】
図12は、時間領域で位相調整する小数部補正部116Aの構成例を示す。小数部補正部116Aは、FIR(有限インパルス応答)フィルタにより構成され、係数算出部120、遅延素子(タップ)121−1〜121−N-1、乗算器122−0〜122−N-1、加算器123−1〜123−N-1を有する。係数算出部120は、入力された位相信号の少数値に基づき、たとえばテーブル(不図示)を参照して乗算器122−0〜122−N-1に与える係数を決定する。入力データと各遅延素子121−1〜121−N-1の出力は、それぞれ乗算器122−0〜122−N−1により係数で乗算される。乗算結果は加算器123−1〜123−N-1で順次加算される。最終の加算器123−N-1の出力が、サンプリング位相調整部51の出力となる。
【0057】
図13は、周波数領域で位相調整する小数部補正部116Bの構成例を示す。小数部補正部116Bは、フーリエ変化器131、回転量変換器132、乗算器133、逆フーリエ変換器134を含む。入力されたデータ信号は、フーリエ変換器131で高速フーリエ変換(FFT)により周波数領域に変換され、乗算器133に送られる。他方、回転量変換器132は、位相信号の小数値に基づき、小数部位相に相当する位相シフト係数を生成し、生成した位相シフト係数を乗算器133に出力する。乗算器133は、フーリエ変換器131から出力された周波数領域の信号に、回転量変換器132から出力された位相シフト係数を乗算し、乗算結果を逆フーリエ変換器144に出力する。逆フーリエ変換器134は、乗算器133の出力を逆高速フーリエ変換(IFFT)して出力する。逆フーリエ変換された信号が、サンプリング位相調整部51の出力信号となる。
【0058】
このように、サンプリング位相調整部51は、サンプリング位相検出部52からフィードバックされた位相信号に基づいて、入力されるサンプリングデータの位相を調整する。
【0059】
図14及び図15は、サンプリング位相制御部52で複数のフィルタを用いることの効果を説明するための図である。例えば、図14のように、3つのアーム(アーム0、アーム1、アーム2)を用いて、位相検出信号PD0、PD1、PD2と、感度モニタ信号KPD0、KPD1、KPD2を生成する場合を考える。
【0060】
アーム0のフィルタ101−0には等化パラメータが与えられず、後段の位相検出器71−0から位相検出信号PD0が出力され、感度用δシフタ72−0から感度モニタ信号KPD0が出力される。
【0061】
アーム1のフィルタ101−1では、45°の偏波軸回転と、H軸信号(X1)に対する1サンプル遅延差が与えられる。この条件でのフィルタ出力に基づいて、PD71−1から位相検出信号PD1が出力され、感度用δシフタ72−1から感度モニタ信号KPD1が出力される。
【0062】
アーム2のフィルタ101−2では、V軸信号(Y2)に対する1サンプル遅延差が与えられる。この条件でのフィルタ出力に基づいて、PD71−2から位相検出信号PD2が出力され、感度用δシフタ72−2から感度モニタ信号KPD2が出力される。
【0063】
図15(A)のような光伝送路を介して、デジタルコヒーレント受信器で信号が受信されたとする。この光伝送路モデルには、1サンプルDGD(Differential Group Delay:微分群遅延差)と、偏波軸回転が設定されている。DGDは、H軸偏波とV軸偏波の受信機への到達時間差を表わし、偏波モード分散の大きさを示すひとつの尺度となる。
【0064】
図15(B)は、図15(A)の光伝送路を介してデジタルコヒーレント受信機で受信された信号の位相検出の感度モニタ信号KPD0、KPD1,KPD2をプロットしたグラフである。このグラフから、KPD0では位相検出感度がほぼゼロであるが、KPD1とKPD2によって、KPD0の感度ゼロを補完できることがわかる。これにより、位相検出結果が途切れるという状況を回避することができる。
【0065】
図16および図17は、二乗和合成による感度補正の効果を説明するための図である。光伝送路のPMDモデルとして、図16(A)に示す1段のPMDを挿入した場合を考える。この伝送路モデルには、1サンプル分の微分群遅延差(DGD)と、偏波軸回転と、偏波軸位相差が設定されている。位相検出器(PD)71の前段に配置する等化フィルタ60(図6参照)として適当なフィルタを選択し、1/8サンプルずれの複数のKPD出力の二乗和で感度補正した合成出力(位相信号)を求めた。比較として、同じ条件で各KPD出力の単純和で感度補正した合成出力(位相信号)と、図1(B)に示す閾値を超える位相検出結果のみを加算するダイバーシチ加算の合成出力(位相信号)とを求めた。
【0066】
図16(B)は、DGDが1サンプルで波長分散(CD)がない場合、図16(C)はDGDが1サンプルで波長分散(CD)が200ps/nmの場合の位相検出部出力を示すグラフである。グラフの横軸は偏波軸の回転角度(θ)であり、縦軸は位相信号の強度である。四角マークでプロットしたのが、実施例の二乗和を用いた感度補正による位相信号、ひし形マークでプロットしたのが、単純加算による感度補正による位相信号、三角マークでプロットしたのが、閾値を越える感度の位相検出結果のみを加算(しきい値つき加算)した位相信号である。
【0067】
図16(B)から明らかなように、波長分散がない状態で偏波軸の回転が生じても、実施例の方法では安定した位相検出出力を得ることができる。これに対して、単純加算の場合は、偏波軸の回転状態によって位相検出出力が変動する。偏波変動の影響を受けやすい位相信号を制御信号として用いても、入力サンプリング信号の位相調整や、クロック周波数を正しく制御することができない。また、閾値を超える位相検出結果のみを加算(しきい値つき加算)した場合でも、偏波の回転状態によっては、位相検出出力が急激に低下(感度劣化)することがわかる。
【0068】
図16(C)は、実施例の効果をいっそう明確に示している。波長分散がある状態で偏波軸の回転が生じると、単純加算法による位相検出出力はさらに大きくばらつく。閾値を超える位相検出結果のみを用いた場合(しきい値つき加算)でも、図16(B)に比べて位相検出出力の低下が顕著になる。これに対して、実施例の二乗和加算の方法では、波長分散と偏波軸回転にもかかわらず、安定した位相検出出力を得ることができる。
【0069】
図17は、光伝送路のPMDモデルとして、図17(A)に示すように、多段のPMDを挿入した場合を考える。この伝送路モデルでは、1段あたり1.8サンプルのDGDと偏波軸回転と位相差を与えたPMDを、15段直列に挿入してある。図16と同様に、適当なフィルタを選択し、1/8サンプルずれの複数のKPD出力の二乗和で感度補正した合成出力(位相信号)を求めた。比較として、各KPD出力の単純加算値で感度補正した合成出力(位相信号)と、図1(B)の閾値を超える位相検出結果のみを加算するダイバーシチ加算の合成出力(位相信号)とを求めた。
【0070】
図17(B)は、それぞれの方法で得られる位相検出出力を比較するグラフである。グラフの横軸は位相検出出力、縦軸は頻度である。実施例の二乗和加算による方法では、位相検出出力が一定の強度近傍に集中しており、位相検出出力が安定していることを示す。これに対して、単純加算の方法では、得られる位相検出出力が広範な範囲にわたってばらついており、単純加算により生成される感度補正値が不適切であることを示す。また、しきい値つき加算による位相検出出力にもばらつきが見られる。
【0071】
以上から、実施例の二乗和感度補正により位相信号を生成する場合は、偏波変動があった場合にも補正変動が小さく、安定した位相制御を行うことができる。
【0072】
図18は、実施例の位相制御方法の効果を示すグラフであり、従来の課題を示す図2に対応する図である。図2と同様の条件でシミュレーションを行い、残留分散に対する位相制御量[sample]の関係を調べた。グラフから、残留分散の変動にもかかわらず、1サンプル近傍に安定した位相制御量を得ることができる。また、残留分散の変動にもかかわらず、安定したQ値を得ることができる。
【0073】
このように、すべての感度モニタ信号の二乗和を利用して感度補正係数を生成することにより、偏波モード分散や、突然の偏波変動が生じても、補正値の切換え時による制御ギャップを防止し、安定した位相信号を出力できる。
【0074】
図19は、その他の合成方法を示す模式図である。図19(A)において、各KPD出力(感度モニタ信号)の二乗和の逆数を乗算して感度補正係数INTEG-KPDiを生成するところは、上述した実施例と同様である。この例では、各KPD出力を当該KPD出力の絶対値で除算してKPDi/|KPDi|を求め、これに二乗和の逆数を乗算して感度補正係数としている。この場合、感度補正係数は、全KPD出力の二乗和を用いることによって全体の感度モニタ結果を反映しつつ、補正の方向のみを特定するものである。このような感度補正係数を用いても、偏波変動によるギャップを生じさせることなく安定した位相信号を出力することができる。
【0075】
図19(B)では、感度補正係数INTEG-KPDiは、全KPD出力の二乗和に対する感度モニタ信号(KPD)の2乗値で最大比をとるとともに、KPDi/|KPDi|により補正の方向を特定する。このような感度補正値を用いて補正した全PD出力を加算(合成)することで、出力される位相信号のばらつきはさらに低減され、また、ノイズ低減効果も大きくなる。
【0076】
上述したサンプリング位相検出部52による制御動作は、汎用プロセッサを用いたソフトウエア制御としてもよい。また、デジタル信号処理回路40全体を汎用プロセッサを用いたソフトウエア制御としてもよい。これらの場合は、デジタルコヒーレント受信機に組み込まれたプロセッサを動作させるプログラムがインストールされ、プログラムのコマンドにしたがって、波形歪補償、サンプリング位相調整、サンプリング位相検出、位相信号の生成(感度補正係数の生成、位相検出信号の感度補正および感度補正された位相検出信号の合成を含む)などが行なわれる。
【0077】
以上の説明に対し、以下の付記を提示する。
(付記1)
光伝送路から受信された信号をサンプリングしてデジタル信号を生成するデジタル変換部と、
前記デジタル信号の位相を検出する位相検出部と、
前記検出された位相に基づいて、前記デジタル信号のサンプリング位相を調整する位相調整部と、
前記位相調整された前記デジタル信号を復調する復調部と
を備え、
前記位相検出部は、
異なる等化特性で前記デジタル信号を等化する複数のフィルタと、
前記複数のフィルタの各々に接続され、対応するフィルタから出力される信号の位相を表わす位相検出信号と、位相検出感度を表す感度モニタ信号とを出力する複数の感度モニタ位相検出器と、
前記感度モニタ信号の二乗和を用いて、対応する前記位相検出信号を補正するための感度補正係数を生成する複数の感度補正係数生成部と、
前記感度補正係数により補正された前記各位相検出信号を合成して位相信号を出力する加算器と、
を含むことを特徴とするデジタルコヒーレント受信機。
(付記2)
前記補正係数生成部は、前記複数の感度モニタ位相検出器から出力されるすべての前記感度モニタ信号を用いて前記二乗和を計算し、着目する感度モニタ信号に前記二乗和の逆数を乗算して前記感度補正係数を生成することを特徴とする付記1に記載のデジタルコヒーレント受信機。
(付記3)
前記補正係数生成部は、前記着目する感度モニタ信号を前記感度モニタ信号の絶対値で除算した値に、前記二乗和の逆数を乗算して前記感度補正係数を生成することを特徴とする付記2に記載のデジタルコヒーレント受信機。
(付記4)
前記補正係数生成部は、前記着目する感度モニタ信号の2乗値に前記感度モニタ信号の符号を乗算した値に、前記二乗和の逆数を乗算して前記感度補正係数を生成することを特徴とする付記2に記載のデジタルコヒーレント受信機。
(付記5)
前記感度モニタ位相検出器は、
前記フィルタから出力された信号の位相を検出して前記位相検出信号を出力する第1位相検出器と、
前記フィルタから出力された信号の位相を所定の位相だけ第1の方向にシフトする位相シフタと、
前記位相シフトされた信号の位相を検出する第2位相検出器と、
を含み、前記第2位相検出器の出力が前記感度モニタ信号としてすべての前記感度補正係数生成部に入力されることを特徴とする付記1に記載のデジタルコヒーレント受信機。
(付記6)
前記感度モニタ位相検出部は、
前記フィルタから出力された信号の位相を前記第1の方向と逆の第2の方向に前記所定の位相だけシフトする第2の位相シフタと、
前記第2の方向に位相シフトされた信号の位相を検出する第3位相検出器と、
を含み、前記第1の方向に位相シフトされた信号の位相と、前記第2の方向に位相シフトされた信号の位相との差分が、前記感度モニタ信号としてすべての前記感度補正係数生成部に入力されることを特徴とする付記5に記載のデジタルコヒーレント受信機。
(付記7)
前記位相検出部は、前記位相調整部の出力に接続され、
前記位相信号は、前記位相調整部にフィードバックされることを特徴とする付記1に記載のデジタルコヒーレント受信機。
(付記8)
前記デジタル変換部に供給されるクロックを生成する周波数可変発振器、
をさらに備え、
前記位相信号は、前記周波数可変発信機に入力されることを特徴とする付記1に記載のデジタルコヒーレント受信機。
(付記9)
光伝送路から受信された信号をサンプリングしてデジタル信号を生成し、
前記デジタル信号を、異なる等化特性を有する複数のフィルタに入力し、
前記複数のフィルタの各々から出力される信号の位相を検出して位相検出信号を生成するとともに、位相検出感度を表す感度モニタ信号を生成し、
前記感度モニタ信号の二乗和を用いて前記位相検出感度を補正するための感度補正係数を生成し、
前記感度補正係数により感度補正された前記各位相検出信号を合成して位相信号を出力し、
前記位相信号を用いて、前記デジタル信号のサンプリング位相を調整する
ことを特徴とする位相制御方法。
(付記10)
前記感度補正係数の生成は、前記生成されたすべての感度モニタ信号を用いて前記二乗和を計算し、着目する感度モニタ信号に前記二乗和の逆数を乗算して前記感度補正係数を生成することを特徴とする付記9に記載の位相制御方法。
(付記11)
前記感度補正係数の生成は、前記着目する感度モニタ信号を前記感度モニタ信号の絶対値で除算した値に、前記二乗和の逆数を乗算して前記感度補正係数を生成することを特徴とする付記10に記載の位相制御方法。
(付記12)
前記感度補正係数の生成は、前記着目する感度モニタ信号の2乗値に前記感度モニタ信号の符号を乗算した値に、前記二乗和の逆数を乗算して前記感度補正係数を生成することを特徴とする付記10に記載の位相制御方法。
(付記13)
前記感度モニタ信号の生成は、
前記各フィルタから出力された信号の位相を所定の位相だけ第1の方向にシフトさせ、前記位相シフトされた信号の位相を検出して前記感度モニタ信号として出力することを特徴とする付記9に記載の位相制御方法。
(付記14)
前記感度モニタ信号の生成は、
前記フィルタから出力された信号の位相を前記第1の方向と逆の第2の方向に前記所定の位相だけシフトさせ、
前記第2の方向に位相シフトされた信号の位相を検出し、
前記第1の方向に位相シフトされた信号の位相と、前記第2の方向に位相シフトされた信号の位相との差分を前記感度モニタ信号として出力することを特徴とする付記13に記載の位相制御方法。
(付記15)
前記デジタル信号の前記複数のフィルタへの入力に先立って前記サンプリング位相調整が行われ、
前記位相信号は前記サンプリング位相調整のためにフィードバックされることを特徴とする付記9に記載の位相制御方法。
(付記16)
前記デジタル信号を生成するためのクロックを生成する工程、
をさらに含み、
前記位相信号は、前記クロック生成の制御のために用いられることを特徴とする付記9に記載の位相制御方法。
【産業上の利用可能性】
【0078】
光信号の受信に利用可能である。
【符号の説明】
【0079】
10 デジタルコヒーレント受信機
21 光電変換器
30 デジタル変換部
35 周波数可変発振器
40 デジタル信号処理回路
41 波形歪補償部
42 サンプリング位相制御部
43 適応等化型波形歪補償及び復調回路
51 サンプリング位相調整部
52 サンプリング位相検出部
53、54 ループフィルタ
60−0〜60−n 等化フィルタ
61 リターダ
62 ローテータ
63 H,Vサンプル遅延回路
70−0〜70−n 感度モニタ位相検出器
71 位相検出器(PD)
72 感度用δシフタ(感度モニタ信号生成部)
75−0〜75−n 合成器(二乗和補正係数生成部)
79 加算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光伝送路から受信された信号をサンプリングしてデジタル信号を生成するデジタル変換部と、
前記デジタル信号の位相を検出する位相検出部と、
前記検出された位相に基づいて、前記デジタル信号のサンプリング位相を調整する位相調整部と、
前記位相調整された前記デジタル信号を復調する復調部と
を備え、
前記位相検出部は、
異なる等化特性で前記デジタル信号を等化する複数のフィルタと、
前記複数のフィルタの各々に接続され、対応するフィルタから出力される信号の位相を表わす位相検出信号と、位相検出感度を表す感度モニタ信号とを出力する複数の感度モニタ位相検出器と、
前記感度モニタ信号の二乗和を用いて、対応する前記位相検出信号を補正するための感度補正係数を生成する複数の感度補正係数生成部と、
前記感度補正係数により補正された前記各位相検出信号を合成して位相信号を出力する加算器と、
を含むことを特徴とするデジタルコヒーレント受信機。
【請求項2】
前記補正係数生成部は、前記複数の感度モニタ位相検出器から出力されるすべての前記感度モニタ信号を用いて前記二乗和を計算し、着目する感度モニタ信号に前記二乗和の逆数を乗算して前記感度補正係数を生成することを特徴とする請求項1に記載のデジタルコヒーレント受信機。
【請求項3】
前記補正係数生成部は、前記着目する感度モニタ信号を前記感度モニタ信号の絶対値で除算した値に、前記二乗和の逆数を乗算して前記感度補正係数を生成することを特徴とする請求項2に記載のデジタルコヒーレント受信機。
【請求項4】
前記補正係数生成部は、前記着目する感度モニタ信号の2乗値に前記感度モニタ信号の符号を乗算した値に、前記二乗和の逆数を乗算して前記感度補正係数を生成することを特徴とする請求項2に記載のデジタルコヒーレント受信機。
【請求項5】
前記感度モニタ位相検出器は、
前記フィルタから出力された信号の位相を検出して前記位相検出信号を出力する第1位相検出器と、
前記フィルタから出力された信号の位相を所定の位相だけ第1の方向にシフトする位相シフタと、
前記位相シフトされた信号の位相を検出する第2位相検出器と、
を含み、前記第2位相検出器の出力が前記感度モニタ信号としてすべての前記感度補正係数生成部に入力されることを特徴とする請求項1に記載のデジタルコヒーレント受信機。
【請求項6】
光伝送路から受信された信号をサンプリングしてデジタル信号を生成し、
前記デジタル信号を、異なる等化特性を有する複数のフィルタに入力し、
前記複数のフィルタの各々から出力される信号の位相を検出して位相検出信号を生成するとともに、位相検出感度を表す感度モニタ信号を生成し、
前記感度モニタ信号の二乗和を用いて前記位相検出感度を補正するための感度補正係数を生成し、
前記感度補正係数により感度補正された前記各位相検出信号を合成して位相信号を出力し、
前記位相信号を用いて、前記デジタル信号のサンプリング位相を調整する
ことを特徴とする位相制御方法。
【請求項7】
前記感度補正係数の生成は、前記生成されたすべての感度モニタ信号を用いて前記二乗和を計算し、着目する感度モニタ信号に前記二乗和の逆数を乗算して前記感度補正係数を生成することを特徴とする請求項6に記載の位相制御方法。
【請求項8】
前記感度補正係数の生成は、前記着目する感度モニタ信号を前記感度モニタ信号の絶対値で除算した値に、前記二乗和の逆数を乗算して前記感度補正係数を生成することを特徴とする請求項7に記載の位相制御方法。
【請求項9】
前記感度補正係数の生成は、前記着目する感度モニタ信号の2乗値に前記感度モニタ信号の符号を乗算した値に、前記二乗和の逆数を乗算して前記感度補正係数を生成することを特徴とする請求項7に記載の位相制御方法。
【請求項10】
前記感度モニタ信号の生成は、
前記各フィルタから出力された信号の位相を所定の位相だけ第1の方向にシフトさせ、前記位相シフトされた信号の位相を検出して前記感度モニタ信号として出力することを特徴とする請求項6に記載の位相制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−253461(P2012−253461A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122775(P2011−122775)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、総務省、「超高速光エッジノード技術の研究開発」研究開発委託契約に基づく開発項目「100Gbps級光送受信技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】