説明

デジタル式変位測定器

【課題】ロータブッシュを適切な姿勢に保持することができ、回転伝達誤差を低減することができるデジタル式変位測定器を提供する。
【解決手段】ロータブッシュ44がステータ42と反対方向へ移動することを規制するロータブッシュ規制手段50を備え、ロータブッシュ規制手段50は、本体に固定された固定部材51と、ロータブッシュ44と固定部材51との間に設けられたロータブッシュ姿勢維持部材52と、を有し、ロータブッシュ姿勢維持部材52は、ロータブッシュ44と当接される二つの第1当接部522と、固定部材51と当接される二つの第2当接部523と、を有し、二つの第1当接部522は、スピンドル2の軸に対して互いに対称の位置に設けられ、二つの第2当接部523は、スピンドル2の軸に対して互いに対称の位置に設けられ、二つの第1当接部522を結ぶ直線と二つの第2当接部523を結ぶ直線とは、互いに略垂直であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピンドルの軸方向の変位量から、被測定物の寸法等を測定するデジタル式変位測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なデジタル式変位測定器の一つであるデジタル式マイクロメータは、本体と、この本体に摺動自在に設けられたスピンドルと、このスピンドルの変位量を検出するエンコーダと、このエンコーダの検出値から求めたスピンドルの変位量をデジタル表示する表示部と、から構成されている。
【0003】
エンコーダは、本体に固定されたステータと、スピンドルと同期回転可能に設けられたロータとが対向配置され、本体に対するスピンドルの変位量を、ステータに対するロータの回転角として検出する構造である。
一般的なデジタル式マイクロメータのロータ周辺の構成を図6および図7に示す。ロータ41は、係合キー43を有するロータブッシュ44に支持されている。スピンドル2の外周面軸方向にはキー溝23が形成されており、このキー溝23には係合キー43が係合されている。
【0004】
また、ロータブッシュ44を挟んでステータ42と反対側には、図示しない本体に固定され、ロータブッシュ44がスピンドル2の軸方向に沿ってステータ42と反対方向へ移動することを規制する固定部材51が設けられている。
これにより、ロータ41は、スピンドル2の軸方向への移動にかかわらず定位置に保持され、ステータ42とのギャップが一定に保持されている。
【0005】
スピンドル2は、デジタル式マイクロメータの本体に対し周方向に回転しながら軸方向へ進退される。すると、スピンドル2に同期してロータブッシュ44も回転されるから、ステータ42に対するロータ41の回転角が、エンコーダにより検出され、スピンドル2の変位量に変換されてデジタル表示される。
このように、デジタル式マイクロメータにおいて、ステータ42とロータ41とのギャップを一定に保ちつつ、スピンドル2の回転をロータ41に伝達する回転伝達機構として、スピンドル2の外周面軸方向に形成されたキー溝23と、キー溝23に係合可能な係合キー43と、この係合キー43を備えるロータブッシュ44と、を組み合わせた機構が用いられている。
【0006】
しかし、このような回転伝達機構においては、係合キー43のキー溝23に対する深さ位置によって回転伝達誤差が生じるおそれがある。
例えば、図8に示すように、固定部材51が、スピンドル2に対して傾いた状態で本体に固定されることがある。このような場合には、ロータブッシュ44もまたスピンドル2に対して傾いた状態となり、係合キー43のキー溝23に対する深さ位置の問題が発生する。
【0007】
固定部材51が、スピンドル2に対して傾いた状態において、スピンドル2を回転させたときの、係合キー43とキー溝23との係合状態を図9に示す。
図9(A)のような状態において、係合キー43は、キー溝23に対して深く係合されるが、スピンドル2を180度回転させると、図9(B)に示すように、係合キー43は、キー溝23に対して浅く係合された状態となる。よって、係合キー43のキー溝23に対する深さ位置は、スピンドル2の回転に伴い周期的に変化することになる。
ここで、係合キー43のキー溝23に対する深さ位置が変動すると、同時に、係合キー43のスピンドル周方向における位置もまた変動し、これにより回転伝達誤差が発生する。
【0008】
そこで、係合キーをキー溝に向かって板ばねで与圧し、係合キーとキー溝とを常に隙間なく係合させ、回転伝達誤差の発生を防止するデジタル式変位測定器が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0009】
【特許文献1】特開2003−202201号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1記載のようなデジタル式変位測定器においては、係合キーをキー溝に向かって与圧する与圧力付与機構を設ける必要があるため、部品点数が増え、組み立てが煩雑になる。また、板ばねの与圧力が大きすぎると、係合キーがキー溝に強く押し付けられ、スピンドルの円滑な進退が妨げられる。
このような問題を回避するためには、係合キーの先端とキー溝とが接触し、なおかつ係合キーがキー溝に過度の圧力を掛けないような位置に、係合キーの深さ位置を調整する方法が有効である。しかし、このような調整では、非常に精密に係合キーの深さ位置を調整する必要があり、困難を伴う。
【0011】
本発明の目的は、ロータブッシュを適切な姿勢に保持することができ、回転伝達誤差を低減することができるデジタル式変位測定器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のデジタル式変位測定器は、本体と、この本体に摺動自在に設けられたスピンドルと、このスピンドルの変位量を検出するエンコーダと、を備え、前記エンコーダは、前記スピンドルの周方向に回転するロータと、このロータと所定間隔あけて対向し前記本体に固定されたステータと、を有し、前記ロータは、前記スピンドルの外周面軸方向に形成されたキー溝に係合可能な係合キーを有するロータブッシュに支持され、前記ステータとのギャップが一定に保持されているデジタル式変位測定器であって、前記ロータブッシュが前記スピンドルの軸方向に沿って前記ステータと反対方向へ移動することを規制するロータブッシュ規制手段を備え、前記ロータブッシュ規制手段は、前記本体に固定された固定部材と、前記ロータブッシュと前記固定部材との間に設けられ前記ロータブッシュおよび前記固定部材の双方と当接し前記ロータブッシュを前記スピンドルの軸に対して略直交する姿勢に維持するロータブッシュ姿勢維持部材と、を有することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、デジタル式変位測定器が、本体に固定された固定部材と、ロータブッシュと固定部材との間に設けられロータブッシュおよび固定部材の双方と当接するロータブッシュ姿勢維持部材と、を有するロータブッシュ規制手段を備えるので、ロータブッシュがスピンドルの軸方向に沿ってステータと反対方向へ移動することを規制できる。
これにより、ロータは、スピンドルの軸方向への移動にかかわらず定位置に保持され、ステータとのギャップを一定に保持することができる。
【0014】
そして、ロータブッシュ姿勢維持部材が、ロータブッシュおよび固定部材の双方と当接しロータブッシュをスピンドルの軸に対して略直交する姿勢に維持するので、ロータブッシュ規制手段の固定部材がスピンドルに対して傾いている場合でも、ロータブッシュをスピンドルに対して傾かせることなく適切な姿勢に保持することができる。
したがって、係合キーのキー溝に対する深さ位置がスピンドルの回転に伴って変動する問題が発生しにくくなり、回転伝達誤差を低減することができる。
【0015】
本発明において、前記ロータブッシュ姿勢維持部材は、前記ロータブッシュと当接される二つの第1当接部と、前記固定部材と当接される二つの第2当接部と、を有し、前記二つの第1当接部は、前記スピンドルの軸に対して互いに対称の位置に設けられ、前記二つの第2当接部は、前記スピンドルの軸に対して互いに対称の位置に設けられ、前記二つの第1当接部を結ぶ直線と前記二つの第2当接部を結ぶ直線とは、互いに略垂直であることが好ましい。
【0016】
このような構成によれば、ロータブッシュ姿勢維持部材の二つの第1当接部が、スピンドルの軸に対して互いに対称の位置に設けられ、二つの第2当接部が、スピンドルの軸に対して互いに対称の位置に設けられ、二つの第1当接部を結ぶ直線と二つの第2当接部を結ぶ直線とが、互いに略垂直になるように構成されているので、ロータブッシュをスピンドルの軸に対して略直交する姿勢に維持することができる。
したがって、ロータブッシュ規制手段の固定部材がスピンドルに対して傾いている場合でも、ロータブッシュをスピンドルに対して傾かせることなく適切な姿勢に保持することができ、回転伝達誤差を低減することができる。
【0017】
本発明において、前記固定部材は、略円筒状の形状を有し前記スピンドルを覆うように前記本体に固定され、前記ロータブッシュ姿勢維持部材は、略板状の本体部と、前記本体部に設けられ前記スピンドルが貫通される孔部と、を有し、前記二つの第1当接部は、前記本体部の一方の面に設けられた二つの突起部であり、前記二つの第2当接部は、前記本体部の他方の面に設けられた二つの突起部であることが好ましい。
このような構成によれば、略円筒状の形状を有しスピンドルを覆うように本体に固定される固定部材は、従来のデジタル式変位測定器にも設けられていた部材であるので、従来のデジタル式変位測定器にロータブッシュ姿勢維持部材を追加することで、容易にロータブッシュのスピンドルに対する傾きを防止することができる。
【0018】
また、ロータブッシュ姿勢維持部材は、略板状の本体部と、本体部に設けられスピンドルが貫通される孔部と、本体部の一方の面に設けられた二つの突起部である第1当接部と、本体部の他方の面に設けられた二つの突起部である第2当接部と、を有する単純な形状の部材であるので、金属や樹脂等を加工して安価に製造することができ、従来のデジタル式変位測定器にロータブッシュ姿勢維持部材を追加するためのコストを抑えることができる。
【0019】
本発明において、前記ロータブッシュおよび前記固定部材の少なくともいずれか一方は、 前記ロータブッシュ姿勢維持部材の前記スピンドルの軸に垂直な方向への移動を規制するロータブッシュ姿勢維持部材規制部を備えることが好ましい。
このような構成によれば、ロータブッシュおよび固定部材の少なくともいずれか一方に設けられたロータブッシュ姿勢維持部材規制部が、ロータブッシュ姿勢維持部材のスピンドルの軸に垂直な方向への移動を規制するので、ロータブッシュ姿勢維持部材の可動範囲を限定することができる。
これにより、例えば、ロータブッシュ姿勢維持部材がスピンドルと接触しスピンドルのスムーズな回転を妨げる等の問題の発生を防止することができる。
【0020】
本発明において、前記固定部材は、前記ロータブッシュ姿勢維持部材の前記スピンドルの軸に垂直な方向への移動を規制するロータブッシュ姿勢維持部材規制部を備え、前記ロータブッシュ姿勢維持部材規制部は、前記固定部材の前記ロータブッシュ側の端面に設けられ、前記ロータブッシュ姿勢維持部材を収納可能な凹部を有することが好ましい。
このような構成によれば、従来のデジタル式変位測定器に備えられている固定部材のロータブッシュ側の端面に、ロータブッシュ姿勢維持部材を収納可能な凹部を追加することで、容易にロータブッシュ姿勢維持部材のスピンドルの軸に垂直な方向への移動を規制することができ、ロータブッシュ姿勢維持部材の可動範囲を限定することができる。
これにより、例えば、ロータブッシュ姿勢維持部材がスピンドルと接触しスピンドルのスムーズな回転を妨げる等の問題の発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、本実施形態においてデジタル式変位測定機としてデジタル式マイクロメータを例示するが、本発明はデジタル式マイクロメータに限定されるものではない。
【0022】
[デジタル式マイクロメータの構成]
図1は、本実施形態のデジタル式マイクロメータの正面図である。図2はデジタル式マイクロメータの部分断面図である。図1および図2において、デジタル式マイクロメータ100は、略U字形の本体10と、この本体10に摺動自在に設けられたスピンドル2と、本体10の内部においてスピンドル2の変位量を検出するエンコーダ40と、測定値を表示するディスプレイ61と、を備える。
【0023】
本体10の一端にはアンビル10Aが固定され、他端にスピンドル2を摺動自在に支持するブッシュである軸受筒11が設けられている。軸受筒11は略円筒形状に形成され、この軸受筒11の内周にスピンドル2が挿通され支持されている。また軸受筒11の内周面には、軸方向に沿ってクランプカラー161が設けられている。本体10の外部に設けられたクランプねじ16を操作することで、クランプカラー161がスピンドル2を締め付け、スピンドル2の摺動を規制することができる。また本体10には、略円筒形状の内筒13が設けられ、この内筒13の外周に設けられているシンブル3を回転操作することで、スピンドル2をアンビル10Aに対して進退させるようになっている。
【0024】
スピンドル2は、一直線上に配置されたスピンドル本体21と、ねじ軸22と、スピンドル本体21の外周面軸方向に形成されたキー溝23と、を備える。このスピンドル2は、一本の円柱状部材から形成されていてもよく、また、それぞれ別部材で形成されていてもよい。キー溝23は断面V形に形成されている。スピンドル2の軸方向に沿って設けられている内筒13は、その一端部が本体10に保持され、他端部は内周側に雌ねじが螺刻されており、スピンドル2のねじ軸22と螺合されている。
【0025】
また、内筒13の他端部の外周部には雄ねじが螺刻されていて、テーパナット14が螺合されている。この内筒13の雄ねじが螺刻されている所定箇所には、三本の切欠きが設けられ、三つ割部15が形成されている。テーパナット14は、スピンドル2と内筒13との嵌合を調整する部材である。すなわち、テーパナット14を回転させて、内筒13の軸方向に進退させると、三つ割部15の締め付け具合が変化して、内筒13の内径が変化する。このように、内筒13の内径を変化させ、スピンドル2と内筒13との嵌合を調整することが可能となる。
なお、スピンドル2の端部には、スピンドル2を進退させてアンビル10Aとともに被測定物を狭持する際、被測定物を加圧しすぎて破損させないように、被測定物を定圧で把持するためのラチェット17が設けられている。
【0026】
エンコーダ40は、静電容量式エンコーダであって、スピンドル2の周方向に回転するロータ41と、このロータ41と所定間隔あけて対向し、本体に固定されたステータ42と、を有する。
ロータ41は、略ドーナツ形板状に形成され、そのステータ42側の表面に図示しない電極パターンを有する。ロータ41のステータ42と逆側の表面は、ロータブッシュ44に係合されており、これにより、ロータ41は、ロータブッシュ44に支持されている。なお、ロータブッシュ44とロータ41とは、一体成形されていてもよく、また、別部材で成形されていてもよい。
【0027】
ロータブッシュ44は、スピンドル2のキー溝23に係合可能な係合キー43を有する。ロータブッシュ44に対してステータ42と逆側の位置には、ロータブッシュ44がスピンドル2の軸方向に沿ってステータ42と反対方向へ移動することを規制するロータブッシュ規制手段50が設けられている。
ステータ42は、スピンドル2の外周部に設けられ、ロータ41の電極パターンと静電結合してロータ41の回転角を検出する略ドーナツ形板状のステータ環状部と、このステータ環状部の外周に設けられ本体10の内部側へ伸びる板状のステータ長手部と、を備えている。このステータ長手部は、本体10の内部において本体10に固定されている。
【0028】
図3に、本実施形態のデジタル式マイクロメータのロータブッシュ周辺の構成を、図4に、ロータブッシュ規制手段の分解図を示す。
図3および図4に示すように、ロータブッシュ規制手段50は、ロータブッシュ44に対してステータ42と逆側の位置に設けられ、図示しない本体10に固定された固定部材51と、ロータブッシュ44と固定部材51との間に設けられロータブッシュ44および固定部材51の双方と当接しロータブッシュ44をスピンドル2の軸に対して略直交する姿勢に維持するロータブッシュ姿勢維持部材52と、を有する。
【0029】
固定部材51は、略円筒状の形状を有しスピンドル2を覆うように本体10に固定されている。固定部材51は、ロータブッシュ側の端部に設けられ径方向に延出するフランジ部511と、ロータブッシュ姿勢維持部材52のスピンドル2の軸に垂直な方向への移動を規制するロータブッシュ姿勢維持部材規制部512と、を備える。ロータブッシュ姿勢維持部材規制部512は、フランジ部511のロータブッシュ44側の端面に設けられロータブッシュ姿勢維持部材52を収納可能な凹部511Aである。
【0030】
ロータブッシュ姿勢維持部材52は、略円盤状の本体部521と、本体部521に設けられスピンドル2が貫通される略円形の孔部521Aと、本体部521の一方の面に設けられロータブッシュ44と当接される二つの第1当接部522と、本体部521の他方の面に設けられ固定部材51と当接される二つの第2当接部523と、を有する。
二つの第1当接部522は、スピンドル2の軸に対して互いに対称の位置に設けられた略直方体形状の突起部であり、二つの第2当接部523は、スピンドル2の軸に対して互いに対称の位置に設けられた略直方体形状の突起部である。
ここで、二つの第1当接部522および二つの第2当接部523は、二つの第1当接部522を結ぶ直線と二つの第2当接部523を結ぶ直線とが互いに略垂直になるように配置されている。
【0031】
図5に、固定部材がスピンドルに対して傾いて固定された場合のロータブッシュ周辺の構成を示す。
本実施形態のデジタル式マイクロメータ100は、ロータブッシュ姿勢維持部材52を備えるので、図5に示すように、固定部材51がスピンドル2に対して傾いて固定された場合でも、二つの第2当接部523がその上端において固定部材51と当接することで固定部材51の傾きによる影響を排除し、ロータブッシュ44を適切な姿勢に保持することができる。
【0032】
なお、図5においては、固定部材51がスピンドル2に対して上下方向に傾いて固定された場合を示したが、固定部材51がスピンドル2に対して紙面に垂直な方向に傾いて固定された場合でも、二つの第1当接部522がその端部においてロータブッシュ44と当接することで固定部材51の傾きによる影響を排除し、ロータブッシュ44を適切な姿勢に保持することができる。
【0033】
[デジタル式マイクロメータの使用方法]
シンブル3を回転操作することでスピンドル2をアンビル10Aに対して進退させ、スピンドル2の端面とアンビル10Aとを被測定物の被測定部位間に当接させる。このとき、スピンドル2の回転が、キー溝23、係合キー43およびロータブッシュ44を介してロータ41に伝達される。エンコーダ40により検出されたロータ41の回転角が、スピンドル2の軸方向の変位量に変換されてディスプレイ61に表示される。
【0034】
[実施形態の作用効果]
デジタル式マイクロメータ100が、本体10に固定された固定部材51と、ロータブッシュ44と固定部材51との間に設けられロータブッシュ44および固定部材51の双方と当接するロータブッシュ姿勢維持部材52と、を有するロータブッシュ規制手段50を備えるので、ロータブッシュ44がスピンドル2の軸方向に沿ってステータ42と反対方向へ移動することを規制できる。
これにより、ロータ41は、スピンドル2の軸方向への移動にかかわらず定位置に保持され、ステータ42とのギャップを一定に保持することができる。
【0035】
そして、ロータブッシュ姿勢維持部材52が、ロータブッシュ44および固定部材51の双方と当接しロータブッシュ44をスピンドル2の軸に対して略直交する姿勢に維持するので、ロータブッシュ規制手段52の固定部材51がスピンドル2に対して傾いている場合でも、ロータブッシュ44をスピンドル2に対して傾かせることなく適切な姿勢に保持することができる。
したがって、係合キー43のキー溝23に対する深さ位置がスピンドル2の回転に伴って変動する問題が発生しにくくなり、回転伝達誤差を低減することができる。
【0036】
ロータブッシュ姿勢維持部材52の二つの第1当接部522が、スピンドル2の軸に対して互いに対称の位置に設けられ、二つの第2当接部523が、スピンドル2の軸に対して互いに対称の位置に設けられ、二つの第1当接部522を結ぶ直線と二つの第2当接部523を結ぶ直線とが、互いに略垂直になるように構成されているので、ロータブッシュ44をスピンドル2の軸に対して略直交する姿勢に維持することができる。
【0037】
略円筒状の形状を有しスピンドル2を覆うように本体10に固定される固定部材51は、従来のデジタル式マイクロメータにも設けられていた部材であるので、従来のデジタル式マイクロメータにロータブッシュ姿勢維持部材52を追加することで、容易にロータブッシュ44のスピンドル2に対する傾きを防止することができる。
【0038】
また、ロータブッシュ姿勢維持部材52は、略円盤状の本体部521と、本体部521に設けられスピンドル2が貫通される孔部521Aと、本体部521の一方の面に設けられた二つの突起部である第1当接部522と、本体部521の他方の面に設けられた二つの突起部である第2当接部523と、を有する単純な形状の部材であるので、金属や樹脂等を加工して安価に製造することができ、従来のデジタル式マイクロメータにロータブッシュ姿勢維持部材52を追加するためのコストを抑えることができる。
【0039】
固定部材51に設けられたロータブッシュ姿勢維持部材規制部512が、ロータブッシュ姿勢維持部材52のスピンドル2の軸に垂直な方向への移動を規制するので、ロータブッシュ姿勢維持部材52の可動範囲を限定することができる。
これにより、例えば、ロータブッシュ姿勢維持部材52がスピンドル2と接触しスピンドル2のスムーズな回転を妨げる等の問題の発生を防止することができる。
【0040】
ここにおいて、固定部材51は、従来のデジタル式マイクロメータにも設けられていた部材であるので、従来のデジタル式マイクロメータに備えられている固定部材51のロータブッシュ44側の端面に、ロータブッシュ姿勢維持部材52を収納可能な凹部511Aを追加するだけで、容易にロータブッシュ姿勢維持部材52のスピンドル2の軸に垂直な方向への移動を規制することができる。
【0041】
[実施形態の変形例]
なお、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は、本発明に含まれるものである。
【0042】
ロータブッシュ姿勢維持部材52の形状等は、本実施形態で述べた形状等に限定されない。
二つの第1当接部522および二つの第2当接部523の形状は、本実施形態で例示した略直方体形状に限らず、例えば、球形状、柱形状、錐形状等の他の形状であってもよい。
また、ロータブッシュ姿勢維持部材52の本体部521は、スピンドル2が貫通される孔部521Aを有するものであればよく、その形状は本実施形態で例示した略円盤状に限定されない。例えば、本体部521は、多角形板状等の他の形状を有するものであってもよく、スピンドル2の軸方向に厚みを有するものであってもよい。
同様に、孔部521Aの形状は、スピンドル2を貫通させることができるものであればよく、本実施形態で例示した略円形のものに限定されない。例えば、孔部521Aは、多角形等の他の形状を有するものであってもよい。
以上の各構成を採用した場合でも、本実施形態と同様の優れた作用効果を得ることができる。
【0043】
ロータブッシュ姿勢維持部材規制部512は、本実施形態で述べた配置、形状等に限定されない。
本実施形態において、ロータブッシュ姿勢維持部材規制部512が固定部材51のフランジ部511に設けられる構成を例示したが、これに限定されない。例えば、ロータブッシュ姿勢維持部材規制部512は、ロータブッシュ44に設けられていてもよい。このような場合でも、本実施形態と同様の優れた作用効果を得ることができる。
【0044】
本実施形態では、ロータブッシュ44に設けられる係合キー43を一つとし、スピンドル2にはこれに対してキー溝23が一本設けられているものとしたが、これに限定されない。例えば、ロータブッシュ44に複数の係合キー43が設けられ、これに対応してスピンドル2の外周面軸方向に複数のキー溝23が設けられていてもよい。この場合、複数の係合キー43がスピンドル2に摺動自在に係合されているので、スピンドル2に対するロータ41の位置決めがより確実にでき、スピンドル2とロータ41との間にがたが発生することがない。
【0045】
本実施形態において、デジタル式変位測定器としてデジタル式マイクロメータ100を例示したが、これに限定されない。例えば、デジタル式マイクロメータヘッド等であってもよく、本体10に摺動自在に設けられたスピンドル2と、このスピンドル2の変位量を検出するエンコーダ40とを備える構造であればよい。
また、エンコーダ40は、本実施形態で例示した静電容量式エンコーダに限定されない。エンコーダ40は、ステータ42とロータ41の相対的な回転量を検出するデジタル式エンコーダであればよく、例えば、光学式や電磁式等でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、スピンドルの軸方向の変位量から、被測定物の寸法等を測定するデジタル式変位測定器として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本実施形態のデジタル式マイクロメータの正面図。
【図2】本実施形態のデジタル式マイクロメータの部分断面図。
【図3】本実施形態のデジタル式マイクロメータのロータブッシュ周辺の構成を示す図。
【図4】本実施形態のデジタル式マイクロメータのロータブッシュの分解図。
【図5】本実施形態のデジタル式マイクロメータのロータブッシュ周辺の構成を示す図。
【図6】従来のデジタル式マイクロメータのロータ近傍を斜め上から見た断面図。
【図7】従来のデジタル式マイクロメータのロータ近傍を横から見た断面図。
【図8】従来のデジタル式マイクロメータのロータ周辺の構成を示す図。
【図9】従来のデジタル式マイクロメータの係合キーとキー溝との係合状態を示す図。
【符号の説明】
【0048】
2 スピンドル
10 本体
23 キー溝
40 エンコーダ
41 ロータ
42 ステータ
43 係合キー
44 ロータブッシュ
50 ロータブッシュ規制手段
51 固定部材
52 ロータブッシュ姿勢維持部材
100 デジタル式マイクロメータ
511A 凹部
512 ロータブッシュ姿勢維持部材規制部
521A 孔部
521 本体部
522 第1当接部
523 第2当接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、この本体に摺動自在に設けられたスピンドルと、このスピンドルの変位量を検出するエンコーダと、を備え、
前記エンコーダは、前記スピンドルの周方向に回転するロータと、このロータと所定間隔あけて対向し前記本体に固定されたステータと、を有し、
前記ロータは、前記スピンドルの外周面軸方向に形成されたキー溝に係合可能な係合キーを有するロータブッシュに支持され、前記ステータとのギャップが一定に保持されているデジタル式変位測定器であって、
前記ロータブッシュが前記スピンドルの軸方向に沿って前記ステータと反対方向へ移動することを規制するロータブッシュ規制手段を備え、
前記ロータブッシュ規制手段は、
前記本体に固定された固定部材と、
前記ロータブッシュと前記固定部材との間に設けられ前記ロータブッシュおよび前記固定部材の双方と当接し前記ロータブッシュを前記スピンドルの軸に対して略直交する姿勢に維持するロータブッシュ姿勢維持部材と、を有する
ことを特徴としたデジタル式変位測定器。
【請求項2】
請求項1に記載のデジタル式変位測定器であって、
前記ロータブッシュ姿勢維持部材は、
前記ロータブッシュと当接される二つの第1当接部と、
前記固定部材と当接される二つの第2当接部と、を有し、
前記二つの第1当接部は、前記スピンドルの軸に対して互いに対称の位置に設けられ、
前記二つの第2当接部は、前記スピンドルの軸に対して互いに対称の位置に設けられ、
前記二つの第1当接部を結ぶ直線と前記二つの第2当接部を結ぶ直線とは、互いに略垂直である
ことを特徴としたデジタル式変位測定器。
【請求項3】
請求項2に記載のデジタル式変位測定器であって、
前記固定部材は、略円筒状の形状を有し前記スピンドルを覆うように前記本体に固定され、
前記ロータブッシュ姿勢維持部材は、略板状の本体部と、前記本体部に設けられ前記スピンドルが貫通される孔部と、を有し、
前記二つの第1当接部は、前記本体部の一方の面に設けられた二つの突起部であり、
前記二つの第2当接部は、前記本体部の他方の面に設けられた二つの突起部である
ことを特徴としたデジタル式変位測定器。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のデジタル式変位測定器であって、
前記ロータブッシュおよび前記固定部材の少なくともいずれか一方は、
前記ロータブッシュ姿勢維持部材の前記スピンドルの軸に垂直な方向への移動を規制するロータブッシュ姿勢維持部材規制部を備えた
ことを特徴としたデジタル式変位測定器。
【請求項5】
請求項3に記載のデジタル式変位測定器であって、
前記固定部材は、
前記ロータブッシュ姿勢維持部材の前記スピンドルの軸に垂直な方向への移動を規制するロータブッシュ姿勢維持部材規制部を備え、
前記ロータブッシュ姿勢維持部材規制部は、
前記固定部材の前記ロータブッシュ側の端面に設けられ、前記ロータブッシュ姿勢維持部材を収納可能な凹部を有した
ことを特徴としたデジタル式変位測定器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate