説明

デジタルRFメモリ装置

【課題】周波数変調可能なデジタルRFメモリ装置の小型化を図る。
【解決手段】受信IF信号を分配する分配手段1と、分配された2つの受信信号をデジタル回路で処理できる周波数までダウンコンバートするダウンコーバート手段と、ダウンコンバートされた2つの受信信号を第1および第2のデジタル信号に変換する第1および第2のA/D変換手段8、9と、変換された第1および第2のデジタル信号を蓄積するメモリ10と、前記メモリ10に蓄積された前記第1および第2のデジタル信号を周波数変調する変調波発生回路手段15と、該変調波発生回路手段により変調された第1および第2のデジタル信号をアナログ信号に変換する第1および第2のD/A変換手段18、19と、該第1および第2のD/A変換手段の出力を合成する合成手段24を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、A/D変換回路によりデジタル化された受信信号をメモリに蓄積し、蓄積された受信信号の再生時にはデジタル回路の段階で周波数変調を行うデジタルRFメモリ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4は、従来のデジタルRFメモリ装置の構成を示す図である。
特開2006−153700号公報(特許文献1)には、無線周波数の波形を記憶するDRFM(デジタルRFメモリ)を用いて精度よくレーダエコーを生成することができるレーダエコー生成装置が記載されている。
図4において、「LPF→A/D変換回路→メモリ→D/A変換回路」で構成される部分は、特開2006−153700号公報の図1に示されているDRFMの内部構成に相当するものであり、後述する本願の実施の形態の説明と対比し易いように、特開2006−153700号公報の図1を描き直したものである。
【0003】
図4に示した従来のデジタルRFメモリ装置において周波数変調を行う場合、受信IF信号を分配器1で2分配する。
なお、受信IF信号の周波数をf[Hz]、角速度をω[rad/s]とすると、ω=2πfの関係がある。
分配器1で分配された受信IF信号の一方は、第1の局部発振器2の出力にπ/2[rad]の位相差を設けた信号と第1のミキサ4で混合し、混合された信号から第1のミキサ4で発生する高調波を第1のLPF6で除去した後、第1のA/D変換回路8でデジタル化され、第1のデジタル化信号としてメモリ10に蓄積する。
また、分配器1で分配された受信IF信号の他方は、第1の局部発振器2の出力と第2のミキサ5で混合し、混合された信号から第2のミキサ5で発生する高調波を第2のLPF7で除去した後、第2のA/D変換回路9でデジタル化し、第2のデジタル化信号としてメモリ10に蓄積する。
【0004】
再生時には、メモリ10に蓄積された前記第1のデジタル化信号は、第1のD/A変換回路18に出力された後、第2の局部発振器20の出力にπ/2[rad]の位相差を設けた信号と第3のミキサ22で混合し、第3のミキサ22の出力を合成器24に入力する。
また、メモリ10に蓄積された前記第2のデジタル化信号は、第2のD/A変換回路19に出力された後、第2の局部発振器20の出力と第4のミキサ23で混合し、第4のミキサ23の出力を合成器24に入力する。
合成器24により再生された信号は、受信IF信号と同一周波数の信号であり、周波数変調を行う場合は、合成器24の後段に、マイクロ波回路で構成された変調回路25を設けている。
しかしながら、変調回路25をマイクロ波回路で構成すると、回路規模が大きくなり、実装上のデメリットが大きいという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−153700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、メモリに蓄積された信号の再生時には、蓄積された信号をD/A変換前のデジタル回路の段階で周波数変調することにより、マイクロ波回路で構成された回路規模の大きい変調回路の使用を不要とし、装置の小型化が可能なデジタルRFメモリ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係わるデジタルRFメモリ装置は、
受信IF信号を分配する分配手段と、分配された2つの受信信号をデジタル回路で処理できる周波数までダウンコンバートするダウンコーバート手段と、ダウンコンバートされた2つの受信信号を第1および第2のデジタル信号に変換する第1および第2のA/D変換手段と、変換された第1および第2のデジタル信号を蓄積するメモリと、前記メモリに蓄積された前記第1および第2のデジタル信号を周波数変調する変調波発生回路手段と、前記変調波発生回路手段により変調された前記第1および第2のデジタル信号をアナログ信号に変換する第1および第2のD/A変換手段と、前記第1および第2のD/A変換手段の出力を合成する合成手段を備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、デジタル信号に変換されてメモリに蓄積されている受信IF信号を再生する時には、D/A変換前のデジタル回路の段階で周波数変調することが可能であり、従来の「マイクロ波回路で構成された変調回路」を使用する必要はなくなり、装置の小型化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態1によるデジタルRFメモリ装置の構成を示す図である。
【図2】実施の形態2によるデジタルRFメモリ装置の構成を示す図である。
【図3】実施の形態3および実施の形態4によるデジタルRFメモリ装置の構成を示す図である。
【図4】従来のデジタルRFメモリ装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、デジタルRFメモリ装置の小型化を図るという目的を、メモリに蓄積された受信信号の再生時にデジタル回路の段階で周波数変調を行うことにより、回路規模が大きくなるマイクロ波回路で構成された変調回路を用いることなく実現したものである。
以下図面に基づいて、本発明の一実施の形態について説明する。
なお、各図間において、同一符号は、同一あるいは相当のものであることを表す。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1によるデジタルRFメモリ装置の構成を示す図である。
図に示すように、本実施の形態によるデジタルRFメモリ装置は、受信IF信号を分配する分配器1と、分配器1で分配された受信IF信号をデジタル回路で処理できる周波数までダウンコンバートするための第1のミキサ4および第2のミキサ5と、第1のミキサ4および第2のミキサ5用の局部発振信号を供給する第1の局部発振器2と、第1の局部発振器2の出力をπ/2の位相遅れを作成する第1の位相器3と、第1のミキサ4で発生する高調波を除去するための第1のLPF6および第2のミキサ5で発生する高調波を除去するための第2のLPF7と、第1のLPF6を通過後の信号“A1”をA/D変換するための第1のA/D変換回路8と、第2のLPF7を通過後の信号“B1”をA/D変換するための第2のA/D変換回路9と、第1のA/D変換回路8でA/D変換された第1のデジタル信号および第2のA/D変換回路9でA/D変換された第2のデジタル信号を蓄積するためのメモリ10を備えている。
なお、第1のLPF6の出力“A1”は、後述する下記の式(5)で表され、第2のLP7の出力“B1”は、後述する下記の式(8)で表される。
【0012】
また、本実施の形態によるデジタルRFメモリ装置は、メモリ10に蓄積された第1および第2のデジタル信号を用いて受信IF信号を再生する際に、メモリ10から出力される2つのデジタル信号を周波数変調するための2つの変調信号(即ち、“cosωt”および“−sinωt”)を発生する変調波発生回路15と、メモリ10から出力するデジタル信号と変調波発生回路15の出力を乗算する第1の乗算器11、第2の乗算器12、第3の乗算器13、第4の乗算器14を備えている。
【0013】
具体的には、第1の乗算器11は、メモリ10から出力する第1のデジタル信号と変調波発生回路15から出力する第1の変調信号“cosωt”を乗算し、後述する式(9)で表される信号“C1”を出力する。
第2の乗算器12は、メモリ10から出力する第1のデジタル信号と変調波発生回路15から出力する第2の変調信号“−sinωt”を乗算し、後述する式(10)で表される信号“D1”を出力する。
第3の乗算器13は、メモリ10から出力する第2のデジタル信号と変調波発生回路15から出力する第1の変調信号“cosωt”を乗算し、後述する式(11)で表される信号“E1”を出力する。
第4の乗算器14は、メモリ10から出力する第2のデジタル信号と変調波発生回路15から出力する第2の変調信号“−sinωt”を乗算し、後述する式(12)で表される信号“F1”を出力する。
【0014】
また、本実施の形態によるデジタルRFメモリ装置は、第1の乗算器11の出力“C1”と第4の乗算器14の出力“F1”を加算する第1の加算器16と、第2の乗算器12の出力“D1”と第3の乗算器13の出力“E1”を加算する第2の加算器17を備えている。
第1の加算器16は、後述する式(13)で表される信号“G1”を出力し、第2の加算器17は、後述する式(14)で表される信号“H1”を出力する。
また、本実施の形態によるデジタルRFメモリ装置は、第1の加算器16の出力信号“G1”をアナログ信号に変換する第1のD/A変換回路18と、第2の加算器17の出力信号“H1”をアナログ信号に変換する第2のD/A変換回路19を備えている。
【0015】
また、本実施の形態によるデジタルRFメモリ装置は、前述した第1の局部発振器2と同じ周波数の信号を出力する第2の局部発振器20と、第2の局部発振器20の出力をπ/2の位相遅れを作成する第2の位相器21と、第1のD/A変換回路18の出力と第2の位相器21の出力を混合する第3のミキサ22と、第2のD/A変換回路19の出力と第2の局部発振器20の出力を混合する第4のミキサ23と、第3のミキサ22の出力“I1”と第4のミキサ23の出力“J1”を合成する合成器24を備えている。
第3のミキサ22の出力“I1”は後述する式(15)で表され、第4のミキサ23の出力“J1”は後述する式(16)で表され、合成器24の出力“K1”は後述する式(17)で表される。なお、図1では、合成器24の出力は“K”と表示されている。
【0016】
実施の形態1によるデジタルRFメモリ装置では、メモリ蓄積時は、受信IF信号を分配器1と第1の局部発振器2と第1の位相器3と第1のミキサ4と第2のミキサ5により、「I成分」と「Q成分」に分け、それぞれ第1のA/D変換回路8および第2のA/D変換回路9でA/D変換された後、メモリ10に蓄積される。
なお、受信IF信号をI成分(同相成分)とQ成分(直交成分)に分けるのは、受信IF信号は位相情報を有しており、位相情報がデジタル信号処理で失われないようにするためである。
まず、メモリ10に「I成分」と「Q成分」を蓄積するまでの詳細を下記に示す。
受信IF信号は、下記の式(1)で表される。
受信IF信号:cosωt(角速度:ω)・・・・・式(1)
前述したように、受信IF信号の角速度をω[rad/s]、周波数をf[Hz]とすると、ω=2πfである。
また、第1の局部発振器2および第2の局部発振器20の出力は、下記の式(2)で表される。
局部発振器2、20の出力:cosωLt(角速度:ωL)・・・・・式(2)
ここで、局部発振器2から出力する信号の角速度をωL[rad/s]、周波数をfL[Hz]とすると、ωL=2πfLである。
なお、以下の各式においても、角速度ω[rad/s]=2πf(f:周波数[Hz])である。
【0017】
I成分については、分配器1の出力と第1の位相器3の出力の積が、第1のミキサ4の出力に現れ、I成分は式(3)で表される。
COSωt×COSωLt = 1/2×{COS(ω+ωL)t+COS(ω-ωL)t}・・・・・式(3)
角速度ω+ωL成分を除去する第1のLPF6通過後には角速度ω-ωL成分のみ現れ、式(4)で表される。
1/2×COS(ω-ωL)t・・・・・式(4)
ここで、ωd=ω-ωLとおけば、式(4)は式(5)のように表される。
A1:1/2×COSωdt・・・・・式(5)
即ち、第1のLPF6の出力A1は、“1/2×COSωdt”で表される。
【0018】
同様に、Q成分については、分配器1の出力と第1の局部発振器2の出力の積が第2のミキサ5の出力に現れ、Q成分は式(6)で表される。
COSωt×−SINωLt = −1/2×{SIN(ω+ωL)t−SIN(ω-ωL)t}・・・・・式(6)
角速度ω+ωL成分を除去する第2のLPF7通過後には角速度ω-ωL成分のみ現れ、式(7)で表される。
1/2×SIN(ω-ωL)t・・・・・式(7)
ここで、ωd=ω-ωLとおけば、式(7)は式(8)のように表される。
B1:1/2×SINωdt・・・・・式(8)
即ち、第2のLPF7の出力B1は、“1/2×SINωdt”で表される。
式(5)で表されるI成分、式(8)で表されるQ成分は、第1のA/D変換回路8、第2のA/D変換回路9でそれぞれデジタル化され、メモリ10に蓄積される。
【0019】
次に、再生時について、詳細な動作を説明する。
再生時には、メモリ10の出力と変調波発生回路15出力(-SINωmt、COSωmt)とを乗算器11〜14で乗算する。
即ち、前述したように、第1の乗算器11は、メモリ10から出力する第1のデジタル信号と変調波発生回路15から出力する第1の変調信号“cosωt”を乗算し、後述する式(9)で表される信号“C1”を出力する。
第2の乗算器12は、メモリ10から出力する第1のデジタル信号と変調波発生回路15から出力する第2の変調信号“−sinωt”を乗算し、後述する式(10)で表される信号“D1”を出力する。
第3の乗算器13は、メモリ10から出力する第2のデジタル信号と変調波発生回路15から出力する第1の変調信号“cosωt”を乗算し、後述する式(11)で表される信号“E1”を出力する。
第4の乗算器14は、メモリ10から出力する第2のデジタル信号と変調波発生回路15から出力する第2の変調信号“−sinωt”を乗算し、後述する式(12)で表される信号“F1”を出力する。
【0020】
第1の乗算器11〜第4の乗算器14の出力“C1”〜“F1”は、以下の式(9)〜式(12)で表される。
C1:1/2×COSωdt×COSωmt
= 1/4×{COS(ωd+ωm)t+COS(ωd-ωm)t}・・・・・式(9)
D1:1/2×COSωdt×−SINωmt
= −1/4×{SIN(ωd+ωm)t−SIN(ωd-ωm)t}・・・・・式(10)
E1:1/2×SINωdt×COSωmt
= 1/4×{SIN(ωd+ωm)t+SIN(ωd-ωm)t}・・・・・式は(11)
F1:1/2×SINωdt×−SINωmt
= 1/4×{COS(ωd+ωm)t−COS(ωd-ωm)t}・・・・・式(12)
【0021】
更に、第1の加算器16により出力“C1”と出力“F1”を加算、第2の加算器17により、出力“−D1”と出力“E1”を加算する。ここで、出力“D1”については極性を反転させている。
第1の加算器16の出力“G1”および第2の加算器17の出力“H1”は、以下の式(13)、式(14)で表される。
G1(=C1+F1):1/2×COS(ωd+ωm)t・・・・・式(13)
H1(=E1−D1):1/2×SIN(ωd+ωm)t・・・・・式(14)
式(13)、式(14)は、角速度ωdの信号が角速度ωmで変調された信号のI成分とQ成分であり、デジタル回路で周波数変調を行うことが出来ることを示している。
このあと、式(13)、式(14)で表される信号は、第1のD/A変換回路18および第2のD/A変換回路19により、アナログ信号に変換され、第3のミキサ22、第4のミキサ23、第2の局部発振器20、第2の位相器21および合成器24により、I成分とQ成分で復調される。
【0022】
第3のミキサ22の出力“I1”は、出力Gと第2の位相器21の出力の積、第4のミキサ23の出力“J1”は、出力“H1”と第2の局部発振器20の出力の積であり、式(15)および式(16)で表される。
I1:1/2×COS(ωd+ωm)t×COSωLt
= 1/4×{COS((ωd+ωm)+ωL)t+COS((ωd+ωm)-ωL)t}
= 1/4×{COS(ω+ωm)t+COS(ω+ωm-2ωL)t}・・・・・式(15)
J1:1/2×SIN(ωd+ωm)t×−SINωLt
= 1/4×{COS((ωd+ωm)+ωL)t−COS((ωd+ωm)-ωL)t}
= 1/4×{COS(ω+ωm)t−COS(ω+ωm-2ωL)t}・・・・・式(16)
【0023】
次に、合成器24で出力“I1”と出力“J1”は合成され、合成器24の出力“K1(図1ではKと表示)”は、式(17)で表される。
K1:1/4×{COS(ω+ωm)t+COS(ω+ωm-2ωL)}t+1/4×{COS(ω+ωm)t−
COS(ω+ωm-2ωL)t} = 1/2×COS(ω+ωm)t・・・・・式(17)
以上より、マイクロ波回路で構成された変調回路を用いずに、角速度ωmの変調信号で周波数変調された信号が得られる。
【0024】
以上説明したように、本実施の形態によるデジタルRFメモリ装置は、受信IF信号を分配する分配手段1と、分配された2つの受信信号をデジタル回路で処理できる周波数までダウンコンバートするダウンコーバート手段(局部発振器2、第1の位相器3、第1のミキサ4、第2のミキサ5など)と、ダウンコンバートされた2つの受信信号を第1および第2のデジタル信号に変換する第1および第2のA/D変換手段8、9と、変換された第1および第2のデジタル信号を蓄積するメモリ10と、前記メモリ10に蓄積された前記第1および第2のデジタル信号を周波数変調する変調波発生回路手段15と、前記変調波発生回路手段15により変調された前記第1および第2のデジタル信号をアナログ信号に変換する第1および第2のD/A変換手段18、19と、前記第1および第2のD/A変換手段18、19の出力を合成する合成手段24を備えている。
【0025】
更に詳しく述べれば、本実施の形態によるデジタルRFメモリ装置は、受信IF信号を第1の受信信号と第2の受信信号に分配する分配器1と、所定周波数の局部発振信号を出力する第1の局部発振器2と、第1の局部発振器2の出力をπ/2位相遅らせる第1の位相器3と、分配された第1の受信信号と第1の位相器3の出力を混合し、デジタル回路で処理できる周波数までダウンコンバートする第1のミキサ4と、分配された第2の受信信号と第1の局部発振器2の出力を混合し、デジタル回路で処理できる周波数までダウンコンバートする第2のミキサ5と、第1のミキサ4で発生する高調波成分を除去する第1のLPF6と、第2のミキサ5で発生する高調波成分を除去する第2のLPF7と、第1のLPF6の出力をデジタル信号に変換する第1のA/D変換回路8と、第2のLPF7の出力をデジタル信号に変換する第2のA/D変換回路9と、第1のA/D変換回路8の出力である第1のデジタル信号および第2のA/D変換回路9の出力である第2のデジタル信号を蓄積するメモリ10を備えている。
【0026】
更に、メモリ10に蓄積された第1および第2のデジタル信号を周波数変調するための第1および第2の変調信号を発生する変調波発生回路15と、メモリ10から出力する第1のデジタル信号と前記変調波発生回路15から出力する第1の変調信号を乗算する第1の乗算器11と、メモリ10から出力する第1のデジタル信号と変調波発生回路15から出力する第2の変調信号を乗算する第2の乗算器12と、メモリ10から出力する第2のデジタル信号と変調波発生回路15から出力する第1の変調信号を乗算する第3の乗算器13と、メモリ10から出力する第2のデジタル信号と変調波発生回路15から出力する第2の変調信号を乗算する第4の乗算器14と、第1の乗算器11の出力と第4の乗算器14の出力を加算する第1の加算器16と、第2の乗算器12の出力と前記第3の乗算器13の出力を加算する第2の加算器17と、第1の加算器16の出力をアナログ信号に変換する第1のD/A変換回路18と、第2の加算器17の出力をアナログ信号に変換する第2のD/A変換回路19と、第1の局部発振器2と同じ周波数の信号を出力する第2の局部発振器20と、第2の局部発振器20の出力をπ/2位相遅らせる第2の位相器21と、第1のD/A変換回路18の出力と前記第2の位相器21の出力を混合する第3のミキサ22と、第2のD/A変換回路19の出力と第2の局部発振器20の出力を混合する第4のミキサ23と、第3のミキサ22の出力と第4のミキサ23の出力を合成する合成器24とを備えている。
【0027】
従って、本実施の形態によれば、デジタル信号に変換されてメモリ10に蓄積されている受信IF信号を再生する時には、D/A変換前のデジタル回路の段階で周波数変調することが可能であり、従来のマイクロ波回路で構成された変調回路を使用する必要はなくなり、装置の小型化が図れる。
【0028】
実施の形態2.
図2は、実施の形態2によるデジタルRFメモリ装置の構成を示す図である。
前述した実施の形態1によるデジタルRFメモリ装置の構成(図1)と比較すると、本実施の形態では、第2の乗算器12、第4の乗算器14、第1の加算器16および第2の加算器17は用いずに、第1の乗算器11の出力“C1”のみが第1のD/A変換回路18へ入力され、第3の乗算器13の出力“E1”のみが第3のD/A変換回路19へ入力される構成となっている。
なお、第1の乗算器11の出力“C1”と第1のD/A変換回路18への入力“G2”は同じものであり、また、第3の乗算器13の出力“E1”と第3のD/A変換回路19への入力“H2”は同じものである。
【0029】
また、第1の局部発振器2と同じ周波数の信号を出力する第2の局部発振器20と、第2の局部発振器20の出力をπ/2の位相遅れを作成する第2の位相器21と、第1のD/A変換回路18の出力と第2の位相器21の出力を混合する第3のミキサ22と、第2のD/A変換回路19の出力と第2の局部発振器20の出力を混合する第4のミキサ23と、第3のミキサ22の出力“I2”と第4のミキサ23の出力“J2”を合成する合成器24を備えている。
これにより、合成器24の出力には受信IF信号の角速度ωを中心に変調角速度±ωmで周波数変調された信号が得られる。
【0030】
実施の形態2に係わるデジタルRFメモリ装置では、第1のD/A変換回路18への入力“G2”および第2のD/A変換回路19への入力“H2”は、以下の式(18)および式(19)で表される。
G2(=C1):1/4×{COS(ωd+ωm)t+COS(ωd-ωm)t}・・・・・式(18)
H2(=E1):1/4×{SIN(ωd+ωm)t+SIN(ωd-ωm)t}・・・・・式(19)
第3のミキサ22の出力“I2”は、第1のD/A変換回路18の出力と第2の位相器21の出力の積、第4のミキサ23の出力“J2”は、第2のD/A変換回路19の出力と第2の局部発振器20の出力の積であり、式(20)、式(21)で表される。
【0031】
I2:1/4×{COS(ωd+ωm)t+COS(ωd-ωm)t}×COSωLt
= 1/8×{COS(ω+ωm)t+COS(ω+ωm-2ωL)t+COS(ω-ωm)t
+COS(ω-ωm-2ωL)t}・・・・・式(20)
J2:1/4×{SIN(ωd+ωm)t+SIN(ωd-ωm)t}×−SINωLt
= 1/8×{COS(ω+ωm)t−COS(ω+ωm-2ωL)t+COS(ω-ωm)t
−COS(ω-ωm-2ωL)t}・・・・・式(21)
合成器24で出力“I2”と出力“J2”は合成され、合成器24の出力“K2”は、式(22)で表される。
K2:1/8×{COS(ω+ωm)t+COS(ω+ωm-2ωL)t+COS(ω-ωm)t
+COS(ω-ωm-2ωL)t+1/8×{COS(ω+ωm)t−COS(ω+ωm-2ωL)t
+COS(ω-ωm)t−COS(ω-ωm-2ωL)t}
= 1/4×{COS(ω+ωm)t+COS(ω-ωm)t}・・・・・式(22)
【0032】
なお、前述した実施の形態1では、第1の加算器16の出力“G1”および第2の加算器17の出力“H1”の変調角速度は、“+ωm”成分のみであり、“−ωm”成分はキャンセルしてあるのに対して、実施の形態2では、“−ωm”成分をキャンセルする演算を行わない。
従って、合成器24の出力には、式(22)に示したように、“+ωm”成分と“−ωm”成分の両方が現れる。
即ち、本実施の形態では変調角速度±ωmで周波数変調された信号が得られ、受信IF信号の角速度ωに対して、上下両側の周波数に同時に変調することが出来る。
従来のマイクロ波回路での変調では、時間的に上側(+ωm)変調回路、下側(−ωm)変調回路を切換えていたが、本発明により、同時に変調出来なかった問題が解決できる。
【0033】
以上説明したように、本実施の形態によるデジタルRFメモリ装置は、第2の乗算器12、第4の乗算器14、第1の加算器16および第2の加算器17は用いずに、第1のD/A変換回路18には第1の乗算器11の出力信号が直接入力され、第2のD/A変換回路19には第3の乗算器13の出力信号が直接入力される。
本実施の形態では、受信IF信号の周波数f(=ω/2π)に対して、上下両側の周波数に同時に変調することが出来る。
従来のマイクロ波回路での変調では、上側(+ωm)変調回路、下側(−ωm)変調回路を時分割して切換えていたが、本実施の形態では同時に2信号の幅(+ωm〜−ωm)の変調をかけることができる。
【0034】
実施の形態3.
図3は、実施の形態3によるデジタルRFメモリ装置の構成を示す図である。
実施の形態3に係わるデジタルRFメモリ装置は、実施の形態2で示した変調波発生回路15の出力信号(COSωmt)に対して、任意の振幅係数を設定することにより、合成器24から任意の振幅に振幅変調された再生信号を得ることが出来る。
本実施の形態では、受信IF信号レベルを下記の式(23)で表すこととする。
受信IF信号:R×cosωt(振幅:R、角速度:ω)・・・・・式(23)
なお、図において、“Am”は変調波発生回路15の出力(振幅)である。
また、“C3”は第1の乗算器11の出力、“E3”は第3の乗算器13の出力である。
【0035】
本実施の形態に係わるデジタルRFメモリ装置では、第1のD/A変換回路18および第2のD/A変換回路19の入力“G3”および“H3”は、以下の式(24)、式(25)で表される。
G3(=C3):R×Am×1/2×COS(ωd)t・・・・・式(24)
H3(=E3):R×Am×1/2×SIN(ωd)t・・・・・式(25)
第3のミキサ22および第4のミキサ23の出力“I3”および“J3”は、下記の式(26)、式(27)式となる。
I3:R×Am×1/2×COS(ωd)t×COSωLt・・・・・式(26)
J3:R×Am×1/2×SIN(ωd)t×−SINωLt・・・・・式(27)
【0036】
合成器24で出力“I3”と出力“J3”は合成され、合成器24の出力“K3”は式(28)で表される。
K3:R×Am×1/2×COS(ωd+ωL)t
= R×Am×1/2×COSωt・・・・・式(28)
これにより、受信IF信号レベルに対して、任意の振幅幅Amに変調された再生信号が得られる。
なお、本実施の形態では、変調波発生回路15で振幅変調を行っているが、メモリ10の出力に対して振幅変調を行っても、同様の効果を有する。
【0037】
以上説明したように、本実施の形態によるデジタルRFメモリ装置の変調波発生回路15は、メモリ10に蓄積された第1および第2のデジタル信号を周波数変調するための第1の変調信号のみを発生し、該第1の変調信号は任意の振幅に設定されている。
本実施の形態では、受信IF信号レベルとは無関係に、変調波発生回路で任意の振幅係数を発生させるので、任意の振幅に振幅変調された信号を得ることができる。
【0038】
実施の形態4.
実施の形態4に係わるデジタルRFメモリ装置の構成は、基本的には前述の実施の形態3によるデジタルRFメモリ装置の構成(図3)と同じであるが、変調波発生回路15の出力信号(COSωmt)を受信IF信号レベル(即ち、受信IF信号の振幅R)に反比例した振幅係数に設定する点が異なる。
本実施の形態では、実施の形態3で示した変調波発生回路15の出力信号(Am)に対して、受信IF信号のレベルに反比例した振幅係数に設定することにより、合成器24から出力レベルが一定の再生信号を得ることが出来る。
【0039】
図3を用いて、実施の形態4に係わるデジタルRFメモリ装置を説明する。
実施の形態4に係わるデジタルRFメモリ装置では、第1のD/A変換回路18への入力“G3”および第2のD/A変換回路19への入力“H3”は、以下の式(29)、式(30)式で表される。
G3(=C3):R×Am×1/2×COS(ωd)t・・・・・式(29)
H3(=E3):R×Am×1/2×SIN(ωd)t・・・・・式(30)
ここで、AmをKm/R(AmはRに反比例、Kmは定数)に設定すれば、式(29)、式(30)は、以下の式(31)、式(32)式となる。
G3(=C3):Km×1/2×COS(ωd)t・・・・・式(31)
H3(=E3):Km×1/2×SIN(ωd)t・・・・・式(32)
これにより、受信IF信号レベルに係わらず、合成器24から出力レベルが一定の再生信号が得られる。
【0040】
また、本実施の形態では、第3のミキサ22の出力“I3”および第4のミキサ23の出力“J3”は、以下の式(33)、式(34)となる。
I3:Km×1/2×COS(ωd)t×COSωLt・・・・・式(33)
J3:Km×1/2×SIN(ωd)t×−SINωLt・・・・・式(34)
合成器24で出力“I3”と出力“J3”は合成され、本実施の形態では、合成器24の出力“K3”は式(35)で表される。
K3:Km×1/2×COS(ωd+ωL)t
= Km×1/2×COSωt・・・・・式(35)
Kmは定数であるので、合成器24からは、受信IF信号レベルに係わらず、出力レベルが一定の再生信号(即ち、合成器24の出力“K3”)を得ることが出来る。
なお、実施の形態3あるいは実施の形態4では、変調波発生回路15で振幅変調を行っているが、メモリ出力で振幅変調を行っても、同様の効果を有する。
【0041】
以上説明したように、本実施の形態によるデジタルRFメモリ装置の変調波発生回路15は、メモリ10に蓄積された第1および第2のデジタル信号を周波数変調するための第1の変調信号のみを発生し、第1の変調信号は受信IF信号レベルに反比例した振幅に設定されている。
本実施の形態では、受信IF信号レベルと反比例した振幅の変調信号を発生させることで、乗算後には一定振幅となり、出力レベルが一定の再生信号を得ることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0042】
この発明は、マイクロ波回路で構成された変調回路を用いる必要はなく装置の小型化が可能なデジタルRFメモリ装置の実現に有用である。
【符号の説明】
【0043】
1 分配器 2、20 局部発振器
3、21 位相器 4、5、22、23 ミキサ
6、7 LPF 8、9 A/D変換回路
10 メモリ 11、12、13、14 乗算器
15 変調波発生回路 16、17 加算器
18、19 D/A変換回路 24 合成器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信IF信号を分配する分配手段と、分配された2つの受信信号をデジタル回路で処理できる周波数までダウンコンバートするダウンコーバート手段と、ダウンコンバートされた2つの受信信号を第1および第2のデジタル信号に変換する第1および第2のA/D変換手段と、変換された第1および第2のデジタル信号を蓄積するメモリと、前記メモリに蓄積された前記第1および第2のデジタル信号を周波数変調する変調波発生回路手段と、前記変調波発生回路手段により変調された前記第1および第2のデジタル信号をアナログ信号に変換する第1および第2のD/A変換手段と、前記第1および第2のD/A変換手段の出力を合成する合成手段を備えたことを特徴とするデジタルRFメモリ装置。
【請求項2】
受信IF信号を第1の受信信号と第2の受信信号に分配する分配器と、所定周波数の局部発振信号を出力する第1の局部発振器と、前記第1の局部発振器の出力をπ/2位相遅らせる第1の位相器と、分配された前記第1の受信信号と前記第1の位相器の出力を混合し、デジタル回路で処理できる周波数までダウンコンバートする第1のミキサと、分配された前記第2の受信信号と前記第1の局部発振器の出力を混合し、デジタル回路で処理できる周波数までダウンコンバートする第2のミキサと、前記第1のミキサで発生する高調波成分を除去する第1のLPFと、前記第2のミキサで発生する高調波成分を除去する第2のLPFと、前記第1のLPFの出力をデジタル信号に変換する第1のA/D変換回路と、前記第2のLPFの出力をデジタル信号に変換する第2のA/D変換回路と、前記第1のA/D変換回路の出力である第1のデジタル信号および前記第2のA/D変換回路9の出力である第2のデジタル信号を蓄積するメモリと、前記メモリに蓄積された第1および第2のデジタル信号を周波数変調するための第1および第2の変調信号を発生する変調波発生回路と、前記メモリから出力する第1のデジタル信号と前記変調波発生回路から出力する第1の変調信号を乗算する第1の乗算器と、前記メモリから出力する第1のデジタル信号と変調波発生回路から出力する第2の変調信号を乗算する第2の乗算器と、前記メモリから出力する第2のデジタル信号と前記変調波発生回路から出力する第1の変調信号を乗算する第3の乗算器と、前記メモリから出力する第2のデジタル信号と前記変調波発生回路から出力する第2の変調信号を乗算する第4の乗算器と、前記第1の乗算器の出力と前記第4の乗算器の出力を加算する第1の加算器と、前記第2の乗算器の出力と前記第3の乗算器の出力を加算する第2の加算器と、前記第1の加算器の出力をアナログ信号に変換する第1のD/A変換回路と、前記第2の加算器の出力をアナログ信号に変換する第2のD/A変換回路と、前記第1の局部発振器と同じ周波数の信号を出力する第2の局部発振器と、前記第2の局部発振器の出力をπ/2位相遅らせる第2の位相器と、前記第1のD/A変換回路の出力と前記第2の位相器の出力を混合する第3のミキサと、前記第2のD/A変換回路の出力と前記第2の局部発振器の出力を混合する第4のミキサと、前記第3のミキサの出力と前記第4のミキの出力を合成する合成器とを備えていることを特徴とするデジタルRFメモリ装置。
【請求項3】
前記第2の乗算器、前記第4の乗算器、前記第1の加算器および前記第2の加算器は用いずに、前記第1のD/A変換回路には前記第1の乗算器の出力信号が直接入力され、前記第2のD/A変換回路には前記第3の乗算器の出力信号が直接入力されることを特徴とする請求項2に記載のデジタルRFメモリ装置。
【請求項4】
前記変調波発生回路は、前記メモリに蓄積された前記第1および第2のデジタル信号を周波数変調するための第1の変調信号のみを発生し、該第1の変調信号は任意の振幅に設定されていることを特徴とする請求項3に記載のデジタルRFメモリ装置。
【請求項5】
前記変調波発生回路は、前記メモリに蓄積された前記第1および第2のデジタル信号を周波数変調するための第1の変調信号のみを発生し、前記第1の変調信号は受信IF信号
レベルに反比例した振幅に設定されていることを特徴とする請求項3に記載のデジタルRFメモリ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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