説明

データキャリア及びリーダ/ライタ装置

【課題】予め設定された許容温度範囲を超えるような異常な温度変化が発生したか否かを常に監視することが可能な無電池式のデータキャリアを提供できるようにする。
【解決手段】 データキャリア用ICチップ本体と、前記データキャリア用ICチップ本体に形成される複数の接続端子のうち、第1の接続端子と第2の接続端子との間に、予め設定された許容温度範囲を超える温度変化の有無を把握するための温度変化把握用素子が接続されたデータキャリアであって、前記温度変化把握用素子の電気的な変化を検出するために、前記データキャリア用ICチップ本体の内部に埋設された電気的特性変化検出部を設け、予め設定された許容温度範囲を超えると、前記温度変化把握用素子の特性が変化するかまたは破壊されるようにして、電源電池を具備しないデータキャリアにおいて、電波を受信しない期間においても取り付け対象物の温度管理を確実に行うことができるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデータキャリア及びリーダ/ライタ装置に関し、特に、厳しい温度管理が要求される製品や原料の温度管理に使用するデータキャリアを安価に製造するために用いて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触データキャリア(応答器)と質問器とからなる非接触データキャリアシステムが、簡易なデータ処理システムとして種々の用途で用いられている。さらに、非接触データキャリアが温度センサや圧力センサなどのセンサを備え、非接触データキャリアシステムを測定システムに適用する用途も出現してきている。このようなデータキャリアシステムにおいては、温度センサや圧力センサなどのセンサを動作させるための電力を供給するために電源電池を備えている。
【0003】
前記電源電池は、温度センサや圧力センサなどのセンサを動作させる他に、データキャリアの動作電力としても使用される。このため、データキャリアにセンサを具備して温度や圧力を検出しようとすると、電源電池の寿命が短くなってしまう問題点があった。このような問題点を解消するために、例えば、特許文献1において、動作時の省電力化を図ることにより、電源電池の長寿命化を可能にする技術が提案された。
【0004】
前記特許文献1に記載の無線送受信システムによれば、電源電池の寿命をある程度長くすることが可能である。しかしながら、電源電池の寿命は有限であるので、動作電力を電源電池に頼っている限りは、動作不能になる時期が必ず訪れることになる。この場合、温度センサや圧力センサなどのセンサを動作させることができなくなるばかりでなく、無線通信を行うこともできなくなってしまう不都合が発生する。また、電源電池を設けるデータキャリアの場合には、小型化及び低価格化を図ることが困難である問題点もあった。
【0005】
このような問題点を解消するために、例えば、特許文献2に示されるように、電源電池を設けないセンサを搭載したデータキャリアも多数提案されている。特許文献2において提案されているデータキャリアは、電源電池を設けないことにより、非接触データキャリアに物理量の測定機能(例えば、温度測定機能)を搭載しても、安価及び小型化を維持することができ、しかも、測定可能な物理量の融通性を高くすることができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−108755号公報
【特許文献2】特開2008−159066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した特許文献2のデータキャリアの場合には、物理量を測定可能な非接触データキャリアの小型化及び軽量化を図ることができる。しかしながら、電源電池を設けないデータキャリアが、例えば温度計測を行うことが可能なのは、質問器から送信される電波を受信しているときのみであり、電波を受信していない期間における温度変化を把握することができない問題点がある。
【0008】
このため、電波を受信していない期間において、製品や材料の温度変化が許容温度範囲を超えてしまった場合においても、それを把握することができないので、所定の許容温度範囲を超えたか否かを、所定の期間に亘って監視することができない問題点があった。
本発明は前述の問題点に鑑み、電波を受信していない期間においても、異常な温度変化の発生を検出できるようにして、予め設定された許容温度範囲を超えるような異常な温度変化が発生したか否かを常に監視することが可能な無電池式のデータキャリアを提供できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のデータキャリアは、データキャリア用ICチップ本体と、前記データキャリア用ICチップ本体に形成される複数の接続端子のうち、第1の接続端子と第2の接続端子との間に、予め設定された許容温度範囲を超える温度変化の有無を把握するための温度変化把握用素子が接続されたデータキャリアであって、前記温度変化把握用素子の電気的抵抗または電流または電圧の変動分を検出するために、前記データキャリア用ICチップ本体の内部に埋設された電気的特性変化検出部とを有し、予め設定された許容温度範囲を超えると、前記温度変化把握用素子の特性が変化するかまたは破壊されるようにしたことを特徴とする。
【0010】
本発明のリーダ/ライタ装置は、データキャリアとの間でRF通信を行ない、前記データキャリアとの間で種々の情報を授受するリーダ/ライタ装置であって、前記データキャリアから送られてくる電気的特性の変動分に基づいて、前記データキャリアにおいて、温度変化把握用素子の電気的な特性変化を検出する異常検出手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、予め設定された許容温度範囲を超えると、特性が変化するかまたは破壊される不可逆性の温度変化把握用素子を設け、電波を受信したときに前記不可逆性の温度変化把握用素子の電気的特性変化を検出するようにしたので、電波を受信していない期間においても、所定の許容温度範囲を超える温度変化が発生したか否かをを常に監視することが可能な無電池式のデータキャリアを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態を示し、データキャリアの構成例を示すブロック図である。
【図2】データキャリアのハード部の概略構成を説明する図である。
【図3】温度変化把握素子として用いられる温度ヒューズの構成例を説明する図である。
【図4】形状記憶合金により、温度変化把握素子を構成した例を説明する図である。
【図5】本実施形態のデータキャリアを用いたデータキャリアシステムの通信手順の一例を説明するフローチャートである。
【図6】データキャリアで行われる温度変化検出処理の一例を説明するフローチャートである。
【図7】リーダ/ライタ装置及びデータキャリアにより構成されるデータキャリアシステムの概略構成を説明する図である。
【図8】本発明の第2の実施形態を示し、温度変化把握用素子を2個配設した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明のデータキャリアシステムの実施形態を説明する。
図1に示すように、本実施形態のデータキャリア100は、アンテナ回路110、RFアナログ部120、セレクタ部130、制御部140、記憶部150(EEPROMメモリ)等によって構成されている。なお、図示しないが、本実施形態のデータキャリア100は、少なくとも、第1の接触端子〜第4の接触端子、及びデータ入出力端子を有している。ここで、第1の接触端子は、第3の接触端子または第4の接触端子と共用可能であり、内部端子としてみなすことができる。したがって、接触通信を行うために用いられるのは、第2の接触端子、第3の接触端子、第4の接触端子及びデータ入出力端子の4個である。
【0014】
このような構成により、本実施形態のデータキャリアにおいては、RF通信及び接触式シリアル通信の両方を行うことができる。なお、接触式シリアル通信を行う場合には、第1の接触端子はシリアルクロックの入力用として用いられ、第2の接触端子は多目的データの入出力用として用いられる。
【0015】
アンテナ回路110は、コイルL1及びコンデンサC1の並列共振回路によって構成されている。また、RFアナログ部120は、整流回路121、送信回路122、受信回路123及び電源制御部124等によって構成されている。
【0016】
セレクタ部130は、RF通信と接触式シリアル通信とを切り替えるためのものである。
制御部140は、通信制御回路141、セキュリティ部142及び電気的特性変化検出部143を有している。
【0017】
記憶部150は、セキュリティ設定用メモリ151及び認証用キー格納メモリ152を有している。これらのセキュリティ設定用メモリ151及び認証用キー格納メモリ152に格納されているコマンド、及び認証用キーは、RF通信及び接触式シリアル通信において共通に使用される。
【0018】
本実施形態のデータキャリア100は、図2の概略構成説明図に示すように、非接触データキャリア基材100a上に、ICチップ本体100bを配置している。そして、コイル接続端子S1(第1のコイル接続端子)、コイル接続端子S2(第2のコイル接続端子)との間にアンテナコイルL1を接続している。また、第1の温度変化把握素子接続端子I/O0と第2の温度変化把握素子接続端子VDDとの間に温度変化把握用素子30が配置されている。すなわち、本実施形態のデータキャリア100は、非接触データキャリア基材100a上にICチップ本体100b、アンテナコイルL1、温度変化把握用素子30が配列されている。
【0019】
本実施形態のデータキャリア100に設けた温度変化把握用素子30は、図3に示したように、リード線35間に容易に溶融する易融金属34を接合している。そして、溶断を長期間に亘って維持するために、ロジン(松脂)を主体とした特殊樹脂33を可溶体周囲に塗布し、これをセラミック管31に封入している。さらに、機密性を保つためにセラミック管31の両端をエポキシ樹脂32a、32bで封止して構成している。
【0020】
前述のように構成した本実施形態の温度変化把握用素子30の動作原理を説明する。
温度変化把握用素子30の周囲温度が上昇することにより融点に達すると、易融金属34が溶融する。これと同じくして、特殊樹脂33が凝縮して易融金属34をリード線35側に引っ張ることにより、易融金属34が分断される。
【0021】
このように、温度変化把握用素子30は周囲の温度上昇のみで易融金属34が溶断して開路するので、取り付けた環境が予め設定された許容温度範囲を超えたか否かを確実に把握することができる。なお、温度変化把握用素子30を直列に複数本接続しておけば、1つの温度変化把握用素子30が不良動作した場合においても予め設定された許容温度範囲を確実に検出することができる。
【0022】
易融金属34が分断される温度は、合金の組成により様々な温度を設定することが可能であるが、例えば、「61℃プラスマイナス3℃」〜「140℃プラスマイナス2℃」程度の温度変化把握用素子30が実用化されている。
【0023】
温度変化把握用素子30の周囲温度が上昇して、予め設定された許容温度範囲を超えると、前述したように易融金属34が分断されるので、リード線35は開路状態となり、周囲温度が低下しても閉路状態に復帰することはない。したがって、電波を受信すると電気的特性変化検出部143が温度変化把握用素子30の分断を容易に検出することにより、データキャリア100が電波を受信していない期間においても、温度検知を常時行うことが可能である。
【0024】
本実施形態のデータキャリア100の場合には、許容温度範囲を超えることにより温度変化把握用素子30が破壊された場合においても、データキャリア100の本来機能は通常に動作する。以下に、本実施形態のデータキャリア100とリーダ/ライタ装置との間で行うRF通信の一例を説明する。
【0025】
図7に示すように、本実施形態のデータキャリア100と通信を行うリーダ/ライタ装置10は、送信部11、受信部12、アンテナ回路14、及びフィルタ回路15等によって構成されている。そして、アンテナ回路14からコマンドやデータをデータキャリア100に送信し、リーダ/ライタ装置10とデータキャリア100との間でRF通信を行い、前記データキャリア100との間で種々の情報を授受する。
【0026】
送信部11は、データキャリア100に送信するコマンドやデータよりなる質問信号を生成するためのものであり、所定のキャリア周波数f0(13.56MHz)を変調して質問信号を生成している。受信部12は、データキャリア100から送信されてきたサブキャリア周波数を復号してデータを復調する。アンテナ回路14は、送信部11から出力される質問信号14aをデータキャリア100に送信するとともに、データキャリア100から送信された応答信号14bを受信する。本実施形態のリーダ/ライタ装置10の特徴は、受信部12に異常検出部12aが設けられていることである。
【0027】
次に、図5のフローチャートを参照しながら本実施形態のデータキャリア100を用いたデータキャリアシステムの通信例を説明する。
図5に示したように、最初のステップS501において、リーダ/ライタ装置10から質問信号14aが送信されて「パワーオン」となるのを待機している。
【0028】
そして、リーダ/ライタ装置10から質問信号14aが送信されることによりデータキャリア100に動作電力が発生すると、パワーオンとなってステップS502に進み、アンチコリジョン処理の成功を判断する。この判断の結果、アンチコリジョン処理が成功した場合にはステップS503に進み、応答処理を行う。
【0029】
この応答処理において、本実施形態においては、タグ応答として「IDコード+INDEX」をリーダ/ライタ装置10に送信する。その後、ステップS504において認証の有無を判断する。この判断の結果、認証がない場合にはステップS508にジャンプする。また、認証が有る場合にはステップS505に進む。
【0030】
ステップS505においては「相互認証」か否かを判断する。この判断の結果、「相互認証」ではない場合はステップS506に進んで「タグ認証」処理を行う。また、ステップS505の判断の結果、「相互認証」であった場合にはステップS507に進んで「相互認証」処理を行う。なお、ステップS504における認証の有無、及びステップS505における認証の種別の判断は、前述した通信制御回路141に設けられている認証コマンド解析部(図示せず)により行われる。
【0031】
本実施形態のデータキャリア100は、前述したように、「認証無し」、「タグ認証」及び「相互認証」のように、3つのセキュリティレベルを設定することが可能に構成されている。「認証無し」は、「パワーオン」からステップS508のコマンド受信状態に直接移行するために、高速なアクセスを行うことが可能となる。
【0032】
また、ステップS506において行われる「タグ認証」は、タグ(データキャリア)の認証キーのインデックスのリスト番号に基づいて行われるので、この認証処理において使用されるインデックスのリスト番号が何であるかを予め知っているリーダ/ライタ装置10のみが認証処理を実行可能となる。
【0033】
一方、ステップS507において行われる「相互認証」処理は、リーダ/ライタ装置10及びデータキャリア100の相互において行われる認証である。本実施形態においては、認証の順番はリーダ/ライタ装置10の認証の後でデータキャリア100の認証を行うようにしている。
【0034】
すなわち、ステップS506で説明した「タグ認証」の処理と同様な認証処理が終了すると、リーダ/ライタ装置10から認証キーのインデックスのリスト番号を送信する。前記認証キーのインデックスのリスト番号を受信したリーダ/ライタ装置10は、受信した認証キーのインデックスのリスト番号と、認証用キー格納メモリ152に保持している認証キーのインデックスのリスト番号とを比較して、リーダ/ライタ装置10の真偽を判定する。
【0035】
前述したように、ステップS506における「タグ認証」処理、またはステップS507における「相互認証」処理が終了すると、ステップS508に遷移してコマンド受信の待機状態となる。そして、リーダ/ライタ装置10からコマンドが送られてきたらステップS509に移行して、前記送信されたコマンドに従う処理を実行する。本実施形態において行われる処理は、温度変化把握用素子30の溶断検出処理であり、この処理については後述する。
【0036】
次に、ステップS510においてパワーオフか否かを判断する。この判断の結果、パワーがある場合にはステップS508に戻ってコマンド受信の待機状態となる。また、ステップS510の判断の結果、パワーオフであった場合にはリーダ/ライタ装置10との通信処理を終了する。
【0037】
次に、図5のステップS509で行われる温度変化把握用素子30の溶断検出処理の一例を、図6のフローチャートを参照しながら説明する。
処理が開始されると、最初のステップS61において温度変化把握用素子30の抵抗値(電気的特性)の検出が行われる。この抵抗値検出は、電気的特性変化検出部143により行われる。本実施形態の温度変化把握用素子30の易融金属34は、抵抗値が極めて小さいので、実質的には温度変化把握用素子30の導通検出、すなわち、温度変化把握用素子30の溶断検出が行われる。
【0038】
次に、ステップS62において、ステップS61で行われた溶断検出の有無を判定する。前述したように、温度変化把握用素子30が溶断されると、温度変化把握用素子30の抵抗値が無限大となるので、電気的特性変化検出部143は温度変化把握用素子30の溶断の有無を確実に判定することができる。
【0039】
ステップS62の判定の結果、温度変化把握用素子30が溶断していなかった場合にはステップS63に進み、温度変化把握用素子30が正常であることを示す信号をリーダ/ライタ装置10に送信する。
【0040】
一方、ステップS62の判定の結果、温度変化把握用素子30が溶断していた場合にはステップS64に進み、温度変化把握用素子30が溶断されたことを検出したことを示す温度異常検出信号をリーダ/ライタ装置10に送信する。ステップS63において正常信号を出力するか、ステップS64においては溶断検出信号を送信すると、処理を終了する。
【0041】
なお、温度変化把握用素子30の構成は、図3に示した構成に限ることなく種々の構成を考慮することができる。例えば、図4の(a)、(b)に示すように形状記憶合金を使用して構成することができる。
【0042】
図4(a)、(b)に示した形状記憶合金を用いた温度変化把握用素子40は、所定の間隔を置いて対向配置された第1の電極44、第2の電極45に導電性のスプリングを取り付ける。第1の電極44に取り付けられる第1のスプリング41は通常の弾性スプリングである。それに対して、第2の電極45に取り付けられる第2のスプリング42は形状記憶合金で構成されているスプリングである。
【0043】
図4(a)に示すように、第1のスプリング41の長さはa、第2のスプリング42の長さはbであり、常温ではこれらのスプリング41と42との間に隙間cが存在して、第1のスプリング41と第2のスプリング42とが非接触状態となっている。
【0044】
このような状態において、温度変化把握用素子40の周囲温度が上昇して許容温度範囲を超えると、図4(b)に示すように、第2のスプリング42が長さbから長さbaに伸びる。これにより、第1のスプリング41と第2のスプリング42との間に存在していた隙間cが無くなり、第1のスプリング41と第2のスプリング42とが接触する。第2のスプリング42は、不可逆性の形状記憶合金であるので、一旦変形すると、その後周囲温度が低下しても第1のスプリング41と第2のスプリング42とが非接触になることはない。
【0045】
したがって、形状記憶合金を使用した温度変化把握用素子40においても、電波を受信していない期間において、温度変化把握用素子40の周囲温度が許容温度範囲を超えたか否かを確実に検出することができる。
【0046】
前述したような、温度変化把握用素子30または温度変化把握用素子40は、種々の分野で使用することができる。(1)プラスチック樹脂及び半導体パッケージ樹脂の中には所定の許容温度範囲を超えると物性が変化してしまう樹脂がある。そこで、輸送時や保管時において、所定の許容温度範囲内に収まるように温度管理する必要がある。(2)生体物、検体物の輸送及び保管においても所定の許容温度範囲内に収まるように温度管理する必要がある。(3)複合機やプリンタに用いられているトナーも、所定の許容温度範囲を超えると品質が劣化する場合があるとされている。したがって、所定の許容温度範囲内に収まるように温度管理することが望まれている。
【0047】
前述したような(1)〜(3)のような場合において、本実施形態のデータキャリア100を取り付けておけば、所定の許容温度範囲内を超えたことがあるか否かを確実に監視することができる。しかも、無電池であるので、低価格化、小型化を図ることができるとともに、形状の自由度も大きくできる利点が得られる。
【0048】
なお、前述実施形態においては、温度変化把握用素子30、40として温度ヒューズ、及び形状記憶合金を用いて構成した例を示したが、所定の許容温度範囲を超えると変色する、サーモラベルを用いて温度変化把握用素子を構成し、色検出を行うように構成することもできる。色検出の仕方は、温度変化把握用素子の変色に対応させて、任意の方法を用いることができる。
【0049】
(第2の実施形態)
次に、図8を参照しながら本発明の第2の実施形態を説明する。
前述した第1の実施形態においては、所定の許容温度範囲を超えたか否かを監視するためのデータキャリア100について説明した。それに対して、この第2の実施形態においては、2種類の温度変化把握用素子30及び80を設けて、所定の許容温度範囲を超えたか否かを検知するとともに、許容温度範囲よりも温度が低下したか否かを検知することができるようにした例を説明する。
【0050】
図8において、温度変化把握用素子30は、図3を参照しながら説明したように、温度変化把握用素子30が所定の許容温度範囲を超えたか否かを検知するための温度変化把握用素子である。
【0051】
温度変化把握用素子80は、形状記憶合金を用いた温度変化把握用素子であり、第1の電極84と第2の電極85との間に、第1のスプリング81及び第2のスプリング82を配置しており、第2のスプリング82が形状記憶合金で構成されている。
【0052】
本実施形態の第2のスプリング82は、所定の許容温度範囲内では伸びて第1のスプリング81に接触している状態である。そして、温度変化把握用素子80の周囲温度が所定の許容温度範囲よりも低下すると変形して縮むように構成されている。したがって、温度変化把握用素子80の周囲温度が低下すると、第1のスプリング81と第2のスプリング82との間に隙間が生じ、リード線83が開状態となる。
【0053】
第2のスプリング82の変形は、温度変化把握用素子80の周囲温度が上がっても元の形状に戻ることがないので、リード線83の開状態は保持される。したがって、電波を受信しているか否かに係らず、温度変化を常に把握することができる。
【0054】
以上、説明したように本実施形態のデータキャリア100の場合には、ICチップ本体100bに温度変化把握用素子30を付加し、温度変化把握用素子30が溶断されると、その溶断状態が保持されるようにした。また、この温度変化把握用素子30は溶断された場合においても、データキャリア100の本来機能には影響しないように付加されているので、温度変化把握用素子30が溶断により破壊されても、データキャリア100を通常に使用することができる。
【0055】
(本発明に係る他の実施の形態)
前述した本発明の実施の形態におけるデータキャリアを構成する各手段は、コンピュータのRAMやROMなどに記憶されたプログラムが動作することによって実現できる。このプログラム及び前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は本発明に含まれる。
【0056】
また、本発明は、例えば、システム、装置、方法、プログラムもしくは記憶媒体等としての実施の形態も可能であり、具体的には、複数の機器から構成されるシステムに適用してもよいし、また、一つの機器からなる装置に適用してもよい。
【0057】
したがって、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、前記コンピュータにインストールされるプログラムコード自体も本発明を実現するものである。つまり、本発明は、本発明の機能処理を実現するためのコンピュータプログラム自体も含まれる。
【0058】
その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等の形態であってもよい。
【0059】
プログラムを供給するための記録媒体としては種々の記録媒体を使用することができる。例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、MO、CD−ROM、CD−R、CD−RW、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM、DVD(DVD−ROM,DVD−R)などがある。
【0060】
その他、プログラムの供給方法としては、クライアントコンピュータのブラウザを用いてインターネットのホームページに接続する。そして、前記ホームページから本発明のコンピュータプログラムそのもの、もしくは圧縮され自動インストール機能を含むファイルをハードディスク等の記録媒体にダウンロードすることによっても供給できる。
【0061】
また、本発明のプログラムを構成するプログラムコードを複数のファイルに分割し、それぞれのファイルを異なるホームページからダウンロードすることによっても実現可能である。つまり、本発明の機能処理をコンピュータで実現するためのプログラムファイルを複数のユーザに対してダウンロードさせるWWWサーバも、本発明に含まれるものである。
【0062】
また、本発明のプログラムを暗号化してCD−ROM等の記憶媒体に格納してユーザに配布し、所定の条件をクリアしたユーザに対し、インターネットを介してホームページから暗号化を解く鍵情報をダウンロードさせる。そして、その鍵情報を使用することにより暗号化されたプログラムを実行してコンピュータにインストールさせて実現することも可能である。
【0063】
また、コンピュータが、読み出したプログラムを実行することによって、前述した実施の形態の機能が実現される他、コンピュータ上で稼動しているOSなどが、実際の処理の一部または全部を行うことによっても前述した実施の形態の機能が実現され得る。
【0064】
さらに、記録媒体から読み出されたプログラムが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれる。その後、そのプログラムの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によっても前述した実施の形態の機能が実現される。
【符号の説明】
【0065】
10 リーダ/ライタ装置
11 送信部
12 受信部
12a 異常検出部
14 アンテナ回路
14a 質問信号
14b 応答信号
15 フィルタ回路
30 温度変化把握用素子
31 セラミック管
32a、32b エポキシ樹脂
33 特殊樹脂
34 易融金属
35 リード線
100 データキャリア
100a データキャリア基材
100b ICチップ本体
110 アンテナ回路
120 RFアナログ部
121 整流回路
122 送信回路
123 受信回路
124 電源制御部
130 セレクタ部
140 制御部
141 通信制御回路
142 セキュリティ部
143 電気的特性変化検出部
150 記憶部(EEPROMメモリ)
151 セキュリティ設定用メモリ
152 認証用キー格納メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データキャリア用ICチップ本体と、前記データキャリア用ICチップ本体に形成される複数の接続端子のうち、第1の接続端子と第2の接続端子との間に、予め設定された許容温度範囲を超える温度変化の有無を把握するための温度変化把握用素子が接続されたデータキャリアであって、
前記温度変化把握用素子の電気的抵抗または電流または電圧の変動分を検出するために、前記データキャリア用ICチップ本体の内部に埋設された電気的特性変化検出部とを有し、
予め設定された許容温度範囲を超えると、前記温度変化把握用素子の特性が変化するかまたは破壊されるようにしたことを特徴とするデータキャリア。
【請求項2】
前記温度変化把握用素子は温度ヒューズであり、前記予め設定された許容温度範囲を超えた場合には溶断して電流の流れを遮断することを特徴とする請求項1に記載のデータキャリア。
【請求項3】
前記温度変化把握用素子は形状記憶合金であり、前記予め設定された許容温度範囲を超えた場合には電流の流れを遮断することを特徴とする請求項1に記載のデータキャリア。
【請求項4】
前記温度変化把握用素子は形状記憶合金であり、前記予め設定された許容温度範囲を超えた場合には遮断されていた電流路を導通させることを特徴とする請求項1に記載のデータキャリア。
【請求項5】
前記許容温度範囲が異なる温度変化把握用素子を並列に複数個配設したことを特徴とする請求項1に記載のデータキャリア。
【請求項6】
リーダ/ライタ装置から送信されるコマンドに応じて前記電気的特性変化検出部を制御するとともに、前記電気的特性変化検出部が検出した電気的特性の変動分を前記リーダ/ライタ装置に送信する通信制御手段を有することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のデータキャリア。
【請求項7】
データキャリアとの間でRF通信を行ない、前記データキャリアとの間で種々の情報を授受するリーダ/ライタ装置であって、
前記データキャリアから送られてくる電気的特性の変動分に基づいて、前記データキャリアにおいて、温度変化把握用素子の電気的な特性変化を検出する異常検出手段を有することを特徴とするリーダ/ライタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−244257(P2010−244257A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91418(P2009−91418)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(599098851)吉川アールエフシステム株式会社 (23)
【Fターム(参考)】