説明

データ記録における時間軸の時刻補正方法とそのシステム

【課題】本発明は、データ記録における時間軸の時刻補正方法に関し、従来のデータ記録における時間軸の時刻補正方法における通信負荷が大きく、同期信号の受信とデータの測定を並行して行うので手間が掛かることが課題であって、それを解決することである。
【解決手段】データ取得用の端末装置2,3に同期基準装置4から同期信号を2回送信し、前記端末装置に記録された前記同期信号の各受信時刻によって、前記端末装置の取得データの時間軸を時刻補正するようにしたデータ記録における時間軸の時刻補正方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、建物内に配設された加速度測定用で複数個のセンサーから取得されたデータにおいて、互いの時刻同期をとるための記録の際の時刻補正方法とそのシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、建築の長寿命化・省エネ化の観点から建築性能に対する「見える化」のニーズが高まっている。その要求に対して、建物内にセンサーを多数配置して、建物の状態を常時監視するモニタリングシステムの開発が盛んである。
【0003】
前記センサーから取得されたデータは、互いに時刻同期が取れていることが好ましいものであり、そこで、従来、以下のような技術が提案されている。従来例1:有線・無線のいずれかの通信手段を用いて、親機から各測定端末装置にデータ取得のタイミングを指示する。この指示をタイミング毎に毎回行う。
【0004】
従来例2:各測定端末装置にデータを取得する時刻を記憶させておき、各端末装置がGPS(Global Positioning System 、以下同じ)または電波時計から時刻情報を得て自律的にデータ取得を行う。電波時計から取得される時刻情報は全端末装置で同一なため結果として全端末装置の同期が確保できる。
【0005】
このような従来例の公知文献として、親機からタイミングを設定して同期をとるものである特許文献1と、GPSを同期信号とするものである特許文献2とが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−16576号公報
【特許文献2】特開2010−279235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来例1のデータ記録における時間軸の時刻補正方法においては、データ測定のタイミング毎に信号を送るため、データ測定を短い時間間隔で行う場合、通信回線への負荷が大きく、通信エラーやタイミングのずれを生じる懸念がある。前記従来例2では、GPS・電波時計とも屋内では著しく電波状況が悪くなるため、測定端末装置の設置箇所がかなり限定されてしまう。
【0008】
更に、前記従来例1,2の共通の課題として、親機若しくはGPS衛星・電波時計放送局との通信に障害が生じた場合、同期がとれなくなるばかりでなく、個々の端末装置でのデータ取得すらできなくなる。
【0009】
短い時間間隔で連続的にデータを取得する場合、測定時間中ずっと通信状態を保持している必要があるため、消費電力が大きくなるという課題がある。本発明に係るデータ記録における時間軸の時刻補正方法とそのシステムは、このような課題を解決するために提案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るデータ記録における時間軸の時刻補正方法の上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、データ取得用の端末装置に同期基準装置から同期信号を2回送信し、前記端末装置に記録された前記同期信号の各受信時刻によって前記端末装置の取得データの時間軸を時刻補正するようにした時刻補正方法である。
【0011】
本発明に係るデータ記録における時間軸の時刻補正方法の上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、各端末装置において設定された条件に基づいてデータを取得する工程と、前記各端末装置において前記センサーからの取得された物理量とその取得時刻とを記憶装置に記憶させる工程と、前記各端末装置において所定の時間若しくは所定のデータ取得回数だけ上記工程を繰り返す工程と、各端末装置から同期基準装置へ向けてデータ取得完了の信号を送信する工程と、前記データ取得完了の信号を前記同期基準装置が受信する工程と、同期基準装置から一定時間の時間間隔をおいて同期信号を2回送信する工程と、前記各端末装置において前記同期信号を2回受信しその各受信時刻を記憶装置に記憶させる工程と、前記各端末装置に記録された前記同期信号の受信時刻に基づいて時刻補正手段で各端末装置の取得データの時間軸を時刻補正する工程とからなることである。
【0012】
本発明に係るデータ記録における時間軸の時刻補正システムの要旨は、物理量測定用のセンサーと、該センサーに接続されるとともに記憶装置を有する制御装置と、前記制御装置に接続される電源及び無線送受信装置とでなり独立稼動する端末装置と、前記端末装置からのデータ取得完了の信号を受信した後に同期信号を無線送受信装置を介して2回発信する同期基準装置と、前記端末装置に記録された同期信号の受信時刻から時刻補正手段で各端末装置の時間軸を補正する時間軸補正装置とでなり、前記端末装置を一以上の構造物にそれぞれ一以上で着脱自在に取り付けて、前記端末装置からのデータ取得完了の信号を受信した後に前記同期基準装置から一定時間間隔の同期信号を2回送信し、該同期信号の受信時刻を前記端末装置に記憶装置に記録させ、前記同期信号の受信時刻から各端末装置の時間軸を前記時間軸補正装置で時刻補正することである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のデータ記録における時間軸の時刻補正方法と、そのシステムとによれば、端末装置において同期をとるための通信回線を常に空けておく必要がない。それにより常時は通信を閉鎖して消費電力を抑えることができる。よって、端末装置においてバッテリー駆動による長時間の測定が可能となる。
【0014】
従来ではデータ取得のタイミング毎に同期信号を送る必要があり、短時間でデータ取得を繰り返す場合に通信負荷が大きくなり消費電力も増していたが、本発明の方法では同期信号は2回送信するだけでよい。よって、通信負荷が軽減されて消費電力が節約されるので、バッテリーの寿命が延びて端末装置を長期間使用することができる。
【0015】
また、端末装置においては、従来ではデータ取得のための測定と同期信号受信を並行に行う必要があるが、本発明の方法ではデータ取得完了後に、同期信号が2回送信されるだけなので、データ取得と同期処理とが別々に行われ前記端末装置に要求される処理能力は小さくて済む。
【0016】
このほか、通信回線に異常が生じた場合でも各端末装置ごとに独立してデータの取得が行われ、最悪の場合でもデータ取得ができる。よって、通信回線が復帰した後に同期信号を端末装置に送信してやれば、時刻補正が可能になる等、数々の優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るデータ記録における時間軸の時刻補正方法を示す模式図である。
【図2】本発明に係るデータ記録における時間軸の時刻補正システムを示す概略図である。
【図3】同本発明のデータ記録における時間軸の時刻補正方法において、各端末装置でのデータ取得と同期基準装置から同期信号を送信している状態を示す説明図である。
【図4】標準時の時刻に合わせて補正される様子を示す説明図である。
【図5】同期誤差の従来例と本発明の時刻補正による例を比較して図表に示す説明図(A),(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係るデータ記録における時間軸の時刻補正方法は、図1に示すように、同期基準装置から各端末装置に同期信号を2回送信し、その受信時刻を記録させその受信時刻によって時間軸の補正をするものである。
【実施例1】
【0019】
本発明の時刻補正方法における、必要なシステムは、図1及び図2に示すように、物理量測定用の時計付センサー2aと、該センサー2aに接続されるとともに記憶装置2cを有する制御装置2bと、該制御装置2bに接続される電源2d及び無線送受信装置2eとでなり独立稼動する端末装置2(3)と、無線送受信装置2fを介してデータ取得の完了信号を受信し且つ同期信号を2回発信する同期基準装置4と、該同期基準装置4における同期用の制御装置2gと、前記端末装置2(3)に記録された同期信号の受信時刻から時刻補正手段で各端末装置2(3)の時間軸を補正する時間軸補正装置2hとでなるものである。なお、前記同期基準装置4は、一例として、図に示すように時間軸補正装置2hとを一体に構成してなるものであるが、これに限らず、前記時間軸補正装置2hは、前記同期基準装置4と別体にして構成して良い。
【0020】
前記電源2dは、主に乾電池であり、バッテリー等も含まれる。前記無線送受信装置2eは、端末装置において最も電力消費量が多いものである。よって、この無線送受信装置2eの稼働時間を減らすことで、電源2dの寿命が長くなるものである。
【0021】
そして、前記時刻補正システムの配置例として、図1に示すように、建物1に、複数個のデータ取得用の端末装置2,3を着脱自在に設置する。そして、同期基準装置4を設ける。この同期基準装置4と、前記端末装置2,3とは距離的に遠いものとする。前記端末装置2,3はさらに多数の箇所に多数配置してよい。
【0022】
次に、図3に示すように、本発明に係る時刻補正方法を説明する。各端末装置2,3において設定された条件に基づいて、タイミングを計りデータを取得する工程がある。この端末装置2,3は、この装置における制御装置2bに搭載された時計であるクォーツ(水晶発信器)によってタイミングをとり、センサー2aでデータ取得するものである。この端末装置2,3では、地震時若しくは振動時の加速度として記録するものである。この物理量は、加速度以外の物理量でもよく、特に限定されるものではない。
【0023】
各端末装置にデータの送受信用の無線用送受信装置2eを備えている。データの送受信に関しては、有線でデータ送信するネットワークでも良いが、建物などは各地に点在するので現実的ではない。また、インターネットを介してデータ送信するようにしても良い。
【0024】
前記各端末装置2,3において前記センサー2aからの取得された物理量とその取得時刻とを記憶装置2cであるメモリーに記憶させる工程がある。そして、前記各端末装置2,3において、地震等が発生した際における所定の時間若しくは所定のデータ取得回数だけ上記工程を繰り返す工程がある。
【0025】
図3の右側に示すように、各端末装置2,3のデータ取得完了後に、この各端末装置2,3からデータ取得完了の信号が同期基準装置4に無線送受信装置2eを介して送信される。
【0026】
前記同期基準装置4がデータ取得完了の信号を無線送受信装置2fを介して受信すると、制御装置2gから、無線送受信装置2fを介して、一定時間の時間間隔をおいて同期信号を2回、ブロードキャストにて全端末装置2,3‥に送信する工程がある。そして、前記各端末装置2,3‥において前記同期信号を受信して、その2回の受信時刻を記憶装置2cとしてのメモリーに記憶させる工程がある。
【0027】
その後に、前記各端末装置2,3,‥‥から前記無線送受信装置2e,2fを介して同期基準装置4における時間軸補正装置2hに各種データ(物理量のデータ、2回受信した同期信号の受信時刻のデータ)を送信する工程がある。
【0028】
このように、端末装置2,3における無線送受信装置2fの使用頻度は、データ取得完了の信号を送信すること、同期用の信号を2回受信すること、物理量のデータ及び受信時刻を送信することであり、それ以外の時は稼動していないので、電力消費が低減されるものである。
【0029】
次に、各端末装置2,3‥からのデータを集約した前記時間軸補正装置2hにおいて、前記各端末装置2,3‥‥における同期信号の受信時刻を比較して、以下の時刻補正手段により各端末装置の取得データの時間軸を補正する工程がある。まず、時刻補正には、各端末装置の信号受信時刻より従来技術(RBS:Reference Broadcast Synchronization)を用いて、例えば、端末装置2の第1回目の同期信号の受信時刻を、基準となる標準時の受信時刻とする。
【0030】
前記基準とした端末装置2以外の各端末装置3,‥‥における同期信号の第1回目の信号受信時刻を、前記標準時の受信時刻との差の分を適宜に増減させて、全て前記端末装置2の第1回同期信号受信時刻に合わせる。各端末装置3,‥における第2回目の同期信号受信時刻を、前記受信時刻の差の分を適宜に増減させて当該第2回目の同期信号受信時刻を各々修正する。
【0031】
次に、各端末装置3,‥の第2回目の同期信号の受信時刻を、前記端末装置2の第2回目の受信時刻を基準にして、時間軸の補正倍率を算出する。
【0032】
この時刻補正方法は、図4に示すように、まず最初に、同期信号の時間間隔を求める。基準とした前記端末装置2の2回受信した同期信号の時間間隔は、△t=(t2−t1)であって、他の前記端末装置3,‥の2回受信した同期信号の受信間隔は、△ta=(ta2−ta1)、若しくは、△tb=(tb2−tb1)である。それにより他の各端末装置3,‥の時間軸を、△t/△ta、△t/△tb、‥等を算出して補正倍率を求めて補正する。以下の式を使用する。
[式1]

なお、式中の標準時とは、仮に基準として設定した、例えば、前記端末装置2における同期信号受信等の時刻である。
【0033】
この時刻補正を具体的に例を挙げて説明する。端末装置1,2,3があったとして、前記時間軸補正装置2hに集約された、2回の同期信号の受信時刻のデータが、以下の様であるとする。

【0034】
前記同期信号1の受信時刻は、全部の端末装置で同時であるはずなので、端末装置1を基準にして時刻合わせをする。

【0035】
前記同期信号2の受信時刻も、全部の端末装置で同時であるはずなので、端末装置1を基準にして時刻合わせをする。

【0036】
以上をまとめると、

となる。
なお、端末装置1を基準にして説明したが、各端末装置の同期信号の受信時刻の平均値をとってそれを基準とすることで、端末装置の数量が多ければ多いほど、受信時刻の正確度が向上するものである。
【0037】
上記時刻補正により、図4に示すように、例えば、下段に示す端末装置2における物理量(実線で描画)が、中段の基準にした端末装置の標準時において時間軸が修正され、実線で示すように下段の位置よりも左側にずれてくる。また、上段に示す端末装置3における物理量(破線で描画)が、中段の標準時において時間軸が修正され、破線で示すように上段の位置よりも右側にずれてくる。
【0038】
こうして、前記時間軸補正装置2hにおける時刻補正プログラムによって各端末装置2,3‥‥の物理量のデータが、時間軸を合わせて補正される。図5(A),(B)に示すように、同期の誤差を従来例の場合(同図(A))と本発明の時刻補正方法の場合(同図(B))とに示すように、明らかに誤差が少なくなっている。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の時刻補正方法は、種々の物理量を測定する場合に、時間軸の補正方法としてあらゆる場面において広く適用することができるものである。
【符号の説明】
【0040】
1 建物、
2 端末装置、 2a センサー、
2b 制御装置、 2c 記憶装置、
2d 電源、 2e 無線送受信装置、
2f 無線送受信装置、 2g 同期用の制御装置、
2h 時間軸補正装置、 2i 記憶装置、
3 端末装置、
4 同期基準装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ取得用の端末装置に同期基準装置から同期信号を2回送信し、前記端末装置に記録された前記同期信号の各受信時刻によって前記端末装置の取得データの時間軸を時刻補正すること、
を特徴とするデータ記録における時間軸の時刻補正方法。
【請求項2】
各端末装置において設定された条件に基づいてデータを取得する工程と、
前記各端末装置において前記センサーからの取得された物理量とその取得時刻とを記憶装置に記憶させる工程と、
前記各端末装置において所定の時間若しくは所定のデータ取得回数だけ上記工程を繰り返す工程と、
各端末装置から同期基準装置へ向けてデータ取得完了の信号を送信する工程と、
前記データ取得完了の信号を前記同期基準装置が受信する工程と、
同期基準装置から一定時間の時間間隔をおいて同期信号を2回送信する工程と、
前記各端末装置において前記同期信号を2回受信しその各受信時刻を記憶装置に記憶させる工程と、
前記各端末装置に記録された前記同期信号の受信時刻に基づいて時刻補正手段で各端末装置の取得データの時間軸を時刻補正する工程とからなること、
を特徴とするデータ記録における時間軸の時刻補正方法。
【請求項3】
物理量測定用のセンサーと、該センサーに接続されるとともに記憶装置を有する制御装置と、
前記制御装置に接続される電源及び無線送受信装置とでなり独立稼動する端末装置と、
前記端末装置からのデータ取得完了の信号を受信した後に同期信号を無線送受信装置を介して2回発信する同期基準装置と、
前記端末装置に記録された同期信号の受信時刻から時刻補正手段で各端末装置の時間軸を補正する時間軸補正装置とでなり、
前記端末装置を一以上の構造物にそれぞれ一以上で着脱自在に取り付けて、前記端末装置からのデータ取得完了の信号を受信した後に前記同期基準装置から一定時間間隔の同期信号を2回送信し、該同期信号の受信時刻を前記端末装置に記憶装置に記録させ、前記同期信号の受信時刻から各端末装置の時間軸を前記時間軸補正装置で時刻補正すること、
を特徴とするデータ記録における時間軸の時刻補正システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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