デジタル放送信号処理装置及びデジタル放送信号処理プログラム
【課題】受信局において任意のタイミングで、デジタル放送信号をMPEG−2 TS信号レベルでの差し替えを行うことができる処理装置及び処理プログラムを提供する。
【解決手段】1のデジタル放送信号から他のデジタル放送信号に差し替える際に、当該他のデジタル放送信号ストリームに含まれる画像フレームであって復号時に前記差し替え前の画像フレームを参照する画像フレームを出力信号から除去して差替処理を行うストリーム差替手段を有することを特徴とするデジタル放送信号処理装置。
【解決手段】1のデジタル放送信号から他のデジタル放送信号に差し替える際に、当該他のデジタル放送信号ストリームに含まれる画像フレームであって復号時に前記差し替え前の画像フレームを参照する画像フレームを出力信号から除去して差替処理を行うストリーム差替手段を有することを特徴とするデジタル放送信号処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル放送信号の処理装置及び処理プログラムに関し、特に、複数種類の受信信号を部分的に差し替えて出力するためのデジタル放送信号処理装置及びデジタル放送信号処理プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地方放送局では、地方局が独自で制作した放送素材(番組、CMその他を言う)と、キー局から伝送される放送素材とを時間帯ごとに編成して放送している。地上アナログ放送等の場合には、放送信号処理装置において、入力される複数種類のアナログ信号を適宜差し替えて出力することで、放送素材の切り替えを行うことができる。出力された放送信号は視聴者に向けて放送される。
【0003】
一方、デジタル放送においても同様に複数種類の放送素材を用いた番組編成が行われている。デジタル放送の場合には、MPEG−2などで符号化・圧縮された放送信号を用いるため、アナログ放送の場合のように受信信号をそのまま差し替えて出力することはできない。
そこで従来、デジタル放送におけるの放送素材の切り替えは、次のような方法で行われる。
第1の方法としては、放送局間(キー局及び地方局の間)では符号化された放送信号を伝送し、受信局(地方局)にて受信信号を復号化(伸張)し、放送データの差し替えを行った後、再度符号化を行った放送信号を出力する方法がある。
第2の方法としては、放送局間では符号化される前の放送データを伝送し、受信局にて放送データの差し替えを行った後、符号化を行った放送信号を出力する方法がある。
【特許文献1】特開平11−341492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の第1の方法では、符号化と復号化を繰り返すことにより放送データが劣化する上に、放送に遅延が生じるという問題点がある。この点、上記の第2の方法では劣化や遅延は生じないが、一方で放送局間で非圧縮の放送データ素材を伝送するための通信コストが増大するという問題点がある。
【0005】
この他、デジタル放送信号の差し替え処理に関しては、例えば、受信局において送信局からの放送信号の一部を差し替えた後、差し替えられた放送信号の先頭部分と当該差し替え範囲より後ろの位置に、それぞれの符号化形式に関する情報を付加することで、地方局の符号化形式情報を記述し符号化を行うことで、迅速かつ容易な放送信号の差し替えを行う技術が提案されている(特許文献1)。
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1に記載の技術では、送信局と受信局との間で放送信号の差し替えポイントを認知し合う必要があるため、受信局側で任意のタイミングでMPEG−2 TS(Transport Stream)信号レベルの差し替えを行うことはできない。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、受信局において任意のタイミングで、デジタル放送信号をMPEG−2 TS信号レベルでの差し替えを行うことができるデジタル放送信号処理装置及びデジタル放送信号処理プログラムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、デジタル放送信号の差し替えを行う際に、差し替えポイント直後のGOP中の画像フレームであって復号時に差し替えポイント前のGOP中の画像フレームを参照しなければならない画像フレームを出力信号から除去することにより、復号化・再符号化することなくデジタル放送信号をMPEG−2 TS信号レベルでの差し替えを行うことができることに想到し、下記発明を成すに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、入力された異なる2以上の符号化されたデジタル放送信号ストリームを部分的に差し替えて1ストリームのデジタル放送信号として出力するデジタル放送信号処理装置であって、1つのデジタル放送信号ストリームから他のデジタル放送信号ストリームに差し替える際に、当該他のデジタル放送信号ストリームに含まれる画像フレームであって復号時に前記差し替え前のストリーム位置の画像フレームを参照する画像フレームを出力信号から除去して差し替え処理を行うストリーム差替処理手段を有することを特徴とするデジタル放送信号処理装置を提供するものである。
【0010】
本発明のデジタル放送信号処理装置はさらに、前記ストリーム差替処理手段により差し替え処理がされたデジタル放送信号中の前記1のデジタル放送信号に対して、当該デジタル放送信号に付加された時刻情報を前記他のデジタル放送信号の時刻情報と同一様式の時刻情報に変換する時刻情報変換処理手段を有することを特徴とする。
【0011】
本発明のデジタル放送信号処理装置はさらに、入力された各デジタル放送信号にパケット単位でタイムスタンプを付加するタイムスタンプ付加処理部と、前記ストリーム差替処理手段により差し替え処理がされたデジタル放送信号に対して、当該デジタル放送信号の各パケットに付加されたタイムスタンプに基づいて各パケットの時間的配置を調整するパケット再配置処理手段とを有することを特徴とする。
【0012】
本発明は、また、異なる2以上の符号化されたデジタル放送信号ストリームを受信する受信手段と、前記2以上のデジタル放送信号ストリームを部分的に差し替えて1ストリームのデジタル放送信号を生成するストリーム差替処理手段と、前記ストリーム差替処理手段により生成された1ストリームのデジタル放送信号を出力する出力手段とをデジタル放送信号処理装置において用いられるデジタル放送信号処理プログラムであって、1つのデジタル放送信号ストリームから他のデジタル放送信号ストリームに差し替える際に、当該他のデジタル放送信号ストリームに含まれる画像フレームであって復号時に前記差し替え前のストリーム位置の画像フレームを参照する画像フレームを出力信号から除去して差し替え処理を行うストリーム差替処理ステップを実行することを特徴とするデジタル放送信号処理プログラムを提供するものである。
【0013】
本発明のデジタル放送信号処理プログラムはさらに、前記ストリーム差替処理ステップを実行した後に、差し替え処理されたデジタル放送信号中の前記1のデジタル放送信号に対して、当該デジタル放送信号に付加された時刻情報を前記他のデジタル放送信号の時刻情報と同一様式の時刻情報に変換する時刻情報変換処理ステップを実行することを特徴とする。
【0014】
本発明のデジタル放送信号処理プログラムはさらに、前記ストリーム差替処理ステップを実行する前に、入力された各デジタル放送信号にパケット単位でタイムスタンプを付加するタイムスタンプ付加処理ステップを実行し、前記ストリーム差替処理ステップを実行した後又は前記時刻情報変換処理ステップを実行した後に、差し替え処理されたデジタル放送信号に対して、当該デジタル放送信号の各パケットに付加されたタイムスタンプに基づいて各パケットの時間的配置を調整するパケット再配置処理を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明のデジタル放送信号処理装置及びデジタル放送信号処理プログラムによれば、デジタル放送信号の差し替えを行う際に、差し替えポイント直後のGOP中の画像フレームであって復号時に差し替えポイント前のGOP中の画像フレームを参照しなければならない画像フレームを出力信号から除去することにより、復号化・再符号化することなくデジタル放送信号をMPEG−2 TS信号レベルでの差し替えを行うことが可能となっている。
放送局などでは、符号化されたデジタル放送信号からなる放送素材を複号化・再符号化することなく差し替えて放送することができるので、機器数、工数を低減することができ、スペースの確保、ランニングコスト低減、監視対象機器の低減、故障率の向上が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明のデジタル放送信号処理装置及びデジタル放送信号処理プログラムを実施するための最良の形態を詳細に説明する。図1〜図12は、本発明の実施の形態を例示する図であり、これらの図において、同一の符号を付した部分は同一物を表わし、基本的な構成及び動作は同様であるものとする。
【0017】
<構成>
本発明の一実施形態に係るデジタル放送信号処理装置の構成について図を参照して説明する。
図1は、本実施形態のデジタル放送信号処理装置の内部構成を概略的に示す図である。
図1において、本実施形態のデジタル放送信号処理装置は、受信信号に含まれるMPEG−2 TSパケットにタイムスタンプを付加してTTS(Timestamped TS)パケット化するTTS化部110、MPEG−2 TSパケットのデータ部であるES(Elementary Stream)部を差し替えるES差替部111、MPEG−2 TSパケットのES部の差し替えに応じて一方のES部の時刻情報を他方に合致するよう変換する時刻情報変換処理部112、差し替えられたMPEG−2 TSパケットを所定の時間的位置に配置して出力パケットを構成するTS配置部113を有している。また、本実施形態のデジタル放送信号処理装置は、CPU、RAM、ROMその他の記憶部、I/O部を有している。
【0018】
<動作>
図1に示すように構成されたデジタル放送信号処理装置100において、入力された2種類のデジタル放送信号(MPEG−2 TS信号)は、復号化・再符号化されることなく、適宜部分的に差し替えられて1種類のデジタル放送信号として出力される。
以下、デジタル放送信号処理装置100における各機能部の処理の詳細について説明する。
【0019】
図2は、デジタル放送信号処理装置100の全体的な動作の概略を示すシーケンス図である。
図2に示すように、デジタル放送信号処理装置100は、入力されたデジタル放送信号に対して、TTS化部110によるTTS化処理、ES差替部111によるES差し替え処理、時刻情報変換処理部112による時刻情報変換処理、TS配置部113によるTS配置処理を順次行って得られた信号を、差し替えられたデジタル放送信号として出力する。
【0020】
図3Aは、デジタル放送信号処理装置100のTTS化部110によるTTS化処理の概要を示す図である。図示するように、入力信号であるMPEG−2 TSは、TSパケットの間に送信側基準時刻情報を含むPCR(Program Clock Reference)パケットが挿入されたストリームとして構成されているので、隣り合うPCRパケットの送信間隔(Δt1)と、そこに含まれるTSパケットの個数(N)をカウントすることにより、MPEG−2 TSの伝送速度を算出することができる。
【0021】
図3Bは、TTS化部110が行う処理の流れを詳細に示すフロー図である。
図3Bにおいて、TTS化部110は、I/O部を通じてMPEG−2 TS入力信号を受信する(ステップS301)。受信したMPEG−2 TSパケット中のPCRパケットを検索(ステップS302)し、発見されたMPEG−2 TS内のPCRパケット間に配置されたTSパケット数からMPEG−2 TSの伝送速度を算出し(ステップS303)、各パケットの先頭にカウンタ値を付加する処理を行う(ステップS304)。以上の処理を次のMPEG−2 TSパケットが存在しなくなるまで反復して実行する(ステップS305)。
【0022】
図4は、デジタル放送信号処理装置100のES差替部111によるES差し替え処理の概要を示す図である。図示するように、MPEG−2 TSパケットは、シーケンスヘッダ(SH)と画像フレーム群からなるGOP(Group Of Pictures)とを含んでいる。尚、GOPはMPEG−2 TSから復号化・再符号化なしに切り出しできるデータの最小単位である。したがって、ES差し替え処理では、差替信号が発せられると、シーケンスヘッダ及びGOP単位からなるパケット単位で信号の差し替えを行う。
【0023】
続いて、GOPにおける画像フレームの相互参照について説明する。
GOPには、オープンGOPとクローズドGOPの2種類が存在する。オープンGOPでは隣り合う画像フレームを参照しながら映像が再生されるのに対して、クローズドGOPではそれぞれのGOPが他のGOPを参照することなく映像の再生が可能である。
【0024】
図5は、オープンGOPにおける画像フレームの参照方法を概略的に示す図である。
オープンGOPを構成する画像フレームには、Iフレーム、Pフレーム、Bフレームの3種類が存在する。Iフレームは通常の画像フレームであり、再生にあたって他のフレームを参照する必要はない。Pフレームは、前のIフレーム又はPフレームとの差分を記録した画像フレームであり、再生にあたって前のIフレーム又はPフレームを参照する必要がある。Bフレームは、前後のIフレーム又はPフレームとの差分を記録した画像フレームであり、再生にあたって前後(の一方又は両方)のIフレーム、Pフレーム又はBフレームを参照する必要がある。
【0025】
図5の上段に例示するフレーム群では、P04フレームは前のP03フレームを、P05フレームは前のI02フレームを参照し、B09フレームは前のP03フレーム及び後のP04フレームを参照し、B10フレームは前のP03フレーム及び後のP04フレームを参照し、B11フレームは前のP04フレーム及び後のI02フレームを参照し、B12フレームは前のP04フレーム及び後のI02フレームを参照し、B13フレームは前のI02フレーム及び後のP05フレームを参照し、B14フレームは前のI02フレーム及び後のP05フレームを参照する。
また、図5の下段に示すように、MPEG−2において出力される信号では、GOPは実際の再生順序とは異なるフレーム配列となっている。これは、Bフレームの双方向参照の特性によるものであり、例えば、図5下段の出力信号列においてはB9、B10フレームの再生のために、P04フレームがこれらよりも前に配置されている。尚、これらフレームの並べ替えはPTS/DTS等の時刻情報を参照して行うことができる。
【0026】
図6は、デジタル放送信号処理装置100のES差替部111によるES差し替え処理におけるGOP画像フレーム単位の調整方法を概略的に示す図である。
図6において、第1GOPと第2GOPとの間でES差し替え処理を行う場合について説明する。尚、本例における入力信号列1、2は図5に示したのと同じ信号列である。
図6の上段に示すように、従来のES差し替え処理方式では、入力信号列1から入力信号列2に差し替えた直後の第2GOPにおけるB11’フレーム及びB12’フレームが、その前の第1GOPに属するP04フレームを参照して復号化されることになるため、ブロックノイズやブラックアウトなどが生じてしまう。
【0027】
そこで、本発明ではこのような問題点を解消すべく、デジタル放送信号処理装置100のES差替部111において、差し替え処理直後のGOP内で差し替え前のGOPの画像フレームを参照してしまう画像フレーム、すなわち図6の例ではB11’フレーム及びB12’フレームを出力信号から取り除く処理を行うこととしている。これにより、差し替え処理前後に画像の乱れなどが生じることなく、スムーズに差し替え処理を行うことが可能である。
【0028】
図7は、デジタル放送信号処理装置100のES差替部111が行う処理の流れを詳細に示すフロー図である。
まず、デジタル放送信号処理装置100のES差替部111は、TTS化部からMPEG−2 TSパケット入力1と入力2とを常時受信しており(ステップS701)、これらMPEG−2 TSパケットに含まれるシーケンスヘッダを常時検索している(ステップS702)。ここで、ESの差し替えを指示する差替信号が発せられると、その直後のシーケンスヘッダとこれに続くGOPから差し替えを行う(ステップS703)。
【0029】
続いて、ES差替部111は、差し替え処理直後のGOP中のIフレームに続くBフレームを検索し(ステップS704)、検索されたBフレームのPTSの値が参照先の画像フレームPTSの値より小さい場合(つまり前方向を参照する場合)には(ステップS705)、当該Bフレームを出力信号から取り除く処理を行う(ステップS706)。一方、検索されたBフレームが前方向を参照するものではない場は、そのまま出力を行う(ステップS707)。
TTS化部からMPEG−2 TSパケットの出力中に次の差替信号が発せられた場合には、ステップS702からの処理を繰り返す(ステップS708)。
次の差替信号がない場合には、差し替え処理されたデータを出力する(ステップS709)。
【0030】
図8Aは、デジタル放送信号処理装置100の時刻情報変換処理部112による時刻情報変換処理の概要を示す図である。
図8Aに示すように、入力信号1と入力信号2に付されたPTS/DTSなどの時刻情報は必ずしも同期されているものではない。ES差し替えにより異なる時刻情報が付加されたMPEG−2TSパケットが混在すると、受信機側にて時刻情報が乱れを修正するため時刻情報の再取得を行うなどして、映像・音声が乱れてしてしまう。
そこで、デジタル放送信号処理装置100では、時刻情報変換処理部112において、いずれか一方の入力信号(図の例では入力信号1)の基準に合致するよう他方の入力信号の時刻情報を書き換える処理を行う。
【0031】
図8Bは、時刻情報変換処理部112が行う処理の流れを詳細に示すフロー図である。
図8Bにおいて、時刻情報変換処理部112は、ES差替部111からMPEG−2 TSパケットを受信し(ステップS801)、MPEG−2TSパケット中のPESヘッダに付加されたPTS/DTSを検索し(ステップS802)、基準とする入力信号以外の入力信号のPTS/DTSについては基準とする入力信号のPTS/DTSに合致するよう時刻情報の書き換えを行う(ステップS803)。
以上の処理を、MPEG−2 TSパケット単位で繰り返す(ステップS804)。
【0032】
図9Aは、デジタル放送信号処理装置100のTS配置部113によるTS配置処理の概要を示す図である。
TS配置部113では、TTS化部110により各MPEG−2TSパケットに付加されたTTSカウンタ値に基づき、差替え対象となるパケット(Pkt01,03,06)のTTSの間隔を判断し、その間隔にもっとも近いポイント(Δt1≒Δt1’、 Δt2≒Δt2’)に差替え対象となるパケット(Pkt11にPkt01を、Pkt14にPkt03を、Pkt18にPkt06をそれぞれ配置)を配置する。こうすることにより、入力されたパケットに極めて近い間隔でのパケット出力が可能となる。
【0033】
図9Bは、デジタル放送信号処理装置100のTS配置部113が行う処理の流れを詳細に示すフロー図である。
図9Bにおいて、TS配置部113は、時刻情報変換処理部112からMPEG−2 TSパケットを受信し(ステップS901)、差替え対象となるMPEG−2 TSパケットに付加されたTTSカウンタ値を検索し(ステップS902)、入力されたTTSの間隔を基に、入力されたパケットに対して近い間隔でパケットの配置を行う(ステップS903)。
以上の処理を、MPEG−2 TSパケット単位で繰り返す(ステップS904)。
TS配置部113によりTS配置処理されたMPEG−2 TSがデジタル放送信号処理装置100からの出力信号として出力される。
【0034】
以上、本発明のデジタル放送信号処理装置及びデジタル放送信号処理プログラムについて、具体的な実施の形態を示して説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。当業者であれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、上記各実施形態における各処理部の構成及び機能に様々な変更・改良を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のデジタル放送信号処理装置及びデジタル放送信号処理プログラムは、図1に示すように、コンピュータのCPU、メモリ、補助記憶装置、入出力デバイス等のハードウェア資源上に構築されたソフトウェアによって実現されるものであり、複数種類のデジタル放送信号の差し替え処理という情報処理が、上記のハードウェア資源を図2〜図9Bに示すように動作させることによって実現されるものであるから、自然法則を利用した技術的思想に該当し、産業上利用することが可能な発明である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態に係るデジタル放送信号処理装置内部構成を概略的に示す図である。
【図2】図1に示すデジタル放送信号処理装置の全体的な動作の概略を示すシーケンス図である。
【図3A】図1に示すデジタル放送信号処理装置のTTS化部によるTTS化処理の概要を示す図である。
【図3B】図1に示すデジタル放送信号処理装置のTTS化部が行う処理の流れを詳細に示すフロー図である。
【図4】図1に示すデジタル放送信号処理装置のES差替部によるES差し替え処理の概要を示す図である。
【図5】オープンGOPにおける画像フレームの参照方法を概略的に示す図である。
【図6】図1に示すデジタル放送信号処理装置のES差替部によるES差し替え処理におけるGOP画像フレーム単位の調整方法を概略的に示す図である。
【図7】図1に示すデジタル放送信号処理装置のES差替部が行う処理の流れを詳細に示すフロー図である。
【図8A】図1に示すデジタル放送信号処理装置の時刻情報変換処理部による時刻情報変換処理の概要を示す図である。
【図8B】図1に示すデジタル放送信号処理装置の時刻情報変換処理部が行う処理の流れを詳細に示すフロー図である。
【図9A】図1に示すデジタル放送信号処理装置のTS配置部によるTS配置処理の概要を示す図である。
【図9B】図1に示すデジタル放送信号処理装置のTS配置部が行う処理の流れを詳細に示すフロー図である。
【符号の説明】
【0037】
100 デジタル放送信号処理装置
110 TTS化部
111 ES差替部
112 時刻情報変換処理部
113 TS配置部
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル放送信号の処理装置及び処理プログラムに関し、特に、複数種類の受信信号を部分的に差し替えて出力するためのデジタル放送信号処理装置及びデジタル放送信号処理プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地方放送局では、地方局が独自で制作した放送素材(番組、CMその他を言う)と、キー局から伝送される放送素材とを時間帯ごとに編成して放送している。地上アナログ放送等の場合には、放送信号処理装置において、入力される複数種類のアナログ信号を適宜差し替えて出力することで、放送素材の切り替えを行うことができる。出力された放送信号は視聴者に向けて放送される。
【0003】
一方、デジタル放送においても同様に複数種類の放送素材を用いた番組編成が行われている。デジタル放送の場合には、MPEG−2などで符号化・圧縮された放送信号を用いるため、アナログ放送の場合のように受信信号をそのまま差し替えて出力することはできない。
そこで従来、デジタル放送におけるの放送素材の切り替えは、次のような方法で行われる。
第1の方法としては、放送局間(キー局及び地方局の間)では符号化された放送信号を伝送し、受信局(地方局)にて受信信号を復号化(伸張)し、放送データの差し替えを行った後、再度符号化を行った放送信号を出力する方法がある。
第2の方法としては、放送局間では符号化される前の放送データを伝送し、受信局にて放送データの差し替えを行った後、符号化を行った放送信号を出力する方法がある。
【特許文献1】特開平11−341492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の第1の方法では、符号化と復号化を繰り返すことにより放送データが劣化する上に、放送に遅延が生じるという問題点がある。この点、上記の第2の方法では劣化や遅延は生じないが、一方で放送局間で非圧縮の放送データ素材を伝送するための通信コストが増大するという問題点がある。
【0005】
この他、デジタル放送信号の差し替え処理に関しては、例えば、受信局において送信局からの放送信号の一部を差し替えた後、差し替えられた放送信号の先頭部分と当該差し替え範囲より後ろの位置に、それぞれの符号化形式に関する情報を付加することで、地方局の符号化形式情報を記述し符号化を行うことで、迅速かつ容易な放送信号の差し替えを行う技術が提案されている(特許文献1)。
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1に記載の技術では、送信局と受信局との間で放送信号の差し替えポイントを認知し合う必要があるため、受信局側で任意のタイミングでMPEG−2 TS(Transport Stream)信号レベルの差し替えを行うことはできない。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、受信局において任意のタイミングで、デジタル放送信号をMPEG−2 TS信号レベルでの差し替えを行うことができるデジタル放送信号処理装置及びデジタル放送信号処理プログラムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、デジタル放送信号の差し替えを行う際に、差し替えポイント直後のGOP中の画像フレームであって復号時に差し替えポイント前のGOP中の画像フレームを参照しなければならない画像フレームを出力信号から除去することにより、復号化・再符号化することなくデジタル放送信号をMPEG−2 TS信号レベルでの差し替えを行うことができることに想到し、下記発明を成すに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、入力された異なる2以上の符号化されたデジタル放送信号ストリームを部分的に差し替えて1ストリームのデジタル放送信号として出力するデジタル放送信号処理装置であって、1つのデジタル放送信号ストリームから他のデジタル放送信号ストリームに差し替える際に、当該他のデジタル放送信号ストリームに含まれる画像フレームであって復号時に前記差し替え前のストリーム位置の画像フレームを参照する画像フレームを出力信号から除去して差し替え処理を行うストリーム差替処理手段を有することを特徴とするデジタル放送信号処理装置を提供するものである。
【0010】
本発明のデジタル放送信号処理装置はさらに、前記ストリーム差替処理手段により差し替え処理がされたデジタル放送信号中の前記1のデジタル放送信号に対して、当該デジタル放送信号に付加された時刻情報を前記他のデジタル放送信号の時刻情報と同一様式の時刻情報に変換する時刻情報変換処理手段を有することを特徴とする。
【0011】
本発明のデジタル放送信号処理装置はさらに、入力された各デジタル放送信号にパケット単位でタイムスタンプを付加するタイムスタンプ付加処理部と、前記ストリーム差替処理手段により差し替え処理がされたデジタル放送信号に対して、当該デジタル放送信号の各パケットに付加されたタイムスタンプに基づいて各パケットの時間的配置を調整するパケット再配置処理手段とを有することを特徴とする。
【0012】
本発明は、また、異なる2以上の符号化されたデジタル放送信号ストリームを受信する受信手段と、前記2以上のデジタル放送信号ストリームを部分的に差し替えて1ストリームのデジタル放送信号を生成するストリーム差替処理手段と、前記ストリーム差替処理手段により生成された1ストリームのデジタル放送信号を出力する出力手段とをデジタル放送信号処理装置において用いられるデジタル放送信号処理プログラムであって、1つのデジタル放送信号ストリームから他のデジタル放送信号ストリームに差し替える際に、当該他のデジタル放送信号ストリームに含まれる画像フレームであって復号時に前記差し替え前のストリーム位置の画像フレームを参照する画像フレームを出力信号から除去して差し替え処理を行うストリーム差替処理ステップを実行することを特徴とするデジタル放送信号処理プログラムを提供するものである。
【0013】
本発明のデジタル放送信号処理プログラムはさらに、前記ストリーム差替処理ステップを実行した後に、差し替え処理されたデジタル放送信号中の前記1のデジタル放送信号に対して、当該デジタル放送信号に付加された時刻情報を前記他のデジタル放送信号の時刻情報と同一様式の時刻情報に変換する時刻情報変換処理ステップを実行することを特徴とする。
【0014】
本発明のデジタル放送信号処理プログラムはさらに、前記ストリーム差替処理ステップを実行する前に、入力された各デジタル放送信号にパケット単位でタイムスタンプを付加するタイムスタンプ付加処理ステップを実行し、前記ストリーム差替処理ステップを実行した後又は前記時刻情報変換処理ステップを実行した後に、差し替え処理されたデジタル放送信号に対して、当該デジタル放送信号の各パケットに付加されたタイムスタンプに基づいて各パケットの時間的配置を調整するパケット再配置処理を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明のデジタル放送信号処理装置及びデジタル放送信号処理プログラムによれば、デジタル放送信号の差し替えを行う際に、差し替えポイント直後のGOP中の画像フレームであって復号時に差し替えポイント前のGOP中の画像フレームを参照しなければならない画像フレームを出力信号から除去することにより、復号化・再符号化することなくデジタル放送信号をMPEG−2 TS信号レベルでの差し替えを行うことが可能となっている。
放送局などでは、符号化されたデジタル放送信号からなる放送素材を複号化・再符号化することなく差し替えて放送することができるので、機器数、工数を低減することができ、スペースの確保、ランニングコスト低減、監視対象機器の低減、故障率の向上が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明のデジタル放送信号処理装置及びデジタル放送信号処理プログラムを実施するための最良の形態を詳細に説明する。図1〜図12は、本発明の実施の形態を例示する図であり、これらの図において、同一の符号を付した部分は同一物を表わし、基本的な構成及び動作は同様であるものとする。
【0017】
<構成>
本発明の一実施形態に係るデジタル放送信号処理装置の構成について図を参照して説明する。
図1は、本実施形態のデジタル放送信号処理装置の内部構成を概略的に示す図である。
図1において、本実施形態のデジタル放送信号処理装置は、受信信号に含まれるMPEG−2 TSパケットにタイムスタンプを付加してTTS(Timestamped TS)パケット化するTTS化部110、MPEG−2 TSパケットのデータ部であるES(Elementary Stream)部を差し替えるES差替部111、MPEG−2 TSパケットのES部の差し替えに応じて一方のES部の時刻情報を他方に合致するよう変換する時刻情報変換処理部112、差し替えられたMPEG−2 TSパケットを所定の時間的位置に配置して出力パケットを構成するTS配置部113を有している。また、本実施形態のデジタル放送信号処理装置は、CPU、RAM、ROMその他の記憶部、I/O部を有している。
【0018】
<動作>
図1に示すように構成されたデジタル放送信号処理装置100において、入力された2種類のデジタル放送信号(MPEG−2 TS信号)は、復号化・再符号化されることなく、適宜部分的に差し替えられて1種類のデジタル放送信号として出力される。
以下、デジタル放送信号処理装置100における各機能部の処理の詳細について説明する。
【0019】
図2は、デジタル放送信号処理装置100の全体的な動作の概略を示すシーケンス図である。
図2に示すように、デジタル放送信号処理装置100は、入力されたデジタル放送信号に対して、TTS化部110によるTTS化処理、ES差替部111によるES差し替え処理、時刻情報変換処理部112による時刻情報変換処理、TS配置部113によるTS配置処理を順次行って得られた信号を、差し替えられたデジタル放送信号として出力する。
【0020】
図3Aは、デジタル放送信号処理装置100のTTS化部110によるTTS化処理の概要を示す図である。図示するように、入力信号であるMPEG−2 TSは、TSパケットの間に送信側基準時刻情報を含むPCR(Program Clock Reference)パケットが挿入されたストリームとして構成されているので、隣り合うPCRパケットの送信間隔(Δt1)と、そこに含まれるTSパケットの個数(N)をカウントすることにより、MPEG−2 TSの伝送速度を算出することができる。
【0021】
図3Bは、TTS化部110が行う処理の流れを詳細に示すフロー図である。
図3Bにおいて、TTS化部110は、I/O部を通じてMPEG−2 TS入力信号を受信する(ステップS301)。受信したMPEG−2 TSパケット中のPCRパケットを検索(ステップS302)し、発見されたMPEG−2 TS内のPCRパケット間に配置されたTSパケット数からMPEG−2 TSの伝送速度を算出し(ステップS303)、各パケットの先頭にカウンタ値を付加する処理を行う(ステップS304)。以上の処理を次のMPEG−2 TSパケットが存在しなくなるまで反復して実行する(ステップS305)。
【0022】
図4は、デジタル放送信号処理装置100のES差替部111によるES差し替え処理の概要を示す図である。図示するように、MPEG−2 TSパケットは、シーケンスヘッダ(SH)と画像フレーム群からなるGOP(Group Of Pictures)とを含んでいる。尚、GOPはMPEG−2 TSから復号化・再符号化なしに切り出しできるデータの最小単位である。したがって、ES差し替え処理では、差替信号が発せられると、シーケンスヘッダ及びGOP単位からなるパケット単位で信号の差し替えを行う。
【0023】
続いて、GOPにおける画像フレームの相互参照について説明する。
GOPには、オープンGOPとクローズドGOPの2種類が存在する。オープンGOPでは隣り合う画像フレームを参照しながら映像が再生されるのに対して、クローズドGOPではそれぞれのGOPが他のGOPを参照することなく映像の再生が可能である。
【0024】
図5は、オープンGOPにおける画像フレームの参照方法を概略的に示す図である。
オープンGOPを構成する画像フレームには、Iフレーム、Pフレーム、Bフレームの3種類が存在する。Iフレームは通常の画像フレームであり、再生にあたって他のフレームを参照する必要はない。Pフレームは、前のIフレーム又はPフレームとの差分を記録した画像フレームであり、再生にあたって前のIフレーム又はPフレームを参照する必要がある。Bフレームは、前後のIフレーム又はPフレームとの差分を記録した画像フレームであり、再生にあたって前後(の一方又は両方)のIフレーム、Pフレーム又はBフレームを参照する必要がある。
【0025】
図5の上段に例示するフレーム群では、P04フレームは前のP03フレームを、P05フレームは前のI02フレームを参照し、B09フレームは前のP03フレーム及び後のP04フレームを参照し、B10フレームは前のP03フレーム及び後のP04フレームを参照し、B11フレームは前のP04フレーム及び後のI02フレームを参照し、B12フレームは前のP04フレーム及び後のI02フレームを参照し、B13フレームは前のI02フレーム及び後のP05フレームを参照し、B14フレームは前のI02フレーム及び後のP05フレームを参照する。
また、図5の下段に示すように、MPEG−2において出力される信号では、GOPは実際の再生順序とは異なるフレーム配列となっている。これは、Bフレームの双方向参照の特性によるものであり、例えば、図5下段の出力信号列においてはB9、B10フレームの再生のために、P04フレームがこれらよりも前に配置されている。尚、これらフレームの並べ替えはPTS/DTS等の時刻情報を参照して行うことができる。
【0026】
図6は、デジタル放送信号処理装置100のES差替部111によるES差し替え処理におけるGOP画像フレーム単位の調整方法を概略的に示す図である。
図6において、第1GOPと第2GOPとの間でES差し替え処理を行う場合について説明する。尚、本例における入力信号列1、2は図5に示したのと同じ信号列である。
図6の上段に示すように、従来のES差し替え処理方式では、入力信号列1から入力信号列2に差し替えた直後の第2GOPにおけるB11’フレーム及びB12’フレームが、その前の第1GOPに属するP04フレームを参照して復号化されることになるため、ブロックノイズやブラックアウトなどが生じてしまう。
【0027】
そこで、本発明ではこのような問題点を解消すべく、デジタル放送信号処理装置100のES差替部111において、差し替え処理直後のGOP内で差し替え前のGOPの画像フレームを参照してしまう画像フレーム、すなわち図6の例ではB11’フレーム及びB12’フレームを出力信号から取り除く処理を行うこととしている。これにより、差し替え処理前後に画像の乱れなどが生じることなく、スムーズに差し替え処理を行うことが可能である。
【0028】
図7は、デジタル放送信号処理装置100のES差替部111が行う処理の流れを詳細に示すフロー図である。
まず、デジタル放送信号処理装置100のES差替部111は、TTS化部からMPEG−2 TSパケット入力1と入力2とを常時受信しており(ステップS701)、これらMPEG−2 TSパケットに含まれるシーケンスヘッダを常時検索している(ステップS702)。ここで、ESの差し替えを指示する差替信号が発せられると、その直後のシーケンスヘッダとこれに続くGOPから差し替えを行う(ステップS703)。
【0029】
続いて、ES差替部111は、差し替え処理直後のGOP中のIフレームに続くBフレームを検索し(ステップS704)、検索されたBフレームのPTSの値が参照先の画像フレームPTSの値より小さい場合(つまり前方向を参照する場合)には(ステップS705)、当該Bフレームを出力信号から取り除く処理を行う(ステップS706)。一方、検索されたBフレームが前方向を参照するものではない場は、そのまま出力を行う(ステップS707)。
TTS化部からMPEG−2 TSパケットの出力中に次の差替信号が発せられた場合には、ステップS702からの処理を繰り返す(ステップS708)。
次の差替信号がない場合には、差し替え処理されたデータを出力する(ステップS709)。
【0030】
図8Aは、デジタル放送信号処理装置100の時刻情報変換処理部112による時刻情報変換処理の概要を示す図である。
図8Aに示すように、入力信号1と入力信号2に付されたPTS/DTSなどの時刻情報は必ずしも同期されているものではない。ES差し替えにより異なる時刻情報が付加されたMPEG−2TSパケットが混在すると、受信機側にて時刻情報が乱れを修正するため時刻情報の再取得を行うなどして、映像・音声が乱れてしてしまう。
そこで、デジタル放送信号処理装置100では、時刻情報変換処理部112において、いずれか一方の入力信号(図の例では入力信号1)の基準に合致するよう他方の入力信号の時刻情報を書き換える処理を行う。
【0031】
図8Bは、時刻情報変換処理部112が行う処理の流れを詳細に示すフロー図である。
図8Bにおいて、時刻情報変換処理部112は、ES差替部111からMPEG−2 TSパケットを受信し(ステップS801)、MPEG−2TSパケット中のPESヘッダに付加されたPTS/DTSを検索し(ステップS802)、基準とする入力信号以外の入力信号のPTS/DTSについては基準とする入力信号のPTS/DTSに合致するよう時刻情報の書き換えを行う(ステップS803)。
以上の処理を、MPEG−2 TSパケット単位で繰り返す(ステップS804)。
【0032】
図9Aは、デジタル放送信号処理装置100のTS配置部113によるTS配置処理の概要を示す図である。
TS配置部113では、TTS化部110により各MPEG−2TSパケットに付加されたTTSカウンタ値に基づき、差替え対象となるパケット(Pkt01,03,06)のTTSの間隔を判断し、その間隔にもっとも近いポイント(Δt1≒Δt1’、 Δt2≒Δt2’)に差替え対象となるパケット(Pkt11にPkt01を、Pkt14にPkt03を、Pkt18にPkt06をそれぞれ配置)を配置する。こうすることにより、入力されたパケットに極めて近い間隔でのパケット出力が可能となる。
【0033】
図9Bは、デジタル放送信号処理装置100のTS配置部113が行う処理の流れを詳細に示すフロー図である。
図9Bにおいて、TS配置部113は、時刻情報変換処理部112からMPEG−2 TSパケットを受信し(ステップS901)、差替え対象となるMPEG−2 TSパケットに付加されたTTSカウンタ値を検索し(ステップS902)、入力されたTTSの間隔を基に、入力されたパケットに対して近い間隔でパケットの配置を行う(ステップS903)。
以上の処理を、MPEG−2 TSパケット単位で繰り返す(ステップS904)。
TS配置部113によりTS配置処理されたMPEG−2 TSがデジタル放送信号処理装置100からの出力信号として出力される。
【0034】
以上、本発明のデジタル放送信号処理装置及びデジタル放送信号処理プログラムについて、具体的な実施の形態を示して説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。当業者であれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、上記各実施形態における各処理部の構成及び機能に様々な変更・改良を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のデジタル放送信号処理装置及びデジタル放送信号処理プログラムは、図1に示すように、コンピュータのCPU、メモリ、補助記憶装置、入出力デバイス等のハードウェア資源上に構築されたソフトウェアによって実現されるものであり、複数種類のデジタル放送信号の差し替え処理という情報処理が、上記のハードウェア資源を図2〜図9Bに示すように動作させることによって実現されるものであるから、自然法則を利用した技術的思想に該当し、産業上利用することが可能な発明である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態に係るデジタル放送信号処理装置内部構成を概略的に示す図である。
【図2】図1に示すデジタル放送信号処理装置の全体的な動作の概略を示すシーケンス図である。
【図3A】図1に示すデジタル放送信号処理装置のTTS化部によるTTS化処理の概要を示す図である。
【図3B】図1に示すデジタル放送信号処理装置のTTS化部が行う処理の流れを詳細に示すフロー図である。
【図4】図1に示すデジタル放送信号処理装置のES差替部によるES差し替え処理の概要を示す図である。
【図5】オープンGOPにおける画像フレームの参照方法を概略的に示す図である。
【図6】図1に示すデジタル放送信号処理装置のES差替部によるES差し替え処理におけるGOP画像フレーム単位の調整方法を概略的に示す図である。
【図7】図1に示すデジタル放送信号処理装置のES差替部が行う処理の流れを詳細に示すフロー図である。
【図8A】図1に示すデジタル放送信号処理装置の時刻情報変換処理部による時刻情報変換処理の概要を示す図である。
【図8B】図1に示すデジタル放送信号処理装置の時刻情報変換処理部が行う処理の流れを詳細に示すフロー図である。
【図9A】図1に示すデジタル放送信号処理装置のTS配置部によるTS配置処理の概要を示す図である。
【図9B】図1に示すデジタル放送信号処理装置のTS配置部が行う処理の流れを詳細に示すフロー図である。
【符号の説明】
【0037】
100 デジタル放送信号処理装置
110 TTS化部
111 ES差替部
112 時刻情報変換処理部
113 TS配置部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された異なる2以上の符号化されたデジタル放送信号ストリームを部分的に差し替えて1ストリームのデジタル放送信号として出力するデジタル放送信号処理装置であって、
1つのデジタル放送信号ストリームから他のデジタル放送信号ストリームに差し替える際に、当該他のデジタル放送信号ストリームに含まれる画像フレームであって復号時に前記差し替え前のストリーム位置の画像フレームを参照する画像フレームを出力信号から除去して差し替え処理を行うストリーム差替処理手段を有することを特徴とするデジタル放送信号処理装置。
【請求項2】
前記ストリーム差替処理手段により差し替え処理がされたデジタル放送信号中の前記1のデジタル放送信号に対して、当該デジタル放送信号に付加された時刻情報を前記他のデジタル放送信号の時刻情報と同一様式の時刻情報に変換する時刻情報変換処理手段を有することを特徴とする請求項1に記載のデジタル放送信号処理装置。
【請求項3】
入力された各デジタル放送信号にパケット単位でタイムスタンプを付加するタイムスタンプ付加処理部と、
前記ストリーム差替処理手段により差し替え処理がされたデジタル放送信号に対して、当該デジタル放送信号の各パケットに付加されたタイムスタンプに基づいて各パケットの時間的配置を調整するパケット再配置処理手段とを有することを特徴とする請求項1又は2に記載のデジタル放送信号処理装置。
【請求項4】
異なる2以上の符号化されたデジタル放送信号ストリームを受信する受信手段と、
前記2以上のデジタル放送信号ストリームを部分的に差し替えて1ストリームのデジタル放送信号を生成するストリーム差替処理手段と、
前記ストリーム差替処理手段により生成された1ストリームのデジタル放送信号を出力する出力手段とをデジタル放送信号処理装置において用いられるデジタル放送信号処理プログラムであって、
1つのデジタル放送信号ストリームから他のデジタル放送信号ストリームに差し替える際に、当該他のデジタル放送信号ストリームに含まれる画像フレームであって復号時に前記差し替え前のストリーム位置の画像フレームを参照する画像フレームを出力信号から除去して差し替え処理を行うストリーム差替処理ステップを実行することを特徴とするデジタル放送信号処理プログラム。
【請求項5】
前記ストリーム差替処理ステップを実行した後に、
差し替え処理されたデジタル放送信号中の前記1のデジタル放送信号に対して、当該デジタル放送信号に付加された時刻情報を前記他のデジタル放送信号の時刻情報と同一様式の時刻情報に変換する時刻情報変換処理ステップを実行することを特徴とする請求項4に記載のデジタル放送信号処理プログラム。
【請求項6】
前記ストリーム差替処理ステップを実行する前に、
入力された各デジタル放送信号にパケット単位でタイムスタンプを付加するタイムスタンプ付加処理ステップを実行し、
前記ストリーム差替処理ステップを実行した後又は前記時刻情報変換処理ステップを実行した後に、
差し替え処理されたデジタル放送信号に対して、当該デジタル放送信号の各パケットに付加されたタイムスタンプに基づいて各パケットの時間的配置を調整するパケット再配置処理を実行することを特徴とする請求項4又は5に記載のデジタル放送信号処理プログラム。
【請求項1】
入力された異なる2以上の符号化されたデジタル放送信号ストリームを部分的に差し替えて1ストリームのデジタル放送信号として出力するデジタル放送信号処理装置であって、
1つのデジタル放送信号ストリームから他のデジタル放送信号ストリームに差し替える際に、当該他のデジタル放送信号ストリームに含まれる画像フレームであって復号時に前記差し替え前のストリーム位置の画像フレームを参照する画像フレームを出力信号から除去して差し替え処理を行うストリーム差替処理手段を有することを特徴とするデジタル放送信号処理装置。
【請求項2】
前記ストリーム差替処理手段により差し替え処理がされたデジタル放送信号中の前記1のデジタル放送信号に対して、当該デジタル放送信号に付加された時刻情報を前記他のデジタル放送信号の時刻情報と同一様式の時刻情報に変換する時刻情報変換処理手段を有することを特徴とする請求項1に記載のデジタル放送信号処理装置。
【請求項3】
入力された各デジタル放送信号にパケット単位でタイムスタンプを付加するタイムスタンプ付加処理部と、
前記ストリーム差替処理手段により差し替え処理がされたデジタル放送信号に対して、当該デジタル放送信号の各パケットに付加されたタイムスタンプに基づいて各パケットの時間的配置を調整するパケット再配置処理手段とを有することを特徴とする請求項1又は2に記載のデジタル放送信号処理装置。
【請求項4】
異なる2以上の符号化されたデジタル放送信号ストリームを受信する受信手段と、
前記2以上のデジタル放送信号ストリームを部分的に差し替えて1ストリームのデジタル放送信号を生成するストリーム差替処理手段と、
前記ストリーム差替処理手段により生成された1ストリームのデジタル放送信号を出力する出力手段とをデジタル放送信号処理装置において用いられるデジタル放送信号処理プログラムであって、
1つのデジタル放送信号ストリームから他のデジタル放送信号ストリームに差し替える際に、当該他のデジタル放送信号ストリームに含まれる画像フレームであって復号時に前記差し替え前のストリーム位置の画像フレームを参照する画像フレームを出力信号から除去して差し替え処理を行うストリーム差替処理ステップを実行することを特徴とするデジタル放送信号処理プログラム。
【請求項5】
前記ストリーム差替処理ステップを実行した後に、
差し替え処理されたデジタル放送信号中の前記1のデジタル放送信号に対して、当該デジタル放送信号に付加された時刻情報を前記他のデジタル放送信号の時刻情報と同一様式の時刻情報に変換する時刻情報変換処理ステップを実行することを特徴とする請求項4に記載のデジタル放送信号処理プログラム。
【請求項6】
前記ストリーム差替処理ステップを実行する前に、
入力された各デジタル放送信号にパケット単位でタイムスタンプを付加するタイムスタンプ付加処理ステップを実行し、
前記ストリーム差替処理ステップを実行した後又は前記時刻情報変換処理ステップを実行した後に、
差し替え処理されたデジタル放送信号に対して、当該デジタル放送信号の各パケットに付加されたタイムスタンプに基づいて各パケットの時間的配置を調整するパケット再配置処理を実行することを特徴とする請求項4又は5に記載のデジタル放送信号処理プログラム。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【公開番号】特開2010−135990(P2010−135990A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−308572(P2008−308572)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000233295)日立情報通信エンジニアリング株式会社 (195)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000233295)日立情報通信エンジニアリング株式会社 (195)
【Fターム(参考)】
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