説明

データを送信するシステム、データを送信する装置、およびデータのベクトルを受信する装置

【課題】高データレートを達成することと、受信機複雑度を低く保ちながら目標ダイバーシティ及び高パフォーマンスを保証する。
【解決手段】送信機側において、変調シンボルを線形結合する代数的線形プリコーダを備えることによって、ダイバーシティ低下を克服する。すなわち、プリコーディングサイズと、送信ビーム形成されたMIMOチャネルのパラメータと、達成可能なダイバーシティ次数との間の関係を求める。受信機側において、代数的格子低減が、送信機において適合された線形プリコーダ構造と共に使用され、受信機の出力において目標ダイバーシティ次数が観察されることを保証しながら、受信機の複雑度がさらに低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には、少なくとも2つの送信アンテナと、エラー訂正符号構造(error correcting code structure)及び送信ビーム形成技法に従う符号化器とを備える送信機から、送信ビーム形成されたMIMOチャネルを介して、少なくとも2つの受信アンテナと、エラー訂正符号構造に従って規定される復号器とを備える受信機にデータを送信するシステムに関する。
【0002】
以下において、チャネル資源とは、周波数帯域幅、時間インターバル、及び場合によっては、異なる空間的位置に配置される送信アンテナ及び受信アンテナによってもたらされるいくつかの空間的次元を意味する。
【0003】
無線チャネルを介して送信される信号は、フェージング及びシャドーイングのようなチャネル変動に起因して深刻な劣化を受け、これによってチャネルを確率変数とみなすことができる。以下において、チャネル変動は、情報語の送信に必要な時間に対して遅いと考えられるが、チャネル具現化は情報語の2回の送信の間に変化していると考えられる。いわゆる擬似静的フェージングに対抗する1つの主要な方法は、時間、周波数、又は空間のいずれかにダイバーシティを提供することがである。
【0004】
チャネルダイバーシティ次数は、送信に使用されるチャネル資源内で観察される独立したフェージング確率変数の数であると定義される。送信/受信方式は、チャネルダイバーシティ次数(フルダイバーシティ次数ともよばれる)によって上界を定められる、システムのダイバーシティ次数と呼ばれる、所与の量のダイバーシティを収集することが可能である。
【0005】
情報語が受信機によって正確に推定されない場合、エラーイベントが生じる。所与のエラーイベントに関連付けられるエラーの確率を計算することを可能にする主要なパラメータは、送信された情報語に関連付けられる、ノイズのない受信信号と、復号された情報語に関連付けられる、再構築された、ノイズのない受信信号との間のユークリッド距離である。エラーイベントのダイバーシティ次数は、そのエラーイベントに関連付けられるユークリッド距離に含まれる独立確率変数の数として定義される。最後に、システムダイバーシティ次数は、すべての可能性のあるエラーイベント(又は等価的に、情報語のすべての可能な対)の最小ダイバーシティ次数に等しい。
【0006】
無線リンクの受信機側及び/又は送信機側において複数のアンテナが使用される電気通信システムは、多入力多出力システムと呼ばれる(さらに、MIMOシステムとも呼ばれる)。MIMOシステムは、単一アンテナシステムが提供する送信容量と比較して大きな送信容量を提供することが示されている。特に、MIMO容量は、所与の信号対雑音比に関して、且つ好ましい無相関チャネル状態下で、送信機アンテナ又は受信機アンテナの、いずれか小さい方の数と共に増大する。したがって、MIMO技法は、大きなスペクトル効率を提供するか、又は代替的に、現在の電気通信システムにおいて得られるスペクトル効率と同等のスペクトル効率を得るのに必要な送信電力を低減するように意図される将来の無線システムにおいて使用される可能性が高い。このようなMIMO技法は、OFDMのようなマルチキャリア変調技法と組み合される可能性が非常に高く、これによって、シンボル間干渉のないMIMOチャネルモデルを考慮することが可能となる。
【0007】
MIMOシステムの送信機は、符号化ビットストリームを複数の変調シンボルから成る空間的ストリームに変換するデジタル変調器を備え、当該デジタル変調器の入力は符号化ビットであり、当該デジタル変調器の出力はNs≦min(Nt,Nr)個の変調シンボルから成るベクトルである。したがって、システムは、送信MIMOチャネル上でNs個の空間的ストリームを送信すると言われる。
【0008】
固有ベクトル送信ビーム形成方式を使用してMIMOチャネルのパフォーマンスを改善することができる。送信ビーム形成されたMIMOチャネルの行列は、Ns×Ntビーム形成行列と、チャネルのNt×Nr行列Hとの連結である。Ns×Ntビーム形成行列は、チャネルのNt×Nr行列の固有ベクトルのうち最良のNs個に関連付けられる固有ベクトルから導出される。したがって、送信ビーム形成技法は、受信機において複雑度の低い最適な検出を可能にする事前フィルタリングに適用するために、送信機における行列Hの部分的な知識を必要とする。たとえば、部分的な知識は、受信機において処理されて受信機から送信機へフィードバックされるチャネル推定値を量子化したものである。
【0009】
固有ベクトル送信ビーム形成方式は、単一送信空間的ストリームを仮定するとフルダイバーシティ次数を達成することができる。複数の空間的ストリームがこの方式のデータレートを向上させる目的で送信されると、この方式のダイバーシティ次数は劇的に低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2008/024462号パンフレット
【0011】
本発明は、高データレートを達成することと、受信機複雑度を低く保ちながら目標ダイバーシティ及び高パフォーマンスを保証することとを目的とする。実際には、送信機側において変調シンボルを線形結合する代数的線形プリコーダを備えることによって、ダイバーシティ低下を克服することができる。しかしながら、このような代数的線形プリコーダは一般に、受信機側において複雑度の高い検出を伴う。
【0012】
さらに、本発明者は、送信機にエラー訂正符号化器を備えることによって、複数の送信アンテナによってもたらされるダイバーシティの一部分から利益を得ることが可能となることを観察しており、この一部分はエラー訂正符号の符号化レートの関数である。本発明者はまた、代数的線形プリコーダを適用することが、複数の送信アンテナによってもたらされるダイバーシティ次数の一部分を復元するのに役立つことを観察しており、この一部分は、互いに結合される変調シンボルの数として定義される、プリコーディングサイズの関数である。送信機側におけるエラー訂正符号と線形プリコーダとを組み合わせることによって、プリコーディングサイズ及びエラー訂正の符号化レートを、受信機における目標ダイバーシティ次数、たとえばフルダイバーシティ次数の観察に応じて選択することができる。
【0013】
本発明の目的は、プリコーディングサイズと、送信ビーム形成されたMIMOチャネルのパラメータと、達成可能なダイバーシティ次数との間の関係を求めることである。その結果、プリコーディングサイズを、システムの目標ダイバーシティ次数を達成するように選択することができる。
【0014】
検出器の複雑度はプリコーディングサイズと共に増大するため、プリコーディングサイズと、送信ビーム形成されたMIMOチャネルのパラメータと、エラー訂正符号レートと、目標ダイバーシティ次数との間のこのような関係は、目標ダイバーシティ次数の達成と、受信機の複雑度の低減の達成とを可能にする最小のプリコーディングサイズを発見するのに役立つ。
【0015】
さらに、本発明の別の目的は、代数的低減技法を使用して、同じダイバーシティ特性を保ちながら検出器の複雑度を低減することである。この仮定の下では、プリコーディングサイズが最小化されれば検出器のパフォーマンスが最適化される。
【0016】
本発明は、少なくとも2つの送信アンテナと、エラー訂正符号構造及び送信ビーム形成技法に従う符号化器とを備える送信機から、少なくとも2つの受信アンテナと、このエラー訂正符号構造に従って規定される復号器とを備える受信機に、MIMOチャネルを介して、データを送信するシステムに関する。本システムは、符号化器の符号化レートと、送信ビーム形成されたMIMOチャネルのパラメータと、システムの目標ダイバーシティ次数とが、互いに依存し合って選択されることを特徴とする。
【0017】
受信機は検出器を備え、検出器の出力は符号化ビットに対する推定値である。
【0018】
したがって、等価チャネルモデルは、デジタル変調器と、送信ビーム形成されたMIMOチャネルと、検出器との集合によって規定される。したがって、当該等価チャネルモデルの入力は符号化ビットであり、当該等価チャネルモデルの出力は符号化ビットの軟推定値又は硬推定値のいずれかである。したがって、当該等価チャネルモデルは、受信機側で、入れ子ブロックフェージングチャネルを含むものとして分解される。
【0019】
入れ子ブロックフェージングチャネルの数学モデルは、等価チャネル係数のブロックの連結を含む。1つの符号化ビットは、1つのブロック上で送信されると仮定される。同じブロック上で送信されるすべての符号化ビットは、同じ等価チャネル係数を受ける。各等価チャネル係数は、所与のダイバーシティ次数をもたらす確率変数の1つ又は複数の具現化の結合である。等価チャネルは5つのパラメータを有する。この5つのパラメータは、空間的ストリームの数Ns、送信アンテナの数Nt、受信アンテナの数Nr、各ブロックの等価チャネル係数に関連付けられるダイバーシティ次数の集合D={Ntr,(Nt−1)(Nr−1),…,(Nt−Ns+1)(Nr−Ns+1)}、及び、ブロックの長さの集合LB={LB(1),…,LB(NS)}である。連結されたブロックの数はNsに等しく、
【0020】
【数1】

【0021】
であり、ここでLはコードワード当たりの符号化ビットの数である。各ブロックは、送信される1つの空間的ストリームiに関連付けられる。各ブロックの長さLB(i)は、i番目の空間的ストリームに関連付けられる変調シンボル当たりのビット数から導出される。i番目のブロックに関連付けられるフェージング確率変数は、D(i)個の独立確率変数から成る部分集合Σ(i)の結合によって規定される。ここで、整数値D(i)≦Ntrであり、これによって、Σ(i+1)⊂Σ(i)となり、これは、∀i<j,D(i)≧D(j)であることを意味し、D(1)=Ntrが最高ダイバーシティ次数を有すると仮定する。符号化器の符号化レートRc、上記入れ子ブロックフェージングチャネルの5つのパラメータ、及びシステムの達成可能な目標ダイバーシティ次数δは、以下の関係によって関連付けられ、
【0022】
【数2】

【0023】
ここでiは
【0024】
【数3】

【0025】
によって与えられ、|D|は集合Dの濃度である。
【0026】
送信機の特性によれば、送信機は代数的線形プリコーダをさらに備え、当該代数的線形プリコーダの入力はNs個の変調シンボルから成るベクトルであり、当該代数的線形プリコーダの出力は送信ビーム形成されたMIMOチャネルの入力に対して与えられる。当該代数的線形プリコーダは、s≦Nsであることを確認するプリコーディングサイズと呼ばれるパラメータsを有し、代数的線形プリコーダは、Ns個の変調シンボルから成る同じベクトルのs個の変調シンボルを互いに線形結合してs個の結合変調シンボルを生成するように意図される。当該代数的線形プリコーダは、送信ビーム形成されたチャネルを介する1回の送信に関連付けられる、s個の結合変調シンボル及びNs−s個の非結合変調シンボルを含むNs個のプリコードされたシンボルから成る出力ベクトルを提供する。
【0027】
線形プリコーダは、Ns個の変調シンボルから成る入力ベクトルと、Ns×Ns行列との乗算によって表現される。
【0028】
代数的線形プリコーダの一実施の形態によれば、出力ベクトルのプリコードされたシンボルは、複数の変調シンボルから成るベクトルと、複素線形行列Sとの積によって得られ、なお、当該複素線形行列Sは以下の式によって与えられ、
【0029】
【数4】

【0030】
ここで、行列P1及び行列P2はNs×Ns置換行列である。行列S’はs×s行列である。s個の変調シンボルから成るベクトルが、行列S’と乗算され、サイズs×sの対角雑音レイリーフェージングチャネルを通じて送信され、且つ最尤復号器によって復号される場合に、行列S’は、パフォーマンスのダイバーシティ次数がsに等しくなることを満足する。
【0031】
好ましくは、行列P1は恒等行列に等しくなるように選択される。置換行列P2は、出力ベクトルの結合シンボル[X(1),X(Ns−s+2),…,X(Ns)]が、複数の変調シンボルから成る上記ベクトルの変調シンボル[Z(1),…,Z(s)]の線形結合となり、且つ、このような出力ベクトルの他のプリコードされたシンボルが、非結合シンボルであると共に[X(2),…,X(Ns−s+1)]=[Z(s+1),…,Z(Ns)]を満たすように選択される。
【0032】
線形プリコーダ技法のこの選択において、等価入れ子チャネルは5つのパラメータを有する。この5つのパラメータは、空間的ストリームの数Ns、送信アンテナの数Nt、受信アンテナの数Nr、各ブロックの等価チャネル係数に関連付けられるダイバーシティ次数の集合D={Ntr,(Nt−1)(Nr−1),…,(Nt−Ns+s)(Nr−Ns+s)}、及び、ブロックの長さの集合
【0033】
【数5】

【0034】
である。連結されたブロックの数はNs−s+1に等しく、
【0035】
【数6】

【0036】
であり、ここでLはコードワード当たりの符号化ビットの数である。
【0037】
符号化器の符号化レートRc、上記入れ子ブロックフェージングチャネルの5つのパラメータ、及びシステムの達成可能な目標ダイバーシティ次数δは、以下の関係によって関連付けられ、
【0038】
【数7】

【0039】
ここでiは
【0040】
【数8】

【0041】
によって与えられる。
【0042】
s=1が、変調シンボルが互いに結合されないことを意味する場合、代数的線形プリコーダが含まれるシステム内の等価な入れ子チャネルは、送信機が代数的線形プリコーダを備えないシステムの同じ等価な入れ子チャネルであることに留意されたい。
【0043】
本システムの特性によれば、各空間的ストリームに同一の変調が使用される、すなわち、∀(i,j),LB(i)=LB(j)=L/Nsである。受信機の出力において観察されるダイバーシティδ(s)は、
【0044】
【数9】

【0045】
によって与えられる。
【0046】
受信機は検出器を備え、検出器の出力は符号化ビットに対する推定値であり、当該検出器は、受信ベクトルによって搬送される変調シンボルから成るベクトルのs個の結合変調シンボルに関連付けられる符号化ビットを推定するように意図される第1の検出器ブロックと、複数の変調シンボルから成る上記ベクトルのNs−s個の非結合変調シンボルに関連付けられる符号化ビットを推定するように意図される第2の検出器ブロックとを備える。
【0047】
好ましくは、第1の検出器は、代数的線形プリコーダS’によってもたらされるダイバーシティ次数を復元することを可能とし、第2の検出器は、符号化ビットに対する軟出力推定値又は硬出力推定値のいずれかを提供する線形検出器である。
【0048】
低複雑度の検出を可能にするように意図される受信機の特性によれば、受信機において受信されるベクトルは以下の式によって与えられ、
【0049】
【数10】

【0050】
ここで、Δは、対角矩形Ns×Nr行列であり、その対角値は、大きさの降順にソートされる従属非同一分布確率変数であり、N2は加法的白色ガウス雑音ベクトルである。上記受信ベクトルは以下の式によって与えられ、
【0051】
【数11】

【0052】
ここで、Z=[Z’;Z”]は複数の変調シンボルから成るベクトルであり、Dはs×s対角矩形行列であり、D’は(NS−s)×(Nr−s)対角矩形行列であり、N’及びN”は雑音ベクトルである。第1の検出器は、Z’S’D+N’を、Z’に関連付けられる符号化ビットに対する推定値へ変換し、第2の検出器は、Z”D’+N”を、Z”に関連付けられる符号化ビットに対する推定値へ変換する。
【0053】
第1の検出器ブロックの複雑度を低減することは、以下で説明されるような代数的線形低減を使用することによって達成される。
【0054】
本発明は、送信ビーム形成されたMIMOチャネルを介して、少なくとも2つの受信機アンテナを備える受信機にデータを送信する装置にも関する。当該装置は、少なくとも2つの送信アンテナと、エラー訂正符号構造に従う符号化器と、デジタル変調器とを備え、当該デジタル変調器の出力はNs個の変調シンボルから成るベクトルである。受信機は、このエラー訂正符号構造に従って規定される復号器を備え、上記装置は、代数的線形プリコーダをさらに備えることを特徴とし、当該代数的線形プリコーダのパラメータsはs≦Nsであることを確認するプリコーディングサイズと呼ばれる。当該代数的プリコーダは、結合変調シンボルと呼ばれる、複数の変調シンボルから成る同じベクトルのs個の変調シンボルを共に線形結合するように意図されると共に、送信ビーム形成されたMIMOチャネルを介する1回の送信に関連付けられる、複数のプリコードされたシンボルから成る出力ベクトルを提供するように意図される。
【0055】
本発明はさらに、少なくとも2つの送信アンテナを備える送信機から、送信ビーム形成されたチャネルを介してデータのベクトルを受信する装置に関する。当該装置は、少なくとも2つの受信アンテナと、エラー訂正符号構造に従って規定される復号器と、検出器とを備え、当該検出器の出力は、符号化ビットに対する推定値である。上記受信ベクトルのいくつかの成分は、送信される複数の変調シンボルから成る同じベクトルのいくつかの変調シンボルの線形結合である。この装置は、検出器が、上記線形結合に含まれる、上記受信データベクトルによって搬送される複数の変調シンボルから成るベクトルの変調シンボルに関連付けられる符号化ビットを推定するように意図される第1の検出器ブロックと、上記線形結合に含まれない、複数の変調シンボルから成る上記ベクトルの変調シンボルに関連付けられる符号化ビットを推定するように意図される第2の検出器ブロックとを備えることを特徴とする。
【0056】
変調シンボルの線形結合は代数的線形プリコーダによって送信機側において得られ、上記装置は、第1の検出器ブロックが、上記代数的線形プリコーダによってもたらされるダイバーシティ次数を復元することを可能とすること、及び、第2の検出器が、軟出力推定値又は硬出力推定値のいずれかを提供する線形検出器であることを特徴とする。
【0057】
本発明の特性は、以下の一例の実施形態の説明を読むことからより明確に理解されよう。当該説明は添付図面に関連して作成されている。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】ビーム形成されたMIMOチャネルを介するデータ送信システムの概要を表す図である。
【図2】二値入力二値出力等価チャネルの概要を表す図である。
【図3】入れ子ブロックフェージングチャネルのブロックの連結の概要を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
データ送信システムSYSTは、Nt≧2個の送信アンテナを備える送信機TRDと、Nr≧2個の受信アンテナを備える受信機RCVと、1つのチャネルとを備える。
【0060】
送信機TRDは、エラー訂正符号構造(error correcting code structure)に従う符号化器ENCと、デジタル変調器MODと、送信ビーム形成技法を実施するビーム形成手段TxBFと、好ましい一実施形態によれば、代数的線形プリコーダALPとを備える。
【0061】
受信機RCVは、検出器DETと、エラー訂正符号構造に従って規定される復号器DECとを備える。
【0062】
送信機TRDは、たとえば基地局であり、受信機RCVは、たとえば移動ユーザ機器である。
【0063】
概略を言えば、デジタル送信は以下のように為される。すなわち、送信されるべき情報データビット{b}が符号化器ENCにレートRc=K/Lで供給され、Kは入力データビット{b}の数であり、Lは出力コードワード{c}のビット数である。符号化器ENCは任意の種類のエラー訂正符号構造に従うことができ、たとえば、LDPC(低密度パリティチェック)符号、ターボ符号、ブロック符号(たとえばリード−ソロモン)、二値畳み込み符号等のような、任意の種類のエラー訂正符号構造に従うことができる。
【0064】
送信システムの一変形形態は、図1に示すようなものであり、ビットインタリーバINTを使用して符号化ビットをインタリーブすると共に、受信機側においてビットデインタリーバDINTを使用して、関連付けられるビットデインタリービングを適用することである。ビットインタリーバINTは、関連付けられる復号器DECの出力におけるパフォーマンスが達成可能な目標ダイバーシティ次数を示すことを確実にするために、エラー訂正符号構造に従って設計される。
【0065】
デジタル変調器MODは、たとえばBPSK(二値位相偏移変調)又はQPSK(直交位相偏移変調)の変調であり、好ましくは2m値直交振幅変調(2m−QAM)である。デジタル変調器MODの入力は、符号化ビット{c}であるか、又はこのような符号化ビットを本システムの変形形態に従ってインタリーブしたもの{c}であり、出力は、Ns個の変調シンボルZ(i)から成るベクトルZを形成する変調シンボルである。Ns個のシンボルのそれぞれに対して適用される変調は、必ずしも同じではなく、異なる数の入力ビットを有する場合がある。
【0066】
代数的線形プリコーダALPは、数学的にはNs×Ns複素行列Sによって表される。
【0067】
s個の変調シンボルから成るベクトルZは、以下の特性を満たすNs×Nt行列Sと乗算される。
【0068】
【数12】

【0069】
ここで、行列P1及び行列P2は置換行列(permutation matrix)である。行列S’は、以下の特性を満足するs×s行列である。すなわち、s個の変調シンボルから成るあるベクトルが、行列S’によってプリコードされ、サイズs×sの対角雑音レイリーフェージングチャネルを通じて送信され、最尤復号器によって復号される場合に、パフォーマンスのダイバーシティ次数がsに等しくなるという特性である。ここで、sは、プリコーディングサイズと呼ばれる、正方行列S’のサイズである。換言すれば、S’はフルダイバーシティ線形プリコーダであると言われる。
【0070】
プリコーダALPの出力は、Ns個のプリコードされたシンボルから成る出力ベクトルXであり、それらのうちのs個は、結合変調シンボルと呼ばれるベクトルZの変調シンボルZ(i)の線形結合であり、他のNs−s個は非結合変調シンボルと呼ばれる、同じベクトルZの変調シンボルZ(i)に等しい。
【0071】
その結果、複数のシンボルから成るベクトルXが、Nt個のシンボルから成るベクトルX’を出力する送信ビーム形成方式の入力として与えられる。検出器DETの入力は、以下によって与えられる、Nr個のシンボルから成るベクトルYである。
【0072】
【数13】

【0073】
ここで、ベクトルNは長さNrの加法的白色ガウス雑音ベクトルであり、行列Hは、そのエントリが独立複素ガウス確率変数であるチャネルのNt×Nr行列である。
【0074】
行列Hに特異値分解を適用してその固有値のうち最良のNs個を選択すると、チャネルのチャネル行列Hは以下のように書かれる。
【0075】
【数14】

【0076】
行列UはNt×Ntユニタリ行列であり(UU=I)、
行列VはNr×Nrユニタリ行列であり(VV=I)、
行列ΔHは対角矩形Nt×Nr行列であり、その対角値は、大きさの降順にソートされたmin(Nt,Nr)特異値である。特異値はすべて従属非一様分布確率変数である。
【0077】
式(1)によって与えられる行列Hは冒頭の段落で説明されているように、送信機において知られているものと仮定する。Nt個のプリコードされたシンボルから成るベクトルX’は、X’=XTと書かれる。ここで、ビーム形成行列Tは、行列Uの最初のNs個の行から構築されるNs×Nt行列であり、Uは行列Uの転置共役である。換言すれば、行列Tは、行列Hの特異値のうちの最良のNs個に関連付けられる部分空間への投影の行列である。したがって、受信ベクトルは以下のように書き換えることができる。
【0078】
【数15】

【0079】
ここで、行列Δ’は行列Hの特異値のうち最良のNs個から成るNs×Nr対角行列であり、ベクトルN2は加法的白色ガウス雑音ベクトルである。
【0080】
i番目の特異値は、関連付けられるダイバーシティ次数(Nt−i+1)(Nr−i+1)を有する。さらに、いかなる2つの特異値からなる対も、ゼロでない相関を有する。
【0081】
図2に示すように、デジタル変調器MODと、代数的線形プリコーダALPと、ビーム形成された手段TxBFと、送信機アンテナ及び受信アンテナ上のチャネルと、検出器DETとの集合は、二値入力二値出力等価チャネルBIBOCHと呼ばれる等価チャネルモデルを規定し、当該等価チャネルモデルの入力は符号化ビットであり、当該等価チャネルモデルの出力は符号化ビットに対する硬推定値又は軟推定値のいずれかである。
【0082】
したがって、エラー訂正符号ENC構造によって、及び任意選択的にインタリーバによって、符号化ビットは、受信機において、二値入力二値出力等価チャネルBIBOCH(これは、図1に示すような二値変調器BMと、入れ子ブロックフェージングチャネルNBFCHとを備えると考えることができる)を介して送信されるように考えることができる。二値変調器BMは、スケーリングされたBPSK変調を適用する。すなわち、「0」ビット値及び「1」ビット値は、2つの対立する値(opposite values)(たとえばA及び−A)のそれぞれに関連付けられる。さらに、対応するユークリッド距離2Aは、一方のビットの送信から他方のビットの送信まで変更することができ、これは主に、デジタル変調MOD二値マッピングによって決まる。
【0083】
したがって、線形プリコードがなされない場合、すなわちs=1である場合には、図3に示すような、ブロックの連結を含む入れ子ブロックフェージングチャネルNBFCHの数学モデルは、以下の5つパラメータを有する。すなわち、空間的ストリームの数Ns≦min(Nt,Nr)、送信アンテナの数Nt、受信アンテナの数Nr、各ブロックの等価チャネル係数に関連付けられるダイバーシティ次数の集合D={Ntr,(Nt−1)(Nr−1),…,(Nt−Ns+1)(Nr−Ns+1)}、及び、ブロックの長さの集合LB={LB(1),…LB(Ns)}の5つパラメータである。連結されるブロックの数はNsに等しく、
【0084】
【数16】

【0085】
であり、ここで、Lはコードワード当たりの符号化ビットの数である。各ブロックの長さLB(i)は、i番目の空間的ストリームに関連付けられる変調シンボル当たりのビット数から導出される。i番目のブロックに関連付けられるフェージング確率変数は、D(i)個の独立確率変数の部分集合Σ(i)の結合によって規定される。ここで、整数値D(i)≦Ntrであり、これによって、Σ(i+1)⊂Σ(i)となり、これは∀i<j,D(i)≧D(j)であることを意味し、D(1)=Ntrが最高ダイバーシティ次数を有すると仮定する。
【0086】
このような等価チャネルモデルに従って、復号器DECは、符号化ビット{c}の受信されたもの
【0087】
【数17】

【0088】
を情報データビット{b}の軟推定値
【0089】
【数18】

【0090】
に変換する。
【0091】
送信機TRDの特性によれば、符号化器ENCの符号化レートRcと、入れ子ブロックフェージングチャネルNBFCHの5つのパラメータと、システムの達成可能な目標ダイバーシティ次数δとは、以下の関係によって関連付けられ、
【0092】
【数19】

【0093】
ここでiは
【0094】
【数20】

【0095】
によって与えられ、|D|は集合Dの濃度(cardinality)である。
【0096】
したがって、上記式は、符号化器ENCの符号化レートRcと、チャネルの5つのパラメータ(空間的ストリームの数Ns、送信アンテナの数Nt、受信アンテナの数Nr、各ブロックの等価チャネル係数に関連付けられるダイバーシティ次数の集合D、及び、ブロックの長さの集合LB)と、チャネルの特異値D(i)の数に関連する目標ダイバーシティ次数との間の関係を確立する。
【0097】
実際には、変調シンボルZ(i)は、フェージング確率変数に関連付けられるチャネル欠陥ではなく、他のチャネル欠陥、たとえば加法的雑音、他の乗法的確率変数によって擾乱される場合があることに留意されたい。Z(i)に関連付けられるダイバーシティ次数を生成する確率変数(特異値)の集合は、Z(i−1)の送信に関連付けられる確率変数に、さらなるダイバーシティ次数をもたらす他の確率変数を加えたものと同じ確率変数の集合であることを述べておくことが重要である。
【0098】
代数的線形プリコーダALPの一実施の形態によれば、置換行列(permutation matrix)P1は恒等行列に等しくなるように選択され、置換行列P2は、以下の条件を満たすように選択される。すなわち、置換行列P2は、出力ベクトルのプリコードされたシンボル[X(1),X(Ns−s+2),…,X(Ns)]が、複数の変調シンボルから成る上記ベクトルの結合変調シンボル[Z(1),…,Z(s)]の線形結合となり、且つこのような出力ベクトルの他のプリコードされたシンボルが、非結合シンボルであると共に[X(2),…,X(Ns−s+1)]=[Z(s+1),…,Z(Ns)]を満たすように選択される。この実施形態は、復号器出力において観察されるダイバーシティ次数を向上させる。
【0099】
本発明者は、送信ビーム形成されたチャネルが直交することを観察した。これは、符号化ビットに対する硬推定値又は軟推定値のいずれかを生成する検出器DETにおいて次元ごとの処理を実施することによって、線形プリコーディングを一切行わずに、受信信号の最適な検出が達成されることを意味する。
【0100】
ここで、線形プリコーディング、すなわちs>1を仮定すると、(たとえば、後に説明するように軟出力が使用される場合に網羅的な周辺化(marginalization)を使用することによって)結合変調シンボル[Z(1),…,Z(s)]が共に検出されるときに、最適な検出が達成される。検出器のこのような特性によって、以下の式によって与えられる、受信機の出力において観察されるパフォーマンスのダイバーシティを得ることが可能となる。
【0101】
【数21】

【0102】
ここでiは
【0103】
【数22】

【0104】
によって与えられ、ここで、D={Ntr,(Nt−1)(Nr−1),…,(Nt−Ns+s)(Nr−Ns+s)}、且つ、
【0105】
【数23】

【0106】
である。
【0107】
したがって、上記式は、符号化器ENCの符号化レートRcと、チャネルの5つのパラメータ(空間的ストリームの数Ns、送信アンテナの数Nt、受信アンテナの数Nr、各ブロックの等価チャネル係数に関連付けられるダイバーシティ次数の集合D、及び、ブロックの長さの集合LB)と、プリコーディングサイズsと、チャネルの特異値の数D(i)に関連する目標ダイバーシティ次数との間の関係を確立する。
【0108】
したがって、上記式は、符号化器ENCの符号化レートRcと、空間的ストリームの数Nsと、送信アンテナの数Ntと、受信アンテナの数Nrと、プリコーディングサイズsとが互いに依存しており、システムの目標ダイバーシティ次数を達成するように選択することができることを確証している。
【0109】
プリコーディングサイズsを増大させると、復号器によって把握されるダイバーシティが増大する(s1≦s2⇔δ(s1)≦δ(s2))。これは、線形プリコーディングを行わない(s=1)通常のビーム形成技法と比較しての、本システムの利点の1つを実証している。
【0110】
本システムの特性によれば、各空間的ストリームに同一の変調が使用される、すなわち、∀(i,j),LB(i)=LB(j)=L/Nsである。ここで、受信機の出力において観察されるダイバーシティδ(s)は以下の式によって与えられる。
【0111】
【数24】

【0112】
好ましくは、プリコーディングサイズsは、以下の式に従って目標ダイバーシティ次数δtが達成されるように選択される。
【0113】
【数25】

【0114】
検出器DETは、上述のように受信ベクトルYによって搬送される変調シンボルZ(i)から成るベクトルZに関連付けられる符号化ビットに対する硬出力推定値又は軟出力推定値のいずれかを提供する。
【0115】
検出器DETが符号化ビットの硬出力を提供するとき、最適な検出パフォーマンスは、最大尤度(ML)検出器から達成される。これは、尤度確率p(Y|Z)を最大化する、すなわち、
【0116】
【数26】

【0117】
に従うシンボル
【0118】
【数27】

【0119】
を発見するために、又はたとえばユークリッド距離‖Y−ZSTH‖2であるパフォーマンス指数を最小化する次のようなシンボルを発見するために、すべての可能な候補ベクトルZにわたる全数検索が開始される場合に達成される。
【0120】
【数28】

【0121】
その結果、s個の結合シンボルに関連付けられる符号化ビットに対する推定値
【0122】
【数29】

【0123】
が、シンボル
【0124】
【数30】

【0125】
から得られる。
【0126】
検出器DETが符号化ビットに対する軟出力を提供するとき、最適な検出パフォーマンスは、MAP検出器から達成される。これは、すべての可能な候補ベクトルZにわたる全数検索が、変調シンボルZ(i)から成る上記ベクトルZに関連付けられる各符号化ビットcjのエラー確率を最小化するパフォーマンス指数関数を最大化することによって開始される場合に達成される。たとえば、この推定値は、外因性確率又は事後確率である。最大事後確率(MAP)検出器によって、ダイバーシティ次数δ(s)を復元することが可能となる。ある符号化ビットcjに関連する事後確率(APP)は、以下の網羅的な周辺化を介して計算され、
【0127】
【数31】

【0128】
ここで、
【0129】
【数32】

【0130】
であり、N0は雑音分散であり、Γ(cj=1)は可能な候補ベクトルZのうちでi番目のビットが1に等しいラベル付けを有するものの集合であり、Γはすべての可能な候補ベクトルZの集合であり、f(k,Z)は可能な候補ベクトルZに関連付けられる二値ラベル付けにおけるk番目のビットの値である。したがって、受信ベクトルYによって搬送される変調シンボルZ(i)から成るベクトルZに関連付けられる符号化ビットに対する推定値
【0131】
【数33】

【0132】
が、各符号化ビットcjに関連する最大事後確率(APP)から得られる。見解として、符号化ビットcjに関連する軟出力推定値も、以下の式によって与えられる対数尤度比(LLR)として表されることが多い。
【0133】
【数34】

【0134】
周辺化は
【0135】
【数35】

【0136】
個の可能な候補ベクトルZにわたって為され、mNsが増大するとすぐに処理しにくくなる。
【0137】
検出器DETの一変形形態によれば、s個の結合シンボルに関連付けられる符号化ビットに対する軟出力推定値は、事前確率π(cj)を考慮に入れる。π(cj)は、上記s個の結合変調シンボルの符号化ビットに関連付けられると共に復号器DECの出力によって得られる。
【0138】
受信機RCVの別の特性によれば、検出器DETは受信ベクトルYの低複雑度・近最適検出器であり、当該低複雑度・近最適検出器は、上記受信ベクトルYによって搬送されるNs個の変調シンボルZ(i)から成るベクトルZに関連付けられる符号化ビットに対する推定値を生成する。検出器は、復号後に最適な検出器と同じダイバーシティ次数を示すパフォーマンスを達成することを可能にすることができる場合に、近最適であると言われる。
【0139】
このような近最適検出器DETの一実施形態によれば、検出器DETは、ベクトルYによって搬送される変調シンボルZ(i)から成るベクトルZのs個の結合変調シンボルに関連付けられる符号化ビットを推定するように意図される第1の検出器ブロックDET1と、複数の変調シンボルから成る上記ベクトルZのNs−s個の非結合変調シンボルに関連付けられる符号化ビットを推定するように意図される第2の検出器ブロックDET2とを備える。ここで、いかなる非結合シンボルも、任意の他の結合シンボル又は非結合シンボルから独立して検出されることに留意されたい。
【0140】
さらに、検出器ブロックDET1の出力推定値は、パフォーマンスが一切劣化することなく、検出器ブロックDET2の出力推定値から独立して得られる。
【0141】
さらに、検出器ブロックDET2は、Ns−s個の非結合シンボルのNs−s回の独立した検出を処理する。しかしながら、検出器ブロックDET1の最適性、及びより包括的には検出器DETの近最適性を保つために、s個の結合シンボルを共に検出することが依然として必要である。
【0142】
第1の検出器ブロックDET1の特性によれば、第1の検出器ブロックDET1は、代数的線形プリコーダALPによって、すなわち行列S’によってもたらされる、上記s個の結合変調シンボルに関連付けられる推定符号化ビットのダイバーシティ次数を復元することを可能とする。行列S’が恒等行列である場合、すなわち、線形プリコーディングが行われない場合、第1の検出器ブロックDET1は、複数の変調シンボルから成るベクトルZの第1の変調シンボルZ(1)に関連付けられる符号化ビットに対する推定値を提供することに留意されたい。
【0143】
このような第1の検出器ブロックDET1の一実施形態によれば、上記s個の結合変調シンボルに関連付けられる符号化ビットに対する推定値は、好ましくは、以下の式によって与えられる不完全な尤度確率p(Ys,0|Zs,0)の関数の計算に基づく。
【0144】
【数36】

【0145】
ここで、N0は雑音分散であり、Zs,0は複数の変調シンボルから成るベクトルZであり、非結合シンボルは0に等しい、すなわち、Zs,0=[Z(1),…,Z(s),0,…,0]であり、Ys,0=[Y(1),…,Y(s),0,…,0]は、最後の(Nr−s)の値が0に等しい受信ベクトルである。
【0146】
その結果、目標ダイバーシティを達成することを可能にする最小のs≦Ns値を選択することによって、このような近最適検出器DETの複雑度が最小化される。実際には、
【0147】
【数37】

【0148】
個ではなく、たとえば2ms個の点のみが軟出力の計算に使用されるリストに属する。
【0149】
第2の検出器ブロックDET2の一実施形態によれば、検出器ブロックDET2は線形検出器であり、その後に決定関数Dec(.)が続く。当該線形検出器は、硬出力推定値又は軟出力推定値のいずれかを、好ましくは、硬出力推定値の場合にはZF(ゼロフォーシング)線形イコライザを使用して提供する。線形検出器は、受信シンボルに線形変換を、すなわち行列乗算を適用する。硬出力値の場合、決定関数Dec()は推定された受信シンボルを一連のビットに変換することを可能にする。
【0150】
既に述べたように、本システムの利点は、プリコーディングサイズs≦Nsを増大させると、検出器によって把握されるダイバーシティが増大することである(s1≦s2⇔δ(s1)≦δ(s2))。残念ながら、第1の検出器ブロックDET1が代数的線形プリコーダALPによってもたらされるダイバーシティ次数を復元することを可能にする場合、検出器DETの複雑度は結合サイズsの値と共に増大する。反対に、単純な線形検出器では、行列Sによって潜在的にもたらされるダイバーシティ次数を有効利用することができないことが証明されている。この欠点は、受信機において「代数的格子低減」技法の実施を可能にする代数的線形プリコーダを使用することによって克服される。その結果、このような受信機はダイバーシティ次数特性を保証しながら低複雑度の検出器を可能にする。
【0151】
このような低複雑度検出器の一実施形態によれば、検出器DETは、以下のように定義される「代数的格子低減」技法を含む。
【0152】
Δ’=P1Δとすると、
【0153】
【数38】

【0154】
その結果、受信ベクトルYは以下の表現を有する。
【0155】
【数39】

【0156】
ここで、Z=[Z’;Z”]は複数の変調シンボルから成るベクトルであり、D及びD’は共に対角矩形行列であり、N’及びN”はいずれも雑音ベクトルである。
【0157】
この実施形態によれば、第1の検出器ブロックDET1は、Z’S’D+N’の、Z’に関連付けられる符号化ビットに対する推定値への変換を計算し、第2の検出器ブロックDET2は、Z”D’+N”の、Z”に関連付けられる符号化ビットに対する推定値への変換を計算する。
【0158】
ここで、s×s行列Dが以下のように分解されると仮定する。
【0159】
【数40】

【0160】
ここで、行列ΩはS’Ω=TuS’となるようなs×s対角行列であり、行列Tuはs×s基底変換行列(basis change matrix)である(そのエントリは複素整数である)。対角s×s行列Ψは正の実数の対角成分を有し、対角s×s行列Φは絶対値が単一である複数の複素成分(complex elements of unity modulus)を有する。たとえば、行列S’が、G. Rekaya、J-C. Belfiore及びE. Viterbo「A Very Efficient Reduction Tool on Fast Fading Channels」(IEEE International Symposium on Information Theory and its Applications (ISITA), Parma, Italy, October 2004)において述べられているような円分回転(cyclotomic rotation)である場合に、このような分解が可能である。
【0161】
受信機において、行列Ωはシステムのパフォーマンスを最適化するように選択され、行列Fが受信信号YVに適用される。
【0162】
【数41】

【0163】
フィルタリングされた受信ベクトルYVFの表現では、第1の検出器ブロックDET1は、ベクトルZ’Tu+N’ΦΨ-1S’の、上記で説明されたようなZ’に関連付けられる符号化ビットに対する硬推定値又は軟推定値のいずれかへの変換を計算し、第2の検出器ブロックDET2は、Z”D’+N”の、上記で説明されたようなZ”に関連付けられる符号化ビットに対する硬推定値又は軟推定値のいずれかへの変換を計算する。
【0164】
したがって、「代数的格子低減」技法は、任意のタイプから(たとえば、第2の検出器ブロックDET2の複雑度を最小化するように線形軟出力又は硬出力検出器として)選択することができる第2の検出器ブロックDET2に一切影響を与えない。
【0165】
第1の検出器ブロックDET1に関して、本発明者は、
【0166】
【数42】

【0167】
であることを観察しており、ここで、
【0168】
【数43】

【0169】
は長さsの複素ベクトルの集合であり、そのエントリは実数部分及び虚数部分ともに整数である。雑音ベクトルN’ΦΨ-1S’は、独立同一分布複素ガウスではないが、そうであると仮定すると、第1の検出器ブロックDET1の準最適性はこの近似に存在し、しかしながらこれは、復号器の出力におけるダイバーシティ次数に影響を与えずに強い複雑度低減を可能にする。
【0170】
z’∈Γであると仮定する。ここで、Z’(i)はQAM変調シンボルであり、Γはs次元の複素QAM変調空間である。さらに、ΓTuをW∈ΩTu⇔W=Z’Tuを満たす点の集合であるとみなす。こうすると、上述の「代数的格子低減」技法は、受信点Z’Tu+N’ΦΨ-1S’の周辺のΩTuに属する点Θのリストを描くこと、及びそのリストに対する周辺化を計算することによって、第1の検出器DET1の軟出力を計算する。等価チャネルは直交するため、点のリストは小さくても、最適な網羅的周辺化のパフォーマンスに近付くのに十分である。複雑度の低減は、システムのスペクトル効率が増大するにつれて向上する。
【0171】
したがって、本システムの目標ダイバーシティ次数は、複数の空間的ストリームが、プリコードされた、ビーム形成されたチャネルを介して送信される場合であっても常に達成されるが、プリコードされていないビーム形成されたチャネルでは常にそうであるとは限らない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの送信アンテナと、エラー訂正符号構造及び送信ビーム形成技法に従う符号化器(ENC)とを備える送信機から、
送信ビーム形成されたMIMOチャネルを介して、
少なくとも2つの受信アンテナと、前記エラー訂正符号構造に従って規定される復号器とを備える受信機に
データを送信するシステムであって、
前記符号化器(ENC)の符号化レートRc、前記送信ビーム形成されたMIMOチャネルのパラメータ、及び前記システムの目標ダイバーシティ次数は、互いに依存し合って選択されることを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記送信機(TRD)は、符号化ビットストリームを複数の変調シンボルから成る空間的ストリームに変換するデジタル変調器(MOD)を備え、
前記デジタル変調器(MOD)の出力はNs個の変調シンボル(Z(i))から成るベクトルであり、
前記送信機(TRD)は代数的線形プリコーダ(APL)をさらに備え、
前記代数的線形プリコーダのパラメータsはs≦Nsであることを確認するプリコーディングサイズと呼ばれ、
前記代数的線形プリコーダは、結合変調シンボルと呼ばれる、複数の変調シンボルから成る同じベクトル(Z)のs個の変調シンボル(Z(i))を互いに線形結合するように意図され、
前記代数的線形プリコーダは、前記送信ビーム形成されたMIMOチャネルを介する1回の送信に関連付けられる複数のプリコードされたシンボル(X(i))から成る出力ベクトル(X)を提供するように意図される
ことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記出力ベクトル(X)の前記プリコードされたシンボル(X(i))は、複数の変調シンボルから成るベクトル(Z)と、複素線形行列Sとの積によって得られ、
前記複素線形行列Sは以下の式によって与えられ、
【数1】

ここで、
行列P1及び行列P2は置換行列であり、
行列S’はs×s行列であり、
s個の変調シンボルから成るベクトルが、前記行列S’と乗算され、サイズs×sの対角雑音レイリーフェージングチャネルを通じて送信され、最尤復号器によって復号される場合に、行列S’は、パフォーマンスのダイバーシティ次数がsに等しくなることを満足する
ことを特徴とする、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記置換行列P1は恒等行列に等しくなるように選択され、
前記置換行列P2は、
前記出力ベクトルの前記プリコードされたシンボル[X(1),X(Ns−s+2),…,X(Ns)]が、複数の変調シンボルから成る前記ベクトルの前記結合変調シンボル[Z(1),…,Z(s)]の線形結合となり、
前記出力ベクトルの他の前記プリコードされたシンボルが、非結合シンボルであると共に[X(2),…,X(Ns−s+1)]=[Z(s+1),…,Z(Ns)]を満たす
ように選択される、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記受信機(RCV)は検出器(DET)を備え、前記検出器(DET)の出力は符号化ビットに対する推定値であり、
等価チャネルモデル(BIBOCH)が、前記デジタル変調器(MOD)と、前記送信ビーム形成されたMIMOチャネルと、前記検出器(DET)との集合によって規定され、
前記等価チャネルモデルの入力は符号化ビットであり、
前記等価チャネルモデルの出力は前記符号化ビットに対する軟推定値又は硬推定値のいずれかであり、
前記等価チャネルモデルは、前記受信機において、入れ子ブロックフェージングチャネル(NBFCH)を備えるものとみなされ、
前記入れ子ブロックフェージングチャネル(NBFCH)の数学モデルは、複数のブロックの連結を含み、
前記入れ子ブロックフェージングチャネル(NBFCH)の数学モデルは、
空間的ストリームの数Ns≦min(Nt,Nr)と、
送信アンテナの数Ntと、
受信アンテナの数Nrと、
各ブロックの等価チャネル係数に関連付けられるダイバーシティ次数の集合D={Ntr,(Nt−1)(Nr−1),…,(Nt−Ns+s)(Nr−Ns+s)}と、
ブロックの長さの集合
【数2】


の5つパラメータを有し、
連結されたブロックの数はNsに等しく、
【数3】

であり、ここでLはコードワード当たりの符号化ビットの数であり、
各ブロックの長さLB(i)は、i番目の空間的ストリームに関連付けられる変調シンボル当たりのビット数から導出され、
i番目のブロックに関連付けられるフェージング確率変数は、D(i)個の独立確率変数から成る部分集合Σ(i)の結合によって規定され、ここで、整数値D(i)≦Ntrであり、
これによって、Σ(i+1)⊂Σ(i)となり、これは、∀i<j,D(i)≧D(j)であることを意味し、
D(1)=Ntrが最高ダイバーシティ次数を有すると仮定すると、前記符号化器(ENC)の前記符号化レート(Rc)と、前記入れ子ブロックフェージングチャネル(NBFCH)の前記5つのパラメータ(Ns,Nt,Nr,D,LB)と、前記プリコーディングサイズsと、前記システムの前記達成可能な目標ダイバーシティ次数δとは、以下の関係によって関連付けられ、
【数4】

ここでiは
【数5】

によって与えられ、|D|は前記集合Dの濃度である
ことを特徴とする、請求項2〜4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記プリコーディングサイズは1に等しく、
前記符号化器(ENC)の前記符号化レート(Rc)と、前記入れ子ブロックフェージングチャネル(NBFCH)の前記5つのパラメータ(Ns,Nt,Nr,D,LB)と、前記システムの前記達成可能な目標ダイバーシティ次数δとは、以下の関係によって関連付けられ、
【数6】

ここでiは
【数7】

によって与えられ、|D|は前記集合Dの濃度であり、
D={Ntr,(Nt−1)(Nr−1),…,(Nt−Ns+1)(Nr−Ns+1)}であり、
LB={LB(1),…LB(Ns)}である
ことを特徴とする、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
等価なNBFCHのすべてのブロックが同じ長さLB(i)を有する空間的ストリームは、そのそれぞれに同一の変調が使用されることを特徴とし、かつ
前記受信機の出力において観察される、前記システムの前記ダイバーシティ次数δ(s)が、
【数8】

によって与えられることと
を特徴とする、請求項5又は6に記載のシステム。
【請求項8】
前記プリコーディングサイズsは、以下の式、すなわち
【数9】

に従って目標ダイバーシティ次数δtを達成するように選択されることを特徴とする、請求項5〜7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記受信機(RCV)は検出器(DET)を備え、
前記検出器(DET)の出力は、符号化ビットに対する推定値であり、
前記検出器(DET)は、
受信ベクトル(Y)によって搬送される変調シンボル(Z(i))から成るベクトル(Z)の前記s個の結合変調シンボルに関連付けられる前記符号化ビットを推定するように意図される第1の検出器ブロック(DET1)と、
複数の変調シンボルから成る前記ベクトル(Z)の前記Ns−s個の非結合変調シンボルに関連付けられる前記符号化ビットを推定するように意図される第2の検出器ブロック(DET2)と
を備えることを特徴とする、請求項2〜8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記第1の検出器ブロック(DET1)上の前記出力推定値は、前記第2の検出器ブロック(DET2)上の前記出力推定値とは独立に得られることを特徴とする、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記第1の検出器(DET1)は軟出力推定値を提供し、
s個の結合シンボルに関連付けられる符号化ビットに対する前記軟出力推定値は、事前確率(π(cj))を考慮に入れ、
前記事前確率(π(cj))は、前記s個の結合変調シンボルの符号化ビットに関連付けられ、
前記事前確率(π(cj))は、前記復号器(DEC)の前記出力によって得られる
ことを特徴とする、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記第2の検出器(DET2)は、前記Ns−s個の非結合シンボルのNs−s回の独立した検出を処理することを特徴とする、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記第1の検出器ブロック(DET1)は、前記代数的線形プリコーダ(ALP)によってもたらされる前記ダイバーシティ次数を復元することを可能にすることを特徴とする、請求項9〜12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記s個の結合変調シンボルに関連付けられる符号化ビットに対する前記推定値は、好ましくは、以下の式によって与えられる不完全な尤度確率p(Ys,0|Zs,0)の関数の計算に基づき、
【数10】

ここで、
0は雑音分散であり、
s,0は複数の変調シンボルから成る前記ベクトルZであり、前記非結合シンボルは0に等しく、すなわち、Zs,0=[Z(1),…,Z(s),0,…,0]であり、
s,0=[Y(1),…,Y(s),0,…,0]は、最後の(Nr−s)の値が0に等しい受信ベクトルである
ことを特徴する、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記第2の検出器ブロック(DET2)は、軟出力推定値又は硬出力推定値のいずれかを提供する線形検出器であることを特徴とする、請求項9〜14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記第2の検出器(DET2)は軟出力推定値を提供し、
s−s個の非結合シンボルに関連付けられる符号化ビットに対する前記軟出力推定値は、事前確率(π(cj))を考慮に入れ、
前記事前確率(π(cj))は、前記Ns−s個の非結合変調シンボルの符号化ビットに関連付けられ、
前記事前確率(π(cj))は、前記復号器(DEC)の前記出力によって得られる
ことを特徴とする、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記受信機において受信されるベクトルYは以下の式によって与えられ、
【数11】

ここで、前記チャネルの前記行列HはH=UΔHVと書かれ、
UはNt×Nt且つユニタリであり、
VはNr×Nrユニタリ行列であり、
ΔHは対角矩形Nt×Nr行列であり、その対角値は大きさの降順にソートされる従属非同一分布確率変数であり、
ビーム形成行列Tは、行列Uの最初のNs個の行から構築されるNs×Nt行列であり、
行列Uは前記行列Uの転置共役であり、
前記ベクトルN及びN2は白色ガウス雑音ベクトルであり、
前記受信ベクトルは以下の式によって与えられることを特徴とし、
【数12】

ここで、
Z=[Z’;Z”]は複数の変調シンボルから成るベクトルであり、
D及びD’はいずれもs×s対角矩形行列であり、
N’及びN”は共に雑音ベクトルであり、
前記システムは、
前記第1の検出器ブロック(DET1)が、Z’S’D+N’の、Z’に関連付けられる前記符号化ビットに対する推定値への変換を計算し、
前記第2の検出器ブロック(DET2)が、Z”D’+N”の、Z”に関連付けられる前記符号化ビットに対する推定値への変換を計算する
ことを特徴とする、請求項13に記載のシステム。
【請求項18】
前記s×s行列DはD=ΩΨΦによって分解され、
ここで、
行列ΩはS’Ω=TuS’となるようなs×s対角行列であり、
uはs×s基底変換行列であってそのエントリは複素整数であり、
前記対角s×s行列Ψは正の実数の対角成分を有し、
前記対角s×s行列Φは、絶対値が単一である複数の複素成分を有し、
前記受信機において行列Ωは前記システムの前記パフォーマンスを最適化するように選択され、
前記受信信号YVは以下の式によって与えられる行列Fによってフィルタリングされ、
【数13】

ここで、
Iは恒等行列であり、
前記第1の検出器ブロック(DET1)は、ベクトルZ’Tu+N’ΦΨ-1S’の、Z’に関連付けられる前記符号化ビットに対する硬推定値又は軟推定値のいずれかへの変換を計算し、
前記第2の検出器ブロック(DET2)は、Z”D’+N”の、Z”に関連付けられる前記符号化ビットに対する硬推定値又は軟推定値のいずれかへの変換を計算する
ことを特徴とする、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記送信機(TRD)はビットインタリーバ(INT)を備え、
前記受信機(RCV)はデインタリーバ(DINT)を備え、
前記ビットインタリーバ(INT)は、関連付けられる前記復号器(DEC)の前記出力における前記パフォーマンスが前記達成可能な目標ダイバーシティ次数を示すことを確実にするために、前記エラー訂正符号構造に従って設計される
ことを特徴とする、請求項1〜18のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
送信ビーム形成されたMIMOチャネルを介して、少なくとも2つの受信アンテナを備える受信機にデータを送信する装置であって、
前記装置(TRD)は、
少なくとも2つの送信アンテナと、
エラー訂正符号構造及び送信ビーム形成技法に従う符号化器(ENC)と、
符号化ビットストリームを複数の変調シンボルから成る空間的ストリームに変換するデジタル変調器(MOD)と
を備え、
前記デジタル変調器(MOD)の出力はNs個の変調シンボル(Z(i))から成るベクトルであり、
前記受信機(RCV)は、前記エラー訂正符号構造に従って規定される復号器(DEC)を備える
装置において、
前記装置は代数的線形プリコーダ(APL)をさらに備え、
前記代数的線形プリコーダ(APL)のパラメータsはs≦Nsであることを確認するプリコーディングサイズと呼ばれ、
前記代数的線形プリコーダ(APL)は、結合変調シンボルと呼ばれる、複数の変調シンボルから成る同じベクトル(Z)のs個の変調シンボル(Z(i))を互いに線形結合するように意図され、
前記代数的線形プリコーダ(APL)は、前記送信ビーム形成されたMIMOチャネルを介する1回の送信に関連付けられる複数のプリコードされたシンボル(X(i))から成る出力ベクトル(X)を提供するように意図される
ことを特徴とする、装置。
【請求項21】
前記出力ベクトル(X)の前記プリコードされたシンボル(X(i))は、複数の変調シンボルから成るベクトル(Z)と、複素線形行列Sとの積によって得られ、
前記複素線形行列Sは以下の式によって与えられ、
【数14】

ここで、
行列P1及び行列P2は置換行列であり、
S’はs×s行列であり、
s個の変調シンボルから成るベクトルが前記行列S’と乗算され、サイズs×sの対角雑音レイリーフェージングチャネルを通じて送信され、且つ最尤復号器によって復号される場合に、S’は、前記パフォーマンスの前記ダイバーシティ次数がsに等しくなることを満足する
ことを特徴とする、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記置換行列P1は恒等行列に等しく、
前記置換行列P2は、
出力ベクトル(X)の前記プリコードされたシンボル[X(1),X(Ns−s+2),…,X(Ns)]が、複数の変調シンボルから成る前記ベクトル(Z)の前記結合変調シンボル[Z(1),…,Z(s)]の線形結合となり、
前記出力ベクトル(X)の他の前記プリコードされたシンボルが、[X(2),…,X(Ns−s+1)]=[Z(s+1),…,Z(Ns)]を満たす
ように選択される
ことを特徴とする、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
t≧2個の送信アンテナを備える送信機から、送信ビーム形成されたMIMOチャネルを介してデータのベクトル(Y)を受信する装置であって、
前記装置(RCV)は、Nr≧2個の受信アンテナと、前記エラー訂正符号構造に従って規定される復号器(DEC)と、検出器(DET)とを備え、
前記検出器(DET)の出力は符号化ビットに対する推定値であり、
前記受信ベクトル(Y)のs個の成分は、送信されるNs個の変調シンボルから成る同じベクトル(Z)のいくつかの変調シンボルの線形結合であり、
sはs≦Nsであることを確認する整数値である
装置において、
前記検出器(DET)は、
前記s個の線形結合に含まれる、前記受信データベクトル(Y)によって搬送される複数の変調シンボルから成る前記ベクトル(Z)の前記変調シンボルに関連付けられる前記符号化ビットを推定するように意図される第1の検出器ブロック(DET1)と、
前記線形結合に含まれない、複数の変調シンボルから成る前記ベクトル(Z)の前記変調シンボルに関連付けられる前記符号化ビットを推定するように意図される第2の検出器ブロック(DET2)と
を備えることを特徴とする、装置。
【請求項24】
変調シンボルの線形結合は代数的線形プリコーダ(ALP)によって前記送信機側において得られ、
前記第1の検出器ブロック(DET1)は、前記代数的線形プリコーダ(ALP)によってもたらされる前記ダイバーシティ次数を復元することを可能とし、
前記第2の検出ブロック(DET2)は、軟出力推定値又は硬出力推定値のいずれかを提供する線形検出器であることを特徴とする、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記受信されるベクトルYは以下の式によって与えられることを特徴とし、
【数15】

ここで、
前記チャネルの前記行列HはH=UΔHVと書かれ、
行列UはNt×Nt且つユニタリであり、
行列VはNr×Nrユニタリ行列であり、
行列ΔHは対角矩形Nt×Nr行列であり、その対角値は大きさの降順にソートされる従属非同一分布確率変数であり
ビーム形成行列Tは、行列Uの最初のNs個の行から構築されるNs×Nt行列であり、
行列Uは前記行列Uの転置共役であり、前記ベクトルN及びN2は白色ガウス雑音ベクトルであり、
前記受信ベクトルは以下の式によって与えられることを特徴とし、
【数16】

ここで、
Z=[Z’;Z”]は複数の変調シンボルから成るベクトルであり、
D及びD’はいずれもs×s対角矩形行列であり、
N’及びN”はいずれも雑音ベクトルであり、
前記システムは、
前記第1の検出器ブロック(DET1)が、Z’S’D+N’の、Z’に関連付けられる前記符号化ビットに対する推定値への変換を計算し、
前記第2の検出器ブロック(DET2)が、Z”D’+N”の、Z”に関連付けられる前記符号化ビットに対する推定値への変換を計算する
ことを特徴とする、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記s×s行列DはD=ΩΨΦによって分解され、
ここで、
ΩはS’Ω=TuS’となるようなs×s対角行列であり、
uはs×s基底変換行列であってそのエントリは複素整数であり、
対角s×s行列Ψは正の実数の対角成分を有し、
対角s×s行列Φは絶対値が単一である複数の複素成分を有し、
前記受信機において、行列Ωは前記システムの前記パフォーマンスを最適化するように選択され、
前記受信信号YVは以下の式によって与えられる行列Fによってフィルタリングされ、
【数17】

ここで、
Iは恒等行列であり、
前記第1の検出器(DET1)は、ベクトルZ’Tu+N’ΦΨ-1S’を、Z’に関連付けられる前記符号化ビットに対する硬推定値又は軟推定値のいずれかへ変換し、
前記第2の検出器(DET2)は、Z”D’+N”を、Z”に関連付けられる前記符号化ビットに対する硬推定値又は軟推定値のいずれかへ変換する
ことを特徴とする、請求項25に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−268077(P2009−268077A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−67742(P2009−67742)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(503163527)ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ (175)
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC R&D CENTRE EUROPE B.V.
【住所又は居所原語表記】Capronilaan 46, 1119 NS Schiphol Rijk, The Netherlands
【Fターム(参考)】