説明

デッキ表面の研削・研磨装置

【課題】デッキ表面が広くても、手動或いは自動による装置の前・後進等の操作が簡単であり且つ研削・研磨圧力の平衡性を保持し、より均一な研削・研磨を効率よく短時間で処理可能にし、作業員の肉体的負担を大幅に軽減可能なデッキ表面の研削・研磨装置を提供する。
【解決手段】走行台車(100)において、台車本体(101)の後部に走行方向操作用のハンドル(106)とカウンターウエイト(107)を設け、台車本体(101)の前部ステージ(101F)の下に昇降ステージ(200)を平行昇降可能に設け、前部ステージ(101F)に昇降ステージ(200)の昇降装置(300)を設け、昇降ステージ(200)の下面に左右前後上下の揺動を緩衝する第一の緩衝機構を各々介して複数基の研削・研磨作動用の電動モータ、或いは油圧モータ、又はエアーモータ(401)を平面的に見て前列と後列に配列し且つ前・後配列の関係を千鳥配列にして設けたことを特徴とするデッキ表面の研削・研磨装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行台車の前面底部に複数の研削・研磨盤を回転可能に支持し、研削・研磨盤を回転駆動モータにより水平回転駆動させて金属製、樹脂製、コンクリート製等のデッキの表面の汚れ部を、錆び部を、古い表面被覆膜を、或いは付着物や異物等を除去する各種表面処理をし、例えば光沢のある美麗表面に、或いは均一な粗度の表面に、所定厚除去表面等の所望の表面性状に均一に研磨・研削処理する所謂デッキ表面の研削・研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
前記デッキ表面を研削・研磨する研削・研磨装置は、被研磨・研削表面を、均一に研磨・研削するには、単位時間当たりの処理能力の向上と、段付き跡や研磨斑の等の加工跡の無い均一な平面研削・研磨の機能が要求される。
【0003】
この機能要求により従来の研削・研磨装置は、特許文献に記載の各種の工夫が紹介されているが、いずれも複雑で高価な構造の装置であり且つ研削・研磨効率が低く必ずしも所期の機能を得ることが困難であった。
【0004】
特許文献1には、自走車両の昇降・前後・左右傾動の支持枠に、複数の回転駆動軸を垂直軸回りに回動自在に支持し、各回転駆動軸と昇降軸と砥石を案内球面で連結装着した回転ディスクを有する複雑なリンク機構を採用した床面研磨装置が紹介されている。
【0005】
特許文献2には、床面に積層されてその床面を被覆している床面被覆層を研削するものであり、一方向に沿って往復移動可能な研削面を備え、その往復移動方向に互いに対向させて、移動方向が互いに逆方向になるように同時に往復移動自在に設けてある一対の研削具と、発生した研削屑を回収するため、前記研削具の周囲を囲むスカートとを有する複雑な研削具往復移動機構を採用した研削装置が紹介されている。
【0006】
特許文献3には、駆動モータにより駆動される研削盤の半数が遊星盤と協働する方向に回転し、残りの研削盤は反対方向に回転する複雑な遊星盤機構方式を採用した移動式床面研削装置が紹介されている。
【0007】
特許文献4には、床面に対してほぼ垂直に配設した二つの回転駆動軸の下端部に研磨部材を装備し、各回転駆動軸を個別に任意の方向に傾斜させる二つの傾斜付勢手段を備えた複雑な回転・傾斜付勢駆動機構を採用した床面研磨装置が紹介されている。
【0008】
特許文献5には、アウターロータのロータに研磨ブラシを装着し、アウターモータの中心部に、中空パイプ状のケーシングが垂直配置し、ケーシングの外側にステータを固定し、ステータの外側にロータを軸受を介して回転可能に装着し、前記ケーシングの外径に対応する分だけ中心部を欠落したブラシを前記ケーシングの下端部に水平に且つロータに一体に装着し、前記ケーシングの上端部には、吸引ホースを接続した複雑なアウターロータ機構を採用した床面研磨装置が紹介されている。
【0009】
特許文献6には、圧縮空気回転駆動手段により相互に逆方向に回転させる一対の砥石車と、回転駆動手段から排出の圧縮空気を砥石車に吹き付ける手段と、砥石車からの研削粉塵を吸引する吸引手段とを有する局部的処理用の研削装置が紹介されている。
【0010】
特許文献7には、回転する研磨盤ドラムの底面と側面に研磨ブラシを設けた縦横L面同時研磨用の電動研磨装置が紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3075366号特許公報
【特許文献2】特許第4575456号特許公報
【特許文献3】特表2004−518542号公報
【特許文献4】特開平9−299298号公報
【特許文献5】特開2003−39299号公報
【特許文献6】特開2003−89034号公報
【特許文献7】実開平5−74452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、主に広大なデッキ表面の研削・研磨処理を、手動或いは自動による前・後進等の走行操作を簡易にしながら、研削・研磨圧力の平衡性を保持し、より均一な研削・研磨を効率よく短時間で処理可能にし、作業員の肉体的負担を大幅に軽減可能なデッキ表面の研削・研磨装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は前記課題を満足するものでありその特徴とするところは、図1〜図7に示す実施例を援用すれば次の(1)の通りである。
(1)、走行台車(100)において、台車本体(101)の後部に走行方向操作用のハンドル(106)とカウンターウエイト(107)を設け、台車本体(101)の前部ステージ(101F)の下に平行して昇降可能に昇降ステージ(200)を設け、前部ステージ(101F)に昇降ステージ(200)の昇降装置(300)を設け、昇降ステージ(200)の下面に左右前後上下の揺動を緩衝する第一の緩衝機構を各々介して複数基の研削・研磨作動用の電動モータ、又は油圧モータ、或いはエアーモータ(401)を平面的に見て前列と後列に配列し且つ前・後配列の関係を千鳥配列にして設け、各モータの回転軸に研削・研磨盤(501)を被研削・研磨面(SF)に対して平行状態で装着し、ことを特徴とするデッキ表面の研削・研磨装置。
(2)、前記モータをエアーモータ(401)にした場合、台車本体(101)の前部ステージ(101F)上にエアーモータへの駆動エアー供給装置(600)を搭載したことを特徴とする前記(1)に記載のデッキ表面の研削・研磨装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明のデッキ表面の研削・研磨装置は、デッキ表面が広くても凹凸が多少存在しても、手動或いは自動による前・後進等の走行操作が簡単であり且つ研削・研磨圧力及び深さ(厚み)の平衡性を保持し、より均一な研削・研磨処理を効率よく短時間で可能にし、作業員の肉体的負担を大幅に軽減可能にした優れた研削・研磨装置である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例装置を斜め上から見た鳥瞰図である。
【図2】本発明の実施例装置を斜め下から見た鳥瞰図である。
【図3】本発明の実施例装置の側面図である。
【図4】本発明の実施例装置の正面図である。
【図5】本発明の実施例装置の背面図である。
【図6】本発明の実施例装置の平面図である。
【図7】本発明の実施例装置の裏面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態の詳細を次に紹介する実施例により説明する。
【実施例】
【0017】
本発明の実施例を図1〜図7と共に詳細に説明する。
本例のデッキ表面の研削・研磨装置は、自走式又は手押し式の走行台車100に搭載したもので走行台車100は、台車本体101の前後左右の四か所に前・後進直線指向性にした走行用車輪102を軸着し、台車本体101の後部両側部に立ち上がらせた一対の走行方向操作用のハンドル106とカウンターウエイト107を設け、台車本体101の前部ステージ101Fの下に昇降ステージ200とその昇降装置300を装着し、昇降ステージ下面に5基の研削・研磨作動用の電動モータ又はエアーモータ、或いは油圧モータ等のモータ401を平面的に見て千鳥配置状態で装着する。本例のモータは、エアーモータ401を採用しこの各エアーモータの垂直回転軸の下部に研削・研磨盤501を着脱可能に水平状態で装着し、台車本体101の前部ステージ101F上にエアーモータへの駆動エアー供給装置600を装着したものである。
走行用車輪102は、無指向性にして走行方向を自在に変更操作できるようにしても良い。
ハンドル106には、エアーモータの駆動・停止の操作用のレバー106Lを設けてある。
【0018】
昇降ステージ200は、四隅に垂直ガイドシャフト201を立設し、垂直ガイドシャフト201は上部にブッシュ203を介して前部ステージ101Fに貫通装着してある。これで昇降ステージ200は、後述の垂直スクリューシャフト304で吊支持されながら水平状態を維持し昇降可能である。他の例として図示していないが垂直ガイドシャフト201にコイルバネを周設して昇降ステージ200が下方へのばね力を受けながら昇降シフトと微量の前後左右上下の揺動動を可能にしてもよい。
【0019】
昇降ステージ200の昇降装置300は、台車本体101の後部中央部から前部中央部に亘り回転軸受けスタンド300Sで支持した回転ハンドル301付きの昇降操作シャフト302と、昇降操作シャフト302に連結し水平回転を垂直回転に変換するギヤーボックス機構303と、ギヤーボックス機構303に連結した台形ネジ式の垂直スクリューシャフト304と、垂直スクリューシャフト304の下部に螺合連結し昇降ステージ200の中央部に設けた螺合部材305とからなる。
この昇降装置300は、回転ハンドル301を回すことにより昇降ステージ200を水平状態で平行に昇降シフトして被研削・研磨面への研削・研磨盤501の作動高さを昇降調節しながら設定すると共に被研削・研磨面への研削・研磨盤501の面圧も微調整する。
この構成により、研削・研磨盤501を被研削・研磨面にタッチした際、或いは研削・研磨中の被研削・研磨面の高さが変化した際に昇降ステージ200がエアーモータ401を介して受けるショックは、前記第二の緩衝機構で吸収して昇降ステージ200や昇降装置300を保護する。
【0020】
昇降ステージ200の下面に設ける5基の研削・研磨作動用の各エアーモータ401の支持機構は、昇降ステージ200の下面の上水平支持板404aに固定しコイルバネ402を圧縮状態で周設した4本の垂直シャフト403により下水平支持板404bを吊支持して、この水平支持板404bの下面にモータ本体部を吊固定装着したものである。
このコイルバネ402を周設した4本の垂直シャフト403と上下水平支持板404a,404bが本例の第一の緩衝機構である。
上水平支持板404aは昇降ステージ200と一体的に形成するか或いは昇降ステージ200に代替しても良い。
この水平支持板404a,404bは、垂直シャフト403とコイルバネ402により平常は水平を保持してエアーモータ401を吊支持し、研削・研磨盤501からの外力発生時の微小の前後左右上下揺動による傾斜変位を吸収する。また外力が解除した際は元の水平状態に復元する。
この支持機構により研削・研磨盤501を被研削・研磨面にタッチした際、或いは研削・研磨中の被研削・研磨面の高さが変化した際にエアーモータ401が直接受けるショックを最初に吸収してエアーモータ401等を保護する。
【0021】
各エアーモータ401は、平面的に見て前列に3基を配列し、後列に2基配列し、前列と後列は千鳥配列にし、その垂直回転軸に装着した研削・研磨盤501の前進研削・研磨範囲を、端部間でラップするようにし縞状研磨・研削を皆無にしたものである。
各エアーモータ401による研削・研磨盤501の回転方向は、全て同一方向に設定し、或いは台車幅方向に交互に逆転関係に設定し、更にはこれらが任意に設定制御可能にしておいてもよい。いずれにしても被研削・研磨面に対する被研削・研磨方向が規制されないか否か、或いは研削・研磨盤の種類などで回転方向を任意に選択設定すればよい。
【0022】
研削・研磨盤501は、エアーモータ401垂直回転軸の下部に好ましくは着脱可能に水平状態で装着するものであり用途に応じて、円盤状の或いはブラシ状の研削・研磨盤を任意に交換して研削・研磨処理を行う。
【0023】
エアーモータ401への駆動エアー供給装置600は、外部又は走行台車100に搭載したエアーポンプ等に順次連結したエアーホース601と、手動レバー602L付の又は自動のエア供給バルブ602と、空気作動弁603と、エアー分配マニホールド:デストリビュータ604と、エアー分配ホース605とから構成してなる。
【0024】
エアーモータ401から排出される圧縮空気は、研削粉塵を舞い上げるが、この粉塵が問題にならない場合はそのままでもよい。一方粉塵の飛散が問題になる場合は、本例のように昇降ステージ200の全周囲を透明な耐摩耗性の材質で形成した防塵スカート700(一部のみ表示などを垂下設置するとともに防塵スカート内の研削粉塵を吸引除去する集塵装置を台車本体101に搭載又は外設することができる。
【0025】
尚、本例の走行台車100の両側部には吊上搬送用のフック掛けリング110を設け、またエアーモータ操作用のレバー106Lは、エアー給排操作用のエアーバルブ106Vをリモート操作してエアーモータの駆動と停止を操作する。エアーバルブ106Vには空気作動弁603とその入側に細いエアー配管106P−1と106P−2で接続されている。
【0025】
次に本例のデッキ表面の研削・研磨装置の研削・研磨処理操作の一例を紹介する。
1、被研削・研磨面に対する研削・研磨盤501の高さを無接触の待機高さにしておき、エア供給バルブ602を開作動させてエアーモータ401を回転駆動可能状態にする。
2、回転ハンドル301を操作して、昇降ステージ200を下降させ被研削・研磨面に対する研削・研磨盤501の接地位置を基準高さ位置に調節設定する。
3、ハンドル106のレバー106Lを操作してエアーバルブ106Vを開にしエアーモータを回転駆動させる。
4、ハンドル106を操作しながら走行台車100を前進走行させ研削・研磨作業を開始する。
5、研削・研磨状態を見ながら回転ハンドル301を操作して被研削・研磨面への研削・研磨盤501の面圧を微調整する。
6、研削・研磨の方向変換は、無指向性の場合はハンドル106を操舵操作すればよいが、指向性の場合は、カウンターウエイト107を搭載しているからハンドル106を押し下げて前部の車輪を浮き上がらせて、後輪のいずれかを回転軸にして回すことにより簡単に行うことができる。
7、研削・研磨作業終了の際は、レバー106Lを操作してエアーバルブ106Vを閉作動させてエアーモータ401を停止させ、回転ハンドル301を操作して被研削・研磨面に対する研削・研磨盤501の高さを無接触の待機高さに戻しておく。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明のデッキ表面の研削・研磨装置は、前述したように、デッキ表面が広くても凹凸が多少存在しても、手動或いは自動による前・後進等の操作が簡単であり且つ研削・研磨厚みや面圧力の平衡性を保持し、研削・研磨処理をより均一で効率よく短時間で可能にし、作業員の肉体的負担を大幅に軽減可能にした優れた効果をもたらすものである。
これのより建築構造物の床や船舶のデッキや船腹などの錆落とし、清掃処理や塗装の前処理、或いはメンテナンス等々に有利に適用されるもので、これらの産業界に貢献すること多大なものがある。
【符号の説明】
【0027】
SF:被研削・研磨面 300:昇降装置
100:走行台車 402:コイルバネ
101:台車本体 403:垂直シャフト
106:ハンドル 404a,404b:水平支持板
107:カウンターウエイト 401:エアーモータ
200:昇降ステージ 501:研削・研磨盤を
201:垂直シャフト 600:駆動エアー供給装置
203:ブッシュ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行台車(100)において、台車本体(101)の後部に走行方向操作用のハンドル(106)とカウンターウエイト(107)を設け、台車本体(101)の前部ステージ(101F)の下に昇降ステージ(200)を平行昇降可能に設け、前部ステージ(101F)に昇降ステージ(200)の昇降装置(300)を設け、昇降ステージ(200)の下面に左右前後上下の揺動を緩衝する第一の緩衝機構を各々介して複数基の研削・研磨作動用の電動モータ、或いは油圧モータ、又はエアーモータを平面的に見て前列と後列に配列し且つ前・後配列の関係を千鳥配列にして設け、各モータの回転軸に研削・研磨盤(501)を被研削・研磨面(SF)に対して平行状態で装着したことを特徴とするデッキ表面の研削・研磨装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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