説明

デバイス

【課題】有機EL材料をはじめとした薄膜の特性を劣化させることなく、大型化かつ高精度の微細パターニングを可能とするデバイスを提供すること。
【解決手段】基板と、前記基板上に形成された絶縁層と、少なくとも前記絶縁層の間に形成された薄膜層とを有し、前記薄膜層は転写により形成されたものであり、隣り合う絶縁層間の開口幅をA、該開口に対応する領域に存在する薄膜層の幅をE、絶縁層のピッチをPとしたとき、A+4(μm)≦E(μm)≦P−10(μm)であり、かつ、幅方向に隣り合う薄膜層間の間隔がほぼ一定であるデバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL素子をはじめとし、有機TFTや光電変換素子、各種センサーなどのデバイスを構成する薄膜のパターニング方法、および、かかるパターニング方法を使用するデバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、陰極から注入された電子と陽極から注入された正孔とが両極に挟まれた有機発光層内で再結合するものである。コダック社のC.W.Tangらによって有機EL素子が高輝度に発光することが示されて以来(非特許文献1参照)、多くの研究機関で検討が行われてきた。
【0003】
この発光素子は、薄型でかつ低駆動電圧下での高輝度発光と、発光層に種々の有機材料を用いることにより、赤(R)、緑(G)、青(B)の三原色をはじめとした多様な発光色を得ることが可能であることから、カラーディスプレイとしての実用化が進んでいる。例えば、図1に示すアクティブマトリクス型カラーディスプレイにおいては、画素を構成するR、G、Bの各副画素に対応させるように少なくとも発光層17R、17G、17Bを高精度にパターニングする技術が要求される。また、高性能有機EL素子を実現するためには多層構造が必要であり、典型的な膜厚が0.1μm以下である、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などを順に積層する必要がある。
【0004】
従来、薄膜の微細パターニングにはフォトリソグラフィー法、インクジェット法や印刷法などのウェットプロセス(塗布法)が用いられてきた。しかしながら、ウェットプロセスでは、先に形成した下地層の上にフォトレジストやインクなどを塗布した際に、極薄である下地層の形態変化や望ましくない混合などを完全に防止することが困難であり、使用できる材料が限定される。また、溶液から乾燥させることで形成した薄膜の画素内での膜厚均一性、および、基板内の画素間均一性を達成することが難しく、膜厚ムラに伴う電流集中や素子劣化が起きるために、ディスプレイとしての性能が低下するという問題があった。
【0005】
ウェットプロセスを用いないドライプロセスによるパターニング方法としてマスク蒸着法が検討されている。実際に実用化されている小型有機ELディスプレイの発光層は専ら本方式でパターニングされている。しかしながら、蒸着マスクは金属板に精密な穴を開ける必要があるために、大型化と精度の両立が困難であり、また、大型化するほど基板と蒸着マスクとの密着性が損なわれる傾向にあるために、大型有機ELディスプレイへの適用が難しかった。
【0006】
ドライプロセスで大型化を実現するために、あらかじめドナーフィルム上の有機EL材料をパターニングしておき、デバイス基板とドナーフィルム上の有機EL材料とを密着させた状態でドナーフィルム全体を加熱することで、有機EL材料をデバイス基板に転写させる方法が開示されている(特許文献1参照)。さらに、区画パターン(隔壁)内にパターニングされた有機EL材料をデバイス基板に接しない配置で対向させ、ホットプレートによりドナー基板全体を加熱することで有機EL材料を蒸発させ、デバイス基板に堆積させる蒸着転写法が開示されている(特許文献2参照)。しかしながら、上記手法ではドナー基板全体が加熱されて熱膨張するために、ドナー基板上にパターニングされた有機EL材料のデバイス基板に対する相対位置が変位し、しかも大型化するほど変位量が大きくなるために高精度パターニングが難しいという問題があった。さらに、近距離で対向させたデバイス基板が輻射により加熱されたり、区画パターンがある場合には、区画パターンからの脱ガスの影響などを受けたりするために、デバイス性能が悪化するという問題があった。
【0007】
ドナー基板の熱膨張による変位を防ぐ方法として、ドナー基板上に光熱変換層を形成し、その上に有機EL材料を熱蒸着により全面成膜し、光熱変換層に高強度レーザーを部分照射することにより発生した熱を利用して、全面に形成された、または区画パターンを用いずにR、G、Bを塗り分けた有機EL材料の一部分をデバイス基板にパターン転写する選択転写方式が開発されている(特許文献3〜4参照)。しかしながら、発生した熱は横方向にも拡散するので、レーザー照射範囲より広い領域の有機EL材料が転写され、その境界も明確ではない。これを防ぐためには、極めて短時間に高強度のレーザーを照射することが考えられる。しかしこの場合、有機EL材料が極めて短時間のうちに加熱されるため、最高到達温度を正確に制御することが難しい。そのため、有機EL材料が分解温度以上に達する確率が高くなり、結果としてデバイス性能が低下する問題があった。さらに、レーザーがRGB副画素ごとに選択的に照射される必要があるために、基板が大型化して画素の総数が増加するほど1枚の基板の処理時間が長くなるという問題もあった。
【0008】
ドナー基板の熱膨張による変位を防ぐ別の方法として、ドナー基板に光熱変換層を形成せずに、ドナー基板上の有機EL材料をレーザーで直接加熱する直接加熱転写法が開示されている(特許文献5参照)。特許文献5では、さらにR、G、Bを区画パターンで塗り分けておくことによりパターニングの際の混色の可能性を小さくしている。しかしながら、有機EL材料の典型的な膜厚は25nmと非常に薄いために、レーザーが十分に吸収されずにデバイス基板まで到達し、デバイス基板上の下地層を加熱してしまう問題がある。さらに、有機EL材料を昇華温度以上に加熱して十分な転写を行うには高強度のレーザーが必要となるが、区画パターンにレーザーが照射されると区画パターンが劣化するので、劣化防止のためには有機EL材料のみにレーザーが照射されるように高精度位置合わせが必要であり、大型化が困難であった。
【0009】
さらに、ドナー基板に光熱変換層を形成して、その上にR、G、Bの有機EL材料を塗り分けておき、光熱変換層にレーザーを照射して一括転写することで、ドナー基板の熱膨張による変位を防ぐ方法も開示されている(特許文献6参照)。しかしながら、ドナー基板上には区画パターンが形成されていないために、R、G、Bを溶液状態で塗布した際に隣の材料と混合したり、乾燥時の溶媒蒸気が隣の材料を再溶解させたりする問題があり、有機EL材料を高精度に塗り分けすることが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−260854号公報
【特許文献2】特開2000−195665号公報
【特許文献3】特許第3789991号公報
【特許文献4】特開2005−149823号公報
【特許文献5】特開2004−87143号公報
【特許文献6】特開2008−235011号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】“Applied Physics Letters”、(米国)、1987年、51巻、12号、913−915頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記のとおり、従来技術においては、大型化と精度を両立させながら、有機EL材料に損傷を与えることなく安定に微細パターニングを実現することは困難であった。特に、区画パターンをドナー基板に配置してレーザー転写法を利用することは、区画パターンの劣化、脱ガスまたは転写材料の温度ムラを誘発するため相性の悪いものであった。
【0013】
本発明はかかる問題を解決し、有機EL材料をはじめとした薄膜の特性を劣化させることなく、大型化かつ高精度の微細パターニングを可能とするデバイスを提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
すなわち、本発明の1つは、基板と、前記基板上に形成された絶縁層と、少なくとも前記絶縁層の間に形成された薄膜層とを有し、前記薄膜層は転写により形成されたものであり、隣り合う絶縁層間の開口幅をA、該開口に対応する領域に存在する薄膜層の幅をE、絶縁層のピッチをPとしたとき、A+4(μm)≦E(μm)≦P−10(μm)であり、かつ、幅方向に隣り合う薄膜層間の間隔がほぼ一定であるデバイスである。
【0015】
また、本発明の別の1つは、基板と、前記基板上に形成された絶縁層と、少なくとも前記絶縁層の間に形成された薄膜層とを有し、隣り合う絶縁層間の開口幅をA、該開口に対応する領域に存在する薄膜層の幅をE、絶縁層のピッチをPとしたとき、A+4(μm)≦E(μm)≦P−10(μm)であり、かつ、幅方向に隣り合う薄膜層間の間隔がほぼ一定であるデバイスであって、前記デバイスが有機EL素子であり、前記薄膜層が発光層であり、該有機EL素子は少なくとも正孔輸送層を含み、該正孔輸送層が絶縁層を覆うように連続して形成されているデバイスである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、有機EL材料をはじめとした薄膜にダメージを与えず、大型化かつ高精度の微細パターニングを可能とするという、著しい効果をもたらすものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明により発光層がパターニングされた有機EL素子の一例を示す断面図。
【図2】本発明による有機EL素子の発光層パターニング方法の一例を示す断面図。
【図3】図2における光照射方法の一例を示す平面図。
【図4】従来の光照射配置における問題点を説明する断面図。
【図5】従来のドナー基板における問題点を説明する平面図。
【図6】本発明によるパターニング方法の一例を示す断面図。
【図7】本発明によるパターニング方法の別の一例を示す断面図。
【図8】本発明による一括転写のパターニング方法の一例を示す断面図。
【図9】本発明における光照射方法の別の一例を示す斜視図。
【図10】本発明における光照射方法の別の一例を示す斜視図。
【図11】本発明における光照射方法の別の一例を示す斜視図。
【図12】本発明における光照射方法の別の一例を示す斜視図。
【図13】本発明におけるオーバーラップ光照射方法の一例を示す断面図。
【図14】本発明による一括転写のパターニング方法の別の一例を示す断面図。
【図15】本発明における光照射方法の別の一例を示す平面図。
【図16】本発明における光照射方法の別の一例を示す平面図。
【図17】本発明における光照射方法の別の一例を示す平面図。
【図18】本発明における光照射方法の別の一例を示す斜視図。
【図19】本発明における光の強度分布と転写材料温度の時間変化を説明する概念図。
【図20】本発明における照射光の成形方法の一例を示す斜視図。
【図21】本発明における転写補助層の一例を説明する断面図。
【図22】本発明における区画パターンの別の一例を示す断面図。
【図23】本発明によるパターニング方法の別の一例を示す断面図。
【図24】本発明によりパターニングされた有機EL素子の発光層の一例を示す断面図。
【図25】従来の塗布法によりパターニングされた有機EL素子の発光層の一例を示す断面図。
【図26】従来のマスク蒸着法によりパターニングされた有機EL素子の発光層の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図2および図3は、本発明の薄膜パターニング方法の一例を示す断面図および平面図である。なお、本明細書中で使用する多くの図は、カラーディスプレイにおける多数の画素を構成するRGB副画素の最小単位を抜き出して説明している。また、理解を助けるために、横方向(基板面内方向)に比較して縦方向(基板垂直方向)の倍率を拡大している。
【0019】
図2において、ドナー基板30は、支持体31、光熱変換層33、区画パターン34、区画パターン内に存在する転写材料37(有機ELのRGB各発光材料の塗布膜)からなる。有機EL素子(デバイス基板)10は、支持体11、その上に形成されたTFT(取出電極込み)12と平坦化膜13、絶縁層14、第一電極15、正孔輸送層16からなる。なお、これらは例示であるため、後述のように各基板の構成はこれらに限定されない。ドナー基板30の区画パターン34と、デバイス基板10の絶縁層14との位置を合わせた状態で、両基板は対向するように配置される。ドナー基板30の支持体31側からレーザーを入射して光熱変換層33に吸収させ、そこで発生する熱により転写材料37R、37G、37Bを同時に加熱・蒸発させ、それらをデバイス基板10の正孔輸送層16上に堆積させることで、発光層17R、17G、17Bを一括して転写、形成するものである。転写材料37R、37G、37Bに挟まれる区画パターン34の全域と、転写材料37R、37Bの外側に位置する区画パターン34の一部の領域が転写材料37と同時に加熱されるようにレーザーを照射することが、図2および図3の態様における特徴である。
【0020】
このように、ドナー基板上に転写材料以外の異物である区画パターンを形成することは、区画パターン自体が剥離して転写されたり、区画パターンから転写材料に不純物が混入する恐れがあるために、本来は好ましくない。まして、ドナー基板上に光熱変換層を設置して光を吸収させ、発生した熱により転写材料を転写させる蒸着転写法のように、転写材料が比較的高温に加熱される方式において、異物である区画パターンを積極的に加熱するように光を照射することは、デバイスの性能を悪化させる可能性が高いものとして、前例がなかった。
【0021】
しかし、本発明は、光熱変換層が設置されたドナー基板上において、あえて転写材料と同時に区画パターンを加熱するように光を照射することにより、初めて高精細なパターニングを可能としたものである。すなわち、このような照射方法によれば、図4に示すような区画パターンと転写材料の境界における温度低下が抑制されるので、境界に存在する転写材料をも十分に加熱して転写することができる。従って、転写薄膜の膜厚分布は従来より均一化されるので、デバイス性能への悪影響を防止できる。また、本発明においては用いる光の強度を小さくすることができることがわかった。そのため、転写材料と区画パターンが同時に加熱されるように光を当てた場合であっても、区画パターンの剥離や区画パターンからの脱ガスなどに起因するデバイス性能への悪影響を最小限に抑制できる。
【0022】
さらに、本発明の好ましい態様の1つとして、区画パターンの厚さを転写材料の厚さより厚くする場合には、区画パターンのうち転写材料より厚い部分の温度はそれほど上昇しない。そのため、区画パターンを通じてデバイス基板が高温に加熱されることもなく、区画パターンからの脱ガスの影響などもほとんどなく、デバイス性能が悪化しない。
【0023】
また、本発明の好ましい態様によれば、区画パターンに隔てられて存在する異なる転写材料に対して、区画パターンを跨ぐようにして同時に光を照射して加熱するので、異なる転写材料を一括して転写できる。例えば、図1に示した有機ELディスプレイにおけるRGB各発光層を本発明によりパターニングする場合は、RGB各発光層を一組としてまとめて転写することができるので、RGB各発光層に順次光を照射する必要があった従来法と比べてパターニング時間の短縮が可能になる。光は光熱変換層で十分に吸収されるために、異なる光吸収スペクトルをもつRGB各発光層でも同一の光源を用いて同程度の温度に加熱することができ、透過光によりデバイス基板が加熱される心配もない。
【0024】
区画パターンが存在しない場合には、図5に示すように、隣接する異なる転写材料同士(この例では37Rと37G)の混合部分が生じたり、転写材料(例えば37G)の境界位置が十分に制御されなかったりするという問題がある。区画パターンが存在することで、上記のような不完全部分の形成が防止されるので、一括転写してもデバイス性能を損なうことがない。また、区画パターンはフォトリソグラフィー法などにより高精度にパターニングすることができるために、異なる転写材料の転写パターンの隙間を最小にすることができる。これは、より開口率を高めて耐久性に優れた有機ELディスプレイを作製できるという効果につながる。
【0025】
図3は、図2におけるレーザー照射の様子をドナー基板30の支持体31側から見た模式図である。全面に形成された光熱変換層33があるために、支持体31(ガラス板)側から区画パターン34や転写材料37R、37G、37Bは実際には見えないが、レーザーとの位置関係を説明するために点線にて図示した。レーザービームは矩形であり、転写材料37R、37G、37Bを跨ぐようにして照射され、かつ、転写材料37R、37G、37Bの並びに対して垂直方向にスキャンされる。なお、レーザービームは相対的にスキャンされればよく、レーザーを移動させても、ドナー基板30とデバイス基板20とのセットを移動させても、その両方でもよい。
【0026】
以下では、本発明をさらに詳細に説明する。
【0027】
(1)照射光
図6は本発明におけるドナー基板への光照射方法の一例を示す断面図である。図6(a)において、ドナー基板30は、支持体31、光熱変換層33、区画パターン34、区画パターン内に存在する1種類の転写材料37からなり、転写基板20は支持体21のみからなる。本発明は、図6(b)に示すように、ドナー基板30の支持体31側からレーザーに代表される光を入射して、転写材料37の少なくとも一部と区画パターン34の少なくとも一部とが同時に加熱されるように光を光熱変換層33に照射することを特徴とする。このような配置をとることで、区画パターン34と転写材料37との境界での温度低下が抑制されるので、境界に存在する転写材料を十分に加熱して転写し、均一な転写膜27を得ることができる。
【0028】
図6(b)では、転写材料37が加熱されて蒸発し、転写基板20の支持体21に転写膜27として堆積している課程を模式的に示している。この時点で光照射を止める(光照射部分の移動により、この部分の光照射を終了する)こともできるし、このまま光照射を継続して、転写材料37の右側部分全てを転写し、その後、左側部分を転写することもできる。本発明では、材料や光照射条件を選べば、転写材料37が膜形状を保持した状態で転写基板20の支持体21に到達するアブレーションモードを使用することもできる。しかし、材料へのダメージを低減する観点からは、転写材料37が1〜100個の分子(原子)にほぐれた状態で蒸発し、転写される蒸着モードを使用する方が好ましい。
【0029】
図6(c)は、転写材料37の幅よりも広い光を、転写材料37の全幅と区画パターン34の幅の一部とが同時に加熱されるように光を光熱変換層33に照射する、本発明の好ましい態様の1つを示すものである。この配置によれば目的とする転写膜27のパターンを1回の転写で効率よく得ることができる。あるいは、1回目の光照射で転写材料37の膜厚の半分を転写し、2回目の光照射で残りの半分を転写することで、転写材料37への負荷をより低減することもできる。
【0030】
1枚のドナー基板30に対して光を光熱変換層33に複数回に分けて照射することで、転写材料37を膜厚方向に複数回に分割して転写することは、本発明の特に好ましい転写方法である。これにより、転写材料37だけでなく区画パターン34やデバイス基板20上に成膜された下地層などの最高到達温度を低下させられるので、ドナー基板の損傷やデバイスの性能低下を防止することができる。分割する場合、その回数nは限定されないが、少なすぎると上記の低温下効果が十分に発揮されず、多すぎると累積の加熱時間が長くなることによる弊害が生じるので、5回以上50回以下の範囲が好ましい。
【0031】
1画素に対応する転写材料のみを部分的に転写する従来方式において、膜厚方向にn回に分割して転写しても、材料劣化を抑制する効果は得られるが、基板1枚あたりの処理時間が概略n倍になるために、生産性が大きく低下するという問題があった。しかし、本発明では、m個(mは2以上の整数)の転写材料を一括して転写することもできるから、生産性を維持することができる。特に、m≧nの条件を満たす幅の広い光を用いると、従来方式と同等以上の高い生産性を確保できるため好ましい。ディスプレイの製造では大型基板でも1枚あたり2分前後で処理する必要がある。レーザーのスキャン速度を標準的な0.6m/s、基板の一辺が3mと仮定した場合には、24回(12往復)のスキャンで2分を要することを考慮すると、分割回数nは15回以上30回以下の範囲が特に好ましい。
【0032】
転写材料37R、37G、37Bは、それぞれ異なる蒸発速度の温度特性をもつことが珍しくない。したがって、例えば図2に示したように幅の広い均一光を照射した場合に、転写材料37Bは1回目の照射で全膜厚が転写されるが、37Rと37Gはそれぞれ半分の膜厚だけが転写されることがある。この場合には、2回目の照射によって37Rと37Gの残りの転写を完了させることが可能である。このとき、1回目の照射後にはドナー基板30上に転写材料37Bは存在しないが、1回目と同じ配置で2回目の照射をすることができる。同様の考え方で、例えば、37Rを10回、37Gを7回、37Bを5回などに分割して転写することができる。また、初めから転写材料37Bが形成されておらず、37Rと37Gのみが形成されたドナー基板を用いることもできる。
【0033】
転写材料37R、37G、37Bが有機EL素子の発光材料である場合には、後述のように、転写材料がホスト材料とドーパント材料との混合物であり、それらが異なる蒸発速度の温度特性をもつことが珍しくない。例えば、ホスト材料と比較してドーパント材料の蒸発温度が低い場合に、低温かつ長時間の加熱ではドーパント材料が先に全て蒸発してしまうという現象が起こりやすい。一方、ある程度以上の高温加熱では、ホスト材料とドーパント材料が実質的に同じ比率のまま蒸発するフラッシュ蒸発と呼ばれる現象を利用できるようになる。本発明では、光照射時間と光照射強度だけでなく転写回数も制御することができるので、材料劣化を抑制しつつ、フラッシュ蒸発に準ずる適度な高速蒸発条件を探し出すことが比較的容易になる。したがって、転写前後でホスト材料とドーパント材料比率の変わらない転写を実現することが可能である。
【0034】
また、1回の光照射で転写材料37の膜厚の約半分をあるデバイス基板に転写し、残りの約半分を別のデバイス基板に転写するなど、1枚のドナー基板30を用いて2枚のデバイス基板20への転写を行うこともできる。各デバイス基板へ転写する転写材料の膜厚を調整すれば、1枚のドナー基板から3枚以上のデバイス基板への転写も可能である。
【0035】
図6(c)で例示した光照射の配置において、図6(d)に示すように光照射の位置がδだけ変位したとても、転写材料37の全幅と区画パターン34の幅の一部とが同時に加熱されることに変わりないので、同様に均一な転写膜27を得ることができる。図4(b)に示した従来法では、光照射位置がずれると転写膜27の均一性が極端に損なわれるものであった。大型化において基板の全領域に渡って光照射を高精度に位置合わせする難易度を考えると、本発明の方法では光照射装置の負担が著しく軽減される。
【0036】
図7は、区画パターン34に対応して2種類以上の異なる転写材料37(この例では37R、37G、37Bの3種類)が存在する場合のドナー基板への光照射方法の一例を示す断面図である。ここで異なる転写材料とは、材料が異なる場合や複数の材料の混合割合が異なる場合、あるいは材料が同じでも膜厚や純度が異なる場合を意味する。この配置によれば、従来は転写材料ごとに3枚必要であったドナー基板30が1枚でよく、さらに、転写基板20との対向作業も1回で済ませられる。3種類の異なる転写材料は、種類ごとに(この例では37Gのみ)光照射して転写することができる。このとき、例えば転写材料37Gへのダメージを低減するために、比較的弱い強度の光を低速でスキャンすることにより光照射した場合、横方向への熱拡散により、隣の転写材料37Rもしくは37Bの一部が蒸発することがある。しかし、それらは後で転写される予定のものであり、結果的には図6(b)や(c)で示した分割転写の概念と同じなので、問題にはならない。さらに、区画パターン34が存在するために、例えば図5で示したように、隣接する転写材料37Rと37Gとの混合物が転写膜27Gとして形成される恐れもない。
【0037】
ディスプレイ用途でよく見られるように、転写材料37R、37G、37Bの組がその並びのx方向にk回、その垂直のy方向にh回繰り返し形成されている場合は、例えば、m個(mは2以上k以下の正数)の転写材料37Gに光を同時照射しながら、y方向に光をスキャンすることで、転写時間を1/m程度に短縮することができる。その場合にも、転写材料37Gと区画パターン34の一部を加熱するように光を光熱変換層に照射すれば、図6(d)で示した変位δで表される光照射ずれの影響を受けにくく、図6(d)で示したのと同様の効果が得られる。
【0038】
図8は、2種類以上の異なる転写材料37(この例では37R、37G、37Bの3種類)の各々の幅と区画パターン34(この例では37Rと37G、37Gと37Bに挟まれた区画パターン2つ分)の幅との合計よりも広い光を光熱変換層33に照射することで、2種類以上の異なる転写材料37(この例では37R、37G、37Bの3種類)を一括して転写する、本発明の好ましい態様の1つを示す図である。ここでは、図2および図3で示したのと同様に、37R、37G、37Bの1組を一括で転写する例を示したが、ディスプレイ用途でよく見られるように、転写材料37R、37G、37Bの組がその並びのx方向にk回、その垂直のy方向にh回繰り返し形成されている場合は、例えば、m組(mは2以上k以下の数)の転写材料37R、37G、37Bに光を同時照射しながら、y方向に光をスキャンすることで、転写時間を1/m程度に短縮することができる。
【0039】
m=kの場合には、図9(a)に示すように、ドナー基板30の転写領域38の全幅を覆うような光を照射することで、1回のスキャンで全転写材料を一括転写することもできる。この配置では、ドナー基板30に対する光照射の位置合わせを大幅に軽減できる。図9(b)に示すように、基板上に転写領域38が複数存在する場合には、それらを一括転写することも可能である。デルタ配列と呼ばれるように、RGBの各副画素が一直線に並んでいない場合でも、照射光を直線的にスキャンできるために、容易に転写を実施できる。
【0040】
m<kの場合は、例えば図10(a)に示すようにドナー基板30の転写領域38の半分程度の幅を覆うような光を照射し、図10(b)に示すように次のスキャンで残りの半分に光を照射し、2回のスキャンで全転写材料を転写することができる(m≒k/2の場合)。さらに、図11に示すように、スキャン方向に段違いの位置関係にある2つの光を同時にスキャンすることで、上記2回のスキャンと同様に前転写材料層37を転写することもできる。光源の最大出力や光の均一性などの制約から転写領域38の全幅を覆う1つの光を得ることが難しい場合でも、このようにすることで、擬似的に1回のスキャン(m=k)と同様に全転写材料を一括転写することができる。もちろん、図12に示すように、光の幅をさらに狭くして、数を増やすことでも同様の効果を得ることができる。
【0041】
複数の光は、図13に示すように、オーバーラップさせることもできる。光が全転写領域を最終的に照射すればよく、照射光の幅や、照射の順番、オーバーラップの度合いなどは、多様な転写条件から最適なもの選択することができる。中でも、2種類以上の転写材料層37のうち特定の転写材料層の位置で光をオーバーラップさせることが好ましい。図13に模式的に示したように、光の境界位置では不可避的に温度勾配が生じて、その影響は転写材料層37の種類によって少しずつ異なる。ランダムな位置で光をオーバーラップさせると、異なるムラの状態をもつ転写膜17が2種類以上生じることになるので、それらを同時に抑制することが難しくなる。一方、温度勾配の影響が特定の転写膜に限定されれば、ムラが発生しにくい転写材料層を選択し、さらにそのムラを最小限にする光照射条件を選択することができるので、影響を最小限に抑制することが可能になる。
【0042】
特定の転写材料層の選択方法は特に限定されない。最終的に得られるデバイスにおいてムラが最小化されるように、転写材料層37の中で転写温度が最低(または最高)のものや、熱分解温度が最高(または最低)のもの、あるいは膜厚が最も薄い(または最も厚い)ものなど、目的に応じて選択すればよい。
【0043】
2種類以上の異なる転写材料がそれぞれ、ホスト材料とドーパント材料のような2種類以上の材料の混合物からなる場合は、該2種類以上の材料の昇華温度の差が最も小さい組み合わせの転写材料の転写材料層37(例えば、37G)の位置で光をオーバーラップさせることが好ましい。有機EL素子では特にホスト材料とドーパント材料との組成比が発光性能に大きく影響することが知られているが、上記の方法によれば、オーバーラップ位置における温度勾配の影響で転写膜17の組成比が変化する割合を最も小さくして、転写膜17に生じるムラを抑制し、良好な発光特性を保つことができる。
【0044】
また、2種類以上の異なる転写材料の中に1種類の材料からなる転写材料が含まれている場合は、該1種類の材料からなる転写材料の転写材料層37の位置で光をオーバーラップさせることが好ましい。この場合、この転写材料層では組成比の変化を考慮しなくてもよいので、オーバーラップ位置における温度勾配の影響が極めて小さくなる。
【0045】
上記の一括転写の例において、転写材料37R、37G、37Bが異なる蒸発温度(蒸気圧の温度依存性)を有する場合は、最高の蒸発温度をもつ転写材料に合わせて、1回の光照射で一括転写をしてもよい。逆に、例えば、転写材料37Rが最低の蒸発温度をもつ場合には、1回の光照射で転写材料37Rは全部、37G、37Bは一部を転写しておき、再度の光照射により37G、37Bの残りを転写してもよく、さらに、3回以上の転写に分けてもよい。転写時間を1/m程度に短縮できるので、同じ時間をかけてm回の転写に分けることで、転写材料37へのダメージをより軽減することが可能になる。転写プロセスに割ける時間と転写材料へのダメージを考慮しながら、多様な転写条件から最適なもの選択することができる。
【0046】
図14は、本発明の一括転写の別の例を示すものである。図7で示したのと同じ、転写材料37Gの幅と区画パターン34の幅との合計に相当する幅の光を、転写材料37R、37Gに跨るように照射することで、転写材料37Rおよび37Gのそれぞれ一部を一括転写する。照射光の幅の分だけ次の照射光の位置をシフトさせながら、この転写方法を何回も繰り返すことによって、最終的に全転写材料37R、37G、37Bの転写を完了する。この方法では、照射光とドナー基板との位置関係を厳密に制御する必要がない。さらに、次の照射光の位置を厳密に前の照射光の幅の分だけずらす必要はなく、オーバーラップさせてもよい。光が全転写領域を最終的に照射すればよく、照射光の幅や、照射の順番、オーバーラップの度合いなどは特に限定されるものではない。前述のデルタ配列でも照射光を直線的にスキャンすることができる。
【0047】
上記一括転写の大きな効果は、既に述べたとおり、光を照射する位置を従来法ほど厳密に制御する必要がなくなる点である。例えば、大気中に置かれた光源から真空中に置かれたドナー基板30に光を照射する場合には、従来法では、大気と真空とを隔てる透明窓によって生じる微小な光路変化が無視できないので、光源や光のスキャン機構を全て真空中に入れる必要があり、大きな装置上の負担を強いるという問題があった。一方、本発明の方法では上記の光路変化は無視でき得るので、光照射装置だけでなく、転写プロセス装置全体の機構も簡素化できる。
【0048】
また、上記一括転写には別の効果がある。幅の広い光の照射範囲内では、レーザー転写で問題となってきた横方向の熱拡散が起きないので、レーザーを比較的低速でスキャンするなどして、光を比較的長時間照射することが可能になる。そのため、転写材料の最高到達温度の制御がより容易となり、転写時に転写材料にダメージを与えることなく高精度パターニングできるので、デバイス性能の低下を最小限に抑制できる。また、転写材料へのダメージが低減されることは、同時に区画パターンへのダメージも低減されることになり、区画パターンを有機材料で形成しても劣化が起こりにくくなる。そのため、ドナー基板を複数回に渡って再利用でき、パターニングに掛かるコストを低減できる。
【0049】
上記では、矩形の光をy方向にスキャンする例を挙げたが、図15に示すように、転写材料37R、37G、37Bの並びのx方向にスキャンすることもできる。また、スキャン速度や光強度は一定である必要はなく、x方向へのスキャンでは、例えば、転写材料37R、37G、37Bの各蒸発温度に最適な条件になるように、スキャン速度や光強度をスキャン中に変調することもできる。スキャン方向は、x方向あるいはy方向の区画パターン34に沿う方向が好ましいが、特に限定されるものではなく、斜め方向にスキャンすることもできる。
【0050】
スキャン速度は特に限定されないが、0.01〜2m/sの範囲が一般的に好ましく使用される。光の照射強度が比較的小さく、より低速でスキャンすることで転写材料へのダメージを低減する場合には、スキャン速度は0.6m/s以下、さらに0.3m/s以下であることが好ましい。上記の分割転写のように、分割回数を増やすことで全体の低温下を図る場合には、1回のスキャン当たりの投入熱量を減らすために、スキャン速度は比較的高速の0.3m/s以上であることが好ましい。
【0051】
照射光の光源としては、容易に高強度が得られ、照射光の形状制御に優れるレーザーを好ましい光源として例示できるが、赤外線ランプ、タングステンランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、フラッシュランプなどの光源を利用することもできる。レーザーでは、半導体レーザー、ファイバーレーザー、YAGレーザー、アルゴンイオンレーザー、窒素レーザー、エキシマレーザーなど公知のレーザーが利用できる。本発明における目的の1つは、転写材料へのダメージを低減することであるから、短時間に高強度の光が照射される間欠発振モード(パルス)レーザーより、連続発信モード(CW)レーザーの方が好ましい。
【0052】
照射光の波長は、照射雰囲気とドナー基板の支持体における吸収が小さく、かつ、光熱変換層において効率よく吸収されれば特に限定されない。従って、可視光領域だけでなく紫外光から赤外光まで利用できる。ドナー基板の好適な支持体の材料を考慮すると、好ましい波長領域として、300nm〜5μmを、更に好ましい波長領域として、380nm〜2μmを例示することができる。
【0053】
照射光の形状は上記で例示した矩形に限定されるものではない。線状、楕円形、正方形、多角形など転写条件に応じて最適な形状を選択できる。複数の光源から重ね合わせにより照射光を形成してもよいし、逆に、単一の光源から複数の照射光に分割することもできる。図16に示すように、スキャン方向の幅が階段状の光をスキャンすることで転写材料37R、37G、37Bへの各照射時間(加熱時間)を調整し、転写材料37R、37G、37Bの各蒸発温度に最適化した一括転写を実施することができる。照射光の強度ムラに対応して光のスキャン方向の幅を変調して、照射エネルギー密度(照射強度×照射時間)を一定にすることもできる。また、図17に示すように、矩形の光を斜めに照射する配置でy方向にスキャンしてもよい。照射光の形状(幅)が固定されている場合に、光学系の大きな変更を必要とせずに、多様なピッチを有する転写に対応することができる。
【0054】
また、図18(a)に示すように、ドナー基板30の転写領域38の全領域を覆う光を照射することもできる。この場合には、照射光をスキャンさせることなく全転写材料を一括転写することができる。さらに、図18(b)に示すように、ドナー基板30の転写領域38を部分的に覆う光を照射し、次に未照射の部分を照射するステップ照射を使用してもよい。この場合も、照射光の前後の位置をオーバーラップさせてもよいので、光照射の位置合わせを大幅に軽減できる。
【0055】
照射強度や転写材料の加熱温度の好ましい範囲は、照射光の均一性、照射時間(スキャン速度)、ドナー基板の支持体や光熱変換層の材質や厚さ、反射率、区画パターンの材質や形状、転写材料の材質や厚さなど様々な条件に影響される。本発明では、光熱変換層に吸収されるエネルギー密度が0.01〜10J/cmの範囲となり、転写材料が220〜400℃の範囲に加熱される程度の照射条件を整えることが目安となる。
【0056】
図19は、光をスキャン照射した際の、転写材料(あるいは光熱変換層)の温度変化を示す概念図である。様々な条件によるので一概には言えないが、図19(a)のように、照射強度が一定の条件では温度が徐々に上昇し、目標(蒸発温度)に達した後も上昇する傾向にある。この条件でも転写材料の厚さや耐熱性、照射時間によっては問題なく転写を実施できる。一方、転写材料へのダメージをより低減する好ましい照射方法として、図19(b)に示すように、温度が目標付近で一定となり、かつ、その期間が長くなるように、強度に分布をもたせた照射光を用いて、ある点における照射強度を時間的に変化させる例が挙げられる。転写材料へのダメージを低減できることは、同時に区画パターンへのダメージも低減できることを意味するので、例えば、区画パターンを感光性有機材料により形成した場合でも、区画パターンが劣化せず、ドナー基板の再利用回数を増やすことができる。図18に示したように、一定範囲を覆う照射光をスキャンせずに照射する場合には、図19における「スキャン方向」を「照射時間」と読み替えることで、同様の効果を得ることができる。
【0057】
図20は、照射光の成形方法を示す斜視図である。図20(a)に示すように、光学マスク41によって円形の光束から矩形の照射光を切り出すことができる。光学マスク41の他にナイフエッジや光学干渉パターンなどを利用してもよい。図20(b)、(c)に示すように、レンズ42やミラー43により、光源44からの光を集光あるいは拡張することで照射光を成形することができる。また、上記の光学マスク41、レンズ42、ミラー43などを適宜組み合わせることで、任意の形状の照射光に成形することができるし、例えば、矩形照射光の長軸方向は均一な照射強度を有し、短軸方向にはガウシアン分布を有するように設計することも可能である。
【0058】
図20(d)は、図19(b)に示した照射強度の時間依存性を実現する一例を示す。ドナー基板30の面に対して照射光をレンズ42を介して斜めに集光する。破線で示した仮想焦点面45の手前側がドナー基板30の光熱変換層(図示せず)に略一致するように配置すると、手前側はレンズ42の焦点距離と一致するオンフォーカス条件になるため照射密度が最大となり、奥側は焦点距離から外れるオフフォーカス条件になるため、光がぼけることで照射密度が低減する。このような配置で照射光を奥から手前に向けてスキャンすると、図19(b)に概念的に示した照射強度の時間依存性を得ることができる。
【0059】
(2)ドナー基板
ドナー基板の支持体は、光の吸収率が小さく、その上に光熱変換層や区画パターン、転写材料を安定に形成できる材料であれば特に限定されない。条件によっては樹脂フィルムを使用することが可能であり、樹脂材料としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアクリル、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリアミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリエポキシ、ポリプロピレン、ポリオレフィン、アラミド樹脂、シリコーン樹脂などを例示できる。
【0060】
化学的・熱的安定性、寸法安定性、機械的強度、透明性の面で、好ましい支持体としてガラス板を挙げることができる。ソーダライムガラス、無アルカリガラス、含鉛ガラス、ホウ珪酸ガラス、アルミノ珪酸ガラス、低膨張ガラス、石英ガラスなどから条件に応じて選択することができる。本発明の転写プロセスを真空中で実施する場合には、支持体からのガス放出が少ないことが要求されるので、ガラス板は特に好ましい支持体である。
【0061】
光熱変換層が高温に加熱されても、支持体自体の温度上昇(熱膨張)を許容範囲内に収める必要があるので、支持体の熱容量は光熱変換層のそれより十分大きいことが好ましい。従って、支持体の厚さは光熱変換層の厚さの10倍以上であることが好ましい。許容範囲は転写領域の大きさやパターニングの要求精度などに依存するために一概には示せないが、例えば、光熱変換層が室温から300℃上昇し、その熱拡散により支持体が加熱された場合の支持体自体の温度上昇を、光熱変換層の温度上昇分の1/100である3℃以下に抑制したい場合には、光熱変換層と支持体の体積熱容量が同程度の場合には、支持体の厚さは光熱変換層の厚さの100倍以上であることが好ましい。また、支持体自体の温度上昇を、光熱変換層の温度上昇分の1/300である1℃以下に抑制したい場合には、支持体の厚さは光熱変換層の厚さの300倍以上であることが更に好ましい。光熱変換層の体積熱容量が支持体の2倍程度である典型的な場合には、支持体の厚さは光熱変換層の厚さの200倍以上であることが好ましく、600倍以上であることが更に好ましい。このようにすることで、大型化しても熱膨張による寸法変位量が少なく、高精度パターニングが可能になる。
【0062】
光熱変換層は、効率よく光を吸収して熱を発生し、発生した熱に対して安定である材料・構成であれば特に限定されない。例として、カーボンブラック、黒鉛、チタンブラック、有機顔料または金属粒子などを樹脂に分散させた薄膜、もしくは金属薄膜などの無機薄膜を利用することができる。本発明では、光熱変換層が300℃程度に加熱されることがあるので、光熱変換層は耐熱性に優れた無機薄膜からなることが好ましく、光吸収や成膜性の面で、金属薄膜からなることが特に好ましい。金属材料としては、タングステン、タンタル、モリブデン、チタン、クロム、金、銀、銅、白金、鉄、亜鉛、アルミニウム、コバルト、ニッケル、マグネシウム、バナジウム、ジルコニウム、シリコン、カーボンなどの単体や合金の薄膜、それらの積層薄膜を使用できる。
【0063】
光熱変換層の支持体側には必要に応じて反射防止層を形成することができる。さらに、支持体の光入射側の表面にも反射防止層を形成してもよい。これらの反射防止層は屈折率差を利用した光学干渉薄膜が好適に使用され、シリコン、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタンなどの単体や混合薄膜、それらの積層薄膜を使用できる。
【0064】
光熱変換層の転写材料側には必要に応じて転写補助層を形成することができる。転写補助層の機能の一例は、加熱された光熱変換層の触媒効果により転写材料が劣化することを防止する機能であり、タングステンやタンタル、モリブデン、シリコンや酸化物・窒化物など不活性な無機薄膜を使用することができる。転写補助層の機能の別の一例は、転写材料を塗布法により成膜する際の表面改質機能であり、例示した不活性な無機薄膜の粗表面薄膜や金属酸化物の多孔質膜などを使用することができる。転写補助層の機能の別の一例は、転写材料の加熱均一化であり、例えば、図21(a)に示すように、比較的厚い転写材料37を均一に加熱するために、熱伝導性に優れた金属などの材料によりスパイク状の(もしくは多孔質状の)構造をもつ転写補助層39を形成し、その間隙に転写材料37を担持するように配置することができる。この機能を有する転写補助層は、図21(b)に示すように、光熱変換層37と一体化してもよい。
【0065】
光熱変換層は転写材料の蒸発に十分な熱を与える必要があるので、光熱変換層の熱容量は転写材料のそれより大きいことが好ましい。従って、光熱変換層の厚さは転写材料の厚さより厚いことが好ましく、転写材料の厚さの5倍以上であることが更に好ましい。数値としては0.02〜2μmが好ましく、0.1〜1μmが更に好ましい。光熱変換層は照射光の90%以上、更に95%以上を吸収することが好ましいので、これらの条件を満たすように光熱変換層の厚さを設計することが好ましい。転写補助層を形成する場合は、光熱変換層にて発生した熱を効率よく転写材料に伝えることの妨げにならないように、要求される機能を満たす範囲内で薄くなるように設計することが好ましい。
【0066】
光熱変換層は転写材料が存在する部分に形成されていれば、その平面形状は特に限定されない。上記において例示したようにドナー基板全面に形成されていてもよいし、例えば、区画パターンが、支持体との密着性は良好であるが光熱変換層との密着性に乏しい場合には、区画パターンの下部で光熱変換層が不連続となり、区画パターンと支持体の少なくとも一部が接触するようにパターニングされていてもよい。光熱変換層がパターニングされる場合には、区画パターンと同種の形状となる必要はなく、例えば、区画パターンが格子状で、光熱変換層はストライプ状であってもよい。光熱変換層は光吸収率が大きいことから、光熱変換層を利用して転写領域内外の適切な位置にドナー基板の位置マークを形成することが好ましい。
【0067】
光熱変換層や転写補助層の形成方法としては、スピンコートやスリットコート、真空蒸着、EB蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなど、材料に応じて公知技術を利用できる。パターニングする場合には公知のフォトリソグラフィー法やレーザーアブレーションなどを利用できる。
【0068】
区画パターンは、転写材料の境界を規定し、光熱変換層で発生した熱に対して安定である材料・構成であれば特に限定されない。無機物では酸化ケイ素や窒化ケイ素をはじめとする酸化物・窒化物、ガラス、セラミックスなどを、有機物ではポリビニル、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリスチレン、アクリル、ノボラック、シリコーンなどの樹脂を例として挙げることができる。プラズマテレビの隔壁に用いられるガラスペースト材料を本発明の区画パターン形成に用いることもできる。区画パターンの熱導電性は特に限定されないが、区画パターンを介して対向するデバイス基板に熱が拡散するのを防ぐ観点から、有機物のように熱伝導率が小さい方が好ましい。さらに、パターニング特性と耐熱性の面でも優れた材料としては、ポリイミドとポリベンゾオキサゾールを好ましい材料として例示できる。
【0069】
区画パターンの成膜方法は特に限定されず、無機物を用いる場合には真空蒸着、EB蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、CVD、レーザーアブレーションなどの公知技術を、有機物を用いる場合には、スピンコート、スリットコート、ディップコートなどの公知技術を利用できる。区画パターンのパターニング方法は特に限定されず、例えば公知のフォトリソグラフィー法が利用できる。フォトレジストを使用したエッチング(あるいはリフトオフ)法によって区画パターンをパターニングしてもよいし、例示した上記樹脂材料に感光性を付加させた材料を用いて、区画パターンを直接露光、現像することでパターニングすることもできる。さらに、全面形成した区画パターン層に型を押しつけるスタンプ法やインプリント法、樹脂材料を直接パターニング形成するインクジェット法やノズルジェット法、各種印刷法などを利用することもできる。
【0070】
区画パターンの形状としては、既に例示した格子状構造に限定されるのではなく、例えば、ドナー基板30上に3種類の転写材料37R、37G、37Bが形成されている場合には、区画パターン34の平面形状がy方向に伸びるストライプであってもよい。また、図22に示すように、転写材料37よりも幅の広い区画パターン34を形成することもできる。この場合は、3種類の転写材料37R、37G、37Bがそれぞれ形成された3枚のドナー基板30を用意して、1枚のデバイス基板にそれぞれを対向させて本発明により転写する工程を3回繰り返すことで、転写材料37R、37G、37Bを1枚のデバイス基板上にパターニングすることができる。転写材料37R、37G、37Bのピッチあるいは間隙を小さくする必要がある高精細パターニングにおいて有効な形状の一例である。
【0071】
区画パターンの厚さについては特に限定されない。例えば、図23に示すように、区画パターン34が転写材料37と同じ厚さであるか、あるいはより薄いとしても、ドナー基板30とデバイス基板20との間隙を保持すれば、転写時に蒸発した転写材料がやや広がって堆積する程度なので、転写材料37R、37G、37B間の混合を起こさずに転写することができる。転写材料はデバイス基板の被転写面に直接接しない方が好ましく、また、ドナー基板の転写材料とデバイス基板の被転写面との間隙は、1〜100μm、さらに2〜20μmの範囲に保つことが好ましいので、区画パターンの厚さは転写材料の厚さより厚く、また、1〜100μm、さらに2〜20μmの厚さであることが好ましい。このような厚さの区画パターンをデバイス基板に対向ざせることで、ドナー基板の転写材料とデバイス基板の被転写面との間隙を一定値に保つことが容易になり、また、蒸発した転写材料が他の区画へ侵入する可能性を低減できる。
【0072】
区画パターンの断面形状は、蒸発した転写材料がデバイス基板に均一に堆積することを容易にするために、順テーパー形状であることが好ましい。図2で例示したように、デバイス基板10の上に絶縁層14のようなパターンが存在する場合には区画パターン34の幅よりも絶縁層14の幅の方が広いことが好ましい。また、位置合わせの際には、区画パターン34の幅が絶縁層14の幅に収まるように配置することが好ましい。この場合には、区画パターン34が薄くても、絶縁層14を厚くすることで、ドナー基板30とデバイス基板10とを所望の間隙に保持することができる。区画パターンの典型的な幅は5〜50μm、ピッチは25〜300μmであるが、用途に応じて最適な値に設計すればよく、特に限定はされない。
【0073】
区画パターン内に転写材料を配置する際に、後述の塗布法を利用する場合には、溶液が他の区画へ混入したり、区画パターンの上面に乗りあげたりすることを防ぐために、区画パターン上面に撥液処理(表面エネルギー制御)を施すことができる。撥液処理としては、区画パターンを形成する樹脂材料へフッ素系材料などの撥液性材料を混合したり、さらに撥液性材料の高濃度領域を区画パターンの表面あるいは上面へ選択形成する方法がある。他にも、区画パターンを表面エネルギーの異なる材料の多層構造とする方法や、また、区画パターン形成後に光照射やフッ素系材料含有ガスによるプラズマ処理やUVオゾン処理を施すことで、表面エネルギー状態を制御するなど、公知技術を利用する方法もある。
【0074】
(3)転写材料
転写材料は、有機EL素子をはじめとし、有機TFTや光電変換素子、各種センサーなどのデバイスを構成する薄膜を形成する材料である。転写材料は、有機材料、金属を含む無機材料いずれでもよく、加熱された際に、蒸発、昇華、あるいはアブレーション昇華するか、あるいは、接着性変化や体積変化を利用して、ドナー基板からデバイス基板へと転写されるものであればよい。また、転写材料が薄膜形成の前駆体であり、転写前あるいは転写中に熱や光によって薄膜形成材料に変換されて転写膜が形成されてもよい。
【0075】
転写材料の厚さは、それらの機能や転写回数により異なる。例えば、フッ化リチウムなどのドナー材料(電子注入材料)を転写する場合には、その厚さは1nmで十分であるし、電極材料の場合には、その厚さは100nm以上になることもある。本発明の好適なパターニング薄膜である発光層の場合は、転写材料の厚さは10〜100nmが、さらに20〜50nmであることが好ましい。
【0076】
転写材料の形成方法は特に限定されず、真空蒸着やスパッタリングなどのドライプロセスを利用することもできるが、大型化に対応が容易な方法として、少なくとも転写材料と溶媒からなる溶液を区画パターン内に塗布し、前記溶媒を乾燥させた後に転写することが好ましい。塗布法としては、インクジェット、ノズル塗布、電界重合や電着、オフセットやフレキソ、平版、凸版、グラビア、スクリーンなどの各種印刷などを例示できる。特に、本発明では各区画パターン内に定量の転写材料を正確に形成することが重要であり、この観点から、インクジェットを特に好ましい方法として例示できる。
【0077】
区画パターンがないと、塗液から形成されるRGB有機EL材料層は互いに接することになり、その境界は一様ではなく、少なからず混合層が形成される。これを防ぐために、互いに接しないように隙間を空けて形成した場合には、境界領域の膜厚を中央と同一にすることが困難である。いずれの場合も、この境界領域はデバイスの性能低下を招くために転写することができないので、ドナー基板上の有機EL材料パターンよりも幅の狭い領域を選択的に転写する必要がある。従って、実際に使用可能な有機EL材料の幅が狭くなり、有機ELディスプレイを作製した際には、開口率の小さな(非発光領域の面積が大きな)画素となってしまう。また、境界領域を除いて転写しなければならない都合上、一括転写ができないので、R、G、Bを順次にレーザー照射して、それぞれ独立に転写する必要があり、高強度レーザー照射の高精度位置合わせが必要となる。このような問題を解決する観点から、区画パターンと塗液から形成された転写材料を有するドナー基板を用いて、前記の方法で一括転写する方法を、本発明の特に好ましい態様として例示できる。
【0078】
転写材料と溶媒とからなる溶液を塗布法に適用する場合には、一般的には界面活性剤や分散剤などを添加することで溶液の粘度や表面張力、分散性などを調整してインク化することが多い。しかしながら、本発明では、それらの添加物が転写材料に残留物として存在すると、転写時にも転写膜内に取り込まれて、不純物としてデバイス性能に悪影響を及ぼすことが懸念される。従って、これらの不純物の添加または意図せぬ混入を最小にすることが好ましく、乾燥後の転写材料の純度が95%以上、さらに98%以上となるように溶液を調製することが好ましい。インク中の溶剤以外の成分に占める転写材料の割合を95重量%以上とすることで、このような調整が可能である。
【0079】
溶媒としては、水、アルコール、炭化水素、芳香族化合物、複素環化合物、エステル、エーテル、ケトンなど公知の材料を使用することができる。本発明において好適に使用されるインクジェット法では、100℃以上、さらに150℃以上の比較的高沸点の溶媒が使用されること、さらに、有機EL材料の溶解性に優れていることから、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルイミダゾリジノン(DMI)、γ−ブチルラクトン(γBL)、安息香酸エチル、テトラヒドロナフタレン(THN)、キシレン、クメンなどを好適な溶媒として例示できる。
【0080】
転写材料が溶解性と転写耐性、転写後のデバイス性能を全て満たす場合には、転写材料の原型を溶媒に溶解させることが好ましい。転写材料が溶解性に乏しい場合には、転写材料に、アルキル基などの溶媒に対する可溶性基を導入することで、可溶性を改良することができる。デバイス性能面で優れる転写材料の原型に可溶性基を導入した場合には、性能が低下することがある。その場合には、例えば転写時の熱において、この可溶性基を脱離させて原型材料をデバイス基板に堆積させることもできる。
【0081】
可溶性基を導入した転写材料を転写する際に、ガスの発生や転写膜への脱離物の混入を防止するためには、転写材料が塗布時に溶媒に対する可溶性基をもち、塗布後に熱または光によって可溶性基を変換または脱離させた後に、転写材料を転写することが好ましい。例えば、ベンゼン環やアントラセン環を有する材料を例に挙げると、式(1)〜(2)に示すような可溶性基をもつ材料に光を照射して原型材料に変換することができる。また、式(3)〜(6)に示すように、可溶性基としてエチレン基やジケト基などの分子内架橋構造を導入し、そこからエチレンや一酸化炭素を脱離させるプロセスによって原型材料に復帰させることもできる。可溶性基の変換または脱離は乾燥前の溶液状態でも、乾燥後の固体状態でもよいが、プロセス安定性を考慮すると、乾燥後の固体状態で実施することが好ましい。転写材料の原型分子は非極性的であることが多いために、固体状態にて可溶性基を脱離する際に脱離物を転写材料内に残留させないためには、脱離物の分子量は小さく極性的(非極性的な原型分子に対して反発的)であることが好ましい。また、転写材料内に吸着されている酸素や水を脱離物と一緒に除去するためには、脱離物がこれらの分子と反応しやすいことが好ましい。これらの観点からは一酸化炭素を脱離するプロセスで可溶化基を変換または脱離することが特に好ましい。本手法はナフタセン、ピレン、ペリレンなどの縮合多環炭化水素化合物の他、縮合多環複素化合物にも適用できる。もちろん、これらは置換されていても無置換であっても良い。
【0082】
【化1】

【0083】
(4)デバイス基板
デバイス基板の支持体は特に限定されず、ドナー基板で例示した材料を用いることができる。両者を対向させて転写材料を転写させる際に、温度変化による熱膨張の違いによりパターニング精度が悪化するのを防ぐためには、デバイス基板とドナー基板の支持体の熱膨張率の差は10ppm/℃以下であることが好ましく、またこれらの基板が同一材料からなることが更に好ましい。ドナー基板の特に好ましい支持体として例示したガラス板は、デバイス基板の特に好ましい支持体としても例示できる。なお、両者の厚さは同じでも異なっていてもよい。
【0084】
デバイス基板は転写時には支持体のみから構成されていてもよいが、デバイスの構成に必要な構造物をあらかじめ支持体上に形成しておくほうが一般的である。例えば、図1に示した有機EL素子では、絶縁層14や正孔輸送層16までを従来技術によって形成しておき、それをデバイス基板として使用することができる。
【0085】
上記絶縁層のような構造物は必須ではないが、デバイス基板とドナー基板とを対向させる際に、ドナー基板の区画パターンがデバイス基板に形成済みの下地層に接触し、傷つけることを防止する観点から、デバイス基板にあらかじめ形成されているのが好ましい。絶縁層の形成には、ドナー基板の区画パターンとして例示した材料や成膜方法、パターニング方法を利用することができる。絶縁層の形状や厚さ、幅、ピッチについても、ドナー基板の区画パターンで例示した形状や数値を例示することができる。
【0086】
(5)転写プロセス
ドナー基板とデバイス基板とを真空中で対向させ、転写空間をそのまま真空に保持した状態で大気中に取り出し、転写を実施することができる。例えば、ドナー基板の区画パターンおよび/またはデバイス基板の絶縁層を利用して、これらに囲まれた領域を真空に保持することができる。この場合には、ドナー基板および/またはデバイス基板の周辺部に真空シール機能を設けてもよい。デバイス基板の下地層、例えば正孔輸送層が真空プロセスで形成され、発光層を本発明によってパターニングし、電子輸送層も真空プロセスで形成する場合は、ドナー基板とデバイス基板とを真空中で対向させ、真空中で転写を実行することが好ましい。この場合に、ドナー基板とデバイス基板とを真空中で高精度に位置合わせし、対向状態を維持する方法には、例えば、液晶ディスプレイの製造プロセスにおいて使用されている、液晶材料の真空滴下・貼り合わせ工程などの公知技術を利用することができる。また、転写雰囲気によらず、転写時にドナー基板を放熱あるいは冷却することもできるし、ドナー基板を再利用する場合には、ドナー基板をエンドレスベルトとして利用することも可能である。金属などの良導体で形成した光熱変換層を利用することで、ドナー基板を静電方式により容易に保持することができる。
【0087】
本発明においては蒸着モードの転写が好ましいために、1回の転写において単層の転写膜をパターニングすることが好ましい。しかしながら、剥離モードやアブレーションモードを利用することで、例えば、ドナー基板上に電子輸送層/発光層の積層構造を形成しておき、その積層状態を維持した状態でデバイス基板に転写することで、発光層/電子輸送層の転写膜を1回でパターニングすることもできる。
【0088】
転写雰囲気は大気圧でも減圧下でもよい。例えば、反応性転写の場合には、酸素などの活性ガスの存在下で転写を実施することもできる。本発明では転写材料の転写ダメージの低減が課題の1つであるので、窒素ガスなどの不活性ガス中、あるいは真空下であることが好ましい。圧力を適度に制御することで、転写時に膜厚ムラの均一化を促進することが可能である。転写材料へのダメージ低減や転写膜への不純物混入の低減、蒸発温度の低温下の観点では、真空化であることが特に好ましい。
【0089】
塗布法により形成した薄膜を有機EL素子の機能層として直接利用する従来法の問題の1つは膜厚ムラであった。本発明においても、塗布法によって転写材料を形成した時点では同等の膜厚ムラが発生しうるが、本発明における好ましい転写方式である蒸着モードでは、転写時に転写材料が分子(原子)レベルにほぐれた状態で蒸発した後に、デバイス基板に堆積するために、転写膜の膜厚ムラは軽減される。従って、例えば、塗布時には転写材料が顔料のように分子集合体からなる粒子であり、たとえ転写材料がドナー基板上において連続膜ではなくても、それを転写時に分子レベルにほぐして蒸発させ、堆積させることで、デバイス基板上においては膜厚均一性にすぐれた転写膜を得ることができる。
【0090】
次に、本発明のパターニング方法を用いてデバイスを製造する方法について説明する。本発明において、デバイスとは有機EL素子をはじめとし、有機TFTや光電変換素子、各種センサーなどをいう。有機TFTでは有機半導体層や絶縁層、ソース、ドレイン、ゲートの各種電極などを、有機太陽電池では電極などを、センサーではセンシング層や電極などを本発明によりパターニングすることができる。以下では、有機EL素子を例に挙げてその製造方法について説明する。
【0091】
図1は、有機EL素子10(ディスプレイ)の典型的な構造の例を示す断面図である。支持体11上にTFT12や平坦化層13などで構成されるアクティブマトリクス回路が構成されている。素子部分は、その上に形成された第一電極15/正孔輸送層16/発光層17/電子輸送層18/第二電極19である。第一電極の端部には、電極端における短絡発生を防止し、発光領域を規定する絶縁層14が形成される。素子構成はこの例に限定されるものではなく、例えば、第一電極と第二電極との間に正孔輸送機能と電子輸送機能とを合わせもつ発光層が一層だけ形成されていてもよく、正孔輸送層は正孔注入層と正孔輸送層との、電子輸送層は電子輸送層と電子注入層との複数層の積層構造であってもよく、発光層が電子輸送機能をもつ場合には電子輸送層が省略されてもよい。また、第一電極/電子輸送層/発光層/正孔輸送層/第二電極の順に積層されていてもよい。また、これらの層はいずれも単層であっても複数層であってもよい。なお、図示されていないが、第二電極の形成後に、公知技術あるいは本発明のパターニング方法を利用して、保護層の形成やカラーフィルターの形成、封止などが行われてもよい。
【0092】
カラーディスプレイでは少なくとも発光層がパターニングされる必要があり、発光層は本発明において好適にパターニングされる薄膜である。絶縁層や第一電極、TFTなどは公知のフォトリソグラフィー法によりパターニングされることが多いが、本発明によりパターニングしてもよい。また、正孔輸送層や電子輸送層、第二電極などの少なくとも一層をパターニングする必要がある場合には、本発明によりパターニングしてもよい。また、発光層のうちR、Gのみを本発明によりパターニングして、その上にBの発光層とR、Gの電子輸送層を兼ねる層を全面形成することもできる。
【0093】
図1に示した有機EL素子の作製例としては、第一電極15まではフォトリソグラフィー法を、絶縁層14は感光性ポリイミド前駆体材料を利用した公知技術によりパターニングし、その後、正孔輸送層16を真空蒸着法を利用した公知技術によって全面形成する。この正孔輸送層16を下地層として、その上に、図2に示した本発明により、発光層17R、17G、17Bをパターニングする。その上に、電子輸送層18、第二電極19を真空蒸着法などを利用した公知技術によって全面形成すれば、有機EL素子を完成することができる。
【0094】
発光層は単層でも複数層でもよく、各層の発光材料は単一材料でも複数材料の混合物であってもよい。発光効率、色純度、耐久性の観点から、発光層はホスト材料とドーパント材料との混合物の単層構造であることが好ましい。従って、発光層を成膜する転写材料はホスト材料とドーパント材料との混合物であることが好ましい。
【0095】
区画パターン内に転写材料を配置する際に、後述の塗布法を利用する場合には、ホスト材料とドーパント材料との混合溶液を塗布、乾燥させて転写材料を形成することができる。ホスト材料とドーパント材料との溶液を別に塗布してもよい。転写材料を形成した段階でホスト材料とドーパント材料とが均一に混合されていなくても、転写時に両者が均一に混合されればよい。また、転写時にホスト材料とドーパント材料との蒸発温度の違いを利用して、発光層中のドーパント材料の濃度を膜厚方向に変化させることもできる。
【0096】
発光材料としては、アントラセン誘導体、ナフタセン誘導体、ピレン誘導体、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム(Alq)などのキノリノール錯体やベンゾチアゾリルフェノール亜鉛錯体などの各種金属錯体、ビススチリルアントラセン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、クマリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、カルバゾール誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ピロロピリジン誘導体、ペリノン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、ルブレン、キナクリドン誘導体、フェノキサゾン誘導体、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、クリセン誘導体、ピロメテン誘導体、リン光材料と呼ばれるイリジウム錯体系材料などの低分子材料や、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体などの高分子材料を例示することができる。特に、発光性能に優れ、本発明のパターニング方法に好適な材料としては、アントラセン誘導体、ナフタセン誘導体、ピレン誘導体、クリセン誘導体、ピロメテン誘導体、各種リン光材料を例示できる。
【0097】
正孔輸送層は単層でも複数層でもよく、各層は単一材料でも複数材料の混合物であってもよい。正孔注入層と呼ばれる層も正孔輸送層に含まれる。正孔輸送性(低駆動電圧)や耐久性の観点から、正孔輸送層には正孔輸送性を助長するアクセプタ材料が混合されていてもよい。従って、正孔輸送層を成膜する転写材料は単一材料からなっても複数材料の混合物からなってもよい。区画パターン内に転写材料を配置する際は、発光層と同様に、様々な手法にて形成することができる。
【0098】
正孔輸送材料としては、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジナフチル−1,1’−ジフェニル−4,4’−ジアミン(NPD)やN,N’−ビフェニル−N,N’−ビフェニル−1,1’−ジフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−(N−フェニルカルバゾリル)−1,1’−ジフェニル−4,4’−ジアミンなどに代表される芳香族アミン類、N−イソプロピルカルバゾール、ピラゾリン誘導体、スチルベン系化合物、ヒドラゾン系化合物、オキサジアゾール誘導体やフタロシアニン誘導体に代表される複素環化合物などの低分子材料や、これら低分子化合物を側鎖に有するポリカーボネートやスチレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリシランなどの高分子材料を例示できる。アクセプタ材料としては、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、ヘキサアザトリフェニレン(HAT)やそのシアノ基誘導体(HAT−CN6)などの低分子材料を例示することができる。また、第一電極表面に薄く形成される酸化モリブデンや酸化ケイ素などの金属酸化物も正孔輸送材料やアクセプタ材料として例示できる。
【0099】
電子輸送層は単層でも複数層でもよく、各層は単一材料でも複数材料の混合物であってもよい。正孔阻止層や電子注入層と呼ばれる層も電子輸送層に含まれる。電子輸送性(低駆動電圧)や耐久性の観点から、電子輸送層には電子輸送性を助長するドナー材料が混合されていてもよい。電子注入層と呼ばれる層は、このドナー材料として論じられることも多い。電子輸送層を成膜する転写材料は単一材料からなっても複数材料の混合物からなってもよい。区画パターン内に転写材料を配置する際は、発光層と同様に、様々な手法にて形成することができる。
【0100】
電子輸送材料としては、Alqや8−キノリノラートリチウム(Liq)などのキノリノール錯体、ナフタレン、アントラセンなどの縮合多環芳香族誘導体、4,4’−ビス(ジフェニルエテニル)ビフェニルに代表されるスチリル系芳香環誘導体、アントラキノンやジフェノキノンなどのキノン誘導体、リンオキサイド誘導体、ベンゾキノリノール錯体、ヒドロキシアゾール錯体、アゾメチン錯体、トロポロン金属錯体およびフラボノール金属錯体などの各種金属錯体、電子受容性窒素を含むヘテロアリール環構造を有する化合物などの低分子材料や、これら低分子化合物を側鎖に有する高分子材料を例示できる。
【0101】
ドナー材料としては、リチウムやセシウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属、それらのキノリノール錯体などの各種金属錯体、フッ化リチウムや酸化セシウムなどのそれらの酸化物やフッ化物を例示することができる。電子輸送材料やドナー材料は各RGB発光層との組み合わせによる性能変化が起こりやすい材料の1つであり、本発明によりパターニングされる別の好ましい例として例示される。
【0102】
第一電極および第二電極は、発光層からの発光を取り出すために少なくとも一方が透明であることが好ましい。第一電極から光を取り出すボトムエミッションの場合には第一電極が、第二電極から光を取り出すトップエミッションの場合には第二電極が透明である。区画パターン内に転写材料を配置する際は、発光層と同様に、様々な手法にて形成することができる。また、転写の際に、例えば転写材料と酸素を反応させるなど、反応性転写を実施することもできる。透明電極材料およびもう一方の電極には、例えば、特開平11−214154号公報記載の如く、従来公知の材料を用いることができる。
【0103】
本発明によって製造された有機EL素子(ディスプレイ)は次のような特徴を有する。図24に示すように、デバイス基板10上の隣り合う絶縁層14間の開口幅をA、該開口に対応する領域に存在する発光層17の幅をE、絶縁層14のピッチをPとする。Pはドナー基板の区画パターンのピッチにも等しい。このとき、本発明によって製造された有機EL素子は、幅方向に隣り合う発光層間の間隔がほぼ一定であり、かつA<E<Pとなる。
【0104】
本発明によって製造された有機EL素子が、従来技術によって製造されたものと異なる点について説明する。発光層17はある副画素の開口幅Aを完全に覆い、かつ、隣の副画素の開口領域には掛からないことが常に要求される。そのために、従来、塗布法を利用して製造される、図25に示すような構成が考えられている。この方法は、インクと絶縁層14との「はじき」を利用して、発光層17が絶縁層14に乗り上げないようにしたパターニングであるために、常にE=Aの関係となる。したがって、絶縁層と開口部の境界付近において発光層17が薄くなる部分が形成されやすく、その部分に電流が集中して短絡が発生しやすい。さらに、発光層17形成時に絶縁層14が露出している必要性から、正孔輸送層16もRGB副画素ごとに分断された状態で形成されることが多い。
【0105】
一方、図26に示すような従来のマスク蒸着法によれば、発光層17が絶縁層14に乗り上げるようにすることも可能であるため、上記のような問題は生じない。しかし、現実の製造プロセスにおいてはデバイス基板10と蒸着マスクとの位置合わせに誤差σが生じうる。図26は、典型的なE=Pの条件を用いて、一例として発光層17Rと17Bを誤差ゼロでパターニングした後に、17Gを誤差σによりパターニングした様子を示している。この場合、発光層17Rと17Gの境界領域では両者の重なり合いが生じるため、これらの発光層間の間隔は0(あるいは負の値)である。一方、発光層17Gと17Bの境界領域では、発光層間の間隔はσとなる。このように、R、G、Bを個別にパターニングし、そのいずれについてもマスク位置の誤差が生じうるため、発光層間の間隔をほぼ一定に保つことが非常に難しい。
【0106】
なお、従来のマスク蒸着法においてE<Pになるように設計すると、その分だけ副画素の開口幅Aを完全に覆わない確率が増すために、位置合わせ誤差σおよびこれに蒸着マスクそのものが有する無視できない誤差を加算した値を小さくする必要が生じるので、設備的な負担が増加する。上記誤差が相対的に十分に小さい場合には、通常は副画素の開口幅Aを大きくしてディスプレイの開口率を高める設計が施される。つまり、従来のマスク蒸着法においては、E<Pとなるように設計しても、位置合わせ機構と蒸着マスクの要求精度が高くなるだけで、利点がないために、E=Pとなるように設計されるのが普通である。
【0107】
このような従来技術に対し、本発明によって製造された有機EL素子では、発光層は必ずデバイス基板上の開口幅より広い領域に形成される。すなわち、図24に示すように発光層17が絶縁層14上に乗り上げるか、図2に示すように発光層17が絶縁層14の傾斜部分を覆う。このように、A<Eであり、発光層17が薄くなる部分が存在しないため電流集中による短絡を阻止できる。それに加え、あらかじめピッチの定まったドナー基板(ドナー基板自体の誤差も厳密には存在するが、特に大型基板では蒸着マスク自体の誤差と比較して非常に小さくできる)を用いて一括転写を行うため、転写後に幅方向に隣り合う発光層間の間隔はほぼ一定となる。図24に示すようにドナー基板30とデバイス基板10の位置合わせにおいて誤差σが生じても、R、G、Bのすべてについて同じ誤差となるため、各発光層間の間隔には影響しない。また、17R、17G、17Bの間には発光層17が存在しない間隔(隙間)が必ず認められる。また、正孔輸送層16が絶縁層14を覆うように形成されることが多い。本発明によって製造された有機EL素子はこのような点で従来の有機EL素子と区別することができる。
【0108】
なお、絶縁層14上における転写材料の重なり合いの有無という違いは、レーザーをRGB副画素ごとに選択的に照射する従来のレーザー転写法との間においても同様に認められる。絶縁層14上における転写材料の重なり合いの有無は、蛍光顕微鏡などによる観察で比較的容易に検出することが可能である。
【0109】
本発明における有機EL素子は、上記のように、A<E<Pであることが特徴であり、さらに、従来のマスク蒸着法やレーザー転写法、塗布法とは違い、Eの値の設計自由度が大きいことが特徴である。例えば、図24において、A+2σ≦Eになるように設計することで、デバイス基板10とドナー基板30との位置合わせに誤差σが生じても、発光層17は絶縁層14間の開口幅を完全に覆うことを保証でき、塗布法における短絡の問題を解決できる。σを2μm以下にすることは難しいので、本発明における有機EL素子では、発光層17の幅Eが絶縁層14間の開口幅Aよりも4μm以上大きいことが好ましい。また、転写材料37を塗布法によりパターニングする際の混色を確実に防ぐためには、ドナー基板上の区画パターンの幅が10μm以上であることが好ましいので、発光層17の幅EはRGB副画素のピッチPよりも10μm以上小さいことが好ましい。本発明における有機EL素子の発光層17の幅を、これらの関係を満たすように設計することにより、発光層17の特性を劣化させることなく、大型化かつ高精度の微細パターニングを行うという本発明の目的を達成することができる。なお、R、G、Bの発光性能の違いなどの理由により、副画素の幅を色ごとに異なる値に設計すること、即ち、A、E、Pや間隔を色ごとに異なる値に設計する場合もある。その場合でも、本発明における有機EL素子は、各色ごとに定義される値に対して、A<E<Pであり、かつ、間隔がほぼ一定であることが特徴である。
【0110】
本発明における有機EL素子は、一般的に第二電極が共通電極として形成されるアクティブマトリクス型に限定されるものではなく、例えば、第一電極と第二電極とが互いに交差するストライプ状電極からなる単純マトリクス型や、予め定められた情報を表示するように表示部がパターニングされるセグメント型であってもよい。これらの用途としては、テレビ、パソコン、モニター、時計、温度計、オーディオ機器、自動車用表示パネルなどを例示することができる。
【0111】
本発明のパターニング方法は、有機EL素子だけでなく、有機TFTや光電変換素子、各種センサーなどのデバイスにも適用可能である。例えば、有機TFTの従来技術として特開2003−304014号公報、特開2005−232136号公報、特開2004−266157号公報などに例示されているように、半導体の前駆体材料をデバイス基板上に直接塗布してから変換することで、半導体層を形成する手法が開示されているが、この半導体層を本発明のパターニング方法によって形成することで、有機EL素子と同様の効果を得ることが可能である。
【実施例】
【0112】
以下、実施例をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0113】
実施例1
ドナー基板を以下のとおり作製した。支持体として無アルカリガラス基板を用い、洗浄/UVオゾン処理後に、光熱変換層として厚さ1.0μmのチタン膜をスパッタリング法により全面形成した。次に、前記光熱変換層をUVオゾン処理した後に、上にポジ型ポリイミド系感光性コーティング剤(東レ株式会社製、DL−1000)をスピンコート塗布し、プリベーキング、UV露光した後に、現像液(東レ株式会社製、ELM−D)により露光部を溶解・除去した。このようにパターニングしたポリイミド前駆体膜をホットプレートで350℃、10分間ベーキングして、ポリイミド系の区画パターンを形成した。この区画パターンの厚さは2μmで、断面は順テーパー形状であり、その幅は20μmであった。区画パターン内部には幅80μm、長さ280μmの光熱変換層を露出する開口部が、それぞれ100、300μmのピッチで配置されていた。この基板上に、Alqを3wt%含むクロロホルム溶液をスピンコート塗布することで区画パターン内(開口部)にAlqからなる平均厚さ25nmの転写材料を形成した。
【0114】
デバイス基板は以下のとおり作製した。ITO透明導電膜を140nm堆積させた無アルカリガラス基板(ジオマテック株式会社製、スパッタリング成膜品)を38×46mmに切断し、フォトリソグラフィー法によりITOを所望の形状にエッチングした。次に、ドナー基板と同様にパターニングされたポリイミド前駆体膜を、300℃、10分間ベーキングして、ポリイミド系の絶縁層を形成した。この絶縁層の高さは1.8μmで、断面は順テーパー形状であり、その幅は30μmであった。絶縁層のパターン内部には幅70μm、長さ270μmのITOを露出する開口部が、それぞれ100、300μmのピッチで配置されていた。この基板をUVオゾン処理し、真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が3×10−4Pa以下になるまで排気した。抵抗加熱法によって、正孔輸送層として、銅フタロシアニン(CuPc)を20nm、NPDを40nm、発光領域全面に蒸着により積層した。
【0115】
次に、前記ドナー基板の区画パターンと前記デバイス基板の絶縁層との位置を合わせて対向させ、3×10−4Pa以下の真空中で保持した後に、大気中に取り出した。絶縁層と区画パターンとで区画される転写空間は減圧に保持されていた。この状態で、転写材料の一部と区画パターンの一部が同時に加熱されるように、ドナー基板のガラス基板側から中心波長800nmのレーザー(光源:半導体レーザーダイオード)を照射し、転写材料のAlqをデバイス基板の下地層である正孔輸送層上に転写した。レーザー強度は約300W/mm、スキャン速度は1.25m/sであり、発光領域全面に転写されるように、レーザーをオーバーラップさせる方式で繰り返しスキャンを実施した。
Alq転写後のデバイス基板を、再び真空蒸着装置内に設置して、装置内の真空度が3×10−4Pa以下になるまで排気した。抵抗加熱法によって、電子輸送層として下記に示すE−1を25nm、発光領域全面に蒸着した。次に、ドナー材料(電子注入層)としてフッ化リチウムを0.5nm、さらに、第二電極としてアルミニウムを100nm蒸着して、5mm角の発光領域をもつ有機EL素子を作製した。
【0116】
【化2】

【0117】
実施例2
Alqとルブレンとを合計1.5wt%含むクロロホルム溶液をスピンコート塗布することで、ホスト材料であるAlq中にドーパント材料であるルブレンが5wt%含まれる転写材料を形成した以外は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
【0118】
比較例1
転写材料のみが加熱されるようにレーザーを照射し、転写材料であるAlqを転写したこと以外は実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
【0119】
比較例2
転写材料のみが加熱されるようにレーザーを照射し、転写材料であるAlqとルブレンとの混合体を転写したこと以外は実施例2と同様にして有機EL素子を作成した。
【0120】
実施例1、2および比較例1、2で作製した有機EL素子を封止した後に、2.5mA/cmの一定電流を流した。流し始めた直後の輝度を初期輝度とし、初期輝度を電流密度で割った値を初期発光効率、さらに一定電流を流し続けて、輝度が初期輝度から半分に低下するまでの時間を輝度半減寿命として測定した。実施例1の測定値を1とした場合の比較例1の測定値の相対比、およびを実施例2の測定値を1とした場合の比較例2の測定値の相対比を、それぞれ相対初期発光効率と相対輝度半減寿命として表1にまとめた。転写材料の少なくとも一部と区画パターンの少なくとも一部が同時に加熱されるように、レーザーを照射し、転写材料を転写することで、有機EL素子の発光効率や耐久性が大幅に改善された。
【0121】
【表1】

【0122】
比較例3
ドナー基板に光熱変換層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様に有機EL素子の作製を試みたが、転写材料がレーザーを十分に吸収できずに、十分な転写を実施できなかった。
【0123】
比較例4
ドナー基板に光熱変換層を形成せずに、5倍の強度になる条件でレーザーを照射したこと以外は実施例1と同様に有機EL素子の作製を試みたが、転写材料がレーザーを未だ十分に吸収できずに、十分な転写を実施できず、レーザーの漏洩によりデバイス基板が加熱されて正孔輸送層がドナー基板側に付着する現象も認められた。さらに、ドナー基板の区画パターンの熱劣化や変形、脱ガスの発生が認められた。
【0124】
実施例3
光熱変換層として厚さ0.4μmのタンタル膜をスパッタリング法により全面形成し、厚さ7μm、幅20μmの区画パターンを形成したこと以外は実施例1と同様にしてドナー基板を作製した。この基板上の全面に、ピレン系赤色ホスト材料RH−1とピロメテン系赤色ドーパント材料RD−1(ホスト材料に対して0.5wt%)を共蒸着することで、厚さ38nmの転写材料を形成した。デバイス基板についても、絶縁層の高さを2μm、幅30μm、ITOを露出する開口部を横70μm、縦250μmとしたこと以外は実施例1と同様に作製した。実施例1と同様にして、この基板の発光領域全面に正孔輸送層として、アミン系化合物を50nm、NPDを10nmを蒸着した。
【0125】
【化3】

【0126】
次に、前記ドナー基板の区画パターンと前記デバイス基板の絶縁層との位置を合わせて対向させ、3×10−4Pa以下の真空中で保持した後に外周部をシールしてから大気中に取り出した。絶縁層と区画パターンとで区画される転写空間は真空に保持されていた。転写には、中心波長が940nmで、照射形状を横340μm、縦50μmの矩形に成形した光を用いた(光源:半導体レーザーダイオード)。区画パターンおよび絶縁層の縦方向と光の縦方向を一致させるようにドナー基板のガラス基板側から光を照射し、転写材料と区画パターンが同時に加熱されるように縦方向にスキャンすることで、転写材料である共蒸着膜をデバイス基板の下地層である正孔輸送層上に転写した。光強度は140〜180W/mmの範囲で調整し、スキャン速度は0.6m/sであった。光は横方向に約300μmピッチでオーバーラップさせながら、発光領域全面に転写されるように繰り返しスキャンを実施した。
【0127】
実施例1と同様にして、共蒸着膜を転写後のデバイス基板上に電子輸送層E−1を30nm、フッ化リチウムを0.5nm、アルミニウムを100nm蒸着して、5mm角の発光領域をもつ有機EL赤色素子を作製した。
【0128】
光強度、転写回数と発光効率の測定値を表2にまとめた。転写回数が1回とは1回の光照射で厚さ38nmの転写材料の全膜厚がちょうど転写されることを、24回とは24回の光照射で厚さ38nmの転写材料の全膜厚がちょうど転写される(1回の光照射で転写された平均膜厚が約1.6nm)ことを意味する。いずれの素子からも明瞭な赤色発光が確認でき、転写された発光層がデバイス基板の絶縁層の開口部を不足なく覆っていることが確認できた。
【0129】
【表2】

【0130】
実施例4
光熱変換層として厚さ0.4μmのモリブデン膜をスパッタリング法により全面形成したこと以外は実施例3と同様にしてドナー基板を作製した。可溶性基としてジケト架橋構造をもつRH−2前駆体とピロメテン系赤色ドーパント材料RD−1とをテトラヒドロナフタレン(THN)にそれぞれ1wt%、0.05wt%溶解させた溶液を作製した。この溶液をインクジェット法によりドナー基板へと塗布し、乾燥させることで、RH−2前駆体と赤色ドーパント材料との混合膜を区画パターン内に形成した。この混合膜に真空中で中心波長460nmの青色光(光源:発光ダイオード)を5分間照射することで、RH−2前駆体のジケト架橋構造を脱離し、赤色ホスト材料RH−2に変換した。このようにして、ドナー基板の区画パターン内に、赤色ホスト材料と赤色ドーパント材料との混合膜からなる、平均膜厚40nmの転写材料を形成した。
【0131】
【化4】

【0132】
転写回数を24回、レーザー強度を148W/mmとして実施例3と同様に有機EL赤色素子を作製したところ、明瞭な赤色発光が確認された。
【0133】
実施例5
実施例4と同様にしてドナー基板を作製した。区画パターンの幅は20μmであり、区画パターン内部には幅80μm(E=80μm)、長さ280μmの光熱変換層を露出する開口部が、幅方向に100μmピッチ(P=100μm)で768個、長さ方向に300μmのピッチで200個配置されていた。ピレン系赤色ホスト材料RH−1とピロメテン系赤色ドーパント材料RD−1とをTHNにそれぞれ1wt%、0.05wt%溶解させることでR溶液を、ピレン系緑色ホスト材料GH−1とクマリン系緑色ドーパント材料(C545T)とをTHNにそれぞれ1wt%、0.05wt%溶解させることでG溶液を、ピレン系青色ホスト材料BH−1をTHNに1wt%溶解させることでB溶液を作製した。これらの溶液をインクジェット法により塗布し、乾燥させることで、区画パターンの幅方向に、赤色ホスト材料と赤色ドーパント材料との混合膜からなる平均膜厚40nmのR転写材料と、緑色ホスト材料と緑色ドーパント材料との混合膜からなる平均膜厚30nmのG転写材料と、青色ホスト材料からなる平均膜厚20nmのB転写材料とが順番に繰り返すような配置で形成されたドナー基板を用意した。
【0134】
【化5】

【0135】
実施例3と同様にしてデバイス基板を作製した。ITOは予め100μmピッチで716本のストライプ形状にパターニングされており、ITOを露出する絶縁層の開口部は幅70μm(A=70μm)、長さ250μmで、幅方向に100μmピッチ(P=100μm)で716個、長さ方向に300μmのピッチで200個配置されていた。ITOストライプ電極の長手方向を絶縁層の長さ方向に一致させた。
【0136】
これらのドナー基板とデバイス基板を位置合わせして対向させ(位置合わせ機構の位置合わせ誤差は±2μm)、転写回数を24回、レーザー強度を148W/mmとして実施例3と同様に有機EL素子を作製した。このとき、アルミニウムはマスク蒸着により300μmピッチで200本のストライプ形状にパターニングし、ストライプ電極の長手方向を絶縁層の幅方向に一致させた。従って、作製した有機EL素子は、ITOストライプからなる第一電極と、アルミニウムストライプからなる第二電極とが互いに直交する単純マトリクス型ディスプレイの構造をもち、両電極の交点に、R、G、Bの副画素から構成される画素が256×200配置されている。各副画素からは、それぞれ明瞭なR、G、B発光が確認され、副画素間の色混じりは認められなかった。
【0137】
比較例5
光の照射形状を横80μm、縦50μmの矩形に成形した光を用いて、転写材料のみが加熱されるように光を光熱変換層に照射することで、R、G、B各転写材料を個別に転写したこと以外は実施例5と同様にして有機EL素子を作製した。しかしながら、長方形の副画素の4辺のうち長辺部分近傍において、発光層が中央部よりも薄い部分が形成され、その部分に電流が集中して相対的に明るく発光し、短時間のうちに短絡する現象が認められた。
【0138】
比較例6
ドナー基板に区画パターンを形成しなかったこと以外は実施例5と同様にして有機EL素子を作製した。しかしながら、溶液の塗布直後から隣り合う転写材料同士が混ざり合い、乾燥後のR、G、B各転写材料の境界が明確ではなかった。さらに、一括転写においてこれらの混合領域も同時に転写され、その一部はデバイス基板の絶縁層上部に堆積したために発光に影響は与えなかったが、他の一部は画素中に転写されたために、有機EL素子の副画素ごとに混色によって発光色が少しずつ異なり、さらに、副画素内でも発光色がムラになるという問題が認められた。
【0139】
実施例6
実施例5と同様にしてドナー基板を用意した。ただし、区画パターンの幅を26μm、光熱変換層を露出する開口部を幅74μm(E=74μm)、長さ274μmとした。このドナー基板と実施例5と同じデバイス基板(A=70μm、P=100μm)を位置合わせして対向させ(位置合わせ機構の位置合わせ誤差は±2μm)、転写回数を24回、レーザー強度を148W/mmとして実施例5と同様に有機EL素子(単純マトリクス型ディスプレイ)を作製した。R、G、Bの各副画素からは、それぞれ明瞭なR、G、B発光が確認され、蛍光顕微鏡観察によっても各色の発光層が対応する副画素の開口幅を完全に覆っていることが確認できた。
【0140】
比較例7
実施例6と同様に有機EL素子(単純マトリクス型ディスプレイ)を作製した(A=70μm、P=100μm)。ただし、ドナー基板の区画パターンの幅を28μm、光熱変換層を露出する開口部を幅72μm(E=72μm)、長さ272μmとした。作製した3個の有機EL素子のうち2個では、R、G、Bの各副画素から、それぞれ明瞭なR、G、B発光が確認され、蛍光顕微鏡観察によっても各色の発光層が対応する副画素の開口幅を完全に覆っていることが確認できた。しかし、残りの1個の有機EL素子では、少なくともR画素の開口部が発光層によって完全に覆われておらず、正孔輸送層と電子輸送層が発光層を介さずに直接接している部分が僅かに存在していることがわかった。その部分からは微量の青色発光(正孔輸送層からの発光)が確認された。
【0141】
実施例7
実施例6と同様に有機EL素子(単純マトリクス型ディスプレイ)を作製した(A=70μm、P=100μm)。ただし、ドナー基板の区画パターンの幅を10μm、光熱変換層を露出する開口部を幅90μm(E=90μm)、長さ290μmとした。R、G、Bの各副画素からは、それぞれ明瞭なR、G、B発光が確認され、蛍光顕微鏡観察によっても各色の発光層が対応する副画素の開口幅を完全に覆っていることが確認できた。
【0142】
比較例8
実施例6と同様に有機EL素子(単純マトリクス型ディスプレイ)を作製した(A=70μm、P=100μm)。ただし、ドナー基板の区画パターンの幅を6μm、光熱変換層を露出する開口部を幅94μm(E=94μm)、長さ294μmとした。区画パターンの幅が狭いために、区画パターンと基板との密着力が低下して、一部の区画パターンに欠損が生じた。さらに、インクジェット法により転写材料を形成する際に、インクが上記欠損部分を通じて、あるいは、狭い区画パターンの一部を乗り越えることで、隣の開口部と混合する部分が形成された。有機EL素子の大部分のR、G、Bの各副画素からは、それぞれ明瞭なR、G、B発光が確認され、蛍光顕微鏡観察によっても各色の発光層が対応する副画素の開口幅を完全に覆っていることが確認できた。しかし、一部の副画素には混合した転写材料が転写され、発光からも混色が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明は、有機EL素子をはじめとし、有機TFTや光電変換素子、各種センサーなどのデバイスを構成する薄膜のパターニング技術であり、携帯電話やパソコン、テレビ、画像スキャナなどに使用されるディスプレイパネルや、タッチパネル、撮像素子などの製造に利用可能である。
【符号の説明】
【0144】
10 有機EL素子(デバイス基板)
11 支持体
12 TFT(取り出し電極含む)
13 平坦化層
14 絶縁層
15 第一電極
16 正孔輸送層
17 発光層
18 電子輸送層
19 第二電極
20 デバイス基板
21 支持体
27 転写膜
30 ドナー基板
31 支持体
33 光熱変換層
34 区画パターン
37 転写材料
38 転写領域
39 転写補助層
41 光学マスク
42 レンズ
43 ミラー
44 光源
45 仮想焦点面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に形成された絶縁層と、少なくとも前記絶縁層の間に形成された薄膜層とを有し、前記薄膜層は転写により形成されたものであり、隣り合う絶縁層間の開口幅をA、該開口に対応する領域に存在する薄膜層の幅をE、絶縁層のピッチをPとしたとき、A+4(μm)≦E(μm)≦P−10(μm)であり、かつ、幅方向に隣り合う薄膜層間の間隔がほぼ一定であるデバイス。
【請求項2】
基板と、前記基板上に形成された絶縁層と、少なくとも前記絶縁層の間に形成された薄膜層とを有し、隣り合う絶縁層間の開口幅をA、該開口に対応する領域に存在する薄膜層の幅をE、絶縁層のピッチをPとしたとき、A+4(μm)≦E(μm)≦P−10(μm)であり、かつ、幅方向に隣り合う薄膜層間の間隔がほぼ一定であるデバイスであって、前記デバイスが有機EL素子であり、前記薄膜層が発光層であり、該有機EL素子は少なくとも正孔輸送層を含み、該正孔輸送層が絶縁層を覆うように連続して形成されているデバイス。
【請求項3】
前記薄膜層が前記絶縁層上に乗り上げている請求項1または2記載のデバイス。
【請求項4】
前記薄膜層が前記絶縁層の傾斜部分を覆っている請求項1または2記載のデバイス。
【請求項5】
前記基板が無アルカリガラスである請求項1または2記載のデバイス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate


【公開番号】特開2012−109638(P2012−109638A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−58391(P2012−58391)
【出願日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【分割の表示】特願2009−526825(P2009−526825)の分割
【原出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】