説明

データ再生回路およびデータ再生装置

【課題】 複数の処理系にて再生データを並列処理する場合に、各処理系における適応型イコライザの構成の簡素化と回路規模の縮小化を図る。
【解決手段】 デジタルイコライザ511、521のタップ値は、共通のタップ値更新部518によって更新される。適応型イコライザ51、52にて生じる等化誤差e1(n)、e2(n)は、加算部514にて加算され、比率調整部515にて調整係数μが乗じられる。一方、デジタルイコライザ511、521から入力されるリサンプルデータの集合X1(n)とX2(n)が加算部516にて加算され、集合X(n)が生成される。比率調整部515から出力されるμ・e(n)は、乗算部517にて、集合X(n)に乗じられる。タップ値更新部518は、現在のタップ値H(n)に、μ・e(n)・X(n)を加算して、次のクロックタイミングのタップ値H(n+1)を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ再生回路およびデータ再生装置に関するものであり、特に、適応型波形等化器(Adaptive Equalizer)を複数用いて並列的に波形等化処理を施す際に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
DVD(Digital Versatile Disc)や次世代DVD等の高密度光ディスクでは、再生時に前後の信号が互いに干渉し合う、いわゆる、符号間干渉という現象が生じる。かかる問題を解消するため、これらディスクを扱うドライブ装置では、再生伝送路中に波形等化器(イコライザ)が配され、再生信号の周波数特性の改善が図られている。
【0003】
しかしながら、これらの高密度光ディスクでは、再生信号の周波数特性がディスク毎あるいは製造メーカ毎に異なっているため、これらディスクに一律に等化処理を施すと、ディスク間で等化誤差が生じ、ディスクによっては、エラーレートが増大するといった問題が生じる。そこで、この問題を解消するために、最近では、各ディスクの再生信号の周波数特性に応じて適宜、等化係数の調整が可能な適応型のイコライザが用いられている。
【0004】
図8は、適応型イコライザを用いたディスク再生装置の構成例を示すものである。
【0005】
ディスク1に記録されたデータは、光ピックアップ2によって読み取られる。光ピックアップ2は、ディスク1からの反射光を光検出器にて受光して再生RF信号を生成し、生成した再生RF信号を増幅回路10に出力する。
【0006】
増幅回路10は、光ピックアップ2から供給される再生RF信号を増幅してアナログBPF20に出力する。アナログBPF20は、再生RF信号のノイズ成分を除去してADC30に出力する。ADC30は、固定クロック(周波数:f1)に応じて再生RF信号をサンプリングし、サンプル値をデジタルデータに変換してデジタルPLL40に出力する。
【0007】
デジタルPLL40は、ADC30から入力されるデジタルデータに補間処理を施して、適正サンプリングタイミングにおけるデジタルデータ(リサンプルデータ)を生成し、生成したリサンプルデータを適応型イコライザ50に出力する。
【0008】
適応型イコライザ50は、デジタルPLL40から供給されるリサンプルデータに波形等化処理を施して2値化回路60に出力する。2値化回路60は、デジタルイコライザ50から供給されたリサンプルデータを復号して1、0の2値化データを生成出力する。ここで、2値化回路60は、復号処理として、たとえば、ビタビ復号処理を実行する。
【0009】
図9に、適応型イコライザ50の構成例を示す。
【0010】
適応型イコライザ50は、デジタルイコライザ501と、理想サンプル値計算部502と、減算部503と、比率調整部504と、乗算部505と、タップ値更新部506を有している。
【0011】
デジタルイコライザ501は、デジタルPLL40から入力されるリサンプルデータに対し、タップ値更新部505にて更新されたタップ値に応じて、波形等化処理を施す。
【0012】
理想サンプル値計算部502は、デジタルイコライザ501から出力される波形等化後のリサンプルデータq(n)の理想サンプル値p(n)を、2値化回路60から出力される2値化データに基づいて生成する。
【0013】
減算部503は、理想サンプル値計算部502にて生成された理想サンプル値p(n)から、デジタルイコライザ501にて波形等化されたリサンプルデータq(n)を減算し、減算結果e(n)を調整部504に出力する。
【0014】
比率調整部504は、減算部503から入力される減算結果e(n)に調整係数μを乗じ、乗算結果を乗算部505に出力する。
【0015】
乗算部505は、比率調整部504によって比率が調整された減算結果μ・e(n)を、デジタルイコライザ501から入力されるリサンプルデータの集合X(n)=(x(n),x(n−1),…,x(n−k+1))に乗じて、タップ値更新部506に出力する。なお、x(n−k)は、リサンプルデータx(n)からkリサンプルタイミング前に到来するリサンプルデータである。
【0016】
タップ値更新部506は、現在のタップ値H(n)=(h1(n),h2(n),…,hk(n))に、乗算部505からの乗算結果μ・e(n)・X(n)を加算して、次のクロックタイミングにおけるタップ値H(n+1)=(h1(n+1),h2(n+1),…,hk(n+1))を生成する。そして、生成したタップ値H(n+1)をデジタルイコライザ501に供給する。
【0017】
図10に、デジタルイコライザ501の構成例を示す。
【0018】
デジタルイコライザ501に入力されたリサンプルデータは、k−1個の遅延部501aによって、1リサンプルタイミングずつ遅延される。各サンプルタイミングにおけるリサンプルデータは、それぞれ、対応する乗算部501bにて、タップ値h1(n)、h2(n)、…、hk(n)が乗算された後、加算部501cにて加算される。
【0019】
乗算部501bにて乗算されるタップ値h1(n)、h2(n)、…、hk(n)は、タップ値更新部506によって更新される。すなわち、次のリサンプルタイミングにおけるタップ値h1(n+1)、h2(n+1)、…、hk(n+1)は、上記減算部503における減算結果e(n)と、比率調整部504における係数μ、および、格段のリサンプルデータx(n)、x(n−1)、…、x(n−k+1)から、それぞれ、h1(n+1)=h1(n)+μ・e(n)・x(n)、h2(n+1)=h2(n)+μ・e(n)・x(n−1)、…、hk(n+1)=hk(n)+μ・e(n)・x(n−k+1)に更新される。この更新により、デジタルイコライザ501のタップ値が適宜調整され、当該ディスクの周波数特性に応じた波形等化処理が行われる。
【特許文献1】特開平 10−261205号公報
【特許文献2】特開2000−182330号公報
【特許文献3】特開2000−199753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
近年、光ディスクおよびそのドライブ装置においては、ディスクの高密度化および高容量化とともに、再生速度の高速化(4倍速、8倍速、等)が求められている。再生速度の高速化は、特に、PC(Personal Computer)用途としてドライブ装置を用いる場合に、高い付加価値を与える。
【0021】
再生速度の高速化実現するための手段として、再生データの並列処理が有効な手段となり得る。すなわち、再生データを処理するための処理系を複数準備し、一連の再生データに対し、時系列上交互に、各処理系にて処理を施す。これにより、各処理系の処理速度をそれ程高めなくとも、再生速度の高速化・倍速化を実現することができる。かかる並列処理は、適応型イコライザにおける処理にも要求される。
【0022】
そこで、本発明は、このように複数の処理系を準備して再生速度の高速化を図る場合に、各処理系における適応型イコライザの構成の簡素化と回路規模の縮小を適正に図り得る、データ再生回路およびデータ再生装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
第1の発明は、データ再生回路において、再生データが所定データユニットずつ順次振り分けて供給される複数の適応型イコライザと、前記適応型イコライザに波形等化のための係数を設定する係数設定回路とを備え、前記複数の適応型イコライザのうち2以上の適応型イコライザに対応して1つの前記係数設定回路が配され、該係数設定回路はこれら対応する適応型イコライザに共通の前記係数を生成してこれら適応型イコライザに設定することを特徴とする。
【0024】
第2の発明は、第1の発明に係るデータ再生回路において、前記係数設定回路は、前記対応する適応型イコライザのうち予め設定した適応型イコライザにおいて生じる波形等化誤差に基づいて前記係数を生成し、生成した係数を対応する全ての適応型イコライザにそれぞれ設定することを特徴とする。
【0025】
第3の発明は、第2の発明に係るデータ再生回路において、前記係数設定回路は、前記対応する各々の適応型イコライザにおいて生じる波形等化誤差に基づいて前記係数を生成し、生成した係数を対応する全ての適応型イコライザにそれぞれ設定することを特徴とする。
【0026】
第4の発明は、第2の発明に係るデータ再生回路において、前記係数設定回路は、前記対応する適応型イコライザのうち何れか一つにおいて生じる波形等化誤差に基づいて前記係数を生成し、生成した係数を対応する全ての適応型イコライザにそれぞれ設定することを特徴とする。
【0027】
第5の発明は、第1ないし第4の発明の何れかに係るデータ再生回路において、前記係数設定回路は、前記再生データの理想値を求める回路を備え、該回路にて求めた理想値と波形等化後のデータ値とを比較して、前記波形等化誤差を求めることを特徴とする。
【0028】
第6の発明は、第1ないし第5の発明の何れかに係るデータ再生回路を備えるデータ再生装置である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、複数の適応型イコライザに対して一つの係数設定回路が配されるため、それぞれの適応型イコライザに係数設定回路を個別に配する場合に比べ、構成の簡素化と回路規模の縮小化を図ることができる。
【0030】
このとき、第3の発明のように、対応する各々の適応型イコライザにおいて生じる波形等化誤差に基づいて係数を生成するようにすれば、各々の適応型イコライザにて生じる波形等化誤差を総合的に係数に反映させることができる。これにより、波形等化誤差に細かく追随した係数調整を行うことができる。
【0031】
また、第4の発明のように、対応する適応型イコライザのうち何れか一つにおいて生じる波形等化誤差に基づいて係数を生成するようにすれば、当該一つの適応型イコライザにおける波形等化誤差を検出するのみでよいため、さらなる構成の簡素化を図ることができる。
【0032】
本発明の特徴は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。
【0033】
なお、以下の実施の形態には、2つの適応型イコライザを用いて並列処理を行う場合の実施形態が示されている。また、本発明に係る係数設定回路は、以下の実施形態では、理想サンプル値計算部512、522、減算部513、523、加算部514、比率調整部515、加算部516、乗算部517およびタップ値更新部518にて具体化されている。
【0034】
ただし、以下の実施の形態は、あくまでも、本発明を具体化する際の一つの例示であって、本発明ないし各構成要件の用語の意義は、以下の実施の形態に記載されたものに制限されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。
【0036】
図1に、実施の形態に係るディスク再生装置の構成を示す。なお、上記従来例で示した図8の構成と同一部分には同一符号を付し、説明を省略する。
【0037】
図において、メモリ70は、メモリコントローラ80からの制御を受けて、ADC30から入力されるデジタルデータを順次記憶する。また、記憶したデジタルデータを、所定単位のデータユニット毎に、デジタルPLL41またはデジタルPLL42の何れか一方に出力する。
【0038】
メモリコントローラ80は、メモリ70に対する書き込み制御を行うとともに、タイミングコントローラ90からの指令に応じて、メモリ70に対する読み出し制御を行う。
【0039】
タイミングコントローラ90は、デジタルPLL41、42に対するデジタルデータの読み出しタイミングを規定する指令をメモリコントローラ80に出力するとともに、デジタルPLL41、適応型イコライザ51、2値化回路61から構成される第1の信号処理系と、デジタルPLL42、適応型イコライザ52、2値化回路62から構成される第2の信号処理系に対し、動作タイミングを規定する指令を出力する。さらに、タイミングコントローラ90は、第1の信号処理系(2値化回路61)から入力される2値化データと第2の信号処理系(2値化回路62)から入力される2値化データの何れか一方を選択して一系統化するための、データ選択タイミングを規定する指令をセレクタ100に出力する。
【0040】
セレクタ100は、第1の信号処理系および第2の処理系から入力される2値化データをバッファリングするとともに、タイミングコントローラ90からの指令に応じて何れか一方のデータを選択し、これらを1系統化して、後段回路(復調回路、等)に出力する。
【0041】
デジタルPLL41、適応型イコライザ51および2値化回路61から構成される第1の信号処理系と、デジタルPLL42、適応型イコライザ52および2値化回路62から構成される第2の信号処理系は、上記図8におけるデジタルPLL40、適応型イコライザ50および2値化回路60から構成される信号処理系と同様の処理を行う。但し、適応型イコライザ51、52のタップ値更新は、共通のタップ値更新部によって行われる。
【0042】
本実施の形態では、後述の如く、第1の信号処理系と第2の信号処理系によって並列的に信号処理が行われる。このため、A/Dサンプリングするための固定クロックよりも数段低い周波数の動作クロックにて、第1の信号処理系と第2の信号処理系を動作させることができる。すなわち、第1の信号処理系と第2の信号処理系に入力される動作クロックの周波数f2は、固定クロックの周波数f1に比べて、f2<f1となっている。この動作クロックの周波数f2は、最も低くは、f1/2をやや越える程度とすることができる。
【0043】
図2に、適応型イコライザ51、52の構成を示す。
【0044】
図示の如く、第1の信号処理系側に配された適応型イコライザ51は、デジタルイコライザ511と、理想サンプル値計算部512と、減算部513と、加算部514と、比率調整部515と、加算部516と、乗算部517と、タップ値更新部518を備えている。また、第2の信号処理系側に配された適応型イコライザ52は、デジタルイコライザ521と理想サンプル値計算部522を備えている。
【0045】
デジタルイコライザ511、521は、デジタルPLL41、42から入力されるリサンプルデータに対し、タップ値更新部518にて更新されたタップ値に応じて、波形等化処理を施す。
【0046】
理想サンプル値計算部512、522は、デジタルイコライザ511、521から出力される波形等化後のリサンプルデータq1(n)、q2(n)の理想サンプル値p1(n)、p2(n)を、2値化回路61、62から出力される2値化データに基づいて生成する。
【0047】
減算部513、523は、理想サンプル値計算部512、522にて生成された理想サンプル値p1(n)、p2(n)から、デジタルイコライザ511、521にて波形等化されたリサンプルデータq1(n)、q2(n)を減算し、減算結果e1(n)、e2(n)を加算部514に出力する。
【0048】
加算部514は、減算部513、523から入力された減算結果e1(n)、e2(n)を加算して、比率調整部515に出力する。
【0049】
比率調整部515は、加算部514から入力される加算結果e(n)に調整係数μを乗じ、乗算結果を乗算部517に出力する。
【0050】
加算部516は、デジタルイコライザ511から入力されるリサンプルデータの集合X1(n)=(x1(n),x1(n−1),…,x1(n−k+1))と、デジタルイコライザ512から入力されるリサンプルデータの集合X2(n)=(x2(n),x2(n−1),…,x2(n−k+1))を加算して、集合X(n)=(x1(n)+x2(n),x1(n−1)+x2(n−1),…,x1(n−k+1)+x2(n−k+1))を生成する。
【0051】
乗算部517は、比率調整部515から入力されるμ・e(n)を、加算部516から入力される集合X(n)=(x1(n)+x2(n),x1(n−1)+x2(n−1),…,x1(n−k+1)+x2(n−k+1))に乗じて、タップ値更新部518に出力する。
【0052】
タップ値更新部518は、デジタルイコライザ511、521に設定されている現在のタップ値H(n)=(h1(n),h2(n),…,hk(n))に、乗算部517からの乗算結果μ・e(n)・X(n)を加算して、次のクロックタイミングにおけるタップ値H(n+1)=(h1(n+1),h2(n+1),…,hk(n+1))を生成する。そして、生成したタップ値H(n+1)をデジタルイコライザ511、521に供給する。
【0053】
ここで、次のリサンプルタイミングにおけるタップ値h1(n+1)、h2(n+1)、…、hk(n+1)は、上記加算部514における加算結果e(n)と、比率調整部515における係数μ、および、リサンプルデータの集合X1(n)、X2(n)を加算して生成した集合X(n)=(x1(n)+x2(n),x1(n−1)+x2(n−1),…,x1(n−k+1)+x2(n−k+1))から、それぞれ、h1(n+1)=h1(n)+μ・e(n)・(x1(n)+x2(n))、h2(n+1)=h2(n)+μ・e(n)・(x1(n−1)+x2(n−1))、…、hk(n+1)=hk(n)+μ・e(n)・(x1(n−k+1)+x2(n−k+1))に更新される。
【0054】
次に、第1の処理系と第2の処理系における並列処理について、図3ないし図5を参照して説明する。
【0055】
なお、以下では、各処理系にて処理される一定サイズのADデータの固まりをデータユニットと称する。各データユニットには、便宜上、処理順序を示すための符号(n)が付されている。また、以下では、第1の処理系におけるデジタルPLL41をD−PLL(1)として示し、第2の処理系におけるデジタルPLL42をD−PLL(2)として示す。
【0056】
ディスク1に対するデータ読み出しが開始されると、再生RF信号が順次A/D変換され、図3の(1)に示す如く、メモリ70に対するデータ書き込みが開始される。かかる書き込みによって、メモリ70に一定量のデータが格納されると、メモリ70からデータユニット(0)のADデータが順次D−PLL(1)に出力され、第1の処理系による処理が開始される。
【0057】
しかる後、メモリ70にさらに一定量のデータが書き込まれると、同図の(2)に示す如く、データユニット(0)に続くデータユニット(1)のADデータがメモリ70から順次D−PLL(2)に出力され、第2の処理系による処理が開始される。このとき、データユニット(0)のADデータは、引き続きD−PLL(1)に出力され、第1の処理系によって並列処理される。データユニット(0)のADデータは、同図の(3)に示す如く、当該ユニットのADデータが全て処理されるまでD−PLL(1)に順次出力され処理される。
【0058】
しかして、データユニット(0)のADデータに対する処理が終了すると、図4の(4)に示す如く、次のデータユニット(2)に対する処理の助走期間として、データユニット(1)の一部がメモリ70からD−PLL(1)に出力され、第1の処理系によって処理される。かかる助走期間における処理は、たとえば、データユニット(1)の終端部のADデータを用いて行われる。かかる助走期間の処理によって、D−PLL(1)における位相引き込みが行われ、次のデータユニット(2)に対する処理が安定して行われる。なお、このとき、データユニット(1)に対する第2の処理系の処理が並行して行われる。
【0059】
かかる助走期間が終了すると、図4の(5)に示す如く、データユニット(2)のADデータがメモリ70から順次D−PLL(1)に出力され、第1の処理系による処理が開始される。このとき、データユニット(1)のADデータは、引き続きD−PLL(2)に出力され、第2の処理系によって並列処理される。この並列処理は、同図の(6)に示す如く、データユニット(1)に対する処理が完了するまで行われる。
【0060】
しかして、データユニット(1)のADデータに対する処理が終了すると、図5の(7)に示す如く、次のデータユニット(3)に対する処理の助走期間として、データユニット(2)の一部がメモリ70からD−PLL(2)に出力され、第2の処理系によって処理される。かかる助走期間における処理は、上述の如く、たとえば、データユニット(2)の終端部のADデータを用いて行われる。かかる助走期間の処理によって、D−PLL(2)における位相引き込みが行われ、次のデータユニット(3)に対する処理が安定して行われる。なお、このとき、データユニット(2)に対する第1の処理系の処理が並行して行われる。
【0061】
かかる助走期間が終了すると、図5の(8)に示す如く、データユニット(3)のADデータがメモリ70から順次D−PLL(2)に出力され、第2の処理系による処理が開始される。このとき、データユニット(2)のADデータは、引き続きD−PLL(1)に出力され、第1の処理系によって並列処理される。この並列処理は、同図の(9)に示す如く、データユニット(2)に対する処理が完了するまで行われる。
【0062】
以下、同様にして、第1の処理系と第2の処理系における並列処理が行われる。その後、メモリ70の最終アドレスまでADデータが書き込まれると、先頭アドレスに戻って、順次、ADデータが上書きされる。同様に、第1の処理系と第2の処理系における並列処理によってメモリ70の所定のアドレスまで処理がなされると、先頭アドレスに戻って、上書きされたADデータに対する並列処理が行われる。
【0063】
かかる並列処理の際、第1の処理系のデジタルイコライザ511と第2の処理系のデジタルイコライザ512に適用されるタップ値は、共に、第1の処理系側に配されたタップ値更新部518によって調整される。この調整は、上述の如く、第1の処理系側における波形等化後のリサンプルデータと理想サンプル値の間のずれ量e1(n)と、第2の処理系側における波形等化後のリサンプルデータと理想サンプル値の間のずれ量e2(n)を加算した値e(n)をもとに行われる。
【0064】
以上、本実施の形態によれば、タップ値更新のための構成を第1および第2の処理系にて共用するようにしたため、タップ値更新のための構成を各処理系にそれぞれ個別に配する場合に比べ、構成の簡素化および回路規模の縮小化を図ることができる。また、第1の処理系側において検出される波形等化後のリサンプルデータと理想サンプル値の間のずれ量e1(n)と、第2の処理系側において検出される波形等化後のリサンプルデータと理想サンプル値の間のずれ量e2(n)を加算した値e(n)をもとに、タップ値を更新するようにしたため、波形等化誤差に細かく追随したタップ値調整を実現することができる。
【0065】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、他に種々の変更が可能である。
【0066】
たとえば、上記実施の形態では、第1の処理系側において検出される波形等化後のリサンプルデータと理想サンプル値の間のずれ量e1(n)と、第2の処理系側において検出される波形等化後のリサンプルデータと理想サンプル値の間のずれ量e2(n)を加算した値e(n)をもとに、タップ値を更新するようにしたが、何れか一方の処理系において検出されるずれ量のみを用いて、タップ値を更新するようにすることもできる。
【0067】
図6は、かかる場合の構成例を示すものである。同図では、第1の処理系にて検出されるずれ量e1(n)をもとにタップ値が更新される。
【0068】
この場合、減算部513における減算結果e1(n)は、比率調整部515によって比率調整された後、デジタルイコライザ511から入力されるリサンプルデータの集合X1(n)=(x1(n),x1(n−1),…,x1(n−k+1))に乗じられ、タップ値更新部518に入力される。タップ値更新部518は、現在のタップ値H(n)=(h1(n),h2(n),…,hk(n))に、乗算部517から入力される乗算結果μ・e1(n)・X1(n)を加算して、次のクロックタイミングにおけるタップ値H(n+1)=(h1(n+1),h2(n+1),…,hk(n+1))を生成する。そして、生成したタップ値H(n+1)をデジタルイコライザ511、512に供給する。
【0069】
この場合、次のリサンプルタイミングにおけるタップ値h1(n+1)、h2(n+1)、…、hk(n+1)は、減算部513における減算結果e1(n)と、比率調整部515における係数μ、および、デジタルイコライザ511からのリサンプルデータx1(n)、x1(n−1)、…、x1(n−k+1)から、それぞれ、h1(n+1)=h1(n)+μ・e1(n)・x1(n)、h2(n+1)=h2(n)+μ・e1(n)・x1(n−1)、…、hk(n+1)=hk(n)+μ・e1(n)・x1(n−k+1)に更新される。
【0070】
この変更例によれば、図2に示す構成に比べ、ずれ量e2(n)を検出するための構成と、ずれ量e2(n)をタップ値更新に反映するための構成を省略できるため、更なる構成の簡素化と、回路規模の縮小化を図ることができる。
【0071】
また、上記実施の形態では、第1の処理系と第2の処理系にそれぞれデジタルPLLを配するようにしたが、たとえば図7に示すように、メモリ70の前段にアナログPLL43を配するよう構成することもできる。
【0072】
図7の構成において、アナログPLL43は、アナログBPF20から入力される信号をもとにPLLクロックによるサンプリングタイミングと再生RF信号に対する適正サンプリングタイミングの位相差を検出し、この位相差を解消するようPLLクロックの周波数を調整する。すなわち、アナログBPF20から入力される信号をもとに再生信号波形のエッジを判別し、このエッジとPLLクロックの間の位相差を検出する。そして、この位相差を電圧値としてVCO(Voltage Controlled Oscillator)に供給し、VCOから発振されるPLLクロックの周期を変化させる。
【0073】
ADC30は、アナログPLL43から供給するPLLクロックに応じて、アナログBPF20から供給される再生RF信号に対するサンプリングおよびA/D変換を行い、サンプリングしてADデータを順次メモリ70に書き込む。
【0074】
メモリ70は、格納したADデータを、メモリコントローラ80からの制御に応じて、データユニット単位で、適応型イコライザ51または52の何れか一方に順次出力する。以下、適応型イコライザ51、52以降の処理は上記実施の形態と同様にして行われる。
【0075】
さらに、上記実施の形態では、デジタルPLLから2値化回路までの信号処理系を2系統としたが、3系統以上の信号処理系を準備して並列処理を行うようにすることもできる。こうすると、さらなる再生速度の高速化・倍速化に対応することが可能となる。
【0076】
この場合、それぞれの適応型イコライザに適用されるタップ値は、上記図2の構成例に従う場合には、それぞれの適応型イコライザにて検出される理想サンプル値に対するずれ量ei(n)を図2における加算器514にて加算し、また、各系列のデジタルイコライザからのリサンプルデータの集合Xi(n)を図2における加算器516にて加算するよう構成することにより、タップ値更新部518にて生成される。なお、この場合、全ての系列のずれ量とリサンプルデータの集合をそれぞれ加算せずに、予め設定した系列のずれ量とリサンプルデータの集合を加算器514および加算器516にて加算するようにすることもできる。
【0077】
また、上記図6の構成例に従う場合には、何れか一つの系列において求めたタップ値が、それぞれの系列のデジタルイコライザに共通に設定される。
【0078】
この他、上記実施の形態では、セレクタ100にデータをバッファリングさせ、これを順次読み出すことにより、データを一系統化させるようにしたが、メモリ70の別領域にデータを書き戻し、ここから順次読み出すことによりデータを一系統化するようにすることもできる。
【0079】
本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】実施の形態に係るディスク再生装置の構成を示す図
【図2】実施の形態に係る適応型イコライザの構成を示す図
【図3】実施の形態に係る並列処理の流れを説明する図
【図4】実施の形態に係る並列処理の流れを説明する図
【図5】実施の形態に係る並列処理の流れを説明する図
【図6】実施の形態に係る適応型イコライザの変更例を示す図
【図7】実施の形態に係るディスク再生装置の変更例を示す図
【図8】従来例に係るディスク再生装置の構成を示す図
【図9】従来例に係る適応型イコライザの構成を示す図
【図10】従来例に係るデジタルイコライザの構成を示す図
【符号の説明】
【0081】
51、52…適応型イコライザ
511、521…デジタルイコライザ
512、522…理想サンプル値計算部
513、523…減算部
514…加算部
515…比率調整部
516…加算部
517…乗算部
518…タップ値更新部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生データが所定データユニットずつ順次振り分けて供給される複数の適応型イコライザと、前記適応型イコライザに波形等化のための係数を設定する係数設定回路とを備え、
前記複数の適応型イコライザのうち2以上の適応型イコライザに対応して1つの前記係数設定回路が配され、該係数設定回路はこれら対応する適応型イコライザに共通の前記係数を生成してこれら適応型イコライザに設定する、
ことを特徴とするデータ再生回路。
【請求項2】
請求項1に記載のデータ再生回路において、
前記係数設定回路は、前記対応する適応型イコライザのうち予め設定した適応型イコライザにおいて生じる波形等化誤差に基づいて前記係数を生成し、生成した係数を対応する全ての適応型イコライザにそれぞれ設定する、
ことを特徴とするデータ再生回路。
【請求項3】
請求項2に記載のデータ再生回路において、
前記係数設定回路は、前記対応する各々の適応型イコライザにおいて生じる波形等化誤差に基づいて前記係数を生成し、生成した係数を対応する全ての適応型イコライザにそれぞれ設定する、
ことを特徴とするデータ再生回路。
【請求項4】
請求項2に記載のデータ再生回路において、
前記係数設定回路は、前記対応する適応型イコライザのうち何れか一つにおいて生じる波形等化誤差に基づいて前記係数を生成し、生成した係数を対応する全ての適応型イコライザにそれぞれ設定する、
ことを特徴とするデータ再生回路。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一項に記載のデータ再生回路において、
前記係数設定回路は、前記再生データの理想値を求める回路を備え、該回路にて求めた理想値と波形等化後のデータ値とを比較して、前記波形等化誤差を求める、
ことを特徴とするデータ再生回路。
【請求項6】
再生データが所定データユニットずつ順次振り分けて供給される複数の適応型イコライザと、前記適応型イコライザに波形等化のための係数を設定する係数設定回路とを備え、
前記複数の適応型イコライザのうち2以上の適応型イコライザに対応して1つの前記係数設定回路が配され、該係数設定回路はこれら対応する適応型イコライザに共通の前記係数を生成してこれら適応型イコライザに設定する、
ことを特徴とするデータ再生装置。
【請求項7】
請求項6に記載のデータ再生装置において、
前記係数設定回路は、前記対応する適応型イコライザのうち予め設定した適応型イコライザにおいて生じる波形等化誤差に基づいて前記係数を生成し、生成した係数を対応する全ての適応型イコライザにそれぞれ設定する、
ことを特徴とするデータ再生装置。
【請求項8】
請求項7に記載のデータ再生装置において、
前記係数設定回路は、前記対応する各々の適応型イコライザにおいて生じる波形等化誤差に基づいて前記係数を生成し、生成した係数を対応する全ての適応型イコライザにそれぞれ設定する、
ことを特徴とするデータ再生装置。
【請求項9】
請求項7に記載のデータ再生装置において、
前記係数設定回路は、前記対応する適応型イコライザのうち何れか一つにおいて生じる波形等化誤差に基づいて前記係数を生成し、生成した係数を対応する全ての適応型イコライザにそれぞれ設定する、
ことを特徴とするデータ再生装置。
【請求項10】
請求項6ないし9の何れか一項に記載のデータ再生装置において、
前記係数設定回路は、前記再生データの理想値を求める回路を備え、該回路にて求めた理想値と波形等化後のデータ値とを比較して、前記波形等化誤差を求める、
ことを特徴とするデータ再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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