説明

データベースを使用した物品の信頼性認証

デジタル識別子は、紙や厚紙や他の物品上にわたってコヒーレントビームを走査することによりさらに散乱を測定することにより得られた一組をなす複数のデータポイントをデジタル化することによって、得られる。また、サムネイル状デジタル識別子は、一組をなす複数のデータポイントのフーリエ変換の振幅スペクトルをデジタル化することによって決定される。これにより、複数のデジタル識別子とそれらのサムネイル状デジタル識別子とからなるデータベースを、構築することができる。その後、物品の信頼性を、物品を再走査してそのデジタル識別子およびサムネイルを決定しさらにその後データベースを検索して適合を探すことにより、検証することができる。検索は、フーリエ変換サムネイルに基づいて行われる。これにより、検索速度を改良することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば個人識別(ID)カードや販売製品やオリジナル文書やあるいは他のアイテムといったような物品の信頼性認証に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多くの従来的な認証セキュリティシステムにおいては、製造業者以外の者では実行が困難であるようなプロセスを使用する。その場合の困難さは、資本設備や、技術的ノウハウや、あるいは、好ましくはこれらの双方、とすることができる。例としては、紙幣の透かしや、クレジットカードまたはパスポートのホログラム、がある。残念なことに、犯人は、より巧妙化していて、正規の製造業者が行い得るすべてのものを実質的に複写することができる。
【0003】
このため、認証セキュリティシステムに関して公知のアプローチが存在し、このアプローチにおいては、自然法則によって支配されるいくつかのプロセスを使用してセキュリティトークンを生成する。これにより、各トークンを独自のものとし、より重要なことに、各トークンを測定可能な独自特徴点を有したものとし、これにより、その後の認証に際しての根拠として使用することができる。このアプローチによると、トークンは、独自の特徴点が得られる一連の方法で、製造され、測定される。特徴点は、コンピュータデータベース内に格納することができるあるいは保持することができる。このタイプのトークンは、例えば紙幣やパスポートやIDカードや重要な文書といったようなキャリア物品内に埋設することができる。その後、キャリア物品を、再び測定することができ、測定された特徴点を、データベース内に格納された特徴点と比較することができ、これにより、適合しているかどうかを立証することができる。
【0004】
この一般的なアプローチにおいては、様々な物理的効果を使用することが提案されている。いくつかの参考文献[1]〜[4]において考慮された1つの物理的効果は、独自の特徴点を提供し得るよう、典型的には特別なトークンという態様とされたような物品の固有の特性から、レーザースペックルを使用することである。これら技術においては、例えば特別なトークンの全体といったような大きな領域が、コリメートされたレーザービームによって照射され、そして、結果として生成されるスペックルパターンの意義深い立体角度が、CCDによってイメージ化される。これにより、複数のデータポイントからなる大きなアレイから形成された照射領域に関するスペックルパターンイメージが得られる。
【0005】
最近、レーザースペックルに基づくさらなる技術が、開発された(参考文献[5])。この技術においては、物品上にわたって焦点合わせ済みレーザービームを走査することにより、さらに、物品の多くの様々な部分から分散された光から、典型的には500個以上といったような多くのデータポイントを収集し、これにより、多数の独立したデータポイントを収集することにより、独自の特徴点が得られる。物品の多くの様々な部分に特有の多数の独立した信号貢献を収集することによって、物品のうちの、走査が行われた領域に特有であるデジタル識別子(あるいは、デジタル署名、あるいは、デジタルサイン、あるいは、デジタルシグナチャー)を、計算することができる。この技術は、未処理の紙や厚紙やプラスチックといったようなものも含めて多種多様な物品の表面から、独自の識別子を提供することができる。
【0006】
この技術の重要な応用は、以下においては『マスターデータベース』と称されるような格納された多数の識別子からなるデータベースからの、セキュリティ認証である。例えば、香水工場においては、各香水ボトルボックスを読取器によって走査することにより、識別子を得ることができ、これらの識別子を、マスターデータベース内へと入力することができる。マスターデータベースは、製造されたあらゆる物品からの識別子を備えている。すなわち、香水の箱からの識別子を備えている。その後、フィールド検査時には、読取器を使用して、任意の香水の箱の識別子を得ることができ、この識別子を、マスターデータベースと比較することができる。これにより、マスターデータベース内に保持された識別子と適合しているかどうかを検証することができる。適合がないならば、物品は、偽物であると考えられる。適合があるならば、物品は、本物であると考えられる。
【0007】
多くの応用においては、例えば国家の安全に関する応用や民事文書に関する応用やあるいは大量のブランド付き商品に関する応用といったような多くの応用においては、マスターデータベース内に格納された識別子の数は、非常に多数のものとなり得る。入力の数は、おそらく、数百万や、数千万や、数億とさえ、なり得る。例えば、これは、例えば、人口の多い国に関してパスポートや運転免許の認証に際して、このスキームが使用された場合である。
【0008】
すべての応用に関してではないものの大部分の応用に関しては、マスターデータベースを適度な時間内で検索し得ることが、必要である。適度である度合いは、応用ごとに相違するであろう。しかしながら、多くの応用においては、適度な時間の最大値は、わずか数秒であろう。しかしながら、マスターデータベースが大きい場合には、識別子の適合の高速検索を実行するには、2つの困難さが存在する。
【0009】
第1に、たとえ本物のアイテムからの走査であったとしても、格納されたデータベース走査に対して完全に適合することは、決してないことである。適合または非適合の検証は、マスターデータベース内に保持されていて最初に走査された識別子と、再走査された識別子と、の間の類似性の度合いによる。本発明者らは、典型的な良質の適合においては、およそ75%のビットが適合していること、および、詐欺的な適合においては、平均で50%のビットが適合していること、を見出している。その結果、例えば参照表といったような標準的な相関データベース高速検索は、効果的に使用することができない。したがって、ターゲット識別子に対して、データベース内のすべての入力内容を試す必要がある。
【0010】
第2に、成功したデータベース入力内容と、再走査された識別子と、の間には、未知のビットシフトが存在する可能性がある。なぜなら、走査された対象物が、第1回目の走査と第2回目の走査とでは、完全に同じ位置ではない可能性があるからである。レーザー走査方向に対して平行な方向におけるすべてのオフセットは、ビットパターンをシフトさせることとなる。したがって、ターゲット識別子に対して、データベース内のすべての入力内容の照合を試す必要があるばかりではなく、そのような照合を、データベースの各入力内容に関する様々な長さのビットシフトを仮定して行わなければならない。ビットシフトの長さは、30以上ともしなければならず、このため、合計の検索時間は、潜在的に非常に長いものとなる。ビットシフトの数は、読取器の位置決め精度の関数であり、また、ビットごとの走査長さの関数である。
【特許文献1】英国特許出願公開第2 221 870号明細書( Ezra, Hare &Pugsley )(参考文献[1])
【特許文献2】米国特許第6,584,214号明細書( Pappu, Gershenfeld &Smith )(参考文献[2])
【特許文献3】英国特許出願第0405641.2号明細書(公開前。この文献の記載内容は、参考のため、その全体がここに組み込まれる。)(参考文献[5])
【非特許文献1】Kravolec,“Plastic tag makes foolproof ID”, TechnologyResearch News, 2 October 2002(参考文献[3])
【非特許文献2】R. Anderson,“Security Engineering: a guide to buildingdependable distributed systems”, Wiley 2001, pages 251-252, ISBN 0-471-38922-6(参考文献[4])
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、非常に多数のデジタル識別子記録を含有しているデータベースに関する検索速度を改良する方法を提案する。これにより、上述の第2の困難性を克服する。本発明による方法においては、データベース内へと走査識別子のデジタル化表現を格納するだけでなく、走査された識別子のフーリエ変換の一成分のデジタル化表現をも格納する。物品が再走査された際には、再走査からの走査データは、フーリエ変換される。この変換は、極座標によって表現される。すなわち、振幅と位相とによって表現される(これは、実数成分と虚数成分とによるフーリエ変換表示とは異なる)。振幅情報は、検索のために使用される。しかしながら、位相情報は、廃棄することができる。すなわち、データベースの検索に際しては、新しい走査のフーリエ変換振幅スペクトルと、各データベース記録内においてサムネイルとして格納されたフーリエ変換振幅スペクトルと、の間において適合が求められる。物品に関して適合したデータベース記録が存在する場合には、新しい走査とデータベース走査との間の任意のビットシフトに関係なく、サムネイルどうしの間に、適合が検出されなければならない。具体的には、従来技術においては、再走査時に読取器上において相対的に異なる位置とされた場合に必然的に発生するような第1走査と再走査との間における未知のビットシフトを考慮する必要があった。しかしながら、本発明においては、そのようなビットシフトを考慮する必要がなく、適合検証を繰り返す必要はない。
【0012】
したがって、検索は、フルの識別子どうしを単純に比較するという方法と比べて、すなわち、実数空間(周波数空間とは異なる)内において識別子どうしを単純に比較するという方法と比べて、認証に際して第1走査と再走査との間における位置合わせ誤差を、データあたりの走査長さ(l/n)で割算した値以上の因子の分だけ、高速化される。この因子は、関連したパラメータ値に依存して、典型的には、10〜50という範囲である。検索速度の高速化は、サムネイルとして各記録内容につきフーリエ変換の振幅スペクトルを格納する必要性があることによって、データベースサイズのわずかな増大化をもたらしてしまう。
【0013】
この検索方法は、以下の理由に基づいて、機能する。フーリエ変換された際には、擬似乱数のビットシーケンスは、振幅スペクトル内にいくつかの情報を付帯しているとともに、位相スペクトル内にいくつかの情報を付帯している。何らかのビットシフトがあれば、位相スペクトルに対してだけ影響を及ぼし、振幅スペクトルには、影響を及ぼさない。したがって、振幅スペクトルは、ビットシフトに関する知見を必要とすることなく、適合を求めることができる。いくつかの情報が、位相スペクトルを放棄する際に失われるけれども、十分な情報が残存しており、これにより、データベースに対しての粗い適合を得ることができる。これにより、ターゲットに対しての1つまたは複数の推定の適合(すなわち、適合候補)を、データベース内に配置することができる。これら推定適合の各々は、その後、新しい走査に対して、従来的な現実空間方法を使用して、適切に比較することができる。
【0014】
本発明の1つの見地においては、読取容積内に配置された物品を走査するための方法であって、読取容積によってコヒーレント光を散乱させた際に得られた複数の強度信号から一組をなす複数のデータポイントを収集し、その際、様々なデータポイントを、読取容積の互いに異なる部分から散乱されたものとし;一組をなす複数のデータポイントをデジタル化することによって、物品のデジタル識別子を決定し;一組をなす複数のデータポイントのフーリエ変換の振幅成分をデジタル化することによって、物品のサムネイル状デジタル識別子を決定する;という方法が提供される。
【0015】
走査を行うことにより、例えば物品の製造時にあるいは文書の作成時に走査を行うことにより、デジタル識別子を物品に付与し得るとともに格納することができる。この場合、デジタル識別子は、データベース内において、そのサムネイル状デジタル識別子と一緒に、格納される。重複したエントリを避けるために、デジタル識別子は、好ましくは、そのサムネイル状デジタル識別子と一緒に、データベース内に既に格納されたものの中にそれらデジタル識別子およびサムネイル状デジタル識別子と同じものが存在していない場合に、データベース内に格納される。付加的には、物品に対して、データベース内におけるデジタル識別子の検出を補助するための粗な記録位置決め器をエンコードしてなる機械読取可能なマーキングによって、例えばバーコードといったようなものによって、ラベル付けを行うことができる。
【0016】
走査は、また、物品認証のために、後で実行することもできる。この場合には、認証方法においては、さらに、複数のデジタル識別子およびそれらのサムネイル状デジタル識別子が既に記録されてなるデータベースを準備し;データベースを検索するに際して、決定されたサムネイル状デジタル識別子と、既に記録されたサムネイル状デジタル識別子と、の間の比較を実行することによって、少なくとも1つの適合候補を探し;決定されたデジタル識別子と、既に記録された複数のデジタル識別子の中の少なくとも1つと、の間の比較を実行することによって、すべての適合候補に関して、適合しているかどうかを決定する;こととなる。加えて、各適合に関しての信頼性レベルは、決定されたデジタル識別子と、既に記録された複数のデジタル識別子の中の適合していることが見出されたデジタル識別子と、の間の類似度合いに基づいて、決定することができる。これは、ユーザーにとって有効なものとなり得る。物品上に、粗な記録位置決めマーキングが設けられている場合には、認証方法においては、物品上の機械読取可能なマーキングを読み取ることにより、粗な記録位置決め器を求め、この粗な記録位置決め器を使用することにより、データベース内から少なくとも1つの適合候補を探す、こととなる。
【0017】
本発明の他の見地においては、読取容積内に配置された物品を走査するための装置であって、コヒーレントビームを生成するための光源と;読取容積によってコヒーレントビームが散乱された際に得られる複数の信号から一組をなす複数のデータポイントを収集するための検出器構成であるとともに、様々なデータポイントが、読取容積の互いに異なる部分から散乱されたものとされているような、検出器構成と;(i)一組をなす複数のデータポイントをデジタル化することによって、物品のデジタル識別子を決定するように機能するとともに、(ii)一組をなす複数のデータポイントのフーリエ変換の振幅成分をデジタル化することによって、物品のサムネイル状デジタル識別子を決定するように機能する、データ取得処理モジュールと;を具備している装置が提供される。
【0018】
データベースを取り扱う装置においては、例えばブランドオーナーによって使用される装置においてはあるいは政府当局者によって使用される装置においては、データ取得処理モジュールは、さらに、デジタル識別子をそのサムネイル状デジタル識別子と一緒にデータベース内に格納するように機能することができる。重複したエントリを避けるために、この機能は、データベース内に既に格納されたものの中にそれらデジタル識別子およびサムネイル状デジタル識別子と同じものが存在していない場合に、行うことができる。
【0019】
物品の信頼性を認証するための装置においては、例えばフィールド使用読取器においては、装置は、さらに、複数のデジタル識別子およびそれらのサムネイル状デジタル識別子が既に記録されてなるデータベースと;(i)データベースを検索するに際して、決定されたサムネイル状デジタル識別子と、既に記録されたサムネイル状デジタル識別子と、の間の比較を実行することによって、少なくとも1つの適合候補を探すよう機能するとともに、(ii)決定されたデジタル識別子と、既に記録された複数のデジタル識別子の中の少なくとも1つと、の間の比較を実行することによって、すべての適合候補に関して、適合しているかどうかを決定するよう機能する、検索ツールと;を具備することとなる。検索ツールは、さらに、決定されたデジタル識別子と、既に記録された複数のデジタル識別子の中の適合していることが見出されたデジタル識別子と、の間の類似度合いに基づいて、各適合に関しての信頼性レベルを決定するよう機能することができる。
【0020】
本発明の他の見地においては、複数の記録内容を備えているデータベースであって、典型的には、例えばサーバーまたは他のシステムといったようなキャリア媒体内に常駐しているようなデータベースであって、記録内容の各々が、物品から得られた一組をなす複数のデータポイントをデジタル化することによって得られた、物品のデジタル識別子と;一組をなす複数のデータポイントのフーリエ変換の振幅成分をデジタル化することによって得られた、物品のサムネイル状デジタル識別子と;を備えているデータベースが提供される。後述するように、本発明の実施形態においては、これらのデータポイントは、物品によってコヒーレント光が散乱された際に得られたものとされ、それらデータポイントは、物品の互いに異なる部分から散乱されたものとされる。
【0021】
本発明のさらに他の見地においては、検索ツールを具備したシステムであって、検索ツールが、上述したようなデータベースを検索するに際して、入力されたサムネイル状デジタル識別子と、データベース内に保持されている複数のサムネイル状デジタル識別子と、の間の比較を実行することによって、複数の適合候補を探すように機能し得るようなシステムが提供される。検索ツールは、好ましくは、さらに、入力されたデジタル識別子と、適合候補に関する記録内容として保持されているデジタル識別子と、の間の比較を実行することによって、すべての適合候補に関して、適合しているかどうかを決定するように機能することができる。特に大きなデータベースのために、検索ツールは、データベースを検索するに際して、粗な記録位置決め器を使用することにより、適合候補を探すように機能することができる。
【0022】
データベースを、システムとは別体とし得ることも、また、これに代えて、システムに対して一体的なものとし得ることも、理解されるであろう。
【0023】
データベースは、読取器装置の一部を形成する大量記憶装置の一部とすることができる、あるいは、読取器とは別の場所に配置して、遠隔通信リンクを介して読取器からアクセスすることができる。遠隔通信リンクは、例えば無線や固定リンクも含めた従来的な任意の態様のものとすることができ、インターネット上において利用することができる。データ取得処理モジュールは、少なくともいくつかの動作モードにおいて、使用することができる。これにより、適合が検出されない場合には、識別子をデータベースに追加することができる。この利用形態は、通常は、明白さの理由のために、許可された操作者によってしか許可されない。
【0024】
データベースの使用に際しては、識別子を格納することに加えて、データベース内の識別子を、例えば文書の走査コピーやパスポート所持者の写真や製品の製造場所および製造時間に関する詳細やあるいは販売製品(例えば、非正規輸入品)の意図された販売目的地に関する詳細といったような、物品に関する他の情報を関連づけることが、効果的であり得る。
【0025】
上述したような読取器装置を使用することにより、例えば製造ラインにおいてといったようにして物品を順次的に読み取ることによって識別子でデータベースを取り扱うことができ、および/または、その後に、例えばフィールド使用といったようにして物品の信頼性を認証することができる。
【0026】
本発明により、例えば紙や厚紙やプラスチックといったような様々に異なる種類の材料から形成された物品を識別することができる。
【0027】
本発明により、物品が不正開封されたかどうかを確認することができる。これは、識別子を形成するために使用された走査領域を、例えば接着性テープといったような接着性の透明フィルムによって被覆することによって、可能とされる。例えばパッケージングボックスを開けるといったように物品を不正開封しようとすればテープを取り外されなければならないものとしたい場合には、接着剤は、直下の表面を必然的に破壊してしまわざるを得ないようなものとして、選択することができる。その結果、ボックスを封じ直すに際してたとえ類似したテープが使用されたとしても、それを検出することができる。
【0028】
本発明においては、紙または厚紙から形成された物品を識別するための方法であって、紙または厚紙に対してコヒーレント放射を照射し;紙または厚紙の固有構造によるコヒーレント放射の散乱に関する測定結果からなる一組をなす複数のデータポイントを収集し;一組をなす複数のデータポイントをデジタル化することによって、物品のデジタル識別子を決定し;一組をなす複数のデータポイントのフーリエ変換の振幅成分をデジタル化することによって、物品のサムネイル状デジタル識別子を測定する;という方法が提供される。
【0029】
固有の構造という用語は、製造に基づいてその物品が本来的に有している構造のことを意味している。よって、例えばトークンによって与えられた構造や物品内に組み込まれた人工ファイバによって与えられた構造といったような特殊な構造を、セキュリティの目的のために、区別することができる。
【0030】
紙または厚紙という用語は、ウッドパルププロセスから形成された任意の物品を意味している。紙または厚紙は、コーティングまたは含浸によって処理することができる、あるいは、例えばセロハンといったような透明な材料によってカバーすることができる。表面の長期安定性が特に懸念される場合には、紙を、例えばアクリルスプレー透明コーティングによって処理することができる。
【0031】
よって、データポイントは、コヒーレントビームによって照射された位置の機能として収集することができる。これは、物品上にわたってコヒーレントビームを局所的に走査することによっても、また、物品の様々な部分からの散乱光を収集し得る方向性検出器を使用することによっても、また、これら双方の組合せによっても、行うことができる。
【0032】
本発明は、以下に例示するような紙または厚紙からなる物品に関して、特に有効であると考えられる。
1.例えば公債証書や船荷証券やパスポートや政府間条約や法規や運転免許証や車両道路使用許可証やあるいは他の任意の信頼性証明書といったような有価証券。
2.例えばメールシステムのための封筒や法執行手形といったようなトレーシングやトラッキングのための任意の文書。
3.販売製品パッケージング。
4.例えばファッションアイテムといったようなデザイナーグッズ上のブランドラベル。
5.化粧品や医薬品や他の製品のパッケージング。
【0033】
本発明においては、また、プラスチックから形成された物品を識別するための方法であって、プラスチックに対してコヒーレント放射を照射し;プラスチックの固有構造によるコヒーレント放射の散乱に関する測定結果からなる一組をなす複数のデータポイントを収集し;一組をなす複数のデータポイントをデジタル化することによって、物品のデジタル識別子を決定し;一組をなす複数のデータポイントのフーリエ変換の振幅成分をデジタル化することによって、物品のサムネイル状デジタル識別子を測定する;という方法が提供される。
【0034】
プラスチックがコヒーレント放射に対して不透明である場合には、散乱は、プラスチックの固有の表面構造からのものとなる。これに対し、プラスチックが透明である場合には、散乱は、コヒーレント放射が衝突した物品部分に起因するものとなる。
【0035】
本発明は、以下に例示するようなプラスチックからなる物品に関して、特に有効であると考えられる。
1.例えば医薬品といったようなもののための、プラスチックパッケージング。
2.バンクカードやスタッフIDカードやストアカードも含めたIDカード。特にバンクカードまたはストアカードの場合には、IDカード上に識別子付きストリップを備えている。
【0036】
特に有効な応用は、IDカードの識別子付きストリップ上における走査とすることができる。すなわち、署名後におけるIDカードの識別子付きストリップ上における走査とすることができる。これにより、信頼性ために使用されているデジタル識別子は、署名付きカードに特有のものとなり、個人の署名と、その直下の表面構造と、の組合せから形成される。
【0037】
個人の写真を付帯したID物品(プラスチックIDカードとすることができる、あるいは、例えば紙製のパスポートといったような他の材料からなるパスとすることができる)の場合には、不正開封がされていないことの試験として、読取器によって、IDカードの写真部分上を走査すること(カバーページまたはブランクページの走査とは別に)が有効であり得る。なぜなら、ID物品に対する写真貼付のためにコーティングまたは接着性フィルムが使用されている場合には、偽の写真をID物品に対して取り付けるには、偽造者によって剥がされかれなければならないからである。このタイプの偽造は、本発明による読取器によって識別されるであろう。なぜなら、新しい写真が、異なる表面構造を有しているからである。
【0038】
本発明によれば、他の任意のタイプの材料であっても、それが適切な表面構造を有している限りにおいては、識別可能であると予想される。微視的レベルにおいては非常に円滑な表面を有したタイプの材料は、不適切であるかもしれない。また、不透明な材料や、非常に深い表面および/または不安定な表面(例えばフリース材料)を有した材料も、不適切であるかもしれない。
【0039】
本発明においては、さらに、パッケージングや文書や衣類も含めた様々に異なるタイプの物品の識別を行うことができる。
【0040】
本発明においては、そのパッケージングによって製品を識別するための方法であって、製品のパッケージングに対してコヒーレント放射を照射し;そのパッケージングの固有構造によるコヒーレント放射の散乱に関する測定結果からなる一組をなす複数のデータポイントを収集し;一組をなす複数のデータポイントをデジタル化することによって、物品のデジタル識別子を決定し;一組をなす複数のデータポイントのフーリエ変換の振幅成分をデジタル化することによって、物品のサムネイル状デジタル識別子を測定する;という方法が提供される。
【0041】
コヒーレント放射に曝されたパッケージングの関連部分は、紙や、厚紙や、プラスチック(例えばセロハン収縮ラップ)や、金属や、あるいは、適切な固有表面または内部構造を有した他の材料から、形成することができる。物品は、パッケージング内に収容することができる、および付加的には、パッケージングは、不正開封されない態様でもって密封することができる。これに代えて、パッケージングは、例えば見た目に損傷させない限りは解除し得ないコネクタを介して固定されたタグといったような、物品に対する追加物とすることができる。これは、例えば医薬品や化粧品や香水や航空機の予備品やチップ上車両の予備品や水上車両の予備品といったようなものに関して、特に有効であり得る。
【0042】
本発明においては、文書を識別するための方法であって、文書に対してコヒーレント放射を照射し;文書の固有構造によるコヒーレント放射の散乱に関する測定結果からなる一組をなす複数のデータポイントを収集し;一組をなす複数のデータポイントをデジタル化することによって、物品のデジタル識別子を決定し;一組をなす複数のデータポイントのフーリエ変換の振幅成分をデジタル化することによって、物品のサムネイル状デジタル識別子を測定する;という方法が提供される。
【0043】
本発明においては、さらに、衣類または履き物といったようなアイテムに対して付設されたタグによって衣類または履き物といったようなアイテムを識別するための方法であって、タグに対してコヒーレント放射を照射し;タグの固有構造によるコヒーレント放射の散乱に関する測定結果からなる一組をなす複数のデータポイントを収集し;一組をなす複数のデータポイントをデジタル化することによって、物品のデジタル識別子を決定し;一組をなす複数のデータポイントのフーリエ変換の振幅成分をデジタル化することによって、物品のサムネイル状デジタル識別子を測定する;という方法が提供される。タグは、衣類または履き物に対して付設された例えばプラスチック製や厚紙製のものといったような通常そのままのブランドタグとすることができる。
【0044】
要約すると、識別子は、場合によっては、例えばパッケージングといったような、販売製品に対する付属品から得ることができる。他の場合には、識別子は、例えば文書の表面構造や販売製品の表面構造といったような対象物自体から得ることができる。本発明は、多くの実用的な応用を有している。例えば、非正規輸入品や偽造品を制御するに際して応用することができる。そのような応用においては、税関吏または取引所職員が、携帯型の読取器を使用することができる。
【0045】
識別子は、大部分の応用においては、デジタル識別子であることが想定される。現在の技術におけるデジタル識別子の典型的なサイズは、200ビット〜8kビットという範囲である。現時点では、高度なセキュリティのためには、デジタル識別子が、およそ2kビットというサイズを有していることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
本発明をより明瞭に理解し得るよう、また、本発明の実施状況を明確とし得るよう、以下においては、添付図面を参照しつつ、本発明を何ら限定するものではなく単なる例示としての好ましい実施形態に関して、説明する。
【0047】
図1は、本発明を具現した読取装置(あるいは、読取器、あるいは、読取器装置)1を示す概略的な側面図である。光学式読取装置1は、装置の読取容積内に配置された物品(図示せず)から識別子を測定するための装置である。読取容積は、ハウジング12に形成されたスリットからなる読取開口10によって形成される。ハウジング12は、装置の複数の主要な光学的構成部材を備えている。スリットは、x方向(図面内に書き込まれた軸線を参照されたい)においては、主に延在している。主要な光学的構成部材は、コヒーレントなレーザービーム15を生成するためのレーザー源14と、検出器構成16と、である。検出器構成16は、複数の光検出器から構成されており、ここでは、k=4とされていて、符号16a、16b、16c、16dによって図示された4個の光検出器から構成されている。レーザービーム15は、円柱レンズ18を使用することによって、y方向(図面がなす平面に対して垂直な方向)に延在しなおかつ読取開口の平面の一部に位置している長尺焦点へと、焦点合わせされる。プロトタイプをなす読取器の一例においては、長尺焦点は、およそ2mmという長軸寸法と、およそ40μmという短軸寸法と、を有している。これら光学的構成部材は、サブアセンブリ20内に収容されている。図示の実施形態においては、4つの検出器16a〜16dは、ビーム軸線の両サイドにおいて、互いにオフセットされた角度でもって、ビーム軸線に関して放射状の構成でもって、分散配置されている。これにより、読取容積内に存在する物品からの反射によって散乱された光を収集することができる。プロトタイプをなす一例においては、オフセットされた角度は、−70°、−20°、+30°、および、+50°、とされている。ビーム軸線の両サイドの角度は、同じとならないように選択されている。これにより、それら検出器が収集するデータポイントは、できるだけ独立なものとされている。4つのすべての検出器部材(すなわち、検出器)は、共通の平面(すなわち、同一平面)内に配置されている。光検出器部材16a〜16dは、コヒーレントビームが読取容積から散乱された時には、ハウジング上に配置されている物品からの散乱光を検出する。図示のように、光源は、レーザービーム15のビーム軸線がz方向を向くようにして取り付けられている。これにより、レー
ザービーム15は、読取開口内において、直角という入射角度でもって物品を照射することとなる。
【0048】
一般に、焦点深度が大きいことが望ましい。これにより、z方向における物品位置の差異が、読取開口がなす平面内におけるビームサイズの重大な変化を引き起こさない。プロトタイプをなす一例においては、焦点深度は、およそ0.5mmとされている。この焦点深度は、良好な結果を得るためには十分に大きなものである。
【0049】
焦点深度や、開口数や、動作距離、といったようなパラメータは、相互依存している。そのため、スポットサイズと焦点深度との間には周知のトレードオフが存在する。
【0050】
駆動モータ22は、ハウジング12に配置されているとともに、適切なベアリング24または他の手段を介して、矢印26によって示すように、光学サブアセンブリ20を直線的に駆動することができる。よって、駆動モータ22は、読取開口10上にわたってx方向に直線的にコヒーレントビームを駆動するように機能する。これにより、ビーム15を、長尺焦点の長軸に対する直交方向に走査することができる。コヒーレントビーム15が、その焦点のところにおいて、コヒーレントビームに対して直交する平面内における読取容積の投影よりも非常に小さいようなxz平面(図面がなす平面)内の横断面を有することのために、すなわち、読取開口が形成されているハウジング壁の平面内における読取容積の投影よりも非常に小さいようなxz平面(図面がなす平面)内の横断面を有することのために、駆動モータ22の走査により、コヒーレントビーム15は、駆動モータ22の動作時には、読取容積内の多くの様々な部分のサンプリングを行うことができる。
【0051】
図2は、このサンプリングを図示するための図である。図2は、長尺ビームを走査することによってn回にわたって読取容積がサンプリングされる様子を概略的に示す斜視図である。駆動力によって読取開口が走査される際の焦点合わせレーザービームのサンプリング部分は、符号1〜nが付された互いに隣接する矩形によって表されている。サンプリング領域は、長さが‘l’でありかつ幅が‘w’である。データ収集は、駆動系がスリットに沿って走査する際のn個の位置の各々において信号を収集するようにして、実行される。その結果、k×n個のデータポイントからなるシーケンスが収集される。このシーケンスは、読取容積の互いに異なるn個の被照射部分からの散乱に関するものである。また、x方向に沿ってすなわち走査方向に沿ってスリット10に隣接しているとともに、ハウジング12の底面上に形成された距離マーク28が、概略的に図示されている。マークどうしの間のx方向における間隔の一例は、300μmである。
【0052】
詳細に後述するように、それらマークは、長尺焦点のテールによってサンプリングされるとともに、x方向におけるデータの線形化に寄与する。測定は、付加的なフォトトランジスタ19によって実行される。付加的なフォトトランジスタ19は、方向性検出器であって、スリットに隣接したマーク28の領域からの光を収集し得るよう構成されている。
【0053】
代替可能な実施形態においては、マーク28は、光学サブアセンブリ20の一部をなす専用のエンコーダ送信器/検出器モジュール19によって、読み取られる。エンコーダ送信器/検出器モジュールは、バーコード読取器において使用される。例えば、本発明者らは、Agilent HEDS-1500 モジュール(登録商標)を使用した。このモジュールは、焦点合わせされた発光ダイオード(LED)と光検出器とをベースとするものである。モジュール信号は、追加の検出器チャネルとして、プログラム可能な割込コントローラ(PIC)のアナログデジタルコンバータ(ADC)へと、供給される。
【0054】
一例においては、焦点の短軸寸法は、40μmとされ、x方向における走査長さは、2cmとされ、n=500とされる。これにより、k=4の場合には、2000個のデータポイントが与えられる。所望のセキュリティレベルや物品タイプや検出器チャネルの数‘k’や他の要因に応じて、k×nの値に関する典型的な範囲は、100<k×n<10,000であると考えられる。また、検出器の数kを増大させることによっても、取扱いやプリント等といったような処理に基づく物品表面の劣化に対しての、測定の過敏さを低減させ得ることが判明している。実際には、現在までに使用したプロトタイプにおいては、経験則としては、多種多様な表面に関して許容可能な高レベルのセキュリティレベルを与えるためには、独立なデータポイントの合計数、すなわち、k×nの合計数が、500以上であるべきであるということである。
【0055】
図3は、読取器装置の様々な機能的構成部材を概略的に示すブロック図である。モータ22は、電気リンク23を介して、プログラム可能な割込コントローラ(PIC)30に対して接続されている。検出器モジュール16の検出器16a〜16dは、それぞれ対応する電気接続ライン17a〜17dを介して、PIC30の一部をなすアナログデジタルコンバータ(ADC)に対して接続されている。同様の電気接続ライン21は、マーカー読取検出器19を、PIC30に対して、接続している。電気的接続に代えてあるいは加えて、光学的接続や無線接続を使用し得ることは、理解されるであろう。PIC30は、シリアル接続32を介して、パーソナルコンピュータ(PC)34に対してのインターフェースを構成している。PC34は、デスクトップ型PCや、ラップトップ型PCや、携帯型PC、とすることができる。PCに代えて、他のインテリジェントデバイスを使用することができる。例えば、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)を使用することができる。PDAを使用する場合には、読取器エレクトロニクスは、典型的なPDAのコンフォーマントフォームファクターの制約内で付設することができる。例えば、パーソナルコンピュータメモリカード国際協会(PCMCIA)や、コンパクトフラッシュ(CF)(登録商標)や、『ニューカード』およびセキュアーデジタル入出力(SDIO)フォームファクター、といったような制約内で付設することができる。読取器エレクトロニクスカードは、その場合、ホストPDA内へと容易にかつ迅速に接続することができ、これにより、読取器を形成することができる。PDAには、一体化されたた無線電話または無線LANという能力を付設することができ、これにより、データベースに対してアクセスすることができる。PDAには、可能であれば、数値処理能力を付設することができ、これにより、遠隔的に、例えばウェブサーバ上において、データベースに対してアクセスすることができる。他の代替可能な例は、読取器に関する高度な処理能力を有することなく専用のエレクトロニクスユニットを使用することである。その場合、すべての集中的な数値処理は、遠隔的に実行される。
【0056】
PIC30およびPC34は、検出器16a〜16dによって収集された一組をなす複数のデータポイントから物品の識別子を決定し得るような、データ取得処理モジュール36を、集合的に形成する。PC34は、インターフェース接続38を介して、データベース(dB)40に対して、アクセスすることができる。データベース40は、PC34のメモリ内に常駐することができる、あるいは、PC34のドライブ上に格納されることができる。これに代えて、データベース40は、PC34とは別体とすることができ、例えば携帯電話サービスを使用してあるいは無線ローカルエリアネットワーク(LAN)を使用してさらにインターネットと組み合わせることにより、無線通信によってアクセスすることができる。さらに、データベース40は、PC34上において局所的に格納することができるものの、周期的に遠隔源からダウンロードされることができる。
【0057】
データベース40は、既に記録された複数の識別子のライブラリーを収容している。PC34は、使用時にはデータベース40に対してアクセスし得るように、また、読取容積内に配置された物品の識別子に対して適合したものをデータベース40が収容しているかどうかを検証するための比較を行い得るように、プログラムされている。PC34は、また、適合が発見されない場合には、識別子をデータベースに追加し得るように、プログラムすることもできる。この使用モードは、認定ユーザによってのみ実行可能であり、認証目的とは異なるフィールドにおける使用に関してはシステムによって除外することができる。
【0058】
図4は、読取器装置1の斜視図であって、その外形を示している。ハウジング12と、スリット形状の読取開口10とが、明瞭に図示されている。さらに、物理的な位置決め部材42が、図示されている。この部材42は、与えられた形状を有した物品を読取開口10に対しての所定位置に位置決めし得るように、設けられている。図示の例においては、物理的な位置決め部材42は、直角ブラケットという形状のものとされ、文書のコーナ部分またはパッケージングボックスのコーナ部分を、位置決めすることができる。これにより、物品を走査する必要があるときはいつでも、物品の同じ一部を、読取開口10に位置決めし得ることを保証することができる。例えば紙シートやパスポートやIDカードやパッケージングボックスといったような直角コーナーを有した物品の場合には、単純な直角ブラケットあるいは等価物で十分である。
【0059】
文書フィーダを付設することができる。これにより、物品の配置を一定とすることができる。例えば、装置は、文書スキャナシステムやフォトコピーシステムやあるいは文書管理システムに関する任意の従来のフォーマットに従うことができる。パッケージングボックスに関しては、代替的な手法として、適切なガイド穴を設けて対処することとなる。例えば、矩形ボックスの底部を受領するための矩形横断面形状のガイド穴、あるいは、チューブ状ボックス(すなわち、円筒形ボックス)の底部を受領するための円形横断面形状のガイド穴、を設けて対処することとなる。
【0060】
図5は、読取装置の代替可能な実施形態1’を概略的に示す斜視図であって、この読取装置は、複数の物品からなるバッチのスクリーニングを目的としたものである。読取器(あるいは、読取装置)は、コンベヤベルト44を備えている。コンベヤベルト44上には、パッケージング物品を配置することができる。図示の簡略化のために、1つの物品5だけが図示されている。物品5がコンベヤベルト44に乗って移動する際に、物品5上の読取領域10’が、静的なレーザービーム15によって走査される。レーザービーム15は、コンベヤベルト44の側方位置に設置されたレーザー源14によって生成される。レーザー源14は、ペンシル状のコリメート状ビームを生成するための一体型ビーム焦点合わせレンズ(図示せず)を備えている。ビームは、コンベヤベルト44の上方の高さ‘h’のところを、z方向(すなわち、フロアに対して水平な方向)に通過する。これにより、ビームは、高さ‘h’のところにおいて物品5と交差し、読取領域10’上を走査することができる。ビームの横断面形状は、スポット状(すなわち、円形)とすることができる(例えば、一体型球面レンズによって生成された場合)、あるいは、y方向に延在する直線形状のものとすることができる(例えば、一体型円柱レンズによって生成された場合)。ただ1つの物品だけが図示されているけれども、一連をなす複数の同様の物品を搬送し得ること、および、ビーム15によってそれら物品を順次的に走査し得ることは、理解されるであろう。
【0061】
コンベヤをベースとした読取装置の様々な機能的構成部材は、上述したような独立型の読取装置の様々な機能的構成部材と同様である。実質的な唯一の相違点は、走査ビームと物品との間における所望の相対移動を生成するに際して、レーザービームではなく、物品が駆動されている点である。
【0062】
コンベヤをベースとした読取器を、製造ラインにおいて使用し得ること、あるいは、倉庫または商品管理において使用し得ること、を想定することができる。その場合、一連の物品からの読取を行うことによって、複数の識別子を含有したデータベースを設けることができる。参照用として、各物品を、再び走査することができ、これにより、記録された識別子を検証し得ることを、再確認することができる。これは、互いに直列的に動作する2つのシステムによって、行うことができる。あるいは、各物品を2回にわたって通過させるような1つのシステムによって、行うことができる。また、バッチスキャンを、店舗販売時点情報管理(POS)に適用することができる。あるいは、バッチスキャンを、POS装置構成部材に基づいた読取器装置を使用して行うことができる。
【0063】
上記の実施形態は、小さな横断面積のコヒーレント光ビームによる局所的な励起と、局所的励起箇所を含有した非常に大きな領域上にわたって散乱された光信号を受光する検出器と、の組合せをベースとしている。これに代えて、方向性検出器をベースとした機能的に等価な光学システムを構成することができる。その場合、方向性検出器は、ずっと大きな領域が励起された際に、局所的な箇所だけからの光を収集する。
【0064】
図6Aは、本発明に基づく読取器に関して、そのようなイメージ化構成を概略的に示す側面図である。この構成は、コヒーレントビームによるブランケット照射(あるいは、全体的な照射、あるいは、包括的な照射)と、方向性光収集と、をベースとしている。アレイ型検出器48が、円柱マイクロレンズアレイ46と組み合わせて、配置されている。これにより、検出器アレイ48の隣接ストリップは、読取容積内の対応する隣接ストリップからの光だけを収集する。図2を参照すると、各円柱マイクロレンズは、n個のサンプリングストリップのうちの1つだけから光信号を収集し得るよう構成されている。そして、コヒーレント照射は、読取容積全体にわたってのブランケット照射として、行うことができる(ブランケット照射の様子は、図示されていない)。
【0065】
また、場合によっては、局所的な励起と局所的な検出を組み合わせたハイブリッドシステムも、有効なものとすることができる。
【0066】
図6Bは、本発明に基づく読取器に関し、そのようなハイブリッド型イメージ化構成の光学的フットプリントを示す概略的な平面図である。この場合、複数の方向性検出器が、長尺ビームによる局所的な照射と組み合わせて、使用されている。この実施形態は、図1の実施形態に関連して、方向性検出器が使用されているような変形例であると見なすことができる。この実施形態においては、3列をなす方向性検出器が使用されている。各列は、‘l×w’という励起ストリップに沿った様々な部分から光を収集し得るものとされている。読取容積がなす平面からの収集領域は、破線の円によって示されている。すなわち、例えば、第1列をなす検出器は、励起ストリップの上部からの光信号を収集し、第2列をなす検出器は、励起ストリップの中央部分からの光信号を収集し、第3列をなす検出器は、励起通りの下部からの光信号を収集する。検出器の各列は、直径がおよそl/mという円形の収集領域を有するものとして、図示されている。ここで、mは、励起ストリップの分割数である。この例においては、m=3とされている。よって、独立したデータポイントの数は、所定の走査長さlに関して、m倍に増大させることができる。後述するように、方向性検出器の1つまたは複数の異なる列は、スペックルパターンをサンプリングするための光信号を収集するという目的とは異なる目的のためにも、使用することができる。例えば、複数の列のうちの1つの列を使用することによって、バーコードスキャンのために最適化された態様で光信号を収集することができる。この場合には、一般に、その列は、1つの検出器だけを備えているだけで十分である。なぜなら、対照のためにだけに走査する際に相互相関を得ることの利点がないからである。
【0067】
本発明を実行するのに適した様々な読取器装置の主要な構造的構成部材および機能的構成部材に関して上述した。以下においては、識別子を決定するために使用される数値的処理に関して説明する。数値的処理の大部分が、コンピュータプログラム内において実施されることは、理解されるであろう。そのようなコンピュータプログラムは、PIC30に属するいくつかの構成部材と協働しつつ、PC34上で実行される。
【0068】
図7は、紙の表面に関する顕微鏡イメージであって、このイメージは、およそ0.5×2mmという面積をカバーしている。この図は、例えば紙といったように巨視的にはフラットな表面が、多くの場合、微視的には凹凸を有していることを示している。紙の場合には、表面は、多数のウッドファイバが相互噛合してなるネットワークから紙が形成されていることの結果として、微視的には、大きな凹凸を有している。この図は、さらに、ウッドファイバが、およそ10μmという特徴的長さスケールを有していることを示している。この寸法は、コヒーレントビームの光学的波長に対して適切な関係を有している。これにより、回折を引き起こすことができ、よって、ファイバの向きに依存したプロファイルを有して散乱するスペックルおよび拡散を引き起こすことができる。よって、読取器が、特定種類の商品に合わせて構成される場合には、レーザーの波長を、走査対象をなす商品の構造的に特徴的なサイズに合わせ得ることは、理解されるであろう。また、この図から、個々のウッドファイバの配列に依存しているという点において、各々の紙の表面構造が独自のものであることが、明白である。よって、各々の紙は、自然法則によって支配されたプロセスによって形成されたことの結果として独自の構造を有しているという点において、例えば従来技術による特殊樹脂トークンや磁性材料成膜体といったような特殊トークンとは、相違しないものである。同じことは、他の多くのタイプの物品にも、あてはまる。
【0069】
以下においては、物品の表面(あるいは、透過の場合には、物品の内部)の天然構造の利点を享受したデータ収集および数値的処理について、説明する。
【0070】
図8Aは、図1の読取器における光検出器16a〜16dの中の1つのものから得られた生データを示している。このグラフは、ポイント番号n(図2を参照されたい)に対して、任意単位(a.u.)でもって信号強度Iを、プロットしている。I=0〜250の間において変動している上側の曲線は、光検出器16aからの生の信号データを表している。下側の曲線は、28番目のマーカー(図2を参照されたい)からピックアップされたエンコーダ信号であって、I=50の周辺である。
【0071】
図8Bは、エンコーダ信号によって線形化した後における、図8Aの光検出器データを示している(注記:x軸が図8Aとは異なるスケールではあるけれども、これは、重要ではない)。加えて、平均強度が計算されており、強度の値から差し引かれている。よって、処理後のデータ値は、ゼロの上下において変動している。
【0072】
図8Cは、デジタル化の後に、図8Bのデータを示している。採用されたデジタル化スキームは、単純な2値デジタル化である。この場合、正の強度値が、1という値にセットされ、負の強度値が、0という値にセットされた。これに代えて、多くの状態を有したデジタル化を使用し得ること、あるいは、他の任意のデジタル化手法を使用し得ることは、理解されるであろう。デジタル化に際しての主要な重要な特徴点は、首尾一貫して同じデジタル化スキームが適用されていることだけである。
【0073】
図9は、走査に基づいて物品の識別子を生成する手法を示すフローチャートである。
【0074】
ステップS1は、データ収集(あるいは、データ採取、あるいは、データ取得)ステップである。このステップにおいては、各々の光検出器の光学的強度を、走査の全体にわたって、約1ms間隔で取得する。同時に、エンコーダ信号を、時間の関数として取得する。走査モータが、高度な線形精度を有している場合(例えば、ステップモータのようなものである場合)には、データの線形化を不要とし得ることに注意されたい。データは、ADC31からデータを採取することにより、PIC30によって取得される。データポイントは、PIC30からPC34に対してリアルタイムで転送される。これに代えて、データポイントは、PIC30のメモリ内に格納することができ、その後、走査終了後に、PC34へと転送することができる。各走査時に収集するれる検出器チャネルごとのデータポイントの数nは、以下においては、Nとして定義される。さらに、値a(i) は、iを1からNとしたときに、光検出器kに基づいて第i番目に格納された強度値として定義される。そのような走査から得られた2つの生データセットの例が、図8Aに図示されている。
【0075】
ステップS2においては、数値的補間を行うことによって、a(i) を局所的に拡大したり収縮したりする。これにより、エンコーダの変位を、時間的に均等な間隔のものとする。これにより、モータ速度の局所的変動を修正する。このステップは、コンピュータープログラムによって、PC34内で実行される。
【0076】
ステップS3は、付加的なステップである。実行される場合には、このステップにおいては、データを、時間に関して数値的に微分する。また、データに対して、弱いスムージング機能を適用することが望ましい。微分は、凹凸の大きな表面に対しては、有効なものであり得る。なぜなら、微分により、相関した(スペックル)寄与に対しての、信号からの非相関的な寄与を低減し得るからである。
【0077】
ステップS4は、各々の光検出器に関し、N個のデータポイントにわたって、記録された信号の平均値をとるというステップである。各々の光検出器に関し、この平均値を、すべてのデータポイントから差し引く。これにより、データを、ゼロという強度の周囲に分布させる。図8Bを参照されたい。図8Bは、線形化という操作と、計算で求めた平均値を差し引くという操作と、を行った後における、走査データセットの一例を示している。
【0078】
ステップS5においては、アナログをなす光検出器データをデジタル化し、これにより、走査のデジタル識別子表示を計算する。デジタル識別子は、a(i)>0であれば‘1’という2値を割り当てるとともにa(i)≦0であれば‘0’という2値を割り当てるというルールを適用することによって、得られる。デジタル化されたデータセットは、iを1からNとしたときに、d(i) として定義される。
【0079】
ステップS6においては、『サムネイル状の』デジタル識別子を作成する。これは、a(i)のフーリエ変換を計算することによって、行われる。振幅スペクトルは、A(i)と称され、位相スペクトルは、Φ(i)と称される。その後、振幅スペクトルA(i)がデジタル化される。デジタル化された振幅スペクトルは、D(i) と表記される。このデジタル化に際し、ステップS5において上述したフルのデジタル識別子を得るのに用いた単純なルールを適用し得ないことに注意されたい。なぜなら、振幅スペクトルが常に正ではないからであり、ゼロに対する単純なしきい値テストを、デジタル化に際して使用し得ないからである。本発明者らは、サムネイル状の識別子に関して、2つのデジタル化方法を提案する。第1方法においては、しきい値は、振幅スペクトルの各々のチャネルに関して定義される。一組をなす複数のしきい値は、g(i)と表記される。その後、振幅スペクトルが、A(i)>g(i)であれば1を割り当てるとともにA(i)≦g(i)であれば0を割り当てるというルールを適用することによって、デジタル化される。しきい値g(i)は、様々な識別子のサンプルを考慮することにより、さらに、振幅スペクトルの各チャネルに関する平均値をとることにより、決定することができる。第2方法においては、iに関して振幅スペクトルA(i)を微分し、これにより、A’(i)を作成する。これは、ここでは、正と負との双方の値を有することとなる。その後、振幅スペクトルを、A’(i)>0であれば1を割り当てるとともにA’(i)≦0であれば0を割り当てるというルールを適用することによって、デジタル化する。この場合、A(i)に代えて、A’(i)を、データベース内においてサムネイルとして格納することが、より効率的である。さもなければ、データベースを検索するたびに、すべての記録内容を微分する必要が生じることとなる。その後、『サムネイル状の』デジタル識別子を、D(i) に基づいて、最初のLビット(Lの典型的な値は、128である)をとることによって、または、D(i) の各第mビットを選択することによって、形成する。これにより、長さがLビット(mの典型的な値は、4である)のサムネイル状のデジタル識別子が形成される。
【0080】
ステップS7は、複数の検出器チャネルが存在する場合に適用可能であるような、付加的なステップである。追加的な構成要素は、様々な光検出器から得られる強度データどうしの間で計算される相関構成要素である。2つのチャネルが存在する場合には、1つの可能な相関係数があり、3つのチャネルが存在する場合には、最大で3つの可能な相関係数があり、4つのチャネルが存在する場合には、最大で6つの可能な相関係数があり、等々である。相関係数は、有効である。なぜなら、それらが、材料のタイプに関しての良好な指標であることが判明しているからである。例えば、所定タイプのパスポートやレーザープリンタ用紙といったような特定のタイプの文書に関しては、相関係数は、常に、予想可能な範囲内にあるように思われる。正規化された相関係数は、kおよびlを互いに異なる数とし、なおかつ、lを、すべての光検出器チャネル番号にわたって変化するものとした際に、a(i)とa(i)との間において計算することができる。正規化された相関関数Γは、以下の式によって定義される。
【0081】
【数1】

【0082】
認証プロセスにおける相関係数の使用については、後述する。
【0083】
ステップS8は、さらなる付加的なステップである。このステップにおいては、信号強度分散を表す単純強度平均値を計算する。これは、様々な検出器に関する各平均値の全体的な平均値とすることができる、あるいは、例えばa(i) の二乗平均平方根(rms)といったような各検出器に関する平均値とすることができる。上述した読取器の場合のように、標準的な発生頻度の両サイドにおいて検出器が対をなして配置されている場合には、対をなす各検出器に関する平均値を使用することができる。強度値は、材料のタイプに関する良好な粗いフィルタであることが判明している。なぜなら、強度値が、試料の全体的反射率および全体的表面粗さに関しての単純な標示であるからである。例えば、平均値の除去後において、強度値として、非正規化rms値を使用することができる。すなわち、DC背景を使用することができる。
【0084】
物品を走査することから得られた識別子データは、識別子データベース内に保持された記録内容に対して比較することができこれにより認証を行うことができる、および/または、データベース内に書き込むことができこれにより識別子に関する新たな記録内容を追加して既存のデータベースを拡充することができる。いずれの場合においても、フーリエ変換の振幅スペクトルに由来するサムネイルと、フルの(あるいは、完全な)デジタル識別子と、が使用される。
【0085】
新たなデータベース記録内容は、各々の光検出器チャネルに関し、ステップS5において得られたデジタル識別子と、ステップS6において得られたそのサムネイルバージョンと、を備えており、付加的には、ステップS7において得られた相関係数と、ステップS8において得られた1つまたは複数の平均値と、を備えている。サムネイルは、迅速な検索のために最適化された個別の専用のデータベース上に格納することができ、残りのデータ(サムネイルを含む)は、メインデータベース上に格納することができる。
【0086】
図10は、走査から得られる物品の識別子を識別子データベースに照らして認証するための方法を示すフローチャートである。
【0087】
迅速な認証プロセスを提供し得るよう、認証プロセスは、2つの主要なステップにおいて実行される。第1主要ステップにおいては、ここで説明するように、走査データ(および、付加的には、計算された平均値および相関係数に基づくプレスクリーニングデータ)のフーリエ変換の振幅成分に由来するサムネイルを使用する。第2主要ステップにおいては、走査されたフルのデジタル識別子と、格納されたフルのデジタル識別子と、互いに比較する。
【0088】
認証ステップV1は、認証プロセスの上記第1主要ステップであって、このステップにおいては、上記プロセスに従って物品を走査する、すなわち、走査ステップS1〜S8を実行する。
【0089】
認証ステップV2においては、走査ステップS6に関して上述したようにして得られたような、走査信号のフーリエ変換の振幅成分に由来するサムネイルを使用して、候補適合を求める。認証ステップV2においては、各サムネイルエントリを採取し、jを、走査領域の配置誤差を補償し得るよう変更されるビットオフセットとした場合に、サムネイルエントリと、t(i+j) と、の間の適合ビット数を評価する。jの値が決定され、その後、最大の適合ビット数を与えるサムネイルエントリが、決定される。これは、さらなる処理のために使用される『ヒット』である。これの変形例においては、フルのデジタル識別子に基づくフルのテストのために、複数の候補適合を試すという可能性を備えている。サムネイルの選択は、例えば10個といったような最大数の適合候補まで試すといったような、任意の適切な基準に基づいて行うことができる。各適合候補は、ビット数に関して例えば60%といったような特定のしきい値パーセンテージより大きな適合を有したサムネイルとして、定義される。最大数より多くの適合候補が存在する場合には、最良の10個だけが試される。適合候補が検出されない場合には、物品は拒絶される(すなわち、認証ステップV6へジャンプして、不合格結果が報告される)。
【0090】
サムネイルをベースとしたこの検索方法は、以下の理由のために、全体的に改良された検索速度をもたらす。フーリエ変換された際には、擬似乱数のビットシーケンスは、振幅スペクトル内にいくつかの情報を付帯しているとともに、位相スペクトル内にいくつかの情報を付帯している。何らかのビットシフトがあれば、位相スペクトルに対してだけ影響を及ぼし、振幅スペクトルには、影響を及ぼさない。したがって、振幅スペクトルは、ビットシフトに関する知見を必要とすることなく、適合を求めることができる。いくつかの情報が、位相スペクトルを放棄する際に失われるけれども、十分な情報が残存しており、これにより、データベースに対しての粗い適合を得ることができる。これにより、ターゲットに対しての1つまたは複数の推定の適合を、データベース内に配置することができる。これら推定適合の各々は、その後、新しい走査に対して、従来的な現実空間方法を使用して、適切に比較することができる。
【0091】
認証ステップV3は、付加的なプレスクリーニングテストであって、記録内容に関して格納されたフルのデジタル識別子を走査デジタル識別子と比較して分析する前に、実行される。このプレスクリーニングにおいては、走査ステップS8において得られたrms値を、ヒットのデータベース記録内の対応する格納された値に対して、比較する。それぞれの平均値が、所定範囲内において一致しない場合には、『ヒット』は、さらなる処理において拒絶される。その場合、物品は、認証されないものとして、拒絶される(すなわち、認証ステップV6へジャンプして、不合格結果が報告される)。
【0092】
認証ステップV4は、さらなる付加的なプレスクリーニングテストであって、このステップは、フルのデジタル識別子を分析する前に実行される。このプレスクリーニングにおいては、走査ステップS7において得られた相関係数を、ヒットのデータベース記録内における対応する格納された値に対して、比較する。それぞれの相関係数が所定範囲内において一致しない場合には、『ヒット』は、さらなる処理において拒絶される。その場合、物品は、認証されないものとして、拒絶される(すなわち、認証ステップV6へジャンプして、不合格結果が報告される)。
【0093】
認証ステップV5は、走査ステップS5において得られた走査デジタル識別子と、ヒットのデータベース記録における対応する格納された値と、の間における主要な比較である。格納されたフルのデジタル化識別子ddB(i) は、k個の検出器チャネル上におけるq個の隣接したビットからなるn個のブロックへと分割される。すなわち、1個のブロックあたりにつき、qk個からなるビットが存在する。qに関する典型的な値は、4であり、kに関する典型的な値は、4である。これにより、典型的には、1つのブロックが、16個からなるビットから、形成される。qk個からなるビットは、その後、格納されたデジタル識別子ddB(i+j) 内における対応するqk個からなるビットと比較される。ブロック内における適合ビットの数が、所定しきい値zthresh以上である場合には、適合ブロックの数を、インクレメントする。zthreshに関する典型的な値は、13である。これが、すべてのn個のブロックに関して繰り返される。この全部のプロセスが、適合ブロックの最大数が見つかるまで、走査領域の配置誤差を補償し得るよう様々なオフセット値jに関して繰り返される。Mを、適合ブロックの最大数と定義すれば、偶発的な適合確率は、評価によって計算される。
【0094】
【数2】

【0095】
ここで、sは、任意の2つのブロックの間における偶発的な適合確率(これは、
threshold の選択された値に依存する)であり、Mは、適合しているブロックの数であり、p(M)は、M個以上のブロックが偶発的に適合する確率である。sの値は、例えば紙文書等の数回の走査といったような同様の材料からなる異なる対象物の走査から得られたデータベース内のブロックを比較することによって決定される。q=4、k=4、および、zthreshold =13とした場合、本発明者らは、sの典型的な値が0.1であることを見出した。qk個からなるビットが完全に独立であるならば、確率論的には、
threshold =13の場合には、s=0.01であるはずである。本発明者らが経験的により大きな値を見つけたという事実は、k個の検出器チャネル間の相関関係のためであり、また、有限のレーザースポット幅に基づくブロック内の隣接ビット間の相関関係のためである。紙に関する典型的な走査は、紙に関するデータベース入力内容(あるいは、デジタルベースエントリ)に対する比較によって、510個というブロック総数の中から、およそ314個という適合ブロック数をもたらした。上記の式においてM=314,n=510,s=0.1を代入することにより、10−177という偶発的な適合確率が得られる。
【0096】
認証ステップV6においては、認証プロセスの結果を報告する。認証ステップV5において得られた確率結果は、判断基準が所定確率しきい値とされたような、合格/不合格テストにおいて使用することができる。この場合、確率しきい値は、システムによってレベルを設定することができる、あるいは、ユーザーによって選択されたレベルに設定される可変パラメータとすることができる。これに代えて、確率結果を、信頼性レベルとして、ユーザーに対して提供することができる。信頼性レベルは、確率そのものという生データという形態や、あるいは、相対的な用語(例えば、非適合/粗末な適合/良好な適合/優秀な適合)を使用した修正した形態や、あるいは、他の分類を使用した修正した形態、とすることができる。紙に関しての本発明者らによる実験においては、本発明者らは、一般に、75%のビットの一致の場合に、良好な適合または優秀な適合という結果を見出した。また、50%のビットの一致の場合に、非適合という結果を見出した。
【0097】
例示するならば、本発明者らは、フーリエ変換振幅スペクトルからなる128ビットサムネイルを各記録内容が含有してなる100万の記録内容を備えてなるデータベースを、2004年時点での標準的仕様のPCコンピュータによって、1.7秒で検索し得ることを見出した。1000万個のエントリ数(あるいは、記録内容数)であれば、17秒で検索することができる。本発明者らは、高性能のサーバコンピュータであれば、これよりも10倍速い結果が得られるものと、予想している。
【0098】
以下においては、本発明のさらなる実施態様について、説明する。
【0099】
図11は、バーコードを付帯したIDカード50を示している。IDカードは、さらに、例えば写真やホログラムといったような独立のセキュリティ要素54を付帯することができる、あるいは、個人に特有のいくつかの生物測定情報を備えることができる。バーコードは、走査領域56の一部として示されている。走査領域56は、IDカード上において実際には線引きされていないことのために、破線で図示されている。走査領域は、バーコードを含有している下部領域52と、ブランクからなる上部領域58と、に分割される。IDカード50は、図6Bに図示したタイプの読取器装置によって走査され得るように、構成されている。その場合、複数の方向性検出器列のうちの1つを使用することにより、バーコード領域52を走査することができ、他の2つの列を使用することにより、上部領域58を走査することができる。ここに説明するように、バーコードの目的は、粗な記録位置決め器をエンコードすることであり、それによって、データベースに対するアクセスのスピードアップすることである。
【0100】
多くの応用においては、100万〜1000万というエントリ数のデータベースで、十分である。しかしながら、いくつかの応用においては、より多くのエントリ数が、必要とされるかもしれない。また、より大きなデータベースが技術的に可能であることに、注意されたい。なぜなら、標準的な最新の(2004年時点の仕様)100GBのハードディスクであれば、10億〜20億というエントリ数を潜在的に格納し得るからである。このようなエントリ数は、最も人口の多い国さえのあらゆる人に関する文書にとっても、十分な数である。現在の技術では、そのような大きなデータベースの検索時間は、上述したような基本的な検索テクニックを使用した場合には、最初の走査と再走査との間における見当合わせ誤差によって引き起こされる処理時間を実質的に除去し得るようフーリエ変換振幅スペクトルに由来するサムネイルを使用することの速度的利点をたとえ利用した場合でさえ、潜在的にひどく長いものとなる。
【0101】
比較的短いもの(12〜16ビット)とし得るバーコードは、スペックル識別子を読むのと同じ走査レーザーによって読み込まれる。このバーコードは、データベース内における記録位置決め器として、機能する。バーコードは、正確なデータベース入力内容を識別するものではなく、単に、データベースの適切な『章』を指し示すだけであるものの、これにより、およそ100万個の記録内容からなる1つの章の中からの適切な識別子の識別を可能として、上述の迅速な検索アルゴリズムを可能とする。12ビットのバーコードは、4096個という互いに異なる章の識別を可能とし、これにより、最大で40億個という記録内容を備えてなるデータベースの中から適合を見出すことを可能とする。
【0102】
粗な(すなわち、詳細ではない)記録位置決め器としてだけバーコードを使用することには、2つの利点がある。第1に、バーコードは、従来的な低精度の1Dバーコードとし得ることである。バーコードは、厳しい印刷要求に応じる必要もなく、また、より高級な2D読取器のためのものとする必要もない。第2に、バーコードが、100万程度のエントリ数からなるある1つの『章』内へとデータベースエントリを位置決めするだけであることのために、非対称の暗号化アルゴリズムによってバーコードを暗号化する必要がないことである。
【0103】
バーコードは、本発明による方法に基づいてIDカードのブランク上部領域を走査することによってIDカードの製造時に適用される。すなわち、デジタル識別子を格納するのに使用される記録内容に対して章番号が割り当てられ、その後、記録内容の章番号をエンコードしたバーコードを、下部領域52に印刷する。よって、IDカードに対しては、物品の固有構造の、すなわち、上部領域58の表面構造の、デジタル識別子のための、粗な記録位置決め器が、ラベル付け(あるいは、標識付け)される。
【0104】
バーコード自体を、上述した個別の線形化マークに代えてあるいは加えて、走査の線形化のために使用し得ることに注意されたい。これは、読取器が、例えば現金自動預け払い機(ATM)において使用されている種類のローラードライブといったような、線形性の貧弱な駆動機構を備えたものである場合に、特に有効なものとすることができる。貧弱な線形線形性を有した駆動機構に対する許容可能性により、読取器を、最小限の修正でもって、例えばATMといったような多くのカード読取装置内へと組み込むことができる。実際、バーコードは、あるいは、ダミーのマーキングでさえ、カード上に印刷することができ、これにより、暗号化を全く使用する必要なく、線形化という目的だけであれば達成することができる。その場合、データベースを参照することによって、あるいは、例えばチップ(いわゆるスマートカード)からデータを採取するといったようにしてカードの他の部分からデータを採取することによって、認証を実行することができる。
【0105】
粗な記録位置決め器を格納するためにバーコードを使用することに加えて、バーコードは、物品に対して、その固有の物理的特性から得られる物品自身の識別子をエンコードしたラベル(例えば、紙や厚紙物品やプラスチック物品を含めた任意の印刷可能物品)を標示するのに使用することができる。
【0106】
この場合、公的に公知のエンコード化プロトコルに従うバーコードまたは他のラベルの公的性質が与えられれば、バーコードの作成のために非対称の暗号化アルゴリズムを使用して、識別子を確実に変換し得ることが好ましい。すなわち、例えば周知のRSAアルゴリズムに従うものといったような、一方向関数が使用されることが好ましい。好ましい実施態様は、ラベルが、公開キー/私的キー暗号化システムにおいて公開キーを標示することである。システムが様々な多数の顧客によって使用される場合には、各々の顧客が、自身の私有キーを有していることが好ましい。これにより、私有キーの公開は、1人の顧客に影響するだけである。よって、ラベルは、公開キーをエンコードし、私有キーは、許可された人に対してセキュリティを付与する。
【0107】
ラベル化アプローチのさらに想定される利点は、認証に不慣れな初心者のユーザーであっても、特別の知識を要することなく、認証を行い得るということである。ユーザーにとっては、読取器装置が単なるバーコードスキャナであることは自然であり、バーコードを走査することは自然である。
【0108】
そのようなラベル化スキームを使用することにより、データベースに対して全くアクセスすることなく、単にラベルだけに基づいて、物品を認証することができる。これは、概念的には、参考文献[3]において報告されているような偽造紙幣スキームと同様のアプローチである。
【0109】
ラベルが物品自身の識別子をエンコードするそのようなラベル化スキームは、上述したように、ラベルが粗な記録位置決め器を表すラベル化スキームと組み合わせて、使用することができる。例えば、バーコードは、デジタル識別子のサムネイル形態をエンコードすることができ、これを使用することにより、データベースを参照したスクリーニングを行うよりも前に、迅速なプレスクリーニングを行うことができる。上述したように、これは、実際的には、非常に重要なアプローチであり得る。なぜなら、いくつかのデータベース応用においては、潜在的に、記録内容の数が、巨大なもの(例えば、数百万)となり得るからであり、検索手法自体が重要なものとなり得るからである。例えばビットストリングの使用といったような本来的に高速度の検索技術は、重要なものとなり得る。
【0110】
上述したように、サムネイルをエンコードしたバーコードに代わるものとして、バーコード(または他のラベル)は、記録位置決め器をエンコードすることができる、すなわち、索引またはブックマークとなることができる。これを使用することにより、さらなる比較に際して、データベース内における適切な識別子を迅速に検出することができる。
【0111】
他の変形例においては、バーコード(または他のラベル)が、サムネイル識別子をエンコードする。例えば、上述したように、走査データのフーリエ変換振幅成分に由来するサムネイル識別子をエンコードする。これを使用することにより、データベースが利用できない場合(例えば、一時的なオフライン、あるいは、インターネットにアクセスできないような異常な遠隔地で走査が行われた場合)には、信頼性は高くないもののリーズナブルな適合を得ることができる。データベースが利用可能となった時点で、その同じサムネイルを使用することにより、メインデータベース内において迅速な記録位置決めを行うことができ、これにより、より信頼性の高い認証を実行することができる。
【0112】
図12は、IDカード50を概略的に示す平面図であって、このIDカード50は、データ付帯チップ55が組み込まれているようないわゆるスマートカードである。チップ55によって付帯されたデータは、識別子エンコードデータを備えている。このデータは、走査領域56から得られるIDカード50に特有の表面特性から得られたデジタル識別子をエンコードしたものである。走査領域56は、この例においては、破線によって示されているように境界を有さないものである。しかしながら、走査領域56は、任意の所望の態様によって装飾することができる。例えば、写真を備えることができる。
【0113】
図13は、保証文書50を概略的に示す平面図である。走査領域56は、互いに上下に配置された2つのバーコードラベル52a,52bを備えている。バーコード52aは、固有の表面特性から得られるデジタル識別子をエンコードしたものであり、バーコード52bは、図11のIDカードの例の場合同様に、粗な記録位置決め器をエンコードしたものである。バーコード52a,52bは、デジタル識別子走査領域58の上下に配置されている。デジタル識別子走査領域58は、概略的に図示されているように、個人の署名59のための領域である。少なくとも走査領域58は、好ましくは、不正開封防止用に、透明な接着性カバーによって被覆されている。
【0114】
他の多くの商業的な例を想定することができる。図11〜図13に関して例示されたものは、単なる例示に過ぎない。
【0115】
上記の詳細な説明により、材料に対してコヒーレント放射を照射することにより、さらに、材料に固有の構造によるコヒーレント放射の散乱を測定することに基づく一組をなす複数のデータポイントを収集することにより、さらに、それら一組をなす複数のデータポイントから物品の識別子を決定することにより、例えば紙や厚紙やプラスチックといったような材料からなる物品を認識し得る手法を、理解されるであろう。
【0116】
また、走査領域が、そのサイズという点において、また、物品上における位置という点において、本質的に任意のものであることは、理解されるであろう。必要に応じて、走査は、例えばより大きな2次元領域をカバーし得るような直線的ラスタースキャンとすることができる。
【0117】
さらに、物品に対してコヒーレント放射を照射することにより、さらに、物品の固有構造によるコヒーレント放射の散乱の測定に基づく一組をなす複数のデータポイントを収集することにより、さらに、それら一組をなす複数のデータポイントから製品の識別子およびサムネイルを決定することにより、製品のパッケージングによって製品を識別し得ることや、あるいは、文書を識別し得ることや、あるいは、衣類のアイテムを識別し得ることは、理解されるであろう。
【0118】
数値処理に関する上記説明により、ビーム局在化の悪化(例えば、コヒーレントビームの最適ではない焦点合わせに基づく読取容積内におけるビーム横断面積の拡大)が、システムにとって深刻なものではなく、単に偶発的な適合確率を増やすことによってその性能を少し低下させるに過ぎないことは、理解されるであろう。よって、装置は、擾乱に関して頑丈なものであって、そのような場合であっても、突発的な不安定性をもたらすことがなく、性能的に安定した悪化しかもたらさないものである。いずれにせよ、読取器のセルフテストを単純に実行することができる。これにより、あらゆる装置的問題点に気付くことができる。収集データを自動補正することにより、応答データ内の特徴点サイズを最小化することができる。
【0119】
例えば、紙または厚紙に対して適用し得るさらなるセキュリティ処置は、走査領域上にわたって、透明なシール(例えば粘着テープ)を接着することである。接着剤は、本来的な保持されるべき直下の表面構造が破壊されなければ除去し得ないように十分に強力なものが、選択される。これにより、認証のための走査を実行することができる。同じアプローチとして、カード上に、透明ポリマーフィルムまたは透明プラスチックフィルムを配置することができる。あるいは、同様の材料を封入することができる。
【0120】
上述したように、読取器は、本発明の実施に際して特に好適であるように構成された装置によって具現することができる。他の場合には、読取器は、例えばフォトコピー機械や文書スキャナや文書管理システムやPOS装置やATMや航空券搭乗手続きカード読取装置や他の装置といったような他の機能を主として構成された装置に対して、適切な補助的構成部材を追加することによって、構成されることとなる。
【0121】
要約すると、デジタル識別子は、紙や厚紙やあるいは他の物品上においてコヒーレントビームを走査することによって得られたさらに散乱を測定することによって得られた一組をなす複数のデータポイントをデジタル化することにより、得られる。また、サムネイル状のデジタル識別子が、一組をなす複数のデータポイントのフーリエ変換の振幅スペクトルをデジタル化することによって、決定される。これにより、複数のデジタル識別子およびそれらのサムネイルからなるデータベースを、構築することができる。その後、物品の信頼性を、物品を再走査してそのデジタル識別子およびサムネイルを決定しさらにその後データベースを検索して適合を探すことにより、検証することができる。検索は、フーリエ変換サムネイルに基づいて行われる。これにより、検索速度を改良することができる。速度は、擬似乱数のビットシーケンスにおいては、いかなるビットシフトであっても、極座標内で表現されたフーリエ変換の位相スペクトルに対してしか影響を及ぼすことがなく、振幅スペクトルには影響を及ぼさないことにより、改良される。したがって、サムネイル内に格納された振幅スペクトルは、最初の走査時と再走査時との間における見当合わせ誤差(あるいは、位置合わせ誤差、あるいは、位置決め誤差)に起因して発生した未知のビットシフトに関する知見を必要とすることなく、適合を求めることができる。
【0122】
当業者であれば、上記において言及した特定の例示に加えて、本発明の他の多くの変形例を想起されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明による読取装置を概略的に示す側面図である。
【図2】長尺ビームを走査することによって読取装置がn回にわたって読取容積をサンプリングする様子を概略的に示す斜視図である。
【図3】読取装置の様々な機能的構成部材を概略的に示すブロック図である。
【図4】読取装置の外面を示す斜視図である。
【図5】読取装置の代替可能な実施形態を概略的に示す斜視図である。
【図6A】本発明による読取装置に関する代替可能なイメージ化構成を概略的に示す側面図であって、このイメージ化構成は、方向性光収集と、ブランケット照射と、をベースとしている。
【図6B】本発明による読取装置に関するさらなる代替可能なイメージ化構成における光学的フットプリントを概略的に示す平面図であって、このイメージ化構成においては、複数の方向性検出器が、長尺ビームによる局所的照射と組み合わせて、使用されている。
【図7】紙の表面に関する顕微鏡イメージであって、このイメージは、およそ0.5×2mmという面積をカバーしている。
【図8A】図1の読取装置を使用した単一の光検出器からの生データを示すグラフであって、光検出器の信号と、エンコーダ信号と、が示されている。
【図8B】エンコーダ信号に対する線形化と振幅の平均化とを行った後における図8Aの光検出器データを示すグラフである。
【図8C】平均化レベルに基づくデジタル化を行った後における図8Bのデータを示すグラフである。
【図9】物品の識別子を走査から生成するための手法を示すフローチャートである。
【図10】走査から得られた物品の識別子を識別子データベースに対して検証し得る手法を示すフローチャートである。
【図11】測定された固有の表面特徴点から得られたデジタル識別子をエンコードするバーコードラベルを付帯したIDカードを概略的に示す平面図である。
【図12】測定された固有の表面特徴点から得られたデジタル識別子をエンコードするチップ付帯データを備えたIDカードを概略的に示す平面図である。
【図13】測定された固有の表面特徴点から得られたデジタル識別子をエンコードする2つのバーコードラベルを付帯した保証文書を概略的に示す平面図である。
【符号の説明】
【0124】
1 読取装置、読取器、、読取器装置
14 レーザー源
15 レーザービーム
16 検出器構成

【特許請求の範囲】
【請求項1】
読取容積内に配置された物品を走査するための方法であって、
前記読取容積によってコヒーレント光を散乱させた際に得られた複数の強度信号から一組をなす複数のデータポイントを収集し、その際、前記様々なデータポイントを、前記読取容積の互いに異なる部分から散乱されたものとし;
前記一組をなす複数のデータポイントをデジタル化することによって、物品のデジタル識別子を決定し;
前記一組をなす複数のデータポイントのフーリエ変換の振幅成分をデジタル化することによって、物品のサムネイル状デジタル識別子を決定する;
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、
さらに、前記デジタル識別子を、そのサムネイル状デジタル識別子と一緒に、データベース内に格納することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法において、
前記デジタル識別子を、そのサムネイル状デジタル識別子と一緒に、前記データベース内に既に格納されたものの中にそれらデジタル識別子およびサムネイル状デジタル識別子と同じものが存在していない場合に、前記データベース内に格納することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項2または3記載の方法において、
さらに、物品に対して、前記データベース内における前記デジタル識別子の検出を補助するための粗な記録位置決め器をエンコードしてなる機械読取可能なマーキングによって、ラベル付けすることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法において、
さらに、
複数のデジタル識別子およびそれらのサムネイル状デジタル識別子が既に記録されてなるデータベースを準備し;
前記データベースを検索するに際して、前記決定されたサムネイル状デジタル識別子と、前記既に記録されたサムネイル状デジタル識別子と、の間の比較を実行することによって、少なくとも1つの適合候補を探し;
前記決定されたデジタル識別子と、前記既に記録された複数のデジタル識別子の中の少なくとも1つと、の間の比較を実行することによって、すべての前記適合候補に関して、適合しているかどうかを決定する;
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項4記載の方法において、
前記決定されたデジタル識別子と、前記既に記録された複数のデジタル識別子の中の適合していることが見出されたデジタル識別子と、の間の類似度合いに基づいて、各適合に関しての信頼性レベルを決定することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項4記載の方法において、
物品上の前記機械読取可能なマーキングを読み取ることにより、前記粗な記録位置決め器を求め、
この粗な記録位置決め器を使用することにより、前記データベース内から少なくとも1つの適合候補を探す、
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法において、
物品を、紙または厚紙から形成されたものとすることを特徴とする方法。
【請求項9】
読取容積内に配置された物品を走査するための装置であって、
コヒーレントビームを生成するための光源と;
前記読取容積によって前記コヒーレントビームが散乱された際に得られる複数の信号から一組をなす複数のデータポイントを収集するための検出器構成であるとともに、前記様々なデータポイントが、前記読取容積の互いに異なる部分から散乱されたものとされているような、検出器構成と;
(i)前記一組をなす複数のデータポイントをデジタル化することによって、物品のデジタル識別子を決定するように機能するとともに、(ii)前記一組をなす複数のデータポイントのフーリエ変換の振幅成分をデジタル化することによって、物品のサムネイル状デジタル識別子を決定するように機能する、データ取得処理モジュールと;
を具備していることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項9記載の装置において、
前記データ取得処理モジュールが、さらに、前記デジタル識別子をそのサムネイル状デジタル識別子と一緒にデータベース内に格納するように機能することを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項10記載の装置において、
前記データ取得処理モジュールが、前記デジタル識別子をそのサムネイル状デジタル識別子と一緒に、前記データベース内に既に格納されたものの中にそれらデジタル識別子およびサムネイル状デジタル識別子と同じものが存在していない場合に、前記データベース内に格納するように機能することを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項9記載の装置において、
さらに、
複数のデジタル識別子およびそれらのサムネイル状デジタル識別子が既に記録されてなるデータベースと;
(i)前記データベースを検索するに際して、前記決定されたサムネイル状デジタル識別子と、前記既に記録されたサムネイル状デジタル識別子と、の間の比較を実行することによって、少なくとも1つの適合候補を探すよう機能するとともに、(ii)前記決定されたデジタル識別子と、前記既に記録された複数のデジタル識別子の中の少なくとも1つと、の間の比較を実行することによって、すべての前記適合候補に関して、適合しているかどうかを決定するよう機能する、検索ツールと;
を具備していることを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項12記載の装置において、
前記検索ツールが、さらに、前記決定されたデジタル識別子と、前記既に記録された複数のデジタル識別子の中の適合していることが見出されたデジタル識別子と、の間の類似度合いに基づいて、各適合に関しての信頼性レベルを決定するよう機能することを特徴とする装置。
【請求項14】
複数の記録内容を備えているデータベースであって、
前記記録内容の各々が、
物品から得られた一組をなす複数のデータポイントをデジタル化することによって得られた、物品のデジタル識別子と;
前記一組をなす複数のデータポイントのフーリエ変換の振幅成分をデジタル化することによって得られた、物品のサムネイル状デジタル識別子と;
を備えていることを特徴とするデータベース。
【請求項15】
請求項14記載のデータベースにおいて、
前記複数のデータポイントが、物品によってコヒーレント光が散乱された際に得られたものとされ、
それらデータポイントが、物品の互いに異なる部分から散乱されたものであることを特徴とするデータベース。
【請求項16】
検索ツールを具備したシステムであって、
前記検索ツールが、請求項14または15に記載されたデータベースを検索するに際して、入力されたサムネイル状デジタル識別子と、前記データベース内に保持されている複数のサムネイル状デジタル識別子と、の間の比較を実行することによって、複数の適合候補を探すように機能することを特徴とするシステム。
【請求項17】
請求項16記載のシステムにおいて、
前記検索ツールが、さらに、入力されたデジタル識別子と、前記適合候補に関する記録内容として保持されているデジタル識別子と、の間の比較を実行することによって、すべての前記適合候補に関して、適合しているかどうかを決定するように機能することを特徴とするシステム。
【請求項18】
請求項16または17記載のシステムにおいて、
前記検索ツールが、前記データベースを検索するに際して、粗な記録位置決め器を使用することにより、適合候補を探すように機能することを特徴とするシステム。
【請求項19】
請求項16または17または18記載のシステムにおいて、
前記データベースが、前記システムとは別体とされていることを特徴とするシステム。
【請求項20】
請求項16または17または18記載のシステムにおいて、
前記データベースが、前記システムに対して一体的なものとされていることを特徴とするシステム。
【請求項21】
読取容積内に配置された物品を走査するための方法であって、
添付図面を参照して実質的に説明されたものであることを特徴とする方法。
【請求項22】
読取容積内に配置された物品を走査するための装置であって、
添付図面を参照して実質的に説明されたものであることを特徴とする装置。
【請求項23】
データベースであって、
添付図面を参照して実質的に説明されたものであることを特徴とするデータベース。
【請求項24】
検索ツールを具備したシステムであって、
添付図面を参照して実質的に説明されたものであることを特徴とするシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図8C】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公表番号】特表2008−509498(P2008−509498A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−525335(P2007−525335)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【国際出願番号】PCT/GB2005/003003
【国際公開番号】WO2006/016114
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(505086679)インゲニア・テクノロジー・リミテッド (16)
【Fターム(参考)】