デッキクロスメンバの締結ブラケット
【課題】締結ナットを含む接面板と本体板とを結ぶ変形板が弾性変形又は塑性変形しながら、締結ブラケットと取付部位との隙間や締結ナットとボルト孔との位置ズレをなくすステアリング支持フレームを提供する。
【解決手段】デッキクロスメンバ3の左右両端を車体フレーム4の取付部位に対して締結する締結ブラケット2において、デッキクロスメンバ3の端部を接続する本体板21に対し、締結ナットを固着した接面板22を、前記本体板21と接面板22との接続方向に直交する幅が接面板22以下である接続板23を介して接続し、前記接続板23を除く本体板21と接面板22との間に区画スリット24を形成する。
【解決手段】デッキクロスメンバ3の左右両端を車体フレーム4の取付部位に対して締結する締結ブラケット2において、デッキクロスメンバ3の端部を接続する本体板21に対し、締結ナットを固着した接面板22を、前記本体板21と接面板22との接続方向に直交する幅が接面板22以下である接続板23を介して接続し、前記接続板23を除く本体板21と接面板22との間に区画スリット24を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右両端に取り付けた締結ブラケットを車体フレームの取付部位に締結することにより左右の車体フレームにわたって架設され、ステアリング支持フレームを構成するデッキクロスメンバの締結ブラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
ステアリング支持フレームは、左右の車体フレームに架け渡されたデッキクロスメンバにより構成される。デッキクロスメンバは、左右両端に取り付けた締結ブラケットを、車体フレームの取付部位に対してボルト止めされる。このとき、締結ブラケットが取付部位にきっちりと接面すれば問題ない。しかし、どうしても締結ブラケットと取付部位との隙間や締結ナットとボルト孔との位置ズレをなくすことができず、そのまま締結ブラケットを取付部位にボルト止めすると、締結ブラケットが変形してしまい、強度(機械的強度)を低下させてしまう問題がある。締結ブラケットと取付部位との隙間は、スペーサを介装して解消する対策で解消できるが、部品点数や工程数が増える問題が発生する。そこで、特許文献1や特許文献2に見られる締結ブラケットが提案されるに至っている。
【0003】
特許文献1は、デッキクロスメンバ(フレーム)の左右両端に取り付けられる締結ブラケット(円筒状フランジ部)の強度に相対差を設けることにより、強度の強い取付ブラケットを車体フレーム(ピラー)に接面させてボルト止めし、強度の弱い締結ブラケットを車体フレームにボルト止めする際に変形させて、取付部位との隙間を吸収している(特許文献1[0006]〜[0009])。取付ブラケットの強度に相対差を形成する手段として、弾性変形又は塑性変形する変形予定部分を設ける(特許文献1[0015]〜[0017])。具体的な変形予定部分は、例えばデッキクロスメンバを接続するボス(ボス部6)と締結ナット(ナット8)との間に形成した横断溝(溝部5a)や横断孔(長孔5b)を開示している(特許文献1[0033])。
【0004】
特許文献2は、デッキクロスメンバ(ステアリングメンバ)の左右両端に取り付けられる締結ブラケット(取付け円筒状フランジ)における締結ナット(プロジェクトナット)を囲むように寸法調整接続板を形成することにより、前記寸法調整接続板その他の部位(一般部位)に対して車体フレーム(車体側)に向けて変形させ、締結ブラケットと取付部位との隙間を解消(ステアリングメンバの車幅方向長さ寸法を調整可能にする)している(特許文献2[0011])。具体的な寸法調整接続板として、締結ナット(明細書では「プロジェクションボルト8」と表示されているが、「プロジェクションナット11」の誤記と思われる)の近傍を囲繞するように設けられた長孔(長孔20a)から構成される例を挙げている(特許文献2[0015])
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3778762号公報
【特許文献2】特開2006-199050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2記載における変形予定部分又は寸法調整接続板を形成した締結ブラケットは、スペーサを介装せずに済むことから、スペーサを利用することの問題点を解決する点で優れている。しかし、締結ナットとボルト孔とが位置ズレしていると変形予定部分又は寸法調整接続板をこじてしまい、前記変形予定部分又は寸法調整接続板の弾性変形又は塑性変形が十分に発揮できなくなり、締結ブラケットと取付部位との隙間が解消できなくなる問題を生ずる。更に、締結ナットに捩じ込むボルトが傾き、締結ナットの雌ネジを齧ることによる締結トルクロスが発生したり、ボルトの締結強度が十分に確保できず、走行振動等によりボルトが緩む虞が発生する。そこで、締結ナットを含む一部が弾性変形又は塑性変形しながら、締結ブラケットと取付部位との隙間や締結ナットとボルト孔との位置ズレをなくすことのできる締結ブラケットを開発するため、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
検討の結果、開発したものが、デッキクロスメンバの左右両端を車体フレームの取付部位に対して締結する締結ブラケットにおいて、デッキクロスメンバの端部を接続する本体板に対し、締結ナットを固着した接面板を、前記本体板と接面板との接続方向に直交する幅が接面板以下である接続板を介して接続し、前記接続板を除く本体板と接面板との間に区画スリットを形成したデッキクロスメンバの締結ブラケットである。本発明の締結ブラケットは、接面板が取付部位に接近離反する方向に接続板が弾性変形又は塑性変形して接面板と取付部位との隙間をなくす。このとき、接続板が本体板と接面板との接続方向に直交する幅を接面板以下としていることにより、取付部位と平行な面方向に曲がる接続板の弾性変形又は塑性変形が許容され、接面板に固着した締結ナットとボルト孔との位置ズレもなくす。
【0008】
接続板は、取付部と平行な面方向に曲がる弾性変形又は塑性変形が許容するように、本体板と接面板との接続方向に直交する幅を接面板以下にしていれば接面板に対してどの方向に設けてもよいが、接面板を挟んでデッキクロスメンバの端部を接続する本体板の接続部位と反対側に設けられることが好ましい。この場合、区画スリットは、接面板を囲むように、デッキクロスメンバの端部を接続する本体板の接続部位と接面板との間と本体板と接面板との接続方向に平行な接面板の横にわたって設けられる。例えば接面板が正面視正方形であり、デッキクロスメンバの端部を接続する本体板の接続部位より上方に割り当てられていると、接続板は接面板の上辺を上方に延長して本体板と繋がる構成で、区画スリットは左辺、下辺及び右辺に連続する正面視コ字状となる。
【0009】
具体的な接続板として、(1)変形スリットを設けた中間板と、前記中間板より幅が狭く、本体板及び接面板と中間板と繋ぐ一対の架橋板とから構成される例を挙げることができる。本体板及び接面板と中間板と繋ぐ架橋板は、区画スリットを延長して周りを囲むことにより形成するとよい。(1)中間板を一対の架橋板に挟んで構成される接続板は、前記中間板を弾性変形又は塑性変形させることにより、接面板と取付部位との隙間をなくしたり、接面板に固着した締結ナットとボルト孔との位置ズレをなくす。
【0010】
また、具体的な接続板として、(2)幅方向に一様で、厚み方向に屈曲した架橋板から構成される例を挙げることができる。前記架橋板は、一端が本体板に、他端が接面板に繋がれる。接続板を構成する架橋板は、接面板と同幅の1体だけでもよいし、接面板より狭い幅の架橋板を複数体設けてもよい。(2)幅方向に一様で、厚み方向に屈曲した架橋板から構成される接続板は、架橋板の屈曲を増減させて接面板と取付部位との隙間をなくし、前記屈曲を伸縮させたり、幅方向で屈曲の増減又は伸縮を異ならせたりすることで曲がり、接面板に固着した締結ナットとボルト孔との位置ズレもなくす。
【0011】
そして、具体的な接続板として、(3)本体板に設けた本体スリットと区画スリットに挟まれて形成される変形梁と、前記変形梁から延びて接面板に繋がれる架橋板とから構成される例を挙げることができる。本体スリットは、接続板による本体板及び接続板の接続方向に直交し、架橋板の幅より長く、接続板を囲む区画スリットの最大外形幅より短く設けるとよい。これにより、変形梁は架橋板より長く、また接続板を囲む区画スリットの最大外形幅より短くなり、本体板の強度の低下を抑えながら、変形梁が十分に弾性変形又は塑性変形できるようになる。こうして、(3)変形梁と架橋板とから構成される接続板は、前記変形梁を弾性変形又は塑性変形させることにより、接面板と取付部位との隙間をなくしたり、接面板に固着した締結ナットとボルト孔との位置ズレをなくす。
【0012】
このように、本発明の締結ブラケットは、接続板を構成する架橋板、一対の架橋板に挟まれた中間板又は架橋板が延びる弾性梁を弾性変形又は塑性変形させることにより、接面板と取付部位との隙間をなくしたり、接面板に固着した締結ナットとボルト孔との位置ズレをなくす。このとき、取付部位に対して接面板が平行状態を保ったまま接近し、締結ナットとボルト孔とを一致させやすくするため、接面板は、車体フレームの取付部位に設けられたボルト孔に嵌まり込むカラーを設けるとよい。カラーは、ボルト孔から締結ナットに捩じ込むボルトの案内部材としても働く。
【0013】
カラーは、取付部位におけるボルト孔に対する接面板の位置関係を特定する部材であるから、ボルト孔に嵌まり込むことさえできれば突起又は円弧状フランジとしてもよいが、ボルト孔に対するどの方向にも位置ズレなく接面板の位置関係を特定する観点から、円筒状フランジとして構成することが望ましい。この場合、具体的なカラーは、(a)締結ナットのネジ孔に連通する接面板の貫通孔を設けるバーリング加工による円筒状フランジ、(b)締結ナットのネジ孔に連通する接面板の貫通孔に嵌合する、ブッシュに設けられた円筒状フランジ、又は(c)締結ナットのネジ孔に連通する接面板の貫通孔から突出する、締結ナットに設けられた円筒状フランジとして構成できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によるデッキクロスメンバの締結ブラケットは、締結ナットを固着した接面板を本体板に繋ぐ接続板が弾性変形又は塑性変形し、接面板と取付部位との隙間や締結ナットとボルト孔との位置ズレをなくすことができる。これは、前記接続板が、従来同種の締結ブラケットと同様に、接面板が取付部位に接近離反する方向に弾性変形又は塑性変形するほか、取付部位と平行な面方向に曲がる弾性変形又は塑性変形することの効果である。また、接続板は、本体板及び接面板に対して弾性変形又は塑性変形しやすく、本体板及び接面板が弾性変形又は塑性変形することを防止できるようになるため、前記本体板及び接面板に残留応力が発生しにくい利点も得られる。
【0015】
カラーは、取付部位に対して接面板が平行状態を保ったまま接近し、締結ナットとボルト孔とを一致させやすくする働きと、前記働きにより、上述のように接続板のみを集中して弾性変形又は塑性変形させる働きのほか、更に締結ブラケットを車体フレームに締結する際に、ボルト孔から締結ナットに捩じ込むボルトを案内する働きを有する。これらは、上述した効果を得やすくする働きであり、また締結ナットに捩じ込むボルトが傾くことを防止して、締結ナットがボルトに齧られる虞をなくし、更にはボルトを捩じ込む際の締結トルクロスを抑えて、組み立て作業を促進させる効果をもたらす。そして、車両フレームの取付部位に接面板をきっちりと接面させてボルトを締結ナットに締め込むことができることにより、ボルトの締結強度も十分確保できて、走行振動等によりボルトが緩む虞が発生しなくなる効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の締結ブラケットを用いて構成されたステアリング支持フレームを後方から見た斜視図である。
【図2】助手席側の締結ブラケットを左方向から見た斜視図である。
【図3】助手席側の締結ブラケットを右方向から見た斜視図である。
【図4】助手席側の締結ブラケットとデッキクロスメンバの助手席側端部との接合関係を表す正面図である。
【図5】運転席側の締結ブラケットとデッキクロスメンバの運転席側端部との接合関係を表す正面図である。
【図6】助手席側の締結ブラケットの接面板が接続板の塑性変形により変位した状態を表した図4相当正面図である。
【図7】運転席側の締結ブラケットを車体フレームに接続し終えた状態を表す縦断面図である。
【図8】助手席側の締結ブラケットを車体フレームに宛てがった状態を表す縦断面図である。
【図9】助手席側の締結ブラケットを車体フレームに接続し終えた状態を表す縦断面図である。
【図10】接面板にバーリング加工によるカラーを設けた締結ブラケットの図2相当斜視図である。
【図11】接面板にバーリング加工によるカラーを設けた締結ブラケットを車体フレームに宛てがった状態を表す図8相当縦断面図である。
【図12】接面板にバーリング加工によるカラーを設けた締結ブラケットを車体フレームに接続し終えた状態を表す図9相当縦断面図である。
【図13】ブッシュに設けたカラーを接面板の貫通孔から突出させた締結ブラケットの図2相当斜視図である。
【図14】ブッシュに設けたカラーを接面板の貫通孔から突出させた締結ブラケットを車体フレームに接続し終えた状態を表す図9相当縦断面図である。
【図15】ブッシュに設けたカラーを接面板の貫通孔から突出させた締結ブラケットを車体フレームに接続し終えた状態を表す図9相当縦断面図である。
【図16】締結ナットに設けたカラーを接面板の貫通孔から突出させた締結ブラケットの図2相当斜視図である。
【図17】締結ナットに設けたカラーを接面板の貫通孔から突出させた締結ブラケットを車体フレームに接続し終えた状態を表す図9相当縦断面図である。
【図18】締結ナットに設けたカラーを接面板の貫通孔から突出させた締結ブラケットを車体フレームに接続し終えた状態を表す図9相当縦断面図である。
【図19】本体スリットにより形成された変形梁から架橋板が延びる接続板を構成した締結ブラケットの図3相当斜視図である。
【図20】接面板と同幅かつ屈曲断面の架橋板から接続板を構成した締結ブラケットの図3相当斜視図である。
【図21】左右一対かつ屈曲断面の架橋板から接続板を構成した締結ブラケットの図3相当斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。本発明の締結ブラケット2は、例えば図1に見られるように、デッキクロスメンバ3の運転席側端部31及び助手席側端部32それぞれに溶接により接合され、ステアリング支持フレーム1を構成する。本例のデッキクロスメンバ3は、基本的に断面円形の金属製直管であるが、運転席側が大径、助手席側が小径とした両端異形管であり、大径である運転席側に中間ステー11、コラムブラケット12が取り付けられている。運転席側及び助手席側の締結ブラケット2は、全く同じ仕様である(つまり、左右共通)が、デッキクロスメンバ3が両端異形管であるため、後述するように、各締結ブラケット2に対する運転席側端部31及び助手席側端部32の接合関係が異なる。
【0018】
本例の締結ブラケット2は、図2〜図5に見られるように、例えばデッキクロスメンバ3の助手席側端部32を接続する本体板21に対し、締結ナット221を固着した接面板22を、前記本体板21と接面板22との接続方向(本例は上下方向)に直交する幅(本例は左右方向の幅)が接面板22以下である接続板23を介して接続し、前記接続板23を除く本体板21と接面板22との間に区画スリット24を形成している。本例の締結ブラケット2は、左右共通の部材であり、運転席側及び助手席側それぞれに鏡面対称の関係(互いが正面を向く関係)でデッキクロスメンバ3の左右両端に接合される。
【0019】
本体板21は、周縁を正面方向(図2及び中右方向、図4及び図5中図面手前方向)に折り曲げて環状フランジを形成し、全体として剛性を高めた正面視長方形外形の板材で、前記環状フランジに囲まれた平面の範囲で、上下対称に一対の接面板22を設けている。本体板21は、接続板23が弾性変形又は塑性変形する際の基部になる部材で、助手席側の車体フレーム4に接面板22を締結した段階で前記車対フレーム4に対して隙間を残して宙に浮いた状態になる(図9参照)ことから、前記接続板23に対して変形せず、平面が形状を保つ程度の剛性が求められる。このため、本体板21は、本例のように周縁に環状フランジを設けたり、前記環状フランジと別に又は併せて平面内にビードを形成して断面係数を大きくしたりして、剛性を高める。
【0020】
接面板22は、接続板23を構成する中間板231から延びる架橋板233を除いた周囲が区画スリット24に囲まれた正面視正方形状の板材である。本例の本体板21、接面板22及び接続板23(中間板231及び一対の架橋板233)は、連続した一枚の板材から構成されているので、例えばプレス加工に際して区画スリット24及び中間スリット232を打ち抜くことによりそれぞれを一度に形成する。このため、接続板23が弾性変形又は塑性変形しない段階では、本体板21、接面板22及び接続板23が同一平面上に揃っている。接面板22の正面視形状は自由であるが、車体フレーム4に安定して接面するだけの大きさを有することが望まれる。
【0021】
本例の接面板22は、ボルト43の締め付けにより接続板23を弾性変形又は塑性変形させ、車体フレーム4に接面させる(図9参照)際、前記ボルト43の締め付けによる負荷が接続板23に近い位置で加わるように、中心から前記架橋板233に寄った位置に貫通孔222を設け、前記貫通孔222に連通して正面側に締結ナット221を溶接により固着している。貫通孔222を架橋板233に寄った位置に設けた理由は、ボルト43の締め付けによる負荷が接続板23の弾性変形又は組成変形を導きやすくし、対して接続板23が弾性変形又は組成変形しないために接面板22が座屈することを防止するためである。接面板22の座屈を防止するため、接面板22にビードを設けて剛性を高めてもよい。
【0022】
接続板23は、接面板22の左右方向に延びる辺に平行な長孔状の変形スリット232を相似に囲む中間板231と、本体板21及び接面板22とを、接面板22の左右方向の幅より狭く、区画スリット24の両端に挟まれて括れた一対の架橋板233,233により繋いで構成される。本例の接続板23は、後述するように、同じ締結ブラケット2を用いながらデッキクロスメンバ3の運転席側端部31又は助手席側端部32の接合態様を変え、接面板22の拘束(運転席側端部31)及び非拘束(助手席側端部32)を分けるため、接面板22を挟んでデッキクロスメンバ3の運転席側端部31又は助手席側端部32を接続する本体板21の中心から反対側に設けられている。
【0023】
これにより、助手席側の締結ブラケット2は、図4に見られるように、デッキクロスメンバ3の助手席側端部32が本体板21にのみ接合され、接面板22が車体フレーム4の取付部位に接近離反する方向に架橋板233又は中間板231が弾性変形又は塑性変形して接面板22と前記取付部位との隙間をなくしたり、後述するように、前記取付部位と平行な面方向に架橋板233又は中間板231が弾性変形又は塑性変形して、接面板22に固着した締結ナット221とボルト孔41との位置ズレをなくすことができる。これは、助手席側端部32の強度が、本体板21の剛性にのみ頼っていることを意味する。
【0024】
これに対し、運転席側の締結ブラケット2は、図5に見られるように、デッキクロスメンバ3の運転手側端部31が本体板21及び接面板22にわたって接合され、上述のような接続板22の弾性変形又は塑性変形が規制され、接面板22が車体フレーム4の取付部位に接近したり、前記取付部位と平行な面方向に変位したりしない。これは、運転席側端部31の強度は、本体板21の剛性のみならず、運転席側端部31を介して結合される本体板21及び接面板22を連結し、互いが相手の変形を抑制することにより向上していることを意味する。こうして、左右共通の締結ブラケット2を用いながら、運転席側の締結ブラケット2の強度を、助手席側の締結ブラケット2の強度に比べて相対的に高くできる。
【0025】
本例の締結ブラケット2は、既述したように、接続板23が弾性変形又は塑性変形することにより、車体フレーム4の取付部位との隙間をなくしたり、締結ナット221とボルト孔41との位置ズレをなくす。従来同種のブラケットも、車体フレーム4の取付部位との隙間をなくすことができたが、本発明の締結ブラケット2は、前記取付部位と平行な面方向に接続板23が弾性変形又は塑性変形して、締結ナット221とボルト孔41との位置ズレをなくすことができる点に特徴を有する。具体的には、図6に見られるように、接続板23は、変形スリット232を広げたり(図6中上の接続板23参照)、潰したりして中間板231を変形させ、接面板22を上下方向に変位させ、また一対の架橋板233の一方又は双方を曲げて(図6中下の接続板23参照)、接面板22を左右方向に変位させることにより、締結ナット221とボルト孔41との位置ズレをなくす。
【0026】
ステアリング支持フレーム1は、図7に見られるように、車体フレーム4の運転席側では、締結ブラケット2の本体板21、接面板22及び接続板23をすべて取付部位(車体フレーム4を構成する部材の内壁面)に接面させ、圧潰防止のために介装したスペーサ42を通してボルト孔41から左方向に突出させたボルト43を締結ナット221に捩じ込んで、接合する。これから理解されるように、運転席側の締結ブラケット2には弾性変形又は塑性変形する接続板23は不要であり、区画スリット24や接続板23を設けたことが強度低下をもたらしている。そこで、本例は、締結ブラケット2を左右共通に使用しながら、デッキクロスメンバ3の運転席側端部31を本体板21及び接面板22に跨がって溶接することにより、前記区画スリット24や接続板23を設けたことによる強度の低下を防止し、相対的に助手席側の締結ブラケット2との強度差を実現している。
【0027】
車体フレーム4の取付部位に対する位置ズレは、専ら車体フレーム4の助手席側で調整される。車体フレーム4の運転席側の接合を終えたステアリング支持フレーム1は、図8に見られるように、車体フレーム4の助手席側の取付部位に対し、締結ブラケット2の本体板21、接面板22及び接続板23を同一平面上に揃えた状態で、上下の接面板22それぞれに設けられた各貫通孔222に、スペーサ42を通してボルト孔41から右方向に突出させたボルト43を締結ナット221に螺合させる。この段階で、締結ナット221とボルト孔41とに大きな位置ズレがあれば、接続板23が中間板231を変形させたり、架橋板233を取付部位と平行な面方向に曲げたりして(図6参照)前記位置ズレを解消する。また、締結ナット221とボルト孔41との位置ズレが小さければ、ボルト43を締結ナット221に捩じ込んでいく過程で、接続板23が中間板231を変形させたり、架橋板233を取付部位と平行な面方向に曲げたりして(図6参照)前記位置ズレを解消する。
【0028】
締結ナット221に螺合させたボルト43を捩じ込んでいくと、図9に見られるように、ボルト43は車体フレーム4に頭の移動が規制されているため、相対的に締結ナット221が車体フレーム4に接近するように移動し始め、接面板22を車体フレーム4の取付部位に押し付けることになる。このとき、接面板22は、接続板23の中間板231を変形させたり、架橋板233を接面板22が取付部位に接近離反する方向に曲げたりしながら、取付部位に接近する。このように、取付部位に対する接面板22の接近は、接続板23の弾性変形又は塑性変形による。本体板21は、デッキクロスメンバ3の助手席側端部32が接続されているため、接続板23の弾性変形又は塑性変形の影響を受けることなく、取付部位に対して隙間を残して離れたままになる。この結果、助手席側の締結ブラケット2の強度は、運転席側の締結ブラケット2に比べて相対的に弱くなる。
【0029】
既述したように、ボルト43を締結ナット221に螺合させた段階で、締結ナット221とボルト孔41とに位置ズレがあっても、接続板23が中間板231を変形させたり、架橋板233を取付部位と平行な面方向に曲げたりして前記位置ズレを解消させるが、締結ナット2に捩じ込むボルト43が傾く虞がある。そこで、図10〜図18に見られるように、車体フレーム4の取付部位に設けられたボルト孔41に嵌まり込むカラー223,225,227を接面板22に設けるとよい。これにより、カラー223,225,227が先行してボルト孔41(正確にはボルト孔41に連通するスペーサ42)に嵌まり込み、取付部位に対して接面板22が平行状態を保ったまま接近し、かつ締結ナット221とボルト孔41とを一致させやすくなる。
【0030】
カラー223は、例えば図10に見られるように、締結ナット221のネジ孔(雌ネジ)に連通する接面板22の貫通孔222を設けるバーリング加工による円筒状フランジにより形成する。バーリング加工は、貫通孔222及びカラー223を同時に形成できる利点がある。本例のカラー223は、先端縁外周を面取りし、ボルト孔41に嵌まり込みやすくしている。カラー223を設けた締結ブラケット2は、取付部位のボルト孔41から突出させたボルト43を締結ナット221に螺合させとき、図11に見られるように、カラー223をボルト孔41に対向させている。そして、ボルト43を締結ナット221に捩じ込んでいくと、カラー223がボルト孔41に嵌まり込んで取付部位に対する接面板22の姿勢や接近方向を規制し、図12に見られるように、接面板22を取付部位に押し付ける。
【0031】
バーリング加工によるカラー223に代えて、図13に見られるように、ブッシュ224に設けられた円筒状フランジをカラー225として用い、締結ナット221のネジ孔(雌ネジ)に連通する接面板22の貫通孔222に前記カラー225を嵌合させ、接面板22から突出させてもよい。ブッシュ224は、締結ブラケット2と別部材であるが、締結ナット221と共に予め接面板22に固着される(説明の便宜上、図13中、上段のブッシュ224、締結ナット221を分解して図示している)ため、カラー225の周りに貫通孔222が見える以外、バーリング加工によるカラー223と外観上変わらない(図13中下段参照)。
【0032】
本例のカラー225も、先端縁外周を面取りし、ボルト孔41に嵌まり込みやすくしている。カラー225を貫通孔222から突出させた締結ブラケット2は、取付部位のボルト孔41から突出させたボルト43を締結ナット221に螺合させとき、図14に見られるように、カラー225をボルト孔41に対向させ、ボルト43を締結ナット221に捩じ込んでいくと、カラー225がボルト孔41に嵌まり込んで取付部位に対する接面板22の姿勢や接近方向を規制し、図15に見られるように、接面板22を取付部位に押し付ける。ブッシュ224の併用は、部分的に接面板22を肉厚にし、剛性を向上させる利点もある。
【0033】
また、バーリング加工によるカラー223に代えて、図16に見られるように、締結ナット221自体に設けられた円筒状フランジをカラー227として用い、締結ナット221のネジ孔(雌ネジ)に連通する接面板22の貫通孔222に前記カラー227を嵌合させ、接面板22から突出させてもよい。締結ナット221は、予め接面板22に固着される(説明の便宜上、図13中、上段の締結ナット221を分解して図示している)ため、カラー227の周りに貫通孔222が見える以外、バーリング加工によるカラー223と外観上変わらない(図16中下段参照)。カラー227は、締結ナット221の外周に設けた接面フランジ226から突出させ、前記接面フランジ226の外周を接面板22に溶接する。
【0034】
本例のカラー227も、先端縁外周を面取りし、ボルト孔41に嵌まり込みやすくしている。カラー227を貫通孔222から突出させた締結ブラケット2は、取付部位のボルト孔41から突出させたボルト43を締結ナット221に螺合させとき、図17に見られるように、カラー227をボルト孔41に対向させ、ボルト43を締結ナット221に捩じ込んでいくと、カラー227がボルト孔41に嵌まり込んで取付部位に対する接面板22の姿勢や接近方向を規制し、図18に見られるように、接面板22を取付部位に押し付ける。接面フランジ226は、部分的に接面板22を肉厚にし、剛性を向上させる。
【0035】
本例(図1〜図9)以外の接続板25は、例えば図19に見られるように、本体板21に設けた本体スリット251と区画スリット24とに挟まれて形成される変形梁252と、前記変形梁252から延びて接面板22に繋がれる架橋板253とから構成できる。本体板21、接面板22及び接続板25(変形梁252、架橋板253)は、連続した一枚の板材から構成されているので、上述同様、例えばプレス加工に際して区画スリット24及び本体スリット24を打ち抜くことによりそれぞれを一度に形成でき、接続板23が弾性変形又は塑性変形しない段階では本体板21、接面板22及び接続板25が同一平面上に揃っている。
【0036】
本体スリット251は、接続板23による本体板21及び接続板23の接続方向に直交し、架橋板253の左右方向の幅より長く、接続板23を囲む区画スリット24の最大外形幅(左右方向の外周縁の間隔)より短く設けている。これにより、変形梁252は架橋板253より左右方向に長く、また接続板23を囲む区画スリット24の最大外形幅より短くなり、本体板21の構造強度の低下を抑えながら、変形梁252が十分に弾性変形又は塑性変形できる。具体的には、接面板22が車体フレーム4の取付部位に接近離反する方向に架橋板253を弾性変形又は塑性変形させたり、本体スリット251を拡大又は縮小するように変形梁25を上下方向に湾曲するように弾性変形又は塑性変形させたり、そして前記取付部位と平行な面方向に架橋板233又は中間板231を弾性変形又は塑性変形させたりして、接面板22と取付部位との隙間をなくし、接面板22に固着した締結ナット221とボルト孔41との位置ズレをなくす。
【0037】
また、別例の接続板26は、図20に見られるように、左右の幅方向に一様で、厚み方向に屈曲した架橋板261から構成できる。左右の幅方向に一様で、厚み方向に屈曲した架橋板261は、一端が本体板21に、他端が接面板22に繋がれる。本体板21、接面板22及び接続板25(架橋板261)は、連続した一枚の板材から構成されているので、上述同様、例えばプレス加工に際して区画スリット24を打ち抜くことによりそれぞれを一度に形成できる。厚み方向に屈曲した架橋板261は、前記プレス加工と同時に、片に倣って変形させるか、プレス加工による打ち抜き後、別のプレス加工等により変形させる。
【0038】
左右の幅方向に一様で、厚み方向に屈曲した架橋板261から構成される接続板26は、上述までの接続板23(図1〜図9)又は接続板25(図19)と異なり、架橋板261の屈曲断面を弾性変形又は塑性変形させて、接面板22と取付部位との隙間をなくす。このとき、前記架橋板261の左右方向で屈曲断面の変形具合が異なると、接続板26が左右方向に曲がる格好となり、接面板22に固着した締結ナット221とボルト孔41との位置ズレをなくすことができる。この場合、例えば図21に見られるように、厚み方向に屈曲した架橋板271を左右一対設けて接続板27を構成すると、各架橋板271が独立して弾性変形又は塑性変形するので、接続板27を左右方向に曲げやすくなり、接面板22に固着した締結ナット221とボルト孔41との位置ズレを解消しやすくできる。
【符号の説明】
【0039】
1 ステアリング支持フレーム
2 締結ブラケット
21 本体板
22 接面板
221 締結ナット
222 貫通孔
23 接続板
231 中間板
232 変形スリット
233 一対の架橋板
24 区画スリット
3 デッキクロスメンバ
31 運転席側端部
32 助手席側端部
4 車体フレーム
41 ボルト孔
42 スペーサ
43 ボルト
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右両端に取り付けた締結ブラケットを車体フレームの取付部位に締結することにより左右の車体フレームにわたって架設され、ステアリング支持フレームを構成するデッキクロスメンバの締結ブラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
ステアリング支持フレームは、左右の車体フレームに架け渡されたデッキクロスメンバにより構成される。デッキクロスメンバは、左右両端に取り付けた締結ブラケットを、車体フレームの取付部位に対してボルト止めされる。このとき、締結ブラケットが取付部位にきっちりと接面すれば問題ない。しかし、どうしても締結ブラケットと取付部位との隙間や締結ナットとボルト孔との位置ズレをなくすことができず、そのまま締結ブラケットを取付部位にボルト止めすると、締結ブラケットが変形してしまい、強度(機械的強度)を低下させてしまう問題がある。締結ブラケットと取付部位との隙間は、スペーサを介装して解消する対策で解消できるが、部品点数や工程数が増える問題が発生する。そこで、特許文献1や特許文献2に見られる締結ブラケットが提案されるに至っている。
【0003】
特許文献1は、デッキクロスメンバ(フレーム)の左右両端に取り付けられる締結ブラケット(円筒状フランジ部)の強度に相対差を設けることにより、強度の強い取付ブラケットを車体フレーム(ピラー)に接面させてボルト止めし、強度の弱い締結ブラケットを車体フレームにボルト止めする際に変形させて、取付部位との隙間を吸収している(特許文献1[0006]〜[0009])。取付ブラケットの強度に相対差を形成する手段として、弾性変形又は塑性変形する変形予定部分を設ける(特許文献1[0015]〜[0017])。具体的な変形予定部分は、例えばデッキクロスメンバを接続するボス(ボス部6)と締結ナット(ナット8)との間に形成した横断溝(溝部5a)や横断孔(長孔5b)を開示している(特許文献1[0033])。
【0004】
特許文献2は、デッキクロスメンバ(ステアリングメンバ)の左右両端に取り付けられる締結ブラケット(取付け円筒状フランジ)における締結ナット(プロジェクトナット)を囲むように寸法調整接続板を形成することにより、前記寸法調整接続板その他の部位(一般部位)に対して車体フレーム(車体側)に向けて変形させ、締結ブラケットと取付部位との隙間を解消(ステアリングメンバの車幅方向長さ寸法を調整可能にする)している(特許文献2[0011])。具体的な寸法調整接続板として、締結ナット(明細書では「プロジェクションボルト8」と表示されているが、「プロジェクションナット11」の誤記と思われる)の近傍を囲繞するように設けられた長孔(長孔20a)から構成される例を挙げている(特許文献2[0015])
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3778762号公報
【特許文献2】特開2006-199050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2記載における変形予定部分又は寸法調整接続板を形成した締結ブラケットは、スペーサを介装せずに済むことから、スペーサを利用することの問題点を解決する点で優れている。しかし、締結ナットとボルト孔とが位置ズレしていると変形予定部分又は寸法調整接続板をこじてしまい、前記変形予定部分又は寸法調整接続板の弾性変形又は塑性変形が十分に発揮できなくなり、締結ブラケットと取付部位との隙間が解消できなくなる問題を生ずる。更に、締結ナットに捩じ込むボルトが傾き、締結ナットの雌ネジを齧ることによる締結トルクロスが発生したり、ボルトの締結強度が十分に確保できず、走行振動等によりボルトが緩む虞が発生する。そこで、締結ナットを含む一部が弾性変形又は塑性変形しながら、締結ブラケットと取付部位との隙間や締結ナットとボルト孔との位置ズレをなくすことのできる締結ブラケットを開発するため、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
検討の結果、開発したものが、デッキクロスメンバの左右両端を車体フレームの取付部位に対して締結する締結ブラケットにおいて、デッキクロスメンバの端部を接続する本体板に対し、締結ナットを固着した接面板を、前記本体板と接面板との接続方向に直交する幅が接面板以下である接続板を介して接続し、前記接続板を除く本体板と接面板との間に区画スリットを形成したデッキクロスメンバの締結ブラケットである。本発明の締結ブラケットは、接面板が取付部位に接近離反する方向に接続板が弾性変形又は塑性変形して接面板と取付部位との隙間をなくす。このとき、接続板が本体板と接面板との接続方向に直交する幅を接面板以下としていることにより、取付部位と平行な面方向に曲がる接続板の弾性変形又は塑性変形が許容され、接面板に固着した締結ナットとボルト孔との位置ズレもなくす。
【0008】
接続板は、取付部と平行な面方向に曲がる弾性変形又は塑性変形が許容するように、本体板と接面板との接続方向に直交する幅を接面板以下にしていれば接面板に対してどの方向に設けてもよいが、接面板を挟んでデッキクロスメンバの端部を接続する本体板の接続部位と反対側に設けられることが好ましい。この場合、区画スリットは、接面板を囲むように、デッキクロスメンバの端部を接続する本体板の接続部位と接面板との間と本体板と接面板との接続方向に平行な接面板の横にわたって設けられる。例えば接面板が正面視正方形であり、デッキクロスメンバの端部を接続する本体板の接続部位より上方に割り当てられていると、接続板は接面板の上辺を上方に延長して本体板と繋がる構成で、区画スリットは左辺、下辺及び右辺に連続する正面視コ字状となる。
【0009】
具体的な接続板として、(1)変形スリットを設けた中間板と、前記中間板より幅が狭く、本体板及び接面板と中間板と繋ぐ一対の架橋板とから構成される例を挙げることができる。本体板及び接面板と中間板と繋ぐ架橋板は、区画スリットを延長して周りを囲むことにより形成するとよい。(1)中間板を一対の架橋板に挟んで構成される接続板は、前記中間板を弾性変形又は塑性変形させることにより、接面板と取付部位との隙間をなくしたり、接面板に固着した締結ナットとボルト孔との位置ズレをなくす。
【0010】
また、具体的な接続板として、(2)幅方向に一様で、厚み方向に屈曲した架橋板から構成される例を挙げることができる。前記架橋板は、一端が本体板に、他端が接面板に繋がれる。接続板を構成する架橋板は、接面板と同幅の1体だけでもよいし、接面板より狭い幅の架橋板を複数体設けてもよい。(2)幅方向に一様で、厚み方向に屈曲した架橋板から構成される接続板は、架橋板の屈曲を増減させて接面板と取付部位との隙間をなくし、前記屈曲を伸縮させたり、幅方向で屈曲の増減又は伸縮を異ならせたりすることで曲がり、接面板に固着した締結ナットとボルト孔との位置ズレもなくす。
【0011】
そして、具体的な接続板として、(3)本体板に設けた本体スリットと区画スリットに挟まれて形成される変形梁と、前記変形梁から延びて接面板に繋がれる架橋板とから構成される例を挙げることができる。本体スリットは、接続板による本体板及び接続板の接続方向に直交し、架橋板の幅より長く、接続板を囲む区画スリットの最大外形幅より短く設けるとよい。これにより、変形梁は架橋板より長く、また接続板を囲む区画スリットの最大外形幅より短くなり、本体板の強度の低下を抑えながら、変形梁が十分に弾性変形又は塑性変形できるようになる。こうして、(3)変形梁と架橋板とから構成される接続板は、前記変形梁を弾性変形又は塑性変形させることにより、接面板と取付部位との隙間をなくしたり、接面板に固着した締結ナットとボルト孔との位置ズレをなくす。
【0012】
このように、本発明の締結ブラケットは、接続板を構成する架橋板、一対の架橋板に挟まれた中間板又は架橋板が延びる弾性梁を弾性変形又は塑性変形させることにより、接面板と取付部位との隙間をなくしたり、接面板に固着した締結ナットとボルト孔との位置ズレをなくす。このとき、取付部位に対して接面板が平行状態を保ったまま接近し、締結ナットとボルト孔とを一致させやすくするため、接面板は、車体フレームの取付部位に設けられたボルト孔に嵌まり込むカラーを設けるとよい。カラーは、ボルト孔から締結ナットに捩じ込むボルトの案内部材としても働く。
【0013】
カラーは、取付部位におけるボルト孔に対する接面板の位置関係を特定する部材であるから、ボルト孔に嵌まり込むことさえできれば突起又は円弧状フランジとしてもよいが、ボルト孔に対するどの方向にも位置ズレなく接面板の位置関係を特定する観点から、円筒状フランジとして構成することが望ましい。この場合、具体的なカラーは、(a)締結ナットのネジ孔に連通する接面板の貫通孔を設けるバーリング加工による円筒状フランジ、(b)締結ナットのネジ孔に連通する接面板の貫通孔に嵌合する、ブッシュに設けられた円筒状フランジ、又は(c)締結ナットのネジ孔に連通する接面板の貫通孔から突出する、締結ナットに設けられた円筒状フランジとして構成できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によるデッキクロスメンバの締結ブラケットは、締結ナットを固着した接面板を本体板に繋ぐ接続板が弾性変形又は塑性変形し、接面板と取付部位との隙間や締結ナットとボルト孔との位置ズレをなくすことができる。これは、前記接続板が、従来同種の締結ブラケットと同様に、接面板が取付部位に接近離反する方向に弾性変形又は塑性変形するほか、取付部位と平行な面方向に曲がる弾性変形又は塑性変形することの効果である。また、接続板は、本体板及び接面板に対して弾性変形又は塑性変形しやすく、本体板及び接面板が弾性変形又は塑性変形することを防止できるようになるため、前記本体板及び接面板に残留応力が発生しにくい利点も得られる。
【0015】
カラーは、取付部位に対して接面板が平行状態を保ったまま接近し、締結ナットとボルト孔とを一致させやすくする働きと、前記働きにより、上述のように接続板のみを集中して弾性変形又は塑性変形させる働きのほか、更に締結ブラケットを車体フレームに締結する際に、ボルト孔から締結ナットに捩じ込むボルトを案内する働きを有する。これらは、上述した効果を得やすくする働きであり、また締結ナットに捩じ込むボルトが傾くことを防止して、締結ナットがボルトに齧られる虞をなくし、更にはボルトを捩じ込む際の締結トルクロスを抑えて、組み立て作業を促進させる効果をもたらす。そして、車両フレームの取付部位に接面板をきっちりと接面させてボルトを締結ナットに締め込むことができることにより、ボルトの締結強度も十分確保できて、走行振動等によりボルトが緩む虞が発生しなくなる効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の締結ブラケットを用いて構成されたステアリング支持フレームを後方から見た斜視図である。
【図2】助手席側の締結ブラケットを左方向から見た斜視図である。
【図3】助手席側の締結ブラケットを右方向から見た斜視図である。
【図4】助手席側の締結ブラケットとデッキクロスメンバの助手席側端部との接合関係を表す正面図である。
【図5】運転席側の締結ブラケットとデッキクロスメンバの運転席側端部との接合関係を表す正面図である。
【図6】助手席側の締結ブラケットの接面板が接続板の塑性変形により変位した状態を表した図4相当正面図である。
【図7】運転席側の締結ブラケットを車体フレームに接続し終えた状態を表す縦断面図である。
【図8】助手席側の締結ブラケットを車体フレームに宛てがった状態を表す縦断面図である。
【図9】助手席側の締結ブラケットを車体フレームに接続し終えた状態を表す縦断面図である。
【図10】接面板にバーリング加工によるカラーを設けた締結ブラケットの図2相当斜視図である。
【図11】接面板にバーリング加工によるカラーを設けた締結ブラケットを車体フレームに宛てがった状態を表す図8相当縦断面図である。
【図12】接面板にバーリング加工によるカラーを設けた締結ブラケットを車体フレームに接続し終えた状態を表す図9相当縦断面図である。
【図13】ブッシュに設けたカラーを接面板の貫通孔から突出させた締結ブラケットの図2相当斜視図である。
【図14】ブッシュに設けたカラーを接面板の貫通孔から突出させた締結ブラケットを車体フレームに接続し終えた状態を表す図9相当縦断面図である。
【図15】ブッシュに設けたカラーを接面板の貫通孔から突出させた締結ブラケットを車体フレームに接続し終えた状態を表す図9相当縦断面図である。
【図16】締結ナットに設けたカラーを接面板の貫通孔から突出させた締結ブラケットの図2相当斜視図である。
【図17】締結ナットに設けたカラーを接面板の貫通孔から突出させた締結ブラケットを車体フレームに接続し終えた状態を表す図9相当縦断面図である。
【図18】締結ナットに設けたカラーを接面板の貫通孔から突出させた締結ブラケットを車体フレームに接続し終えた状態を表す図9相当縦断面図である。
【図19】本体スリットにより形成された変形梁から架橋板が延びる接続板を構成した締結ブラケットの図3相当斜視図である。
【図20】接面板と同幅かつ屈曲断面の架橋板から接続板を構成した締結ブラケットの図3相当斜視図である。
【図21】左右一対かつ屈曲断面の架橋板から接続板を構成した締結ブラケットの図3相当斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。本発明の締結ブラケット2は、例えば図1に見られるように、デッキクロスメンバ3の運転席側端部31及び助手席側端部32それぞれに溶接により接合され、ステアリング支持フレーム1を構成する。本例のデッキクロスメンバ3は、基本的に断面円形の金属製直管であるが、運転席側が大径、助手席側が小径とした両端異形管であり、大径である運転席側に中間ステー11、コラムブラケット12が取り付けられている。運転席側及び助手席側の締結ブラケット2は、全く同じ仕様である(つまり、左右共通)が、デッキクロスメンバ3が両端異形管であるため、後述するように、各締結ブラケット2に対する運転席側端部31及び助手席側端部32の接合関係が異なる。
【0018】
本例の締結ブラケット2は、図2〜図5に見られるように、例えばデッキクロスメンバ3の助手席側端部32を接続する本体板21に対し、締結ナット221を固着した接面板22を、前記本体板21と接面板22との接続方向(本例は上下方向)に直交する幅(本例は左右方向の幅)が接面板22以下である接続板23を介して接続し、前記接続板23を除く本体板21と接面板22との間に区画スリット24を形成している。本例の締結ブラケット2は、左右共通の部材であり、運転席側及び助手席側それぞれに鏡面対称の関係(互いが正面を向く関係)でデッキクロスメンバ3の左右両端に接合される。
【0019】
本体板21は、周縁を正面方向(図2及び中右方向、図4及び図5中図面手前方向)に折り曲げて環状フランジを形成し、全体として剛性を高めた正面視長方形外形の板材で、前記環状フランジに囲まれた平面の範囲で、上下対称に一対の接面板22を設けている。本体板21は、接続板23が弾性変形又は塑性変形する際の基部になる部材で、助手席側の車体フレーム4に接面板22を締結した段階で前記車対フレーム4に対して隙間を残して宙に浮いた状態になる(図9参照)ことから、前記接続板23に対して変形せず、平面が形状を保つ程度の剛性が求められる。このため、本体板21は、本例のように周縁に環状フランジを設けたり、前記環状フランジと別に又は併せて平面内にビードを形成して断面係数を大きくしたりして、剛性を高める。
【0020】
接面板22は、接続板23を構成する中間板231から延びる架橋板233を除いた周囲が区画スリット24に囲まれた正面視正方形状の板材である。本例の本体板21、接面板22及び接続板23(中間板231及び一対の架橋板233)は、連続した一枚の板材から構成されているので、例えばプレス加工に際して区画スリット24及び中間スリット232を打ち抜くことによりそれぞれを一度に形成する。このため、接続板23が弾性変形又は塑性変形しない段階では、本体板21、接面板22及び接続板23が同一平面上に揃っている。接面板22の正面視形状は自由であるが、車体フレーム4に安定して接面するだけの大きさを有することが望まれる。
【0021】
本例の接面板22は、ボルト43の締め付けにより接続板23を弾性変形又は塑性変形させ、車体フレーム4に接面させる(図9参照)際、前記ボルト43の締め付けによる負荷が接続板23に近い位置で加わるように、中心から前記架橋板233に寄った位置に貫通孔222を設け、前記貫通孔222に連通して正面側に締結ナット221を溶接により固着している。貫通孔222を架橋板233に寄った位置に設けた理由は、ボルト43の締め付けによる負荷が接続板23の弾性変形又は組成変形を導きやすくし、対して接続板23が弾性変形又は組成変形しないために接面板22が座屈することを防止するためである。接面板22の座屈を防止するため、接面板22にビードを設けて剛性を高めてもよい。
【0022】
接続板23は、接面板22の左右方向に延びる辺に平行な長孔状の変形スリット232を相似に囲む中間板231と、本体板21及び接面板22とを、接面板22の左右方向の幅より狭く、区画スリット24の両端に挟まれて括れた一対の架橋板233,233により繋いで構成される。本例の接続板23は、後述するように、同じ締結ブラケット2を用いながらデッキクロスメンバ3の運転席側端部31又は助手席側端部32の接合態様を変え、接面板22の拘束(運転席側端部31)及び非拘束(助手席側端部32)を分けるため、接面板22を挟んでデッキクロスメンバ3の運転席側端部31又は助手席側端部32を接続する本体板21の中心から反対側に設けられている。
【0023】
これにより、助手席側の締結ブラケット2は、図4に見られるように、デッキクロスメンバ3の助手席側端部32が本体板21にのみ接合され、接面板22が車体フレーム4の取付部位に接近離反する方向に架橋板233又は中間板231が弾性変形又は塑性変形して接面板22と前記取付部位との隙間をなくしたり、後述するように、前記取付部位と平行な面方向に架橋板233又は中間板231が弾性変形又は塑性変形して、接面板22に固着した締結ナット221とボルト孔41との位置ズレをなくすことができる。これは、助手席側端部32の強度が、本体板21の剛性にのみ頼っていることを意味する。
【0024】
これに対し、運転席側の締結ブラケット2は、図5に見られるように、デッキクロスメンバ3の運転手側端部31が本体板21及び接面板22にわたって接合され、上述のような接続板22の弾性変形又は塑性変形が規制され、接面板22が車体フレーム4の取付部位に接近したり、前記取付部位と平行な面方向に変位したりしない。これは、運転席側端部31の強度は、本体板21の剛性のみならず、運転席側端部31を介して結合される本体板21及び接面板22を連結し、互いが相手の変形を抑制することにより向上していることを意味する。こうして、左右共通の締結ブラケット2を用いながら、運転席側の締結ブラケット2の強度を、助手席側の締結ブラケット2の強度に比べて相対的に高くできる。
【0025】
本例の締結ブラケット2は、既述したように、接続板23が弾性変形又は塑性変形することにより、車体フレーム4の取付部位との隙間をなくしたり、締結ナット221とボルト孔41との位置ズレをなくす。従来同種のブラケットも、車体フレーム4の取付部位との隙間をなくすことができたが、本発明の締結ブラケット2は、前記取付部位と平行な面方向に接続板23が弾性変形又は塑性変形して、締結ナット221とボルト孔41との位置ズレをなくすことができる点に特徴を有する。具体的には、図6に見られるように、接続板23は、変形スリット232を広げたり(図6中上の接続板23参照)、潰したりして中間板231を変形させ、接面板22を上下方向に変位させ、また一対の架橋板233の一方又は双方を曲げて(図6中下の接続板23参照)、接面板22を左右方向に変位させることにより、締結ナット221とボルト孔41との位置ズレをなくす。
【0026】
ステアリング支持フレーム1は、図7に見られるように、車体フレーム4の運転席側では、締結ブラケット2の本体板21、接面板22及び接続板23をすべて取付部位(車体フレーム4を構成する部材の内壁面)に接面させ、圧潰防止のために介装したスペーサ42を通してボルト孔41から左方向に突出させたボルト43を締結ナット221に捩じ込んで、接合する。これから理解されるように、運転席側の締結ブラケット2には弾性変形又は塑性変形する接続板23は不要であり、区画スリット24や接続板23を設けたことが強度低下をもたらしている。そこで、本例は、締結ブラケット2を左右共通に使用しながら、デッキクロスメンバ3の運転席側端部31を本体板21及び接面板22に跨がって溶接することにより、前記区画スリット24や接続板23を設けたことによる強度の低下を防止し、相対的に助手席側の締結ブラケット2との強度差を実現している。
【0027】
車体フレーム4の取付部位に対する位置ズレは、専ら車体フレーム4の助手席側で調整される。車体フレーム4の運転席側の接合を終えたステアリング支持フレーム1は、図8に見られるように、車体フレーム4の助手席側の取付部位に対し、締結ブラケット2の本体板21、接面板22及び接続板23を同一平面上に揃えた状態で、上下の接面板22それぞれに設けられた各貫通孔222に、スペーサ42を通してボルト孔41から右方向に突出させたボルト43を締結ナット221に螺合させる。この段階で、締結ナット221とボルト孔41とに大きな位置ズレがあれば、接続板23が中間板231を変形させたり、架橋板233を取付部位と平行な面方向に曲げたりして(図6参照)前記位置ズレを解消する。また、締結ナット221とボルト孔41との位置ズレが小さければ、ボルト43を締結ナット221に捩じ込んでいく過程で、接続板23が中間板231を変形させたり、架橋板233を取付部位と平行な面方向に曲げたりして(図6参照)前記位置ズレを解消する。
【0028】
締結ナット221に螺合させたボルト43を捩じ込んでいくと、図9に見られるように、ボルト43は車体フレーム4に頭の移動が規制されているため、相対的に締結ナット221が車体フレーム4に接近するように移動し始め、接面板22を車体フレーム4の取付部位に押し付けることになる。このとき、接面板22は、接続板23の中間板231を変形させたり、架橋板233を接面板22が取付部位に接近離反する方向に曲げたりしながら、取付部位に接近する。このように、取付部位に対する接面板22の接近は、接続板23の弾性変形又は塑性変形による。本体板21は、デッキクロスメンバ3の助手席側端部32が接続されているため、接続板23の弾性変形又は塑性変形の影響を受けることなく、取付部位に対して隙間を残して離れたままになる。この結果、助手席側の締結ブラケット2の強度は、運転席側の締結ブラケット2に比べて相対的に弱くなる。
【0029】
既述したように、ボルト43を締結ナット221に螺合させた段階で、締結ナット221とボルト孔41とに位置ズレがあっても、接続板23が中間板231を変形させたり、架橋板233を取付部位と平行な面方向に曲げたりして前記位置ズレを解消させるが、締結ナット2に捩じ込むボルト43が傾く虞がある。そこで、図10〜図18に見られるように、車体フレーム4の取付部位に設けられたボルト孔41に嵌まり込むカラー223,225,227を接面板22に設けるとよい。これにより、カラー223,225,227が先行してボルト孔41(正確にはボルト孔41に連通するスペーサ42)に嵌まり込み、取付部位に対して接面板22が平行状態を保ったまま接近し、かつ締結ナット221とボルト孔41とを一致させやすくなる。
【0030】
カラー223は、例えば図10に見られるように、締結ナット221のネジ孔(雌ネジ)に連通する接面板22の貫通孔222を設けるバーリング加工による円筒状フランジにより形成する。バーリング加工は、貫通孔222及びカラー223を同時に形成できる利点がある。本例のカラー223は、先端縁外周を面取りし、ボルト孔41に嵌まり込みやすくしている。カラー223を設けた締結ブラケット2は、取付部位のボルト孔41から突出させたボルト43を締結ナット221に螺合させとき、図11に見られるように、カラー223をボルト孔41に対向させている。そして、ボルト43を締結ナット221に捩じ込んでいくと、カラー223がボルト孔41に嵌まり込んで取付部位に対する接面板22の姿勢や接近方向を規制し、図12に見られるように、接面板22を取付部位に押し付ける。
【0031】
バーリング加工によるカラー223に代えて、図13に見られるように、ブッシュ224に設けられた円筒状フランジをカラー225として用い、締結ナット221のネジ孔(雌ネジ)に連通する接面板22の貫通孔222に前記カラー225を嵌合させ、接面板22から突出させてもよい。ブッシュ224は、締結ブラケット2と別部材であるが、締結ナット221と共に予め接面板22に固着される(説明の便宜上、図13中、上段のブッシュ224、締結ナット221を分解して図示している)ため、カラー225の周りに貫通孔222が見える以外、バーリング加工によるカラー223と外観上変わらない(図13中下段参照)。
【0032】
本例のカラー225も、先端縁外周を面取りし、ボルト孔41に嵌まり込みやすくしている。カラー225を貫通孔222から突出させた締結ブラケット2は、取付部位のボルト孔41から突出させたボルト43を締結ナット221に螺合させとき、図14に見られるように、カラー225をボルト孔41に対向させ、ボルト43を締結ナット221に捩じ込んでいくと、カラー225がボルト孔41に嵌まり込んで取付部位に対する接面板22の姿勢や接近方向を規制し、図15に見られるように、接面板22を取付部位に押し付ける。ブッシュ224の併用は、部分的に接面板22を肉厚にし、剛性を向上させる利点もある。
【0033】
また、バーリング加工によるカラー223に代えて、図16に見られるように、締結ナット221自体に設けられた円筒状フランジをカラー227として用い、締結ナット221のネジ孔(雌ネジ)に連通する接面板22の貫通孔222に前記カラー227を嵌合させ、接面板22から突出させてもよい。締結ナット221は、予め接面板22に固着される(説明の便宜上、図13中、上段の締結ナット221を分解して図示している)ため、カラー227の周りに貫通孔222が見える以外、バーリング加工によるカラー223と外観上変わらない(図16中下段参照)。カラー227は、締結ナット221の外周に設けた接面フランジ226から突出させ、前記接面フランジ226の外周を接面板22に溶接する。
【0034】
本例のカラー227も、先端縁外周を面取りし、ボルト孔41に嵌まり込みやすくしている。カラー227を貫通孔222から突出させた締結ブラケット2は、取付部位のボルト孔41から突出させたボルト43を締結ナット221に螺合させとき、図17に見られるように、カラー227をボルト孔41に対向させ、ボルト43を締結ナット221に捩じ込んでいくと、カラー227がボルト孔41に嵌まり込んで取付部位に対する接面板22の姿勢や接近方向を規制し、図18に見られるように、接面板22を取付部位に押し付ける。接面フランジ226は、部分的に接面板22を肉厚にし、剛性を向上させる。
【0035】
本例(図1〜図9)以外の接続板25は、例えば図19に見られるように、本体板21に設けた本体スリット251と区画スリット24とに挟まれて形成される変形梁252と、前記変形梁252から延びて接面板22に繋がれる架橋板253とから構成できる。本体板21、接面板22及び接続板25(変形梁252、架橋板253)は、連続した一枚の板材から構成されているので、上述同様、例えばプレス加工に際して区画スリット24及び本体スリット24を打ち抜くことによりそれぞれを一度に形成でき、接続板23が弾性変形又は塑性変形しない段階では本体板21、接面板22及び接続板25が同一平面上に揃っている。
【0036】
本体スリット251は、接続板23による本体板21及び接続板23の接続方向に直交し、架橋板253の左右方向の幅より長く、接続板23を囲む区画スリット24の最大外形幅(左右方向の外周縁の間隔)より短く設けている。これにより、変形梁252は架橋板253より左右方向に長く、また接続板23を囲む区画スリット24の最大外形幅より短くなり、本体板21の構造強度の低下を抑えながら、変形梁252が十分に弾性変形又は塑性変形できる。具体的には、接面板22が車体フレーム4の取付部位に接近離反する方向に架橋板253を弾性変形又は塑性変形させたり、本体スリット251を拡大又は縮小するように変形梁25を上下方向に湾曲するように弾性変形又は塑性変形させたり、そして前記取付部位と平行な面方向に架橋板233又は中間板231を弾性変形又は塑性変形させたりして、接面板22と取付部位との隙間をなくし、接面板22に固着した締結ナット221とボルト孔41との位置ズレをなくす。
【0037】
また、別例の接続板26は、図20に見られるように、左右の幅方向に一様で、厚み方向に屈曲した架橋板261から構成できる。左右の幅方向に一様で、厚み方向に屈曲した架橋板261は、一端が本体板21に、他端が接面板22に繋がれる。本体板21、接面板22及び接続板25(架橋板261)は、連続した一枚の板材から構成されているので、上述同様、例えばプレス加工に際して区画スリット24を打ち抜くことによりそれぞれを一度に形成できる。厚み方向に屈曲した架橋板261は、前記プレス加工と同時に、片に倣って変形させるか、プレス加工による打ち抜き後、別のプレス加工等により変形させる。
【0038】
左右の幅方向に一様で、厚み方向に屈曲した架橋板261から構成される接続板26は、上述までの接続板23(図1〜図9)又は接続板25(図19)と異なり、架橋板261の屈曲断面を弾性変形又は塑性変形させて、接面板22と取付部位との隙間をなくす。このとき、前記架橋板261の左右方向で屈曲断面の変形具合が異なると、接続板26が左右方向に曲がる格好となり、接面板22に固着した締結ナット221とボルト孔41との位置ズレをなくすことができる。この場合、例えば図21に見られるように、厚み方向に屈曲した架橋板271を左右一対設けて接続板27を構成すると、各架橋板271が独立して弾性変形又は塑性変形するので、接続板27を左右方向に曲げやすくなり、接面板22に固着した締結ナット221とボルト孔41との位置ズレを解消しやすくできる。
【符号の説明】
【0039】
1 ステアリング支持フレーム
2 締結ブラケット
21 本体板
22 接面板
221 締結ナット
222 貫通孔
23 接続板
231 中間板
232 変形スリット
233 一対の架橋板
24 区画スリット
3 デッキクロスメンバ
31 運転席側端部
32 助手席側端部
4 車体フレーム
41 ボルト孔
42 スペーサ
43 ボルト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デッキクロスメンバの左右両端を車体フレームの取付部位に対して締結する締結ブラケットにおいて、
デッキクロスメンバの端部を接続する本体板に対し、締結ナットを固着した接面板を、前記本体板と接面板との接続方向に直交する幅が接面板以下である接続板を介して接続し、前記接続板を除く本体板と接面板との間に区画スリットを形成した
ことを特徴とするデッキクロスメンバの締結ブラケット。
【請求項2】
接続板は、接面板を挟んでデッキクロスメンバの端部を接続する本体板の接続部位と反対側に設けた請求項1記載のデッキクロスメンバの締結ブラケット。
【請求項3】
接続板は、変形スリットを設けた中間板と、前記中間板より幅が狭く、本体板及び接面板と中間板と繋ぐ一対の架橋板とから構成される請求項1又は2いずれか記載のデッキクロスメンバの締結ブラケット。
【請求項4】
接続板は、幅方向に一様で、厚み方向に屈曲した架橋板から構成され、前記架橋板の一端が本体板に、他端が接面板に繋がれる請求項1又は2いずれか記載のデッキクロスメンバの締結ブラケット。
【請求項5】
接続板は、本体板に設けた本体スリットと区画スリットに挟まれて形成される変形梁と、前記変形梁から延びて接面板に繋がれる架橋板とから構成される請求項1又は2いずれか記載のデッキクロスメンバの締結ブラケット。
【請求項6】
接面板は、車体フレームの取付部位に設けられたボルト孔に嵌まり込むカラーを設けた請求項1〜5いずれか記載のデッキクロスメンバの締結ブラケット。
【請求項7】
カラーは、締結ナットのネジ孔に連通する接面板の貫通孔を設けるバーリング加工による円筒状フランジである請求項6記載のデッキクロスメンバの締結ブラケット。
【請求項8】
カラーは、締結ナットのネジ孔に連通する接面板の貫通孔に嵌合する、ブッシュに設けられた円筒状フランジである請求項6記載のデッキクロスメンバの締結ブラケット。
【請求項9】
カラーは、締結ナットのネジ孔に連通する接面板の貫通孔から突出する、締結ナットに設けられた円筒状フランジである請求項6記載のデッキクロスメンバの締結ブラケット。
【請求項1】
デッキクロスメンバの左右両端を車体フレームの取付部位に対して締結する締結ブラケットにおいて、
デッキクロスメンバの端部を接続する本体板に対し、締結ナットを固着した接面板を、前記本体板と接面板との接続方向に直交する幅が接面板以下である接続板を介して接続し、前記接続板を除く本体板と接面板との間に区画スリットを形成した
ことを特徴とするデッキクロスメンバの締結ブラケット。
【請求項2】
接続板は、接面板を挟んでデッキクロスメンバの端部を接続する本体板の接続部位と反対側に設けた請求項1記載のデッキクロスメンバの締結ブラケット。
【請求項3】
接続板は、変形スリットを設けた中間板と、前記中間板より幅が狭く、本体板及び接面板と中間板と繋ぐ一対の架橋板とから構成される請求項1又は2いずれか記載のデッキクロスメンバの締結ブラケット。
【請求項4】
接続板は、幅方向に一様で、厚み方向に屈曲した架橋板から構成され、前記架橋板の一端が本体板に、他端が接面板に繋がれる請求項1又は2いずれか記載のデッキクロスメンバの締結ブラケット。
【請求項5】
接続板は、本体板に設けた本体スリットと区画スリットに挟まれて形成される変形梁と、前記変形梁から延びて接面板に繋がれる架橋板とから構成される請求項1又は2いずれか記載のデッキクロスメンバの締結ブラケット。
【請求項6】
接面板は、車体フレームの取付部位に設けられたボルト孔に嵌まり込むカラーを設けた請求項1〜5いずれか記載のデッキクロスメンバの締結ブラケット。
【請求項7】
カラーは、締結ナットのネジ孔に連通する接面板の貫通孔を設けるバーリング加工による円筒状フランジである請求項6記載のデッキクロスメンバの締結ブラケット。
【請求項8】
カラーは、締結ナットのネジ孔に連通する接面板の貫通孔に嵌合する、ブッシュに設けられた円筒状フランジである請求項6記載のデッキクロスメンバの締結ブラケット。
【請求項9】
カラーは、締結ナットのネジ孔に連通する接面板の貫通孔から突出する、締結ナットに設けられた円筒状フランジである請求項6記載のデッキクロスメンバの締結ブラケット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2010−215231(P2010−215231A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2010−94821(P2010−94821)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(503399920)株式会社アステア (31)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94821(P2010−94821)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(503399920)株式会社アステア (31)
【Fターム(参考)】
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