説明

デンプンを多く含むコアを取り囲む熱可塑性ポリマーを含む二成分繊維

非デンプン熱可塑性ポリマーを含む1つの熱可塑性ポリマー構成成分、並びに非構造化デンプン及び可塑剤を含む1つの熱可塑性デンプン構成成分を含む二成分繊維。熱可塑性ポリマー構成成分は、熱可塑性デンプン構成成分を取り囲む。二成分繊維を含む不織布ウェブ及び使い捨て物品も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デンプンを多く含むコアを取り囲む及び保護する熱可塑性ポリマーを含む多成分繊維に関する。繊維は不織布ウェブ及び使い捨て物品を作るために用い得る。
【背景技術】
【0002】
多くの要因のために、デンプン含有繊維を高速の産業レベルで製造することは、それほど成功していない。費用、加工の困難さ、及び最終用途特性のために、商業的にはほとんど又は全く成功していない。デンプン繊維は、デンプンを含有するフィルム、ブロー成形物品、及び射出成形物品より製造がはるかに困難である。これは、デンプンの加工に必要な加工時間が、デンプンの迅速な結晶化又はその他の構造形成の特徴により短いためである。繊維製造中の局所的ひずみ率及び剪断速度は、他のプロセスよりはるかに大きい。更に、繊維紡糸には均質な組成物が必要とされる。微細繊維を紡糸するために、小さな欠陥、わずかな不一致、又は溶融物の不均質性は、商業的に実行可能な方法にとっては容認できない。そのため、材料の選択、繊維の構造、及び加工条件が重要である。加工中の困難さに加えて、最終用途特性が多くの商業用途に好適でない。これは、デンプン繊維は典型的には低い引張強度を有し、粘着性であり、不織布ウェブ又は基材中の繊維と繊維との結合に適さないためである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
より容認可能な加工性及び最終用途特性を有する繊維を製造するために、非デンプン熱可塑性ポリマーをデンプンと組み合わせて用いることが望ましい。熱可塑性ポリマーの融解温度は、使用中の溶融又は過度の構造変形を防ぐため、最終用途安定性のために十分高いことが必要であるが、デンプン/熱可塑性繊維が、デンプンを燃やさずに加工可能であり得るように十分低いことも必要である。
【0004】
費用効率的で、容易に加工可能であり、機能的なデンプン含有繊維に対する必要性が現在でも満たされずに存在している。本発明は、費用効率的で、容易に加工可能であり、非常に機能的な二成分繊維を提供できる。繊維は、熱可塑性ポリマー構成成分により完全に取り囲まれる、デンプンを多く含む構成成分から作られる。デンプン及びポリマー二成分繊維は、二成分繊維を製造するための市販の機器に用いるのに好適である。これらの繊維から製造された使い捨て不織布物品に対する必要性もある。本発明は、デンプン含有二成分繊維から製造された、こうした使い捨て不織布物品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、二成分繊維を対象とする。二成分繊維は、熱可塑性ポリマーを含む別の構成成分により完全に取り囲まれ及び保護される、熱可塑性デンプンを含む1つの構成成分を含む。二成分繊維の構造はシース−コアであることができ、それには例えば、シースにより取り囲まれる単一のコアを有するシース−コア、又は本明細書において海島型構造と呼ばれる、シースにより取り囲まれる2以上の複数のコアを有するシース−コアが挙げられる。
【0006】
熱可塑性ポリマーは、デンプン構成成分を保護する。これは、デンプン構成成分単独では繊維特性を顕著に失わずには環境条件に耐えられない場合もある最終用途の間に特に関連する。保護は、機械的、熱力学的、電気的、溶媒に基づくもの、又はこれらの組み合わせであってもよい。繊維がより温度安定性であり、溶媒に対してより耐性であり、及び熱固着できるため、デンプン構成成分の保護はまた繊維を更に機能的にする。
【0007】
本発明はまた、二成分繊維を含む不織布ウェブ及び使い捨て物品を対象とする。不織布ウェブはまた、本発明の繊維とブレンドされる他の合成繊維又は天然繊維を含有してもよい。不織布ウェブはまた、本発明の繊維とブレンドされる他の合成繊維又は天然繊維を含有してもよい。任意の繊維には、これらに限定されないが、セルロース系パルプ、再生セルロース、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、及びナイロン、これらの様々なポリマー、並びにこれらの組み合わせを含む繊維が挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のこれら及びその他の特徴、態様、及び利点は、以下の説明、添付の請求の範囲、及び添付図を考慮することにより、更によく理解されるであろう。
本明細書で使用される全てのパーセント、比率、及び割合は、特に指定しない限り、組成物の重量パーセントによる。全ての平均値は、特に明示的な指示がない限り、組成物又はその構成成分の「重量で」計算される。ポリマーに関する「平均分子量」又は「分子量」は、指示がない限り、数平均分子量を指す。数平均分子量は、特記しない限り、ゲル透過クロマトグラフィーにより測定される。本明細書にて引用される全ての特許又は他の刊行物は、参考文献を引用した目的のために、そこに含まれる全ての本文に関して、本明細書に参考として組み込まれる。かかる特許又は刊行物を含むことは、引用した参考文献が、先行技術として引用可能であること、又はその主題が本発明に対する材料の先行技術であることの承認であることを意図していない。本明細書中に記載される組成物、製品及び方法は、本明細書に記載される所要の及び/若しくは任意の構成要素、成分、組成物又は工程のいずれか、あるいは全てを含む、それらから本質的に成る、あるいはそれらから成ることができる。
本明細書は(1)本発明の材料、(2)二成分繊維の構造、(3)二成分繊維の材料特性、(4)プロセス、及び(5)物品の詳細な記述を含む。
【0009】
(1)材料
(構成成分A:熱可塑性ポリマー)
熱可塑性ポリマー並びに熱可塑性ポリマー構成成分の好適な融解温度は、約60℃〜約300℃、好ましくは約80℃〜約250℃、及び好ましくは100℃〜215℃である。熱可塑性ポリマー含有構成成分の組成物の融解温度が上述の範囲内になるように、観察される融解温度を下げるべく可塑剤又は希釈剤又は他のポリマーを使用する場合、250℃よりも高い融解温度(Tm)を有する熱可塑性ポリマーを使用してもよい。0℃未満のガラス転移(Tg)温度を有する熱可塑性ポリマーを使用することが望ましいことがある。熱可塑性ポリマー構成成分は、溶融紡糸に適するレオロジー特性を有する。ポリマーの分子量は、ポリマー分子間のからみ合いを可能にするのに十分に高く、しかし溶融紡糸可能であるべく十分に低いものでなければならない。溶融紡糸に適する熱可塑性ポリマーは、約1,000,000g/mol以下、好ましくは約5,000g/mol〜約800,000g/mol、より好ましくは約10,000g/mol〜約700,000g/mol、及び最も好ましくは約20,000g/mol〜約500,000g/molの分子量を有することができる。
【0010】
熱可塑性ポリマーは、好ましくは、典型的には 短繊維として既知の方法(紡糸延伸方法)又はスパンボンド/メルトブロウン連続フィラメント方法で遭遇するように、伸張流動下で、かなり迅速に固化し得ることが望ましく、また、熱的に安定な繊維構造を形成し得ることが望ましい。「熱的に安定な繊維構造」は、本明細書で使用する時、25℃及び雰囲気圧力で、24時間の期間に亘って、50%の相対湿度にて、直径が測定され、繊維がその形成中5分以内にその環境に置かれる時に、著しい溶融又は寸法変化を呈しないものとして定義される。対応する原繊維直径の測定値を基準として用い、測定された繊維直径が25%よりも大きく異なるのが、著しい寸法変化であると考えられる。原繊維が丸形でない場合、最も小さい直径を計算に使用するべきである。最も小さい直径は、24時間測定にも使用されるべきである。
【0011】
好適な熱可塑性ポリマーとしては、ポリエチレン又はそのコポリマーなどのポリオレフィン類(低密度、高密度、線状低密度又は超低密度ポリエチレン類、ポリプロピレン又はそれらのコポリマー、例えば、アタクチックポリプロピレン);ポリブチレン又はそのコポリマー;ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン66などのポリアミド類又はそのコポリマー;ポリエチレンテレフタレート類などのポリエステル類又はそれらのコポリマー;エチレン/アクリル酸コポリマー、エチレン/マレイン酸コポリマー、エチレン/メタクリル酸コポリマー、エチレン/ビニルアセテートコポリマー又はそれらの組み合わせなどのオレフィンカルボン酸コポリマー;ポリアクリレート類、ポリメタクリレート類、及びポリ(メチルメタクリレート)類などのそれらのコポリマーが挙げられる。ポリマーの他の非限定例としては、ポリカーボネート類、ポリビニルアセテート類、ポリ(オキシメチレン)、スチレンコポリマー類、ポリアクリレート類、ポリメタクリレート類、ポリ(メチルメタクリレート)類、ポリスチレン/メチルメタクリレートコポリマー類、ポリエーテルイミド類、ポリスルホン類又はこれらの組み合わせが挙げられる。幾つかの実施形態において、熱可塑性ポリマーとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド類、ポリビニルアルコール、エチレンアクリル酸、ポリオレフィンカルボン酸コポリマー類、ポリエステル類及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0012】
生分解性の熱可塑性ポリマーも本明細書に用いるのに好適である。生分解性材料は、その生分解性材料が地中に埋められるか、さもなければ微生物と接触(微生物の成長を助長する環境条件下での接触を含む)した時に、カビ類、菌類及び細菌類などの微生物によって同化されやすい。好適な生分解性ポリマーには、好気性若しくは嫌気性消化処理を用いて、又は日光、雨、湿気、風、温度などの環境要素への曝露で環境的に分解可能であるような生分解性の材料も含まれる。生分解性の熱可塑性ポリマーは、個々に、又は生分解性若しくは非生分解性ポリマーの組み合わせとして使用することができる。生分解性ポリマーとしては、脂肪族構成成分を含有するポリエステル類が挙げられる。ポリエステル類の中では、脂肪族構成要素及びポリ(ヒドロキシカルボン)酸を含有するエステル重縮合物類である。エステル重縮合物類としては、ポリブチレンコハク酸、ポリブチレンコハク酸アジピン酸共重合物などの二酸/ジオール脂肪族ポリエステル類、ブチレンジオール、アジピン酸及びテレフタル酸から作製されるターポリマーなどの脂肪族/芳香族ポリエステル類が挙げられる。ポリ(ヒドロキシカルボン)酸としては、乳酸ベースのホモポリマー及びコポリマー、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、又は他のポリヒドロキシアルカノエートホモポリマー及びコポリマーが挙げられる。かかるポリヒドロキシアルカノエート類としては、米国再発行特許第36,548号(US Patent RE 36,548)及び米国特許第5,990,271号に開示されている、C6〜C12及びそれ以上のより高鎖長のモノマーを有するPHBと、ポリヒドロキシアルカノエート類とのコポリマーが挙げられる。
【0013】
市販されている好適なポリ乳酸の例は、カーギル・ダウ(Cargill Dow)からのネイチャーワークス(NATUREWORKS)及び三井化学(Mitsui Chemical)からのレイシア(LACEA)である。市販されている好適な二酸/ジオール脂肪族ポリエステルの例は、日本の東京にある昭和高分子株式会社(Showa Highpolymer Company,Ltd.)からビオノーレ(BIONOLLE)1000及びビオノーレ3000として販売されているポリブチレンコハク酸/アジピン酸コポリマーである。市販されている好適な脂肪族/芳香族コポリエステルの例は、イーストマン化学(Eastman Chemical)からイースター・バイオ(EASTAR BIO)コポリエステルとして、又はバスフ(BASF)からのエコフレックス(ECOFLEX)として販売されている、ポリ(テトラメチレンアジピン酸−コ−テレフタル酸)である。
【0014】
ポリマー及びポリマーの量の選択は、当業者により理解されるように、最終製品の柔軟性、質感及び特性に影響を及ぼす。熱可塑性ポリマー構成成分は、単一のポリマー種、又は2以上の非デンプン熱可塑性ポリマーのブレンドを含有することができる。更に、熱可塑性デンプンを含むがこれに限定されない他の材料も、熱可塑性ポリマー構成成分中に存在することができる。典型的には、非デンプン熱可塑性ポリマーは、熱可塑性ポリマー構成成分の総重量の約51%〜100%、好ましくは約60%〜95%、より好ましくは約70%〜約90%の量で存在する。
【0015】
熱可塑性ポリマー構成成分は、デンプン構成成分を取り囲み、及び機械的、熱力学的、電気的、又は溶媒条件、又はこれらの組み合わせを挙げることができるがこれらに限定されない周囲条件から保護することができる。繊維がより温度安定性であり、溶媒に対してより耐性であり、また熱固着できるため、熱可塑性ポリマー構成成分はまた繊維を更に機能的にすることができる。
【0016】
(構成成分B:熱可塑性デンプン)
本発明は、低コストの天然に生じるバイオポリマーであるデンプンの使用に関する。本発明で使用されるデンプンは、熱可塑性の非構造化(destructured)デンプンである。用語「非構造化(destructurized)デンプン」は、もはやその天然に生じる粒状構造ではないデンプンを意味するのに使用される。用語「熱可塑性デンプン」又は「TPS」は、それが紡糸されて繊維になることができるように、その熱可塑性流動特性を向上させるための可塑剤を有するデンプンを意味するのに使用される。天然デンプンは、従来の熱可塑性ポリマーのように溶融したり、流動したりしない。天然デンプンは一般に粒状構造を有するため、望ましくは天然デンプンが「非構造化((destructurized)又は(destructured))」されてから、熱可塑性材料のように溶融加工及び紡糸されるべきである。理論に束縛されるつもりはないが、デンプンの粒状構造は、デンプン粒子内に別個のアミロペクチン及びアミロース領域の構造を具備する粒子を特徴とする。この粒状構造は非構造化中に破壊され、その後、溶媒又は可塑剤の存在下でデンプン構成成分の容量が拡張され得る。溶媒又は可塑剤の存在下で非構造化を受けるデンプンはまた、典型的には、溶媒又は可塑剤を用いて非構造化されていないデンプンよりも粘度が高くなる。結果として生じる非構造化デンプンはゼラチン化形態をなすか、又は乾燥及び/若しくは徐冷されると結晶形態をなし得る。しかしながら、一旦破壊されると、デンプンの天然の粒状構造は一般には元に戻らない。デンプンは、繊維紡糸プロセスに影響を与える塊が存在しないように十分に非構造化されることが望ましい。デンプンを非構造化するのに使用される非構造化剤は、デンプンと共に紡糸される繊維中に残存しないように除去されるのであれば、更なる加工中デンプンと共に残存してもよいし、一時的なものであってもよい。
【0017】
デンプンは様々な異なる方法で非構造化され得る。デンプンは溶媒で非構造化され得る。例えば、デンプンと溶媒との混合物を熱に付して(加圧条件及び剪断力下であり得る)デンプンをゼラチン化して、非構造化に至らせることにより、デンプンを非構造化することができる。溶媒はまた可塑剤としても作用することができ、後の加工中に可塑剤として機能すべく、組成物中に望ましく保持されてもよい。デンプンを非構造化するための溶媒として作用し得る多様な可塑化剤が本明細書に記載されている。これらとしては、例えばマンニトール、ソルビトール及びグリセリンなどのポリオール類を含むがこれらに限定されないヒドロキシル含有可塑剤などの(しかしこれに限定されない)低分子量又はモノマー可塑剤が挙げられる。水もデンプンのための溶媒及び可塑剤として作用し得る。
【0018】
デンプンが従来の熱可塑性ポリマーのように流動し、溶融紡糸可能であるために、デンプンは可塑剤を存在させなければならない。非構造化剤が除去される場合、一般に非構造化されたままであるのがデンプンの性質であるが、可塑剤は、熱可塑性特性をデンプン構成成分に付与し、繊維の紡糸を容易にするために、デンプン構成成分に添加されるか、さもなければ別の方法でその中に含まれるべきである。したがって、、紡糸中に存在する可塑剤は、デンプンを非構造化するのに使用されるものと同じであってもよい。あるいは、特に非構造化剤が上述のように一時的なものである時(例えば水)、別個の又は追加の可塑剤がデンプンに添加されてもよい。かかる追加の可塑剤が繊維紡糸工程のためにデンプン内に残存する限り、デンプンが非構造化される前、間、又は後に可塑剤を添加することができる。
【0019】
好適な天然に生じるデンプンとしては、コーンスターチ(例えば、ワクシートウモロコシデンプン(waxy maize starch)を含む)、ジャガイモデンプン、サツマイモデンプン、小麦デンプン、サゴヤシデンプン、タピオカデンプン、米デンプン、大豆デンプン、クズウコンデンプン、ワラビデンプン、ハスデンプン、キャッサバデンプン、高アミロースコーンスターチ、及び市販のアミロース粉末が挙げられるが、これらに限定されない。デンプンのブレンドもまた使用してもよい。全てのデンプンは本明細書中で有用であるが、本発明は、豊富に供給され、容易に補充可能であり、安価であるという利点を提供する農作物源に由来する天然デンプンを用いて、最も一般的に実施される。天然に生じるデンプン、特にコーンスターチ(例えば、ワクシートウモロコシデンプンを含む)及び小麦デンプンが、それらの経済性及び入手可能性の理由から選択するデンプンポリマーである。加工デンプンも使用してよい。加工デンプンは、その元来の分子量特性を変化させた、置換されていないデンプン又は置換されたデンプンとして定義される(即ち、分子量は変化しているが、その他の変化は、必ずしもデンプンに対してなされていない)。それらの多くが、当該技法分野において周知の技法のいずれかによって、分子量を修正、好ましくは低減されてもよい。これらとしては、例えば酸又はアルカリ加水分解、酸還元、酸化還元、酵素還元などによる例えばデンプンの化学的修飾、物理的/機械的分解(例えば、加工機器のサーモメカニカルエネルギー投入による)、又はこれらの組み合わせが挙げられる。サーモメカニカル法及び酸化法は、原位置(in situ)で行われる場合、さらなる利点を提供する。デンプンの正確な化学的性質及び分子量を低減させる方法は、平均分子量が所望のレベル又は範囲で提供される限りは重要ではない。かかる技法もまた分子量分布を低減し得る。
【0020】
天然の加工されていないデンプンは、一般的に非常に高い平均分子量を有し、広い分子量分布を有する(例えば、天然コーンスターチは、約60,000,000グラム/モル(g/mol)までの平均分子量を有する)。本発明で使用するデンプンの分子量を低減させることが望ましい。分子量の低減は、上述のものを含む当該技術分野において既知のいかなる技法によっても達成できる。溶融物に添加される非構造化デンプン又はデンプンのブレンドについての分子量範囲は、約3,000g/mol〜約8,000,000g/mol、好ましくは約10,000g/mol〜約5,000,000g/mol、及びより好ましくは約20,000g/mol〜約3,000,000g/molであり得る。
【0021】
任意に、置換されたデンプンを使用することができる。置換されたデンプンを提供するためのデンプンの化学修飾としては、エーテル化及びエステル化が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、メチル、エチル又はプロピル(又はそれより大きな脂肪族基)が、当該技術分野において周知であるような従来のエーテル化及びエステル化技法を用いてデンプン上に置換され得る。かかる置換は、デンプンが天然の粒状形態である時、又はデンプンが非構造化された後に行うことができる。置換は、デンプンの生分解速度を低下させ得るだけでなく、非構造化のための時間、温度、剪断力及び/又は圧力条件をも低下させ得ることが理解される。化学的に置換されたデンプンの置換度は、典型的には約0.01〜約3.0であるが、必ずしもそうであるとは限らず、約0.01〜約0.06でもあり得る。
【0022】
典型的には、熱可塑性デンプンは、約51重量%〜約100重量%、好ましくは約60重量%〜約95重量%、より好ましくは約70重量%〜約90重量%の熱可塑性デンプン構成成分を含む。デンプン構成成分の熱可塑性ポリマーに対する比は、二成分繊維構成要素における熱可塑性デンプンの割合を決定する。組成物中のデンプンの重量は、デンプン及びその天然に生じる結合水含有量を含む。用語「結合水」とは、デンプン中で、本発明の組成物を作るためにデンプンと他の構成成分とを混合する前に、自然に生じると見出された水を意味する。用語「遊離水」とは、本発明の組成物の製造において添加される水を意味する。構成成分が一旦組成物中に混合されると、水はもはやその発生源によって区別することはできないことを、当業者は理解するであろう。天然デンプンは、典型的にはデンプンの約5重量%〜約16重量%の結合水含有量を有する。
【0023】
(可塑剤)
デンプンを非構造化し、デンプンを流動可能にするために(即ち、熱可塑性デンプンを作製するために)、本発明では1以上の可塑剤を使用することができる。上述のように、可塑剤をデンプンのための非構造化剤として用いてもよい。その可塑剤は、熱可塑性デンプンのための可塑剤として機能するべく非構造化デンプン構成成分内に残存してもよく、又は除去されて、熱可塑性デンプン構成成分において別の可塑剤と置換されてもよい。可塑剤はまた、最終製品の可撓性を向上させることができ、これは組成物のガラス転移温度の低下に起因するものと考えられる。熱可塑性ポリマー構成成分のための可塑剤又は希釈剤は、ポリマーの融解温度を低下させ、最終製品の可撓性を修正し、又は熱可塑性デンプンのブレンドとの全体的な相溶性を向上させるために存在してもよい。更に、より高い融解温度を有する熱可塑性ポリマーは、ポリマーの融解温度を抑える可塑剤又は希釈剤が存在する場合に使用されてもよい。
【0024】
一般に、可塑剤は、それらが混合される本発明のポリマー構成成分と実質的に相溶性であるべきである。本明細書で使用する時、用語「実質的に相溶性」は、組成物の軟化温度及び/又は融解温度よりも高い温度まで加熱される時、可塑剤は、それが混合される構成成分中に存在するポリマーとの均質な混合物を形成することができるということを意味する。実質的な相溶性(compatability)を確実にする1つの方法は、基をデンプン上に又はデンプンをポリマー上に、酵素的に又は合成的にグラフトする又は反応させることである。
【0025】
本明細書における可塑剤は、モノマー化合物及びポリマーを含み得る。ポリマー可塑剤は、典型的には約100,000g/mol以下の分子量を有する。ポリマー可塑剤は、ブロックコポリマー及びランダムコポリマー(それらのターポリマーを含む)を含み得る。幾つかの実施形態において、可塑剤は、例えば、分子量が約20,000g/mol以下、又は約5,000g/mol以下、又は約1,000g/mol以下の低分子量可塑剤を有する。可塑剤は単独で使用されてもよく、又は2以上の可塑剤が、本発明のいかなる特定の構成成分中で使用されてもよい。
また有用な可塑剤は、ヒドロキシ系ポリマー、例えばポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、様々な置換度でのそれらのコポリマー及びブレンドである。
【0026】
可塑剤は、例えば、少なくとも1つのヒドロキシル基を有する有機化合物であることができ、2以上のヒドロキシルを有するポリオールが挙げられる。有用なヒドロキシル可塑剤の非限定的な例としては、グルコース、スクロース、フルクトース、ラフィノース、マルトデキストロース、ガラクトース、キシロース、マルトース、ラクトース、マンノースエリトロース及びペンタエリスリトールなどの糖類;エリスリトール、キシリトール、マリトール、マンニトール及びソルビトールなどの糖アルコール類;グリセロール(グリセリン)、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサントリオールなどのポリオール類及びこれらのポリマー;並びにこれらの混合物が挙げられる。好適な可塑剤としては、特に、グリセリン、マンニトール及びソルビトールが挙げられる。
【0027】
また本明細書で有用であるのは、ポロキソマー類(poloxomers)(ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロックコポリマー)及びポロキサミン類(poloxamines)(エチレンジアミンのポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロックコポリマー)などのヒドロキシルポリマー可塑剤である。これらのコポリマーは、ニュージャージー州パーシッパニー(Parsippany,NJ)にあるバスフ社(BASF Corp.)からプルロニック(Pluronic)(登録商標)として入手可能である。好適なポロキサマー類及びポロキサミン類は、デラウェア州ウィルミントン(Wilmington,DE)にあるICIケミカルズ(ICI Chemicals)からシンペロニック(Synperonic)(登録商標)として、又はニュージャージー州パーシッパニーにあるバスフ社からテトロニック(Tetronic)(登録商標)として入手可能である。
【0028】
また本明細書に用いるのに好適なのは、ヒドロキシル基を有さず、尿素及び尿素誘導体を含む、水素結合を形成する有機化合物;ソルビタンなどの糖アルコールの無水物;ゼラチンなどの動物性タンパク質;ヒマワリタンパク質、大豆タンパク質、綿実タンパク質などの植物性タンパク質;並びにこれらの混合物である。他の好適な可塑剤は、フタル酸エステル類、コハク酸ジメチル及びコハク酸ジエチル及び関連エステル類、グリセロールトリアセテート、グリセロールモノアセテート及びジアセテート類、グリセロールモノプロピオネート、グリセロールジプロピオネート及びグリセロールトリプロピオネート類、ブタノエート類、ステアレート類、乳酸エステル類、クエン酸エステル類、アジピン酸エステル類、ステアリン酸エステル類、オレイン酸エステル類、並びに生分解性である他の原酸(father acid)エステル類である。脂肪族の酸(例えば、エチレンアクリル酸、エチレンマレイン酸、ブタジエンアクリル酸、ブタジエンマレイン酸、プロピレンアクリル酸、プロピレンマレイン酸、及び他の炭化水素に基づく酸)。
【0029】
可塑剤の量は、デンプンの分子量及び量、並びにデンプン又は熱可塑性ポリマーに関する可塑剤の親和性に依存する。デンプン構成成分を有効に可塑化する任意の量を用いることができる。可塑剤は、デンプン構成成分が効果的に加工されて繊維を形成することができるように、デンプン構成成分を十分に可塑化しなければならない。一般的に、デンプンの分子量が増加すると、可塑剤の量は増加する。典型的には、可塑剤は、それが混合される構成成分の約2%〜約70%の量で存在することができ、また、約5%〜約55%、又は約10%〜約50%でもあり得る。デンプンのための可塑剤として機能する、デンプン構成成分中に組み込まれるポリマーは、本発明のその構成成分の可塑剤構成成分の一部としてみなされるべきである。可塑剤は、本発明の熱可塑性ポリマー構成成分にとって任意であり、0%又は2%未満の量は除外されない。
【0030】
(任意物質)
任意には、他の成分も、熱可塑性デンプン構成成分及び熱可塑性ポリマー構成成分に組み込まれてもよい。これらの任意成分は、構成成分の約50重量%未満、好ましくは約0.1重量%〜約30重量%、及びより好ましくは約0.1重量%〜約10重量%の量で存在してもよい。加工性を改変するため、並びに/又は最終製品の弾性、引張強度、及び弾性率のような物理的特性を改変するために、任意の材料を使用してもよい。他の効果としては、酸化安定性を含む安定性、輝度、色、可撓性、弾力性、作業性、加工助剤、粘度調節剤、及び抑臭が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい加工助剤は、ステアリン酸マグネシウムである。特にデンプン構成成分において所望され得る別の任意材料はエチレンアクリル酸であり、これはダウケミカル社(Dow Chemical Company)によりプリマコア(Primacore)として市販されている。任意成分の例は、米国特許出願09/853,131に見られる。
【0031】
(2)構造
本発明の繊維は、少なくとも二成分繊維である。本明細書で用いる時、構成成分とは、繊維の別の部分と空間的関係を有する繊維の別個の部分として定義される。二成分という用語は、本明細書で使用する時、押出成形機器からの出口で、互いに空間的な関係で少なくとも2つの別個の部分を有する繊維として定義される。本明細書の二成分繊維は、少なくとも1つの構成成分が、上記のような少なくとも1つの熱可塑性の非構造化デンプン構成成分を取り囲む、上記のような熱可塑性ポリマー構成成分である限り、任意に3以上の構成成分を有する多構成成分であってもよい。それ故に、「二成分繊維」という用語は、明確に指示がない限り、他の多成分繊維を除外することを意味しない。したがって、本明細書の二成分繊維又は多成分繊維は、これに限定されないが三成分のように3以上の別個の構成成分を有することができる。多成分繊維の異なった構成成分は、繊維の断面を横切る実質的に識別可能な区域に配置され、繊維の長さに沿って連続して伸張する。
上述のように、所要構成成分のいずれか又は両方が、多構成要素の構成成分であってもよい。構成要素は、本明細書で用いる時、物質又は材料の化学種を意味するとして定義される。多構成要素繊維は、本明細書で使用する時、2以上の化学種若しくは材料を含有する繊維、又は繊維の構成成分を意味するように定義される。
【0032】
本発明の二成分繊維は、熱可塑性ポリマー構成成分がデンプン構成成分を取り囲む限り、幾つかの異なる構造のいずれかであることができる。例えば、二成分繊維は、海島型構造(複数のデンプン構成成分のコアが熱可塑性ポリマーのシースにより取り囲まれている)であってもよいし、又はシース−コア構造(単一のデンプン構成成分のコアが熱可塑性ポリマー構成成分のシースにより取り囲まれている)であってもよく、その際デンプン構成成分は熱可塑性ポリマーによって包囲されるか、又は完全に取り囲まれている。
【0033】
図1は、シース/コア構造を有する二成分繊維の断面図を示す概略図を包含する。構成成分Xは、熱可塑性ポリマー構成成分である構成成分Yにより常に取り囲まれるようなデンプン構成成分である。
図1Aは、典型的な同心のシース−コア構造を示す。
図1Bは、中実のコア及び成形された連続的シースを有するシース−コア構造を示す。
図1Cは、中空のコア及び連続的シースを有するシース−コア構造を示す。
図1Dは、中空のコア及び成形された連続的シースを有するシース−コア構造を示す。
図1Eは、偏心のシース−コア構造を示す。
図2は、海島型構造を有する二成分繊維の断面図を示す概略図を含む。
図2Aは、構成成分Xが構成成分Yによって取り囲まれた中実の海島型構造である。構成成分Xの形状は三角形である。
図2Bは、構成成分Xが構成成分Yによって取り囲まれた中実の海島型構造である。
図2Cは、構成成分Xが構成成分Yによって取り囲まれた中空の海島型構造である。
【0034】
熱可塑性デンプン構成成分の可塑性ポリマー構成成分に対する重量比は、約5:95〜約95:5であることができる。別の実施形態では、この比は約10:90〜約65:35、及び/又は約15:85〜約50:50である。
【0035】
(3)材料特性
本発明の二成分繊維は、一構成成分のデンプン及びポリマーブレンド繊維を上回る幾つかの利益を有することができる。熱可塑性ポリマーがデンプン構成成分を完全に取り囲むために、デンプンを多く含む構成成分は最終用途の間保護される。これは、二成分繊維が破断時伸長又は引張強度などの良好な繊維特性を有して製造されることを可能にする。熱可塑性ポリマー構成成分はまた、機械的、熱力学的、電気的、及び化学的環境要因又は条件、並びにこれらの組み合わせからの保護を提供することができる。熱可塑性ポリマー構成成分はまた、繊維が結合されて不織布基材を作るのを可能にすることができる。
【0036】
この二成分構造は一般に繊維をより温度安定性にし、特に熱可塑性ポリマー構成成分のTmが少なくとも約100℃、とりわけ少なくとも約125℃である場合には繊維をより温度安定性にすることもまた見出されている。改善された温度安定性は、これらの繊維を、当該技術分野において一般的に用いられる様々な繊維形成後のプロセスで加工することを容易にする(facilities)が、それには、これに限定されないが、ウェブの熱固着された繊維基材の形成のような繊維の熱接着、これに限定されないが機械的延伸のような加工後の技術、及び一構成成分デンプン含有繊維と共に用いるには好適でない場合もあるその他のプロセスが挙げられるが、これらに限定されない。繊維がそれまで安定である温度は、用いられる具体的なポリマー、熱可塑性ポリマーのデンプン構成成分に対する比、及び具体的な構造に依存する。デンプン構成成分の融解温度は、熱可塑性ポリマー構成成分の融解温度より低い。
【0037】
本発明の繊維はまた、極性及び/又は非極性溶媒に対して、一構成成分デンプン含有繊維に比べてより耐性であるという利益を有することができる。これは、デンプン繊維を様々な環境、例えば典型的なデンプン繊維が好適でない場合もある水性環境で用いることを可能にする。
【0038】
本発明の繊維の直径は、典型的には約200マイクロメートル(ミクロン)未満であり、別の実施形態では約100ミクロン未満、約50ミクロン未満、又は30ミクロン未満であることができる。本明細書の1つの実施形態では、繊維は約5ミクロン〜約25ミクロンの直径を有する。繊維直径は繊維紡糸技術において周知の要因により制御され、それには例えば紡糸速度及び質量処理量が挙げられる。
【0039】
本発明において製造される繊維は、存在するデンプンの量、使用するポリマー、繊維の具体的な構造に応じて環境分解性であることができる。「環境で分解可能」とは、生分解性、崩壊性、分散性、水洗可能性、若しくは堆肥化可能性、又はこれらの組み合わせと定義される。本発明において、繊維、不織布ウェブ、及び物品は環境分解性であることができる。
【0040】
本明細書に記載されている繊維は、一般的に、使い捨ての不織布物品の製造に使用される。前記物品は、通常は水洗可能である。用語「水洗可能」は、本明細書で使用する時、トイレのような汚水処理システム内で溶解、分散、崩壊、及び/又は分解して、トイレに流した時にトイレ又はその他のいかなる下水管にも詰まることなく除去される材料を指す。繊維及び得られる物品はまた、水反応性であってもよい。水反応性という用語は、本明細書で使用する時、水中に入れられるか流された時に、観察可能及び測定可能な変化が生じることを意味する。典型的な観察には、物品の膨潤、解体、溶解の記録、又は一般的な劣化構造の観察が挙げられる。
【0041】
本発明の二成分繊維は、低い脆性を有し、高い強靱性、例えば約2MPa以上の強靱性を有することができる。靭性は、応力−歪み曲線下の領域として定義される。
伸張性又は伸びは、破断までの伸びにより測定される。伸張性又は伸びは、印加された力の下で伸長可能であるものとして定義されるが、必ずしも回復しない。破断までの伸びは、繊維が分離するまで伸張することができる距離として測定される。本発明の繊維が非常に伸張性であり得ることがまた見出されている。
【0042】
単一繊維の破断までの伸びは、200%/分のひずみ速度が用いられることを除いて、ASTM標準D3822に従って試験される。10Nのロードセル及び空気圧式グリップを用いてMTSシナジー(Synergie)400引張試験機で試験を実施する。試験は、1インチ(2.54cm)のゲージ長を有する試料上で2インチ/分(5.08cm/分)の速度で行われる。試料を引っ張って破断する。ピーク応力及び破断時の%伸びを記録し、10試験片について平均する。
【0043】
二成分繊維から製造される不織布製品はまた、望ましい機械的特性、特に、強度、可撓性、柔軟性、及び吸収性を示すことができる。強度の測定は、乾燥引張強度及び/又は湿潤引張強度を含む。可撓性は、剛性と関連し、柔軟性に起因し得る。柔軟性は、一般的に、可撓性及び質感の両方に関連する生理的に認識される属性として記載される。吸収性は、製品が流体を吸い取る能力並びにその流体を保持する能力に関する。
【0044】
(4)プロセス
二成分繊維又は多成分繊維を製造する第一工程は、配合又は混合工程であることができる。この配合工程において、原材料は、典型的には剪断力の下で加熱される。熱の存在下での剪断は、組成物の適切な選択と共に、均質な溶融物を生じさせ得る。溶融物は、続いて繊維が形成される押出成形機に入れられる。繊維の収集物は、結果として不織布ウェブを形成する熱、圧力、化学的バインダー、機械的なからみ合い、及びこれらの組み合わせを用いて共に組み合わされる。続いて、不織布は物品へと組み立てられる。
【0045】
(配合)
配合工程の目的は、繊維の各構成成分に関する均質な溶融組成物を生成することである。好ましくは、溶融組成物は均質であり、これは溶融物の成分の均一な分布が存在するということを意味する。結果として生じた1又は複数の溶融組成物は、紡糸する繊維に対して本質的には水を含まないはずである。本質的に存在しないということは、紡糸の間に繊維を最終的に破壊し得る泡を生じさせるような、実質的な問題を起こさないこととして定義される。溶融組成物の遊離水含有量は、約1%以下、約0.5%以下、又は約0.15%以下であり得る。全水分含有量は、結合水及び遊離水を含む。好ましくは全水分含有量(結合水及び遊離水を含む)は、約1%以下である。この低い水分含有量を達成するには、デンプン又はポリマーを、加工前に乾燥させる必要がある場合があり、及び/又はいかなる遊離水をも除去すべく加工中に真空が適用される。本明細書の熱可塑性デンプン又は他の構成成分は、高温、例えば約60℃で紡糸前に乾燥され得る。乾燥温度は、構成成分の構成要素の化学的性質により決定される。故に、異なる組成物は、異なる乾燥温度を用いることができ、これは20℃から150℃の範囲であり得、一般的にはポリマーの融解温度よりも低い。構成成分の乾燥は、例えば、連続していてもよいし、又は紡糸と組み合わせた別個の工程としてでもよい。当該技術分野において周知であるような乾燥のためのこのような技法を、本発明の目的のために使用することができる。
【0046】
一般に、当該技術分野において既知であるか、明細書の目的のために好適である方法を用いて、本発明の構成要素の成分を組み合わせることができる。典型的には、かかる技法としては、熱、混合及び圧力が挙げられる。特定の順番又は混合、温度、混合速度若しくは時間、及び機器は、当業者が理解するように変更可能であるが、温度は、デンプンが著しく分解しないように制御すべきである。結果として生じた溶融物は均質であるべきである。デンプン及び可塑剤のブレンドを混合する好適な方法は、以下の通りである。
【0047】
1.可塑剤を添加してデンプンを非構造化する。可塑剤は、ソルビトール又はマンニトールのように固体である場合、デンプン(粉末形態)と共に二軸式押出成形機に添加することができる。グリセリンのような液体は、容量変位ポンプを介してデンプンと組み合わせることができる。
2.押出成形機内で熱及び剪断力を加えることにより、デンプンを完全に非構造化する。デンプン及び可塑剤の混合物は、典型的には、デンプンがゼラチン化するまで、約10秒〜約15分の期間に亘って120℃〜180℃に加熱される。
3.典型的には少なくとも一回、押出成形機中の溶融物に真空を適用して遊離水を除去することができる。真空は、例えば、押出成形機の長さのおよそ3分の2の距離まで、又は操作者が所望するその他の点に適用することができる。
4.あるいは、複数の可塑剤又はデンプンのブレンドを導入するために、複数の供給領域を用いることができる。
5.あるいは、デンプンを液体の可塑剤と事前に混合し、押出成形機内にポンプで送り込むことができる。
【0048】
配合分野の当業者により認識されるように、デンプンの非構造化、デンプン溶融物の形成のために、多数の変形並びに代替方法及び条件(制限するものではないが、供給ポートの位置及びスクリュー押出成形機のプロファイルによるものを含む)を使用することができる。
【0049】
好適な混合装置は、複数の注入点を有する複数の混合領域を備えた二軸式押出成形機である。複数の注入点を、非構造化デンプン及びポリマーを添加するために使用することができる。二軸式バッチミキサー又は一軸式押出成形システムも使用できる。十分な混合及び熱が発生する限り、使用される具体的な装置は重要ではない。
【0050】
材料を配合する代替方法は、可塑剤、デンプン及びポリマーを押出成形システムに添加することを含み、ここで、それらは徐々に高くなる温度にて混合される。例えば、6つの加熱領域を有する二軸式押出成形機においては、最初の3領域が90℃、120℃、及び130℃に加熱され、後の3領域がポリマーの融点より高く加熱される。この手順により、デンプンの最小の熱分解が生じ、デンプンが完全に非構造化されてから熱可塑性材料と緊密に混合される。
【0051】
非構造化した熱可塑性デンプンを配合する例は、250RPMで設定されたワーナー・アンド・フライデラー(Werner & Pfleiderer)(直径30mm、長さ:直径比40:1)の共回転式二軸式押出成形機を用いることであり、最初の2つの加熱領域は50℃に設定されており、残り5つの加熱領域は150℃に設定されている。最後から二番目及び最後の加熱部分間に真空が取り付けられ、10atmの真空を引く。デンプン粉末及び可塑剤(例えば、ソルビトール)は、例えば質量損失フィーダーを使用して、組み合わせた速度が30ポンド/時間(13.6kg/時間)、デンプン/可塑剤の重量比が60/40で、押出成形機の基部にある供給スロート(feed throat)内に個々に供給される。デンプン又は可塑剤と共に、加工助剤を添加することができる。例えば、マグネシウムセパレート(magnesium separate)を、例えば熱可塑性デンプン構成成分の0重量%〜1重量%の濃度で添加することができる。
【0052】
(紡糸)
本発明の繊維は、溶融紡糸により作製することができる。溶融紡糸は、溶液からの湿式又は乾式紡糸などの他の紡糸とは区別され、かかる代替方法においては、溶媒が溶融物中に存在し、押出物からそれを揮発させるか、又は放散させることにより排除される。
【0053】
溶融物に関する紡糸温度は、約105℃〜約300℃の範囲であることができ、幾つかの実施形態においては、約130℃〜約250℃、又は約150℃〜約210℃であり得る。加工温度は、各構成成分の化学的性質、分子量、及び濃度によって決まる。
【0054】
一般に、本発明には、高い繊維紡糸速度が所望される。約10メートル/分以上の繊維紡糸速度を使用することができる。本明細書の幾つかの実施形態において、繊維紡糸速度は、約100〜約7,000メートル/分、又は約300〜約3,000メートル/分、又は約500〜約2,000メートル/分である。
【0055】
繊維は、高いドローダウン率を特徴とする繊維紡糸プロセスにより作製される。ドローダウン率は、最大直径での繊維(従来の紡糸プロセスにおいて、典型的にはスピナレットの毛管から出た直後に生じる)と、形成された繊維の最終直径との比として定義される。ステープル、スパンボンド又はメルトブロウン方法のいずれかによる繊維のドローダウン率は、典型的には1.5以上であり、約5以上、約10以上又は約12以上であることができる。
【0056】
連続する繊維は、例えばスパンボンド法又はメルトブロウン方法により製造することができる。あるいは、非連続繊維(短繊維)は、当該技術分野において周知の従来の短繊維方法に従って製造することができる。当業者により理解されるように、多様な繊維製造方法を組み合わせて、組み合わせ技法とすることもできる。例えば、中空繊維は、米国特許第6,368,990号に記載されるように製造することができる。繊維紡糸のための上述のような方法は、当該技術分野において周知であり、理解されている。紡糸された繊維は、形成されてから従来のゴデットワインディングシステム又は空気通過抵抗減衰装置(through air drag attenuation devices)を用いて集められることができる。ゴデットシステムを使用する場合、繊維は約50℃〜約200℃の温度での押出成形後延伸によって更に配向され得る。延伸した繊維は、続いて捲縮及び/又は切断して、カーディング、エアレイド、又は流動体載置(fluidlaid)方法において使用される非連続繊維(短繊維)を形成してもよい。
【0057】
繊維を紡糸するプロセスにおいて、特に温度を105℃よりも高くする時、残留水分量は、典型的には、繊維の1重量%以下、あるいは0.5重量%以下、又は0.15重量%以下であることが望ましい。
好適な多成分溶融紡糸機器は、例えば米国フロリダ州メルボルン(Melbourne,Florida USA)にあるヒルズ社(Hills Inc.)から市販され、米国特許第5,162,074号(ヒルズ社)に記載されている。
スピナレットの毛管の寸法は、所望の繊維の大きさ及び作り(design)、紡糸条件、並びにポリマー特性に応じて変更できる。好適な毛管の寸法には、長さ対直径比4(直径0.350mm)が挙げられるが、これに限定されない。
当業者により理解されるように、繊維の紡糸及び構成成分の配合は、任意にはインラインで行うことができ、配合、乾燥及び紡糸は連続するプロセスである。
【0058】
紡糸線における各構成成分の滞留時間は、高融解温度の熱可塑性ポリマーが非構造化デンプンと紡糸されるように選択される時、特別な重要性を有し得る。紡糸機器は、スピナレット内にて曝露される非構造化の時間及び容量を最小にすることによって、高い加工温度に非構造化されたデンプン構成成分を曝露することを最小にするべく設計することができる。例えば、スピナレットへのポリマー供給線は、二成分パックに導入されるまで、封止され、分離されることができる。更に、多成分繊維の紡糸分野の当業者であれば、スピナレットに導入されるまで、少なくとも2つの構成成分が、異なる温度で別個の押出成形機に導入されて加工され得ることを理解するであろう。
【0059】
例えば、少なくとも1つの非構造化デンプンセグメントと、少なくとも1つのポリプロピレンセグメントとを有する二成分区分化パイ構造の繊維を紡糸する好適な方法は、以下の通りである。非構造化されたデンプン構成成分の押出成形機のプロファイルは、実施例7と同様のデンプン組成物を有する3つのヒータ領域を備えた押出成形機の最初の3つの領域では80℃、150℃、及び150℃であってもよい。移動ライン及び溶融ポンプヒータ温度は、デンプン組成物に関しては150℃であってもよい。ポリプロピレン構成成分の押出成形機温度プロファイルは、3つのヒータ領域を備えた押出成形機の最初の3つの領域では180℃、230℃及び230℃であってもよい。移動ライン及び溶融ポンプを、230℃まで加熱することができる。この場合、スピナレットの温度は180℃〜230℃の範囲であることができる。
繊維を紡糸するプロセスにおいて、特に温度を105℃よりも高くする時、残留水分量は、典型的には、繊維の1重量%以下、あるいは0.5重量%以下、又は0.15重量%以下であることが望ましい。
【0060】
(5)物品
本明細書の繊維は、繊維が従来用いられるいかなる目的に用いられてもよい。これには、不織布基材への組み込みが挙げられるが、これに限定されない。本明細書の繊維は、当該技術分野において既知の任意の好適な方法によって不織布に変換されてもよい。連続繊維は産業界で標準的なスパンボンド又はメルトブロウンタイプの技術を使用してウェブに形成でき、一方、短繊維は産業界で標準的なカーディング、エアレイド又は湿式載置技術を使用してウェブに形成できる。代表的な結合方法には、カレンダ(圧力及び熱)、通気加熱、機械的なからみ合い、流体力学的なからみ合い、ニードルパンチ、並びに化学結合及び/又は樹脂結合が挙げられる。圧延、通気熱(thru-air heat)、及び化学的接合は、デンプン及びポリマー多成分繊維のための好ましい接合法である。熱結合可能な繊維は、加圧熱及び通気熱結合方法に必要である。
【0061】
本発明の繊維はまた、他の合成又は天然繊維と結合又は組み合わせて不織布を製造してもよい。合成繊維又は天然繊維は、形成プロセスで共にブレンドされてもよく、又は別個の層で使用されてもよい。適切な合成繊維としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアクリレート、並びにこれらのコポリマー及びこれらの混合物から作られる繊維が挙げられる。天然繊維には、セルロース繊維及びその誘導体が挙げられる。適切なセルロース繊維としては、広葉樹の繊維、針葉樹の繊維、麻、及び綿を含む、任意の樹木又は植物に由来するものが挙げられる。レーヨンのような加工された天然セルロース資源から作られる繊維もまた含まれる。
【0062】
本発明の繊維は、好適な物品の中でも、とりわけ不織布の製造に使用してもよい。不織布物品は、連続又は非連続な、並びに物理的及び/又は化学的に互いに付着した繊維を15%を超える多さで含有する物品として定義される。不織布は、それ自体で、又は他の材料の複合体の組み合わせの一構成成分としてのいずれかで使用される層状製品(例えば、乳児用おむつ又は女性用生理用パッド)を製造するために、追加の不織布又はフィルムと組み合わされてもよい。好ましい物品は、使い捨ての不織布物品である。結果として得られる製品は、多くの異なる用途の1つに用途を見出してもよい。本発明の好ましい物品には、衛生及び医療用途向けの使い捨て不織布が挙げられる。衛生用途には、拭き取り用品;おむつ、特にトップシート又はバックシート;及び女性用パッド又は女性用製品、特にトップシートのような物品が挙げられる。
【実施例】
【0063】
以下の実施例は、本発明を更に説明する。以下の実施例で使用するデンプンは、スタードライ(StarDri)1、スタードライ100、エチレックス(Ethylex)2015又はエチレックス2035であり、これらは全てステーリーケミカル社(Staley materials Co.)のものである。後者のステーリーの材料は、置換デンプンである。ポリプロピレン(PP)は、ベーセルプロファックス(Basell Profax)PH−835、ベーセルPDC1298、又はエクソン/モービルアチーブ(Exxon/Mobil Achieve)3854である。ポリエチレン(PE)は、ダウケミカルズアスパン(Dow Chemicals Aspun)6811A、ダウケミカルアスパン6830A又はダウケミカルアスパン6842Aである。グリセリンは、ダウケミカル社(Dow Chemical Company)からのコシャーグレード(Kosher Grade)BUオプティム(OPTIM)*グリセリン99.7%である。ソルビトールは、アーチャー−ダニエルズ−ミッドランド社(Archer-Daniels-Midland Co.)(ADM)からのクリスタライン(Crystalline)NF/FCC177440−2Sである。ポリエチレンアクリル酸は、ダウケミカル社(Dow Chemical Co.)からのプリマコア(PRIMACORE)5980Iである。分子量、分子量分布、及び/又はコモノマー若しくは欠陥レベルが異なる同様の化学的組成を有する他のポリマーを使用することもできる。
実施例1〜18の加工条件は、実際に試験された範囲は0.2〜2ghmであるが、0.8ghmの質量処理量を用いる。質量処理量の実際的範囲は、約0.1〜約8ghmである。
【0064】
(実施例1)
中実のシース/コア二成分繊維:熱可塑性ポリマー構成成分Aは、ベーセルプロファックス(Basell Profax)835である。デンプン構成成分BはTPS構成成分であり、60部のスタードライ(StarDri)1、40部のソルビトール、及び1部のステアリン酸マグネシウム(本明細書の実施例のすべてのデンプン処方に含まれる)を用いて配合される。融解加工温度は、180〜210℃の範囲である。構成成分A対構成成分Bの比は95:5〜10:90である。この繊維の利点は、少なくとも140℃まで温度安定性であり、並びに水及びアルコールのような極性溶媒に優れた耐性を有することである。
【0065】
(実施例2)
中実のシース/コア二成分繊維:構成成分Aはポリエチレンである。構成成分BはTPS構成成分であり、60部のスタードライ(StarDri)1及び40部のソルビトールを用いて配合される。融解加工温度は、150〜190℃の範囲である。構成成分A対構成成分Bの比は95:5〜5:95である。この繊維の利点は、少なくとも80℃まで温度安定性であり、並びに水及びアルコールのような極性溶媒に優れた耐性を有することである。
【0066】
(実施例3)
中実のシース/コア二成分繊維:構成成分AはPLAである。構成成分BはTPS構成成分であり、60部のスタードライ(StarDri)1及び40部のソルビトールを用いて配合される。融解加工温度は、180〜210℃の範囲である。構成成分A対構成成分Bの比は95:5〜10:90である。この繊維の利点は、少なくとも140℃まで温度安定性であり、並びに水及びアルコールのような極性溶媒に優れた耐性を有することである。
【0067】
(実施例4)
中実のシース/コア二成分繊維:構成成分Aはイーストマン(Eastman)14285である。構成成分BはTPS構成成分であり、60部のスタードライ(StarDri)1及び40部のソルビトールを用いて配合される。融解加工温度は、210〜250℃の範囲である。構成成分A対構成成分Bの比は95:5〜20:80である。この繊維の利点は、少なくとも90℃まで温度安定性であり、並びに水及びアルコールのような極性溶媒に優れた耐性を有することである。
【0068】
(実施例5)
中実のシース/コア二成分繊維:構成成分Aはビオノーレ(Bionolle)1020である。構成成分BはTPS構成成分であり、60部のスタードライ(StarDri)1及び40部のソルビトールを用いて配合される。融解加工温度は、160〜200℃の範囲である。構成成分A対構成成分Bの比は95:5〜15:85である。この繊維の利点は、少なくとも80℃まで温度安定性であり、並びに水及びアルコールのような極性溶媒に優れた耐性を有することである。
【0069】
(実施例6)
中実のシース/コア二成分繊維:構成成分Aはイースター・バイオ(EASTAR BIO)である。構成成分BはTPS構成成分であり、60部のスタードライ(StarDri)1及び40部のソルビトールを用いて配合される。融解加工温度は、150〜180℃の範囲である。構成成分A対構成成分Bの比は95:5〜20:80である。この繊維の利点は、少なくとも80℃まで温度安定性であり、並びに水及びアルコールのような極性溶媒に優れた耐性を有することである。
【0070】
(実施例7)
海島型二成分繊維:構成成分Aはポリプロピレンである。構成成分BはTPS構成成分であり、60部のスタードライ(StarDri)1及び40部のソルビトールを用いて配合される。融解加工温度は、180〜210℃の範囲である。構成成分A対構成成分Bの比は95:5〜10:90である。この繊維の利点は、少なくとも140℃まで温度安定性であり、並びに水及びアルコールのような極性溶媒に優れた耐性を有することである。
【0071】
(実施例8)
海島型二成分繊維:構成成分Aはポリエチレンである。構成成分BはTPS構成成分であり、60部のスタードライ(StarDri)1及び40部のソルビトールを用いて配合される。融解加工温度は、150〜190℃の範囲である。構成成分A対構成成分Bの比は95:5〜5:95である。この繊維の利点は、少なくとも80℃まで温度安定性であり、並びに水及びアルコールのような極性溶媒に優れた耐性を有することである。
【0072】
(実施例9)
海島型二成分繊維:構成成分AはPLAである。構成成分BはTPS構成成分であり、60部のスタードライ(StarDri)1及び40部のソルビトールを用いて配合される。融解加工温度は、180〜210℃の範囲である。構成成分A対構成成分Bの比は95:5〜10:90である。この繊維の利点は、少なくとも140℃まで温度安定性であり、並びに水及びアルコールのような極性溶媒に優れた耐性を有することである。
【0073】
(実施例10)
海島型二成分繊維:構成成分Aはイーストマン(Eastman)14285である。構成成分BはTPS構成成分であり、60部のスタードライ(StarDri)1及び40部のソルビトールを用いて配合される。融解加工温度は、210〜250℃の範囲である。構成成分A対構成成分Bの比は95:5〜20:80である。この繊維の利点は、少なくとも90℃まで温度安定性であり、並びに水及びアルコールのような極性溶媒に優れた耐性を有することである。
【0074】
(実施例11)
海島型二成分繊維:構成成分Aはビオノーレ(Bionolle)1020である。構成成分BはTPS構成成分であり、60部のスタードライ(StarDri)1及び40部のソルビトールを用いて配合される。融解加工温度は、160〜200℃の範囲である。構成成分A対構成成分Bの比は95:5〜15:85である。この繊維の利点は、少なくとも80℃まで温度安定性であり、並びに水及びアルコールのような極性溶媒に優れた耐性を有することである。
【0075】
(実施例12)
海島型二成分繊維:構成成分Aはイースター・バイオ(EASTAR BIO)である。構成成分BはTPS構成成分であり、60部のスタードライ(StarDri)1及び40部のソルビトールを用いて配合される。融解加工温度は、150〜180℃の範囲である。構成成分A対構成成分Bの比は95:5〜20:80である。この繊維の利点は、少なくとも80℃まで温度安定性であり、並びに水及びアルコールのような極性溶媒に優れた耐性を有することである。
【0076】
(実施例13)
中実のシース/コア二成分繊維:構成成分Aは、アルドリッチ・ケミカル(Aldrich Chemical)から購入され、グリセリンにより可塑化された90〜99%の加水分解度を有するポリビニルアルコールである。構成成分BはTPS構成成分であり、60部のスタードライ(StarDri)1及び40部のソルビトールを用いて配合される。融解加工温度は、180〜250℃の範囲である。構成成分A対構成成分Bの比は95:5〜20:80である。この繊維の利点は、少なくとも110℃まで温度安定性であり、並びにCCl4、ベンゼン、及び類似の脂肪族/有機化合物のような非極性溶媒に優れた耐性を有することである。
【0077】
(実施例14)
中実のシース/コア二成分繊維:構成成分Aは、アルドリッチ・ケミカル(Aldrich Chemical)から購入され、27〜44mol%のエチレンを含有するポリ(ビニルアルコール−コ−エチレン)である。構成成分BはTPS構成成分であり、60部のスタードライ(StarDri)1及び40部のソルビトールを用いて配合される。融解加工温度は、180〜230℃の範囲である。構成成分A対構成成分Bの比は95:5〜15:85である。この繊維の利点は、少なくとも80℃まで温度安定性であり、並びにCCl4、ベンゼン、及び類似の脂肪族/有機化合物のような非極性溶媒に優れた耐性を有することである。
【0078】
(実施例15)
中実のシース/コア二成分繊維:構成成分Aはポリアミド;例えばナイロン(Nylon)6、ナイロン(Nylon)12、及びナイロン(Nylon)6、10である。構成成分BはTPS構成成分であり、60部のスタードライ(StarDri)1及び40部のソルビトールを用いて配合される。融解加工温度は、180〜230℃の範囲である。構成成分A対構成成分Bの比は95:5〜20:80である。この繊維の利点は、少なくとも90℃まで温度安定性であり、並びにCCl4、ベンゼン、及び類似の脂肪族/有機化合物のような非極性溶媒に優れた耐性を有することである。
【0079】
(実施例16)
海島型二成分繊維:構成成分Aは、アルドリッチ・ケミカル(Aldrich Chemical)から購入され、グリセリンにより可塑化された90〜99%の加水分解度を有するポリビニルアルコールである。構成成分BはTPS構成成分であり、60部のスタードライ(StarDri)1及び40部のソルビトールを用いて配合される。融解加工温度は、180〜250℃の範囲である。構成成分A対構成成分Bの比は95:5〜20:80である。この繊維の利点は、少なくとも110℃まで温度安定性であり、並びにCCl4、ベンゼン、及び類似の脂肪族/有機化合物のような非極性溶媒に優れた耐性を有することである。
【0080】
(実施例17)
海島型二成分繊維:構成成分Aは、アルドリッチ・ケミカル(Aldrich Chemical)から購入され、27〜44mol%のエチレンを含有するポリ(ビニルアルコール−コ−エチレン)である。構成成分BはTPS構成成分であり、60部のスタードライ(StarDri)1及び40部のソルビトールを用いて配合される。融解加工温度は、180〜230℃の範囲である。構成成分A対構成成分Bの比は95:5〜15:85である。この繊維の利点は、少なくとも80℃まで温度安定性であり、並びにCCl4、ベンゼン、及び類似の脂肪族/有機化合物のような非極性溶媒に優れた耐性を有することである。
【0081】
(実施例18)
海島型二成分繊維:構成成分Aはポリアミド;例えばナイロン(Nylon)6、ナイロン(Nylon)12、及びナイロン(Nylon)6、10である。構成成分BはTPS構成成分であり、60部のスタードライ(StarDri)1及び40部のソルビトールを用いて配合される。融解加工温度は、180〜230℃の範囲である。構成成分A対構成成分Bの比は95:5〜20:80である。この繊維の利点は、少なくとも90℃まで温度安定性であり、並びにCCl4、ベンゼン、及び類似の脂肪族/有機化合物のような非極性溶媒に優れた耐性を有することである。
【0082】
実施例1〜18は、構成成分Bについては同じ組成物を含有する。構成成分Bについての別の組成物には、これらに限定されないが以下に例示するものが挙げられる。表中、材料1はデンプンを表す。材料2は可塑剤を表す。材料3は非デンプン熱可塑性ポリマーを表す。
【0083】
【表1】

特定の実施例が上に与えられているが、異なる組み合わせの材料、比率、及び通気孔を備える逆回転二軸式又は高剪断力一軸式のような機器も用いることができる。本発明の特定の実施形態を例示し記載したが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を実施できることが、当業者には自明であろう。本発明の範囲内におけるこのような変形及び変更の全ては、添付の請求項に包含されることを意図するものである。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1A】シース/コア構造を有する二成分繊維の断面図。
【図1B】シース/コア構造を有する二成分繊維の断面図。
【図1C】シース/コア構造を有する二成分繊維の断面図。
【図1D】シース/コア構造を有する二成分繊維の断面図。
【図1E】シース/コア構造を有する二成分繊維の断面図。
【図2A】海島型構造を有する二成分繊維の断面図。
【図2B】海島型構造を有する二成分繊維の断面図。
【図2C】海島型構造を有する二成分繊維の断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A.非デンプン熱可塑性ポリマーを含む熱可塑性ポリマー構成成分と、
B.可塑剤及び非構造化されたデンプンを含む熱可塑性デンプン構成成分と
を含む二成分繊維であって、
該熱可塑性ポリマー構成成分が該熱可塑性デンプン構成成分を包囲し、および該熱可塑性ポリマー構成成分が、0%のデンプン、又は該熱可塑性デンプン構成成分より低いパーセンテージのデンプンを含有する二成分繊維。
【請求項2】
該繊維が約200μm以下の直径を有する、請求項1に記載の二成分繊維。
【請求項3】
該繊維が海島及びシース−コアから成る群から選択される構造を有する、請求項1又は2に記載の二成分繊維。
【請求項4】
該熱可塑性ポリマー構成成分が該熱可塑性デンプン構成成分より高い溶融温度を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の二成分繊維。
【請求項5】
構成成分Aの該熱可塑性ポリマーが、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、及びこれらのコポリマー並びにこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の二成分繊維。
【請求項6】
構成成分Aが、前記構成成分の約51重量%以上の非デンプン熱可塑性ポリマーを含み、構成成分Bが、前記構成成分の約51重量%以上の前記非構造化されたデンプンを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の二成分繊維。
【請求項7】
構成成分Aが約100℃以上のTmを有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の二成分繊維。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の繊維を含む、不織布基材。
【請求項9】
前記繊維の少なくとも一部が、前記基材中の前記繊維の他のものに熱固着される、請求項8に記載の不織布基材。
【請求項10】
追加の種類の繊維を更に含み、前記追加の種類の繊維が請求項2に記載の前記繊維と混合される、請求項8又は9に記載の不織布基材。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか一項に記載の不織布ウェブを含む、使い捨て物品。


【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【公表番号】特表2006−505719(P2006−505719A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−557070(P2004−557070)
【出願日】平成14年11月14日(2002.11.14)
【国際出願番号】PCT/US2002/036755
【国際公開番号】WO2004/050965
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】