説明

デバイスウェハ及びデバイスウェハの切断方法

【課題】 デバイスウェハから個々のチップを精度よく分割することができるデバイスウェハを提供するものである。
【解決手段】 デバイスウェハ100は、ウェハ処理工程で基板1をエッチングすることにより形成され、ストリート3の延在方向に沿って当該ストリート3に配設される溝部10を備え、溝部10が、スクライバーの回転刃200によりデバイスウェハ100に対して押圧されて形成される亀裂20に、デバイスウェハ100の平面視で連続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に複数の素子がマトリックス状にそれぞれ形成されたチップ領域と当該隣り合うチップ領域間にあるストリートとを備えるデバイスウェハ及びそのデバイスウェハを個々のチップに分割するデバイスウェハの切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造プロセスは、ウェハ製造工程、ウェハ処理工程、チップ化工程及び組立工程に大別される。
このうち、チップ化工程は、ウェハ処理工程で電子回路の形成されたウェハから各デバイスを個々のチップに切り出す工程であり、ウェハから個々のチップを切り出す方法として、薄いブレードの外周刃を用いてダイシングするダイシング法や、スクライブ・ブレーキング法などがある。
【0003】
このダイシング法では、硬質のシリコンを切るために、高速回転するダイヤモンドブレードが熱を帯び、研削した導電性のシリコンくずが発生する。このため、ダイシング法では、ブレードを冷却し、シリコンくずを切断場所から排出するための大量の純水をウェハに対して流すことになり、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスをパターン描画したウェハに適用することができない。特に、配線における層間絶縁膜として使用されるLow−k材料は、多孔質で機械的強度がないために、そのままブレードダイシングすると破壊してしまい、ダイシング法を適用することができない。
【0004】
これに対し、スクライブ・ブレーキング法は、ブレードの冷却及びシリコンくずの排出のための純水を必要とせず、ダイヤモンドツールでウェハ表面に碁盤の目状の浅いキズをつけた後、ウェハに圧力をかけて、キズに沿ってウェハを割り、チップ化する方法であり、化合物半導体などを主として小型チップ(5mm角以下)の製造に適用されている。
【0005】
例えば、従来の半導体レーザの製造方法は、GaN基板の上に、複数のリッジ部が設けられた半導体層を形成する工程と、半導体層の側からGaN基板に所定の間隔を置いて複数のキズを設ける工程と、キズに沿ってGaN基板を劈開する工程とを有する半導体レーザの製造方法であって、劈開する工程の前において、半導体層には、複数のリッジ部と複数のキズとの各間であって複数のキズと同一直線上に少なくとも1つの溝が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、従来の結晶ウェハの分割方法は、結晶ウェハのへき開面と結晶ウェハ表面の交線に平行なグリッドラインの交点およびその近傍にのみウェハ分割用溝を形成する工程と、前記ウェハ分割用溝が形成された前記グリッドラインに外力を印可する工程とを含む(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−227461号公報
【特許文献2】特開平8−213348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の半導体レーザの製造方法においては、溝とスクライブマークとが一方向(劈開方向、劈開線)に沿って形成されているが、この方向と直交する方向(共振器方向)に沿って溝とスクライブマークとが形成されていない。このため、従来の半導体レーザの製造方法においては、バーに溝又はスクライブマークがないため、バーを精度よくチップに分割することができず、チップの角部にチッピングが生じる恐れがある。
なお、従来の半導体レーザの製造方法において、溝は、GaNウェハの劈開の際に、劈開の進行方向に集中する応力を緩和して所望の方向に劈開させるためのものであり、GaNウェハをエッチングすることなく、GaNウェハ上の薄膜をエッチングして形成するために、単独でGaNウェハの劈開を可能にする深さではない。
【0009】
また、従来の結晶ウェハの分割方法は、グリッドラインの交点及びその近傍以外にウェハ分割用溝を形成しておらず、ダイシングテープの下面側からウェハ分割治具を押圧するのみでは、結晶ウェハから精度よくチップを分割することができず、チップのエッジ部にチッピングが生じる恐れがある。
【0010】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、デバイスウェハから個々のチップを精度よく分割することができるデバイスウェハ及びデバイスウェハの切断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るデバイスウェハにおいては、ウェハ処理工程で基板をエッチングすることにより形成され、ストリートの延在方向に沿って当該ストリートに配設される溝部を備え、溝部が、スクライバーの回転刃によりデバイスウェハに対して押圧されて形成される亀裂に、デバイスウェハの平面視で連続又は重畳するものである。
【発明の効果】
【0012】
開示のデバイスウェハは、ストリートに配設される溝部が、スクライバーの回転刃により形成される亀裂の進展を補助して、デバイスウェハから個々のチップを精度よく分割することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)は第1の実施形態に係るデバイスウェハの概略構成を示す平面図であり、(b)は図1(a)に示すデバイスウェハの部分拡大図である。
【図2】(a)は図1(b)に示すデバイスウェハの矢視A−A’線の断面図であり、(b)は図1(b)に示すデバイスウェハの矢視B−B’線の断面図であり、(c)は図1(b)に示すデバイスウェハの矢視C−C’線の断面図であり、(d)は図1(b)に示すデバイスウェハの矢視D−D’線の断面図であり、(e)はスクライバーの回転刃の進行方向を説明するための説明図である。
【図3】(a)は図2(d)に示す断面図における溝部の一端部と亀裂とが平面視で連続する一例を説明するための説明図であり、(b)は図2(d)に示す断面図における溝部の他端部と亀裂とが平面視で連続する一例を説明するための説明図であり、(c)は図2(d)に示す断面図における溝部の一端部と亀裂の始点とが平面視で連続する一例を説明するための説明図であり、(d)は図2(d)に示す断面図における溝部の他端部と亀裂の終点とが平面視で連続する一例を説明するための説明図である。
【図4】(a)は第1の実施形態に係る他のデバイスウェハの概略構成を示す平面図であり、(b)は図4(a)に示すデバイスウェハの部分拡大図である。
【図5】(a)は図4(b)に示すデバイスウェハの矢視A−A’線の断面図であり、(b)は図4(b)に示すデバイスウェハの矢視B−B’線の断面図であり、(c)は図4(b)に示すデバイスウェハの矢視C−C’線の断面図である。
【図6】(a)は図4(b)に示すストリートにおける溝部と亀裂とが平面視で重畳する一例を説明するための説明図であり、(b)は図4(b)に示すストリートにおける溝部と亀裂とが平面視で重畳する他の例を説明するための説明図であり、(c)は図4(b)に示すストリートにおける溝部と亀裂とが平面視で重畳しない一例を説明するための説明図であり、(d)は図4(b)に示すストリートにおける溝部と亀裂とが平面視で重畳しない他の例を説明するための説明図である。
【図7】(a)は基板上に酸化シリコン膜、窒化シリコン膜及びフォトレジスト膜を成膜した状態を示す断面図であり、(b)はフォトレジスト膜に開口を形成した状態を示す断面図であり、(c)は窒化シリコン膜及びフォトレジスト膜に開口部を形成した状態を示す断面図であり、(d)は窒化シリコン膜上のフォトレジストパターンを除去した状態を示す断面図であり、(e)は基板に溝部を形成した状態を示す断面図である。
【図8】(a)はテープ貼付工程の一例を説明するための説明図であり、(b)はスクライブ工程の一例を説明するための説明図であり、(c)はブレイク工程の一例を説明するための説明図であり、(d)はバー状のデバイスウェハの一例を説明するための説明図である。
【図9】(a)はテープ貼付工程の他の例を説明するための説明図であり、(b)はスクライブ工程の他の例を説明するための説明図であり、(c)はブレイク工程の他の例を説明するための説明図であり、(d)はバー状のデバイスウェハの他の例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(本発明の第1の実施形態)
デバイスウェハ100は、図1及び図2又は図4及び図5に示すように、ウェハ製造工程を経て作製されたシリコン(Si)や窒化ガリウム(GaN)等の半導体ウェハ(以下、「基板1」と称す)上に、ウェハ処理工程により、複数の素子がマトリクス状にそれぞれ形成されたチップ領域2と、当該隣り合うチップ領域2間にあるストリート3と、を備える。
【0015】
また、デバイスウェハ100は、ウェハ処理工程で基板1をエッチングすることにより形成され、ストリート3の延在方向に沿って当該ストリート3に配設される溝部10を備える。
この溝部10は、図8(b)又は図9(b)に示すスクライバーの回転刃(ディスク状のカッターホイール)200によりデバイスウェハ100に対して押圧されて形成される亀裂20に、デバイスウェハ100の平面視で連続又は重畳することになる。
【0016】
なお、図2、図3及び図5においては、基板1の厚みと、溝部10の長さ、幅及び深さと、亀裂20の長さ、幅及び深さと、ウェハ処理工程で成膜される薄膜(酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化膜、保護膜等)の膜厚との寸法差が顕著であるため、薄膜の図示を省略し、基板1、溝部10及び亀裂20の縮尺を変更して図示している。
【0017】
ここで、溝部10が亀裂20にデバイスウェハ100の平面視で連続するとは、図3(a)又は図3(b)に示すように、デバイスウェハ100における素子が形成された表面101側をスクライビングして表面101に亀裂20を入れた場合に、溝部10と亀裂20とが一体となることである。
【0018】
また、溝部10が亀裂20にデバイスウェハ100の平面視で連続するとは、図3(c)又は図3(d)に示すように、デバイスウェハ100の表面101に対向する裏面102側をスクライビングして裏面102に亀裂20を入れた場合に、基板1を介して溝部10と亀裂20とが重畳することである。
【0019】
なお、図3(c)においては、溝部10の端部のうち回転刃200の進行方向側の端部(以下、「一端部10a」と称す)と、亀裂20の始点20aと、が基板1を介して一致する場合を図示しているが、基板1を介して溝部10と亀裂20とが重畳するのであれば、溝部10の一端部10aと亀裂20の始点20aとが一致する必要はない。
【0020】
同様に、図3(d)においては、溝部10の端部のうち回転刃200の反進行方向側の端部(以下、「他端部10b」と称す)と、亀裂20の終点20bと、が基板1を介して一致する場合を図示しているが、基板1を介して溝部10と亀裂20とが重畳するのであれば、溝部10の他端部10bと亀裂20の終点20bとが一致する必要はない。
【0021】
また、溝部10が亀裂20にデバイスウェハ100の平面視で重畳するとは、図6(a)に示すように、デバイスウェハ100の表面101に亀裂20を入れた場合に、溝部10内に亀裂20が入ることであり、図6(c)に示すように、溝部10外に亀裂20が入る場合を含まない。
【0022】
また、溝部10が亀裂20にデバイスウェハ100の平面視で重畳するとは、図6(b)に示すように、デバイスウェハ100の裏面102に亀裂20を入れた場合に、基板1を介して溝部10と亀裂20とが重畳することであり、図6(d)に示すように、基板1を介して溝部10と亀裂20とが重畳しない場合を含まない。
【0023】
本実施形態に係るデバイスウェハ100は、溝部10が亀裂20にデバイスウェハ100の平面視で連続又は重畳することにより、スクライブ工程で形成する亀裂20による垂直クラックが溝部10に連結し、不連続又は非重畳である場合と比較して、ブレイク工程で垂直クラックの進展を容易にするという作用効果を奏する。
【0024】
なお、スクライバーの回転刃200の周縁部201は、チップ領域2に形成される素子の構造(基板1の厚み)に依存し、ブレイク工程において、デバイスウェハ100を個々のチップに分割することができる、亀裂20の長さ、幅及び深さになるような刃先が選択される。例えば、回転刃200の周縁部201は、基板1の厚みが約150μmである場合に、亀裂20の長さが約40μm〜50μmとなり、亀裂20の幅が約10μmとなり、亀裂20の深さが約5μmとなる、回転刃200の周縁部201に沿って所定間隔で周設されるV字形状、U字形状、鋸形状又は矩形形状等の突起を形成してなる刃先が選択される。
【0025】
また、溝部10は、亀裂20に対応して、長さが亀裂20の長さ以上に設定され、幅が亀裂20の幅以上に設定され、深さが亀裂20の深さ以上に設定される。
なお、本実施形態においては、スクライバーの回転刃200が、複数の突起を周縁部201に有し、溝部10が、回転刃200の打点衝撃によりデバイスウェハ100上に形成される亀裂20にデバイスウェハ100の平面視で連続するように、ストリート3の延在方向に沿って当該ストリート3に複数配設される(図1参照)。例えば、溝部10は、亀裂20が約40μmの長さ、約10μmの幅及び約5μmの深さである場合に、長さが約120μmに設定され、幅が約30μmに設定され、深さが50μmに設定される。
【0026】
しかしながら、溝部10は、スクライビング工程後からブレイク工程前までのデバイスウェハ100の搬送中に、個々のチップ(バー)に分割されない強度をデバイスウェハ100に保持させる溝の深さであるならば、一のストリート3の一端から他端にかけて連続する一の溝であってもよい(図4参照)。
【0027】
特に、本実施形態に係る溝部10は、図1(b)に示すように、複数のストリート3が交差する部分(以下、「交差領域3a」と称す)で当該各ストリート3の延在方向に沿って互いに交差する十字形状の十字溝部11と、隣り合う十字溝部11間(以下、「直線領域3b」と称す)にストリート3の延在方向に沿って延在する直線形状の直線溝部12と、を備える。
【0028】
このように、デバイスウェハ100は、ストリート3の交差領域3aに十字溝部11を配設することにより、スクライブ工程で形成する亀裂20による垂直クラックが、ブレイク工程で十字溝部11(ストリート3)の延在方向に進展し、ストリート3の交差領域3aでチップ領域2に進展することがなく、チップの角部におけるチッピングの発生を防止することができるという作用効果を奏する。
【0029】
また、デバイスウェハ100は、ストリート3の直線領域3bに直線溝部12を配設することにより、スクライブ工程で形成する亀裂20による垂直クラックが、ブレイク工程で直線溝部12(ストリート3)の延在方向に進展し、ストリート3の直線領域3bでチップ領域2に進展することがなく、チップのエッジ部におけるチッピングの発生を防止することができるという作用効果を奏する。
【0030】
なお、デバイスウェハ100の平面視における溝部10の平面形状は、図1(b)に示すように、溝部10の端部のうち回転刃200の進行方向側(一端部10a)が、当該回転刃200の進行方向に向かう先細り形状であり、特に、デバイスウェハ100の平面視におけるストリート3の延在方向に沿う溝部10の中心線上に、溝部10の長さ方向の先端が位置する先細り形状であることが好ましい。
【0031】
このように、デバイスウェハ100は、溝部10の平面形状が溝部10の一端部10aで先細り形状であることにより、ストリート3の中心線上に回転刃200を誘導することができ、ストリート3の中心線上に入れられた亀裂20による垂直クラックをストリート3の延在方向に精度よく進展させることができるという作用効果を奏する。
【0032】
なお、ブレイク工程においては、溝部10の一端部10aから垂直クラックを進展させるのであるが、溝部10の他端部10bは垂直クラックの進展にあまり寄与しない。このため、本実施形態においては、溝部10の一端部10aのみを先細り形状としているが、少なくとも溝部10の一端部10aのみを先細り形状とすれば、溝部10の一端部10a及び他端部10bの両端部を先細り形状にしてもよい。
【0033】
また、本実施形態においては、図2(e)に示すように、スクライバーの回転刃200の往復運動により、互いに平行の隣り合うストリート3において、回転刃200の進行方向が逆転するために、溝部10の平面形状は、図1(b)に示すように、互いに平行の隣り合うストリート3において、相反する方向に先細り形状としている。
【0034】
しかしながら、溝部10の平面形状を、互いに平行の隣り合うストリート3において、相反する方向に先細り形状にすることは、スクライバーの回転刃200の進行方向と溝部10の他端部10bに対する一端部10aの方向とを合致させる必要がある。このため、溝部10の平面形状は、回転刃200の進行方向及び反進行方向に対応することができるように、溝部10の一端部10a及び他端部10bの両端を先細り形状にすることが好ましい。
【0035】
また、ストリート3の延在方向に対して垂直方向の断面視における溝部10の断面形状は、図2(b)及び図2(c)に示すように、デバイスウェハ100の深さ方向に向かう先細り形状であり、特に、デバイスウェハ100の平面視におけるストリート3の延在方向に沿う溝部10の中心線の直下に、溝部10の深さ方向の先端が位置する先細り形状であることが好ましい。
【0036】
このように、デバイスウェハ100は、溝部10の断面形状が先細り形状であることにより、スクライブ工程で形成する亀裂20による垂直クラックを、ブレイク工程でデバイスウェハ100の深さ方向に精度よく進展させることができるという作用効果を奏する。
【0037】
なお、1本のストリート3に延在する溝部10の個数及び形状は、基板1の寸法(ウェハ径、厚み)や回転刃200の周縁部201の形状によって、適宜設定するものであるが、チッピングが生じ易いチップの角部を保護するために、少なくともストリート3の交差領域3aに十字溝部11を配設することが好ましい。
【0038】
つぎに、本実施形態に係る溝部10の製造方法について、図7を用いて説明する。
なお、以下の説明では、基板1上に成膜した酸化シリコン膜4及び窒化シリコン膜5をエッチングする際に溝部10も同時に形成する場合について説明するが、溝部10は、ウェハ処理工程におけるエッチングにより形成するのであれば、この工程に限られるものではない。
【0039】
まず、熱酸化法等により、基板1上に酸化シリコン膜4を成膜し、CVD(chemical vapor deposition)法等により、酸化シリコン膜4上に窒化シリコン膜5を堆積し、スピン塗布法等により、窒化シリコン膜5上にフォトレジスト膜6を塗布する(図7(a))。
【0040】
なお、酸化シリコン膜4は、窒化シリコン膜5と基板1との界面に生じるストレスを緩和し、このストレスに起因して基板1の表面に転位などの欠陥が発生するのを防止する。また、窒化シリコン膜5は、ストリート3における基板1をエッチングして溝部10を形成する際に、基板1の表面が酸化されることを防止するマスクとして使用する。
【0041】
そして、リソグラフィ工程により、ストリート3の交差領域3a及び直線領域3bにおける所望の位置に開口を有するフォトレジストパターン7を、窒化シリコン膜5の上に形成する(図7(b))。
【0042】
その後、このフォトレジストパターン7をマスクにしたドライエッチングで、ストリート3の窒化シリコン膜5とその下部の酸化シリコン膜4とを選択的にエッチングすることにより、ストリート3の交差領域3a及び直線領域3bにおける所望の位置に開口部8を形成する(図7(c))。
【0043】
そして、アッシング等により、窒化シリコン膜5上からフォトレジストパターン7を除去し(図7(d))、窒化シリコン膜5をマスクとして、ドライエッチングにより、基板1に溝部10を形成する(図7(e))。
【0044】
このように、デバイスウェハ100は、溝部10がウェハ処理工程で基板1をエッチングすることにより形成されることで、溝部10を形成する特別な工程を追加することなく、デバイスウェハ100の製造工程数及び製造コストの増加を抑制することができるという作用効果を奏する。
【0045】
つぎに、デバイスウェハ100を個々のチップに分割する切断方法について、図8及び図9を用いて説明する。
なお、基板1上に素子を形成すると共に、ストリート3の延在方向に沿って当該ストリート3に複数の溝部10を形成する工程(ウェハ処理工程)については、前述した溝部10の製造方法を除き、通常のウェハ処理工程であるので、説明を省略する。
【0046】
まず、デバイスウェハ100の表面101をスクライビングする場合について、図8を用いて説明する。
ウェハ処理工程後に、図示しないウェハマウンタは、ウェハフレーム300とデバイスウェハ100との位置合わせを行ない、デバイスウェハ100の裏面102に粘着性樹脂テープである保護テープ400を貼着し、デバイスウェハ100をウェハフレーム300に固定する(テープ貼付工程、図8(a))。
【0047】
そして、図示しないスクライバーは、デバイスウェハ100の表面101に対して回転刃200を圧接状態で溝部10に対応させて転動し(図8(b))、デバイスウェハ100の平面視で溝部10に連続又は重畳する亀裂20からなるスクライブラインを、デバイスウェハ100の表面101に形成する(スクライブ工程、図3(a)、図3(b)又は図6(a))。
【0048】
そして、図示しないブレイク装置は、ストリート3に延在する溝部10及び亀裂20(スクライブライン)に沿って、デバイスウェハ100の裏面102側にブレード500を配置し、ブレード500によりスクライブラインの直下に応力を加える(図8(c))。そして、ブレイク装置は、デバイスウェハ100の表面101及び裏面102側に垂直クラックを進展させ、デバイスウェハ100をバー状にする(図8(d))。
【0049】
同様に、ブレイク装置は、ストリート3に延在する溝部10及び亀裂20(スクライブライン)に沿って、バー状のデバイスウェハ100の裏面102側にブレード500を配置し、ブレード500によりスクライブラインの直下に応力を加える(図8(c))。そして、ブレイク装置は、バー状のデバイスウェハ100の表面101及び裏面102側に垂直クラックを進展させ、バー状のデバイスウェハ100を個々のチップに分割する(ブレイク工程)。
【0050】
つぎに、デバイスウェハ100の裏面102をスクライビングする場合について説明する。
ウェハ処理工程後に、図示しないウェハマウンタは、ウェハフレーム300とデバイスウェハ100との位置合わせを行ない、デバイスウェハ100の表面101に保護テープ400を貼着し、デバイスウェハ100をウェハフレーム300に固定する(テープ貼付工程、図9(a))。
【0051】
そして、図示しないスクライバーは、基板1の材料である半導体に透明な赤外線レーザを用いてデバイスウェハ100の裏面102側からレーザ光を走査し、デバイスウェハ100の表面101上のチップ領域2及びストリート3を認識して、デバイスウェハ100の裏面102に対する回転刃200のアライメントを行なう。
また、スクライバーは、デバイスウェハ100の裏面102に対して回転刃200を圧接状態で溝部10に対応させて転動し(図9(b))、デバイスウェハ100の平面視で溝部10に連続又は重畳する亀裂20からなるスクライブラインを、デバイスウェハ100の裏面102に形成する(スクライブ工程、図3(c)、図3(d)又は図6(b))。
【0052】
そして、図示しないブレイク装置は、溝部10及び亀裂20(スクライブライン)に沿って、デバイスウェハ100の表面101側にブレード500を配置し、ブレード500によりスクライブラインの直下に応力を加える(図9(c))。そして、ブレイク装置は、デバイスウェハ100の裏面102及び表面101側に垂直クラックを進展させ、デバイスウェハ100をバー状にする(図9(d))。
【0053】
同様に、ブレイク装置は、溝部10及び亀裂20(スクライブライン)に沿って、バー状のデバイスウェハ100の表面101側にブレード500を配置し、ブレード500によりスクライブラインの直下に応力を加える(図9(c))。そして、ブレイク装置は、バー状のデバイスウェハ100の裏面102及び表面101側に垂直クラックを進展させ、バー状のデバイスウェハ100を個々のチップに分割する(ブレイク工程)。
【0054】
このように、デバイスウェハ100の裏面102をスクライビングする場合においては、デバイスウェハ100の表面101に形成した溝部10が、デバイスウェハ100の裏面102に形成された亀裂20から進展した垂直クラックに連結し、デバイスウェハ100から個々のチップに分割するための補助をなすという作用効果を奏する。
【0055】
また、デバイスウェハ100の裏面102をスクライビングする場合においては、デバイスウェハ100の表面101に貼着した保護テープ400が、チップ領域2の素子に加わる外力に対する緩衝材になると共に、スクライブ工程で発生する基板1の欠けや薄膜の剥離などによるパーティクルの素子への付着を防止して、チップ領域2の素子を保護することができるという作用効果を奏する。
【符号の説明】
【0056】
1 基板
2 チップ領域
3 ストリート
3a 交差領域
3b 直線領域
4 酸化シリコン膜
5 窒化シリコン膜
6 フォトレジスト膜
7 フォトレジストパターン
8 開口部
10 溝部
10a 一端部
10b 他端部
11 十字溝部
12 直線溝部
20 亀裂
20a 始点
20b 終点
100 デバイスウェハ
101 表面
102 裏面
200 回転刃
201 周縁部
300 ウェハフレーム
400 保護テープ
500 ブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に複数の素子がマトリックス状にそれぞれ形成されたチップ領域と、当該隣り合うチップ領域間にあるストリートと、を備えるデバイスウェハにおいて、
ウェハ処理工程で前記基板をエッチングすることにより形成され、前記ストリートの延在方向に沿って当該ストリートに配設される溝部を備え、
前記溝部が、スクライバーの回転刃により前記デバイスウェハに対して押圧されて形成される亀裂に、前記デバイスウェハの平面視で連続又は重畳することを特徴とするデバイスウェハ。
【請求項2】
前記請求項1に記載のデバイスウェハにおいて、
前記溝部が、前記複数のストリートが交差する部分で、当該各ストリートの延在方向に沿って互いに交差する十字形状の十字溝部を備えることを特徴とするデバイスウェハ。
【請求項3】
前記請求項2に記載のデバイスウェハにおいて、
前記溝部が、前記隣り合う十字溝部間に前記ストリートの延在方向に沿って延在する直線形状の直線溝部を備えることを特徴とするデバイスウェハ。
【請求項4】
前記請求項1乃至3のいずれかに記載のデバイスウェハにおいて、
前記デバイスウェハの平面視における前記溝部の平面形状は、前記溝部の端部のうち前記回転刃の進行方向側が、当該回転刃の進行方向に向かう先細り形状であることを特徴とするデバイスウェハ。
【請求項5】
前記請求項1乃至4のいずれかに記載のデバイスウェハにおいて、
前記ストリートの延在方向に対して垂直方向の前記デバイスウェハの断面視における前記溝部の断面形状が、前記デバイスウェハの深さ方向に向かう先細り形状であることを特徴とするデバイスウェハ。
【請求項6】
基板上に複数の素子がマトリックス状にそれぞれ形成されたチップ領域と当該隣り合うチップ領域間にあるストリートとを備えるデバイスウェハを個々のチップに分割するデバイスウェハの切断方法において、
前記基板上に前記素子を形成すると共に、前記ストリートの延在方向に沿って当該ストリートに溝部を形成するウェハ処理工程と、
前記デバイスウェハに対してスクライバーの回転刃を圧接状態で転動し、前記デバイスウェハの平面視で前記溝部に連続又は重畳する亀裂を形成するスクライブ工程と、
前記亀裂からなるスクライブラインに沿って前記デバイスウェハを分断して個々のチップに分割するブレイク工程と、
を含むことを特徴とするデバイスウェハの切断方法。
【請求項7】
請求項6に記載のデバイスウェハの切断方法において、
前記ウェハ処理工程と前記スクライブ工程との間に、前記デバイスウェハにおける前記素子が形成された表面に保護テープを貼着するテープ貼付工程を含み、
前記スクライブ工程が、前記デバイスウェハの表面に対向する裏面に前記亀裂を形成することを特徴とするデバイスウェハの切断方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate