説明

データ処理システム及びそのプログラム

【課題】基となるデータに対して複数の異なるデータ処理を順次実行してゆく形態のデータ処理において、データ処理の種類、その実行順序、パラメータの設定といった事項を試行錯誤の上で決定しなければならない場合に、従来はデータ処理を一つずつ実行しなければならず非効率であった。
【解決手段】各データ処理の処理内容が記憶された処理記憶部と、アイコン配置命令の入力に基づき、一又は複数の処理アイコンを表示部に表示するアイコン表示部と、処理実行命令の入力に基づき、表示部に表示されている処理アイコンの並び順に、前記基データに対してデータ処理を実行する処理実行部と、を含んだシステム構成とする。表示部に表示されている処理アイコンの並び順に応じてデータ処理が実行されるため、逐一データ処理実行の命令を与える必要がなくなる。データ処理の種類を変更したり、順番を入れ替えたりすることも容易に行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ処理システムに関するものである。詳細には、データ処理実行の対象となる基データに対して各種のデータ処理を順次実行してゆくシステム及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
クロマトグラフ、分光光度計をはじめとする各種の分析装置や計測装置を用いて取得されたスペクトルグラムなどのデータは、取得されたものを最終的なデータとするのではなく、より正確なデータを得るために、またより扱い易いデータとするために、種々の補正処理を行うことが一般的である(こういったデータ処理に関する技術の一例として、特許文献1にはベースライン補正を行う際にノイズの増加を防止するための発明が開示されている。)。
【0003】
このようなデータ処理の種類は多岐に亘るが、FTIR(フーリエ変換赤外分光光度計)の例を考えてみる。FTIRによって得られたスペクトル(ここではこれが基データとなる)に対して行うデータ処理には以下のようなものが含まれる。
【0004】
・ベースライン補正(ゼロベースライン)…スペクトルの最小値を0とするための変換処理
・ベースライン補正(3点ベースライン)…スペクトル上の3点で強度を設定することにより行うベースライン補正処理
・ベースライン補正(多点ベースライン)…ベースラインを決めるために指定された複数のベースポイントに基づくベースライン補正処理
・スムージング…スペクトルのノイズ軽減処理
・データ直線補完…スペクトル上の2点の波数のデータ点を直線補完する処理
・データ点数間引き…スペクトルのデータ点間隔を粗くするための処理
・データ点数補完…スペクトルのデータ点間隔を細かくするための処理
【0005】
ユーザは基データに対して、上記のデータ処理のうち、適切なものを一つ選択して実行したり、複数のデータ処理を組み合せて順番に実行したりすることにより、基データのスペクトル波形を補正する。また、データ処理の種類によってはパラメータも適宜に設定する。
すなわち、ユーザは基データに対してデータ処理を行う際に、データ処理の内容について少なくとも以下の事項を決定する。
・データ処理の種類
・パラメータの値
・複数のデータ処理を実行する場合にはそれらの実行順序
【0006】
なお、本明細書では上記項目によって定められる一連のデータ処理のことを「データ処理構成」と称する。
【0007】
【特許文献1】特開平9-229882号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
データ処理構成が予め定められていない場合、データ処理構成を決定するにあたって、ユーザは最適なデータ処理結果が得られるように何度も試行錯誤(実行するデータ処理の選択、パラメータの変更や、処理順序の変更)を繰り返す必要がある。
ここでデータ処理の順序によって処理結果が異なることを表す実例として、基データであるスペクトル波形に対して「データ点数間引き」→「スムージング」というデータ処理を順に実行した場合の処理結果例を図9(a)に、それとは逆に「スムージング」→「データ点数間引き」の順でデータ処理を実行した場合の処理結果例を図9(b)に示す。図9(a)および図8(b)の波形が明らかに相違していることがわかる。
【0009】
従来、データ処理構成を決定するために行う試行錯誤の段階において、非常に手間がかかってしまうという問題があった。その原因は、一つのデータ処理を実行するために、ユーザがその都度逐一命令を与えなければならないからである。例えばデータ処理A、B、Cという3種類のデータ処理を順に実行するためには、(1)Aを実行するよう命令して結果を得る→(2)Bを実行するよう命令して結果を得る→(3)Cを実行するよう命令して結果を得る、という手順を踏む必要がある。この一連のデータ処理を行った後、比較のためにB→A→Cの順でデータ処理を実行しようとすると、(1)Bを実行するよう命令して結果を得る→(2)Aを実行するよう命令して結果を得る→(3)Cを実行するよう命令して結果を得る、という作業を改めて行わなければならなかった。そして、このように逐次一つずつデータ処理を実行しなければならないことは、単に手間が掛かって面倒であるというだけでなく、最終結果の比較を行い難いという問題に繋がっていた。すなわち、適切なデータ処理構成を決定することが困難となっていた。
【0010】
また、従来は複数のデータ処理を実行した後に、途中で実施したデータ処理が不要であることが疑われる場合、その処理の直前段階までデータ状態を戻すことはできるが、そのデータ処理以降の全データ処理がキャンセルされてしまっていた。即ち例えばA→B→C→Dというデータ処理を行った後、A→C→Dというデータ処理を試してみたい場合、一旦データをデータ処理Aが実行された後の状態にまで戻して、次いでCを実行→Dを実行という作業を行わねばならなかったのである。このため、途中のデータ処理の有無に限った比較を行い難く、作業効率も悪いという問題があった。
【0011】
さらに、従来はパラメータの変更についても同様に手間が掛かっていた。複数のデータ処理を順に実行する場合には、最後に行ったデータ処理についてはそれをキャンセルしてパラメータを変更したり、異なるデータ処理を行ったりすることはできるが、途中で実行したデータ処理のパラメータについては、そこだけを変更するということができず、そのデータ処理の前段階までデータ状態を戻し、再度各データ処理を行わねばならない。例えばA→B→Cという順序でデータ処理を行った後で、データ処理Aのパラメータを変更するとどのような結果になるかを知りたい場合、データをデータ処理Aの前の状態にまで戻して、Aのパラメータを変更した後に再びAを実行→Bを実行→Cを実行という手順で命令を与えていく必要があった。従って、途中のデータ処理のパラメータ差に限った比較が煩わしく困難であった。
【0012】
本発明は以上のような問題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、基データに対して種々のデータ処理を実行するためのシステムにおいてデータ処理構成を決定するのに要する試行錯誤にかかる手間を削減し、その作業効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために成された本発明に係るデータ処理システムは、基データに対して各種のデータ処理を行うためのデータ処理システムであって、
a)アイコン配置命令、処理実行命令を入力するための入力部と、
b)各データ処理の処理内容が記憶された処理記憶部と、
c)各データ処理を処理アイコンとして表示するための表示部と、
d)アイコン配置命令の入力に基づき、一又は複数の処理アイコンを表示部に表示するアイコン表示部と、
e)処理実行命令の入力に基づき、表示部に表示されている処理アイコンの並び順に、前記基データに対してデータ処理を実行する処理実行部と、
を備えることを特徴とする。
【0014】
上記データ処理システムは、更に配列順変更命令の入力に基づき、前記表示部に表示されている処理アイコンの並び順を変更する順序変更部を更に備えた構成とすることができる。
【0015】
また、上記データ処理システムは、表示部に表示されている処理アイコンのうち所定の処理アイコンに対するパラメータ変更要求を受け、該処理アイコンに対応するデータ処理の各種パラメータを設定するためのパラメータ設定画面を表示するパラメータ変更部を更に備える構成としてもよい。
【0016】
本発明のデータ処理システムは、上記いずれかの構成において、表示部に表示されている処理アイコンのうち所定の処理アイコンに対する処理一時キャンセル要求を受け、前記処理実行部が該データ処理をスキップする構成とすると良い。
【0017】
更にまた、本発明のデータ処理システムは、表示部に表示されている処理アイコンの並び順及び/又は各処理アイコンに対応するデータ処理のパラメータを記憶する処理順記憶部を更に備えた構成とすることが望ましい。
【0018】
また、本発明のデータ処理システムは、上記構成に加えて更に、
前記処理実行部によってデータ処理が行われた後、各データ処理について、該データ処理終了後のデータを記憶する処理後データ記憶部と、
処理後データ閲覧要求の入力を受けて、該処理後データ閲覧要求にて指定されたデータ処理直後のデータを表示部に表示する中途データ表示部と、
を備えた構成とすることが望ましい。
【0019】
また、本発明のデータ処理装置が処理の対象とする基データは、分析処理又は計測処理を実行することにより得られたデータとするのが好適である。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るデータ処理システムによれば、一つのデータ処理が一つの処理アイコンとして表示され、その処理アイコンの並び順に全データ処理が一度に実行される。すなわち、ユーザは従来のように一段階ずつデータ処理の実行を命令してゆく必要がなくなり、作業の迅速化及びユーザの労力軽減が図られる。また、これにより、得られる結果の比較を行いやすくなるという効果も得られる。
また、ユーザは所望のデータ処理に対応した処理アイコンを、表示部上で配置整列させるだけでデータ処理の順序を組み立てることができるから、操作を直観的に行うことができる。また、表示部に表示されている処理アイコンを一瞥するだけで、データ処理が行われる順序を直ちに把握することができる。
【0021】
本発明に係るデータ処理システムが順序変更部を備えた構成では、一旦表示部上に配置された処理アイコンの順序を任意に変更することが可能である。即ち、データ処理の実行順序を簡単に変更することができる。
【0022】
更に、パラメータ変更部を更に備えたシステム構成とすることにより、一度作成されたデータ処理構成を保持したまま、所望のデータ処理のパラメータのみを変更することができる。従って、パラメータの違いによって生じる最終的なデータ処理結果の比較を素早く行うことができるようになる。
【0023】
また、所定の処理アイコンに対して一時キャンセル要求を受けて処理実行部が該データ処理をスキップする構成では、一連のデータ処理構成における途中のデータ処理の有無によるデータ処理結果の比較を素早く行うことができる。
【0024】
更にまた、処理順記憶部を備えた構成によれば、過去に作成したデータ処理構成を後から呼び出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1に、本発明の一実施形態によるデータ処理システム1の全体構成を示す。図1に示すように、CPU2、メモリ3、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等から成る表示部4、キーボードやマウス等から構成される入力部5、ハードディスクやフラッシュメモリ等から成る記憶部6が相互に接続されている。記憶部6には図示せぬOS(Operating System)のほか、データ処理プログラム7、処理記憶部8、処理順記憶部9が記憶されている。データ処理プログラム7は、図示せぬCD−ROMドライブやDVD−ROMドライブ、又はネットワーク回線等を介して外部の記憶媒体よりインストールされたものである。
本システムにおいて、基データは記憶部6の所定領域に保存しておいてもよいし、メモリ3に一時的に保存しておくこともできる。
【0026】
本発明に係るデータ処理システムにおいて、アイコン表示部および処理実行部、また、順序変更部、パラメータ変更部はCPU2がデータ処理プログラムを実行することによりソフトウェア的に実現される構成である。
【0027】
処理記憶部には、本システムにおいて利用可能なデータ処理の各々について、その処理を実行するための詳細内容が予め記憶されている。パラメータの指定が可能なデータ処理には、パラメータの初期値も含めておく。
【0028】
以下、CPU2がデータ処理プログラムを実行することによって行われるデータ処理の例について説明する。
【0029】
(データ処理構成画面)
入力部5からデータ処理構成の作成指示が入力されると、CPU2は図2に示すようなデータ処理構成画面を表示部に表示する。このときCPU2は処理記憶部8を参照して、使用可能なデータ処理を処理アイコンに変換して一覧表示させる。図2の例では、データ処理構成画面の右欄(データ処理機能一覧リスト)にデータ処理A〜Nまでの処理アイコンが表示されている。なお、表示部に表示される処理アイコンの形状は特に限定されるものではなく、ボタン状であってもよいし単なるテキストであってもよい。ただし、各処理アイコンには対応するデータ処理の名称や略称がわかりやすいように表示される必要がある。
【0030】
(データ処理の登録)
ユーザはデータ処理構成画面において、入力部5を用いてマウスポインタを操作し、一覧表示されている処理アイコンから任意のものをドラッグして、データ処理登録欄内でその処理アイコンをドロップする(アイコン配置命令の入力)。図2には、データ処理Dに対応する処理アイコンがデータ処理登録欄内にドラッグされているところが示されている。処理アイコンがデータ処理登録欄内でドロップされると、CPU2は、その処理アイコンをデータ処理登録欄内に表示する。特にデータ処理登録欄内に複数の処理アイコンが含まれる場合には、それら複数の処理アイコンが一次元に整列するように自動配置表示するのが好ましい。
【0031】
複数のデータ処理を登録する場合には、ユーザは上述したようなドラッグアンドドロップ動作を繰り返す。CPU2は処理アイコンがドラッグアンドドロップされると、その都度、データ処理登録欄内において該処理アイコンがドロップされた位置にその処理アイコンを表示させる。若しくは複数の処理アイコンがきれいに整列するように、データ処理登録欄内の所定の箇所にその処理アイコンを配置して表示させる。処理アイコンの配列順は必ずしもドロップされた順番とする必要はなく、ユーザがドロップした位置に応じて処理アイコンの配列順を定めればよい。図3(a)には、データ処理Fの処理アイコンをデータ処理Dとデータ処理Kの処理アイコンの間にドロップする動作が示されている。既に配置表示されているデータ処理Dとデータ処理Kの間にデータ処理Fの処理アイコンをドロップすると(図3(a))、データ処理アイコンがデータ処理D、F、Kの順に配列表示される(図3(b))。
【0032】
また、ある処理アイコンを一旦登録した後にその登録を取り止めることも可能な構成とするのがよい。例えばユーザがデータ処理登録欄側から一覧リスト側にドラッグアンドドロップしたり、取り止めようとする処理アイコンを選択した状態でデータ処理構成画面に表示されている「除外」ボタンを押下したりすると、CPU2はその処理アイコンをデータ処理登録欄から削除する。
【0033】
(処理アイコンの配列順変更)
データ処理登録欄内において表示されている処理アイコンの並び順は、入力部からの指示に基づいて自由に変更を行える構成とするとよい。図4(a)に、データ処理登録欄においてデータ処理D、F、K、G、Jの順に処理アイコンが表示されているときに、ユーザがマウスポインタを操作することによって処理アイコンKを処理アイコンD及びFの間に移動させる動作の例を示す。CPU2はこの入力を受けると、図4(b)に示すように表示部における処理アイコンの配列順をデータ処理D、K、F、…となるように変更する。
【0034】
(データ処理構成画面)
図5に、複数の処理アイコンがドラッグアンドドロップされた後のデータ処理構成画面表示例を示す。ここでは処理アイコンがデータ処理D、F、K、G、Jの順に整列配置されている。
なお、図5に示すデータ処理構成画面では、一覧リスト(右欄)において表示されている処理アイコンの形状とデータ処理登録欄(左欄)に表示されている処理アイコンの形状とが異なっている。これにより、ユーザが一覧リストと登録欄とを混同してしまうことが防止される。
また、図5の例ではデータ処理登録欄内に配置された処理アイコンに対応する処理アイコンは、一覧リスト側において使用不能(枠が点線で表示されている)となっているが、これは同一種類のデータ処理を複数回実行することを許可しない設定が予め行われていることによる。もちろん同一種類のデータ処理の複数回実行を許可する設定としても構わない。
【0035】
(データ処理の実行)
図5に示すデータ処理構成画面においてユーザがマウスポインタ等を操作することにより「処理実行」ボタンを押すと、処理実行命令が生成される。CPU2はその処理実行命令を受けると、処理記憶部8を参照しつつ表示部のデータ処理登録欄内に表示されている処理アイコンの並び順に、各処理アイコンに対応するデータ処理を実行してゆく。図5の例ではD、K、F、G、Jの順にデータ処理が実行される。データ処理の実行が終了すると、CPU2は処理の結果を入力部からの命令に応じて(例:結果表示ボタンの押下)、または自動的に表示部4に表示する。図5に示す例のように処理アイコンが一次元に整列配置されていない場合であっても、ある次元におけるそれらの処理アイコンの並び順(例えば上下方向の並び順)に応じてデータ処理を実行すればよい。
【0036】
(パラメータの変更)
各データ処理のパラメータは特に変更指示が無い場合には初期値を採用するが、ユーザがデータ処理のパラメータを変更することもできる(パラメータの設定が不要のデータ処理は除く)。図6は、データ処理登録欄に配列表示されているデータ処理のうち、データ処理Fのパラメータを変更する場合の画面表示例である。ユーザがマウスポインタを操作することによってデータ処理Fの処理アイコンを選択(図6(a))した状態で「設定変更」ボタン(図2参照)を押下したり、処理アイコンFをダブルクリックしたりすることにより、データ処理Fに関するパラメータ変更要求が生成される。そのパラメータ変更要求の入力を受けると、CPU2は表示部4にデータ処理Fのパラメータ設定画面を表示させる(図6(b))。ユーザがこの設定画面において設定可能なパラメータに対して適宜に設定を行った後「OK」ボタンを押すことにより、データ処理登録欄に表示されているデータ処理Fのパラメータが更新される。
【0037】
(データ処理の一時キャンセル)
本発明に係るシステムにおいては、上述したように、データ処理登録欄に表示されているデータ処理の所望のものを除外することが可能である。しかし、あるデータ処理を含めるか含めないかによって生じるデータ処理結果の違いを素早く比較したい場合のために、データ処理登録欄からそのデータ処理を除外してしまうのではなく、一時的にキャンセルすることができる構成とするのが好適である。この構成の動作例を図7に示す。一時的にキャンセルしたいデータ処理の処理アイコンを選択した状態で「一時除外」ボタンを押下したり、図7(a)に示すように処理アイコンに含まれるチェックマークをクリックしたりすることにより(これを処理一時キャンセル要求と呼ぶ)、図7(b)に示すように、その処理アイコンのチェックマークが消える。これによりその処理アイコンに対応するデータ処理が一時的にキャンセルされ、処理実行命令が入力された際にはそのデータ処理はスキップされる(実行されない)。即ち、処理アイコンが図7(b)に示されている状態で「処理実行」ボタンが押下されると、基データに対してデータ処理D、K、G、Jという順にデータ処理が実行される。
【0038】
(処理順の記憶)
現在データ処理登録欄に表示されている処理アイコンの状態(データ処理構成)を記憶しておきたい場合には、ユーザは入力部5を操作し、データ処理構成画面において「記録」ボタンを押下すること等によって、処理順記憶命令を与える。処理順記憶命令を受けるとCPU2は処理順記憶部9に、現在表示されている処理アイコンの表示順を記憶する。ここで「処理アイコンの表示順を記憶」とは、データ処理の順序自体を記憶することも含むものとする。
また、処理順記憶命令が与えられると、CPU2は処理順記憶部に単に順序のみを保存するのではなく、データ処理のパラメータを含めて保存することもできる。
【0039】
以上、本発明に係るデータ処理システムの実施形態について説明を行ったが、上記は例に過ぎないことは明らかであって、本発明の精神内において適宜に改良や変更を行っても良いことは当然である。
【0040】
一変形例として、図8に示すように記憶部6内に処理後データ記憶部10を更に備えておき、複数のデータ処理から成るデータ処理が実行されたとき、各データ処理が終了した段階で得られたデータの結果を保存しておく構成とすることもできる。一連のデータ処理が終了した後、CPU2(中途データ表示部)はユーザの求め(処理後データ閲覧要求)に応じて任意のデータ処理後のデータを表示する。これによってユーザは最終的な処理結果だけではなく、途中のデータの状態を個別に知ることができるようになるから、ユーザはどの段階のデータ処理に問題があったのかを的確に知ることができ、データ処理構成の作成における試行錯誤をより高効率で行えるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係るシステムが扱う基データは、分析処理又は計測処理を実行することにより得られたデータとするのが望ましい。そのためには、各種の分析/計測処理システムに、本発明のデータ処理システムを組み込んだり、ネットワークを介してデータ通信可能に接続したりするシステム構成とするのがよい。
先に述べたように、分析処理や計測処理では一般に、処理を実行した結果得られたデータからノイズ等を除去することによって一層正確なデータとなるようにデータ補正が行われる。そして、このデータ補正は複数種類のデータ処理を適宜に組み合わせてそれらを順次実行することにより行われる。本発明に係るデータ処理システムを用いることにより、最適なデータ処理構成を極めて高効率で作成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係るデータ処理システムの構成例。
【図2】データ処理構成画面において処理アイコンを配置する動作を示す例。
【図3】(a)処理アイコンをデータ処理登録欄にドラッグアンドドロップするユーザの動作を示す例、(b)処理アイコンが整列した状態を示す例。
【図4】(a)処理アイコンの配置位置を変更する動作を表す図。(b)表示部において処理アイコンの配列順が変更された状態を示す図。
【図5】データ処理構成画面の例。
【図6】(a)処理アイコンの選択状態を示す図。(b)パラメータ設定画面の例。
【図7】あるデータ処理を一時的にキャンセルしようとする際に(a)処理アイコンのチェックマークをクリックして、(b)該チェックマークが消える、ことを示す画面表示例。
【図8】本発明に係るデータ処理システムの他の構成例。
【図9】(a)「データ点数間引き→スムージング」、(b)「スムージング→データ点数間引き」、の順にデータ処理を行った後のデータを示すグラフ。
【符号の説明】
【0043】
1…データ処理システム
2…CPU
3…メモリ
4…表示部
5…入力部
6…記憶部
7…データ処理プログラム
8…処理記憶部
9…処理後データ記憶部
10…処理順記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基データに対して各種のデータ処理を行うためのデータ処理システムであって、
a)アイコン配置命令、処理実行命令を入力するための入力部と、
b)各データ処理の処理内容が記憶された処理記憶部と、
c)各データ処理を処理アイコンとして表示するための表示部と、
d)アイコン配置命令の入力に基づき、一又は複数の処理アイコンを表示部に表示するアイコン表示部と、
e)処理実行命令の入力に基づき、表示部に表示されている処理アイコンの並び順に、前記基データに対してデータ処理を実行する処理実行部と、
を備えることを特徴とするデータ処理システム。
【請求項2】
配列順変更命令の入力に基づき、前記表示部に表示されている処理アイコンの並び順を変更する順序変更部を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のデータ処理システム。
【請求項3】
表示部に表示されている処理アイコンのうち所定の処理アイコンに対するパラメータ変更要求を受け、該処理アイコンに対応するデータ処理の各種パラメータを設定するためのパラメータ設定画面を表示するパラメータ変更部を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のデータ処理システム。
【請求項4】
表示部に表示されている処理アイコンのうち所定の処理アイコンに対する処理一時キャンセル要求を受け、前記処理実行部が該データ処理をスキップすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のデータ処理システム。
【請求項5】
表示部に表示されている処理アイコンの並び順及び/又は各処理アイコンに対応するデータ処理のパラメータを記憶する処理順記憶部を更に備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のデータ処理システム。
【請求項6】
前記処理実行部によってデータ処理が行われた後、各データ処理について、該データ処理終了後のデータを記憶する処理後データ記憶部と、
処理後データ閲覧要求の入力を受けて、該処理後データ閲覧要求にて指定されたデータ処理直後のデータを表示部に表示する中途データ表示部と、
を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のデータ処理システム。
【請求項7】
前記基データが、分析処理又は計測処理を実行することにより得られたデータであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のデータ処理システム。
【請求項8】
基データに対して各種のデータ処理を行うためのデータ処理システムに利用するためのプログラムであって、
各データ処理の処理手順が記憶された処理記憶部と、
各データ処理を処理アイコンとして表示するための表示部と、
を備えたコンピュータを、少なくとも、
アイコン配置命令の入力に基づき、一又は複数の処理アイコンを表示部に表示するアイコン表示部と、
処理実行命令の入力に基づき、表示部に表示されている処理アイコンの並び順に、前記基データに対してデータ処理を実行する処理実行部と、
して機能させることを特徴とするデータ処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−129700(P2008−129700A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−311571(P2006−311571)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】