説明

デバイス統合用プログラム、デバイス統合方法、及び、ホスト装置

【課題】複数のデバイスを1つのデバイスに統合して置き換えるためのプログラムであって、アプリケーションプログラムを変更することなしに容易に当該置き換えを可能にするデバイス統合用プログラム等を提供する。
【解決手段】OSカーネル層のOSによって動作し、アプリケーション層に複数の周辺デバイスに対してコマンドを出力するアプリケーションを備え、複数の周辺デバイスの機能を備える1の複合デバイスと通信ポートを介して接続されるコンピューターに、デバイス統合用プログラムが、前記出力されるコマンドをOSカーネル層で取得する工程と、アプリケーション層で、取得したコマンドによる処理を複合デバイスで実行するための動作モードを決定し、取得したコマンドを複合デバイス用のコマンドに変換し決定した動作モードの情報を付加して前記通信ポートに出力する工程と、を実行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アプリケーションから出力されるコマンドに従って動作する複数のデバイスを1つのデバイスに統合して置き換えるためのプログラムに関し、特に、アプリケーションプログラムを変更することなしに容易に当該置き換えを可能にするデバイス統合用プログラム等に関する。
【背景技術】
【0002】
スーパーマーケットなどの小売販売業においては販売管理システムであるPOSシステムが普及しており、当該システムでは、サーバーとネットワークで接続される複数の端末装置(レジ)が当該装置に備えられるアプリケーションに従って動作し各種の処理を実行する。また、通常、当該端末装置には、それぞれ、プリンター等の周辺デバイスが設けられ、上記アプリケーションの指示によりレシートやクーポンの出力、小切手のスキャニング等を実行する。また、このような出力を伴うPOSシステムと類似した構成のシステムとしては、病院で用いられるシステム、運送会社で用いられるシステムなどがある。
【0003】
このような周辺デバイスを用いた業務システムにおいても、導入後に、技術向上や業務改善要望に伴って、機能拡張や周辺デバイスの置き換えなどのシステム改良の必要が出てくる場合があるが、かかる改良を行うためには上記アプリケーションのプログラムを変更する必要があった。
【0004】
しかし、かかるシステムは一般に業務の中枢として常時利用されているものであり、また、他のシステムとも複雑に連携している場合も多いため、そのアプリケーションを改変することは通常容易ではない。
【0005】
このアプリケーションプログラムの変更が必要であるという課題について、従来技術として以下のような提案がなされている。
【0006】
下記特許文献1では、すでに存在するアプリケーションプログラムを修正する必要なしに、従来のモデムに必要とされていたマイクロプロセッサおよびメモリを除去することが可能なパーソナルコンピュータ中でモデム機能を実行する装置について記載されている。
【0007】
また、下記特許文献2には、アプリケーションを変更することなく、1つの通信ポートにアクセスすることにより、他の通信ポートに接続されているプリンターへも同時に印刷を実行させることができ、複製印刷を可能にする装置について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−69427号公報
【特許文献2】特開2006−338443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した周辺デバイスについては、近年、複数の機能を1装置で実行する複合機が普及しており、例えば、プリンターとスキャナーの機能を兼ね備える複合機が広く使用されており、上記業務システムにおいても既存の複数の周辺デバイスを1つの複合機に統合するシステム改良が望まれる場合がある。
【0010】
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載の内容は、モデム機能、複製印刷機能に関するものであり、当該周辺デバイスの置き換えを解決するものではない。また、上記特許文献2では、OSカーネル層での処理であるため、一般に機能構築(プログラム開発等)が容易ではないという課題がある。
【0011】
そこで、本発明の目的は、アプリケーションから出力されるコマンドに従って動作する複数のデバイスを1つのデバイスに統合して置き換えるためのプログラムであって、アプリケーションプログラムを変更することなしに容易に当該置き換えを可能にするデバイス統合用プログラム、等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明の一つの側面は、OSカーネル層のオペレーティングシステムによって動作し、アプリケーション層に複数の周辺デバイスに対してコマンドを出力するアプリケーションを備え、前記複数の周辺デバイスの機能を備える1の複合デバイスと通信ポートを介して接続されるコンピューターに、デバイス統合用プログラムが、前記アプリケーションから出力される前記コマンドを前記OSカーネル層で取得する工程と、前記アプリケーション層で、前記取得したコマンドによる処理を前記複合デバイスで実行するための動作モードを決定し、前記取得したコマンドを前記複合デバイス用のコマンドに変換し、当該変換後のコマンドに前記決定した動作モードの情報を付加して前記複合デバイスが接続される通信ポートに出力する工程と、を実行させる、ことである。
【0013】
更に、上記発明において、一つの態様は、前記複合デバイスでは、前記通信ポートに出力された変換後のコマンドが受信され、前記動作モードの情報に従った動作モードで、前記受信したコマンドに従った処理が実行される、ことを特徴とする。
【0014】
更に、上記発明において、その好ましい態様は、前記変換後のコマンドを通信ポートに出力した後、当該コマンドに対するレスポンスを前記複合デバイスから受信するまでの間は、異なるコマンドについての前記通信ポートへの出力は行われない、ことを特徴とする。
【0015】
更にまた、上記発明において、一つの態様は、前記変換後のコマンドを前記通信ポートへ出力する前に、コマンドの指示内容を変更する処理がなされる、ことを特徴とする。
【0016】
上記の目的を達成するために、本発明の別の側面は、OSカーネル層のオペレーティングシステムによって動作し、アプリケーション層に複数の周辺デバイスに対してコマンドを出力するアプリケーションを備え、前記複数の周辺デバイスの機能を備える1の複合デバイスと通信ポートを介して接続されるコンピューターにおける、デバイス統合方法が、前記コンピューターが、前記アプリケーションから出力される前記コマンドを前記OSカーネル層で取得する工程と、前記コンピューターが、前記アプリケーション層で、前記取得したコマンドによる処理を前記複合デバイスで実行するための動作モードを決定し、前記取得したコマンドを前記複合デバイス用のコマンドに変換し、当該変換後のコマンドに前記決定した動作モードの情報を付加して前記複合デバイスが接続される通信ポートに出力する工程と、を有する、ことである。
【0017】
上記の目的を達成するために、本発明の更に別の側面は、OSカーネル層のオペレーティングシステムによって動作し、アプリケーション層に複数の周辺デバイスに対してコマンドを出力するアプリケーションを備え、前記複数の周辺デバイスの機能を備える1の複合デバイスと通信ポートを介して接続されるホスト装置が、前記アプリケーションから出力される前記コマンドを前記OSカーネル層で取得する仮想ポートと、前記アプリケーション層で、前記取得したコマンドによる処理を前記複合デバイスで実行するための動作モードを決定し、前記取得したコマンドを前記複合デバイス用のコマンドに変換し、当該変換後のコマンドに前記決定した動作モードの情報を付加して前記複合デバイスが接続される通信ポートに出力するコマンド制御部と、を有する、ことである。
【0018】
本発明の更なる目的及び、特徴は、以下に説明する発明の実施の形態から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を適用したPOS端末装置の実施の形態例に係る概略構成図である。
【図2】POS端末装置の概略機能構成図である。
【図3】コマンド出力時の処理手順を例示したフローチャートである。
【図4】POSシステムの改良を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態例を説明する。しかしながら、かかる実施の形態例が、本発明の技術的範囲を限定するものではない。なお、図において、同一又は類似のものには同一の参照番号又は参照記号を付して説明する。
【0021】
図1は、本発明を適用したPOS端末装置の実施の形態例に係る概略構成図である。また、図2は、当該POS端末装置の概略機能構成図である。図1及び図2に示すPOS端末装置2が本発明を適用した装置であり、当該装置では、POSアプリケーション201から複数の周辺デバイス3に対して出力されるコマンドをOSカーネル層230の仮想ポート202で取得する。そして、取得したコマンドをアプリケーション層220のコマンド制御部203で解釈し、当該コマンドを、複合機35の動作モードを付加した複合機35用のコマンドとして、複合機35が接続される通信ポート204Eへ出力する。複合機35では、当該コマンドを受けて、付加された動作モードでコマンドの内容を実行する。本POS端末装置2は、かかる処理を実行することにより、POSアプリケーション201のプログラムを変更することなく、複数の周辺デバイス(31−34)を1つの複合機(35)に置き換えることを可能にする。
【0022】
本実施の形態例では、スーパーマーケットなどで用いられるPOSシステムを想定しており、図1に示すように、POSサーバー1にネットワーク4を介して複数のPOS端末装置2が接続される構成をしている。POSサーバー1は、コンピューターシステムで構成され、上記複数のPOS端末装置2の管理とそれらのPOS端末装置2から取得される各種データの集計、管理等の処理を実行する。
【0023】
POS端末装置2は各レジに設置され、それぞれ、プリンター等の周辺デバイス3と接続される。周辺デバイス3は、POS端末装置2から出力される印刷コマンドに従って、レシートやクーポンを出力するプリンターや、小切手のスキャニングを行なうスキャナーなどであり、POS端末装置2は周辺デバイス3のホスト装置と位置づけられる。図1の右側に示すPOS端末装置2は周辺デバイスとして複合機35と接続され、本実施の形態例では当該POS端末装置2について説明する。
【0024】
本POS端末装置2は、コンピューターで構成され、図示していないが、CPU、RAM、ROM、HDDなどを備えている。後述するPOSアプリケーション201のプログラムや仮想ポート202及びコマンド制御部203のプログラムは、上記ROMに記憶され、それらのプログラムに従って上記CPUが動作することにより各処理が実行される。
【0025】
また、POS端末装置2は、図2に示すような機能構成となっている。POSアプリケーション201は、本発明に基づくシステム改良を施す前から当該システムに備えられる既存のアプリケーションである。また、本発明に基づくシステム改良を施す前においては、当該システムには、図2の点線で示す4つの周辺デバイス3、すなわち、プリンターA31、プリンターB32、スキャナー33、及び磁気リーダー34が備えられており、POSアプリケーション201には、それら各デバイスにコマンドを送って動作させる、アプリケーション、アプリ(1)201A〜アプリ(4)201Dが含まれる。
【0026】
プリンターA31は、例えば、レシートを出力するためのロール紙プリンターであり、アプリ(1)201Aは、レシート印刷のコマンドを、プリンターA31が処理可能な形式で、プリンターA31が接続されていた通信ポート204Aに向けて出力する。
【0027】
プリンターB32は、例えば、小切手の裏書を印刷するためのスリッププリンターであり、アプリ(2)201Bは、スリップ印刷のコマンドを、プリンターB32が処理可能な形式で、プリンターB32が接続されていた通信ポート204Bに向けて出力する。
【0028】
スキャナー33は、例えば、小切手をスキャニングするためのデバイスであり、アプリ(3)201Cは、スキャニングのコマンドを、スキャナー33が処理可能な形式で、スキャナー33が接続されていた通信ポート204Cに向けて出力する。
【0029】
磁気リーダー34は、例えば、小切手の磁気部の情報を読み取るためのデバイスであり、アプリ(4)201Dは、当該読み取りのためのコマンドを、磁気リーダー34が処理可能な形式で、磁気リーダー34が接続されていた通信ポート204Dに向けて出力する。
【0030】
なお、上記各アプリケーション(アプリ)には、各デバイス用のドライバーが含まれている。
【0031】
また、POSアプリケーション201は、図2に示すように、コンピューターのオペレーティングシステム(OS)に基づきその上でプログラムが各処理を実行するアプリケーション層220に位置する。
【0032】
次に、仮想ポート202は、POSアプリケーション201(アプリ(1)201A〜アプリ(4)201D)から出力された上記各コマンド(ここでは、元コマンドと呼ぶ)を、通信ポート204が受け取る前に上記オペレーティングシステムが位置するOSカーネル層230で受け取る部分である。そして、仮想ポート202は、取得した元コマンドをコマンド制御部203へ引き渡す。
【0033】
次に、コマンド制御部203は、仮想ポート202から受け取った元コマンドを複合機35用のコマンドに変換して複合機35が接続される通信ポート204Eに出力する部分である。また、当該処理において、元コマンドに対応する動作を複合機35で実行する場合の、複合機35の動作モードを決定し、当該動作モードの情報を上記出力するコマンドに含める。すなわち、元コマンドの要求を満たすために必要な機能を識別し、その機能の情報を複合機35が理解可能なコマンドで複合機35に知らせる。また、当該コマンド制御部203は、当該コマンドの出力によるセッションの開始と、その後の複合機35からのレスポンスによるセッションの終了を管理し、1つの通信ポート204Eの排他制御を行う。
【0034】
なお、仮想ポート202及びコマンド制御部203に係るプログラムが本発明のデバイス統合用プログラムに相当する。
【0035】
次に、POS端末装置2には、物理層240に通信ポート204(204A〜204E)が備えられ、通信ポート204Eには複合機35が接続される。ここでは、一例として、通信ポート204はシリアル通信のCOM通信ポートである。
【0036】
接続される複合機35は、上述した4つの周辺デバイス31〜34の機能を備えた周辺デバイスである。すなわち、ロール紙印刷、スリップ印刷、スキャニング、及び磁気部読み取りの機能を備えている。そして、本複合機35は、これら4つの各機能に応じた各動作モードを有し、上記コマンド制御部203から出力される動作モードのコマンドに従ってそのモードで動作する。
【0037】
なお、上述した4つの周辺デバイス31〜34は、かつて用いられていたものであり既にPOS端末装置2には接続されていないものとする。すなわち、複合機35に置き換えられているものとする。
【0038】
なお、ここでは、5つの通信ポート204が備えられているが、通信ポート204の数はこれに限定されることはない。また、既存の周辺デバイス31〜34の数、及び、複合機35が備える機能の数も4に限定されることはない。
【0039】
以上説明をしたような構成を有する本POS端末装置2では、POSアプリケーション201から周辺デバイス3に向けてコマンドが発せられた際の処理に特徴があり、以下、その処理の内容について説明する。図3は、当該処理の手順を例示したフローチャートである。
【0040】
まず、POSアプリケーション201の何れかのアプリから、何れかの通信ポート204に向けてコマンドが出力される(ステップS1)。例えば、アプリ(1)201Aから通信ポート204Aに向けてレシート出力のコマンドが発せられる。あるいは、例えば、アプリ(3)201Cから通信ポート204Cに向けて小切手をスキャニングすべきコマンドが発せられる。すなわち、POSアプリケーション201は、前述のとおり、改良前の既存システムに備えられていたものであるため、既存システム時に備えられていた周辺デバイス31〜34があるものとして、そのコマンドに対応する各周辺デバイス3に向けてコマンドを出力する。
【0041】
次に、出力されたコマンドは、コマンドに指定された通信ポート204に届く前に仮想ポート202によって受け取られる(ステップS2)。かかる処理は、いずれの通信ポート204へ向けたデータも、まず、仮想ポート202が受け取るように、レジストリーの(優先度の)設定を変更しておくことで実現され、かかる設定変更はOSの起動時に実行される。その後、受け取られた元コマンドは、仮想ポート202からアプリケーション層220のコマンド制御部203に送付される(ステップS2)。
【0042】
次に、コマンド制御部203は、送られた元コマンドを解釈し、当該コマンドの要求を実行するための複合機35における動作モードを決定する(ステップS3)。具体的には、元コマンドがどの既存周辺デバイス(31−34)に対して発せられたかを、出力先通信ポート204等の情報から判断し、その周辺デバイスの機能に相当する複合機35の動作モードを選択する。例えば、元コマンドが通信ポート204Aに向けて出力されたものであれば、プリンターA31の機能に相当する複合機の動作モードが、すなわち、ロール紙印刷の機能が選択される。
【0043】
次に、コマンド制御部203は、上記元コマンドのコマンド変換処理を実行する(ステップS4)。上述の通り、元コマンドは、各アプリ内のドライバーを経由して出力され、各既存周辺デバイスに依存したコマンド形式で表現されているため、それを複合機35が理解可能なコマンド形式に変換する。例えば、元コマンドがスキャナー33に向けて出力されたものであれば、スキャナー用のコマンドを複合機35用のコマンドに変換する。
【0044】
また、コマンド制御部203は、この変換後コマンドに、上記決定した動作モードの情報を付加する。
【0045】
次に、コマンド制御部203は、変換後コマンドを通信ポート204Eへ出力する(ステップS5)。さらに、使用される1つの通信ポート204Eの排他制御をすべく、この時点で、1つのセッションが開始されたことを上記RAMに記憶する(ステップS5)。その後、コマンド制御部203は、当該開始されたセッションが終了するまで、他のコマンドによる通信ポート204Eを用いたセッションを開始しない。言い換えれば、当該セッションの終了まで他のコマンドを通信ポート204Eに出力しない。例えば、ロール紙印刷の動作モードを使用するレシート印刷のコマンドを通信ポート204Eに出力後に、複合機35からの応答(レスポンス)があるまでは、他のコマンド、例えば、スキャニング実行コマンド等、を複合機35に向けて出力しない。
【0046】
その後、当該変換後コマンドが通信ポート204Eを介して複合機35に送信され、複合機35における当該コマンドに従った処理が実行される(ステップS6)。具体的には、複合機35が、変換後コマンドに含まれる上記動作モードの情報に従った動作モードに切り替え、コマンドの内容に従った処理を実行する。例えば、受け取ったコマンドがレシート印刷を要求するものであれば、ロール紙印刷のモードに切り替え、コマンドの内容に従ってレシートを印刷し出力する。また、受け取ったコマンドが小切手のスキャニングを要求するものであれば、スキャナーのモードに切り替え、小切手が所定箇所に挿入されるのを待ち、挿入された小切手のスキャニングを実行する。
【0047】
このように処理を実行すると、複合機35は、コマンドによって要求された処理が終了した旨のレスポンス(信号)を通信ポート204Eを介してコマンド制御部203に返信する。
【0048】
当該レスポンスを受信したコマンド制御部203は、上記開始したセッションを終了し、通信ポート204Eについて新たなセッションを開始可能な旨を上記RAMに記憶する(ステップS7)。従って、この時点で新たな元コマンドに基づく通信ポート204Eへの出力が可能となる。
【0049】
その後、コマンド制御部203は、受信したレスポンスを、元コマンドが発せられたアプリ内のドライバーが理解可能なデータ形式に変換し、言い換えれば、元コマンドが出力先としていた既存周辺デバイスからのレスポンスと同形式のデータに変換して、元コマンドが発せられたアプリに返信する(ステップS8)。
【0050】
返信されたレスポンスは上記アプリで受け取られて、既存システムの場合と同様に処理される。
【0051】
以上説明したような手順で、本POS端末装置2におけるコマンド処理が実行される。すなわち、POSアプリケーション201から既存周辺デバイス(31−34)に向けて出力されコマンドが、1つの複合機35で処理されるようになる。
【0052】
なお、上述の説明では、POSアプリケーション201から出力されたコマンドの要求をそのまま複合機35に指示することを前提として説明したが、複合機35への指示内容を変更するようにしても良い。例えば、POSアプリケーション201からモノクロプリンターであるプリンターA31に向けて出力されたレシートの印刷データを、カラープリントが可能な複合機35で出力する時に、色の付いたレシートとして印刷する場合には、コマンド制御部203が、元コマンドに対して色の情報を付加するデータ加工を実行するようにしてもよい。
【0053】
この場合、コマンド制御部203は、予め定められたルールに従って、上記コマンド解析時に、色を付加すべき印刷オブジェクトを特定し、そのオブジェクトの印刷コマンドに情報を追加するデータ加工を実行する。当該加工が加えられた印刷コマンドは、上述のとおり、コマンド変換後、通信ポート204Eへ出力される。
【0054】
また、上記指示内容の変更はこの色情報の付加のみでなく、印刷時の新たな画像の挿入(例えば、レシートにおけるロゴの追加)などでもよく、この場合にも、コマンド制御部203が同様のデータ加工を実行する。
【0055】
以上説明したように、本実施の形態例に係るPOS端末装置2では、POSアプリケーション201から出力されたコマンドを、一つに統合された周辺デバイスである複合機35で集約して処理することができる。そして、複数の周辺デバイス(31−34)を備える既存POS端末装置及びPOSシステムを、比較的容易な方法で本POS端末装置2及びそれを含むPOSシステムに改良することができる。言い換えれば、複数の周辺デバイスをそれらの機能を備える1つの複合機に置き換えることができる。
【0056】
図4は、当該改良を説明するための図である。当該図は、図2と同じ機能構成図であり、実線部分が上述した既存のPOS端末装置及びPOSシステムを示している。すなわち、改良前のシステムは、POSアプリケーション201(アプリ(1)−(4))から出力されたコマンドが対応する各通信ポート204(A−D)で受け取られ、それぞれ対応する各周辺デバイス(31−34)で処理が実行される構成となっている。そして、このような構成のシステムに対して、破線で示される部分を追加することにより、本POS端末装置2及びそれを含むPOSシステムにすることが可能である。
【0057】
すなわち、既存のPOSアプリケーション201(アプリ(1)−(4))を変更することなく、上述した仮想ポート202、コマンド制御部203、及び複合機35を追加することにより、既存POSシステムの複数の周辺デバイスを複合機に置き換えることが可能となる。そして、この改良(変更)は、新たな複合機35の設置と上記追加する部分のプログラムとデータを含む当該複合機のドライバーソフトウェアのインストールという作業で実行され得る。
【0058】
以上説明したように、本実施の形態例に係るデバイス統合用プログラムを用いることにより、複数の周辺デバイスを、既存のPOSアプリケーションプログラムの変更を伴わずに容易に、1つの複合機に置き換えることが可能になる。
【0059】
また、その複合機が接続される通信ポートの排他制御もなされるので、複数のデバイスに向けた元コマンドを問題なく処理することができる。
【0060】
また、コマンド制御部203がアプリケーション層に設けられるため、当該部分がなす機能を容易に開発することができる。
【0061】
また、上述のコマンド処理に合わせた指示内容の変更処理を行うことにより、POSアプリケーションプログラムの変更をせずに、POSアプリケーションの機能を拡張することもできる。
【0062】
なお、本実施の形態例では、POSサーバー1が複数のPOS端末装置2と接続されるシステムであったが、本発明は、当該構成に限らず、POS端末装置と周辺デバイスが接続される環境に対して適用することができる。
【0063】
また、本実施の形態例ではPOSシステムの例を示したが、本発明は、POSシステムに限らず、病院や運送会社で使用されるシステムなど、周辺デバイスでの処理指示を行うアプリケーションを備えたシステムに適用可能であり、特に、既存のアプリケーションプログラムの改変が困難である場合に有効である。
【0064】
また、本実施の形態例では、POSアプリケーションのプログラムやコマンド処理のためのプログラム等がROMに記憶されている例を示したが、これらプログラムはROMに限らず、RAMやHDD等の記憶媒体に記憶されていてもよい。また、これらプログラムは別々の記憶媒体に記憶されていてもよい。
【0065】
本発明の保護範囲は、上記の実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶものである。
【符号の説明】
【0066】
1 POSサーバー、 2 POS端末装置、 3 周辺デバイス、 4 ネットワーク、 31 プリンターA、 32 プリンターB、 33 スキャナー、 34 磁気リーダー、 35 複合機、 201 POSアプリケーション、 202 仮想ポート、 203 コマンド制御部、 204 通信ポート、 220 アプリケーション層、 230 OSカーネル層、 240 物理層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
OSカーネル層のオペレーティングシステムによって動作し、アプリケーション層に複数の周辺デバイスに対してコマンドを出力するアプリケーションを備え、前記複数の周辺デバイスの機能を備える1の複合デバイスと通信ポートを介して接続されるコンピューターに、
前記アプリケーションから出力される前記コマンドを前記OSカーネル層で取得する工程と、
前記アプリケーション層で、前記取得したコマンドによる処理を前記複合デバイスで実行するための動作モードを決定し、前記取得したコマンドを前記複合デバイス用のコマンドに変換し、当該変換後のコマンドに前記決定した動作モードの情報を付加して前記複合デバイスが接続される通信ポートに出力する工程と、を実行させる
ことを特徴とするデバイス統合用プログラム。
【請求項2】
請求項1において、
前記複合デバイスでは、前記通信ポートに出力された変換後のコマンドが受信され、前記動作モードの情報に従った動作モードで、前記受信したコマンドに従った処理が実行される
ことを特徴とするデバイス統合用プログラム。
【請求項3】
請求項1あるいは2において、
前記変換後のコマンドを通信ポートに出力した後、当該コマンドに対するレスポンスを前記複合デバイスから受信するまでの間は、異なるコマンドについての前記通信ポートへの出力は行われない
ことを特徴とするデバイス統合用プログラム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記変換後のコマンドを前記通信ポートへ出力する前に、コマンドの指示内容を変更する処理がなされる
ことを特徴とするデバイス統合用プログラム。
【請求項5】
OSカーネル層のオペレーティングシステムによって動作し、アプリケーション層に複数の周辺デバイスに対してコマンドを出力するアプリケーションを備え、前記複数の周辺デバイスの機能を備える1の複合デバイスと通信ポートを介して接続されるコンピューターにおける、デバイス統合方法であって、
前記コンピューターが、前記アプリケーションから出力される前記コマンドを前記OSカーネル層で取得する工程と、
前記コンピューターが、前記アプリケーション層で、前記取得したコマンドによる処理を前記複合デバイスで実行するための動作モードを決定し、前記取得したコマンドを前記複合デバイス用のコマンドに変換し、当該変換後のコマンドに前記決定した動作モードの情報を付加して前記複合デバイスが接続される通信ポートに出力する工程と、を有する
ことを特徴とするデバイス統合方法。
【請求項6】
OSカーネル層のオペレーティングシステムによって動作し、アプリケーション層に複数の周辺デバイスに対してコマンドを出力するアプリケーションを備え、前記複数の周辺デバイスの機能を備える1の複合デバイスと通信ポートを介して接続されるホスト装置であって、
前記アプリケーションから出力される前記コマンドを前記OSカーネル層で取得する仮想ポートと、
前記アプリケーション層で、前記取得したコマンドによる処理を前記複合デバイスで実行するための動作モードを決定し、前記取得したコマンドを前記複合デバイス用のコマンドに変換し、当該変換後のコマンドに前記決定した動作モードの情報を付加して前記複合デバイスが接続される通信ポートに出力するコマンド制御部と、を有する
ことを特徴とするホスト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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