説明

データ記録装置

【課題】 音声をピックアップしてその音声に係る電気信号を音声データとして記録媒体に記録するデータ記録装置において、記録された音声データを再生する際に、予め設定された再生出力レベルの限界値を越えていることで生じる歪みの発生を回避し且つ再生音中にノイズの発生を抑えることで、高い再生の忠実性を得、且つ、取り扱いが簡便であることを目的とする。
【解決手段】 マイクロホン2からのアナログ信号を増幅度の異なるアンプ3,4で増幅し、更に、A/D変換された二つのデジタルの音声データを記録する際に、データ記録手段であるDSP9が、それらの音声データから増幅度の高い方を選択し、その選択した音声データに再生可能なレベルを超えた部分がある場合には他方の音声データの対応部分に置換えて記録するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マイクロホンがインタビューや音楽演奏等の音声をピックアップして電気信号に変換し、その音声に係る電気信号を適当なレベルに増幅した後にデジタルの音声データとして記録媒体に記録するデータ記録装置に関する。
データ記録装置が音声データを記録媒体に記録する際、マイクロホンからの音声に係る電気信号は増幅されるが、その増幅されて得られた電気信号のレベルがその音声データの記録装置の最大入力レベルを越える場合には、その最大入力レベルを超えた音声部分は再生時に歪みとなって現れる。
この発明は、特に、この最大入力レベルを超えた音声部分の歪みを回避し得る音声データの記録の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
データ記録装置、つまり、音声データを記録する装置は、マイクロホンがピックアップした音声を電気信号に変換し、その電気信号をアンプが適当なレベルに増幅し、更に、その適当なレベルに増幅された電気信号をA/D変換器がデジタルの音声データに変換し、その音声データをDSPが半導体メモリ等の記録媒体に記録するように機能するものである。
ここで、データ記録装置が音声データを記録する際には、音声データが良好なレベルで記録されて結果的に再生した際に所望レベルの再生音声が得られるように、マイクロホンが音声を変換して得た電気信号を適当なレベルに増幅することが必ず行われている。
【0003】
この電気信号の適当なレベルの増幅は、録音対象である音声データを確実に記録するためにもノイズを低く抑えることからも、大きいほど望ましい。
しかしながら、増幅のレベルを大きくし過ぎると、データ記録装置の最大入力可能なレベル(以下、「VMAX」と称する。)を超えてしまうことになる。斯かる場合、マイクロホンの後段側に接続されているA/D変換器においてはVMAX以上の値を取ることは不可能なので、入力レベルがVMAXを超えた電気信号は全てVMAXの値を持つものと見なされ、その最大入力のレベルでデジタル信号に変換されることになる。
【0004】
尚、VMAXを越えたレベルの音声データは、マイクロホンがピックアップして得た音声データが元々忠実に記録されないから、記録媒体に記録された後に再生される際、その音声データが忠実に再生されることはない。
従って、VMAXつまりデータ記録装置の最大入力可能なレベルは、再生出力において再生可能なレベルの限界値となっている。
【0005】
さて、入力レベルがVMAXを越えた音声に係る電気信号は、単に最大入力のレベルのデジタルの音声データとして記録されることになる。
従って、その音声データを再生することによってアナログの音声に戻すと、入力レベルがVMAXを越えた部分の音声データは歪んだ音声となって再生され、マイクロホンによって実際にピックアップされた際の音声に対応した音声として再生されることはない。
つまり、マイクロホンがピックアップした音声に係る音声データの忠実な記録が行われず、その結果として、マイクロホンがピックアップした音声に対して忠実な再生が得られないということになる。
【0006】
上述したように、音声データの記録の際に音声入力のレベルが高過ぎると、結果的に、再生される音声に歪みが発生するという問題が生じる。
斯かる問題を避けるために、従来からいくつかの方法が試みられている。
つまり、歪みが発生することへの対応の一つとして、マイクロホンの後段において入力されて来る音声に係る電気信号に対して録音ボリュームを下げて録音レベルを小さくするという方法が知られている。
【0007】
しかし、斯かる方法では、入力の電気信号のレベルが確実にVMAXを超えないようにと録音ボリュームを下げる余り、録音ボリュームを下げ過ぎて入力レベルが小さくなり過ぎ、結果的に、マイクロホンがピックアップして記録すべき音声に比してその音源の周囲のノイズが相対的に大きく録音され、結果的に再生音の音声にノイズが入り過ぎるという新たな問題が生じる。
二つに、マイクロホンの後段にAGC回路(自動利得制御回路)を配設して、音声に係る入力の電気信号のレベルを制御する方法が挙げられる。斯かる方法では、入力レベルを制御するので入力信号のレベルがVMAXを超えることはない。
【0008】
しかし、マイクロホンの後段にAGC回路を配設する構成のデータ記録装置では、例えばインタビューの最中つまり音声データの記録を行っている際に音声の入力がなくなったり入力音声のレベルが突然極めて低くなった場合には、AGC回路が入力レベルが下がったことに対してゲインが自動的に大きな程度で増加するように作用し、この作用が対象音源の周囲のノイズまでをも大きな程度で増幅して、結果的に、ノイズの多い録音になって再生音に大きなノイズを含むという問題が生じる。
マイクロホンがピックアップした音声を音声データとして記録し、所望時にその音声データを再生する場合、再生で得られる音声はマイクロホンがピックアップした音声に近似であれば近似であるほど望ましい。つまり、音声データの記録の忠実性と音声データの再生の忠実性が大きな意味を持つことになり、ノイズが強く伴う再生音声は当然望ましくはない。
【0009】
ここで、再生音声がマイクロホンによってピックアップされた音声に忠実であるには、まず、入力信号のレベルは音声データの記録装置のVMAX以下で、音声データの記録が行われることが必要である。
逆に、入力レベルがデータ記録装置のVMAXを越えた音声データを再生した場合には歪みが生じて忠実な再生が得られないという問題が生じることになる。斯かる問題に対して、入力レベルを抑えることなく再生音声で歪みを回避する発明として、以下の文献が知られている。
【0010】
【特許文献1】特開2000−261263号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特開2000−261263号公報には、出力される音量の最大値と基準値に基づいて上昇可能な音量マージンを検出し且つその検出の値を保持することによって、その検出したマージンの分だけ音量調節を可能にする音量調節器(以下、「先行発明」と称する。)が開示されている。
斯かる構成の音量調節器は、音量を上げ過ぎても、検出して保持している音量マージンによってレンジオーバーになることはなく、結果的に、出力側において歪みが発生するということはない。
【0012】
つまり、斯かる構成の先行発明で音声データを得て記録すると、歪みの生じない再生音声が得られるということになる。
しかし、先行発明は、上昇可能な音量マージンが決められる構成であることにより、その音量マージンを越える音量の入力に対してはレンジオーバーへの対応ができないので、忠実な音声データの記録が得られず、結果的に、再生時にピックアップの原音に応じた音声が得られないという問題があった。
【0013】
殊に、前記の音量マージンの値が小さい値であって、原音がその音量マージンを大きく越えていればいるほど、斯かる問題はより一層深刻になる。
そこで、マイクロホンからの音声に係る電気信号を増幅する際に、相異なる複数の増幅度でその電気信号の増幅を行い、この増幅で得られた複数の電気信号のうちで増幅度の高い方の電気信号に係る音声データを採用して再生し、且つ、その増幅度の高い方の電気信号のピークがVMAXを超える場合にはVMAXを越えない増幅度の音声データを再生するようにして、複数の増幅度の電気信号の使い分けを行うことによって歪みがなく忠実性の高い音声の再生が考えられる。
【0014】
しかし、上記の音声データの使い分けをユーザーが行うことは技術的に甚だ難しく、煩雑な作業となり、実用性に欠けるという問題が生じることになる。
この発明は、上記の事情に鑑みて為されたものであり、ピックアップした音声を音声データに変換して記録媒体に記録し、その記録された音声データを再生する際に、再生音に歪みが生じず且つノイズが可能な限り抑えられて再生の忠実性が得られ、更に、取り扱いが簡便であるデータ記録装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明は、同一入力のアナログ信号を異なる増幅度で増幅して得た複数の電気信号をデジタルデータとして記録する際に、それら複数のデジタルデータの中から増幅度の大きい方を選択し、その選択したデジタルデータに再生可能なレベルを超えた部分がある場合には、他のデジタルデータと対応し且つ再生可能なレベルのデジタルデータに置き換えて記録するように構成したデータ記録装置である。
【0016】
その詳細な構成は、一つのアナログ信号から、予め用意された複数の増幅度を用いてそれぞれ増幅度が異なる複数の増幅済みのアナログ信号が生成され、その複数の増幅済みアナログ信号がそれぞれ複数のデジタルデータに変換され、その複数のデジタルデータの少なくとも一つが記録媒体に記録されるデータ記録装置において、
前記複数のデジタルデータの中で、前記最大増幅度が設定された前記増幅済みアナログ信号に対応する前記デジタルデータから、再生出力レベルが予め設定された限界値を超えるデータを検出し、
前記検出されたデータに関し、前記最大増幅度よりも低い他の増幅度が設定された前記増幅済みアナログ信号に対応する前記デジタルデータから、前記再生出力レベルが前記限界値以下である代替データを抽出し、
前記検出されたデータを前記代替データに置換えて記録する記録手段が備えられてなることを特徴とするデータ記録装置である。
【0017】
ここで、再生可能なレベルを超えないデジタルデータとは、デジタルデータを記録する際に記録可能なレベルつまりVMAXを超えないデータを意味する。
尚、前記検出、前記抽出及び前記置換えを行う手段として、具体的に、デジタル信号プロセッサが挙げられる。
又、データ記録装置は、前記検出されたデータを前記代替データに置換える前に、それら二つのデータの増幅度を共通化させる機能が付加されている。
【0018】
斯かる構成のデータ記録装置は、再生の際に歪みの原因となるデータ記録の最大入力可能なレベルを超えない音声データのみを記録するように構成したことにより、斯かる音声データを再生すると歪みが生じることはない。他方、音声データの記録時に、増幅のレベルを低く抑えることがないので、ノイズが多大にピックアップされて記録されることがなく、再生音のノイズは低く抑えられている。
【発明の効果】
【0019】
この発明は、一つのアナログの信号を複数の増幅度で増幅させ、複数のデジタルの電気信号を生成し、それらのデジタルの電気信号を互いにデータとして対応付け、それらのデータの中で増幅度の高い順であって且つ再生可能なレベルを超えないデジタルデータを選択し、再生可能なレベルを超えた部分を有するデータはその再生可能なレベルを超えた部分を他のデータであった再生可能なレベルを超えないデータの対応部分に置換えを行って記録するように構成したことにより、記録媒体から前記の記録したデータを読み出して再生する際には、再生対象のデータは再生可能なレベルの範囲であることから歪みが生じることがなく、データを記録する際に増幅度を低く設定する必要がない若しくはノイズの少ないデータを主に記録することから、アナログ信号のピックアップ時に多大なノイズが記録されることがなく、再生音はノイズが抑えられていて、よって、再生の忠実性が高く、更に、取り扱いが簡便なデータ記録装置である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
この発明を、以下において、図面に示す最良の形態に基づき詳述する。しかし、この形態によって、この発明が限定されるものではない。
データ記録装置1は、図1に示すように、マイクロホン2と、アンプ3,4と、電子ボリューム5,6(以後、「EVR5,6」と称する。)と、A/D変換器7,8と、デジタル信号プロセッサ9(以後、「DSP9」と称する。)と、制御手段10と、バッファメモリ11と、操作部13及び表示部14が備えられている。
尚、12は、記録媒体である。
【0021】
D/A変換器23とDSP9の間にバス15が、DSP9と制御手段10の間にはバス16が、DSP9とバッファメモリ11の間にバス17が、バッファメモリ11と記録媒体12の間にバス18が、それぞれ介在されている。
又、制御手段10は、入力部19と、演算部20と、メモリ21及び出力部22が備えて構成されている。
【0022】
データ記録装置1には、記録媒体12に記録した音声データを再生して音声で出力する音声データの再生機能が備えられている。
つまり、データ記録装置1は、音声データを再生し得るDSP9と、D/A変換器23と、アンプ24と、スピーカ25が備えられている。
【0023】
データ記録装置1は、上述したように、音声データの記録機能と音声データの再生機能の二つの機能が備えられており、それら音声データの記録機能と音声データの再生機能の間で、バッファメモリ11と、DSP9と、制御手段10と、操作部13及び表示部14が共用される構成になっている。
マイクロホン2は、人の音声、自然界の音、演奏会の音楽などの音声が入力されるとアナログの電気信号に変換して後段に出力するものである。
【0024】
アンプ3,4は共に、マイクロホン2の後段に接続され、マイクロホン2からの音声に係る電気信号を受け取ってそれぞれ300倍で増幅し、その増幅した電気信号を後段のEVR5,6に送る。
EVR5,6は、録音の待機時や録音の機能時に制御手段10から制御信号を受けると、EVR5において減衰量をレベルが1/4、EVR6において減衰量をレベルが1/12になるように変化させ、結果的に、アンプ3,4とそれぞれ共動してマイクロホン2からの音声に係る電気信号のゲインを所望の値の75倍、25倍となるように機能するものである。
【0025】
A/D変換器7,8はそれぞれ、EVR5,6の後段に接続されており、所望のレベルに加工されたアナログの電気信号が入力されると、デジタルの電気信号に変換してバス15に出力するものである。
ここで、マイクロホン2からの音声に係るアナログの電気信号は、アンプ3で増幅され、EVR5で所望のゲインが確保され、A/D変換器7でデジタルの電気信号に変換されてバス15に入力されるメインとなる第一の系と、アンプ4で増幅され、EVR6で所望のゲインが確保され、A/D変換器8でデジタルの電気信号に変換されてバス15に入力される補助となる第二の系を構成する元になっている。
【0026】
バス15は、A/D変換器7,8から増幅度の異なる二つのデジタルの電気信号を受け取って、それら二つの電気信号を互いに対応付けてDSP9に送る。
DSP9は、制御手段10からの制御信号に基づいて、バス15を介してA/D変換器7,8からの互いに対応付けられた音声に係る二つの系のデジタルの音声データを受取ると、その電気信号を音声データとして記録媒体12に録音するためにバッファメモリ11に送る。つまり、ここでは、DSP9は記録手段として機能するものである。
【0027】
同じく、DSP9は、制御手段10からの制御信号に基づいて、バッファメモリ11を介して記録媒体12に記録されているデジタルの音声データを読み出し、D/A変換器23に送って当該音声データを音声に係るアナログの電気信号に再生するように機能するものである。つまり、DSP9は、再生手段としても機能する。
制御手段10は、操作部13から録音の開始・停止、再生の開始・停止等の制御信号やデータ信号を受ける入力部19と、入力部19の入力信号等に対しての判断・演算を行って制御信号の生成する演算部20と、EVR5,6の減衰の設定値、制御のシークエンス等の記憶を行う不揮発性のメモリ21と、演算部20からの制御信号をDSP9及び表示部14に出力する出力部22が備えられている。
尚、操作部13は、一部既述したように、操作用スイッチ群が備えられ、装置の機能を操作するものである。
【0028】
尚、メモリ21へのデータの書き込み、例えばEVR5,6の減衰の設定値の書き込み
は、操作部13からの操作によって演算部20が行う。又、メモリ21に記憶されているEVR5,6の減衰値等は、操作部13からの操作によって変更することが可能になっている。
演算部20は、具体的に、音声データの記録する際には、操作部13からデータ記録開始の信号入力を受けた後、所望の増幅度が得られるように、メモリ21から増幅度を読み出してEVR5,6の設定値を算出し、EVR5,6への制御信号を生成するように機能するものである。
【0029】
更に、演算部20は、操作部13から制御手段10がデータ記録開始の信号を受け取ると、DSP9に、前記第一の系のデジタルデータのピークがVMAXを超えるか否かを検出し、そのピークがVMAXを超えないと検出した場合には、前記第一の系のデジタルデータを記録すべき対象としてバッファメモリ11に送るための制御信号を出力するものである。
他方、前記第一の系のデジタルデータのピークがVMAXを超えると検出した場合には、演算部20はDSP9に、前記第一の系のデジタルデータであってVMAXを超えている部分について、前記第二の系の対応するデジタルデータを代替データとして抽出し、この抽出した代替データを第一の系の前記VMAXを越えた部分のデータに置換えるための制御信号を出力するものである。
【0030】
又、この場合、第一の系と第二の系では最初の増幅時において増幅度が異なっているから、上記代替データの抽出があった旨を受けた制御手段10は、DSP9に増幅度の共通化のための制御信号を出力するように構成されている。
尚、増幅度の共通化とは、第一の系と第二の系ではEVR5,6からの同一音声に係る電気信号の出力レベルが異なっているので、これら二つの系の増幅度が同じになるように第一の音声データと第二の音声データにレベル合わせを行うことを意味する。
【0031】
第一の音声データと第二の音声データの増幅度の共通化は、それら二つの音声データのレベル差がDSP9において内蔵のレベル差検出部(図示省略)によって正確に検出され、続いて、そのレベル差の値(約10dB)の分だけ第一の系の音声データのレベルをシフトダウンさせ、第二の系の音声データのレベルと同じにすることによって行う。
演算部20は、メモリ21に記憶のシーケンス内容に沿って、更に、増幅度の共通化が行われて得られた音声データをバッファメモリ11に送るための制御信号をDSP9に出力するように構成されている。
【0032】
バッファメモリ11は、実質的にDSP9と記録媒体12の間に介在され、バス18を介してDSP9からデジタルの音声データを一時的に記憶するものである。
そして、バッファメモリ11は、DSP9からの音声データを、つまり、ピークがVMAXを越えない第一の系のみの音声データであっても、第一の系でピークがVMAXを越えていて部分的に第二の系の音声データが置換えられてなる音声データであっても、一時的に保持しながら、記録媒体12への音声データの流れに緩衝機能を奏するものである。
【0033】
表示部14は、液晶表示パネル(図示省略)が備えられ、制御手段10からの制御信号に基づき、装置の機能の現状、操作内容、確認事項等を表示するものである。
記録媒体12は、具体的に、半導体メモリが挙げられる。尚、CD、MD等であってもよい。
【0034】
再生手段としてのDSP9は、記録媒体12から音声データをバッファメモリ11を介して受け取ると、その音声データをデジタルの電気信号に再生してD/A変換器23に送るものである。
D/A変換器23は、再生された音声に係るデジタルの電気信号を受け取るとアナログの電気信号に変換して出力するものである。
【0035】
アンプ24は、D/A変換器23からのアナログの電気信号を受け取ると所望のレベルに増幅してスピーカ25に出力するものである。
スピーカ25は、アンプからの増幅された電気信号を受け取ると音声に変換して出力するものである。
【0036】
データ記録装置1は、上述したように構成されている。以下において、データ記録装置1の音声データを記録する手段の動作について説明する。
ユーザーは、記録媒体12がセットされているデータ記録装置1を録音対象の音源(図示省略)の近傍に持って行き、更に、マイクロホン2を前記音源に向けてから、操作部13を操作してメイン電源をONにする。
【0037】
続いて、操作部13を操作して、録音レベル等を設定してから、録音つまり音声データの記録を開始する。
ここで、マイクロホン2は、上記音源からの音声をピックアップするとその音声をアナログの電気信号に変換し、その電気信号を第一の系を構成するアンプ3及び第二の系を構成するアンプ4に送る。
【0038】
アンプ3,4は、マイクロホン2からの電気信号を受け取ると、それぞれが300倍に増幅し、その増幅された電気信号をEVR5,6に送る。
EVR5は、アンプ3からの増幅された電気信号に対して制御手段4から制御信号に基づいて減衰量を1/4になるように変化させ、結果的に、マイクロホン2からの音声に係る電気信号のゲインを所望の値の75倍になるように機能し、A/D変換器7に送る。
【0039】
他方、EVR6は、アンプ4からの増幅された電気信号に対して制御手段4から制御信号に基づいて減衰量をレベルが1/12になるように変化させ、結果的に、マイクロホン2からの音声に係る電気信号のゲインを所望の値の25倍になるように機能し、A/D変換器8に送る。
この時、第一の系と第二の系の電気信号の特性曲線はそれぞれ、図3の上段で示されたレベルAの図と中段で示されたレベルBの図となって表示される。
【0040】
A/D変換器7,25はそれぞれ、EVR5,6からアナログの音声に係る電気信号を入力すると、デジタルの電気信号に変換し互いに対応付けてバス15に出力する。
バス15は、A/D変換器7,8からのレベルの異なる対応付けられた二つのデジタルの音声データをDSP9に送る。
【0041】
DSP9は、前記二つの対応付けられた音声データを受け取ると、その旨を制御手段10に送る。
ここで、制御手段10は、メモリ21に記憶されているシーケンスに沿ってそれらの音声データを処理するように、DSP9に制御信号を送る。
【0042】
DSP9は、図2に示すように、バス15を介して受け取った前記二つの対応付けられた音声データの中から、第一の系に係る第一の音声データつまりアンプ3及びEVR5によって75倍に増幅された電気信号に係る音声データのピークが予め設定された記録可能でありよって再生可能なレベルのVMAXを越えているか否かの検出を行う。
DSP9は、図3のレベルAから明らかに、前記第一の系の音声データはVMAXを越えているので、そのピークがVMAXを越えていることを検出すると、制御手段10の演算部20からのシーケンス制御に基づき、前記第一の系の音声データであってVMAXを超えている部分については、前記第二の系の対応するデジタルデータを代替データとして抽出し、この抽出した代替データを前記第一の系の前記VMAXを越えた部分のデータに置換える。
【0043】
つまり、DSP9による第一の音声データがVMAXを越えていると検出結果に対し、データの選択を行うための制御が行われる。
この時、これら第一の系と第二の系では最初の増幅時において増幅度が異なっているから、上記代替データの抽出があった旨を受けた制御手段10は、DSP9に増幅度の共通化のための制御信号を出力する。
【0044】
DSP9は、この制御信号を受けると、まずこれら二つの系の音声データのレベル差を検出し、求めたレベル差に基づいて第一の音声データのレベルをダウンさせて第二の音声データのレベルに合わせて、第一の音声データと第二の音声データのレンジの共通化を行う。
尚、レンジの共通化とは、第一の音声データと第二の音声データのレベル調整であり、第一の系と第二の系ではアンプ3,4において音声に係る電気信号を増幅する際にそれぞれ増幅度が異なっており、この増幅度が同じになるように、第一の音声データと第二の音声データにレベル合わせを行うことを意味する。
【0045】
第一の音声データと第二の音声データのレンジの共通化は、具体的に、それら二つの音声データのレベル差がDSP9において内蔵のレベル差検出部(図示省略)によって正確に検出され、続いて、そのレベル差の値(約10dB)の分だけ第一の系の音声データのレベルをシフトダウンすることによって行う。
ここで、第一の系の音声データは、元の値のほぼ3分の1にレベルダウンされて、第二の系の音声データと同じレベルになる。
【0046】
又、レンジの共通化を、第一の系の音声データと第二の系の音声データの繋ぎ合わせ(置換え)の前に行っているが、第二の系の音声データを代替データとして第一の系のVMAXを超えた部分に置換えた後にレンジの共通化を行う構成であってもよい。
ここで、DSP9において、第一の系の音声データと第二の系の音声データから、VMAXの越えず且つマイクロホン2がピックアップした音声に対応した記録用音声データが生成される(図3の下段の図を参照)。
【0047】
DSP9は、続いてその生成された記録用音声データをバッファメモリ11に送る。
バッファメモリ11は、前記記録用音声データを受け取ると、その記録用音声データを一時的に記憶し、緩衝機能を奏しながらバス18を介して記録媒体12に送る。
【0048】
ここで、記録媒体12は、前記第一の系の音声データと第二の系の音声データに基づいて生成された記録用音声データを記録する。
つまり、データ記録装置1は、マイクロホン2でピックアップした音声を、再生可能なレベルの音声データとして記録媒体12に記録している。
ここで、記録媒体12は、図3の下段の記録用出力に対応した音声データを記録しており、図3のレベルAに対応したVMAXを越えた音声データを記録はしていない。
【0049】
以下において、データ記録装置1を用いて、記録媒体12に記録されている第一の系の音声データと第二の系の音声データに基づいて生成された前記記録用音声データの再生について説明する。
ユーザーは、操作部13を操作して再生対象リストを表示部14に表示させ、その中から、第一の系の音声データと第二の系の音声データに基づいて生成された前記記録用音声データを特定する。
【0050】
ユーザーは続いて、操作部13を操作して、その特定した音声データを再生するように操作を行うと、操作部13から制御手段10の入力部19に目的の音声データの再生の命令信号が送られる。
制御手段10の演算部16は、入力部19からの命令信号に基づいて、目的の音声データを再生させるための命令信号を出力部22からDSP9に送る。
【0051】
DSP9は、制御手段10から前記目的の音声データを再生するための命令の信号を受け取ると、バッファメモリ11に記録媒体12から前記目的の音声データの読み出しを行うための制御信号を送る。
バッファメモリ11は、バス18を介して記録媒体12に記録されている前記目的の音声データを読み出して一時的に保持し、音声データの流れに緩衝機能を奏してDSP9に送る。
【0052】
ここで、DSP9は、前記目的の音声データをバス15を介してD/A変換器23に送る。
D/A変換器23は、前記目的の音声データをアナログの電気信号に変換して、アンプ24に送る。
アンプ24は、前記アナログの電気信号を所望のレベルに増幅して、スピーカ25に送る。
【0053】
スピーカ25は、そのレベル増幅されたアナログの電気信号を音声にして変換して出力する。
ここでスピーカ25から出力される再生音声は記録媒体12の目的の音声データに対応付くものであるが、目的の音声データはレベルがVMAXを超えた部分を持っておらずVMAXより低いレベルであるから、前記再生音声に歪みが生じるということはない。
又、音声データの記録の際に、記録・再生用のデータとして高いレベルの第一の系の音声データを主として選択しているので、前記再生音声のノイズは抑えられている。
【0054】
尚、上述した例では、第一の系つまり増幅度の高い系の音声データがVMAXを超えた部分を有している。第一の系の音声データのピークがVMAXより低いレベルであれば、
第一の系の音声データが全て採用されて記録媒体12に記録されることになる。
つまり、図2の「記録用音声データの選択」において、第一の音声データが選択され、第二の音声データと部分的に置換えが行われることはない。
【0055】
データ記録装置1は、上述の使用例でレンジの共通化を行っているが、第一の系の音声データをシフトダウンを行い、第一の系のレベルダウンさせた音声データに代替データの第二の音声データを繋ぎ合わせ、ここで得られる記録用音声データのピークがVMAXに比して十分に低く、そのピークとVMAXに対応する値の差(マージン)が十分に大きい場合には、再生出力レベルの限界値の範囲内で音声データのレベルを上げる加工を行うことも可能である。
DSP9の斯かるレベルに対する加工によって、レンジの共通化によってレベルが低くなり過ぎる場合に対応が可能になる。
【0056】
データ記録装置1は、二つの系の音声データつまり二つの異なる増幅レンジの音声データを扱う構成であるが、三つ以上の異なる増幅レンジの音声データを扱う構成であってもよい。
又、データ記録装置1は、二つの系の増幅レベル差は10dBであって、第一の系の音声データを10dBだけ下げることによって第二の系の音声データにレベルの共通化を行っているが、増幅レベルの差に対応するレベルにダウンさせることでレベルの共通化を行うとよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】この発明の実施の最適な形態に記録媒体を接続した際の構成を説明する構成ブロック図である。
【図2】図1に示す形態のDSPの信号加工の機能を説明する構成説明図である。
【図3】図1に示す形態において、異なる増幅度によって増幅された際の二つの信号と、図1に示す形態を用いて前記二つの信号を最大入力電圧以下で繋いで得られる信号との関係を説明する構成説明図である。
【符号の説明】
【0058】
1 :データ記録装置
2 :マイクロホン
3,4,24 :アンプ
5,6 :EVR
7,8 :A/D変換器
9 :デジタル信号プロセッサ(DSP)
10 :制御手段
11 :バッファメモリ
12 :記録媒体
23 :D/A変換器
25 :スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つのアナログ信号から、予め用意された複数の増幅度を用いてそれぞれ増幅度が異なる複数の増幅済みのアナログ信号が生成され、その複数の増幅済みアナログ信号がそれぞれ複数のデジタルデータに変換され、その複数のデジタルデータの少なくとも一つが記録媒体に記録されるデータ記録装置において、
前記複数のデジタルデータの中で、前記最大増幅度が設定された前記増幅済みアナログ信号に対応する前記デジタルデータから、再生出力レベルが予め設定された限界値を超えるデータを検出し、
前記検出されたデータに関し、前記最大増幅度よりも低い他の増幅度が設定された前記増幅済みアナログ信号に対応する前記デジタルデータから、前記再生出力レベルが前記限界値以下である代替データを抽出し、
前記検出されたデータを前記代替データに置換えて記録する記録手段が備えられてなることを特徴とするデータ記録装置。

【請求項2】
デジタルデータの記録を行う手段としてDSPが備えられ、そのDSPが前記検出、前記抽出及び前記置換えを行う請求項1に記載のデータ記録装置。

【請求項3】
前記検出されたデータを前記代替データに置換える前に、それらのデータの増幅度を共通化させる構成の請求項1又は2に記載のデータ記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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