説明

デジタル移動無線システム臨時基地局無線装置

【課題】1つの基地局エリア内にて緊急時などの場合に移動局の台数が不足してしまうという問題点を解決し、また、基地局そのものが故障した場合に当該基地局エリア内にある移動局が通信不可能となってしまうことを防ぐ。
【解決手段】 可搬ケースに収容される電力増幅部と、送受信部と、共用器と、操作部と、電源部と、インタフェース部と、制御部とより構成され、前記制御部はチャネル切替機能を含み、前記共用器を介して送受信アンテナに接続されるように構成された基地局無線装置であって、前記チャネル切替機能は、前記操作部の操作に従ってあらかじめ設定された複数の無線チャネルより所望の無線チャネルを選択して設定することにより、当該所望の無線チャネルを使用する少なくとも1つの移動局との無線通信を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル移動無線システムに関し、特に、SCPC(Single Channel Par Carrier)方式のデジタル移動無線システム及び無線基地局に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4は、従来のSCPC方式のデジタル移動無線システムの一例を示す。
本図において、11は複数の指令卓、13は少なくとも1つの基地局、12は指令卓と基地局の接続を切り替える切替装置、14は移動局(通常、複数台)、16は基地局13の無線サービスエリア、である。
ここで、基地局が複数設置されている場合には、隣接する基地局では異なるチャネル(周波数帯域)が使用される。
このようなシステムとすることで、広範囲なエリアをカバーした運用も可能なシステムである。
また、基地局13の基地局エリア16は隣接する他基地局との干渉を考慮し、エリアシミュレーションや周波数配置計算などにより求められ、配置分布されている。
【0003】
1つの基地局に割り当てられるチャネル周波数は通常、基地局13から移動局14への下り周波数(F1)と、その逆の上り周波数(f1)の1組の基地局周波数17である。
また、基地局エリア外に移動局14がある場合には、移動局間直接通信周波数18(f0)を用いて、移動局同士が電波到達範囲内に位置する場合に通信を可能とする。
【0004】
各指令卓11は各事業所や所望の場所にそれぞれ設置され、移動局14との通信時は切替装置12を経由し基地局13を用いて送受話することになる。
すなわち、指令卓11は切替装置12を介して基地局13と1対1で接続されると、接続された基地局の無線サービスエリア内の移動局との通信(通話)が可能である。
また、指令卓11は切替装置12を介して複数の基地局13と1対nで接続されると、接続された基地局の無線サービスエリア内の移動局とのグループ通話が可能である。
また、同一の基地局エリア内の移動局同士は当該基地局13を介して通話が可能である。
また、異なる基地局エリアにある移動局同士は、各基地局と切替装置12を介して通話が可能である。
【0005】
従来のSCPC方式のデジタル移動無線システムとして、例えば非特許文献1に示すものがある。
【0006】
【非特許文献1】狭帯域デジタル通信方式 (SCPC/FDMA) 標準規格 ARIB STD-T61 社団法人電波産業会
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来のシステムは、例えば1つの基地局13あたりに配置される移動局14の台数が各事業所などの予算、人員などにより限られた台数であって、このため、本基地局エリア16内にて緊急時などの場合に移動局14の台数が不足してしまうという問題点があった。
また、災害などの発生により基地局13そのものが故障した場合に当該基地局エリア16内にある移動局が通信不可能となってしまう可能性もあり、このような災害時の対応を技術的に解決する必要があった。
【0008】
本発明は、このような従来の事情に鑑み為されたもので、1つの基地局エリア内にて緊急時などの場合に移動局の台数が不足してしまうという問題点を解決し、また、基地局そのものが故障した場合に当該基地局エリア内にある移動局が通信不可能となってしまうことを防ぐことのできるデジタル移動無線システム及びそれに用いる無線基地局を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来の問題点を解決するため請求項1に記載の発明は、可搬ケースに収容される電力増幅部と、送受信部と、共用器と、操作部と、電源部と、インタフェース部と、制御部とより構成され、前記制御部はチャネル切替機能を含み、前記共用器を介して送受信アンテナに接続されるように構成された基地局無線装置であって、前記チャネル切替機能は、前記操作部の操作に従ってあらかじめ設定された複数の無線チャネルより所望の無線チャネルを選択して設定することにより、当該所望の無線チャネルを使用する少なくとも1つの移動局との無線通信を行うことを特徴とする。
【0010】
上記従来の問題点を解決するため請求項2に記載の発明は、少なくとも1つの指令卓と、少なくとも1つの常設基地局と、複数の移動局より構成されたデジタル移動無線システムにおいて、前記少なくとも1つの常設基地局の無線エリアと重なる無線エリアとする位置に臨時基地局を設置し、該臨時基地局は、前記常設基地局は使用する第1の無線チャネルとは異なる第2の無線チャネルを設定し、前記複数の移動局は、前記第1の無線チャネルを使用する少なくとも1台の移動局と、前記第2の無線チャネルを使用する少なくとも1台の移動局と、より構成されることを特徴とする。
【0011】
上記従来の問題点を解決するため請求項3に記載の発明は、前記請求項2に記載のデジタル移動無線システムであって、前記臨時基地局は、電力増幅部と、送受信部と、共用器と、操作部と、電源部と、インタフェース部と、制御部とより構成され、前記共用器を介して送受信アンテナに接続され、前記制御部はチャネル切替機能を含み、前記操作部の操作に従ってあらかじめ設定された複数の無線チャネルより所望の無線チャネルを選択して設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、1つの基地局エリア内にて緊急時などの場合に移動局の台数が不足してしまうという問題点を解決し、また、基地局そのものが故障した場合に当該基地局エリア内にある移動局が通信不可能となってしまうことを防ぐことのできるデジタル移動無線システム及びそれに用いる無線基地局を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図2は、本発明の実施の形態に係るSCPC方式のデジタル移動無線システムの第1実施例(応援)を示す。
本図において、11は複数の指令卓、13は1つの基地局、12は指令卓と基地局の接続を切り替える切替装置、20は臨時基地局、14および15は複数の移動局、16は基地局13の無線サービスエリア、19は臨時基地局20の無線サービスエリア、である。
ここで、臨時基地局20は基地局13の無線サービスエリアとほぼ重なるエリアをカバーするように、基地局13の近傍または無線サービスエリア16内に配置する。
そして、臨時基地局20は、基地局13が使用する基地局周波数17(F1、f1)とは異なる基地局周波数18(F2、f2)を設定し、臨時局エリア19という無線エリアを確立することで、当該基地局周波数18(F2、f2)を使用する移動局15が基地局エリア16内に在っても通信を行うことができる。
【0014】
この第1実施例のシステムの場合の運用形態としては、例えば、通常運用している基地局13の基地局エリア16において災害などが発生したとする。
応援として移動局15が数台派遣される場合、臨時基地局20を通常の基地局13とは別の場所(基地局エリア16内)に設置し、設定周波数を基地局周波数17(F1、f1)とは別の臨時基地局周波数21(F2、f2)に設定し、臨時基地局エリア19を確立する。
そして、臨時基地局20は移動局15とのプレストーク通信、応援の各移動局15間の臨時基地局折り返し通話が可能となる。
このように、臨時基地局20を仮設することにより、非常災害時の応援などで回線数が増加し、トラフィックが輻輳するような状況を回避することができる。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態に係る臨時基地局の実施例を示す。
臨時基地局20は、基本的には電力増幅部(PA部)2、送受信部3、操作部4、電源部5、制御部8で構成されており、制御部8はチャネル切替機能を含み、また、冷却用のFAN1でPA部2を冷却する。
また、送受信部3は、送信部と受信部があって、送信部はPA部2により増幅されて共用器7を介して外付けの送受信アンテナに接続され、また、共用器を介して受信部と前記送受信アンテナが接続される。
外部インターフェース(IF)部6は、他の基地局(図2では基地局13)と接続するためのコネクタや、AC100V電源を接続するコネクタがある。
また、本図1ではスピーカやマイクが内蔵されているが、外付けの場合には外部IF部6を介して接続される。
また、この臨時基地局はジェラルミンケース等に各部が収納され、台車や自動車により持ち運び可能とし、送受信アンテナや外付けのマイクやスピーカと接続するように構成される。
なお、外部IF6により他の基地局13と本臨時基地局20を接続した場合には、基地局13を介して指令卓11より臨時基地局20に基地局コードを付与することができ、他の基地局エリア内の移動局や指令卓と、応援移動局15との通信を可能とすることができる。
【0016】
操作部4では、前述した図2の指令卓と同等若しくは簡易的な指令操作を行うようにスイッチやキーパネル、表示部などが含まれる。
そして、例えば、臨時基地局20の常送/非常送を切り替えることができ、またダイヤルSWなどにより、あらかじめプリセットしておいた10ch程度の基地局周波数より1つの指定周波数を設定することで、制御部に対してチャネル切替を行わせることができる。
チャネル切替機能は、前述した10ch程度の指定周波数をメモリテーブルに記憶しておき、操作部(ダイヤルSW)によりチャネル切り替えがされると、該切り替えに応じて、メモリテーブルの所望のチャネルが選択され、選択されたチャネルに応じて所望の帯域に設定されるようにシンセサイザによりフィルタ等の帯域をずらす調整が行われる。
ここで、通常は常に電波を発信している常送モードで使用することになるため、例えば運用途中で周波数chを変更する際はダイヤルSWを変化させて、設定chが確定すると自動的にシステムリセットを実行し、使用周波数を確定する方式をとる。
【0017】
図5は、本発明の実施の形態に係るSCPC方式のデジタル移動無線システムの第2実施例(代替)を示す。
この第2実施例のシステムの場合の運用形態としては、例えば、通常運用している基地局13が災害や故障などにより運用不可となった場合に、臨時基地局20を基地局13の無線サービスエリア16とほぼ重なるエリアをカバーするように、基地局13の近傍または無線サービスエリア16内に配置する。
そして、臨時基地局20は、基地局13が使用する基地局周波数17(F1、f1)と同じ基地局周波数17を設定し、基地局エリア16と同等の臨時局エリア19という無線エリアを確立することができる。
また、外部IF6により基地局13の代わりに本臨時基地局20を接続した場合には、指令卓11より臨時基地局20に基地局13の代替となるコードを付与することができ、他の基地局エリア内の移動局や指令卓と、移動局14との通信を可能とすることができる。
【0018】
図3は、本発明の実施の形態に係る固定設置された(通常の)基地局13の実施例を示す。
この基地局無線装置13は、図示しない送受信アンテナと、共用部31、PA部33、TRX部34の無線系と、自局の制御を行う制御部35、切替え装置12とのやり取りを実施する制御部36の制御系とから成り立ち、PA部33を冷却するためのFAN部32、および装置の動力となる電源部37、切替え装置12と接続される有線回線の取り込み口などが実装されている端子部38を備えている。
また、ここで示した基地局無線装置13の全体構成は2チャネル実装型であり、現用/予備構成として使用される場合と、2周波数を割り当て、現用2ch構成として使用される場合とがある。
また、端子部38により臨時基地局20を接続した場合には、指令卓11より臨時基地局20に基地局コードを付与することができる。
【0019】
以上、説明したように、1つの通常の基地局が収容できる移動局の台数は、限られたものであり、災害発生などの緊急時に移動局が増加してしまうような場合であっても、当該基地局に別の周波数を追加して割り当てるというような再構築を行うにはシステム全体の装置構成が複雑となり高価なものとなってしまう。
また、再構築を行えたとしても、無線回線トラフィックが輻輳することになり、指令卓11〜移動局14間の通信、通話が十分に行えなくなることもある。
そこで、前述した第1の実施例では、基地局13の基地局周波数17(F1、f1)が設定してあり、その状態で臨時基地局20を基地局エリア16と重なるエリアとなるように臨時基地局20を配置し、応援の移動局15を使用する。
また、災害発生などにより、設置してある通常の基地局そのものが使用できなくなる場合も想定され、そのような場合に、前述した第2の実施例のように、通常の基地局13の代替となるように臨時基地局20を配置することができる。
【0020】
すなわち、災害が発生した等の緊急時に、応援が必要となった場合にトラフィックの分散を図るべく、通常基地局の機能を持ち合わせた臨時基地局を設置し、自局周波数とは別の周波数を用いたシステム、または自局周波数と同じ周波数を用いたシステムを構成するのに、臨時基地局20を用いる。
そして臨時基地局20は、通常の何れの基地局13の応援、代替とするか同じではないため、使用する周波数は容易に変更できるように、予め各基地局周波数(チャネル)を切り替えて設定する機能を備えており、臨時基地局を配置(仮設)する際に、ROM交換などにより周波数データを書き換えるというような手間をかけずに簡易にチャネル設定することができ、迅速な対応が可能となる。
【0021】
本発明の実施の形態によると、通常時は特定の事業場等に保管され、非常災害時等には被災事業場に運搬・仮設し使用する臨時使用的な基地局無線装置を提供することができ、また、このような臨時基地局において、通常基地局とは異なり容易に使用チャネル(周波数)を変更、設定することができる。
そして、非常災害時などの緊急時に、当該被災区域のエリアに応援移動局が搬入されることが想定される場合に、輻輳対策となる臨時の基地局を使用したSCPC方式のデジタル無線システムを構築することができる。
【0022】
例えば、400MHz帯を使用したSCPC方式デジタル移動無線無線システムにおいて、通常時は特定の事業場等に保管され、非常災害時等には被災事業場に運搬・仮設して使用することで、応援の移動局との通信を行い、また、被災事業場の通常の基地局が使用不能となった場合の代替の基地局として稼動させることができる。
そして、被災事業場に複数の応援移動局が搬入される場合、被災局において移動無線回線トラフィックの輻輳を防ぎ、トラフィック分散を図ることができる。
【0023】
また、この臨時基地局は、送信部(電力増幅部含む)、基本的には受信部、電源部、共用器で構成された、SCPC方式デジタル移動無線システムの臨時局、若しくは、代替局とする装置で、プレストークによる音声通信などの通信サービスを提供することができ、さらに、可搬型のケースに収容され、人や車両による運搬が容易であり、電源供給が可能な任意箇所において臨時局、若しくは、代替局として設営される。
【0024】
ここで、本発明に係る無線通信システムや指令卓、切替装置、基地局装置や臨時基地局装置の構成としては、必ずしも以上に示したものに限られず、種々な構成が用いられてもよい。
また、本発明は、例えば、本発明に係る処理を実行する方法或いは方式や、このような方法や方式を実現するためのプログラムや当該プログラムを記録する記録媒体などとして提供することも可能であり、また、種々な装置やシステムとして提供することも可能である。
また、本発明の適用分野としては、必ずしも以上に示したものに限られず、本発明は、種々な分野に適用することが可能なものである。
例えば、音声の情報を通信するものばかりでなく、テキストや画像などの種々な情報を通信するものに適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態に係る臨時基地局の実施例を示す。
【図2】本発明の実施の形態に係るSCPC方式のデジタル移動無線システムの第1実施例(応援)を示す。
【図3】本発明の実施の形態に係る固定設置された(通常の)基地局13の実施例を示す。
【図4】従来のSCPC方式のデジタル移動無線システムの一例を示す。
【図5】本発明の実施の形態に係るSCPC方式のデジタル移動無線システムの第2実施例(代替)を示す。
【符号の説明】
【0026】
1:FAN部、2:PA部、3:送受信部、4:操作部、5:電源部、6:外線IF部、7:共用器部、8:制御部、
11:指令卓、12:切替装置、13:基地局、14:移動局、15:移動局(応援)、16:基地局エリア、17:基地局周波数(F1、f1)、18:移動局間直接通信周波数(f0)、19:臨時局エリア、20:臨時基地局、21:臨時基地局周波数(F2、f2)、
31:共用部、32:FAN部、33:PA部、34:送受信部、35:制御部1、36:制御部2、37:電源部、38:端子部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可搬ケースに収容される電力増幅部と、送受信部と、共用器と、操作部と、電源部と、インタフェース部と、制御部とより構成され、
前記制御部はチャネル切替機能を含み、
前記共用器を介して送受信アンテナに接続されるように構成された基地局無線装置であって、
前記チャネル切替機能は、前記操作部の操作に従ってあらかじめ設定された複数の無線チャネルより所望の無線チャネルを選択して設定することにより、
当該所望の無線チャネルを使用する少なくとも1つの移動局との無線通信を行うことを特徴とする基地局無線装置。
【請求項2】
少なくとも1つの指令卓と、少なくとも1つの常設基地局と、複数の移動局より構成されたデジタル移動無線システムにおいて、
前記少なくとも1つの常設基地局の無線エリアと重なる無線エリアとする位置に臨時基地局を設置し、
該臨時基地局は、前記常設基地局は使用する第1の無線チャネルとは異なる第2の無線チャネルを設定し、
前記複数の移動局は、前記第1の無線チャネルを使用する少なくとも1台の移動局と、前記第2の無線チャネルを使用する少なくとも1台の移動局と、より構成されることを特徴とするデジタル移動無線システム。
【請求項3】
前記臨時基地局は、電力増幅部と、送受信部と、共用器と、操作部と、電源部と、インタフェース部と、制御部とより構成され、
前記共用器を介して送受信アンテナに接続され、
前記制御部はチャネル切替機能を含み、前記操作部の操作に従ってあらかじめ設定された複数の無線チャネルより所望の無線チャネルを選択して設定することを特徴とする前記請求項2に記載のデジタル移動無線システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−104076(P2007−104076A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−288329(P2005−288329)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】