説明

デジタル設計エコシステム

【課題】リアルタイムでのフィードバックを同時にユーザ及び相互に提供する複数の解析プログラムにモデル情報が供給されるデジタル設計環境を提供する方法及びシステムを提供する。
【解決手段】管理/統括プログラムは、建築情報モデルを取得し、建築情報モデルの少なくとも一部の複製を少なくとも2つに出力する。管理/統括プログラムは、少なくとも2つの解析プログラムのそれぞれから建築情報モデルの少なくとも一部の複製の解析に基づく解析結果を受信する。少なくとも2つの解析プログラムは、各解析を互いに同時に実行する。受信解析結果における建築情報モデルの変更にリアルタイムで応じた結果が同時に表示されるように、受信解析結果のうちの少なくとも2つを同時に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築設計モデリングに関するものであり、特に、複数のシミュレーションプログラムからリアルタイムで同時にフィードバックする建築設計モデリングに関する。
【背景技術】
【0002】
設計業者及び技術者が、パラメトリック建築情報モデリングの処理によるコンピュータ支援設計における技術的進歩を採用し続けるにつれ、自動建築解析プログラムの使用は、普及してきている。例えば、パラメトリック建築情報モデリング(BIM)プログラムは、物理的及び情報的特性を建築物の設計の構成要素に結び付け、それにより、単なる建築物の模式図、すなわち接続線の集合としての3Dモデルの代わりに、関係のある物理的特性を有する建築情報モデルを生成する。例えば、住宅用の建築情報モデルは、材料の種類及びコストを住宅の各部材に結びつけ、各部材の3次元的関係を保持し、部材の挙動特性を識別する。建築情報モデルは、建築物の挙動様式を決定するシミュレーション又は解析プログラムに出力される。建築情報モデルは、解析され、例えば、太陽の光が一日を通してどのように建築物を照射するかを決定し、エネルギ消費量をシミュレートし、又は実際の分類された熱伝導率及び熱抵抗を有する壁材の所定の集合体を通した放射熱の(熱的)損失又は利得をシミュレートする。
【0003】
従来の方法を使用してあるモデルを解析するために、設計者は、モデリングプログラムを使用して、このモデルを準備し、このモデルを一般のファイルフォーマット(例えば、IGES、STEP、IFC、又はDXF)に変換し、その後、この一般のファイルフォーマットに変換されたモデルを個々のシミュレーションプログラムに読み込む。設計者が、このモデルを他のシミュレーションプログラムに通過させたい場合には、設計者は、他のシミュレーションプログラムに対する処理を順次繰り返さなければならない。これらの全てのシミュレーションが順次完了した後、設計者は、各シミュレーションプログラムからの個々の結果を解析し、この他のシミュレーションプログラムに通過させたモデルが既知の目的に到達するためにどのように変更するかを決定する。どのような変更が行われた場合でも、この全体の処理は、変更されたモデルを各シミュレーションに順次通過させることにより繰り返される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の考え方は、性能志向の解析結果が隣の組に影響を与えるか又は作用を及ぼすかどうかを判定することができず、性能志向の解析結果のうちの特定の組に結びついた設計幾何学をサイロイングするという不利な点を有する。例えば、屋根における天窓の位置は、天窓が昼光を取り込む部屋の照明計算の精度を高めるが、逆に熱気による冷暖房負荷、そして、それによるライフサイクルのエネルギコストに影響を与える可能性がある。更に、従来の方法は、多数のシミュレーションを連続的に実行し、そしてその後モデルが生成される。したがって、設計処理中のシミュレーションプログラムから設計者へのリアルタイムでのフィードバックは行われず、シミュレーションプログラム間での通信も行われない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る解析方法及びデータ処理システムは、リアルタイムでのフィードバックを同時にユーザ及び相互に提供する複数の解析プログラムにモデル情報が供給されるデジタル設計環境を提供する。従来のシステムは、連続的に解析を実行し、そしてその後モデルが生成されていた。したがって、設計処理中の解析プログラムから設計者へのリアルタイムでのフィードバックは行われず、解析プログラム間での通信も行われない。このような従来のシステムの問題を解決するために、本発明に係る管理/統括プログラムは、モデル情報を複数の解析プログラムに同時に送信し、そして解析プログラムの結果をリアルタイムで表示する。更に、管理/統括プログラムは、解析プログラム間での情報の通信を可能にし、種々の解析を変更して互いに作用し合うようにする。
【0006】
管理/統括プログラムは、現存のモデル設計プログラム及び解析プログラムに使用される。このシステムを使用する設計業者は、因習的な様式で作業を行い、コンピュータの表示画面に表示されるような既知の設計幾何学のモデリングソフトウェアを使用する。管理/統括プログラムは、モデル情報を解析プログラムに供給し、そして、性能志向の情報、例えばエネルギ消費量、採光性能、材料コスト、熱冷暖房負荷等を出力する。管理/統括プログラムは、種々の解析プログラムからこのフィードバックを受信し、そして種々の解析結果をリアルタイムで同時にユーザに表示する。したがって、ユーザは、このモデルを操作する間、例えば車の計器板システムを見ている運転手又は患者の生命徴候を監視している医師のように、種々のフィードバックをリアルタイムで見る。
【0007】
本発明に係る解析方法は、管理/統括プログラム及び複数の解析プログラムを有するデータ処理システムの解析方法を提供する。この解析方法は、管理/統括プログラムによって実行される建築情報モデルを取得するステップと、建築情報モデルの少なくとも一部の複製を、少なくとも2つの解析プログラムに出力するステップと、少なくとも2つの解析プログラムが、それぞれの解析を互いに同時に実行し、該少なくとも2つの解析プログラムのそれぞれから、建築情報モデルの少なくとも一部の複製の解析に基づく解析結果を受信するステップと、受信解析結果における建築情報モデルの変更にリアルタイムで応じた効果が同時に表示されるように、該受信解析結果のうちの少なくとも2つを同時に表示するステップとを有する。
【0008】
本発明に係るシステムは、管理/統括プログラム及び複数の解析プログラムを有するデータ処理システムにおいて、以下の方法を実行させる管理/統括プログラムの命令が記録されたコンピュータ読取り可能な記録媒体を提供する。この方法は、建築情報モデルを取得するステップと、建築情報モデルの少なくとも一部の複製を複数の解析プログラムのうちの少なくとも2つに出力するステップと、少なくとも2つの解析プログラムが、それぞれの解析を互いに同時に実行し、該少なくとも2つの解析プログラムのそれぞれから、建築情報モデルの少なくとも一部の複製の解析に基づく解析結果を受信するステップと、受信解析結果における建築情報モデルの変更にリアルタイムで応じた効果が同時に表示されるように、該受信解析結果のうちの少なくとも2つを同時に表示するステップとを有する。
【0009】
本発明に係るシステムは、データ処理システムを提供する。このデータ処理システムは、建築情報モデルを取得し、建築情報モデルの少なくとも一部の複製を、複数の解析プログラムのうちの少なくとも2つに出力し、少なくとも2つの解析プログラムが、それぞれの解析を互いに同時に実行し、該少なくとも2つの解析プログラムのそれぞれから、建築情報モデルの少なくとも一部の複製の解析に基づく解析結果を受信し、受信解析結果における建築情報モデルの変更にリアルタイムで応じた結果が同時に表示されるように、該受信解析結果のうちの少なくとも2つを同時に表示する管理/統括プログラムが記憶されたメモリを備える。処理装置は、この管理/統括プログラムを実行する。
【0010】
本発明に係るシステムは、建築情報モデルを取得する手段と、建築情報モデルの少なくとも一部の複製を複数の解析プログラムのうちの少なくとも2つに出力する手段と、少なくとも2つの解析プログラムが、それぞれの解析を互いに同時に実行し、該少なくとも2つの解析プログラムのそれぞれから、建築情報モデルの少なくとも一部の複製の解析に基づく解析結果を受信する手段と、受信解析結果における建築情報モデルの変更にリアルタイムで応じた結果が同時に表示されるように、該受信解析結果のうちの少なくとも2つを同時に表示する手段とを備えるデータ処理システムを提供する。
【0011】
本発明のその他のデータ処理システム、解析方法、特徴及び優れた効果は、以下の図面及び詳細な説明により、当業者に明らかになる。全ての他のデータ処理システム、解析方法、特徴及び優れた効果は、この説明内に含まれ、本発明の範囲内にあり、図面により担保されているものとする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図面は、詳細な説明に組み込まれ、この詳細な説明の一部を構成し、本発明の実施形態を図示して、この説明と共に本発明の利点及び原理を説明するのに役立つ。
【0013】
【図1】本発明に係るデータ処理システムの構成を示すブロック図である。
【図2】コンピュータ102の構成を示すブロック図である。
【図3】コンピュータ104の構成を示すブロック図である。
【図4】データ処理システムと種々のユーザとの関係を模式的に示す模式図である。
【図5】管理/統括プログラムによって実行されるステップを模式的に示すフロー図である。
【図6】管理/統括プログラムによって示される複数の解析結果を同時に表示するための画面ショットの例を示す図である。
【図7】データ処理システムと種々のユーザとの関係を模式的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、複数の図面において同じ構成要素には、可能な限り同一の参照番号を付す。
【0015】
本発明に係る解析方法及びデータ処理システムは、デジタル設計環境を提供する。このデジタル設計環境では、ユーザがモデルを操作する際に、モデル情報は、複数の解析プログラムに出力され、各解析プログラムは、リアルタイムでのフィードバックを同時にユーザに提供する。管理/統括プログラムは、建築情報モデルの情報を複数の解析プログラムに出力し、そして、各解析プログラムは、性能志向の情報、例えばエネルギ消費量、採光性能、材料コスト、熱冷暖房負荷等を出力する。管理/統括プログラムは、各解析プログラムからフィードバックを受信し、ユーザがモデルを操作できるように、リアルタイムでこのフィードバックをユーザに表示する。
【0016】
図1は、本発明に係る解析方法及びデータ処理システムに好適に使用されるデジタル設計エコシステム、すなわちデータ処理システム100の構成を示すブロック図である。データ処理システム100は、ネットワーク110によって接続された複数のコンピュータ102、104、106、108を備える。ネットワーク110は、コンピュータを通信のために接続するのに適した種類、例えば回線交換網又はパケット交換網である。また、ネットワーク110は、多くの異なる種類のネットワーク、例えばローカルエリアネットワーク、例えばインターネットのようなワイドエリアネットワーク、専用の通信リンクを有する電話回線網、無接続ネットワーク及び無線ネットワークを含むことができる。図1に示す実施の形態において、ネットワーク110は、インターネットである。図1に示すコンピュータ102、104、106、108は、それぞれ、適切な通信リンク、例えば専用の通信回線又は無線通信リンクによってネットワークに接続される。
【0017】
この実施の形態において、コンピュータ102は、デジタル設計及びモデリングワークステーションであり、このワークステーションで、設計業者は、設計及びモデリングプログラム112を用いて建築設計及び建築情報モデルを準備することができる。コンピュータ104、106、108は、何れもリモートワークステーションであり、各ワークステーションは、建築情報モデル解析プログラム114、116、118を実行する。以下に更に詳細に説明するように、コンピュータ102は、建築情報モデルの情報を解析プログラム114、116、118に転送し、解析プログラム114、116、118から解析フィードバックを受信する管理/統括プログラム120を更に有する。図1に示すコンピュータの数及びネットワークの構成は、単に1つの実施例に過ぎない。データ処理システム100が、異なる数のコンピュータ及びネットワークを含むようにしてもよいことは、当業者にとって明らかである。例えば、コンピュータ102は、建築設計及びモデリングプログラム112に加えて、解析プログラム114、116、118のうちの1つ以上を有するようにしてもよい。更に、管理/統括プログラム120は、コンピュータ102とは別のコンピュータに属するようにしてもよい。
【0018】
図2は、コンピュータ102のより詳細な構成を示すブロック図である。コンピュータ102は、中央処理装置(CPU)202と、入出力(I/O)装置204と、表示装置206と、二次記憶装置208と、メモリ210とを備える。コンピュータ102は、標準的な入力装置、例えばキーボード、マウス、ディジタイザ又は音声処理手段(何れも図示せず)を更に備えることができる。
【0019】
コンピュータ102のメモリ210は、建築情報モデル222を生成する設計及びモデリングプログラム112と、この設計及びモデリングプログラム112と解析プログラム114、116、118との間の通信を調整する管理/統括プログラム120とを記憶している。設計及びモデリングプログラム112は、建築情報モデルを生成する何れの適切なプログラムであってもよく、例えば、オートデスク社製のRevit Architecture、Revit Structure及び/又はRevit MEPのパッケージとすることができる。Revitは、オートデスク社(カリフォルニア州サンラファエル)の登録商標である。ここに記載された他の製品名は、それらの各所有者の商標又は登録商標である。建築情報モデル222は、メモリ210内に位置するように示している。しかしながら、建築情報モデル222は、二次記憶装置、例えば二次記憶装置208のモデルデータベース224内に格納されることが可能である。
【0020】
建築情報モデル(以下、単に「モデル」とも呼ぶ。)は、建築物の構成要素の物理及び/又は情報特性だけでなく建築物又はその一部の三次元表示を含む。例えば、住宅用の建築情報モデルは、材料の種類及びコストを住宅の各部材に結びつけ、各部材の三次元的関係の情報を保持し、部材の挙動特性を識別することができる。本実施の形態において、建築情報モデルは、DXFフォーマットでモデルデータベースに格納されている。しかしながら、建築情報モデルは、1つ以上の別のフォーマット、例えばIGES、step、IFC等で格納するようにしてもよい。
【0021】
建築情報モデル及びその生成は、当業者によく知られているので、ここでは詳細には説明しない。建築情報モデル及びその生成については、例えば、L.Khemlani,「The IFC Building Model:A Look Under the Hood」,AECBytes((http://www.aecbytes.com/feature/2004/IFCmodel_pr.html)2004年3月30日)、IAI Modeling Support Group,「IFC 2x Edition 2 Model Implementation Guide」v.1.7,(2004年3月18日)、及び「IAI Industry Foundation Classes IFC2x Edition 2 Addendum 1」((http://www.iai-international.org/Model/R2x2_addl/index.html)2004年)に記載されている。これらの文献は、引用することにより本実施の形態に援用される。
【0022】
以下、管理/統括プログラム120について、詳細に説明する。本実施の形態において、管理/統括プログラム120は、設計及びモデリングプログラム112と解析プログラム114、116、118との通信を行うスタンドアロンプログラムである。別の実施の形態では、管理/統括プログラムは、別のプログラム、例えば設計及びモデリングプログラム112のプラグイン又は構成要素とすることもできる。
【0023】
図3は、リモートコンピュータ104のより詳細な構成を示すブロック図である。コンピュータ106、108は、リモートコンピュータ104と同じ構成を備える。コンピュータ104は、中央処理装置(CPU)302と、入出力(I/O)装置304と、表示装置306と、二次記憶装置308と、メモリ310とを備える。コンピュータ302は、標準的な入力装置、例えばキーボード、マウス、ディジタイザ又は音声処理手段(何れも図示せず)を更に備えることができる。
【0024】
コンピュータ104のメモリ310は、建築情報モデルを解析する解析プログラム114を少なくとも記憶している。解析プログラム114は、建築情報モデルを解析する又は建築情報モデルに基づくシミュレーションを実行するのに適切な何れの解析プログラムであってもよい。コンピュータ104、106、108は、それぞれ、異なる解析、例えば昼光、照明、エネルギ消費量、風の影響、人の流れの状態、プロジェクトのスケジュール、建設の実行等のシミュレーションを実行する解析プログラムを1つ以上含む。本実施の形態において解析プログラム114は、LBNLのRadianceを取り入れたSquare OneのEcotect昼光シミュレーションプログラムであり、解析プログラム116は、サーモアナリティクス社製のRadThermエネルギシミュレーションプログラムであり、また解析プログラム118は、アンシス社製のFluent風環境シミュレーションプログラムである。これらの解析プログラム114、116、118は、単に実施例に過ぎず、異なる数の他の解析プログラムを使用してもよいことは、当業者にとって明らかである。解析プログラムは、当業者にはよく知られており、ここでは、更に詳細には説明しない。解析プログラム114は、解析を実行し、解析結果322を例えば二次記憶装置308に格納する。
【0025】
説明するための目的として、ここで説明される種々のプログラムは、Microsoft(登録商標)Windows(登録商標)オペレーティングシステム環境で動作するものとするが、本発明に係る解析方法及びデータ処理システムがそれに限定されないことは、当業者にとって明らかである。更に、これらのプログラムは、各動作を実行する命令を含む1つ以上のコード部からなる又はコード部を含むようにしてもよい。各プログラムは、ソフトウェアとして実行されるとして説明するが、本実施の形態は、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせとして、又はハードウェア単独として実施されることができる。
【0026】
本発明に係る解析方法及びデータ処理システムの特徴は、メモリに記憶されているものとして示しているが、その特徴が別のコンピュータ読取り可能な媒体、例えば、二次記憶装置を含むコンピュータ読取り可能な記録媒体に書き込み又は読み出しされるようにしてもよいことは、当業者にとって明らかである。この二次記憶装置は、例えば、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、CD−ROM、又は、現在知られている又は後に開発された他の形状のROM又はRAM、又はインターネット等のネットワークから受信される搬送波等の伝送媒体である。更に、データ処理システム100の特定の構成要素について説明してきたが、本発明に係る解析方法及びデータ処理システムに好適に使用されるデータ処理システムが追加の又は別の構成要素を含むようにしてもよいことは、当業者にとって明らかである。
【0027】
図4は、データ処理システム100のユーザに関連して存在するこのデータ処理システム100におけるコンテクストの一例を示す図である。この図4に示すように、設計業者402、施主404及び建設業者406は、それぞれ設計を行うユーザ又は情報を見るユーザとしての役割を果たす。例えば、設計業者402は、構造設計、機械設計、電気設計、配管設計、ランドスケープ設計、照明設計、音環境設計、温熱環境設計、及び計算による空気環境設計の情報を入力することによって建築情報モデルを設計する。管理/統括プログラムは、建築情報モデルの少なくとも一部を複数の解析プログラムのうちの少なくとも2つの解析プログラムに供給する。図4に示す実施の形態において、解析プログラムは、環境シミュレータと、設計意図の比較と、コストアナライザと、建設シミュレータと、契約書管理システムと、造形アナライザとを含む。各解析プログラムは、解析結果を管理/統括プログラムに返し、管理/統括プログラムは、この解析結果をユーザに表示する。更に、管理/統括プログラムは、1つの解析プログラムから受信した解析結果を1つ以上の他の解析プログラムに転送することができ、それによって、別の解析プログラムが、今後の結果を生成する際に、この更なる情報を考慮に入れることができるようにする。
【0028】
図5は、設計及びモデリングプログラム及び複数の解析プログラムで情報を統括するための、管理/統括プログラムによって実行される例示的なステップを示すフロー図500である。最初に、管理/統括プログラムは、建築情報モデルを取得する(ステップ502)。この取得は、管理/統括プログラムが、例えば設計及びモデリングプログラムから定期的に建築情報モデルを要求することによって行われる。これに代えて、管理/統括プログラムは、定期的にモデルデータベースから建築情報モデルを読み出すようにしてもよい。
【0029】
上述したように、建築情報モデルは、複数の解析プログラムに転送される。管理/統括プログラムは、ユーザに所望の解析プログラムを選択することを促すことによって、建築モデル情報を送信する解析プログラムを識別する(ステップ504)。例えば、管理/統括プログラムは、ユーザが1つ以上の選択をすることができる利用可能な解析プログラムのドロップダウンリストを表示する。
【0030】
その後、管理/統括プログラムは、選択された解析プログラムのそれぞれに送信する建築モデル情報を決定する(ステップ506)。各解析プログラムによって、一部又は全ての建築モデル情報が送信される。例えば、昼光解析プログラムは、三次元構造と、建築物の材料特性、例えば窓の透明度とに関する情報を要求するようにしてもよい。しかしながら、昼光解析プログラムは、建築物の負荷情報及び材料コストのデータを要求しない。管理/統括プログラムは、ルックアップテーブルにおいて、例えば、関連のあるデータタイプを識別することによって、送信する情報を決定する。別の実施の形態では、管理/統括プログラムは、建築情報モデルのデータタイプを各解析プログラムに関連した要求データタイプのフィルタに通過させるようにしてもよい。
【0031】
産業上規格化されたファイルフォーマットを用いることにより、建築モデル情報を解析プログラムによって認識可能な別のフォーマットに変換する要求を減らすことができる。しかしながら、1つ以上の解析プログラムは、設計及びモデリングプログラムによってサポートされる情報フォーマットを認識することができない。この場合に対応するために、管理/統括プログラムは、建築モデル情報が、選択された各解析プログラムと互換性があるフォーマットかどうかを判定する。これは、例えばルックアップテーブル等において互換性があるフォーマットを識別することによって行うことができる。
【0032】
建築モデル情報が、1つ以上の解析プログラムと互換性がないならば、管理/統括プログラムは、自動的に建築モデル情報のフォーマットを適切なフォーマットに変換する(ステップ508)。例えば設計及びモデリングプログラムが建築モデル情報をDXFフォーマットで出力し、解析プログラム114がIGESフォーマットを認識する場合、管理/統括プログラムは、建築モデル情報をDXFフォーマットからIGESフォーマットに変換する。この変換は、例えば周知のフォーマット変換技術又はプラグインを用いて行うことができる。要求されたモデル情報が識別されて変換された後、必要に応じて、管理/統括プログラムは、建築モデル情報を選択された解析プログラムに送信する(ステップ510)。
【0033】
建築モデル情報を受信した後、選択された解析プログラムは、それぞれの解析又はシミュレーションを実行し、解析結果を出力する。管理/統括プログラムが、建築モデル情報を各解析プログラムに同時に又は短時間で送信するため、解析プログラムは、各解析を同時に実行する。これは、モデルデータが一度に1つのシミュレータに手動で送信されるといった従来の考え方と相違する。図1の実施の形態において、ユーザは、解析プログラム114、116、118を選択する。その結果、解析プログラム114、116、118は、関連した建築モデル情報を受信すると直ちに、解析プログラム114は昼光シミュレーションを、解析プログラム116はエネルギシミュレーションを、解析プログラム118は風の影響のシミュレーションを実行する。その後、解析プログラム114、116、118は、それぞれ解析結果を自動的に出力する。
【0034】
管理/統括プログラムは、各解析プログラムから解析結果を、例えば解析結果のポーリングを行うことによって自動的に取得する(ステップ512)。解析結果は、別の機構、例えば解析プログラムコンピュータに関連した二次記憶装置から各解析結果のファイルを定期的に読み出すことによって取得されるようにしてもよい。
【0035】
各解析プログラムの解析結果の精度を高めるために、管理/統括プログラムは、1つ以上の解析プログラムからの解析結果を1つ以上の別の解析プログラムに転送する(ステップ514)。これらの解析結果は、建築モデル情報とは別に伝送し、或いは、管理/統括プログラムによって建築モデル情報を送信したときにこれと同時に送信することができる。例えば、建築エネルギ解析プログラムは、昼光解析プログラムから部屋における太陽の光の特性を入力として受信し、それによって、より正確な時間−変動モデリングを出力する。別の解析プログラムに転送する前に、1つ以上の解析プログラムからのデータフォーマットを別のフォーマットに変換する必要がある場合、管理/統括プログラムは、このフォーマット変換を自動的に実行する。このフォーマット変換は、例えば周知のフォーマット変換技術又はプラグインを用いて行うことができる。
【0036】
管理/統括プログラムは、選択された各解析プログラムからの解析結果を表示装置に表示する(ステップ516)。好ましい実施の形態において、各解析結果は、例えば図6の画面ショット602に示すような画面上の多数のボックス又はウィンドウに表示するように、同一の表示装置に同時に表示することができる。表示装置は、建築情報モデルを表示する表示装置と同一であってもよく、それとは別の表示装置であってもよい。これに代えて、他の各解析プログラムからの結果は、1つ以上の表示装置、例えばコンピュータに接続された多数のビデオ表示装置に表示するようにしてもよい。
【0037】
建築情報モデルを第1の表示装置に表示し、その解析結果を別の表示装置又は第1の表示装置のビデオ画面の別々の領域に表示することによって、ユーザは、建築情報モデルに対する設計変更が各解析結果に与える影響をリアルタイムで見ることができる。例えば、ユーザが新たな窓を建築情報モデルに追加した場合、データ処理システム100は、更新された昼光、エネルギ及び風の影響の結果を自動的に表示する。その結果、ユーザは、設計変更の全ての関連がある影響をリアルタイムで観察することができる。これは、ユーザの設計選択に影響を与え、ユーザは、設計を敏速に変更し、続いて自動的に表示された新たな解析結果をリアルタイムで見ることができる。これにより、設計サイクルを大幅に短縮することができ、解析を連続的に実行することにより、ユーザは、従来の考え方、すなわち、全ての解析の全体論的な見解を同時に観察できないまま、その後モデルが生成されていくという考え方よりも、正確な設計を提供することができる。
【0038】
ユーザは、更なる解析結果を必要としないと決定する場合、解析結果を受信することを停止するための入力信号を入力する(ステップ518)。そうでない場合には、プログラムの流れは、建築モデル情報のリアルタイムでの解析を続けるために、ステップ506に戻る。
【0039】
このように、本発明に係るデータ処理システムは、モデル情報を複数の解析プログラムに同時に送信し、解析プログラムの結果をリアルタイムで表示する管理/統括プログラムを提供する。更に、管理/統括プログラムは、各解析プログラム間で情報を伝達することができる。図7に示すように、これは、パラメトリック設計と性能設計との間のギャップを埋める。設計業者、施主及び/又は建設業者は、建築システムの全体論的な見解で作業し、変更し、それらの影響をリアルタイムで見ることができる。
【0040】
本発明の実施形態の前述の説明は、図解及び説明の目的で表されている。これは、全てを網羅しておらず、本発明は、開示された厳密なフォーマットに限定されない。修正及び変更は、上述の教示を考慮して可能であるか、又は、発明を実行することにより得られる。例えば、説明した実施形態は、ソフトウェアを含むが、この実施形態は、ハードウェアとソフトウェアとの併用又はハードウェア単独として実施されることも可能である。本発明は、オブジェクト指向及び非オブジェクト指向のプログラミングシステムで実施されることが可能である。本発明の範囲は、請求項及びそれらの均等物によって定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理/統括プログラム及び複数の解析プログラムを有するデータ処理システムにおいて、該管理/統括プログラムによって実行される解析方法において、
建築情報モデルを取得するステップと、
上記建築情報モデルの少なくとも一部の複製を、上記複数の解析プログラムのうちの少なくとも2つに出力するステップと、
上記少なくとも2つの解析プログラムが、それぞれの解析を互いに同時に実行し、該少なくとも2つの解析プログラムのそれぞれから、上記建築情報モデルの少なくとも一部の複製の解析に基づく解析結果を受信するステップと、
上記受信解析結果における上記建築情報モデルの変更にリアルタイムで応じた効果が同時に表示されるように、該受信解析結果のうちの少なくとも2つを同時に表示するステップとを有することを特徴とする解析方法。
【請求項2】
上記複数の解析プログラムのうちの1つから受信される解析結果の少なくとも一部を、該複数の解析プログラムのうちの異なる1つに出力するステップを更に有することを特徴とする請求項1記載の解析方法。
【請求項3】
上記解析結果の少なくとも一部を上記複数の解析プログラムのうちの異なる1つに出力する前に、該解析結果を別のフォーマットに変換するステップを更に有することを特徴とする請求項2記載の解析方法。
【請求項4】
上記建築情報モデルを、別のフォーマットに変換するステップを更に有することを特徴とする請求項1記載の解析方法。
【請求項5】
上記解析プログラムのそれぞれは、昼光、照明、エネルギ消費量、風の影響、人の流れの状態、プロジェクトのスケジュール及び建設の実行のうちの1つ以上の解析を実行することを特徴とする請求項1記載の解析方法。
【請求項6】
上記データ処理システムは、複数のコンピュータシステムを備え、
上記複数の解析プログラムの少なくとも1つは、上記管理/統括プログラムが存在するコンピュータシステムとは別のコンピュータシステムに存在することを特徴とする請求項1記載の解析方法。
【請求項7】
上記少なくとも2つの受信解析結果は、同時に同一の表示装置に表示されることを特徴とする請求項1記載の解析方法。
【請求項8】
管理/統括プログラム及び複数の解析プログラムを有するデータ処理システムにおいて、解析方法を実行させる該管理/統括プログラムの命令が記録されたコンピュータ読取り可能な記録媒体において、
上記解析方法は、
建築情報モデルを取得するステップと、
上記建築情報モデルの少なくとも一部の複製を、上記複数の解析プログラムのうちの少なくとも2つに出力するステップと、
上記少なくとも2つの解析プログラムが、それぞれの解析を互いに同時に実行し、該少なくとも2つの解析プログラムのそれぞれから、上記建築情報モデルの少なくとも一部の複製の解析に基づく解析結果を受信するステップと、
上記受信解析結果における上記建築情報モデルの変更にリアルタイムで応じた結果が同時に表示されるように、該受信解析結果のうちの少なくとも2つを同時に表示するステップとを有することを特徴するコンピュータ読取り可能な記録媒体。
【請求項9】
上記解析方法は、
上記複数の解析プログラムのうちの1つから受信される解析結果の少なくとも一部を、該複数の解析プログラムのうちの異なる1つに出力するステップを更に有することを特徴する請求項8記載のコンピュータ読取り可能な記録媒体。
【請求項10】
上記解析方法は、
上記解析結果の少なくとも一部を上記複数の解析プログラムのうちの異なる1つに出力する前に、該解析結果を別のフォーマットに変換するステップを更に有することを特徴する請求項9記載のコンピュータ読取り可能な記録媒体。
【請求項11】
上記解析方法は、
上記建築情報モデルを、別のフォーマットに変換するステップを更有することを特徴する請求項8記載のコンピュータ読取り可能な記録媒体。
【請求項12】
上記解析方法は、
上記解析プログラムのそれぞれは、昼光、照明、エネルギ消費量、風の影響、人の流れの状態、プロジェクトのスケジュール及び建設の実行のうちの1つ以上の解析を実行することを特徴する請求項8記載のコンピュータ読取り可能な記録媒体。
【請求項13】
上記データ処理システムは、複数のコンピュータシステムを備え、
上記複数の解析プログラムのうちの少なくとも1つは、上記管理/統括プログラムが存在するコンピュータシステムとは別のコンピュータシステムに存在することを特徴する請求項8記載のコンピュータ読取り可能な記録媒体。
【請求項14】
上記少なくとも2つの受信解析結果は、同時に同一の表示装置に表示されることを特徴する請求項8記載のコンピュータ読取り可能な記録媒体。
【請求項15】
管理/統括プログラムが記憶されたメモリと、
該メモリに記憶された管理者/統率者プログラムを実行する処理装置とを備え、
上記管理/統括プログラムは、
建築情報モデルを取得し、
上記建築情報モデルの少なくとも一部の複製を、複数の解析プログラムのうちの少なくとも2つに出力し、
上記少なくとも2つの解析プログラムが、それぞれの各解析を互いに同時に実行し、該少なくとも2つの解析プログラムのそれぞれから、上記建築情報モデルの少なくとも一部の複製の解析に基づく解析結果を受信し、
上記受信解析結果における上記建築情報モデルの変更にリアルタイムで応じて効果が同時に表示されるように、該受信解析結果のうちの少なくとも2つを同時に表示することを特徴とするデータ処理システム。
【請求項16】
建築情報モデルを取得する手段と、
上記建築情報モデルの少なくとも一部の複製を、複数の解析プログラムのうちの少なくとも2つに出力する手段と、
上記少なくとも2つの解析プログラムが、それぞれの解析を互いに同時に実行し、該少なくとも2つの解析プログラムのそれぞれから、上記建築情報モデルの少なくとも一部の複製の解析に基づく解析結果を受信する手段と、
上記受信解析結果における上記建築情報モデルの変更にリアルタイムで応じた結果が同時に表示されるように、該受信解析結果のうちの少なくとも2つを同時に表示する手段とを備えることを特徴とするデータ処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−527090(P2010−527090A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508496(P2010−508496)
【出願日】平成20年5月6日(2008.5.6)
【国際出願番号】PCT/US2008/062731
【国際公開番号】WO2008/140994
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(509311850)スキッドモア オーウィングス アンド メリル リミテッド ライアビリティ パートナーシップ (8)
【Fターム(参考)】