説明

データ信号遅延回路

【課題】データ信号を遅延可能なデータ信号遅延回路において、消費電力をより低減する。
【解決手段】データ信号遅延回路100Aは、クロック信号CKに同期して排他的に順次、アクティブとなるn個のイネーブル信号E0〜En-1を生成するデコーダ20と、入力データ信号Dinが共通して供給され、イネーブル信号E0〜En-1が夫々アクティブとなるタイミングにおいて、入力データ信号Dinを夫々取り込み保持するDフリップフロップ30〜3n-1と、Dフリップフロップ30〜3n-1によって夫々取り込み保持されたn個の保持データ信号30a〜3n-1aのうち、所定のタイミングでアクティブとなった一のイネーブル信号に対応される一の保持データ信号を選択して出力データ信号Doutを生成する選択ユニットUを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ信号を遅延可能なデータ信号遅延回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSI(Large Scale Integration)などのデータ信号遅延回路の高速化が進んでいる。データ信号を遅延可能なデータ信号遅延回路として、特許文献1等には、複数個の遅延手段を直列的に接続させると共に、遅延量が可変な可変遅延回路を、複数個、並列的に接続させたデータ信号遅延回路に関する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平9−181581号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の技術では、一の可変遅延回路において、複数個の遅延手段を直列的に接続させて、データ信号を遅延させた場合、共通のクロック信号を印加して、このクロック信号の1周期の単位で、複数個の遅延手段を全て作動させる必要が生じてしまう。このため、複数の可変遅延回路を備えたデータ信号遅延回路の消費電力が増大してしまうという技術的な問題点が生じる。
本発明は、上述した従来の問題点に鑑みなされたものであり、例えば消費電力をより低減しつつ、データ信号を遅延可能なデータ信号遅延回路を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
以上の課題を解決するために、本発明に係るデータ信号遅延回路は、クロック信号に同期した入力データ信号を遅延させて出力データ信号を、生成するデータ信号遅延回路において、前記クロック信号に同期して排他的に順次アクティブとなるn個のイネーブル信号を生成するイネーブル信号生成手段と、前記入力データ信号が共通して供給され、前記n個のイネーブル信号が夫々アクティブとなるタイミングにおいて、前記入力データ信号を夫々取り込み保持データ信号として保持するn個の保持手段と、n個の前記保持データ信号を順次選択して前記出力データ信号を生成する選択手段とを備える、ことを特徴とする。
【0005】
この発明によれば、例えばn個のD型フリップフロップ等のn個の保持手段を並列に接続させて、クロック信号に同期して排他的に順次アクティブとなるn個のイネーブル信号を用いることにより、シリアル形式の入力データ信号がn個の保持データ信号に変換され、パラレル形式となる。次に、選択手段によって、保持されたn個の保持データ信号のうち、所定のタイミングでアクティブとなったイネーブル信号に対応される保持データ信号が順次選択され、出力データ信号として生成される。
【0006】
仮に、n個のD型フリップフロップ等のn個の保持手段を直列に接続させて、入力データ信号を遅延させた場合、共通のクロック信号を印加して、このクロック信号の1周期の単位で、n個の保持手段を全て作動させる必要がある。このため、保持手段を含むデータ信号遅延回路の消費電力が増大してしまう。これに対して、本発明に係るデータ信号遅延回路によれば、クロック信号の1周期のn倍(即ち、「保持手段の数」倍)に相当する時間間隔に一回だけ、n個の保持手段を夫々作動させればよい。この結果、クロック信号の1周期の単位でn個の保持手段を全て作動させる場合と比較して、消費電力を「1/n」倍にさせることが可能である。
【0007】
また、上述したデータ信号遅延回路において、前記選択手段は、前記入力データ信号を前記クロック信号のm(mは、1≦m≦nの自然数)周期だけ遅延させる場合、前記n個の保持データ信号を、各保持データ信号に対応する前記保持手段が前記入力データ信号を取り込むために用いたイネーブル信号に対して、前記クロック信号のm周期だけ遅延した前記イネーブル信号がアクティブとなる期間に選択して、前記出力データ信号を生成することが好ましい。このように構成すれば、クロック信号の1周期のm倍に相当する時間間隔に一回だけ、m個の保持手段を夫々作動させればよい。この結果、クロック信号の1周期の単位でm個の保持手段を全て作動させる場合と比較して、消費電力を「1/m」倍にさせることが可能である。
【0008】
また、上述したデータ信号遅延回路において、前記選択手段の具体的な態様としては、前記n個の保持データ信号と、前記n個のイネーブル信号との論理積を夫々演算するn個の第1論理回路と、前記n個の第1論理回路の出力信号について論理和を演算する第2論理回路とを備え、前記n個の第1論理回路の夫々には、一方の入力端子に前記保持データ信号が供給されると共に、他方の入力端子に当該保持データ信号に対応する前記保持手段が前記入力データ信号を取り込むために用いたイネーブル信号に対して、前記クロック信号のm周期だけ遅延した前記イネーブル信号が供給されることが好ましい。この場合、第1論理回路および第2論理回路をNAND回路で構成しても良いし、第1論理回路をAND回路、第2論理回路をOR回路で構成してもよい。前者の場合は、ローアクティブの動作となり、後者の場合はハイアクティブの動作となる。
【0009】
また、上述したデータ信号遅延回路において、前記入力データ信号を前記クロック信号のm(mは、1≦m≦nの自然数)周期だけ遅延させることを指示する制御信号に基づいて、前記n個の第1論理回路の他方の入力端子の夫々に供給する前記n個のイネーブル信号を切り替える変更手段を備えることが好ましい。仮に、n個のイネーブル信号とn個の第1論理回路との対応付けを固定した場合、遅延時間が固定となる。このため各種の時間間隔だけ入力データ信号を遅延させるためには、データ信号遅延回路の回路規模が増大してしまい、データ信号遅延回路の大型化が生じてしまう。本発明は、変更手段によって、n個のイネーブル信号とn個の第1論理回路との対応付けを動的に変更することができ、これにより、遅延時間をクロック信号の1周期からn周期までの任意の時間に設定することができる。よって、遅延時間を変更する場合でも、データ信号遅延回路の回路規模の増大を抑制し、データ信号遅延回路の小型化、消費電力の省力化、及び低コスト化を実現することができる。
【0010】
更に、上述したデータ信号遅延回路において、前記選択手段をn個備え、前記n個の選択手段は、前記入力データ信号を前記クロック信号の1乃至n周期だけ各々遅延させてn個の前記出力データ信号を生成してもよい。本発明によれば、クロック信号の1周期のn倍(即ち、「保持手段の数」倍)に相当する時間間隔に一回だけ、n個のデータ信号遅延回路を夫々作動させればよい。この結果、クロック信号の1周期の単位でn個のデータ信号遅延回路を全て作動させる場合と比較して、消費電力を「1/n」倍にさせることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
<1.第1実施形態>
先ず、図1を参照して、本発明の第1実施形態に係るデータ信号遅延回路の基本構成について説明する。ここに、図1は、本発明の第1実施形態に係るデータ信号遅延回路の基本構成を示すブロック図である。第1実施形態に係るデータ信号遅延回路100Aは、クロック信号CKが入力されるカウンタ10と、デコーダ20と、Dフリップフロップ30、31、…、3n-1と、選択ユニットUとを備える。選択ユニットUは、NAND回路40、41、…、4n-1及びNAND回路50から構成され、Dフリップフロップ30〜3n-1の出力信号を選択して出力データ信号Doutを生成する。尚、Dフリップフロップ30〜3n-1をレジスタの一具体例として説明するが、他の種類のフリップフロップを使用してよい。また、Dフリップフロップ30〜3n-1は、図示しないクロック入力端子を夫々有し、それらのクロック入力端子にはクロック信号CKが供給される。加えて、Dフリップフロップ30〜3n-1は、図示しないリセット端子を夫々有し、それらのリセット端子は非リセットとなる電位が供給されている。
【0012】
カウンタ10には、所定周波数のクロック信号CKが入力される。カウンタ10は、クロック信号CKの立ち上がりエッジを計数して所定のビット数の出力信号10aを生成し、これをデコーダ20に供給する。
デコーダ20は、カウンタ10から供給された出力信号10aをデコードして、排他的に有効となるn個のイネーブル信号E0〜En-1を生成し、n個のDフリップフロップ30〜3n-1に夫々供給する。n個のイネーブル信号E0〜En-1については後述する。
Dフリップフロップ30〜3n-1のデータ入力端子の全てに、入力データ信号Dinが供給される。加えて、Dフリップフロップ30〜3n-1のイネーブル入力端子には、上述した、デコーダ20の出力信号であるイネーブル信号E0〜En-1が夫々供給される。Dフリップフロップ30〜3n-1は、イネーブル入力端子の論理レベルがハイレベルとなる期間に、入力データ信号Dinをクロック信号CKの立ち上がりエッジに同期して取り込んで保持する。
ここで、イネーブル信号E0〜En-1は排他的に順次アクティブ(この例では、ハイレベル)となるので、入力データ信号Dinは、Dフリップフロップ30〜3n-1によって、シリアル形式からパラレル形式に変換される。
【0013】
次に、図2を参照して、データ信号遅延回路100Aの動作を説明する。イネーブル信号E0〜En-1は、図2に示されるように、Dフリップフロップ30〜3n-1に対して、排他的にハイレベルとなる信号である。ここで、Dフリップフロップ30に着目する。期間t0、期間tn、…などにおいては、イネーブル信号E0だけがハイレベルであるので、イネーブル信号E0が供給されるDフリップフロップ30は、入力データ信号DinのうちデータD0、データDn、データD2n、…を保持する。データD0は、Dフリップフロップ30において、期間t1から期間tnまで保持され、データDnは、Dフリップフロップ30において、期間tn+1から期間t2nまで保持される。そして、Dフリップフロップ30は、これらの保持されたデータD0、データDn、…を、保持データ信号30aとして、NAND回路40に供給する。
【0014】
また、期間t1、期間tn+1、…では、イネーブル信号E1だけがハイレベルであるので、Dフリップフロップ31は、入力データ信号Dinのうち、データD1、データDn+1、…を保持する。データD1は、Dフリップフロップ31において、期間t2から期間tn+1まで保持され、データDn+1は、Dフリップフロップ31において、期間tn+2から期間t2n+1まで保持される。
【0015】
NAND回路40〜4n-1には、デコーダ20の出力信号であるイネーブル信号E0〜En-1が夫々供給される。また、NAND回路40には、Dフリップフロップ30の保持データ信号30aが供給される。ここで、期間tnにおいては、イネーブル信号E0だけがハイレベルであるので、イネーブル信号E0との論理積の反転を演算するNAND回路40は、Dフリップフロップ30の保持データ信号30aのうち、データD0を、出力信号40aとして、期間tnにNAND回路50に供給する。
【0016】
他方、期間tnにおいては、イネーブル信号E1〜En-1はローレベルである。従って、イネーブル信号E1〜En-1との論理積の反転を演算するNAND回路41〜4n-1は、ハイレベルとなる出力信号41a〜4n-1aを、期間tnにNAND回路50に供給する。NAND回路50はローアクティブの論理和を演算するから、期間tnにおいて、NAND回路50は出力データ信号Doutとして、データD0を出力する。このことは、データ信号遅延回路100Aに期間t0に入力された、入力データ信号DinのうちデータD0が、クロック信号CKの周期のn倍に相当する遅延時間だけ経過した期間tnに、出力されたことを意味する。ここでは、NAND回路40に着目して説明したが、他のNAND回路41〜4n-1においても同様である。すなわち、NAND回路41は、Dフリップフロップ31の保持データ信号31aのうち期間tn+1に保持するデータD1を、出力信号41aとしてNAND回路50に供給する。これにより、NAND回路50は、出力データ信号Doutとして、データ信号遅延回路100Aに期間t1に入力された、入力データ信号DinのうちデータD1を、クロック信号CKの周期のn倍に相当する遅延時間だけ経過した期間tn+1に出力する。
【0017】
以上の結果、データ信号遅延回路100Aは、入力データ信号Dinをクロック信号CKのn倍の周期に相当する時間間隔だけ遅延させて出力データ信号Doutを生成する。特に、上述したDフリップフロップ30〜3n-1は並列的に動作する。従って、各Dフリップフロップ30〜3n-1は、クロック信号CKの1周期のパルスの立ち上りに応じて作動する必要はなく、クロック信号CKの1周期のn倍の周期のパルスの立ち上りに応じて作動すればよい。一般にデジタル回路の消費電力は単位時間当たりの論理レベルの反転回数に比例するから、消費電力を「1/n」倍にさせ、省電力化を実現することが可能である。
【0018】
加えて、「n」は2以上の自然数であればよいので適宜設定することが可能である。従って、クロック信号CKの1周期の任意の倍数の時間間隔だけ入力データ信号Dinを、簡便に遅延させることができる。例えば、クロック信号のm(mは、1≦m≦nの自然数)周期だけ遅延させる場合、選択ユニットUは、n個の保持データ信号30a〜3n-1aを、各保持データ信号30a〜3n-1aに対応するDフリップフロップ30〜3n-1が、入力データ信号Dinを取り込むために用いたイネーブル信号E0〜En-1に対して、クロック信号CKのm周期だけ遅延したイネーブル信号がアクティブとなる期間に選択して、出力データ信号Doutを生成すればよい。これにより、遅延時間を、簡便に任意の時間に設定することが可能であると共に、遅延時間が異なった出力データ信号Doutを出力する出力ラインの数を任意の数に設定することが可能である。この結果、遅延時間や出力ラインの数が増大した場合でも、データ信号遅延回路の回路規模の増大を抑制し、データ信号遅延回路の小型化、消費電力の省力化、及び低コスト化を実現することができる。
【0019】
<2.第2実施形態>
次に、図3を参照して、本発明の第2実施形態に係るデータ信号遅延回路の基本構成について説明する。図3は、本発明の第2実施形態に係るデータ信号遅延回路100Bの基本構成を示すブロック図である。尚、上述した第1実施形態に係るデータ信号遅延回路100Aと同様の構成には同一の符号番号を付し、それらの説明は適宜省略する。
データ信号遅延回路100Bは、クロック信号CKが入力される2ビットのカウンタ10と、デコーダ20と、4個のDフリップフロップ30〜33と、選択ユニットU1〜U4を備える。上述した第1実施形態のデータ信号遅延回路100Aは、入力データ信号Dinをクロック信号CKのn周期遅延して、1つの出力データ信号Doutを生成した。これに対して、第2実施形態のデータ信号遅延回路100Bは、入力データ信号Dinをクロック信号CKの1周期〜4周期だけ遅延した出力データ信号Dout1〜Dout4を生成するものである。
【0020】
選択ユニットU4は、NAND回路40〜43とNAND回路50とを備える。他の選択ユニットU2〜U4も同様に構成されている。但し、選択ユニットU1〜U4の各々において、NAND回路40〜43に供給されるイネーブル信号が相違する。図4(A)〜(C)に選択ユニットU1〜U3の詳細な構成を示す。選択ユニットU4においては、NAND回路40、41、42、および43に、イネーブル信号E0、E1、E2、およびE3が各々供給される。選択ユニットU3、U2、およびU1では、NAND回路40〜43に供給されるイネーブル信号がずれる。具体的には、選択ユニットU3では、NAND回路40、41、42、および43に、イネーブル信号E3、E0、E1、およびE2が各々供給される。選択ユニットU2では、NAND回路40、41、42、および43に、イネーブル信号E2、E3、E0、およびE1が各々供給される。選択ユニットU1では、NAND回路40、41、42、および43に、イネーブル信号E1、E2、E3、およびE0が各々供給される。
【0021】
図5に、データ信号遅延回路100Bのタイミングチャートを示す。まず、選択ユニットU4の動作は、上述した第1実施形態のデータ信号遅延回路100Aにおいてn=4としただけで、その動作は同じである。従って、選択ユニットU4から出力される出力データ信号Dout1は、入力データ信号Dinに対してクロック信号CKの4周期だけ遅延したものとなる。
【0022】
次に、選択ユニットU3において、NAND回路40には、保持データ信号30aとイネーブル信号E3が供給されるから、期間t3において、データD0がNAND回路40から信号40aとして出力される。このとき、他のイネーブル信号は非アクティブであるので、NAND回路50は、期間t3においてデータD0を出力データ信号Dout3として出力する。また、期間t4では、NAND回路41に供給されるイネーブル信号E0がアクティブになるので、そこに供給されるデータD1が出力データ信号Dout3として出力される。以下同様に動作して、入力データ信号Dinをクロック信号CKの3周期だけ遅延させた出力データ信号Dout3が生成される。
【0023】
次に、選択ユニットU2において、NAND回路40には、保持データ信号30aとイネーブル信号E2が供給されるから、期間t2において、データD0がNAND回路40から信号40aとして出力される。このとき、他のイネーブル信号は非アクティブであるので、NAND回路50は、期間t2においてデータD0を出力データ信号Dout2として出力する。また、期間t3では、NAND回路41に供給されるイネーブル信号E3がアクティブになるので、そこに供給されるデータD1が出力データ信号Dout2として出力される。以下同様に動作して、入力データ信号Dinをクロック信号CKの2周期だけ遅延させた出力データ信号Dout2が生成される。
【0024】
次に、選択ユニットU1において、NAND回路40には、保持データ信号30aとイネーブル信号E1が供給されるから、期間t1において、データD0がNAND回路40から信号40aとして出力される。このとき、他のイネーブル信号は非アクティブであるので、NAND回路50は、期間t1においてデータD0を出力データ信号Dout1として出力する。また、期間t2では、NAND回路41に供給されるイネーブル信号E2がアクティブになるので、そこに供給されるデータD1が出力データ信号Dout1として出力される。以下同様に動作して、入力データ信号Dinをクロック信号CKの1周期だけ遅延させた出力データ信号Dout1が生成される。
【0025】
このように第2実施形態では、第1に、Dフリップフロップ30〜34を用いて、シリアル形式で与えられる入力データ信号Dinをパラレル形式の保持データ信号30a、31a、32a、および33aに変換し、第2に、選択ユニットU1〜U4において、シリアル形式からパラレル形式に変換する際に用いたイネーブル信号に対して所望のクロック周期だけ遅延したイネーブル信号を用いて保持データ信号30a、31a、32a、および33aを順次選択することによって、出力データ信号Dout1〜Dout4を生成する。
【0026】
以上の結果、入力データ信号Dinを、クロック信号CKの周期の任意の倍数だけ簡便に遅延させることが可能である。言い換えると、入力データ信号を出力データ信号として遅延させて生成する際の遅延時間を、簡便に任意の時間に設定することが可能であると共に、遅延時間が異なった出力データ信号を出力する出力ラインの数を任意の数に設定することが可能である。この結果、遅延時間や出力ラインの数が増大した場合でも、データ信号遅延回路の回路規模の増大を抑制し、データ信号遅延回路の小型化、消費電力の省力化、及び低コスト化を実現することができる。
【0027】
<3.第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係るデータ信号遅延回路100Cについて説明する。上述した第1実施形態及び第2実施形態では、選択ユニットごとに遅延時間が固定であった。これに対して、第3実施形態のデータ信号遅延回路100Cは、外部から供給される制御信号CTLに応じて、遅延時間を適宜変更する。図6にデータ信号遅延回路100Cのブロック図を示す。なお、上述したデータ信号遅延回路100A及び100Bと同一の構成には同一の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0028】
データ信号遅延回路100Cは、切替回路60を備える点、1個の選択ユニットUのみを用いる点を除いて、データ信号遅延回路100Bと同様に構成されている。切替回路60は、外部から供給される2ビットの制御信号CTLに応じて、NAND回路40〜43に供給するイネーブル信号E0〜E3を切り替える。具体的には、図7に示すように制御信号CTLが「11」のとき、図3に示す選択ユニットU4と同様にイネーブル信号を供給し、制御信号CTLが「10」のとき、図4(A)に示す選択ユニットU3と同様にイネーブル信号を供給し、制御信号CTLが「01」のとき、図4(B)に示す選択ユニットU2と同様にイネーブル信号を供給し、制御信号CTLが「00」のとき、図4(C)に示す選択ユニットU1と同様にイネーブル信号を供給する。この結果、1個の選択ユニットUを用いて、4種類の遅延時間を得ることができる。このように、データ信号遅延回路100Cによれば、入力データ信号Dinを遅延させて出力データ信号Doutを生成する場合に、任意のタイミングで遅延時間を動的に変更することが可能である。
【0029】
上述したデータ信号遅延回路100A〜100Cは、各種の信号処理を実行するデジタル回路に適用することができる。特に、パイプライン処理を実行するDSPなどの信号処理回路では、ある系統の処理時間に合わせて、他の系統の信号を遅延させる必要があるが、そのような場合に、上述したデータ信号遅延回路100A〜100Cは好適である。
また、上述した各実施形態では、選択ユニットにおける演算がローアクティブであるためNAND回路40〜4n-1および50を用いたが、ハイアクティブであればNAND回路40〜4n-1の替わりにAND回路を用い、NAND回路50の替わりにOR回路を用いればよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態に係るデータ信号遅延回路の基本構成を示すブロック図である。
【図2】同実施形態に係るデータ信号遅延回路の各部の波形を示すタイミングチャートである。
【図3】本発明の第2実施形態に係るデータ信号遅延回路の基本構成を示すブロック図である。
【図4】同回路に用いる選択ユニットU1〜U3の構成を示す回路図である。
【図5】同実施形態に係るデータ信号遅延回路の各部の波形を示すタイミングチャートである。
【図6】本発明の第3実施形態に係るデータ信号遅延回路の構成を示すブロック図である。
【図7】同回路に用いる切替回路の動作を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0031】
10……カウンタ、20……デコーダ、30〜3n-1……Dフリップフロップ、40〜4n-1,50……NAND回路、100A,100B,100C……データ信号遅延回路、CK……クロック信号、Din……入力データ信号、Dout,Dout1,Dout2,Dout3,Dout4……出力データ信号、U,U1〜U4……選択ユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロック信号に同期した入力データ信号を遅延させて出力データ信号を、生成するデータ信号遅延回路において、
前記クロック信号に同期して排他的に順次アクティブとなるn個のイネーブル信号を生成するイネーブル信号生成手段と、
前記入力データ信号が共通して供給され、前記n個のイネーブル信号が夫々アクティブとなるタイミングにおいて、前記入力データ信号を夫々取り込み保持データ信号として保持するn個の保持手段と、
n個の前記保持データ信号を順次選択して前記出力データ信号を生成する選択手段とを備える、
ことを特徴とするデータ信号遅延回路。
【請求項2】
前記選択手段は、
前記入力データ信号を前記クロック信号のm(mは、1≦m≦nの自然数)周期だけ遅延させる場合、前記n個の保持データ信号を、各保持データ信号に対応する前記保持手段が前記入力データ信号を取り込むために用いたイネーブル信号に対して、前記クロック信号のm周期だけ遅延した前記イネーブル信号がアクティブとなる期間に選択して、前記出力データ信号を生成することを特徴とする請求項1に記載のデータ信号遅延回路。
【請求項3】
前記選択手段は、
前記n個の保持データ信号と、前記n個のイネーブル信号との論理積を夫々演算するn個の第1論理回路と、
前記n個の第1論理回路の出力信号について論理和を演算する第2論理回路とを備え、
前記n個の第1論理回路の夫々には、一方の入力端子に前記保持データ信号が供給されると共に、他方の入力端子に当該保持データ信号に対応する前記保持手段が前記入力データ信号を取り込むために用いたイネーブル信号に対して、前記クロック信号のm周期だけ遅延した前記イネーブル信号が供給される、
ことを特徴とする請求項2に記載のデータ信号遅延回路。
【請求項4】
前記入力データ信号を前記クロック信号のm(mは、1≦m≦nの自然数)周期だけ遅延させることを指示する制御信号に基づいて、前記n個の第1論理回路の他方の入力端子の夫々に供給する前記n個のイネーブル信号を切り替える変更手段を備える、
ことを特徴とする請求項3に記載のデータ信号遅延回路。
【請求項5】
前記選択手段をn個備え、
前記n個の選択手段は、前記入力データ信号を前記クロック信号の1乃至n周期だけ各々遅延させてn個の前記出力データ信号を生成する、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のデータ信号遅延回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−27411(P2009−27411A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−187926(P2007−187926)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】