説明

データ記憶装置

【課題】システム領域へのアクセスに対する処理時間の軽減と信頼性の向上とを両立させるデータ記憶装置を提供する。
【解決手段】システムデータが多重に記録される複数のシステムデータ記録領域とユーザデータ記録領域とを有する記録媒体と、記録媒体へのデータ書込みおよび記録媒体からのデータ読出しを行うヘッドと、ヘッドに記録媒体上のシステムデータの更新を行わさせるシステムデータ更新制御部とを備え、複数のシステムデータ記録領域それぞれを2つのサブ記録領域に分け、新たなシステムデータへの更新ごとに交互に選択された一方のサブ記録領域に新たなシステムデータを多重に記録させるとともに、その一方のサブ記録領域から新たなシステムデータを読み出させて正しく記録されていることの確認を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システムデータを多重化して記録するデータ記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
情報化社会の進展に伴い、情報量は増大の一途を辿っている。この情報量の増大に対応して、大容量かつ低価格な記憶装置の開発が求められている。特に、磁場で情報アクセスが行われる磁気ディスクは、情報の書き換えが可能な高密度記憶媒体として注目されており、磁気ディスクとヘッドとを内蔵し、ヘッドで磁気ディスクに対して情報アクセスを行う磁気ディスク装置は、さらなる大容量化のために盛んに研究開発が行われている。
【0003】
磁気ディスク装置は、パーソナルコンピュータやサーバ装置などといった電子機器に搭載されて使用されることが多く、磁気ディスクには、情報アクセスの対象であるユーザデータに加えて、装置のシリアル番号、ユーザ領域中の欠陥領域を示す管理情報、セキュリティ用のパスワード、およびアクセスエラーのログなどで構成されたシステムデータが記録されている。通常、磁気ディスクの最外周や最内周にシステムデータが記録されるシステム領域が用意されており、ユーザによってパスワードが変更されたり、アクセスエラーが発生すると、システム領域に対して情報アクセスが実行されてシステムデータが更新される。
【0004】
ここで、電子機器の電源が投入されると、まずは、磁気ディスクに記録されたシステムデータが読み出されてパスワードや管理情報などが取得され、それらを使って電子機器が起動される。このため、データの更新時などにシステム領域に記録されたシステムデータを破壊してしまうと、電子機器を起動することができなくなってしまう恐れがある。特に、近年では、磁気ディスク装置の容量を向上させために、磁気ディスクのTPI(1インチ当たりのトラック数)を増加させることなどが行われており、隣接するトラック間の距離(トラックピッチ)が狭まることによって、システム領域へのアクセスエラーが発生しやすくなってきている。
【0005】
このような問題を解決する方法として、データを更新した後で、新たに書き込まれたデータを読み出してエラーの有無を確認し、エラーが発生している場合には正しいデータを書き込みなおすベリファイ処理を適用することが考えられる(例えば、特許文献1参照)。また、システムデータの記録に関しては、磁気ディスクに複数のシステム領域を用意しておき、それら複数のシステム領域にシステムデータを多重に記録しておくことも広く行われている。これらシステムデータの多重化とベリファイ処理とを適用することによって、データ更新の信頼性を向上させることができるとともに、1つのシステム領域自体が破壊されてしまっても、別のシステム領域に記録されたシステムデータを読み出して電子機器の起動等を行うことができる。
【0006】
しかし、システムデータの多重化とベリファイ処理との両方を同時に適用する場合、データを更新するたびにデータの書込みと読出しとの両方を実行する必要があるうえ、さらにそれらを複数のシステム領域それぞれに対して実行するため、アクセス時間が増加してしまうという問題がある。
【0007】
この点に関し、特許文献2には、媒体を識別する識別情報を読み出し、その識別情報に応じてベリファイ処理のON/OFFを自動的に切り替える技術について記載されており、特許文献3には、複数のシステム領域それぞれに対するアクセス回数を記録しておき、システムデータを読み出すときには、複数のシステム領域のうちアクセス回数が最も大きいシステム領域に記録されたシステムデータを読み出す技術について記載されている。特許文献2に記載された技術によると、データ更新の信頼性が高い媒体に対してベリファイ処理を省くことができ、特許文献3に記載された技術によると、複数のシステム領域それぞれに記録された複数のシステムデータを全て読み出して比較する手間を省き、それら複数のシステムデータのうちの最新のシステムデータを容易に取得することができる。
【特許文献1】特開2004−319080号公報
【特許文献2】特開2006−309866号公報
【特許文献3】特開2005−322287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述した技術を適用しても、システム領域へのアクセスに対する処理時間の軽減と信頼性の向上とを十分には両立させることができない。特に、全てのシステム領域に対するシステムデータの読み出しに失敗してしまうと、電子機器を起動することができなくなってしまうという問題がある。
【0009】
尚、この問題は、磁気ディスクに対して情報アクセスを実行する磁気ディスク装置に限らず、システムデータが多重に記録された記録媒体に情報アクセスを実行するデータ記憶装置に一般的に当てはまる問題である。
【0010】
上記問題に鑑み、本件開示のデータ記憶装置の課題は、システム領域へのアクセスに対する処理時間の軽減と信頼性の向上とを両立させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本件開示のデータ記憶装置の第1の基本形態は、
システムデータが多重に記録される複数のシステムデータ記録領域とユーザデータが記録されるユーザデータ記録領域とを有する記録媒体と、
記録媒体へのデータ書込みおよび記録媒体からのデータ読出しを行うヘッドと、
ヘッドに、記録媒体上のシステムデータの更新を行わさせるシステムデータ更新制御部とを備え、
システムデータ更新制御部が、ヘッドに、複数のシステムデータ記録領域それぞれを2つのサブ記録領域に分けたときの、複数のシステム記録領域に亘る、新たなシステムデータへの更新ごとに交互に選択された一方のサブ記録領域に、新たなシステムデータを多重に記録させるとともに、その一方のサブ記録領域から新たなシステムデータを読み出させて正しく記録されていることの確認を行うものであることを特徴とする。
【0012】
このデータ記憶装置の第1の基本形態によると、複数のシステムデータ記録領域それぞれがさらに2つのサブ記録領域に分けられ、システムデータを更新する際には、交互に選択された一方のサブ記録領域にシステムデータが記録されるとともに、記録されたシステムデータが読み出されてエラーの有無が確認される。このため、複数のシステムデータ記録領域それぞれに対し、選択された一方のサブ記録領域に記録されたシステムデータの読み出しに失敗してしまっても、他方のサブ記録領域に記録されている古いシステムデータを読み出してデータ記憶装置の起動処理などを実行することができる。また、選択された一方のサブ記録領域に対してのみシステムデータの記録および確認が実行され、選択されていない他方のサブ記録領域に対しては処理が省かれるため、処理時間の増加を軽減することができる。
【0013】
また、本件開示のデータ記憶装置の第2の基本形態は、
システムデータが多重に記録される複数のシステムデータ記録領域とユーザデータが記録されるユーザデータ記録領域とを有する記録媒体と、
記録媒体へのデータ書込みおよび該記録媒体からのデータ読出しを行うヘッドと、
ヘッドで読み出されたシステムデータを一時的に保存する、複数の分割領域を有するバッファと、
バッファに記録されたシステムデータを消去する消去部と、
ヘッドに、複数のシステムデータ記録領域それぞれに記録されたシステムデータの読出しを行わさせるシステムデータ読出制御部とを備え、
システムデータ読出制御部が、ヘッドに、複数のシステムデータ記録領域それぞれに記録されたシステムデータを順次に読み出させて、バッファに順次に保存するにあたり、バッファに先に読みだされた2つのシステムデータが保存された段階で2つのシステムデータの新旧を比較し、3つ目以降のシステムデータについては、バッファ上の古い方のシステムデータに上書きしてバッファ上の2つのシステムデータの新旧を比較する過程を繰り返すことにより最新のシステムデータを得るものであり、
上記消去部は、システムデータ読出制御部が最新のシステムデータを得た後、バッファ上に保存されたデータを消去するものであることを特徴とする。
【0014】
近年、パーソナルコンピュータなどに対してセキュリティ機能の強化が強く求められてきており、パスワードなどを含むシステムデータが一時的に保存されるバッファに記録されたデータも確実に消去することが必要となってきている。しかし、システムデータは多重化が進んできており、複数のデータ記録領域それぞれに記録された複数のシステムデータを読み出して一度にバッファに保存してしまうと、その保存されたシステムデータの消去に時間がかかってしまう。特に、電子機器の電源が切れるまでの間にシステムデータの消去が終了しない場合、次に電子機器の電源を入れたときに、バッファに残っているパスワードが第3者に不正に取得されてしまう恐れがある。
【0015】
このデータ記憶装置の第2の基本形態によると、複数のシステムデータ記録領域それぞれに記録されたシステムデータがバッファの分割領域に順次に保存され、先に保存された2つのシステムデータが比較されて相対的に古いシステムデータが新たなシステムデータに上書きされることにより、最終的に最新のシステムデータが取得される。このため、複数のシステムデータを一度に読み出してバッファに保存する場合と比較して、システムデータが記録されるバッファ領域を軽減することができ、最新のシステムデータが取得された後でバッファに保存されたシステムデータを高速かつ確実に消去することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、データ記憶装置の基本形態によると、システム領域へのアクセスに対する処理時間の軽減と信頼性の向上とを両立させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して、上記説明した基本形態に対する具体的な実施形態を説明する。
【0018】
図1は、ハードディスク装置100の外観図である。
【0019】
ハードディスク装置100は、パーソナルコンピュータなどに代表されるホスト装置に接続され、あるいは内部に組み込まれて利用される。
【0020】
図1(A)に示すように、ハードディスク装置100のハウジング101には、情報が記録される磁気ディスク1、磁気ディスク1を矢印R方向に回転させるスピンドルモータ102、磁気ディスク1の表面に近接して対向する浮上ヘッドスライダ104、アーム軸105、浮上ヘッドスライダ104を先端に固着して、アーム軸105を中心に磁気ディスク1上を面に沿って移動するキャリッジアーム106、キャリッジアーム106を駆動するボイスコイルモータ107、およびハードディスク装置100の動作を制御する制御回路108が収容されている。磁気ディスク1は、上述したデータ記憶装置の基本形態における記録媒体の一例に相当する。
【0021】
また、図1(B)に示すように、浮上ヘッドスライダ104の、磁気ディスク1と対向する面の先端側には、磁気ディスク1に磁場を印加する磁気ヘッド109が設けられている。ハードディスク装置100は、この磁場を使って磁気ディスク1に情報を記録したり、磁気ディスク1に記録された情報を読み取るものである。磁気ヘッド109は、上述したデータ記憶装置の基本形態におけるヘッドの一例に相当する。
【0022】
図2は、磁気ディスク1の概念図である。
【0023】
磁気ディスク1には、アクセス対象であるユーザデータが記録されるユーザ領域12に加えて、内周部分と外周部分に、情報アクセスに必要なシステムデータが記録されるシステム領域11が用意されている。このシステムデータは、ハードディスク装置のシリアル番号、ユーザ領域12のうちの欠陥領域のアドレス、セキュリティ用のパスワード、エラーログなどで構成されている。ユーザ領域12は、上述したデータ記憶装置の基本形態におけるユーザデータ記録領域の一例に相当する。
【0024】
図3は、ハードディスク装置100の機能ブロック図である。
【0025】
図3に示すように、ハードディスク装置100には、図1にも示すスピンドルモータ102、ボイスコイルモータ107、制御回路108、および磁気ヘッド109などが備えられている。制御回路108は、ハードディスク装置100全体の制御を行うハードディスク制御部111、スピンドルモータ102やボイスコイルモータ107を制御するサーボ制御部112、ボイスコイルモータ107を駆動させるボイスコイルモータ駆動部113、スピンドルモータ102を駆動させるスピンドルモータ駆動部114、磁気ディスク1をフォーマットするフォーマッタ115、磁気ディスク1に書き込む書込情報を担持した書込電流の発生と、磁気ヘッド109で磁気ディスク1に記録された情報が読み取られて得られた再生信号のデジタルデータへの変換とを行うリード/ライトチャネル116、ハードディスク制御部111においてキャッシュとして使用されるバッファ117、ハードディスク制御部111において作業領域として使用されるRAM118、および磁気ヘッド109で読み取られた再生信号を増幅するプリアンプ119などで構成されている。ハードディスク制御部111は、上述したデータ記憶装置の基本形態におけるシステムデータ更新制御部の一例に相当する。
【0026】
磁気ディスク1に情報を書き込む際には、図3に示すホスト装置200からハードディスク装置100に向けて、磁気ディスク1に記録する書込情報と、書込位置のアドレスが送られてくる。ハードディスク制御部111は、送られてきたアドレスをサーボ制御部112に伝える。
【0027】
続いて、サーボ制御部112は、スピンドルモータ駆動部114にスピンドルモータ102を回転させる指示を伝えるとともに、ボイスコイルモータ駆動部113にキャリッジアーム106(図1参照)を移動させる指示を伝える。スピンドルモータ駆動部114は、スピンドルモータ102を駆動して磁気ディスク1を回転させ、ボイスコイルモータ駆動部113は、ボイスコイルモータ107を駆動してキャリッジアーム106を移動させる。その結果、磁気ヘッド109が磁気ディスク1上に位置決めされる。
【0028】
磁気ヘッド109が位置決めされると、ハードディスク制御部111は、書込信号をリード/ライトチャネル116に伝え、リード/ライトチャネル116は、磁気ヘッド109に、書込情報を担持した書込電流を印加する。
【0029】
磁気ヘッド109では、書込信号に応じた磁束が磁気ディスク1に向けて発せられ、その結果、磁気ディスク1に情報に応じた向きの磁化が形成されて、情報が記録される。
【0030】
また、磁気ディスク1に記録された情報を読み取る際には、図3に示すホスト装置200からハードディスク装置100に向けて、情報が記録された記録位置のアドレスが送られてくる。続いて、スピンドルモータ102が回転駆動して磁気ディスク1が回転され、ボイスコイルモータ107が駆動してキャリッジアーム106が移動されることにより、磁気ヘッド109が磁気ディスク1上に位置決めされる。
【0031】
磁気ヘッド109では、磁気ディスク1の磁化状態に応じた再生信号が生成される。再生信号は、図3に示すリード/ライトチャネル116でデジタルデータに変換された後、ハードディスク制御部111を介してホスト装置200に送られる。
【0032】
基本的には、以上のようにして磁気ディスク1に対して情報アクセスが行われる。
【0033】
ここで、本実施形態においては、図2のシステム領域11にシステムデータが多重化して記録されている。以下では、多重化されたシステムデータの更新方法について詳しく説明する。
【0034】
図4は、システム領域に記録されるシステムデータを示す概念図であり、図5は、多重化されたシステムデータを更新する一連の処理の流れを示すフローチャート図である。
【0035】
図4のステップS11に示すように、図2に示すシステム領域11には、複数の多重化領域310,320,330,340(図4では4つ)が備えられており、各多重化領域310,320,330,340は、さらに、2つのサブ領域に分割されている。以下では、2つのサブ領域のうち、図4の左側のサブ領域を各多重化領域310,320,330,340の符号の末尾に「A」を付して表わし、図4の右側のサブ領域を各多重化領域310,320,330,340の符号の末尾に「B」を付して表わす。多重化領域310,320,330,340は、上述したデータ記憶装置の基本形態における複数のシステムデータ記録領域の一例にあたり、多重化領域310,320,330,340それぞれが分割された各サブ領域は、上述したデータ記憶装置の基本形態におけるサブ記録領域の一例に相当する。
【0036】
システムデータを更新するときには、まず、図3に示すハードディスク制御部111において、多重化領域310,320,330,340を構成する2つのサブ領域のうちの一方のサブ領域が選択される(図5のステップS111)。今回は初期状態であるので、まずは左側のサブ領域310A,320A,330A,340Aが選択される。
【0037】
また、図3に示すRAM118には、多重化領域310,320,330,340を構成する2つのサブ領域それぞれに対するシステムデータの書込み(ライト)、および読出したシステムデータの確認(ベリファイ)が成功したか否かを示すシステム管理情報が保存されている。
【0038】
図6は、システム管理情報の一例を示す図である。
【0039】
図6に示すように、システム管理情報は、多重化領域310,320,330,340を構成する2つのサブ領域それぞれに対するシステムデータのライト結果(成功「01」、失敗「00」)と、書き込まれたシステムデータを読み取って、読み取ったデータが正しいか否かを確認したベリファイ結果(成功「01」、失敗「00」)と、ライト結果の合計値と、ベリファイ結果の合計値とで構成されている。ライト結果の合計値は、全てのサブ領域のうち、システムデータの書込みに成功したサブ領域の数を示しており、ベリファイ結果の合計値は、書き込まれたシステムデータを読み取って正しいデータが得られたサブ領域の数を示している。図6(A)に示すように、初期状態においては、全てのライト結果およびベリファイ結果が成功「01」に設定されており、ライト結果とベリファイ結果の正常値が全てのサブ領域数(この例では「8」)に設定されている。
【0040】
ハードディスク制御部111では、RAM118に記録されたシステム管理情報が取得され、多重化領域310,320,330,340それぞれの、選択された左側のサブ領域310A,320A,330A,340Aのうち、ライト結果が成功「01」であるサブ領域が検索される(図5のステップS112)。図6(A)に示すように、初期状態においては、全てのライト結果が成功「01」に設定されているため、この時点では、選択された全てのサブ領域310A,320A,330A,340Aが検索される。
【0041】
続いて、ハードディスク制御部111では、磁気ヘッド109に向けて、検索されたサブ領域310A,320A,330A,340Aそれぞれに新たなシステムデータを書込む書込指示を伝える。磁気ヘッド109では、図4のステップS12に示すように、サブ領域310A,320A,330A,340Aに新たなシステムデータ「D1」が上書きされる(図5のステップS113)。
【0042】
システムデータの書込みが終了すると、ハードディスク制御部111において、サブ領域310A,320A,330A,340Aそれぞれにおける書込み結果が取得され、取得された書込み結果に基づいてシステム管理情報が更新される(図5のステップS114)。この図4のステップS12では、多重化領域310を構成するサブ領域310Aの書込みが失敗しており、図6(B)に示すように、システム管理情報中の、サブ領域310Aのライト結果が失敗「00」に変更され、ライト結果の正常数が1つ減らされて「07」に変更される。
【0043】
続いて、システム管理情報中のライト結果の正常数と、予め決められている閾値(本実施形態では、「04」とする)とが比較される。この例では、ライト結果の正常数「07」は閾値「04」よりも大きいため(図5のステップS115:No)、ハードディスク制御部111から磁気ヘッド109にライト結果が成功「01」であったサブ領域320A,330A,340Aに対してベリファイ処理を実行する指示が伝えられる。その結果、磁気ヘッド109では、サブ領域320A,330A,340Aに記録されているシステムデータが読み出され、ハードディスク制御部111では、読み出されたサブ領域320A,330A,340Aそれぞれのシステムデータが一旦バッファ117に保存された後、各システムデータが正しいか確認される(図5のステップS116)。この例では、図4のステップS13に示すように、サブ領域320A,330A,340Aに対してベリファイ処理が実行され、それらサブ領域320A,330A,340Aそれぞれに正しいシステムデータが書き込まれていることが確認されたものとして説明する。
【0044】
ここで、上述したデータ記憶装置の基本形態に対し、
上記ヘッドにおいて、複数のシステムデータ記録領域それぞれについてシステムデータの更新に失敗した場合に失敗したことを示すアクセス結果を保存するアクセス結果保存部を備え、
システムデータ更新制御部が、ヘッドに、複数のシステムデータ記録領域のうち、アクセス結果保存部に、システムデータの更新に失敗したことを示すアクセス結果が保存されているシステムデータ記録領域を除くシステムデータ記録領域について、新たなシステムデータへの更新を実行させるものであるという応用形態は好ましく、
さらに、上記アクセス結果保存部は、複数のシステムデータ記録領域のそれぞれ、かつシステムデータの記録および読み出しそれぞれについてのアクセス結果を保存するものであり、
システムデータ更新制御部が、ヘッドに、複数のシステムデータ記録領域のうち、アクセス結果保存部に、システムデータの記録または読み出しに失敗したことを示すアクセス結果が保存されているシステムデータ記録領域を除くシステムデータ記録領域に新たなシステムデータを記録させ、新たなシステムデータの記録に成功したシステムデータ記録領域から新たなシステムデータを読み出させて正しく記録されていることの確認を行うものであるという応用形態はさらに好適である。
【0045】
システムデータの記録または読み出しが成功したシステムデータ記録領域に対してのみ、システムデータの読み出しが実行されることによって、エラーが発生したシステムデータ記録領域へのアクセスを省略することができ、処理時間を短縮することができる。RAM118は、上述したデータ記憶装置の応用形態におけるアクセス結果保存部の一例に相当する。
【0046】
ベリファイ処理が終了すると、ベリファイ結果に応じてシステム管理情報が更新される。この例では、図6(C)に示すように、システム管理情報中の、サブ領域320A,330A,340Aのベリファイ結果は成功「01」のままで維持され、サブ領域310Aのベリファイ結果が失敗「00」に変更され、ベリファイ結果の正常数が「07」に変更される(図5のステップS117)。
【0047】
続いて、システム管理情報中のベリファイ結果の正常数と、予め決められている閾値(本実施形態では、「04」とする)とが比較される。この例では、ライト結果の正常数「07」は閾値「04」よりも大きいため(図5のステップS118:No)、システムデータの更新が実行されるサブ領域が、多重化領域310,320,330,340を構成する2つのサブ領域のうちの、現在、選択されている左側のサブ領域310A,320A,330A,340Aから、他方の右側のサブ領域310B,320B,330B,340Bに切り替えられる(図5のステップS119)。
【0048】
以上のようにして、システムデータの更新が実行される。
【0049】
さらに、ユーザがセキュリティ用のパスワードを変更した場合などには、今度は、変更後のパスワードが含まれた新たなシステムデータが右側のサブ領域310B,320B,330B,340Bに記録される。
【0050】
まず、ハードディスク制御部111において、切り替えられた右側のサブ領域310B,320B,330B,340Bが選択され(図5のステップS111)、RAM118に記録されたシステム管理情報が取得されて、選択されたサブ領域310B,320B,330B,340Bのうち、ライト結果が成功「01」であるサブ領域が検索される(図5のステップS112)。
【0051】
続いて、ハードディスク制御部111から磁気ヘッド109に向けて、検索されたサブ領域310B,320B,330B,340Bそれぞれに新たなシステムデータを書込む書込指示が伝えられ、磁気ヘッド109では、図4のステップS14に示すように、サブ領域310B,320B,330B,340Bに新たなシステムデータ「D2」が上書きされる(図5のステップS113)。
【0052】
ハードディスク制御部111では、サブ領域310B,320B,330B,340Bそれぞれにおける書込み結果に基づいてシステム管理情報が更新される(図5のステップS114)。この図4のステップS14では、サブ領域310B,320B,330B,340Bそれぞれにおける書込み処理が成功しており、図6(C)に示すように、システム管理情報中の、サブ領域310B,320B,330B,340Bのライト結果、およびライト結果の正常数が変更されずに維持される。
【0053】
さらに、システム管理情報中のライト結果の正常数と閾値とが比較され、ライト結果の正常数が閾値よりも大きいときには(図5のステップS115:No)、図4のステップS15に示すように、磁気ヘッド109において、サブ領域310B,320B,330B,340Bに書き込まれた新たなシステムデータが読み出され、ハードディスク制御部111において、読み出されたシステムデータが正しいか確認される(図5のステップS116)。
【0054】
ベリファイ処理が終了すると、表1に示すシステム管理情報中のベリファイ結果が更新され(図5のステップS117)、ベリファイ結果の正常数が閾値よりも大きい場合には(図5のステップS118:No)、システムデータの更新が実行されるサブ領域が、現在、選択されている右側のサブ領域310B,320B,330B,340Bから左側のサブ領域310A,320A,330A,340Aに切り替えられる(図5のステップS119)。
【0055】
さらに、新たなシステムデータが生成されると、ハードディスク制御部111において、切り替えられた左側のサブ領域310A,320A,330A,340Aが選択され(図5のステップS111)、選択されたサブ領域310A,320A,330A,340Aのうち、システム管理情報中のライト結果が成功「01」であるサブ領域が検索される(図5のステップS112)。図6(C)に示すように、選択されたサブ領域310A,320A,330A,340Aのうちの左端のサブ領域310Aは、1度目のライト処理に失敗しているため、ここでは、左端のサブ領域310Aを除いた3つのサブ領域320A,330A,340Aが検索される。
【0056】
検索結果は磁気ヘッド109に伝えられ、磁気ヘッド109では、図4のステップS16に示すように、システム管理情報中のライト結果が成功「01」である3つのサブ領域320A,330A,340Aに新たなシステムデータ「D3」が上書きされ(図5のステップS113)、ハードディスク制御部111においてシステム管理情報が更新される(図5のステップS114)。
【0057】
システム管理情報中のライト結果の正常数が閾値よりも大きい場合(図5のステップS115:No)、磁気ヘッド109において、ライト処理が成功したサブ領域320A,330A,340Aに書き込まれた新たなシステムデータが読み出され、ハードディスク制御部111において、読み出されたシステムデータの確認(図5のステップS116)と、システム管理情報中のベリファイ結果の更新(図5のステップS117)が行われる。
【0058】
以上のように、本実施形態のハードディスク装置100では、多重化領域310,320,330,340を構成する2つのサブ領域のうちの一方のサブ領域が交互に選択されて、選択されたサブ領域に対してシステムデータの書込みとベリファイが実行される。このため、選択されたサブ領域には、新しいシステムデータが多重に記録されているが、選択されていないサブ領域には、前回の古いシステムデータが多重に記録されていることとなる。
【0059】
このハードディスク装置100が搭載されたパーソナルコンピュータなどの電源が投入されると、ハードディスク制御部111からの指示に従って、磁気ヘッド109において多重化領域310,320,330,340に記録されたシステムデータが読み出され、読み出されたシステムデータがバッファ117に保存される。ハードディスク装置100では、バッファ117に保存された複数のシステムデータのうち最新のシステムデータが選択され、選択された最新のシステムデータを使ってハードディスク装置100の起動が開始される。このとき、選択された一方のサブ記録領域に記録されたシステムデータの読み出しに失敗してしまっても、他方のサブ記録領域に記録されている古いシステムデータを使ってハードディスク装置100を立ち上げることができ、装置全体の信頼性を向上させることができる。また、2つのサブ領域のうちの一方のみ最新のシステムデータの書込みやベリファイを実行し、他方のサブ記録領域に対してはそれらの処理を省くことによって、処理時間の増加を軽減することもできる。
【0060】
また、図5のステップS115またはステップS118において、図6(D)に示すように、システム管理情報中のライト結果の正常値やベリファイ結果の正常値が閾値よりも小さくなった場合(図5のステップS115:Yes,ステップS118:Yes)、ハードディスク制御部111からホスト装置200に向けて、異常を通知するメッセージが送信される(図5のステップS120)。
【0061】
ここで、上述したデータ記憶装置の基本形態に対し、
このデータ記憶装置は、外部装置と接続されたものであり、
複数のシステムデータ記録領域のうち、システムデータの今回の更新にあたり更新に成功したシステムデータ記録領域の数を算出する成功数算出部と、
成功数算出部で算出されたシステムデータ記録領域の数が所定の閾値よりも小さい場合に、外部装置に向けてこのデータ記憶装置の故障を通知する通知部とを備えたという応用形態は好ましい。
【0062】
アクセス可能なシステムデータ記録領域の数が残りわずかである場合、その残っているシステムデータ記録領域へのアクセスが失敗してしまうと、データ記憶装置を立ち上げることができなくなってしまう恐れがある。複数のシステムデータ記録領域のうちアクセスが成功したシステムデータ記録領域が所定の閾値よりも小さい場合に、外部装置に向けてエラーメッセージが通知されることによって、データ記憶装置が全く起動しなくなってしまう不具合を未然に防止することができる。
【0063】
ハードディスク制御部111は、上述したデータ記憶装置の応用形態における成功数算出部の一例にあたるとともに、上述したデータ記憶装置の応用形態における通知部の一例にも相当する。
【0064】
このように、本実施形態のハードディスク装置100によると、複数の多重化領域310,320,330,340それぞれがさらに2つのサブ領域に分割され、それら2つのサブ領域のうちの一方が交互に選択されてシステムデータの書込みおよびベリファイが行われる。このため、システムデータを更新するのにかかる処理時間を抑えて多重数を増加させることができるとともに、選択されたサブ領域(例えば、サブ領域310A,320A,330A,340A)全ての読み出しに失敗してしまっても、選択されていない方のサブ領域(例えば、サブ領域310B,320B,330B,340B)に記録された古いシステムデータを使ってハードディスク装置100を立ち上げることができ、装置の信頼性を向上させることができる。
【0065】
以上で、上述したデータ記憶装置の第1実施形態の説明を終了し、上述したデータ記憶装置の第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第1実施形態と同じ構成を有しているが、システムデータ更新時の処理が第1実施形態とは異なる。このため、図3を第2実施形態の説明にも流用し、第1実施形態との相違点についてのみ説明する。
【0066】
図7は、第2実施形態のハードディスク装置においてシステム領域に記録されるシステムデータを示す概念図であり、図8は、第2実施形態のハードディスク装置において多重化されたシステムデータを更新する一連の処理の流れを示すフローチャート図である。
【0067】
本実施形態においても、図7のステップS11に示すように、複数の多重化領域310,320,330,340(図7では4つ)それぞれが、さらに、2つのサブ領域に分割されているものとして説明する。
【0068】
システムデータを更新するときには、図5に示す第1実施形態と同様に、図3に示すハードディスク制御部111において、多重化領域310,320,330,340を構成する2つのサブ領域のうちの一方のサブ領域が選択され(図7のステップS111)、RAM118に記録されたシステム管理情報が取得されて、選択されたサブ領域のうち、ライト結果が成功「01」であるサブ領域が検索される(図8のステップS112)。初期状態においては、左側のサブ領域310A,320A,330A,340Aが選択されるとともに、選択された全てのサブ領域310A,320A,330A,340Aが検索される。
【0069】
続いて、磁気ヘッド109において、図7のステップS22に示すように、サブ領域310A,320A,330A,340Aに新たなシステムデータ「D1」が上書きされ(図8のステップS113)、ハードディスク制御部111において、サブ領域310A,320A,330A,340Aそれぞれにおける書込み結果に基づいてシステム管理情報が更新される(図8のステップS114)。この図7のステップS22では、左端のサブ領域310Aの書込みが失敗しており、システム管理情報中の、サブ領域310Aのライト結果が失敗「00」に変更され、ライト結果の正常数が1つ減らされる。
【0070】
システム管理情報中のライト結果の正常数が閾値よりも大きい場合(図8のステップS115:No)、磁気ヘッド109において、ライト結果が成功「01」であるサブ領域320A,330A,340Aに記録されているシステムデータが読み出され、ハードディスク制御部111では、読み出されたサブ領域320A,330A,340Aそれぞれのシステムデータが正しいか確認される(図8のステップS116)。
【0071】
ベリファイ処理が終了すると、ベリファイ結果に基づいてシステム管理情報が更新され(図8のステップS117)、システム管理情報中のベリファイ結果の正常数が閾値よりも大きい場合(図8のステップS118:No)、システムデータの更新が実行されるサブ領域が、現在、選択されている左側のサブ領域310A,320A,330A,340Aから、他方の右側のサブ領域310B,320B,330B,340Bに切り替えられる(図8のステップS119)。
【0072】
さらに、本実施形態においては、古いシステムデータが残っている右側のサブ領域310B,320B,330B,340Bのうち、システム管理情報中のライト結果が成功「01」であるサブ領域が検索され(図8のステップS121)、検索されたサブ領域にも新たなシステムデータが書き込まれる(図8のステップS122)。この例では、図6のステップS24に示すように、右側のサブ領域310B,320B,330B,340Bに、左側のサブ領域310A,320A,330A,340Aに記録されたものと同じ新たなシステムデータ「D1」が書き込まれる。
【0073】
システムデータの書込みが終了すると、書込結果に応じてシステム管理情報が更新される(図8のステップS123)。
【0074】
はじめに左側のサブ領域310A,320A,330A,340Aに新たなシステムデータが書き込まれたときには、それらサブ領域310A,320A,330A,340Aに書き込まれたシステムデータが読み取られてベリファイ処理が実行されたが、右側のサブ領域310B,320B,330B,340Bに対しては、新たなシステムデータの書込みは行われるが、ベリファイ処理は行われない。
【0075】
ここで、ユーザがセキュリティ用のパスワードを変更した場合などには、切り替えられた右側のサブ領域310B,320B,330B,340Bが選択され(図8のステップS111)、システム管理情報中でライト結果が成功「01」であるサブ領域が検索され(図8のステップS112)、図7のステップS25に示すように、検索されたサブ領域に新たなパスワードなどを含む新たなシステムデータ「D2」が上書きされる(図8のステップS113)。
【0076】
ハードディスク制御部111では、サブ領域310B,320B,330B,340Bそれぞれにおける書込み結果に基づいてシステム管理情報が更新され(図8のステップS114)、システム管理情報中のライト結果の正常数が閾値よりも大きいときには(図8のステップS115:No)、図7のステップS26に示すように、サブ領域310B,320B,330B,340Bに書き込まれた新たなシステムデータが読み出され、読み出されたシステムデータが正しいか確認される(図8のステップS116)。
【0077】
ベリファイ処理が終了すると、システム管理情報中のベリファイ結果が更新され(図8のステップS117)、ベリファイ結果の正常数が閾値よりも大きい場合には(図8のステップS118:No)、更新対象となるサブ領域が切り替えられる(図8のステップS119)。
【0078】
さらに、古いシステムデータ「D1」が残っている左側のサブ領域310A,320A,330A,340Aのうち、システム管理情報中のライト結果が成功「01」であるサブ領域が検索され(図8のステップS121)、検索されたサブ領域にも新たなシステムデータが書き込まれる(図8のステップS122)。この例では、図6のステップS22に示すように、左端のサブ領域310Aに対するシステムデータの書込みに失敗しているため、左端のサブ領域310Aを除くサブ領域320A,330A,340Aに、右側のサブ領域310B,320B,330B,340Bに記録されたものと同じ新たなシステムデータ「D2」が書き込まれる。
【0079】
ここで、上述したデータ記憶装置の基本形態に対し、
上記システムデータ更新制御部が、新たなシステムデータへの更新ごとにヘッドにさらに、複数のシステム記録領域に亘る、今回選択された一方のサブ記録領域とは異なるもう一方のサブ記録領域に該新たなシステムデータを多重に記録させ、もう一方のサブ記録領域についての、新たなシステムデータが正しく記録されていることの確認は省くものであるという応用形態は好ましい。
【0080】
本実施形態によると、2つのサブ領域のうちの一方のみ最新のシステムデータの書込みおよびベリファイが実行され、他方のサブ記録領域に対しては、システムデータの書込みのみが実行され、ベリファイ処理が省かれる。先に選択されたサブ記録領域とは別の他方のサブ記録領域に記録された新たなシステムデータは、ベリファイが行われていないために読出エラーが発生する可能性があるが、複数の多重化領域310,320,330,340に多重に記録されているため、それらのうちの1つは読み出すことができると考えられる。このように、2つのサブ領域それぞれに新たなシステムデータを記録しておき、一方のベリファイ処理を省くことによって、処理時間を抑えて、新しいシステムデータを確実に読み出すことができる。
【0081】
以上で、上述したデータ記憶装置の第2実施形態の説明を終了し、上述したデータ記憶装置の第3実施形態について説明する。第3実施形態についても、図3を流用し、第1実施形態との相違点についてのみ説明する。
【0082】
図9は、第3実施形態のハードディスク装置においてバッファ117に一時的に保存されるシステムデータを示す概念図であり、図10は、第3実施形態のハードディスク装置において多重化されたシステムデータを読み出す一連の処理の流れを示すフローチャート図である。
【0083】
本実施形態においては、図9のステップS31に示すように、複数の多重化領域310,320,330,340(図6では4つ)それぞれが、さらに、2つのサブ領域に分割されている。また、図3に示すバッファ117には、複数の分割領域が用意されており、システムデータを一時的に保存するときには、それら複数の分割領域のうちの4つの分割領域117A,117B,117C,117Dが利用されるものとして説明する。バッファ117は、上述したデータ記憶装置の第2の基本形態におけるバッファの一例にあたり、分割領域117A,117B,117C,117Dは、上述したデータ記憶装置の第2の基本形態における複数の分割領域の一例に相当する。
【0084】
例えば、セキュリティ用のパスワードを取得する場合などには、多重化されたシステムデータが読み出され、それら複数のシステムデータのうち最新のシステムデータが選択されて、最新のシステムデータ中のパスワードを使ってアクセス制限などが行われる。
【0085】
システムデータを読み出すのにあたっては、まず、図3に示すハードディスク制御部111において、RAM118に記録されているシステム管理情報が取得される。システム管理情報が記録されていない場合は(図10のステップS211)、図6(A)に示すように初期化されたシステム管理情報が生成されて(図10のステップS212)、RAM118に保存される。
【0086】
続いて、ハードディスク制御部111において、バッファ117を構成している複数の分割領域のうち4つの分割領域117A,117B,117C,117Dが確保される(図10のステップS213)。
【0087】
本実施形態においては、複数の多重化領域310,320,330,340を構成する8つのサブ領域に記録されたシステムデータが2つ分ずつ読み出されて、最新のシステムデータが選択される。まず、RAM118に記録されているシステム管理情報において、図9のステップS31に示す左から1番目と2番目のサブ領域310A,310Bのライト結果が成功「01」であるか否かが確認される。システム管理情報中のライト結果が失敗「00」であった場合(図10のステップS215:No)、そのサブ領域の次のサブ領域が読み出し対象と設定され(図10のステップS220)、設定されたサブ領域のライト結果が確認される。
【0088】
ライト結果がともに成功「01」である2つのサブ領域が検索されると(図10のステップS215:Yes)、ハードディスク制御部111から磁気ヘッド109に向けてそれら2つのサブ領域に記録されているシステムデータを読み出す指示が伝えられ、磁気ヘッド109において、指示されたサブ領域に記録されているシステムデータが読み出される(図10のステップS216)。この例では、左から1番目と2番目のサブ領域310A,310Bのライト結果がともに成功「01」であり、図9のステップS32に示すように、サブ領域310A,310Bから読み出されたシステムデータは、まずは、バッファ117の左端から2つ分の分割領域117A,117Bに保存される(図10のステップS217)。ハードディスク制御部111は、上述したデータ記憶装置の第2実施形態におけるシステムデータ読出制御部の一例に相当する。
【0089】
ハードディスク制御部111では、システム管理情報中のベリファイ結果が読出結果に基づいて更新され(図10のステップ218)、確保された分割領域117A,117B,117C,117D中の最新のシステムデータが選択される(図10のステップS219)。この例では、分割領域117A,117Bに保存された2つのシステムデータのうち、左端の分割領域117Aに保存されたシステムデータ(サブ領域310Aのシステムデータ)が最新のシステムデータと選択される。尚、図9では、新たにシステムデータが保存された分割領域が斜線で示されており、最新のシステムデータは実線で囲まれており、前回の最新のシステムデータは破線で囲まれている。
【0090】
最新のシステムデータが選択されると、すでに読み出されたサブ領域の右側に隣接する次の2つのサブ領域のライト結果が取得され、それらのサブ領域のライト結果が成功「01」であるか否かが確認される。この例では、図9のステップS31に示す左から3番目と4番目のサブ領域320A,320Bのライト結果が取得され、システム管理情報において、それらのサブ領域320A,320Bのライト結果が成功「01」であるか否かが確認される。サブ領域320A,320Bのライト結果がともに成功「01」である場合(図10のステップS215:Yes)、それらサブ領域320A,320Bに記録されているシステムデータが読み出される(図10のステップS216)。読み出された2つのシステムデータは、図9のステップS33に示すように、現時点で最新のシステムデータが保存されている左端の分割領域117Aの右側に隣接する2つの分割領域117B,117Cに保存される(図10のステップS217)。
【0091】
システムデータが保存されると、読出結果に基づいてシステム管理情報が更新され(図10のステップ218)、分割領域117A,117B,117C,117D中の最新のシステムデータが選択される(図10のステップS219)。この例では、左から2番目の分割領域117Bに保存されたシステムデータ(サブ領域320Aのシステムデータ)が最新のシステムデータと選択される。
【0092】
以下、同様に、図9のステップS31に示す左から5番目と6番目のサブ領域330A,330Bのライト結果が取得され(図10のステップS215:Yes)、それらサブ領域330A,330Bに記録されているシステムデータが読み出され(図10のステップS216)、図9のステップS34に示すように、現時点で最新のシステムデータが保存されている左から2番目の分割領域117Bの右側に隣接する2つの分割領域117C,117Dに保存される(図10のステップS217)。
【0093】
読出結果に基づいてシステム管理情報が更新されると(図10のステップ218)、分割領域117A,117B,117C,117D中の最新のシステムデータが選択される(図10のステップS219)。この例では、左から3番目の分割領域117Cに保存されたシステムデータ(サブ領域330Aのシステムデータ)が最新のシステムデータと選択される。
【0094】
続いて、図9のステップS31に示す左から7番目と8番目のサブ領域340A,340Bのライト結果の取得(図10のステップS215:Yes)、システムデータの読み出し(図10のステップS216)が行われる。図9のステップS35に示すように、現時点で最新のシステムデータは左から3番目の分割領域117Cに保存されており、右側に2つのシステムデータを保存するスペースがないため、読み出された2つのシステムデータは、分割領域117Cの左側に隣接する2つの分割領域117A,117Bに保存される(図10のステップS217)。
【0095】
さらに、システム管理情報が更新され(図10のステップ218)、分割領域117A,117B,117C,117D中の最新のシステムデータが選択される(図10のステップS219)。この例では、左端の分割領域117Aに保存されたシステムデータ(サブ領域340Aのシステムデータ)が最新のシステムデータと選択される。
【0096】
以上のような処理が、複数の多重化領域310,320,330,340を構成する8つのサブ領域に対して実行される。全てのサブ領域に対してシステムデータの読み出しが終了し(図10のステップS214:Yes)、その時点で最新のシステムデータが選択されていない場合には(図10のステップS221:No)、ホスト装置200の表示画面上にエラーメッセージを表示して終了する(図10のステップS224)。
【0097】
最新のシステムデータが選択されている場合には(図10のステップS221:Yes)、その選択された最新のシステムデータが取得され(図10のステップS221:Yes)、取得された最新のシステムデータを使ってアクセス制限やマシンのセットアップ処理などが実行される(図10のステップS222)。
【0098】
また、最新のシステムデータが取得されると、図9のステップS36に示すように、ハードディスク制御部111において、バッファ117の、確保された分割領域117A,117B,117C,117Dにダミーデータが上書きされて、それら分割領域117A,117B,117C,117Dに保存されたシステムデータが消去される(図10のステップS223)。
【0099】
ここで、上述したデータ記憶装置の第2の基本形態に対し、上記システムデータは、このデータ記憶装置のアクセスを許可するパスワードを含むものであるという応用形態は好ましい。
【0100】
図9のステップS31に示すサブ領域に記録された、多重化されたシステムデータを一度に読み出してバッファ117に保存しようとすると、8つの分割領域が必要となり、パーソナルコンピュータなどをシャットダウンしても、電子機器の電源が切れるまでの間にシステムデータの消去が終了せず、バッファに残っているパスワードが第3者に不正に取得されてしまう恐れがある。本実施形態によると、システムデータが記録される分割領域が抑えられているため、バッファに保存されたシステムデータを高速かつ確実に消去することができる。
【0101】
ここで、上記では、記録媒体として磁場を使って情報を記録する磁気ディスクを適用する例について説明したが、上述した情報アクセス装置における記録媒体は、光を使って情報を記録するMOなどであってもよい。
【0102】
また、上記では、バッファを構成する複数の分割領域のうち4つの分割領域を使ってシステムデータを一時的に保存する例について説明したが、これは、サブ領域に記録されたシステムデータを2つずつ読み出して処理を高速化するためであり、サブ領域に記録sれたシステムデータを1つずつ読み出して、読み出したシステムデータを2つの分割領域に交互に保存してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】ハードディスク装置の外観図である。
【図2】磁気ディスクの概念図である。
【図3】ハードディスク装置の機能ブロック図である。
【図4】システム領域に記録されるシステムデータを示す概念図である。
【図5】多重化されたシステムデータを更新する一連の処理の流れを示すフローチャート図である。
【図6】システム管理情報の一例を示す図である。
【図7】第2実施形態のハードディスク装置においてシステム領域に記録されるシステムデータを示す概念図ある。
【図8】第2実施形態のハードディスク装置において多重化されたシステムデータを更新する一連の処理の流れを示すフローチャート図である。
【図9】第3実施形態のハードディスク装置においてバッファに一時的に保存されるシステムデータを示す概念図である。
【図10】第3実施形態のハードディスク装置において多重化されたシステムデータを読み出す一連の処理の流れを示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0104】
1 磁気ディスク
11 システム領域
12 ユーザ領域
100 ハードディスク装置
101 ハウジング
102 スピンドルモータ
103 浮上ヘッドスライダ
105 アーム軸
106 キャリッジアーム
107 ボイスコイルモータ
108 制御回路
109 磁気ヘッド
111 ハードディスク制御部
112 サーボ制御部
113 ボイスコイルモータ駆動部
114 スピンドルモータ駆動部
115 フォーマッタ
116 リード/ライトチャネル
117 バッファ
118 RAM
119 プリアンプ
310,320,330,340 多重化領域
310A,320A,330A,340A,310B,320B,330B,340B サブ領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムデータが多重に記録される複数のシステムデータ記録領域とユーザデータが記録されるユーザデータ記録領域とを有する記録媒体と、
前記記録媒体へのデータ書込みおよび該記録媒体からのデータ読出しを行うヘッドと、
前記ヘッドに、前記記録媒体上のシステムデータの更新を行わさせるシステムデータ更新制御部とを備え、
前記システムデータ更新制御部が、前記ヘッドに、前記複数のシステムデータ記録領域それぞれを2つのサブ記録領域に分けたときの、該複数のシステム記録領域に亘る、新たなシステムデータへの更新ごとに交互に選択された一方のサブ記録領域に、新たなシステムデータを多重に記録させるとともに、該一方のサブ記録領域から該新たなシステムデータを読み出させて正しく記録されていることの確認を行うものであることを特徴とするデータ記憶装置。
【請求項2】
前記システムデータ更新制御部が、新たなシステムデータへの更新ごとに前記ヘッドにさらに、前記複数のシステム記録領域に亘る、今回選択された一方のサブ記録領域とは異なるもう一方のサブ記録領域に該新たなシステムデータを多重に記録させ、該もう一方のサブ記録領域についての、該新たなシステムデータが正しく記録されていることの確認は省くものであることを特徴とする請求項1記載のデータ記憶装置。
【請求項3】
前記複数のシステムデータ記録領域それぞれについて前記システムデータの更新に失敗した場合に失敗したことを示すアクセス結果を保存するアクセス結果保存部を備え、
前記システムデータ更新制御部が、前記ヘッドに、前記複数のシステムデータ記録領域のうち、前記アクセス結果保存部に、前記システムデータの更新に失敗したことを示すアクセス結果が保存されているシステムデータ記録領域を除くシステムデータ記録領域について、新たなシステムデータへの更新を実行させるものであることを特徴とする請求項1または2記載のデータ記憶装置。
【請求項4】
前記アクセス結果保存部は、前記複数のシステムデータ記録領域のそれぞれ、かつシステムデータの記録および読み出しそれぞれについてのアクセス結果を保存するものであり、
前記システムデータ更新制御部が、前記ヘッドに、前記複数のシステムデータ記録領域のうち、前記アクセス結果保存部に、前記システムデータの記録または読み出しに失敗したことを示すアクセス結果が保存されているシステムデータ記録領域を除くシステムデータ記録領域に新たなシステムデータを記録させ、該新たなシステムデータの記録に成功したシステムデータ記録領域から該新たなシステムデータを読み出させて正しく記録されていることの確認を行うものであることを特徴とする請求項3記載のデータ記憶装置。
【請求項5】
このデータ記憶装置は、外部装置と接続されたものであり、
前記複数のシステムデータ記録領域のうち、前記システムデータの今回の更新にあたり更新に成功したシステムデータ記録領域の数を算出する成功数算出部と、
前記成功数算出部で算出されたシステムデータ記録領域の数が所定の閾値よりも小さい場合に、前記外部装置に向けてこのデータ記憶装置の故障を通知する通知部とを備えたことを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか1項記載のデータ記憶装置。
【請求項6】
システムデータが多重に記録される複数のシステムデータ記録領域とユーザデータが記録されるユーザデータ記録領域とを有する記録媒体と、
前記記録媒体へのデータ書込みおよび該記録媒体からのデータ読出しを行うヘッドと、
前記ヘッドで読み出されたシステムデータを一時的に保存する、複数の分割領域を有するバッファと、
前記バッファに記録されたシステムデータを消去する消去部と、
前記ヘッドに、前記複数のシステムデータ記録領域それぞれに記録されたシステムデータの読出しを行わさせるシステムデータ読出制御部とを備え、
前記システムデータ読出制御部が、前記ヘッドに、前記複数のシステムデータ記録領域それぞれに記録されたシステムデータを順次に読み出させて、前記バッファに順次に保存するにあたり、該バッファに先に読みだされた2つのシステムデータが保存された段階で該2つのシステムデータの新旧を比較し、3つ目以降のシステムデータについては、前記バッファ上の古い方のシステムデータに上書きして該バッファ上の2つのシステムデータの新旧を比較する過程を繰り返すことにより最新のシステムデータを得るものであり、
前記消去部は、前記システムデータ読出制御部が最新のシステムデータを得た後、前記バッファ上に保存されたデータを消去するものであることを特徴とするデータ記憶装置。
【請求項7】
前記システムデータは、このデータ記憶装置のアクセスを許可するパスワードを含むものであることを特徴とする請求項6記載のデータ記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−283085(P2009−283085A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135574(P2008−135574)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】