説明

デジタル地図におけるネットワーク生成のための時間および/または正確度に依存した重み

GPS対応ナビゲーションデバイスによって記録された、統計的に関連のある量のプローブデータから、既存のデジタル道路網を改善かつ拡張し、新しいネットワークを生成するための方法。新しいプローブデータが既存のデジタル地図とマッチされ、次いで、時間に依存した重みおよび/または正確度に依存した重みを使用して、このデータが既存のネットワークにマージされる。再算出日が確立され、線分および/またはトレースの重み値が、再算出に対する時間スパンに応じて調整される。この機能は、それぞれが各重み減少係数を有するビンに分割された最大期間を設定すること、または、減衰関数を適用することを含んでもよい。この技法を通じて、古いトレースデータによって過度の影響を与えられることなく、デジタル地図を更新かつ拡張することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年12月23日に出願した米国仮特許出願第61/289,429号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は一般に、プローブデータを使用して、デジタルベクトル地図など、デジタル地図を生成、更新かつ拡張するための方法に関し、より一般には、高度時間モデルを使用して、データマイニング作業を改善するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ナビゲーションシステム、電子地図(デジタル地図としても知られる)、および、地理的位置決めデバイスは、旅行者および/または車両の総合的な位置および向きの決定、目的地および住所の発見、最適ルートの算出、ならびに、リアルタイムの運転のガイダンスの提供など、様々なナビゲーション機能により支援するために、旅行者によって使用されることが多くなっている。典型的には、ナビゲーションシステムは、街路網を一連の線分(または、道路区分)として描く、小型の表示画面またはグラフィックユーザインタフェースを含む。旅行者は一般に、デジタル地図上で、道路もしくは街路の近くに、またはそれとの関係で位置することができる。
【0004】
デジタル地図は、道路情報の収集および処理に大変コストがかかるので、製作および更新の費用がかかる。測量方法または衛星画像のデジタル化は、デジタル地図を作成するために一般に採用される技法である。さらに、デジタル地図は、誤った、もしくは不正確な入力ソース、または、欠陥のある推論手順による、不正確さまたは定誤差を含む可能性が高い。デジタル地図が作成された後、地図情報を最新に保つためにはコストがかかり、その理由は、道路のジオメトリが経時的に変化するからである。世界のいくつかの地域では、デジタル地図は、まったく使用不可能である。
【0005】
既存の車道地図または車道網は、所与の地域内のすべての車道または道のその描写が不完全であるという場合がありうる。さらに、限定されないが、車道および道が含まれうる、ネットワークの発展性により、変化が経時的に発生し、既存のデジタル地図がもはや現在の状態を正確に描いていないことがありうる。
【0006】
近年、プローブデータ(一般に「プローブトレース」とも呼ばれる)が使用されて、交通網、例えば、道路、歩道橋、道、川、海上交通路、または、人もしくは車両を輸送するために使用可能な他のネットワークの航行可能システムの、デジタル地図が作成かつ更新されている。プローブトレースは、複数の車両内に収容された、または、複数の歩行者によって携行された、ロケーションセンサからの複数の連続ロケーション測定値である。例えば、ロケーションセンサは、例えば、GPSシステムなど、衛星ナビゲーション信号受信器であってもよい。
【0007】
プローブデータからネットワークを生成するために使用される、あるクラスのアルゴリズムは、増分アルゴリズムとして知られている。増分アルゴリズムは、いくつかの利点を有するが、他の非増分ネットワーク生成アルゴリズムもまた有用であり、時として好ましいものである。増分アルゴリズムの1つの主な利点は、増分的手法が、ネットワーク全体を再度処理する必要なしに、ネットワークの拡張および改善を可能にすることである。増分地図生成アルゴリズムの例は、米国特許第6,385,539号、および、発明者H.Mundによる「INCREMENTAL MAP GENERATION, REFINEMENT AND EXTENSION WITH GPS TRACES」という名称の、本出願人の同時係属のPCT出願(2009年10月22日出願のPCT/EP2009/063938)において見ることができる。この後者のPCT出願に記載された技法は、以下で、Viae Novaeアルゴリズムと呼ばれる。
【0008】
Viae Novaeアルゴリズムから、例えば、あるクラスタリング技術を使用して、地図を増分的に学習する目的で、低コストの位置決めシステム、ならびに、統合されたGPS機能性を有するハンドヘルドデバイスおよび携帯電話から、プローブデータ入力を取ることが知られている。処理される入力は、例えば、ほぼすべての既存のGPSデバイスによってサポートされる、標準ASCIIストリームの形式における、記録されたGPSトレースからなる。出力は、移動時間情報の注釈が付いた、ノードおよびエッジを有する有向グラフの形式における道路地図である。ナビゲーションデバイスを適切に装着し、主要な幹線および/または分岐合流点を横切る旅行者は、したがって、一定の距離を置いて作成された複数のノードにより、トレース地図を作成することができる。これらのノードおよびエッジは、デジタルベクトル地図テーブルまたはデータベースに格納される。増分的手法を表すこの技法を通じて、道路のジオメトリを推論することができ、収集されたデータ点を、フィルタリングおよび分割アルゴリズムによって洗練することができる。
【0009】
図1は、この例示的な増分的手法を、簡略化された流れ処理に関して記載する。複数のプローブ14は、TomTom NV(www.tomtom.com)によって製造されたものなど、GPS対応パーソナルナビゲーションデバイスとして示される。しかし、ハンドヘルドデバイス、携帯電話、PDAなどを含む、GPS機能性を有するいかなる適切なデバイス使用して、プローブデータ点を生成してもよい。プローブデータ点を収集し、プローブデータテーブル16または他の適切なデータベースもしくはリポジトリに格納してもよい。既存のデジタルベクトル地図は、この例では、予め作成されたデジタル地図であり、テーブル18に含まれる。言うまでもなく、デジタルベクトル地図18は、データベースとして、または、他の適切な形式で存在することができる。最初のステップとして、トレース線が、テーブル16内の大まかなプローブデータから生成される。ステップ20で、新しい線が、プローブデータテーブルから選択される。ステップ22で、選択された線が、デジタルベクトル地図とマッチされる。このステップ中に、適切なマップマッチング方法を使用して、トレース線の各点がネットワーク要素に関連付けられるようになる。マッチング方法が、いかなるネットワーク要素をトレース線に関連付けることもできない場合、プローブデータ点に「マッチしない」というマークが付けられる。すべての他のプローブデータ点が、このように既存のネットワークとマッチされるように試みられる。データ点が既存のネットワークのいかなる要素にもマッチされないトレース線分については、これらは、ネットワーク要素から分離され、新しいまたは既存の接合点を介して、挿入、すなわち、接続されなければならない。これは、ステップ24で起こる。場合によっては、知られている、または、前から存在する接合点を使用することが妥当である。接合点は、車道網の応用例では交差点と呼ばれることがある。マッチングおよび接合点ステップ22、24が完了された後、ステップ26で、トレース線分が、関連付けられたネットワーク要素にマージされる。これは、マージの適切なアルゴリズムおよび方法により実施されうる。最後に、形状点の数を減らすため、ステップ18で、ネットワークテーブルを更新する前に、ネットワーク要素を簡略化することが可能である。この任意選択の簡略化ステップは、機能ブロック28で示され、周知のDouglas−Peuckerアルゴリズムの適用によることを含む、様々な技法を通じて実施可能である。
【0010】
入手可能である新しいトレースデータをこのように使用して、デジタル地図システムにおける道路網を容易に洗練かつ拡張することができる。上記のような増分的手法を使用するとき、生成済みの道路網から古いデータを除去することは可能ではない。しかし、問題は、どの程度ネットワークが拡張または改善されるべきであるかを解析するとき、古い、場合によっては期限切れのトレースデータの残りが増分アルゴリズムに織り込まれ、よって、その解析に影響を与え続けるようになる点にある。道路要素の使用および重要性は、その重み値によって記述される。ある道路区分がもはや使用中でない場合、それがなお高い重みを有し、したがって、地図の洗練および拡張の実行に否定的な影響を与え続けることがある。
【0011】
したがって、プローブまたはトレースデータを使用して、デジタルベクトル地図を更新かつ拡張するための改善された方法であって、古い、場合によっては期限切れのトレースデータの否定的な影響を受けにくい方法が必要である。この方法は、増分と非増分のいずれのネットワーク生成アルゴリズムと併せても有用であるべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第6,385,539号
【特許文献2】PCT/EP2009/063938
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、少なくとも好ましい実施形態において、プローブデータから導出されたトレースを使用して、デジタルベクトル地図など、デジタル地図を生成、洗練かつ/または拡張するための方法を提供することによって、様々な従来技術の技法の欠点および欠陥を克服する。デジタル地図は、好ましくは交通網であって、線分は、道路、道などの少なくとも一部を表す。
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、本発明の第1の態様では、プローブデータから導出されたトレースを使用して、デジタル地図を生成、洗練かつ/または拡張するための方法であって、前記デジタル地図は、座標系内で空間的に関連付けられた複数の線分を格納し、線分のうち少なくとも1つ、および好ましくは全部は、関連付けられた区分重み値を有し、この方法は、定義された作成日を有する少なくとも1つのプローブトレースを提供するステップと、トレース重み値を少なくとも1つのプローブトレースに割り当てるステップと、少なくとも1つのプローブトレースに関連付けられた線分の位置を、線分の区分重み値およびトレース重み値に基づいて調整するステップと、トレース重み値および/または区分重み値を、再算出日とトレース作成日の間の時間スパンに応じて調整するステップとを備える方法が提供される。不確かさを避けるため、再算出日は、トレース作成日より後の時間のデータを指す。
【0015】
好ましくは、線分のうち少なくとも1つ、および好ましくは全部は、計算された中心線を有し、線分の位置を調整するステップは、区分重み値およびトレース重み値の加重平均を任意選択で使用して、線分の中心線を再算出することを備える。
【0016】
本発明の第2の 態様によれば、プローブデータから導出されたトレースを使用して、デジタル地図を生成、洗練かつ/または拡張するための方法であって、前記デジタル地図は、座標系内で空間的に関連付けられた複数の線分を格納し、線分のうち少なくとも1つ、および好ましくは全部は、関連付けられた区分重み値を有し、この方法は、定義された作成日を有する少なくとも1つのプローブトレースを提供するステップと、トレース重み値を少なくとも1つのプローブトレースに割り当てるステップと、少なくとも1つのプローブトレースに関連付けられた線分を作成するステップと、トレース重み値に基づいて、区分重み値を線分に割り当てるステップと、トレース重み値および/または区分重み値を、再算出日とトレース作成日の間の時間スパンに応じて調整するステップとを備える方法が提供される。
【0017】
好ましくは、線分のうち少なくとも1つ、および好ましくは全部は、計算された中心線を有し、線分を作成するステップは、線分のための中心線を算出することを備える。
【0018】
好ましい実施形態では、少なくとも1つのプローブトレースを提供するステップは、それぞれ異なる作成日を有する複数のプローブトレースを提供することを備え、トレース重み値を少なくとも1つのプローブトレースに割り当てるステップは、同じトレース重み値を、複数のプローブトレースの各々に、プローブトレースの各作成日に割り当てることを備える。
【0019】
好ましい実施形態では、トレース重み値および/または区分重み値を調整するステップは、トレース重み値を、再算出日とトレース作成日の間の時間スパンに応じて低減することを備える。
【0020】
好ましい実施形態では、加えて、または別法として、トレース重み値および/または区分重み値を調整するステップは、最大期間を定義すること、および、再算出日とトレース作成日の間の時間スパンが最大期間を超える場合、ゼロのトレース重み値を割り当てることを備える。この方法は、好ましくは、最大期間を複数のビン(bin)に分割するステップであって、各ビンは、再算出日と最大期間の間の時間の各部分を表すステップと、各ビンに係数を割り当てるステップと、トレースを、トレース作成日に対応する、ビンのうち指定されたものに関連付けるステップと、トレース重み値を、トレースに関連付けられたビンに割り当てられた係数に応じて算出するステップとをさらに備える。好ましくは、区分重み値は、ビンの重みの和として算出される。
【0021】
好ましい実施形態では、加えて、または別法として、この方法は、半減時間(T)および減衰関数、好ましくは指数関数的減衰関数を定義することをさらに備える。調整するステップは、区分重み値およびトレース重み値のうち少なくとも1つを、半減時間(T)および減衰関数に応じて計算することを含む。計算するステップは、トレース重み値および/または区分重み値を、半減時間(T)および減衰関数に応じて改変することを含む。
【0022】
好ましい実施形態では、加えて、または別法として、トレース重み値を割り当てるステップは、等しく共通の最初の重み値を、異なる各作成日を有する複数のトレースに割り当てることを含む。
【0023】
好ましい実施形態では、線分は、線分の区分重み値が所定の閾値の下に下がるとき、デジタル地図から除去される。別法として、予測された満了日が、線分について、区分重み値がいつ所定の閾値の値の下に下がるかに基づいて決定されてもよく、線分は、満了日に達するとき、デジタル地図から除去される。線分に関連付けられた追加のプローブトレースが提供されるとき、予測された満了日は、好ましくは調整され、例えば、延長される。所定の閾値は、ゼロ、または、ゼロより大きい値であってもよい。
【0024】
好ましくは、加えて、または別法として、少なくとも1つのプローブトレースに割り当てられたトレース重み値は、プローブトレースを得るために使用された取得システムの少なくとも1つの正確度および/または精度基準に基づく。
【0025】
本発明の第3の態様によれば、プローブデータから導出されたトレースを使用して、デジタル地図を生成、洗練かつ/または拡張するための方法であって、前記デジタル地図は、座標系内で空間的に関連付けられた複数の線分を格納し、線分のうち少なくとも1つ、および好ましくは全部は、関連付けられた区分重み値を有し、この方法は、ロケーション決定手段を有する取得システムによって得られた、少なくとも1つのプローブトレースを提供するステップと、トレース重み値を少なくとも1つのプローブトレースに割り当てるステップであって、トレース重み値は、取得システムの少なくとも1つの正確度および/または精度基準に基づくステップと、少なくとも1つのプローブトレースに関連付けられた線分の位置を、線分の区分重み値およびトレース重み値に基づいて調整するステップとを備える方法が提供される。
【0026】
本発明の第4の態様によれば、プローブデータから導出されたトレースを使用して、デジタル地図を生成、洗練かつ/または拡張するための方法であって、前記デジタル地図は、座標系内で空間的に関連付けられた複数の線分を格納し、線分のうち少なくとも1つ、および好ましくは全部は、関連付けられた区分重み値を有し、この方法は、ロケーション決定手段を有する取得システムによって得られた、少なくとも1つのプローブトレースを提供するステップと、トレース重み値を少なくとも1つのプローブトレースに割り当てるステップであって、トレース重み値は、取得システムの少なくとも1つの正確度および/または精度基準に基づくステップと、少なくとも1つのプローブトレースに関連付けられた線分を作成するステップと、トレース重み値に基づいて、区分重み値を線分に割り当てるステップとを備える方法が提供される。
【0027】
好ましい実施形態では、取得システムは、GPS受信器など、衛星ナビゲーション信号受信器を備え、少なくとも1つの正確度および/または精度基準は、受信された衛星信号の正確度を示すデータを備える。少なくとも1つの正確度および/または精度基準はまた、または別法として、取得システムのタイプを備えてもよい。例えば、取得システムは、GPS受信器を有するパーソナルナビゲーションデバイス(PND)、GPS受信器を有するスマートフォン、または、アシスト型GPSシステムを備えてもよい。
【0028】
正確度および/または精度基準には、例えば、取得(またはセンサ)システムの特徴、天候データ、木陰データ、ビルの谷間データ、および/または、地形データ(すなわち、プローブトレースが生成されるときのもの)が含まれうる。センサシステムの特徴は、測定サンプルレート、衛星もしくは放送塔位置を取得する速度、見通し線における衛星もしくは放送塔の数、多重反射の補正方法、衛星の優先的使用、一度に連結可能な衛星の数、クロックタイミングドリフトの補正、天体暦データ、アシスト型GPSもしくは非アシスト型GPS(例えば、携帯電話もしくはテレビ塔信号において三角測量で測量することができるか、慣性誘導を装備しているか)、ディファレンシャルGPSもしくは非ディファレンシャルGPS(例えば、衛星に加えて、固定基地局を使用するか)、予測フィルタ、誤り訂正ソフトウェア、および、測定中の環境条件の知識のうち、少なくとも1つ、または、好ましくは複数であってもよい。
【0029】
本発明は、したがって、デジタル地図を更新かつ洗練するために使用されるアルゴリズムと組み合わせて、線分および/またはトレースのための時間依存重み値を使用することに関する。本発明は、データの重みを、その年齢に基づいて戦略的に調整するステップを通じて、ネットワーク全体の再計算を回避することによって、地図製作および洗練処理においてより高い効率を可能にする。本発明は、増分と非増分のいずれのネットワーク生成アルゴリズムと使用するためにも適している。同じ時間モデルは、他のデータマイニング作業にも有用である。例えば、本発明は、空間データならびに非空間データのための、すべての時間依存データに関する。
【0030】
本発明の他の態様では、重みは、加えて、または別法として、プローブトレースの正確度、および、他の品質尺度に依存することができる。例えば、異なるタイプのプローブ、ならびに、同じタイプのプローブでさえ異なる時間およびロケーションにおいては、正確度および/または精度の差がありうることは理解されよう。一例として、移動中の車両または歩行者からのロケーションセンサ分解能は、GPSでは+/−約5〜約10メートルまで、他のロケーション決定デバイスではさらに大きく変わることがある。さらに、大抵のロケーションセンサは、高層ビルまたはトンネルなど、センサのための基準の見通し線の視野の妨げになる障害物によって悪影響を受ける。例えば、GPS信号は、ビル、木、水面などではね返ることがあり(例えば、マルチパスドリフト)、移動時間がそのままの見通し線ではなく、近くの表面から反射されうるようになる。
【0031】
この方法によって、既に存在するデジタル地図、例えば、道路地図、自転車地図および歩道地図などのために使用されるものなど、デジタルベクトル地図を、収集されたプローブデータを使用して改善することができる。デジタルベクトル地図の改善された品質は、デジタルベクトル地図における分岐、合流および交差路をより正確に検出するために使用可能であり、一方向と両方向のいずれのネットワークを生成するために使用されてもよく、大規模なネットワークエリア上の大量のプローブデータを計算するとき、かなりの効率向上を示す。この方法はまた、収集されたプローブデータを使用した、道路地図など、デジタル地図を生成するためにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、デジタルベクトル地図を改善かつ/または拡張する目的で、複数のGPS対応ナビゲーションデバイスからプローブ(トレース)データを収集し、プローブデータをテーブルに格納し、次いで、個々のトレースを、デジタルベクトル地図内の線分とマッチさせるための処理を示す概略図である。
【図2】図2は、本発明による、プローブデータから導出されたトレースを使用して、デジタルベクトル地図を生成、洗練かつ/または拡張するための、一般化された流れ図である。
【図3】図3は、本発明のための、さらにより一般化された流れ図である。
【図4】図4は、本発明の第1の代替実施形態による、再算出日(週0,00)からの時間スパンに応じて、トレース重みを調整する効果を示す比較グラフである。
【図5】図5は、本発明の第1の代替実施形態による実装方式を例示する、表3に対応する簡略図である。
【図6】図6は、第1の代替実施形態により構築された時間ビンに適用された係数の進行性を例示するグラフである。
【図7】図7は、本発明の第2の代替実施形態による仮想的実装方式を例示する簡略図である。
【図8】図8は、第2の代替実施形態による、線および/またはトレース重みの指数関数的減衰を示す、簡略グラフである。
【図9】図9は、本発明の第3の代替実施形態による実装方式を例示する簡略図である。
【図10】図10は、本発明の第3の代替実施形態による例示的な代替減衰関数を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
今日では、車両プローブデータは、道路網を最新に保つために使用されている。異なる手法により、プローブデータから新しいネットワークを生成することが可能である。あるクラスのアルゴリズムは、増分アルゴリズムである。増分アルゴリズムは、いくつかの利点を有する。増分的手法は、ネットワーク全体を再度処理することなく、ネットワークの拡張および改善を可能にする。このようなアルゴリズムは、Viae Novaeアルゴリズムにおいて記載されている。
【0034】
入手可能である新しいデータは、既に存在する道路網を洗練かつ拡張するために容易に使用可能である。しかし、生成済みの道路網から古いデータを除去することは可能ではない。道路要素の使用および重要性は、その重み値に関して記述される。ある道路区分がもはや使用中でない場合、それがなお高い重みを有することがある。ネットワーク全体の再計算を回避するために、古いデータの重みを低減することができる。
【0035】
3つの異なる代替時間管理手法が、以下で紹介される。3つの手法はすべて、Viae Novaeアルゴリズム、ならびに、他の(増分および非増分の)ネットワーク生成アルゴリズムのために適している。同じ時間モデルは、他のデータマイニング作業にも有用である。この適用は、空間データのため、ならびに、非空間データのための、すべての時間依存データにとって有意義である。また、異なる手法の利点を使用するために、これら3つの時間依存方法のうち2つ以上を組み合わせることが可能である。
【0036】
図面では、同様の数字がいくつかの図を通じて同様または対応する部分を示し、これらの図面を参照して、本発明が、プローブ(すなわち、トレース)データから導出されたトレースを使用して、デジタルベクトル地図を生成、洗練かつ/または拡張するための、一般化された流れ図としての図2において、概略的に説明される。この方法は一般に、座標系内で空間的に関連付けられた複数の線分を格納するように構成された、デジタルベクトル地図を提供することを含む。これは、図2において、生成済みのネットワーク30として表される。生成済みのネットワーク30は、少なくとも1つの線分、および、より典型的には、実質的に複数の線分を格納する。各線分は、指定日に関して確認された、関連付けられた線重み値を有する。例えば、線重み値は、おそらく、Viae Novaeアルゴリズムにおいて示されるもののような、適切な方法により、これまでに収集され、線分とマッチされた、個々のトレース重みの算出された和からなりうる。
【0037】
少なくとも1つのプローブトレースは、任意の適切なソースから提供される。しばしば、複数のトレースが、進行中のデータ収集努力に関連して提供されるようになり、または、おそらく、特定のデータのソースから大量に取得されるようになる。トレースは、図2において、データベースまたはテーブル32として示される。各プローブトレースは、定義された作成日を有する。作成日は典型的には、トレースが生成された、タイムスタンプ付きの日付であるが、別の作成日を割り当ててもよい。トレース重み値は、その作成日に関してトレースに割り当てられる。ほとんどの場合、割り当てられたトレース重み値は、あらゆるトレースに対して、その作成日に関係なく、1となるが、別の重み値を使用することができる。
【0038】
マッチングステップが、34で示される。このステップで、各トレースが、生成済みのネットワーク内の特定の線分とマッチされる。任意の適切なアルゴリズムがこのステップのために使用されてもよく、上記のもののような、増分と非増分のいずれの手法も含まれる。場合によっては、このアルゴリズムは、トレースを既存の線分にマップできないことがあり、その場合、新しい線分が作成される(または、既存の線分が拡張される)。
【0039】
次に、ステップ36で、マッチされた線分が再位置決めされる(または、その属性が改変される)。本発明によれば、再算出日が確立される。この再算出日は、再位置決めステップ36が実行される実際の日時に対応する(または、それに接近して先行する)ことがあるが、2つの線分をマージするなど、特定の目的のために実質的に様々な再算出日が確立されうる。
【0040】
本発明は、線重みおよびトレース重みのうち少なくとも1つの値を、再算出日と、線分指定日およびトレース作成日のうち1つの間の時間スパンに応じて、調整するステップを含む。この調整するステップは、図2に示される機能ブロック38、40のうちいずれか1つまたは両方によって表される。機能ブロック38、40で実行される、調整するステップは、さらに後述されるように、同じであっても異なってもよい。より詳細には、調整するステップは、機能ブロック38における線重み値を、再算出日と線分の間の時間スパンに応じて、または、再算出日とトレース作成日の間の時間スパンに応じて、低減することを備えてもよい。別法として、調整するステップは、機能ブロック40におけるトレース重み値を、再算出日とトレース作成日の間の時間スパンに応じて、低減することを備えてもよい。これらの代替方法は、図4〜10に関連して、以下でより十分に説明される。
【0041】
一般に、ネットワーク生成方法は、すべての場合においてマップマッチングステップ34を必要とするとは限らないことは、当業者には理解されよう。非増分ネットワーク生成方法は通常、マップマッチングステップ34を使用しない。マップマッチングステップ34は主として、増分ネットワーク生成のために有用である。さらになお、非増分ネットワーク生成方法は通常、線重みを使用しない。しばしば、非増分ネットワーク生成方法は、トレースの重みのみを使用する。一方、そのような方法は、線重みを計算して、例えば、生成済みのネットワークに追加の線属性を備え付けてもよい。
【0042】
図3は、増分ネットワーク生成処理を説明する図2に対比して、より一般的な場合を説明する。図3の流れ図は、より一般的な場合を包含し、増分的および非増分的な手法が共に含まれる。中心のステップは、道路中心線の算出または再算出である。これは、おおよそ、図2に示された再位置決めステップ36に対応する。ネットワーク線のための重み算出部38は、実際には任意選択であり、このため、破線の輪郭で示される。いくつかのアルゴリズムは線重みを必要とすることがあるが、他のアルゴリズムはそうでないことがある。必要とされない場合であっても、線重みを、道路網のための追加の属性として計算するために、ステップ38を使用することが可能である。図3に示された流れ図のすべての他の態様および適用可能性は、当業者には容易に理解されよう。
【0043】
調整するステップのための第1の提案された方法は、再算出日から後方に測定された、定義された最大期間を使用する。この最大期間は、複数のビンに分割される。各ビンは、再算出日と最大期間の間の時間の各部分を表す。図4は、任意の所与の再算出日(週0,00)からの時間スパンに応じて、トレース重みを調整する効果をグラフィカルに示す。
【0044】
例えば、再算出日の前の1年という最大期間を定義し、この期間を、それぞれが1カ月に対応する12個のビンに分割してもよい。この例で、再算出日が所与の年の1月1日である場合、これらのビンは、それぞれ、前年の直前の12カ月に対応することになる。また、さらに、この方法によれば、各ビンに係数が割り当てられる。(データベース32からの)トレースはそれぞれ、それらのトレース作成日に対応する、ビンのうち指定されたものに関連付けられる。トレース毎に、その重み値が次いで、その特定のトレースが関連付けられるビンに割り当てられた係数に応じて算出される。指定された最大期間より古いすべてのトレースは、重み0を得る。事実上、これは、ビンに割り当てられないトレースが使用されないことを意味する。
【0045】
(それぞれ、形状点毎の)線分毎に、テーブルまたはリストが、各ビンのためのエントリと共に格納される。各エントリは、特定の時間ウィンドウ内のトレースの数を含む。上記のように、これらのビンの各々は、時間ウィンドウに従属するある係数を有する。ビン毎の累積重みを計算するために、各ビンのトレースの数が、割り当てられた係数で乗算される。線分の全体の重みが次いで、これらのビンの重みの和として決定される。
【0046】
従来技術の技法によれば、線分のための重み値は、(各トレース重み値が1であると仮定して)単に、以前にそれにマップされたトレースの数を加算することによって決定される。よって、ある特定の線分に、これまでに295個のトレースがマップされている場合、その線分のための線重み値は295である。比較例を挙げると、最大期間が10週として定義され、1週のビンの長さが十分であると見なされると仮定し、10個の別々の時間のビンが確立されるようにする。また、さらに、これまでにその線分にマップされた295個のトレース全部が、再算出日の前の10週という最大期間内の作成日を有すると仮定する。本発明の原理を使用して、295個のトレースが、それらの各作成日が対応するビンに従ってソートされる。以下の表1は、期間が10週であり、ビンの長さが1週である、ビン毎の重みの一例を示す。
【0047】
【表1】

【0048】
この例では、再算出日の直前の週の12個のトレースが、最初のビンに入れられ、25個のトレースが、再算出日の前の第2の週の範囲内に入る作成日を有する、などとなる。よって、この線分を計算するために使用されたすべての295個のトレースは、この仮想的な例の中で説明される。新しいトレースを、4週古い線分に追加する場合、この表は、以下の表2に示されるように、対応するビンで更新される。
【0049】
【表2】

【0050】
本発明のこの1つの可能な実装方法によれば、単に、すべてのトレースの重みを加算して、295(または、表2の例では296)の線重み値を達成するのではなく、係数が各ビンに割り当てられる。線形の進行が選択される場合、週0のための係数は「1」で設定されてもよく、次に続く各週が0.1ずつ減らされてもよい。したがって、トレースデータが古いほど、その係数は低くなる。任意の非負および非増加関数が使用可能である。線形減少関数の場合、以下の表3は、各ビンに割り当てられた係数、および、結果として生じる、各ビンの調整後の重み値の一例を提供する。
【0051】
【表3】

【0052】
この実装方法によれば、したがって、この線分の線重み値に対する各ビンの重みまたは寄与は、ビン内のトレースの数、および、そのビンに適用された係数の関数である。これらのビンの調整後の重みを合計すると、この特定の線分に対して、全体の調整後の重み値138.8が計算される。これを、従来技術の技法により達成された線重み値295と比較することができる。同様に、4週古いトレースが追加される場合、表2のように、その新たに追加されたトレースは、0.6の重み値のみに寄与する。新しいトレースを線分にマージした後、この線分の全体の重み値は、(296ではなく)139.4となる。図5は、表3に対応する実装方式を例示する簡略図である。
【0053】
新しい週が始まるとき(すなわち、再算出日に対して)、テーブルがすべて更新される。結果として、この表内のすべての重み値は、表4に示された例のように、1週だけシフトしなければならない。新しい週に、新しいトレースがこの線分にマップされない場合、再算出日の直前の週(すなわち、週「0」)の重みの寄与は、0に設定される。
【0054】
【表4】

【0055】
重みの寄与があらゆるビンについて0である場合、この線分には、最大期間全体に渡っていかなるトレースもマップされていないことを意味する。これは、この線分に対応する道路がその期間全体の間に使用されなかったこと、および、場合によっては、生成済みのネットワーク30からその線分を除去することが適切であることを意味する可能性がある。
【0056】
図6は、この第1の代替実施形態によって構築された時間ビンに適用された係数の進行性をグラフィカルに示す。
【0057】
(再算出日に対して)それらの作成日によって織り込まれたトレースの重みの和を使用することに加えて、線分の重み値に対する各ビンの寄与は、他の基準を使用して変わる可能性がある。例えば、これらの重みはまた、個々のトレース点の正確度にも従属することが可能である。この場合、表内の重み値は、浮動小数点数であってもよい。例として、トレース点は、4つの正確度クラスに分類されうる。正確度の値(ACC)は、作成日の時間でのGPS衛星の受信条件、またはトレースを生成するために使用されたプローブのタイプ、またはトレースソース、または他の要素に従属することがある。単純な一例ではあるが、正確度の値は、0、1、2または3でありうる。最高の正確度を有する点は、ACC値3を有し、最低の正確度を有する点は、クラス0になる。ACC値を重み値に含めるため、あらゆるACCクラスk∈{0,1,2,3}について、係数w∈[0,1]を設定してもよい。最高の正確度3では、我々は、w=1を設定するべきである。ACC値が低いほど、係数は低くなるべきである。例として、以下の値を使用してもよい。
【0058】
【表5】

【0059】
単一のトレース点では、重みは、値wに等しい(上記の時間係数で乗算される)。2つのトレース点の間のあるトレース上の点では、2つの隣接したトレース点の値wの間の加重平均を使用することができる。同様に、他の値を使用して、重みを調整することができる。例として、デバイスの分解能を使用することができる。また、あるデバイスまたはソフトウェアバージョンの重みを低減することも可能である。
【0060】
第2の代替手法は、半減期の概念を使用して、38で線重み値(または、40でトレース重み値)を決定することであり、本明細書で図7および8と協調して説明される。先行の技法と比較して、半減期の概念は、多数のビンが使用される状況において、各時間ステップ後に多数のビンをシフトさせる必要があるため、好ましいことがある。この短所を回避するため、半減期の概念を使用することができる。この方法によれば、半減時間Tが定義される。いずれかの所与の時間(すなわち、「指定日」)での線重み値が知られている場合、いずれかの他の時間(すなわち、「再算出日」)での重みを計算することが可能である。この概念では、格納するべき値は2つしかなく、すなわち、あるタイムスタンプ(指定日)での線重みwである。同様の手法を使用して、ステップ40で、トレース重み値を計算することができる。
【0061】
実際には、時には、2つの線分をマージすることが必要である場合がある。この場合、線分毎の線重み値を、共通の時間について計算し、次いで、マージすることができる。例えば、各線分AおよびBがマージされることになる。線分Aは、2009年5月1日現在で指定された重み値Xを有するのに対して、線分Bは、2009年10月1日現在で指定された重み値Yを有する。共通の再算出日が2010年1月1日として選択される場合、例えば、2つの線分の重み値はそれぞれ、減衰関数を使用して、(再算出日として)2010年1月1日を基準として調整される。線分A、Bの重み値が、このように共通の再算出日を基準として調整された後、適切なアルゴリズムを使用して、これらをマージすることができる。したがって、この技法によれば、同じタイムスタンプ(再算出日)での線分毎の調整後の重みを計算し、次いで、これらの重みを加算するか、または、他の方法でデジタル地図を洗練する。この手法では、指数関数的減衰関数のみが可能である。
【0062】
半減期の期間Tが決定され、例のため、1カ月であってもよい。これは、1カ月後、トレース(および/または線分)がその最初の重みの半分のみになることを意味する。トレース(および/または線分)のための重みが、あるタイムスタンプ(すなわち、指定日)でwである場合、時間tの後の重みw(t)は、以下により計算される。
【0063】
【数1】

【0064】
例えば、重み値が263.8、タイムスタンプが2009年8月2日である、線分がある。再算出日が2009年8月17日である場合、時間差はt=15日である。半減期が30日であると仮定すると、再算出日現在で、この線分は以下の重み値を有する。
【0065】
【数2】

【0066】
次に、この線分とマッチする、2009年6月18日(その作成日)からのトレースがあるとする。さらに、6月18日のトレースの重みが1であると仮定する。2009年8月17日の再算出日現在の、このトレースの調整後の重み値は、以下のようになる。
【0067】
【数3】

【0068】
このとき、トレースおよび線分が共通の再算出日を共有するので、それらの重み値を合計して、新しい、結果として生じる線重み値を計算することができる。したがって、このトレースを線分にマージした後、更新された線分は、186.78の重み値、および、2009年8月17日の新しいタイムスタンプ(指定日)を有する。
【0069】
図6は、この手法の仮想的実装方式を例示する簡略図である。図8からわかるように、ある線分が長時間に渡って使用されない場合、現在の重みは指数関数的に減少する。しかし、この重みは決して0にはならない。使用されていない線分を除去するために、閾値を設定し、現在の全体の重みが閾値より小さい線分を除去することができる。第1の手法のような、各時間ステップ後にシフトするステップがないので、使用されていない線分を、このように時々除去することができる。また、加えて、(それぞれ、各形状点への)あらゆる線分について、重みが閾値の下に下がるとき、満了日を格納することも可能である。次いで、満了日に達する場合、これらの線分を除去することができる。満了日に、重みが閾値に等しくなるので、あらゆる日付について重みを計算することができる。したがって、満了日は、格納された日付および重みに取って代わることができ、1つの値のみを格納すればよい。満了日の代わりに、重み1など、任意の他の重みに達するとき、日付を格納することもできる。
【0070】
図9は、本発明のこの第3の代替実施形態による実装方式を例示する簡略図である。言うまでもなく、この公式により、過去ならびに未来におけるタイムスタンプ毎の重みを計算することが可能である。また、上記のように、重みが正確度および他の値に従属することも可能である。
【0071】
またさらなる代替手法によれば、図9および10において参照されるように、それらの各対応する作成日を有するトレース重み値を使用して、トレースが34でマッチされた線分のための線重み値を計算することができる。この手法により、任意の減衰関数を使用して、タイムスタンプに応じて重みを低減することが可能になる。トレース毎に、使用された減衰関数により、重み値が計算される。線分の全体の重みは次いで、すべての使用されたトレースの重みの和である。この手法は、線分の重みを計算するための柔軟な方法を提供する。
【0072】
この手法は、トレース参照を使用して、線分のための重みを計算することによって、最初の2つの手法とは区別される。この手法により、任意の関数を使用して、タイムスタンプに応じて重みを低減することが可能になる。図10は、重みのためのこの代替減衰関数の一例を例示する。1カ月まで、トレースは新しいトレースとして受け入れられ、この時間内に、このトレースは1の重みを保つ。1カ月後、5カ月まで、この重みは線形に減少する。5カ月後、このトレースの重みは0である。多数の代替関数が、この手法において可能である。一般に、これらの減衰関数は増加しない。しかし、特殊な応用例では、他の減衰関数もまた可能である。例として、道路網が過去のある時間にどのようであったかを計算することを望む場合、ベル型曲線を使用することができる。
【0073】
(それぞれ、形状点への)線分のための全体の重みを計算するために、そこから線が生成されたトレースへの参照を使用する。トレース毎に、上記の減衰関数により、重みが計算される。線分の全体の重みは次いで、すべての使用されたトレースの重みの和である。言うまでもなく、ここでもまた、上記のように、トレースの正確度および他の値を考慮することが可能である。
【0074】
この手法は、所与の条件下で線重み値を計算するために、あらゆる数の方法で適用可能である。また、ネットワーク生成処理中に減衰関数を変更することも可能である。しかし、この手法は、そのむしろより高い計算努力により、他の提案された手法と比較して、やや不利な条件に置かれることがあり、その理由は、すべての参照されたトレースの日付を得るためのデータベースへのアクセスに、かなりの時間を要することがあるからである。
【0075】
まとめると、したがって、本発明は、プローブ(トレース)データからのネットワーク生成のための方法を説明し、この方法では、時間に依存した影響が使用されて、線重みおよび/またはトレース重みデータのための重み値が調整される。増分と非増分のいずれのネットワーク生成アルゴリズムにも関連して、プローブ(トレース)データの時間依存性を考慮するために、3つの代替手法が提案されるが、これらは例として提供されるものであり、本発明の原理の実装への排他的手法と見なされるべきではない。これらの方法は、例えば、Viae Novaeアルゴリズムと共に使用されてもよい。しかし、これらの方法はまた、時間依存データが使用される多数の他のデータマイニング作業のためにも有用である。さらに、適切な状況では、これらの方法を、互いに様々な組み合わせで使用することができる。また、さらに、加えて、または別法として、正確度、分解能、または、デバイスもしくはソフトウェアに依存する値など、係数を、重み調整モデルにおいて考慮することができる。
【0076】
本発明の一般概念を使用して、車道および進路の地図だけでなく、あらゆるデジタル(ベクトル)地図を改善できることは理解されよう。例えば、座標系内で空間的に関連付けることができる回路図、概略図、および、他のグラフィカル表現は、本発明の技法から利益を得ることができる。
【0077】
当業者は、この技術の様々な改良および拡張を想定することができる。例えば、これらの技法により、平均速度、道路分類、高度および傾斜値のような、いくつかの道路属性の計算を組み込むことが予測できる。さらに、信頼モデルおよび/またはコードを、生成済みのジオメトリならびにその属性のために、これらの概念から開発することができる。これらの技法によって、データストレージまたはデータ処理リソースに負荷をかけすぎることなく、古いデータから生成されたネットワーク要素を最新に保つことができる。
【0078】
異なる例の実施形態の要素および/または特徴を、本開示および添付の特許請求の範囲の範囲内で互いに組み合わせ、かつ/または、互いに置き換えることができる。
【0079】
またさらに、上記および他の例の特徴のいずれか1つを、装置、方法、システム、コンピュータプログラムの形態で実施することができる。例えば、前述の方法のいずれも、限定されないが、図面において例示された方法を行うための構造のいずれかを含む、システムまたはデバイスの形態で実施されてもよい。
【0080】
前述の詳細な説明において説明された実施形態は、GPSに言及するが、ナビゲーション装置は、あらゆる種類の位置検知技術をGPSに代わるものとして(または、実際に、それに加えて)利用してもよいことに留意されたい。例えば、ナビゲーション装置は、欧州のガリレオシステムなど、他の全地球的航法衛星ベースのものを使用してもよい。同様に、この装置は、衛星ベースに限定されず、地上ビーコン、または、デバイスがその地理的ロケーションを決定できるようにする任意の他の種類のシステムを使用して、容易に機能することができる。
【0081】
前述の本発明の説明は、まったく限定的ではなく、例示的である。開示された実施形態に対する変形および修正は、当業者には明らかとなりうるものであり、本発明の範囲内に入る。したがって、本発明に与えられる保護の範囲は、以下の特許請求の範囲によってのみ定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブデータから導出されたトレースを使用して、デジタル地図を生成、洗練かつ/または拡張するための方法であって、前記デジタル地図は、座標系内で空間的に関連付けられた複数の線分を格納し、前記線分のうち少なくとも1つ、および好ましくは全部は、関連付けられた区分重み値を有し、
定義された作成日を有する少なくとも1つのプローブトレースを提供するステップと、
トレース重み値を前記少なくとも1つのプローブトレースに割り当てるステップと、
前記少なくとも1つのプローブトレースに関連付けられた線分の位置を、前記線分の前記区分重み値および前記トレース重み値に基づいて調整するステップと、
前記トレース重み値および/または前記区分重み値を、再算出日と前記トレース作成日の間の時間スパンに応じて調整するステップと、
を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記線分のうち少なくとも1つ、および好ましくは全部は、計算された中心線を有し、線分の位置を調整する前記ステップは、前記区分重み値および前記トレース重み値の加重平均を任意選択で使用して、前記線分の前記中心線を再算出することを備える、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記トレース重み値および/または前記区分重み値を調整する前記ステップは、前記トレース重み値を、前記再算出日と前記トレース作成日の間の時間スパンに応じて低減することを備える、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記トレース重み値および/または前記区分重み値を調整する前記ステップは、
最大期間を定義すること、および
前記再算出日と前記トレース作成日の間の時間スパンが前記最大期間を超える場合、ゼロのトレース重み値を割り当てることを備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記最大期間を複数の区切りに分割するステップであって、各区切りは、前記再算出日と前記最大期間の間の時間の各部分を表すステップと、
各区切りに係数を割り当てるステップと、
前記トレースを、前記トレース作成日に対応する、前記区切りのうち指定されたものに関連付けるステップと、
前記トレース重み値を、前記トレースに関連付けられた前記区切りに割り当てられた前記係数に応じて算出するステップと、をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記区分重み値は、前記区切りの重みの和として算出されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
半減時間(T)および減衰関数、好ましくは指数関数的減衰関数を定義することをさらに備え、前記調整するステップは、前記区分重み値およびトレース重み値のうち少なくとも1つを、前記半減時間(T)および前記減衰関数に応じて計算することを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記計算するステップは、前記トレース重み値および/または前記区分重み値を、前記半減時間(T)および前記減衰関数に応じて変えることを含む、ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
トレース重み値を割り当てる前記ステップは、等しく共通の最初の重み値を、異なる各作成日を有する複数のトレースに割り当てることを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記デジタル地図は交通網であり、好ましくは、前記線分は、道路の少なくとも一部を表すことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
線分は、前記線分の前記区分重み値が所定の閾値の下に下がる場合、前記デジタル地図から除去されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記所定の閾値は、ゼロ、または、ゼロより大きい値であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
予測された満了日が、線分について、前記区分重み値がいつ所定の閾値の値の下に下がるかに基づいて決定され、前記線分は、前記満了日に達するとき、前記デジタル地図から除去されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記線分に関連付けられた追加のプローブトレースが提供される場合、前記予測された満了日は調整され、好ましくは延長されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つのプローブトレースに割り当てられた前記トレース重み値は、前記プローブトレースを得るために使用された前記取得システムの少なくとも1つの正確度および/または精度基準に基づくことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
プローブデータから導出されたトレースを使用して、デジタル地図を生成、洗練かつ/または拡張するための方法であって、前記デジタル地図は、座標系内で空間的に関連付けられた複数の線分を格納し、前記線分のうち少なくとも1つ、および好ましくは全部は、関連付けられた区分重み値を有し、
定義された作成日を有する少なくとも1つのプローブトレースを提供するステップと、
トレース重み値を前記少なくとも1つのプローブトレースに割り当てるステップと、
前記少なくとも1つのプローブトレースに関連付けられた線分を作成するステップと、
前記トレース重み値に基づいて、区分重み値を前記線分に割り当てるステップと、
前記トレース重み値および/または前記区分重み値を、再算出日と前記トレース作成日の間の時間スパンに応じて調整するステップと、
を有することを特徴とする方法。
【請求項17】
前記線分のうち少なくとも1つ、および好ましくは全部は、計算された中心線を有し、線分を作成する前記ステップは、前記線分のための中心線を算出することを備えることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つのプローブトレースを提供する前記ステップは、それぞれ異なる作成日を有する複数のプローブトレースを提供することを有し、
トレース重み値を前記少なくとも1つのプローブトレースに割り当てる前記ステップは、同じトレース重み値を、前記複数のプローブトレースの各々に、前記プローブトレースの前記各作成日に割り当てる、ことを有することを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項19】
プローブデータから導出されたトレースを使用して、デジタル地図を生成、洗練かつ/または拡張するための方法であって、前記デジタル地図は、座標系内で空間的に関連付けられた複数の線分を格納し、前記線分のうち少なくとも1つ、および好ましくは全部は、関連付けられた区分重み値を有し、
ロケーション決定手段を有する取得システムによって得られた、少なくとも1つのプローブトレースを提供するステップと、
トレース重み値を前記少なくとも1つのプローブトレースに割り当てるステップであって、前記トレース重み値は、前記取得システムの少なくとも1つの正確度および/または精度基準に基づく、ステップと、
前記少なくとも1つのプローブトレースに関連付けられた線分の位置を、前記線分の前記区分重み値および前記トレース重み値に基づいて調整するステップと、
を有することを特徴とする方法。
【請求項20】
前記取得システムは、GPS受信器など、衛星ナビゲーション信号受信器を備え、前記少なくとも1つの正確度および/または精度基準は、前記受信された衛星信号の前記正確度を示すデータを備えることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つの正確度および/または精度基準は、取得システムのタイプを備えることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項22】
プローブデータから導出されたトレースを使用して、デジタル地図を生成、洗練かつ/または拡張するための方法であって、前記デジタル地図は、座標系内で空間的に関連付けられた複数の線分を格納し、前記線分のうち少なくとも1つ、および好ましくは全部は、関連付けられた区分重み値を有し、
ロケーション決定手段を有する取得システムによって得られた、少なくとも1つのプローブトレースを提供するステップと、
トレース重み値を前記少なくとも1つのプローブトレースに割り当てるステップであって、前記トレース重み値は、前記取得システムの少なくとも1つの正確度および/または精度基準に基づく、ステップと、
前記少なくとも1つのプローブトレースに関連付けられた線分を作成するステップと、
前記トレース重み値に基づいて、区分重み値を前記線分に割り当てるステップと、
を有することを特徴とする方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公表番号】特表2013−515974(P2013−515974A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546226(P2012−546226)
【出願日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/061973
【国際公開番号】WO2011/079247
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(511137275)トムトム ノース アメリカ インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】TomTom North America, Inc.
【住所又は居所原語表記】11 Lafayette Street Lebanon, NH 03766 U.S.A.
【出願人】(512106676)トムトム ジャーマニー ゲーエムベーハー ウント コー. カーゲー (3)
【氏名又は名称原語表記】TOMTOM GERMANY GMBH & CO. KG
【住所又は居所原語表記】Am Neuen Horizont 1 D−31177 Harsum Germany
【Fターム(参考)】