説明

デジタル測定装置

【課題】速やかな測定を可能とするデジタル測定装置を提供すること。
【解決手段】本発明のデジタル測定装置は、測定対象に関するデジタルデータを連続的に取込むデータ取込手段と、取込まれたデータと基準値とを比較することによって取込まれたデータが全て適正であるか否かを判定する適正状態判定手段と、取込まれたデータが全て適正である場合にこの取込まれたデータに基づいて測定値を算出する測定値算出手段とを備えてなるデジタル測定装置であって、前記基準値を変更する基準値変更手段を更に備えてなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象に関するデジタルデータを連続的に取込むデータ取込手段と、取込まれたデータと基準値とを比較することによって取込まれたデータが全て適正であるか否かを判定する適正状態判定手段と、取込まれたデータが全て適正である場合にこの取込まれたデータに基づいて測定値を算出する測定値算出手段とを備えてなるデジタル測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象に関するデジタルデータを連続的に取込むデータ取込手段と、取込まれたデータと基準値とを比較することによって取込まれたデータが全て適正であるか否かを判定する適正状態判定手段と、取込まれたデータが全て適正である場合にこの取込まれたデータに基づいて測定値を算出する測定値算出手段とを備えてなるデジタル測定装置として、物体の重量を測定対象とするデジタル重量計や、使用者の体脂肪率、内臓脂肪レベル、筋肉量、推定骨量、基礎代謝等といった体組成を測定対象とする体組成計等が知られている。
【0003】
例えば、デジタル重量計のうち、特に使用者の体重を測定対象とする公知のデジタル体重計では、使用者がその載台に載ると、体重計本体に組込まれた荷重センサから、体重に応じた電気信号が出力される。この信号は、本体に組込まれたデジタル変換回路においてデジタルデータ(カウント値)に変換されて、本体に組込まれた演算ユニットに連続的に取込まれる。演算ユニットでは、このカウント値を一定数(例えば8つ)取込んだ時点で、その中の最大カウント値と最小カウント値との差(即ち、カウント値の変動幅)を算出し、これを予め設定されている基準値と比較する。
【0004】
このとき、カウント値の変動幅が基準値以下であれば、取込まれたカウント値は全て適正である、即ち、載台にかかる荷重変動が少なく、従って載台上の使用者の測定姿勢が安定していると判定し、この時点で取込まれているカウント値に基づいて測定値たる体重値を算出し、より詳しくは、8つのカウント値の平均値を測定対象たる体重値に換算して、これを本体に組込まれたLCD等の表示装置に表示している。
【0005】
一方、カウント値の変動幅が基準値を上回っている場合には、カウント値を更に1つ取込むと共にこの最新のカウント値で先に取込まれた8つのカウント値のうち最も古いカウント値を置換え、置換えられた8つのカウント値からその変動幅を算出して再び基準値と比較する。
【0006】
斯かるカウント値の取込みと変動幅の算出及び基準値との比較は、カウント値の変動幅が基準値以下に収まるまで、繰返される。尚、基準値を用いたこのような処理は、体重計以外のデジタル重量計においても広く採用されている。
【0007】
また、使用者の体脂肪率、内臓脂肪レベル、筋肉量、推定骨量、基礎代謝等といった体組成を測定対象とする公知の体組成計では、使用者の身体の2部位間に通電して身体に生じる電圧を測定し、これに基づいて使用者の生体電気インピーダンス値(以下、本明細書においては「BI値」と称することがある。)を算出し、この算出されたBI値と使用者の主には身長、体重、年齢、性別等の個人パラメータとを予め定められた回帰式に代入して、所望の体組成を算出している。
【0008】
使用者のBI値を算出するため、体組成計の本体には、使用者の身体の少なくとも2部位間に通電するための電極群及び電流供給回路と、斯かる通電下において身体のインピーダンスに応じて生じる電圧を測定するための電極群及び電圧測定回路とが組込まれている。
【0009】
使用者がその身体の2部位(例えば、左右の足裏)をこれらの電極群に接触させると、電流供給回路からの電流が身体に供給されると共に、電圧測定回路からは身体に生じた電圧に応じた電気信号が出力される。この電気信号は、本体に組込まれたデジタル変換回路においてデジタル信号に変換された後、本体に組込まれた演算ユニットに連続的に入力される。演算ユニットでは、入力されたデジタル信号に基づいて、測定対象たる体組成に関するデジタルデータであるBI値を、連続的に算出して取込んでゆく。そして、BI値の取込み数が一定数(例えば8つ)に達すると、取込まれた全てのBI値を予め定められている上限基準値及び下限基準値と比較する。
【0010】
このとき、全てのBI値が上限基準値から下限基準値までの範囲内であれば、取込まれた全てのBI値は適正である、即ち、使用者の測定姿勢が安定し、身体と電極群とが適正に接触していると判定し、この時点で取込まれているBI値に基づいて測定値たる体組成を算出し、より詳しくは、8つのBI値の平均値を前述の回帰式に代入して測定対象たる体脂肪率、内臓脂肪レベル等といった体組成の値を算出して、これを本体に組込まれたLCD等の表示装置に表示している。
【0011】
一方、何れかのBI値が上限基準値から下限基準値までの範囲を逸脱している場合には、BI値を更に1つ取込むと共にこの最新のBI値で先に取込まれた8つのBI値のうち最も古いBI値を置換え、置換えられた8つのBI値を再び上限基準値及び下限基準値と比較する。
【0012】
斯かるBI値の取込みと上限基準値及び下限基準値との比較は、取込まれた全てのBI値が上限基準値から下限基準値までの範囲に収まるまで、繰返される。
【0013】
尚、上述した如きデジタル体重計や体組成計に関しては、例えば、特許文献1及び特許文献2を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2002−13976号公報
【特許文献2】特開2001−204704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
前述した如き従来のデジタル体重計では、取込まれたカウント値の変動幅が基準値以下となるまで、カウント値の取込み、即ち、体重測定が継続される。また、前述した如き従来の体組成計では、取込まれたBI値が上限基準値から下限基準値までの範囲に収まるまで、BI値の取込み、即ち、体組成測定が継続される。従って、これらの装置では、直立不動の測定姿勢を求められることが多い。
【0016】
一方、例えば一般的な成人でも、寒さや精神的緊張により生理的振戦と呼ばれる震えが生じることがある。特に高齢者においては、筋肉の衰えにより一定の測定姿勢を長時間維持し続けることは困難な場合がある。或いは、立ち歩き始めて間もない幼年者も、一定の測定姿勢を長時間維持し続けることは困難な場合がある。そのため、高齢者のように直立不動体勢を維持し続けることが困難な人が従来のデジタル体重計や体組成計を使用した場合、身体の揺れや震えに起因する荷重変動や電極との接触不良によってカウント値やBI値がふらついてしまい、最終的な測定値がなかなか得られないといった事態を生じ易かった。
【0017】
更に、従来の多くのデジタル体重計や体組成計では、カウント値やBI値の取込みがあまりにも長く継続された場合には、測定エラーとして測定を中止してしまう。このため、直立不動という測定姿勢を保てない使用者においては、測定結果を得るに至らない場合があった。使用者にとっては、直立不動を維持することによる身体的な負担に加え、体重や体組成を知ることができず、辛いものであった。これにより、体重計や体組成計の利用を避けることとなり、健康管理の面で問題を生じかねないものであった。
【0018】
更にまた、特にBI値を利用する体組成計においては、使用者が高齢になると次のような問題を生じる。即ち、加齢により使用者の皮膚の角質化が進むと、算出されるBI値が大きくなってしまい、一般的な成人を前提として予め設定されている上限基準値を超え易くなることがある。或いは、高齢者の場合、体液の流れが悪くなりがちで、一度むくみを生じると解消し難くなる。むくみがあると、算出されるBI値が小さくなってしまい、一般的な成人を前提として予め設定されている下限基準値を下回り易くなることがある。これらの結果、高齢者が体組成計を使用する際に、測定エラーとなってしまうことがあった。
【0019】
また、デジタル体重計におけるカウント値は、体重が重くなるほど安定し難くなる傾向にある。即ち、一般的に体重過多の人は、直立姿勢を維持し難く、体重計の上でその身体が揺れてしまい、結果的に荷重変動が大きくなる傾向にある。体重過多であっても、姿勢維持に必要な筋肉を供えていれば身体の揺れは抑えられるが、筋肉ではなく脂肪が多いことによって体重過多となっている肥満傾向の人は、身体の揺れを抑えられず、結果として測定時間が長くなり、又は測定エラーとなってしまうことがあった。
【0020】
また、乳児の成長管理に供するために乳児が安定して横たわれる受け皿を設けたデジタル体重計(所謂ベビースケール)が病院や家庭で広く利用されるようになってきているが、乳児は、空腹や、暑さ、寒さ等といった諸々の不快感を、泣き叫ぶことによって表現する。また、泣いていない平常時にも、身体を動かしていることが多い。そのため、ベビースケールで乳児の体重を測定する場合にも、測定されるカウント値は安定し難く、結果として測定時間が長くなり、又は測定エラーとなってしまうことがあった。
【0021】
また、疾病、けが、疲労等を伴う使用者の場合も、直立姿勢の維持が困難又は大きな負担となる場合があり、デジタル体重計を用いた体重測定に際してはその測定時間が長くなり、又は測定エラーとなってしまうことがあった。
【0022】
更に、デジタル体重計その他のデジタル重量計を置いた床面に凹凸が生じている場合や、その周辺で振動が発生しているような場合においても、測定される重量のカウント値が安定せず、測定時間が長くなり、又は測定エラーとなってしまうことがあった。
【0023】
従って、本発明は、前述の如き従来の問題を解決することが可能なデジタル測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明のデジタル測定装置は、測定対象に関するデジタルデータを連続的に取込むデータ取込手段と、取込まれたデータと基準値とを比較することによって取込まれたデータが全て適正であるか否かを判定する適正状態判定手段と、取込まれたデータが全て適正である場合にこの取込まれたデータに基づいて測定値を算出する測定値算出手段とを備えてなるデジタル測定装置であって、前記基準値を変更する基準値変更手段を更に備えてなるものである。
【0025】
ここで、本発明のデジタル測定装置は、その測定対象が、重量、特に使用者の体重、又は使用者の体組成であって良い。
【0026】
更に、本発明のデジタル測定装置は、その測定対象が使用者の体重又は体組成である場合においては、前記基準値変更手段が、少なくとも使用者の年齢に関する情報を取得するための年齢情報取得手段を含んでなり、この取得された年齢情報に基づいて前記基準値を変更するものであることが望ましい。
【0027】
更に、本発明のデジタル測定装置において、前記基準値変更手段は、使用者が所定の年齢以上である場合に前記基準値を変更するものであることが望ましい。
【0028】
更に、本発明のデジタル測定装置において、前記基準値変更手段は、使用者の年齢を予め定められた基準値に加算し又は予め定められた基準値から減算することにより基準値を変更するものであることが望ましい。
【0029】
或いは、本発明のデジタル測定装置は、その測定対象が使用者の体重である場合においては、前記基準値変更手段が、前記データ取込手段で取込まれたデータに基づいて使用者の体重を仮に取得する体重情報取得手段を含んでなり、この取得された体重情報に基づいて前記基準値を変更するものであることが望ましい。
【0030】
更に、本発明のデジタル測定装置において、前記基準値変更手段は、仮に取得された使用者の体重が所定の重量以上である場合に前記基準値を変更するものであることが望ましい。
【0031】
更に、本発明のデジタル測定装置において、前記基準値変更手段は、仮に取得された使用者の体重を予め定められた基準値に加算することにより、基準値を変更するものであることが望ましい。
【0032】
或いは、本発明のデジタル測定装置は、その測定対象が使用者の体重その他の重量である場合においては、前記基準値変更手段が、前記データ取込手段でデータの取込みを開始してからの経過時間を計時する経過時間情報取得手段を含んでなり、この取得された経過時間情報に基づいて前記基準値を変更するものであることが望ましい。
【0033】
更に、本発明のデジタル測定装置において、前記基準値変更手段は、取得された経過時間を予め定められた基準値に加算することにより、基準値を変更するものであることが望ましい。
【0034】
或いは、本発明のデジタル測定装置は、前記基準値変更手段が、基準値の変更を示す使用者の意思を入力するための変更意思入力手段を含んでなり、この入力された使用者の意思に基づいて前記基準値を変更するものであることが望ましい。
【発明の効果】
【0035】
本発明のデジタル測定装置であれば、取込まれたデータの判定に用いる基準値を変更する基準値変更手段を備えているから、取込まれたデータがこの基準値以下又は基準値の範囲内に収まらず、そのために測定が終了せず又は測定エラーとなりそうな場合には、この基準値変更手段によって基準値を変更し、以って測定を終了させ、測定エラーを回避することが可能となる。
【0036】
特に、測定対象が使用者の体重又は体組成である場合において、前記基準値変更手段を、少なくとも使用者の年齢に関する情報を取得するための年齢情報取得手段を含み、この取得された年齢情報に基づいて前記基準値を変更するような構成としたときは、使用者の年齢に応じた基準値を用いて速やかな測定を行うことが可能となる。
【0037】
更に、使用者が所定の年齢以上である場合に基準値を変更する構成であれば、この所定年齢未満の一般成人に対しては本来の基準値を適用して正確性の高い測定を行いつつ、測定姿勢の維持が困難な高齢者に対しては、基準値を大きな値に変更し又は基準値をその範囲が広がるような値に変更し、以って身体の揺れや震えに起因する荷重変動や電極との接触不良を吸収して速やかに測定を終了させることが可能となる。
【0038】
更に、予め定められた基準値に使用者の年齢を加算し、又は予め定められた年齢から使用者の年齢を減算することによって基準値の変更を行う構成であれば、極めて簡便な方法で加齢に応じた基準値の変更を実現することが可能となる。
【0039】
或いは、測定対象が使用者の体重である場合において、前記基準値変更手段を、前記データ取込手段で取込まれたデータに基づいて使用者の体重を仮に取得する体重情報取得手段を含み、この取得された体重情報に基づいて前記基準値を変更するような構成としたときは、使用者のおよその体重に応じた基準値を用いて速やかな測定を行うことが可能となる。
【0040】
更に、仮に取得された使用者の体重が所定の重量以上である場合に基準値を変更する構成であれば、この所定重量未満の使用者に対しては本来の基準値を適用して正確性の高い測定を行いつつ、所定重量以上、即ち体重過多で測定姿勢の維持が困難な使用者に対しては、基準値を大きな値に変更し、以って身体の揺れや震えに起因する荷重変動を吸収して速やかに測定を終了させることが可能となる。
【0041】
更に、仮に取得された使用者の体重を予め定められた基準値に加算することによって基準値の変更を行う構成であれば、極めて簡便な方法で使用者のおよその体重に応じた基準値の変更を実現することが可能となる。
【0042】
或いは、測定対象が使用者の体重その他の重量である場合において、前記基準値変更手段を、前記データ取込手段でデータの取込みを開始してからの経過時間を計時する経過時間情報取得手段を含み、この取得された経過時間情報に基づいて前記基準値を変更するような構成としたときは、測定開始からの経過時間に応じた基準値を用いて速やかな測定を行うことが可能となる。これは、測定対象物の個性に依拠することなく基準値を変更し得るということであり、例えば高齢や体重過多の使用者であっても測定姿勢を保ち得る人であれば本来の基準値を用いて正確性の高い測定が可能であることを意味する。また、デジタル測定装置を置いた床面の凹凸や周辺の振動といった外因によって測定重量のカウント値が安定し難い場合にも適切に対応し得ることを意味する。
【0043】
更に、取得された経過時間を予め定められた基準値に加算することによって基準値の変更を行う構成であれば、極めて簡便な方法で測定開始からの経過時間に応じた基準値の変更を実現することが可能となる。
【0044】
或いは、本発明のデジタル測定装置において、前記基準値変更手段を、基準値の変更を示す使用者の意思を入力するための変更意思入力手段を含み、この入力された使用者の意思に基づいて前記基準値を変更するような構成としたときは、基準値の変更を使用者が周囲の環境等に応じて任意に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明によるデジタル測定装置1の概略外観図。
【図2】デジタル測定装置1に内蔵された電気回路構成の概要を示すブロック図。
【図3】デジタル測定装置1で実行されるメイン制御処理のフローチャート。
【図4】デジタル測定装置1で実行される体重測定制御処理のフローチャート。
【図5】デジタル測定装置1で実行される体組成測定制御処理のフローチャート。
【図6】デジタル測定装置1で実行される第2の実施例たる体重測定制御処理のフローチャート。
【図7】デジタル測定装置1で実行される第3の実施例たる体重測定制御処理のフローチャート。
【図8】デジタル測定装置1で実行される第4の実施例たる体重測定制御処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明のデジタル測定装置は、測定対象に関するデジタルデータを連続的に取込むデータ取込手段と、取込まれたデータと基準値とを比較することによって取込まれたデータが全て適正であるか否かを判定する適正状態判定手段と、取込まれたデータが全て適正である場合にこの取込まれたデータに基づいて測定値を算出する測定値算出手段とを備えてなるデジタル測定装置であって、前記基準値を変更する基準値変更手段を更に備えてなるものである。
【0047】
ここで、本発明のデジタル測定装置は、その測定対象が、重量、特に使用者の体重、又は使用者の体組成であって良い。
【0048】
更に、本発明のデジタル測定装置は、その測定対象が使用者の体重又は体組成である場合においては、前記基準値変更手段が、少なくとも使用者の年齢に関する情報を取得するための年齢情報取得手段を含んでなり、この取得された年齢情報に基づいて前記基準値を変更するものであることが望ましい。
【0049】
更に、本発明のデジタル測定装置において、前記基準値変更手段は、使用者が所定の年齢以上である場合に前記基準値を変更するものであることが望ましい。
【0050】
更に、本発明のデジタル測定装置において、前記基準値変更手段は、使用者の年齢を予め定められた基準値に加算し又は予め定められた基準値から減算することにより基準値を変更するものであることが望ましい。
【0051】
或いは、本発明のデジタル測定装置は、その測定対象が使用者の体重である場合においては、前記基準値変更手段が、前記データ取込手段で取込まれたデータに基づいて使用者の体重を仮に取得する体重情報取得手段を含んでなり、この取得された体重情報に基づいて前記基準値を変更するものであることが望ましい。
【0052】
更に、本発明のデジタル測定装置において、前記基準値変更手段は、仮に取得された使用者の体重が所定の重量以上である場合に前記基準値を変更するものであることが望ましい。
【0053】
更に、本発明のデジタル測定装置において、前記基準値変更手段は、仮に取得された使用者の体重を予め定められた基準値に加算することにより、基準値を変更するものであることが望ましい。
【0054】
或いは、本発明のデジタル測定装置は、その測定対象が使用者の体重その他の重量である場合においては、前記基準値変更手段が、前記データ取込手段でデータの取込みを開始してからの経過時間を計時する経過時間情報取得手段を含んでなり、この取得された経過時間情報に基づいて前記基準値を変更するものであることが望ましい。
【0055】
更に、本発明のデジタル測定装置において、前記基準値変更手段は、取得された経過時間を予め定められた基準値に加算することにより、基準値を変更するものであることが望ましい。
【0056】
或いは、本発明のデジタル測定装置は、前記基準値変更手段が、基準値の変更を示す使用者の意思を入力するための変更意思入力手段を含んでなり、この入力された使用者の意思に基づいて前記基準値を変更するものであることが望ましい。
【実施例1】
【0057】
以下、本発明の好適な第1の実施例を、図面を用いて説明する。図1は、本発明によるデジタル測定装置1の概略外観図である。図2は、このデジタル測定装置1に内蔵された電気回路構成の概要を示すブロック図である。図3は、このデジタル測定装置1で実行されるメイン制御処理のフローチャートである。図4は、このデジタル測定装置1で実行される体重測定制御処理のフローチャートである。図5は、このデジタル測定装置1で実行される体組成測定制御処理のフローチャートである。
【0058】
このデジタル測定装置1(以下、単に「装置1」と略称する。)は、使用者の体重を測定すると共に使用者の両足間のBI値を利用して使用者の体脂肪率、内臓脂肪レベル、体水分率、筋肉量、推定骨量、基礎代謝等といった体組成を算出し得るように構成された公知の体組成計を改良したもので、図1に示すように、上面が載台として構成された本体2の上面には、使用者の左右の足裏間に交流電流を流すための通電電極2A、2Bと、このときに左右の足裏間に生じる電圧(電位差)を測定するための測定電極2C、2Dと、使用者が年齢、性別、身長等の個人パラメータを入力するための、アップスイッチ8Aとダウンスイッチ8Bと設定スイッチ8Cとからなる入力装置8と、この装置1で測定された体重や体組成の表示等に用いる表示装置9とが配設されている。また、本体2の側面には、既に登録済みの個人パラメータがある場合にこれを呼出すための、電源投入スイッチを兼ねた4つのフットスイッチ3が配設されている。
【0059】
また、図2に示すように、この装置1の本体2の内部には、通電電極2A、2Bに接続されてこれらの電極に高周波定電流を供給するための電流供給回路4と、測定電極2C、2Dに接続されてこれらの電極間に生じた電圧に応じた電気信号を出力するための電圧測定回路5と、本体2の上面にかかる荷重、即ち、使用者の体重に応じた電気信号を出力するための荷重センサ6と、これら電圧測定回路5及び荷重センサ6からの電気信号をデジタル変換するA/D変換器7と、体重値や体組成の算出を行うための制御装置10と、使用者の個人パラメータや算出された体重値、体組成等を保存するための記憶装置11とが配設されている。そして、制御装置10は、これら電流供給回路4、A/D変換器7及び記憶装置11と、前述の入力装置8、表示装置9及びフットスイッチ3とに、それぞれ電気的に接続されている。
【0060】
このような構成において、制御装置10は、公知の演算素子(CPU)を含み、記憶装置11に予め記憶された制御プログラムを実行することにより、入力装置8からの個人パラメータの入力を受付ける制御、荷重センサ6からA/D変換器7を介して取込まれるカウント値に基づいて使用者の体重値を算出する制御、通電電極2A、2Bに高周波定電流を供給しつつ測定電極2C、2Dから電圧測定回路5及びA/D変換器7を介して入力されるデジタル信号に基づいて使用者のBI値を算出する制御、これら個人パラメータと体重値とBI値とに基づいて使用者の体組成を算出する制御、入力された個人パラメータ、算出された体重値及び算出された体組成を表示装置9に表示し及び記憶装置11に記憶させる制御等、各種の制御処理を実行するものである。
【0061】
図3のフローチャートは、使用者がこの装置1を使用する際に制御装置10において実行されるメイン制御処理を表す。使用者がフットスイッチ3の何れかを押下してこの装置1を起動すると、このメイン制御が実行される。
【0062】
ステップS1では、押下されたフットスイッチ3の番号に対応して確保された記憶装置11のデータブロックに、個人パラメータが保存されているか否かの判定が行われる。個人パラメータが保存されていない場合はステップS2に進むが、保存されている場合はステップS2からS4までをスキップしてステップS5以降に進む。
【0063】
ステップS2では、年齢の設定、即ち、使用者の年齢に関する情報の取得が行われる。表示装置9には年齢を表す数値が表示され、使用者がアップスイッチ8A、ダウンスイッチ8Bによりこの数値を増減させて自身の年齢に合わせ、設定スイッチ8Cを押下すると、その数値が使用者の年齢として現在押下されているフットスイッチ3の番号に対応したデータブロックに保存される。尚、この装置1が現在日時を計時可能な時計又はカレンダー機能を備えている場合には、このステップS2において使用者は生年月日を入力することとし、入力された生年月日と現在日時とから年齢を算出するような構成としても良い。
【0064】
次いで、ステップS3では、使用者の性別が入力される。表示装置9には男女の選択肢が表示され、使用者がアップスイッチ8A、ダウンスイッチ8Bを用いて自身の性別を選択し、設定スイッチ8Cにより決定する。次いで、ステップS4では、使用者の身長が入力される。表示装置9には身長を表す数字が表示され、使用者がアップスイッチ8A、ダウンスイッチ8Bを用いてこの数字を増減させて自身の身長に合わせ、設定スイッチ8Cにより決定する。ステップS3及びS4で決定された性別及び身長は、年齢と同じく現在押下されているフットスイッチ3の番号に対応したデータブロックに保存される。
【0065】
ステップS5では、後述する体重測定制御、即ち、体重値の算出と保存が実行され、ステップS6では、後述する体組成測定制御、即ち、体組成の値の算出と保存が実行される。その後、ステップS7では、ステップS5及びS6で算出され保存された体重及び体組成が表示装置9に表示され、一定時間が経過すると自動的に電源が遮断されて全ての制御処理が終了する。
【0066】
図4のフローチャートは、前記ステップS5において実行される体重測定制御処理を表す。まず、ステップS11では、現在押下されているフットスイッチ3の番号に対応して記憶装置11に保存されている個人パラメータのうち、使用者の年齢が読み出される。
【0067】
次いで、ステップS12では、読み出された使用者の年齢に基づいて、次のように基準値の設定、変更が行われる。この装置1は、秤量100kg、最小単位1kgでスパン10,000カウントのデジタル体重計に相当し、カウント値の変動幅の適否を判定するための基準値は、通常は50カウント(以下、「基本カウント値」と称する。)に設定されおり、ここでは、この基本カウント値に使用者の年齢を加算することによって、基準値の変更を行う。即ち、「基準値=基本カウント値+年齢」であって、例えば、使用者が60歳であれば、基準値=50+60=110カウントとなる。斯かる基準値の変更により、カウント値の変動幅の適否は通常よりも若干緩和された条件下で判定されることとなり、高齢化による身体の揺れや震えに起因する多少の荷重変動は許容して速やかな体重測定が実行されるようになるものである。尚、このステップS12は、使用者が例えば55歳以上の場合のみ実行されるよう、所定の年齢未満の場合にスキップされる構成とすることも可能である。
【0068】
次いで、ステップS13及びステップS14では、荷重センサ6からの電気信号がA/D変換器7でデジタルデータ(カウント値)に変換されて、連続的に、8つまで、制御装置10に取込まれる。即ち、ステップS13でカウント値が取込まれ、ステップS14では取込まれたカウント値が8つに達したか否かが判定され、8つに達した場合はステップS15に進み、未達の場合はステップS13に戻るものである。
【0069】
次いで、ステップS15では、取込まれている8つのカウント値のうちの最大カウント値と最小カウント値との差がカウント値の変動幅として算出され、この変動幅がステップS12で設定、変更された基準値と比較される。この変動幅が基準値以下であれば、取込まれたカウント値は全て適正である、即ち、載台にかかる荷重変動は許容範囲内にあり、従って載台上の使用者の測定姿勢はほぼ安定していると判定し、ステップS17に進む。一方、この変動幅が基準値を上回っている場合には、ステップS16に進んで取込まれているカウント値のうち最も古い(最初に取込まれた)カウント値を抹消した後、ステップS13に戻る。この結果、ステップS15でカウント値の変動幅が基準値以下であると判定されるまで、ステップS13からステップS16までが繰返されることとなる。
【0070】
次いで、ステップS17では、取込まれている8つのカウント値の平均値が算出され、この平均カウント値が体重値に換算されて、個人パラメータと同じく現在押下されているフットスイッチ3の番号に対応したデータブロックに保存される。
【0071】
図5のフローチャートは、前記ステップS6において実行される体組成測定制御処理を表す。まず、ステップS21では、現在押下されているフットスイッチ3の番号に対応して記憶装置11に保存されている個人パラメータが読み出される。
【0072】
次いで、ステップS22では、読み出された個人パラメータの中の年齢に基づいて、次のように基準値の設定、変更が行われる。この装置1では、使用者の足裏と各電極2A、2B、2C、2Dとの間の接触が適正な状態にあるか否かを判定するための通常の基準値として、上限基準値が1,000Ω(以下「基本上限値」と称する。)、下限基準値が200Ω(以下「基本下限値」と称する。)に設定されている。そして、ここでは、この基本上限値に使用者の年齢を加算し、基本下限値から使用者の年齢を減算することによって、基準値の変更を行う。即ち、「上限基準値=基本上限値+年齢」、「下限基準値=基本下限値−年齢」であって、例えば、使用者が60歳であれば、上限基準値=1,000+60=1,060Ω、下限基準値=200−60=140Ωとなる。斯かる基準値の変更により、BI値の適否は通常よりも若干緩和された条件下で判定されることとなり、身体の揺れや震えに起因する足裏と電極との間の多少の接触不良は許容して速やかな体組成測定が実行されるようになるものである。尚、このステップS22は、使用者が例えば55歳以上の場合のみ実行されるよう、所定の年齢未満の場合にスキップされる構成とすることも可能である。
【0073】
次いで、ステップS23及びステップS24では、電圧測定回路5からの電気信号がA/D変換器7でデジタル変換されて制御装置10に連続的に入力され、制御装置10ではこのデジタル信号に基づいてBI値を連続的に8つまで算出して取込んでゆく。即ち、ステップS23でデジタル信号に基づくBI値の算出及び取込みが行われ、ステップS24では取込まれたBI値が8つに達したか否かが判定される。そして、BI値が8つに達した場合はステップS25に進み、未達の場合はステップS23に戻るものである。
【0074】
次いで、ステップS25では、取込まれている全てのBI値がステップS22で設定、変更された上限基準値及び下限基準値と比較される。全てのBI値が上限基準値から下限基準値までの範囲内にあれば、取込まれたBI値は全て適正である、即ち、使用者の測定姿勢はほぼ安定し、足裏と電極2A、2B、2C、2Dとは適正に接触していると判定し、ステップS27に進む。一方、何れかのBI値が上限基準値から下限基準値までの範囲を逸脱している場合には、ステップS26に進んで取込まれているBI値のうち最も古い(最初に取込まれた)BI値を抹消した後、ステップS23に戻る。この結果、ステップS25で全てのBI値が上限基準値から下限基準値までの範囲内にあると判定されるまで、ステップS23からステップS26までが繰返されることとなる。
【0075】
次いで、ステップS27では、取込まれている8つのBI値の平均値が算出され、この平均BI値が、ステップS21で読み出された個人パラメータ(年齢、性別、身長)及びステップS5で算出された体重値と共に所定の回帰式に代入されて、所望の体組成が算出される。算出された体組成は、個人パラメータや体重値と同じく現在押下されているフットスイッチ3の番号に対応したデータブロックに保存される。
【0076】
上述のように、この装置1においては、主として荷重センサ6とA/D変換器7と制御装置10とが測定対象たる体重に関するデジタルデータ(カウント値)を取込むデータ取込手段を構成し、或いは、主として通電電極2A、2Bと測定電極2C、2Dと電流供給回路4と電圧測定回路5とA/D変換器7と制御装置10とが測定対象たる体組成に関するデジタルデータ(BI値)を取込むデータ取込手段を構成している。同時に、制御装置10は、取込まれたデータたるカウント値の変動幅と基準値とを比較することによって、或いは、取込まれたデータたるBI値と上限基準値及び下限基準値とを比較することによって、取込まれたデータが全て適正であるか否かを判定する適正状態判定手段と、取込まれたデータが全て適正である場合にこの取込まれたデータに基づいて測定値たる体重値又は体組成に関する値を算出する測定値算出手段と、更には前記基準値を変更する基準値変更手段とを構成している。また、主として入力装置8と制御装置10とが、少なくとも使用者の年齢に関する情報を取得するための年齢情報取得手段を構成している。
【0077】
そして、基準値変更手段たる制御装置10は、カウント値について予め定められた基準値たる基本カウント値に使用者の年齢を加算することによって、この基準値を変更する。また、基準値変更手段たる制御装置10は、BI値について予め定められた基準値たる基本上限値に使用者の年齢を加算し、及びBI値について予め定められた基準値たる基本下限値から使用者の年齢を減算することによって、これらの基準値を変更する。
【0078】
この結果、この装置1は、予め定められた基準値に使用者の年齢を加算又は減算するという極めて簡便な方法で使用者の加齢に応じた基準値の変更を行い、以って使用者の年齢に応じた基準値を用いて身体の揺れや震えに起因する荷重変動や電極との接触不良を吸収し、測定エラーを回避して速やかに測定を終了させ得るものとなっている。
【実施例2】
【0079】
次に、本発明の第2の実施例について説明するが、この第2の実施例は、体重測定制御処理の他は第1の実施例と何ら変わるところがないので、体重測定制御処理についてのみ説明し、他の構成については説明を割愛する。図6は、デジタル測定装置1で実行される第2の実施例たる体重測定制御処理のフローチャートである。
【0080】
まず、ステップS31では、荷重センサ6からの電気信号がA/D変換器7でデジタルデータ(カウント値)に変換されて、連続的に、4つまで、制御装置10に取込まれ、この取込まれた4つのカウント値の平均値が体重値に換算される。この体重値は、基準値との比較をしていないカウント値に基づく仮のものであるが、使用者の体重のおよその目安にはなる。
【0081】
次いで、ステップS32では、ステップS31で仮に取得された使用者の体重に基づいて、次のように基準値の設定、変更が行われる。前述の通り、この装置1は、秤量100kg、最小単位1kgでスパン10,000カウントのデジタル体重計に相当し、カウント値の変動幅の適否を判定するための基準値(基本カウント値)は50カウントに設定されている。ここでは、この基本カウント値に仮に取得された使用者の体重値を加算することによって、基準値の変更を行う。即ち、「基準値=基本カウント値+仮に取得された体重値」であって、例えば、仮に取得された体重値が80kgであれば、基準値=50+80=130カウントとなる。斯かる基準値の変更により、カウント値の変動幅の適否は通常よりも若干緩和された条件下で判定されることとなり、体重過多による身体の揺れや震えに起因する多少の荷重変動は許容して速やかな体重測定が実行されるようになるものである。尚、このステップS32は、使用者が体重過多であると推定されるような場合、即ち、仮に取得される使用者の体重が例えば80kg以上の場合にのみ実行されるよう、仮に取得される使用者の体重が所定の重量未満の場合にはスキップされる構成とすることも可能である。
【0082】
次いで、ステップS33及びステップS34では、荷重センサ6からの電気信号がA/D変換器7でデジタルデータ(カウント値)に変換されて、連続的に、8つまで、制御装置10に取込まれる。即ち、ステップS33でカウント値が取込まれ、ステップS34では取込まれたカウント値が8つに達したか否かが判定され、8つに達した場合はステップS35に進み、未達の場合はステップS33に戻るものである。
【0083】
次いで、ステップS35では、取込まれている8つのカウント値のうちの最大カウント値と最小カウント値との差がカウント値の変動幅として算出され、この変動幅がステップS32で設定、変更された基準値と比較される。この変動幅が基準値以下であれば、取込まれたカウント値は全て適正である、即ち、載台にかかる荷重変動は許容範囲内にあり、従って載台上の使用者の測定姿勢はほぼ安定していると判定し、ステップS37に進む。一方、この変動幅が基準値を上回っている場合には、ステップS36に進んで取込まれているカウント値のうち最も古い(最初に取込まれた)カウント値を抹消した後、ステップS33に戻る。この結果、ステップS35でカウント値の変動幅が基準値以下であると判定されるまで、ステップS33からステップS36までが繰返されることとなる。
【0084】
次いで、ステップS37では、取込まれている8つのカウント値の平均値が算出され、この平均カウント値が体重値に換算されて、個人パラメータと同じく現在押下されているフットスイッチ3の番号に対応したデータブロックに保存される。
【0085】
上述のように、この第2の実施例としての装置1においては、主として荷重センサ6とA/D変換器7と制御装置10とが測定対象たる体重に関するデジタルデータ(カウント値)を取込むデータ取込手段を構成している。同時に、制御装置10は、取込まれたデータたるカウント値の変動幅と基準値とを比較することによって取込まれたデータが全て適正であるか否かを判定する適正状態判定手段と、取込まれたデータが全て適正である場合にこの取込まれたデータに基づいて測定値たる体重値を算出する測定値算出手段と、更には前記基準値を変更する基準値変更手段とを構成している。また、主として荷重センサ6とA/D変換器7と制御装置10とが、使用者の体重を仮に取得する体重情報取得手段を構成している。
【0086】
そして、基準値変更手段たる制御装置10は、カウント値について予め定められた基準値たる基本カウント値に、仮に取得された使用者の体重を加算することによって、この基準値を変更する。
【0087】
この結果、この第2の実施例としての装置1は、仮に取得された使用者の体重を予め定められた基準値に加算するという極めて簡便な方法で使用者のおよその体重に応じた基準値の変更を行い、以って使用者のおよその体重に応じた基準値を用いて身体の揺れや震えに起因する荷重変動を吸収し、測定エラーを回避して速やかに体重測定を終了させ得るものとなっている。
【実施例3】
【0088】
次に、本発明の第3の実施例について説明するが、この第3の実施例も、体重測定制御処理の他は第1の実施例と何ら変わるところがないので、体重測定制御処理についてのみ説明し、他の構成については説明を割愛する。図7は、デジタル測定装置1で実行される第3の実施例たる体重測定制御処理のフローチャートである。
【0089】
この第3の実施例は、前述した第1の実施例と第2の実施例とを併用したものであり、まず、ステップS41では、現在押下されているフットスイッチ3の番号に対応して記憶装置11に保存されている個人パラメータのうち、使用者の年齢が読み出される。同時に、このステップS41では、荷重センサ6からの電気信号がA/D変換器7でデジタルデータ(カウント値)に変換されて、連続的に、4つまで、制御装置10に取込まれ、この取込まれた4つのカウント値の平均値が体重値に換算される。
【0090】
次いで、ステップS42では、読み出された使用者の年齢と、仮に取得された使用者の体重とに基づいて、次のように基準値の設定、変更が行われる。前述の通り、この装置1は、秤量100kg、最小単位1kgでスパン10,000カウントのデジタル体重計に相当し、カウント値の変動幅の適否を判定するための基準値(基本カウント値)は50カウントに設定されている。ここでは、この基本カウント値に、使用者の年齢と、仮に取得された使用者の体重値とを加算することによって、基準値の変更を行う。即ち、「基準値=基本カウント値+年齢+仮に取得された体重値」であって、例えば、使用者が60歳であり、仮に取得された体重値が80kgであれば、基準値=50+60+80=190カウントとなる。斯かる基準値の変更により、カウント値の変動幅の適否は通常よりも若干緩和された条件下で判定されることとなり、高齢化や体重過多による身体の揺れや震えに起因する多少の荷重変動は許容して速やかな体重測定が実行されるようになるものである。
【0091】
尚、この基準値は、例えば「基準値=基本カウント値+(年齢+仮に取得された体重値)/2」というように、基準値の変更に用いる使用者のパラメータの寄与率を適宜に調整することで、使いやすいものとすることができる。また、このステップS42は、使用者が例えば55歳以上又は体重80kg以上の場合のみ実行されるよう、所定の年齢未満及び所定の体重未満の場合にはスキップされる構成とすることも可能である。
【0092】
ステップS43からステップS47までの処理は、図4を用いて説明したステップS13からステップS17までの処理、及び図6を用いて説明したステップS33からステップS37までの処理と同一であるので、各ステップの説明は割愛する。
【実施例4】
【0093】
次に、本発明の第4の実施例について説明するが、この第4の実施例も、体重測定制御処理の他は第1の実施例と何ら変わるところがないので、体重測定制御処理についてのみ説明し、他の構成については説明を割愛する。図8は、デジタル測定装置1で実行される第4の実施例たる体重測定制御処理のフローチャートである。
【0094】
まず、ステップS51では、荷重センサ6で荷重が検出されたか否か、即ち、荷重センサ6からの電気信号の入力があるか否かの判定が行われ、荷重が検出された場合にステップS52に進む。尚、このステップS51の判定に供される荷重センサ6からの電気信号は、後述するステップS54でデジタルデータ(カウント値)に変換されて制御装置10に取込まれる。即ち、このステップS51における電気信号の検出は、データ取込みの開始を意味するものである。
【0095】
次いで、ステップS52では、制御装置10に内蔵されるクロック機能によって経過時間が計時される。この経過時間は、最初にこのステップS52に進んできた時を基準(0秒)として、このステップを経由する度に1秒単位で計時される(即ち、1秒経過する毎にインクリメントされるタイマである。)。従って、ステップS51からこのステップS52に進んできた時点では、経過時間は0秒とされる。もちろん、前回計時後で未だ1秒経過していないときは、前回計時された経過時間を保持する。
【0096】
次いで、ステップS53では、ステップS52で計時された経過時間に基づいて、次のように基準値の設定、変更が行われる。前述の通り、この装置1は、秤量100kg、最小単位1kgでスパン10,000カウントのデジタル体重計に相当し、カウント値の変動幅の適否を判定するための基準値(基本カウント値)は50カウントに設定されている。ここでは、この基本カウント値に経過時間を加算することによって、基準値の変更を行う。即ち、「基準値=基本カウント値+経過時間」であって、少なくとも最初にこのステップS53に進んできた場合には基準値=50+0=50カウントであるが、後述する各処理で構成されるルーチンを何回か繰返した結果、例えば経過時間が5秒となった場合であれば、基準値=50+5=55カウントとなる。
【0097】
次いで、ステップS54及びステップS55では、荷重センサ6からの電気信号がA/D変換器7でデジタルデータ(カウント値)に変換されて、連続的に、8つまで、制御装置10に取込まれる。即ち、ステップS54でカウント値が取込まれ、ステップS55では取込まれたカウント値が8つに達したか否かが判定され、8つに達した場合はステップS56に進み、未達の場合はステップS52に戻るものである。
【0098】
次いで、ステップS56では、取込まれている8つのカウント値のうちの最大カウント値と最小カウント値との差がカウント値の変動幅として算出され、この変動幅がステップS53で設定、変更された基準値と比較される。この変動幅が基準値以下であれば、取込まれたカウント値は全て適正である、即ち、載台にかかる荷重変動は許容範囲内にあり、従って載台上の使用者の測定姿勢はほぼ安定していると判定し、ステップS58に進む。一方、この変動幅が基準値を上回っている場合には、ステップS57に進んで取込まれているカウント値のうち最も古い(最初に取込まれた)カウント値を抹消した後、ステップS52に戻る。この結果、ステップS56でカウント値の変動幅が基準値以下であると判定されるまで、ステップS52からステップS57までが繰返されることとなる。
【0099】
従って、ステップS52からステップS57までで構成されるルーチンが繰返される間、ステップS52では経過時間が1秒単位で増加され、ステップS53では「基準値=基本カウント値+経過時間」に従って基準値が設定、変更される。この結果、ステップS51で荷重センサ6からの電気信号が検出されてから(即ち、データの取込みを開始してから)の経過時間が例えば5秒に達していれば、前述の如く基準値=50+5=55カウントとなり、10秒に達していれば基準値=50+10=60カウントとなる。斯かる基準値の変更により、カウント値の変動幅の適否は、測定開始からの経過時間に応じて通常よりも緩和された条件下で判定されることとなり、カウント値の変動が収束し難い状況下にあっても速やかな体重測定が実行されるようになるものである。
【0100】
次いで、ステップS58では、取込まれている8つのカウント値の平均値が算出され、この平均カウント値が体重値に換算されて、個人パラメータと同じく現在押下されているフットスイッチ3の番号に対応したデータブロックに保存される。
【0101】
上述のように、この第4の実施例としての装置1においては、主として荷重センサ6とA/D変換器7と制御装置10とが測定対象たる体重に関するデジタルデータ(カウント値)を取込むデータ取込手段を構成している。同時に、制御装置10は、取込まれたデータたるカウント値の変動幅と基準値とを比較することによって取込まれたデータが全て適正であるか否かを判定する適正状態判定手段と、取込まれたデータが全て適正である場合にこの取込まれたデータに基づいて測定値たる体重値を算出する測定値算出手段と、更には前記基準値を変更する基準値変更手段とを構成している。また、主として制御装置10が、データ取込手段でデータの取込みを開始してからの経過時間を計時する経過時間情報取得手段を構成している。
【0102】
そして、基準値変更手段たる制御装置10は、カウント値について予め定められた基準値たる基本カウント値に、取得された経過時間を加算することによって、この基準値を変更する。
【0103】
この結果、この第4の実施例としての装置1は、取得された経過時間を予め定められた基準値に加算するという極めて簡便な方法で測定開始からの経過時間に応じた基準値の変更を行い、以って測定姿勢の維持が困難な高齢や体重過多の使用者の体重を測定する場合や、この装置1を置いた床面の凹凸や周辺の振動といった外因によって測定重量のカウント値が安定し難い場合にも、これらに起因する荷重変動を吸収し、測定エラーを回避して速やかに体重測定を終了させ得るものとなっている。尚、特にこの第4の実施例の構成は、体重に限らず種々の物品の重量を測定するデジタル重量計においても広く利用することができる。
【0104】
以上、本発明によるデジタル測定装置及びその実施の形態について詳述してきたが、本発明は、実施例の構成に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した構成を備える限りにおいて、実施例と共に説明した各種の変形はもちろん、その他様々な変形が可能である。
【0105】
例えば、第1の実施例及び第3の実施例における年齢情報取得手段は、使用者の年齢そのものを取得するに限らず、大まかな年齢区分を取得するものであっても良い。即ち、50歳未満、50以上70歳未満、70歳以上といった具合である。或いは、更に大まかな区分として、一般成人と高齢者といったような区分も可能である。このような年齢区分の取得手段として、使用者が簡単に押下可能な専用ボタン(高齢者ボタン等)を設けることが考えられる。このような専用ボタンの設定は、本発明のデジタル測定装置を実施したデジタル体重計や体組成計を用いて高齢者の集団検診を行うような場合に、特に重宝するものと思われる。
【0106】
また、第1の実施例及び第3の実施例における基準値変更手段は、予め定められた基準値に使用者の年齢を加算し又は減算するものに限らず、年齢又は年齢区分に対応して予め用意された複数の基準値から、使用者の年齢に応じた基準値を選択して用いるものであっても良い。即ち、50歳未満の場合には基準値Aを、50歳以上70歳未満の場合には基準値Bを、70歳以上の場合には基準値Cを選択して用いるといった具合である。
【0107】
また、基準値変更手段は、使用者の年齢やおよその体重、又は測定開始からの経過時間に基づいて基準値を変更するものばかりでなく、より直接的な使用者の入力に従って基準値を変更するものであっても良い。即ち、基準値の変更を行おうとする使用者の意思を入力するための変更意思入力手段であって、具体的には、使用者が簡単に押下可能な専用ボタン(簡易測定ボタン等)を設けることが考えられる。このような専用ボタンの設定は、本発明のデジタル測定装置を実施したデジタル重量計を乗り物のような振動の激しい環境下で利用する場合に、特に重宝するものと思われる。
【符号の説明】
【0108】
1 デジタル測定装置
2 本体
2A、2B 通電電極
2C、2D 測定電極
3 フットスイッチ
4 電流供給回路
5 電圧測定回路
6 荷重センサ
7 A/D変換器
8 入力装置
8A アップスイッチ
8B ダウンスイッチ
8C 設定スイッチ
9 表示装置
10 制御装置
11 記憶装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象に関するデジタルデータを連続的に取込むデータ取込手段と、取込まれたデータと基準値とを比較することによって取込まれたデータが全て適正であるか否かを判定する適正状態判定手段と、取込まれたデータが全て適正である場合にこの取込まれたデータに基づいて測定値を算出する測定値算出手段とを備えてなるデジタル測定装置であって、前記基準値を変更する基準値変更手段を更に備えてなることを特徴とするデジタル測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のデジタル測定装置であって、測定対象が、重量であることを特徴とするデジタル測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載のデジタル測定装置であって、測定対象たる重量が、使用者の体重であることを特徴とするデジタル測定装置。
【請求項4】
請求項1に記載のデジタル測定装置であって、測定対象が、使用者の体組成であることを特徴とするデジタル測定装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のデジタル測定装置であって、前記基準値変更手段が、少なくとも使用者の年齢に関する情報を取得するための年齢情報取得手段を含んでなり、この取得された年齢情報に基づいて前記基準値を変更することを特徴とするデジタル測定装置。
【請求項6】
請求項5に記載のデジタル測定装置であって、前記基準値変更手段は、使用者が所定の年齢以上である場合に前記基準値を変更することを特徴とするデジタル測定装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のデジタル測定装置であって、前記基準値変更手段は、使用者の年齢を、予め定められた基準値に加算し又は予め定められた基準値から減算することにより、基準値を変更することを特徴とするデジタル測定装置。
【請求項8】
請求項3に記載のデジタル測定装置であって、前記基準値変更手段が、前記データ取込手段で取込まれたデータに基づいて使用者の体重を仮に取得する体重情報取得手段を含んでなり、この取得された体重情報に基づいて前記基準値を変更することを特徴とするデジタル測定装置。
【請求項9】
請求項8に記載のデジタル測定装置であって、前記基準値変更手段は、仮に取得された使用者の体重が所定の重量以上である場合に前記基準値を変更することを特徴とするデジタル測定装置。
【請求項10】
請求項8又は9に記載のデジタル測定装置であって、前記基準値変更手段は、仮に取得された使用者の体重を予め定められた基準値に加算することにより、基準値を変更することを特徴とするデジタル測定装置。
【請求項11】
請求項2又は3に記載のデジタル測定装置であって、前記基準値変更手段が、前記データ取込手段でデータの取込みを開始してからの経過時間を計時する経過時間情報取得手段を含んでなり、この取得された経過時間情報に基づいて前記基準値を変更することを特徴とするデジタル測定装置。
【請求項12】
請求項11に記載のデジタル測定装置であって、前記基準値変更手段は、取得された経過時間を予め定められた基準値に加算することにより、基準値を変更することを特徴とするデジタル測定装置。
【請求項13】
請求項1から4の何れかに記載のデジタル測定装置であって、前記基準値変更手段が、基準値の変更を示す使用者の意思を入力するための変更意思入力手段を含んでなり、この入力された使用者の意思に基づいて前記基準値を変更することを特徴とするデジタル測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−286498(P2010−286498A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178309(P2010−178309)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【分割の表示】特願2005−231448(P2005−231448)の分割
【原出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【出願人】(000133179)株式会社タニタ (303)
【Fターム(参考)】